大平透

ページ名:大平透

登録日:2022/12/03 Sat 12:59:00
更新日:2024/06/27 Thu 13:03:09NEW!
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大平 透(おおひら とおる、1929年9月24日 - 2016年4月12日)は、日本の声優、俳優。最終所属は81プロデュース。


大平プロダクション代表、日本俳優連合副理事長も兼任していた。


目次



◆生涯

1929年9月24日、東京都大田区に生まれる。父の仕事の関係で5歳までをインドネシアのジャワ島で過ごした後に帰国。戦時中は疎開を兼ねて四国などに移住していた。


クリスチャンだった父の勧めにより、日本ルーテル・アワー*1のオーディションを受け合格、専属アナウンサーとしてデビューする。明治大学卒業後、フリーランスとなってからは、開局して間もないニッポン放送でアナウンサーの活動と並行する形で、ディレクターやプロデューサーとしてドキュメンタリー番組を制作していた。


1955年に開局したラジオ東京テレビ(現:TBSテレビ)傘下の「TBS劇団」へ入団、フライシャー・スタジオによる短編アニメシリーズ「まんが・スーパーマン」で1人5役を生吹き替えで演じた。この「まんが・スーパーマン」は日本のテレビ放送で初めて日本語吹き替えが行われた作品でもある。翌年には実写版「スーパーマン」で主演・ジョージ・リーヴスの吹き替えを担当した。


1958年にTBS劇団が解散となりフリーに転身、1963年に声優のマネジメント業を行う「有限会社大平プロダクション」を設立。さらに1982年には大阪に「大平透声優ゼミナール」を開校*2(1999年に閉校)し、声優の養成にも力を注いでいた。


かつては「スーパーマン」などのシリアスな役を演じることが多かったが、この間に「恐妻天国*3」のフレッド・フリントストーン役や「ハクション大魔王」のハクション大魔王役などギャグ作品の主役に次々と抜擢されていった。
知名度の高い作品で主要キャラクターを演じる機会に恵まれていたことについては、「私はラッキーだなと思います」「来る仕事来る仕事みんな当たっちゃう」と本人も晩年のインタビューで自負していたほどである。


日本における声優業界の黎明期から活動していた人物の一人であり、氏のコミカルなキャラクターから悪役までこなす演技の幅は高く評価され、2007年には「第1回声優アワード」で功労賞を、2013年には「第7回声優アワード」で「シナジー賞(タツノコプロ50周年)」*4、「東京国際アニメフェア2013」では第9回功労賞を受賞した。


2014年に81プロデュースに移籍。翌2015年頃から体調を崩しがちになり、同12月からはリハビリのため声優活動を休養。


2016年4月12日、肺炎により86歳で死去。同6月20日には献花式が都内で行われ、「笑ゥせぇるすまん」の原作者・藤子不二雄Ⓐ先生の他、声優関係者ら500人が出席し、多くの功績を残した大平氏を偲んだ。



◆特色

日本のアニメ・吹替草創期から積極的に活動してきた大平氏。前述の通り老若男女に広く知られた有名な役を多く演じてきたこともあり、彼の声を聞いたことがない人はまずいないと言っていいだろう。


低く野太い独特の声色が印象的で、「ハクション大魔王」の大魔王や「ミッキー&フレンズ」のピート、「ザ・シンプソンズ」のホーマー・シンプソンのようなギャグキャラクターから、「STAR WARSシリーズ」のダース・ヴェイダーや「マグマ大使」のゴアなどの冷酷な悪役まで幅広い役を演じた。
スーパー戦隊シリーズ*5や「メタルヒーローシリーズ」5作品などナレーターも多く担当した。


その独特な低い声が最もよく知られているが、「恐妻天国」の主人公・フレッドや「おらぁグズラだど」のグズラなどはその情けないキャラクターを表現するために高い声色を使って演じている。



◆人物像・エピソード

身長は180cmと、昭和一桁世代としてはかなりの長身、なおかつがっしりとした体躯の持ち主だった。
アテレコ黎明期はスタジオも狭くマイクも一台だけというのが普通な時代で、マイクを奪い合いながらの収録は大柄な大平氏が現場にいると尚の事苦労したらしい。*6
ザ・シンプソンズ」ファンクラブの関係者は、初めて氏と対面した際に「マフィアのボスみたいな人が来た…!」「『ダース・ヴェイダー』そのもののオーラがある」と恐縮してしまったとか。


ラジオアナウンサー出身ということもあり「声優」という呼称に抵抗は持っていなかった。その分「声優」という肩書きには人一倍強いプライドを持っており、いわゆる「芸能人声優」には批判的な姿勢を示していた。
また、かつて「声優」の地位が非常に低かったアテレコ黎明期には「差別的とも言えるほど低いギャラ」「アテレコなんて日本語が喋れればその辺のバスガイドだってできる」といった心無い扱いや発言を経験し、腹に据えかねる思いだったと後年語っている。


