王国と境を接する、魔導師や魔導学者が集まる街がダーミアンである。
魔導学の研究では王国や帝国が一歩先んじているが、大都市圏ではなかなかできない大規模な蒸気機関の研究・開発が可能な広い土地とそれを許す風土がある。
領内で魔鉱石を産出することからも、後進ではあるがここでの研究には見るべきものがある。
元々この街は王立魔導研究所や魔導学院の設立にも尽力してきた王国貴族のヴァイン家が王国から拝領した土地であり、魔術研究に力を入れる下地は十分にあったと言える。
この地の軍もヴァイン家を筆頭に、実に八百年ぶりに騎士団に新兵科を設立した「奇才」カルダン・ダルモントを排出したダルモント家、長年赤の魔導騎士団を率いてきたシェリザイの生家であるチェンバール家、王国律令に縛られないこの地で代々黒の魔術の研究を続けるオサリバン家などに代表される、多くの有名な魔導師を出す土地柄、魔導猟兵や小規模ながら魔導騎士団を有し、そして王国でも新設されたばかりの魔砲兵と、新旧の魔導兵の歴史を見るようである。
その扱う魔術も実に様々で、黒の魔術を使う魔導騎士が正規軍に編入されているのもダーミアン魔導兵の特徴であろう。
この地には王立魔導騎士団を退役した者が教鞭を取るダーミアン魔導学校も設立されており、敢えて王立魔導学院ではなくこの地で学びたいという魔導騎士志望者も後を絶たないため、学生のための寮も併設され、遠くは東域からも留学生がやってくる。
そんな学生街を少し離れると中央領らしい牧歌的な風景が広がっている。
ダーミアンは王国に魔導師の卵だけでなく、家畜や綿・麻、食料品などの生活必需品を卸すという役割も持っている。
特にこの街はシャルーヤからも近く、南域産の乾燥果実を輸入して漬け込み酒や小酒などを作り、再度輸出している。
ここで作られる酒類は西方諸島や王国でも人気が高く、木苺や柑橘類を使ったものが好まれる。
王国ではあまり好まれず、日陰者のサンダルカスだが、この地では特に彼の信仰が根強い。
古くからサンダルカスの神殿は王国の端にありアルトリオよりこの地に近いことも原因であろうが、ダーミアンではサンダルカスは生命の起源を作った神として崇められている。
それもあって、この街には黒の魔術を規制する法がなく、研究も自由に行うことができる。
王国が黒の魔術を禁止するときに、多くの魔導師が反対したが、この街で行われる研究までは規制を行わないという裏取引があり、渋々了承されたという説もある。
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