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サガシリーズ (Sa・Ga series) はスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売されたコンピュータRPGのシリーズの総称。
サガシリーズは、1989年12月13日、ゲームボーイ初のRPGとして発売された『魔界塔士 Sa・Ga』に端を発する。『時空の覇者 Sa・Ga3』を除き、河津秋敏のチームによる制作(Sa・Ga3はスクウェア大阪支部、藤岡千尋のチーム)。2023現在、シリーズは9作(『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』を入れると10作)を数える。機種が変わるごとにタイトルを変更し、その都度タイトルでは連番を数え直す特徴がある。
『魔界塔士 Sa・Ga』はコンピュータRPGに新境地を開き、ゲームボーイ初期のキラーソフトの一つとなった。スーパーファミコン時代には、同社の看板ゲームであるファイナルファンタジーシリーズ(以下、FFシリーズ)と肩を並べるほどの人気を誇ったシリーズであった。
FFシリーズとは同じRPGであっても、ゲームシステムはかなり異なる。もっとも特徴的なことは、『時空の覇者 Sa・Ga3』を除き、FFはもちろん、多くのRPGで採用されている「レベル+経験値による成長」が無いことである。
また、FFシリーズが一本のストーリーを主軸にゲームが展開されるのに対し、サガシリーズはストーリー性がやや薄く、全体的な世界観や、ゲームシステムを重視した作りになっている(唯一の例外がサガ フロンティア2。本作は非常にストーリー重視で、ゲームの大部分でプレーヤーがシナリオを眺めるだけで終わるイベントが多い)。ストーリーの大筋は変わらないが、自由に世界を行き来して自分の好きな順番でストーリーを進める事ができ、特にロマンシングシリーズはシナリオの分岐が多く最もストーリーの自由度が高い。ロマンシング サ・ガ2以降の戦略性が高い戦闘シーンなど、FFシリーズよりもゲームシステムに特化した作りになっている。また、シリーズ間のストーリーの繋がりは、GB版にわずかに見られる程度で、SFC版以降は全くない。
当初のイメージイラストは藤岡勝利が担当した。『ロマンシング サ・ガ』からはイラストレーターの小林智美を起用し、キャラクターデザインなどを依頼。アニメ調に近い藤岡から、繊細な小林への交代は、サガシリーズのイメージチェンジに一役買った。アンリミテッド:サガは社内の直良有祐がデザイン、小林はイメージイラストとしての参加となった(ロマンシング サガ -ミンストレルソング-は直良をアートディレクターとしているが、チームによるデザインと説明されている)。しかし、小林によるイラストがファンの間に定着しており、他の人物によるデザインについては批判も多い(GB版のワンダースワンカラーリメイクでも、イラストは藤岡ではなく社内の板鼻利幸が担当したため批判が見られた)。
主人公及び味方キャラクターについては、キャラクターの総合的な強さを示す「レベル」という概念がない(ただし『時空の覇者 Sa・Ga3』は例外。これ以外でも、モンスター種族の存在する作品では、変身後の強さを決めるためにモンスター用のレベルが設定されており、高いレベルほど強いモンスターに変身できる。しかし経験値を積めば上がるという物ではない)。レベルアップに伴い各種パラメータが一斉に上がるのでなく、戦闘終了時にときどき個々のパラメータが上がる。これは使った力が上がるので結局は部分レベルアップといえる。ただし、一定の経験値を積めば必ずレベルが上がるというわけではないため、成長はある程度偶然に左右される。また、敵については、味方の成長や能力取得、閃き(詳細は後述)の確率を判定するためにレベルが設定されている。当然、レベルが高い敵ほど味方を成長させやすい。