デビュー当初からプロデューサーとして活動していた経験から、演技の質に対しても厳しい目を向けることがあった。
ある中堅声優が手抜きの芝居をしたと判断すれば「お前さっき手を抜いただろ!」と叱っていた他、「俺は喪黒福造の調子でしかしゃべれないんだ」「お前ら脇を固める奴らがフルスイングしてくれなきゃいい番組にならないだろう!」と共演者に発破をかけることもあったという。
とある共演声優が昼食時に飲酒していた時には、本人を直接注意せずに番組プロデューサーへ「昼間から仕事せずに酒を飲むような奴とは仕事をしたくない」「そいつか俺のどちらか下ろすよう決めてくれ」と頼んでいた。
「声優」という職業に誇りを持つ氏は、そのような適当に仕事をする姿勢を強く嫌っていたのである。


大平氏の熱意は共演者の仕事に対する姿勢だけではなく、作品そのものに向けられることも多々あった。
「私は声優であり、プロデューサーであり、演出家である」「演者も自ら演出していかないといけない」を信条としており、台本に書かれたセリフで気に入らない部分や改善の余地があると考えた箇所があればその都度総監督らと相談しセリフを変更することがあった。
うるさく修正を求めることから現場のスタッフ間では彼の存在をたびたび恐れられることもあったようだが、「自分が出演した作品はより面白いものとしてヒットに結びついて欲しい」という思いから、疎ましく思われるのを承知の上で進言していたという。
「シンプソンズ・ファンクラブ」ブログには、大平氏が実際にアテレコで使用していた台本が公開されているが、細部にまで至る手書き修正の数々から氏のホーマーや作品全体に対する敬意と思い入れの強さが窺える。


仕事に対し厳格なことから彼と面識の少ない人物からは「恐い人柄」というイメージを持たれがちであったが、実際に氏と対面したシンプソンズ・ファンクラブ関係者は彼の印象について「すごくきっちりされた方」、「丁寧な方で、曲がったことが嫌いでちゃんとしていない人にはきちんと叱ることができる方だった」と語っている。


特撮版「マグマ大使」では、宇宙の帝王「ゴア」の声優として起用されたが、「演技とセリフのタイミングが合わせづらい」という問題が発生し「声優だけのギャラでいいからやらせて欲しい」と自らスーツアクターも兼任することになった。スーツを着ての演技時には大量の汗をかいており、収録の合間には自宅から連れて来た家政婦に冷却や汗拭きをしてもらっていた。
顔出しでないにもかかわらず、「マグマ大使」ファンの子供からは「ゴアだ」と石を投げつけられることもあったとか…。


「ハクション大魔王」をはじめ、タツノコプロ制作のアニメ作品の多くにレギュラー出演していた。タツノコや読売広告社とは親密な関係を持っており、タツノコ作品の収録では「座長」と呼ばれていたり、ある時は「読広の社外取締役」とも言われていた。



ハクション大魔王

「ハクション大魔王」の大魔王の好物は当初の設定では「コロッケ」とされていたものの、「今の子供が好きなものはハンバーグだろう」と大平氏が指摘したことにより「ハンバーグが好き」という設定に変更されたという。


2001年に放送された「ハクション大魔王」の続編アニメ「よばれてとびでて!アクビちゃん」でも大魔王が脇役として登場するが、CSアニメ故に低予算である都合から当初は別のギャラが安い声優をキャスティングしていた。ところがこれに対して大平氏は「大魔王は他の奴にはやらせん!」と待ったをかけ、新人と同ランクのギャラで出演を引き受けた。
「『スーパーマン』の声優」として有名になって以来、そのイメージが定着し過ぎて仕事にも制限がかかってしまった時期、「大魔王」は本人にとって「三枚目」という新たな路線を切り開いてくれた、特に思い入れの強い存在だったことも関係しているのだろう。
演じてきたキャラクターに対する氏の拘りの強さを物語る逸話の一つといえる。



喪黒福造

「笑ゥせぇるすまん」の喪黒福造が自身にとって一番地声に近い声だという。
当初は喪黒の声は熊倉一雄氏が起用される予定であったが、総監督から喪黒役のオファーが出され、喪黒の声を披露した所、原作者の藤子不二雄Ⓐも大絶賛する程で満場一致で喪黒役に起用されることになった。
喪黒のモデルとなったのは親交が深かった大橋巨泉氏であるが、アニメが放送されて以降は大平氏に似てくる様になったと原作者が語っている。



ホーマー・シンプソン

声優とファンの距離感を重んじ、馴れ馴れしい付き合いは好んでいなかったものの、「シンプソンズ・ファンクラブ」の代表と交流を重ねていくうちに氏自らファンを自宅へ招待するようにもなったという。


2007年に公開された「ザ・シンプソンズ MOVIE」では、声優に話題性を狙った有名芸能人を起用したことにより、ファンの間では反対署名などが行われるなど大きな波紋を呼んだ。結果、DVD化の際にはオリジナル声優陣で改めて吹き替えが収録されることが決まった。そこで大平氏は、オリジナル声優復活のために尽力してくれたファンへの恩返しとして「シンプソンズファン感謝祭」を企画、ファンを無料招待したのである。


