中央の軍は核都市国家ごとに配置され、特色も豊かであるため統一された制式軍装、というものはない。
が、それぞれの都市国家ごとの特徴的な装備というものはあるので、それを見ていくこととする。
ヒュームが中心のアルチュカリドやダーミアンなどは王国の制式軍装に準ずるものが多いが、その中でもアルチュカリドの重装騎馬兵隊は王国にはない装備で身をかためている。
まず、アルチュカリドの重騎馬兵は槍斧や剣斧を好んで使う。この武器を扱うのに両手を使うため、アルチュカリドでは手を使わず、脚だけで馬を御して初めて一人前の騎兵と認められる。
こうした戦術が発達したのは、アルチュカリドが想定する仮想敵が山越えをしてきた軽歩兵を平地で迎え撃つという思想によるものであろう。
またウィンザーミアの猟兵たちは戦鎚を好む。
ドワーフの膂力で振るわれる上に、鎚は板金鎧の上からでも殺傷ができるよう尻側には鋭い突起を備えているものが一般的で、この突起が金属板をも貫いて傷を与えるのである。
一方ロウガンダルクのツリーフォークは多くは棍棒で武装している。
そう言うと聞こえはいいが、ひどいものはその辺りに生えている木を力任せに引き抜いて棍棒と称しているだけの粗末なものもある。
だが、その大質量の前には鎧や盾による防御など役には立たないと言っていい。
中には、金属の頭をかぶせて凹凸を設けたものを用意しているツリーフォークもいるため、戦では大変な脅威となる。
また、鉱山街ウィンザーミアを近くに持つナーラロゥでは弓と言えば鋼を用いた鉄弓であり、矢じりも全て鉄製である。
地理的に近いナーラロゥとウィンザーミアは古くから相互補助の関係にあり、軍事面でも深く協力してきた。
仮想敵としては山に棲む魔獣やゴブリン、あるいは山越えをしてきた帝国兵であるため、ウィンザーミア兵が前面に出て、それをナーラロゥのエルフ弓兵が援護するというのが伝統的な配置である。
鎧についてだが、これも各都市国家ごとに大きな特色がある。
アルチュカリド重騎馬兵は全身を覆う金属鎧を着込み、兜も全面を覆う作りになっている。
籠手や具足も全て金属製で、鎧下には鎖帷子を着込む。
鎧には焼き入れをした鋼を用い、凹凸を打ち込むことでより頑丈になるように作られたものを用いている。
また、その上に腕に固定する小型の円盾が採用されている。
これは矢除けのために、籠手よりは安心といった程度の効果で、装備しない者も多くいる。
また、中央府の歩兵隊は約三分の一が盾兵である。
十分な厚さを持った金属の歩兵盾は竜の吐息や矢の雨から味方を守り、拠点を守る壁となる。
元来中央府は王国の前衛基地としての役割が強かったため、こうした思想が受け継がれたのだとされる。
ウィンザーミアでは鉄兜に胸鎧が中心である。
胸鎧と言っても、鉄板をそのままぶら下げたような簡素なものも多く、手の込んだものは凹凸が打ち込まれ、強度を高めている。
また、鉄兜も全面を覆うようなものではなく、鉄帽とでも呼ぶべき作りになっている。
こうした、軽量かつ強度の高い装備が戦場を駆けまわるドワーフ猟兵というものを作り上げたのだと言っても過言ではない。
また、ロウガンダルクのツリーフォークは木束鎧とでも呼ぶべきものを身に着ける。
これを胴回りに着込む他、肩には大袖と呼ばれる、横に渡した木を撚った針金で結び留めた者を着ることが多い。
エルフは革のつなぎに、肘や膝には当てが縫い付けられたものを好んで着込む。
また、胸などには革鎧に使われる軽量かつ柔軟な当てをつけており、これは帝国兵の使う、重さで斬る剣などには効果的な防御となる。
それに加えて、弓を好むエルフは弓袖と呼ばれる革製の籠手を好んで使う。
主に弓を引く右手だけを肩口まで覆う作りになっていて、左肩には瓶に詰められた毒を保持する調帯が備えられている。
併せてツリーフォークの物よりは小型の大袖を着け、肩の瓶を保護する者もいるが、それは個人の好みである。
また、攻城兵器などを扱う工兵隊は、中央の都市国家はどこも有していない。
運用に大規模な工兵隊を必要とし、また費用もかかる上、基本的に他国を侵略する意図がなければ必要とは認められないためである。
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