敵は全体的に強めに設定されており、一撃死もよくある。戦うごとにセーブ、死んだらリセットというリセット主義に拍車をかけたところは問題である(もっとも、リセットするまでもなく一撃で全滅させられることも多い)。特に『ロマンシング サ・ガ』『ロマンシング サ・ガ2』では戦うか逃げるかに関係なく、戦闘回数に応じて敵が強くなって行く(サガシリーズ#ロマンシング サ・ガ以降に共通参照)ため、逃げるよりは全滅してやり直した方がましな仕様になっているせいもある。ただし、初期のGB版では他のコンピュータRPG同様、敵の強さは地域ごとに固定されていた。そのため先に進まず能力強化に専念することで、敵が強すぎて身動きが取れないという事態は避けることができた。
また、特定作品では、戦闘自体では成長しないキャラクターもいる。『魔界塔士 Sa・Ga』などに登場するモンスター種族はより強い敵の肉を食べて(『サガ フロンティア』ではその能力を吸収して)別のモンスターに変身することで、同じく魔界塔士における人間などは成長用アイテムを使用することで、『Sa・Ga2 秘宝伝説』のメカなどはより強い武器・防具などを装備することで成長する(また、『サガ フロンティア』ではプログラムをインストールすることで対応する技を習得する)。いずれも、経験値とレベルによらない成長である。
コマンド体系上単に「たたかう」という概念はなく(あっても「にげる」の対義語としてのみであり直接攻撃の意味ではなく)、武器、魔法、技、術がほぼ同一線上に並んでいる。作品によってはいわゆるMPの概念もない。そういった関係上「やきつくす」「おしつぶす」のような、もはや特定の技名とは呼べないような攻撃方法が混ざっているのも特徴。
多くの敵には弱点となる攻撃が設定されており、ボスは明確な弱点こそほとんど無いが、他の作品では効かないように設定されている即死攻撃が効いたり、能力低下や状態異常の魔法や能力が効くように設定されることが多い。そのため、力押しでクリアするのはかなりの時間が掛かるが、敵の弱点を把握すると難易度が大きく下がる。
『ロマンシング サ・ガ』以降では、モンスターがフィールド上を移動する姿が見えていて、それに主人公が接触すると戦闘に突入する所謂シンボルエンカウント方式を取っている。前作までも一部のダンジョンなどでシンボルエンカウントは存在したが、通常はFFシリーズやドラゴンクエストシリーズなどと同様、フィールドを移動中にいつ敵に遭遇するか分からないランダムエンカウント方式を取っていた。
より大きな特徴が、戦闘回数と連動する敵の強さのシステムの導入である。フリーシナリオの導入に伴い、先の地域に進むほど強いモンスターが出現するのではなく、戦闘回数が多いほど強いモンスターが出現するようになった(次項戦闘とフリーシナリオ参照)。しかし、格下の相手と戦い安全に鍛える手法が通用しなくなり、さらに当初は逃げても戦闘回数に加算されたため、逃げまくっていたら初期装備のまま後半の強力な敵が出現し倒すことすらできなくなってしまい、プレイを放棄するという話がよく聞かれた。
『ロマンシング サ・ガ3』以降では、逃げ出した時は回数にカウントされなくなり、多少楽になった。しかし、敵シンボルはそのままなのでまたすぐ戦いを挑まれたり(『ロマサガ3』)、敵シンボルは消えるがパーティー人数に応じて誰かのLPが減ったり(『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』)、そもそも絶対に逃げられなかったり(『サガ フロンティア』、『アンリミテッド サ・ガ』)する。つまり、戦いたくなければうまく敵シンボルを避けなければならない仕組みだが、敵も追いかけてくるためかなり難しい。
また、術法(ロマサガ以降の魔法の呼称、「術」と呼ぶ作品もある)の威力は低めになった代わり、自分の能力を上げたり敵の能力を下げる等の補助系術法の効力は強化された。状態異常の種類も増え(そのターンの行動が無駄になる「スタン」、無差別に攻撃する「混乱」と敵に魅了されなすがままにされる「魅了」の細分化など)、よりこれらのテクニックの必要性が上がった。そのため、力押しで進むプレイヤーにとってはより難しくなったと感じさせる一方、弱点を補強しつつ必要な補助系能力を揃えれば、一人旅でのクリアも不可能ではないため、熱心なファンにはより一層のめり込ませる内容となった。『ロマンシング サ・ガ2』以降では、複数の術法を掛け合わせ、より強い威力を発揮させる「合成術」もある。