この時行われたサイン会は、当初大平氏の負担を考慮して抽選形式が予定されていたのだが、対し本人は「それじゃあ不公平」「ある人は貰えて、ある人は貰えないのはとってもかわいそう」と反対、当日の全来場者500人全員への「伝説のサイン会」が実現したのだった。
ファンを心から大切にしていた氏の堅実で義理堅い人柄がひしひしと伝わってくるようだ。
感謝祭はその後も2009年から2013年にかけて5回に渡り開催された。



◆主な出演作品

※「★」はタツノコプロ作品


テレビアニメ

  • おらぁグズラだど(グズラ)★
  • ハクション大魔王(ハクション大魔王)★
  • カバトット(カバ)★
  • かいけつタマゴン(タマゴン)★
  • 科学忍者隊ガッチャマンシリーズ(南部博士)★
  • ポールのミラクル大作戦(ベルトサタン)★
  • 未来警察ウラシマン(権藤透)★
  • おそ松くん(デカパン)
  • 笑ゥせぇるすまん(喪黒福造
  • ONE PIECEガイモン
  • よばれてとびでて!アクビちゃん(ハクション大魔王)★
  • アクビガール(アバンナレーション)★
  • 一発必中!!デバンダー(キングブル)★

吹き替え


特撮




追記・修正、よろしくお願いするでごじゃりまするよ~。




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  • 喪黒福造とダース・ヴェイダーとハクション大魔王の声の人といえばだいたい通じる。特ヲタには初期のスーパー戦隊とかメタルヒーローとかのナレーターさん。 -- 名無しさん (2022-12-03 13:36:59)
  • シンプソンズでダース・ベーダーがカメオ出演した時は当然の様に兼任してて草だった -- 名無しさん (2022-12-03 14:23:50)
  • 大川透と名前が混じる -- 名無しさん (2022-12-03 14:30:23)
  • ベイダーを演じていた声の演技がとても良い。部下や敵を殺す時のマシンらしい冷徹な感じ、最期の素顔で話すときの憑き物が取れた穏やかな感じとか本当一体化している感じ -- 名無しさん (2022-12-03 14:44:26)
  • 今も存命だったら島本敏さんと2人でポプテピピックに出てアナキンとルークのネタやりそう。 -- 名無しさん (2022-12-03 15:34:20)
  • ↑そう思ったのは自分だけじゃ無かったか。名字を間違えやすいよね -- 名無しさん (2022-12-03 15:34:47)
  • マグマ大使と同じピープロ制作のスペクトルマンでは、「俳優」としてレギュラー出演してたね。 -- 名無しさん (2022-12-03 18:21:16)
  • バットマンでジョーカーやった時、一人称が「我輩」なんだよね。喪黒福造意識してたのか不明だけど -- 名無しさん (2022-12-03 18:47:31)
  • 大胆MAPの取材でスタッフに「お前態度悪いな」と機嫌悪くなってた -- 名無しさん (2022-12-03 22:52:55)
  • マジかよ、スタッフ最低だな -- 名無しさん (2022-12-04 00:56:43)
  • ↑2 あの番組はあまり露出しない人も含めた声優全般を「あの声を演ってる人は実はこんな顔なんですよ〜」と珍獣のように扱っていましたね。態度はもちろん番組の趣旨からして大平さんならそんな物の取材をされて怒るのも当然だったかと。 -- 名無しさん (2022-12-04 01:18:55)
  • 違う!(食い気味)お前の父はワシだ…!からの早口の捲し立てはヴェイダーの興奮を完璧に表現してて好き -- 名無しさん (2022-12-04 02:42:13)
  • サクラ大戦3のカルマールが結構記憶に残ってるなぁ〜。ラスボスとみせかけて実は…みたいな役だったけど -- 名無しさん (2022-12-04 09:39:19)
  • 「ごきげんよう、大平透です」 釣り好きだった頃、ザ・フィッシングで毎週聞いたフレーズ。 -- 名無しさん (2024-05-24 11:02:10)

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*1 1950年にアメリカ・ミズリー・シノッド・ルーテル教会が全日本ルーテル教会連合と共同で設立した、日本初のキリスト教布教を目的とした放送局。2003年に解散。
*2 1991年には東京にも開校された。
*3 ハンナ・バーベラ・プロダクション製作のテレビアニメ「原始家族フリントストーン」のフジテレビ・TBS系放送時のタイトル。
*4 森功至、小原乃梨子、岡本茉利も同様。
*5 「秘密戦隊ゴレンジャー」から「科学戦隊ダイナマン」まで、および「恐竜戦隊ジュウレンジャー」の計8作品。
*6 銭形警部役などで有名な納谷悟朗氏は当時の様子を「邪魔でしょうがなかった」と冗談めかして語っているが、それに対して大平氏も冗談めかして「でも私が主役だったし」と笑いながら答えている。

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