ご存知のようにISOを上げれば、暗い場所でも写真が撮れるのですが、それと引き換えにノイズが多くなります。ISO200で撮った写真と、ISO12800で撮った写真を見比べれば一目瞭然ですね。
ISOを上げてどれくらいノイズが多くなるかは、カメラボディによります。いろいろな要素が絡みますが、その大きな部分を占めるのが、センサー素子のサイズです(センサーのサイズではなく、1ピクセルに対応する素子が占める大きさです)。センサー素子が大きければ、各ピクセルのフォトダイオードがより多くの光を受け止めることができ、その結果として分散が小さい出力ができます(もう少し正確には、各ピクセルのフォトダイオードへの入光率で量で決まりますので、入口部の広さや、フォトダイオードに至るまでの光の透過率にもよりますね)。
要するに、同じセンサーサイズなら、画素数が多ければ多いほどノイズが多く、少なければ少ないほどノイズに強いセンサーということになります。例えば、同じフルサイズセンサーでも2400万画素のセンサーの方が4800万画素のセンサーよりノイズに強いわけです。そして、同じ2400万画素のセンサーでも、APSサイズのセンサーより、フルサイズセンサーの方が1ピクセル当たりの面積は大きく(ざっくり2倍)なるので、フルサイズ機の方がノイズに強いと言えます。
また、最近多くなってきた裏面照射センサーは、その構造から光が多くセンサーに導かれるので、表面照射センサーよりノイズに強いと言えます。
さてさて、ライブ撮影について考えると、ISOをどこまで上げるか? という点がよく話題になります。ISOの値とノイズ量は上で書いたようにカメラボディによって大きく異なりますので、一意的な答ありません。そうなると、もう「写真をどう使うか」、そしてその使い方においてあなたが「どこまでノイズを許容できるか?」という感覚的なところによると思います。ライブ写真の使い方としては、Twitterに載せる、壁紙として使うというのが多いかと思いますが、プリントするという方もいますよね。Twitterはアップロードした時点で画像は圧縮され、縮小されますので、多少のノイズは目立たなくなります。逆にB2やA1サイズのポスターサイズに印刷して壁に貼りたい、となると、できるだけノイズが少ないほうが良いですね。
自分が今使っているカメラ(富士フィルムX-T3)はノイズにそこそこ強いこともあって、Twitterに載せる写真はISO12800までは許容できると思っています。上の2枚はどちらもISO12800です。しかし、B2、A1サイズの大きなプリントをするとなると、ISO3200くらいで撮りたい、といったところでしょうか。
ISOの設定に関しては、低いに越したことはないので、自分はISOをAUTOにしています。ISOを固定すると、より低いISOで撮れる場面でも設定したISOで撮ることになるので、それを避けたいのです。以前はISOをAUTOにできるカメラは少なかったのですが、最近のカメラにはよく搭載されていますよね。シャッター速度も絞りも固定し、ISOで露出量を自動設定してくれるモードです。自分の場合はシャッター速度を1/500秒に固定し、絞りは開放にした状態で、ISOは最大12800までの範囲でカメラが自動的に決める設定にしていることが多いです。その瞬間が明るければ、低いISOで、暗ければ最大12800までISOを自動的に変えてくれて、とても便利です(ISO12800でも1/500秒で撮れない場合はシャッター時間が長くなります)。
ここからは長い余談ですw
ISOってフィルム時代はフィルム毎に決まった値でした。つまりISO100のフィルムはISO100でしか撮れません。当たり前のことですが、今思うととても不便ですね。しかも、ISOが高いフィルムでもISO3200までで、そのISO3200のフィルムで撮ってみたらすごくノイズが多くてがっかり、なんてこともよくありました。
デジカメのCMOSセンサーは、フォトダイオードが捉えた信号を増幅しているのですが、その増幅率を変化させることで、さまざまなISO値を実現しています。大きく増幅すれば高いISO、少しだけ増幅すれば低いISOというわけです。増幅と言っても、実際にフォトダイオードの隣にあるアンプで増幅する(アナログゲイン)のと、A/D変換後に算術的に増幅する(デジタルゲイン)があり、さらに複雑なのは、最近のセンサーではフォトダイオードの横にあるFD(Floating Diffusion)の容量が動的に変更できる(といっても2段階が多い)ようになっていてとても複雑です。どこでFD容量を変化させ、アナログゲインとデジタルゲインのさじ加減をどうするかは、各メーカーのノウハウや思想的なところが絡んで難しい(ある意味面白い)ところです。ちなみにFDについてですが、FD容量を増やしておけば、低ISO時にも白飛びしにくくなり、逆にFD容量を低くしておけば高ISO時にも信号を十分な電圧として取り込め、その結果低ISOから高ISOまで対応できるようになります。
ところで、最近のイメージセンサーの高ISO対応には目覚ましいものがありますが、CMOSセンサーである以上限界があります。その原因の1つがRTN(Random Telegraph Noise)で、これは避けられないものです。そして、これがある限り「どこまでISOを上げてもノイズがない」という理想的なセンサーは作れない、ということのようです。いつかイメージセンサーはCMOSから違うもの(素材、製法)になって、よりノイズに強いものになるのかなぁ。。。なんてそんな未来を想像したりしてます。
余談ついでに、もう1つ。ISOの数値と実際の感度って比例していると思われている方が多いと思います。ISO800とISO1600では、ISO1600の方が感度が2倍高い、あるいは同じ光量で同じ絞り、同じシャッター時間で撮ったら、ISO800よりISO1600の方が2倍明るく写る。一見正しそうですが、実際には違います。ネットを調べると各ISOに対して実際の感度をプロットしたグラフが見つかったりしますが、どれも見ても高ISOでは特に比例線に比べてけっこう垂れてます。つまり、ISOの数字から期待されるより、実際の感度は低いです。別にインチキだとケチをつけるつもりはないのですが、知っておいて損はない情報かなと思います。もし興味があれば、ご自分のカメラがどんな曲線なのか探してみると良いと思います。あるいはPCに詳しい方は自分で実験してみるのも良いかもしれませんね(と書きながら自分はやったことないですがw)。
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自分もスポット測光ですが、AEロックはしてないです。で、ファインダー覗きながら結構頻繁に露出補正してます。
どちらかと言うと白飛びが嫌なので、カラーで撮るときは-1から+1/3の範囲で調整し、露光が多少足りないのはPC上で上げて補う感じが多いですね。モノクロだともう少し広い範囲で動かすような感じです。
光量が頻繁に変わるライブ撮影での露出は難しい問題ですね。。。
自分もISO AUTOで撮る事多いですが測光はどうしていますか?自分はスポット測光で顔に露出合わせてAEロックして撮るのですが、これだとラフに撮ると(AEロック忘れたり)白い衣装や髪に合わせてしまい露出外すのが難点です。
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