特徴的なのは、武器・体術(本来は柔術の異称だが、本シリーズでは素手での格闘技全般を指す)に存在する「技」である。ロマサガでは、武器などを使い込むに従ってより強い技を覚えて行き、最終的にその武器などの奥義を覚えることのできる方式であった。熟練度が増すにつれ威力が上昇、技を使える回数が増えて行くため、単純に強い武器などを装備すればよいと云うものではない。
ロマサガ2からはこれを元に、戦闘で武器などを使い続けて行くことでランダムに新しい技を閃く「閃き」システムを導入。熟練度を上げれば必ず覚えるものではなくなった代わり、大雑把な武器などの分類さえ揃えば、一つの武器で多彩な技を使いこなせるようになった。特定の技を使った時のみ閃く応用技、特定の武器のみで使える装備固有技もある。また、敵から特定の技を受けた際にランダムでその技の「見切り」を閃くようになった。見切った技は、マヒや眠り状態などの身動きが取れない状況で無い限り、その技を全く受け付けなくなる。閃きや見切りを覚えた瞬間、キャラクターの頭上に電球の光る演出は、以降の作品でおなじみとなった。ロマサガ2以降の戦闘システムは、小泉今日治が主に担当している。
さらに、戦闘中「たたかう」コマンドが無く、持っている武器を選択して攻撃する画期的なシステムが導入されている。「にげる」に相当するコマンドは特定の操作で出現するが、サガフロンティア、アンリミテッド サ・ガは存在せず、戦って勝つか全滅するしかない。
なお、戦闘後にはHPが自動的に回復されるため、宿屋などでの回復を行なう必要がなく、スムーズに戦闘が進められる点も特徴の1つである。その代わり、敵は全体的に強くなっている※。
※ロマンシング サ・ガ1のみ、HPの自動回復はないので宿屋やアイテムや術法などによる回復が必要である(戦闘中にHP0になったキャラは戦闘終了後HP1に回復している)。その代わり、ロマンシング サ・ガ2以降は「LP」が設けられ、HPが0になるたびに減って行き、0になると本当に死んでしまう(あるいはパーティーから離れる)ようになっている。ロマサガ2では回復手段が限られていたが、3以降は宿屋に泊まれば回復するようになり、死ぬ可能性は大きく下がった。このLPの概念は魔界塔士Sa・Gaにおける「ハート」の概念に基づいている。戦闘に関連して、資金稼ぎが難しくなったことも特徴である。通常、敵を倒すと資金を入手できるが、(普通に魔物が金などを持っていては不自然であるとの考え方から)ロマサガ以降では入手額が少なくなり、全く金を持っていないモンスターも増えた。代わって、イベントクリアの報酬や、敵が時折落とすアイテムの換金、宝箱などの探索が大きな収入源となっている。フリーシナリオの特性上、先の町に進めば強力なアイテムが売られているとは限らないため、計画的に使わないとあっという間に資金が尽きてしまう。
『サガ フロンティア』で導入された要素として、重要なのが「連携」である。これは、対戦型格闘ゲームの連続技をRPGで再現しようとしたものである。特定の技や術で連続して攻撃すると、連携が発生し、2人目以降の攻撃の威力が上昇する(1人で連携の効果があるものもある)。敵の攻撃が挟まると、そこで連携は打ち切られるため、敵味方の行動順序を頭に入れて連携を組み立てる必要がある。成功すれば大打撃を与えられる上、通常はその敵には通用しない技・術が効くことになる場合もあるため、活用次第でかなりの強敵にも勝つことができる。もちろん、敵が連携してくる場合もある。
「連携」時は技・術名が繋げられて表示されるが、一部は省略された表示となり、繋がりによっては珍奇な名称になることもある。
通常のRPGでは、特定の状況を揃えることでイベントが発生する(「フラグが立つ」)。そのため、プレイヤーが条件を揃えない限り、いつまでも事態が進行しない場面がよく見られる。
