登録日:2012/03/21(水) 22:36:05
更新日:2023/08/18 Fri 19:05:32NEW!
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小説 ルー=ガルー 京極夏彦 sf アクション ミステリー 少女武侠伝 京極ジュブナイル 邪魅の雫 ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔
でも、それは死ではない。
百年の深い眠りに落ちるということにしてやろう。
ヤーコブ・グリム
×ヴィルヘルム・グリム
●incube[ε-Kyb]男性形(→in-2,-cub-) (眠っている女性を犯すといわれた)夢魔,インクブス.
※男性を犯す夢魔はスクブスsuccube〔後期ラテン語incubus悪夢←古典ラテン語incubare〕
■ルー=ガルー2■
インクブス×スクブス
相容れぬ夢魔
『ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔』は京極夏彦の小説作品。
01年に徳間書店先導の「プロジェクトF.F.N」により企画、刊行された『ルー=ガルー 忌避すべき狼』の約10年振りの続編(※前作については当該項目を参照)。
11年に単行本(ハードカバー)、新書(ノベルス)、分冊文庫、電子書籍の4形態により同時発売されて話題を集めた。
【概要】
上記の様に、約10年振りの刊行となった本作だが、時間軸は前作より僅か三箇月後を舞台としており、文字通りの“直接の続編”となっている。
主要登場人物も全員が前作から引き継がれている他、一般公募により集められたアイディアを形にする事が目標であった前作とは違い、世界観やキャラクターの説明には殆ど文面を割いていないのが特徴。
その為、物語の開始直後から目まぐるしくドラマが展開するエンタメ作品となっている反面、前作を未読の読者は世界観を理解するまでに、やや時間を置く部分はあるかと思われる。
……尚、前作が『魍魎の匣』の外伝『鬼一口』から続く暗黒を描いた物語であったのに対し、本作は『邪魅の雫』に端を発する邪悪が禍根を為す物語となっている。
※以下、設定上の都合により、前作、及び本作でのネタバレに注意。
【物語】
2030年。
SVCビルでの大騒動から三箇月が過ぎていた。
事件の中で殺されかけた来生律子は、自分の中で崩れ去ってしまった情報社会が与える仮初めの現実(リアル)と、非日常の夢が見せた血の湧き揚がる様な夢の狭間で揺れ動いていた。
……そして、真円(まんまる)の月の夜。
律子が再会したモノクロームの少女。
あの夜を共に過ごした娘達の一人……作倉雛子。
彼女との邂逅の中で、別れ際に律子は雛子から「毒」を預けられるのだった。
……同じ頃、同じく三箇月前の騒動を契機に警察を退職していた橡兜児は「ある目的」を持って大騒動の関係者である「少女達」の一人、神埜歩未に接触(コンタクト)を計ろうとしていた。
……三箇月振りの歩未との邂逅の中、橡は自分が警官になった原因を作った「親友」……歩未が始めて殺した男(霧島タクヤ)の昔話をする。
その中で、歩未と橡は家族を惨殺した霧島タクヤに纏わる、ある疑問に突き当たるのだった。
……無機質な街に混沌が満ちる刻、少女達は再び闇に疾走る。
【主要登場人物】
◆来生律子(きすぎりつこ)
「バカはあんたや。うちはアホや」
児童(こども)の主人公。
恐らくはかつての関西地区である三百番台のエリアから、二年前の両親の死を契機に引っ越して来た関西弁娘。
美緒曰わく「バッタ人間1号(強制)」
現在では法律違反で走れない、燃料式のバイクを譲り受け趣味でレストアしていた。
本人は気づいていないが情報より体験を、通信より顔を突き合わせての物理接触(リアルコンタクト)を好む昔気質。
◆佐倉雛子(さくらひなこ)
「死にません。死ぬことは……」
本作のヒロイン。
美緒曰わく、お葬式娘改め、毒娘。
今で言うゴス調の服を着た人形の様な娘で、聡明、且つ卓越した卜占の技を持つ。
前作でも未来予知かと紛うばかりの、占いにより仲間達を導いた。
「神崎」の血を引く。
◆橡兜児(くぬぎとうじ)
「ああ。俺にもな、大昔友達がいたんだよ。たった今、そいつのことが少し解ったんだ」
大人の主人公。
前作の首謀者と敵対するも、結局は少女達に救われる事になった冴えないおっさん。
自分を犯罪と向き合わせる契機を与えた「親友」霧島タクヤの影を追う中で、再び少女達と共に事件に巻き込まれる。
◆牧野葉月(まきのはづき)
「だから……助けられないかな」
牧野県議の養女で、仲間達では最も優しい性格のお嬢様。
前作の主人公で、本作では前線にこそ出ないものの雛子の奪還作戦をバックアップする。
◆神埜歩未(こうのあゆみ)
「その人を僕は殺しました」
純化されたけものの様な娘。
またの名を忌避すべき狼(ルー=ガルー)。
天性の殺人者だが、その行為は殺意や衝動とは無縁である。
前作の時点では自らの行為を鑑みてか仲間達に背を向けていた彼女だが、少なくとも美緒と葉月には心を開いていたようである。
◆都築美緒(つづきみお)
「手前六本、対岸十本。それで通過可能だ。行くぜええ。勝利のV3!」
世界レベルの天才で、歩未をも超える作中最大のチート女児。
科学天才、国語赤点、美術落第、一般常識皆無、精神レベル子供のガキ大将の様な性格で、面倒見の良さと興味本位により何処までも突っ走る(※榎木津を小柄な女の子にして腕力の替わりに科学を与えたキャラクターと思えば宜しい)。
大昔のムービーコンテンツが好きで、特に特撮関係を好む。
前作ではカメカイジューにハマっていたが、今回はバッタ人間にハマっており、自らは「2号」を自称した。
彼女が作成した「カメ三号・ヴァージョン3」は見た目はただの銃だが、プラズマ兵器とハッキング機能、座標測定もこなせる万能兵器である。
……劇中で、割とシャレにならない消費文化への皮肉と衰退を予言した台詞を言っている。
◆麗猫(レイミャオ)
「配偶者としてはどうなのか知らないよ」
仲間達では唯一人の未登録住民で、巧夫を極めたチャイナ娘。
クールで長身……何よりも真っ直ぐ。
美緒とは幼なじみ。
◆不破静枝(ふわしずえ)
児童カウンセラーで、少女達の担当だったが現在は休職中。
共闘した橡とは、親子程の年齢差ながら微妙な関係(?)にある。
橡の依頼を聞いた事により、矢張り彼女も事件に巻き込まれてしまう。
◆秀朧(シュウロウ)
未登録住民の顔役で闇医者。
◆宋冲(ソウチュウ)
未登録住民の若者で、グループを束ねる。
実直な性格ながら直情径行気味にある。
◆作倉遼(さくらりょう)
神崎ケミカルの研究員で雛子の兄。
雛子同様に、祖父より「毒」を引き継いでいる。
◆小山田
全国統合警察機構公安部の警部で、神崎ケミカルを調査する一方で、SVCビルの騒動に関わった人間を見張っていた。
この時代の人間としては珍しく髭を生やしているが、それは自らの過去に起因する行為である。
【余談】
主人公の来生律子は、前作の“ただの被害者(未遂)”ポジションからの大抜擢となった。
……一応、本書から遡る劇場アニメ版『ルー=ガルー』にて出番が増やされていたが、それが契機かどうかは不明である。
それから二人は、
死ぬまで幸福な追記修正をして暮らしたのです……。
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