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更新日:2024/01/12 Fri 10:51:46NEW!
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漫画 ヤングチャンピオン 平井和正 田畑由秋 余湖裕輝 人狼 獣人 所要時間30分以上の項目 泉谷あゆみ ウルフガイ 狼の紋章
注)この項目にはネタバレが含まれる。ただし、物語後半や原作2巻目以降及びウルフガイ関連作品の展開・核心に関するネタバレは伏せる。
目次
概要
「ウルフガイ 狼の紋章(ヤングチャンピオン版)」とは、1971年に発表された平井和正による同名の小説を、ヤングチャンピオンにてコミカライズした作品。
以前にも1970年代に講談社の『週刊ぼくらマガジン』で坂口尚により『ウルフガイ』のタイトルでコミカライズ連載されていたため、便宜上こう表記する。
さらに詳しく言えば、ウルフガイ自体は上記ぼくらマガジンで連載されていく予定であったが、同誌の休刊により原作を担当していた平井が、漫画化されていた部分も含め小説で続きを完結させた。
つまり本作は、「本来漫画の原作だった小説を、その小説を原作に時を越えて漫画化する」という、若干ややこしく因縁を感じる経緯を経て生まれたわけである。
脚本と作画監督は、「コミックマスターJ」「アクメツ」「真マジンガーZERO」「ニンジャスレイヤー(コンプティーク版)」の作者である田端由秋と余湖裕輝のコンビ。
余湖の監督を受ける形で、平井和正の専属絵師的存在であった泉谷あゆみが直接の作画を担当する。と言っても泉谷あゆみに漫画家経験は一作しかないためか、実質的に余湖裕輝作画と言っていい絵柄なのだが。
連載期間は2007~2012年、単行本は全12巻。原作は全19巻であり、本作はその序章にあたる1巻目のみを漫画化したもの。
小説1冊に対し漫画全12巻という分量の通り、その内容は原作に比べ色々と密度が高くなっており別物度合いが強い。まぁ原作一冊の1エピソード+αに15巻かけたシグルイ程ではないが。
なお、本作の原作シリーズとは別に「アダルトウルフガイ」シリーズという、この作品とは違う「中年の犬神明」が活躍するシリーズが存在する。
こちらと区別するために、本作の原作である方の「少年の犬神明」が主人公のシリーズは「少年ウルフガイシリーズ」と呼ばれることがある。
両者に直接の関係はないが、少年~のキャラクター「神明」のモデルは上記アダルト~の方の犬神明だし、ヤングチャンピオン版もアダルト~から引っ張ってきてるorそうと思わしき要素があるため、全くの無関係とは言えない。
原作連載当時の平井和正の作風は「人類駄目小説」と呼ばれているが、特にこの描写(人間批判)が強化されている。
原作の1巻目時点では人狼以外のオカルト・SF要素はなかったのだが、原作の5巻目以降や同作者のアダルトウルフガイ・幻魔大戦シリーズなどに見られるような、超能力的な描写も存在する。
展開の都合上、原作2巻目以降においていわゆる「一般人」はメインヒロインである青鹿晶子を除きほぼ登場しなくなるのだが、1巻目で登場した木村紀子など「普通の人」のファンになったりその後を気にする読者は多かった。
ただ、作者である平井和正としてはそれは理解できなかったとのこと。
本作ではそういった人狼や悪人を中心とする災難に振り回される人々についてもスポットライトが当てられており、ヤングチャンピオン版製作陣はもしかしたら上記のような当事の読者の思いを反映させたのかもしれない。
本作における作中時間軸は、連載時期と同じく00年代後半。そのため原作当時(70~90年代)にはなかったインターネットが普及されており、それがこの漫画を語る上で物議を呼ぶことになる悲劇を引き起こすこととなった・・・