ロマサガ以降のシリーズ作ではこれに加え、時間軸の概念を取り入れることで、主人公の行動に関係なく、勝手に事件が起こり、進行して行くようになっている。HPや戦闘回数(後のシリーズでは勝利回数、あるいは勝利ごとに敵の強さから算出されるポイント)に従ってイベントが発生したり、勝手に進行することで、時間の経過を表現している(一部は特定のイベントをクリアすると発生する連鎖イベントもある)。また、多くのRPGでは敵の強さを地域で固定しているため、自ずと序盤から行ける場所、終盤になって行けるようになる場所も固定されてしまう。しかし本シリーズでは、どこへ行っても実力相応の敵が現れ、ゲームのたびに違うルートを通ってもよいようになった。
戦闘回数などが規定を超えると、勝手に終わってしまうイベントもあり、イベントクリアには細心の注意を払わなければならない。敵の弱点を把握しなければ、規定の回数内で戦闘を済ませることが難しいイベントもある。また特定の主人公しか体験できないイベントや、同じ時期に複数進行するイベントもあるため、複数回のプレイを前提としたバランスと言える。その一方で、イベントの多くはクリアしなくてもゲームクリアができなくなるというものではなく、イベントをわざと避けたり、悪行を働いたり、受けを狙った選択肢を選ぶこともできる。もちろんその場合多くは不利な結果になるが、クリアそのものができなくなることは少ない。作品によっては、悪事を働いた方が有利になることすらある。どのような途を採るかが、プレイヤーの手に委ねられているのがフリーシナリオの特徴である。
GB版では、他のコンピュータRPGと大差ない。基本は徒歩だが、場所によってグライダー、バイク、船などの乗り物が登場する。海賊の多い地方では、船の代わりに浮島(海を移動できる島)を探して乗るなど、特殊な乗り物も存在する。また、『Sa・Ga3』では、戦闘機「ステスロス」がストーリーに大きく関わっている。
ロマサガ以降では、基本的には街やダンジョンの間を行き来するのにフィールドを歩かない(フィールドを通過しないと行けない場所もある)。街などから出ると、その地域の街などの場所を示した地図(ワールドマップ)が表示され、行きたい街などを選択すると、そこに瞬時に移動できる。道に迷ったり雑魚との戦闘にわずらわされることがない。ただし、最初から全ての街やダンジョンへ行ける訳ではなく、話を聞いたり、イベントをクリアすることで行けるようになる。街やダンジョンの中は、一般的なRPGと同じ様にキャラクターを操作して移動する。
GB版サガシリーズは、当初は植松伸夫作曲であった。「涙を拭いて」は名曲と評価が高い。『Sa・Ga2 秘宝伝説』から伊藤賢治も作曲に加わった。『時空の覇者 Sa・Ga3』のみ、笹井隆司が主な作曲を担当、藤岡千尋も作曲している。サガシリーズでは植松や伊藤の影に隠れがちであるが、特に笹井の曲は決して両者に劣るものではない。
ロマサガシリーズでは、ほぼ全てが伊藤の作曲となった。ロマサガシリーズ共通のテーマ曲は、ファンの間で深く愛されている。伊藤はロマサガでの成功によって爆発的な人気を獲得し、ファンの間では「イトケン」という愛称で親しまれている。ただし「涙を拭いて」(ロマサガ1、2に登場)と「伝説は始まる」(ロマサガ2に登場)の二曲は植松伸夫作曲で、『Sa・Ga2 秘宝伝説』からの再登場である。伊藤は後続の『サガ フロンティア』でも音楽を担当した。初代ロマサガでは、ゲーム内の酒場にいる吟遊詩人に話しかけると、ほとんどの音楽をランダムに聞くことができる。ただし、「涙を拭いて」は酒場では聴くことができず、聴くにはある特定の状況が必要。
『サガ フロンティア2』からは濱渦正志作曲。旧来の伊藤の曲に慣れ親しんだファンからは作曲者交代に対する不満が上がったが、濱渦の曲も別個に高い評価を得ている。特に『サガ フロンティア2』の曲構成はゲーム作品としては珍しいものであり、プレイヤーに強い印象を残している。
初代ロマサガをもとにした『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』では、再び伊藤が復帰し、ファンの不満を解消した。なお、ミンサガでは「メヌエット」の作曲は山崎将義。この他、植松の「涙を拭いて」が再々登場し、さらに一部の曲で関戸剛が作・編曲に加わっている(関戸作曲・伊藤編曲、伊藤作曲・関戸編曲のいずれかで、関戸単独の曲はない)。
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