他の田端・余湖コンビの作風の作風と比較すると、それらは基本的に「シリアスギャグ&シリアス」といった作風なのに対し、
本作は「シリアスオンリー&エロス」という内容で一線を画している。序盤はコミカルな描写も少しはあるけど。
ただし、エロスに関しては真マジンガーZERO以降では結構目立っているため、この漫画の影響が強いかもしれない。忍殺ではこの項目が立った頃の時点で「そのバストは豊満である」ナンシー=サンが出てきてるし。
原作者の平井和正の小説では、エロシーンも強姦シーンもよくあるが、本作終盤のように強姦をポルノ的に扱うことは殆どない。
これは自身が強姦という行為を唾棄していると語っているように、あくまで加害者の邪悪さや被害者の悲惨さを描写するためと思われる。
あらすじ
私立中学博徳学園の女教師・青鹿晶子は、仕事の不満から痛飲した夜の帰り道に、山下公園で一人の少年と不良集団の抗争の現場に居合わせてしまう。
少年は不良にリンチを受けるもどんなに傷つこうが全くの無抵抗で堪えた様子はなく、業を切らした者により車で跳ね飛ばされる。
不良に取り囲まれた青鹿は過去強姦されたトラウマから気絶し、あわや犯されるという時に怪物――狼男が現れ不良を蹴散らす。
気絶から目覚めた青鹿だが、抗争の跡は残るもそこには少年の姿は消えていた。翌朝、警察に事情聴取を受けたためパトカーから出勤した青鹿は、そこで一人の転校生を見かける。
その生徒の名は犬神明。昨夜出くわした少年と全く同じ容姿の持ち主だった。
だが犬神は青鹿とは初対面だと主張し、昨夜のリンチによる酷い傷も全く残っていなかったため、青鹿は不思議に思いつつも別人だと自分を納得させるが…
そして青鹿の担当クラスであり犬神の編入先は、暴力団の息子であり権力・個人の暴力ともに並の不良では問題にならない怪物・羽黒獰がおり、博徳学園は彼のグループの恐怖に支配されていた――
本作における人狼の特徴
伝承とほぼ同じで、月の満ち欠けに左右されるというもの。
満月期は、車に弾かれたり、高所から落下したり、火炎放射器で焼かれたり、重火器に撃たれたり、獣の爪の毒に犯されたりしても無事。体に風穴があくほどの怪我も見る見る間に塞がれる。
高層ビルから高層ビルへと飛び移ったり銃弾も余裕で回避するなど、敏捷性・反射神経もまさに怪物。
新月期は人間並に身体能力が落ちると言われており、確かに銃や刃物で普通に重傷を負う。
だが、プロボクサー志望でそこらの不良が問題にならない人間のパンチを余裕でかわし、石を正確かつ高速で投擲したり指弾で人間を殺せるなど、どう考えても人間離れしている。また夜目も効く。
原作及びアダルトウルフガイでは人狼は基本的にトレーニングを行わないと書かれているため、新月期の身体能力は素の能力ということになる。
精神状態や他者の目にも影響され、犬神の体の中に黄金の輝きがあることを他者が幻視した際や、愛する者からの真摯な祈りで、新月期でも奇跡的に満月期の力を一時的に引き出せるようだ。
「アダルトウルフガイ」シリーズでは、新月期でも瞑想状態で満月の想念を描くことにより、上記と同じように満月期の力を一時的に引き出していたが、
この能力は本作の原作である「少年ウルフガイ」シリーズでは存在せず、漫画化にあたって「アダルト~」から輸入したものと思われる。
肉体的には良い事づくめだが、非物理的な面では悪い事しかない。自身に関わった人間とは大概お互いに不幸になり、人間側が人狼を憎み去っていくか、もしくは惨死の憂き目に遭う。
人間が自然に屈服せざるを得ない時代は神として崇められたが、自分が世界の支配者であると本能的に譲れない人間からはやがて迫害の対象とされ、徐々にその姿を消していく。
人狼はトラブルを呼び込む運命の持ち主だが、上記の人間の性質も合わさり、災難はより大きくなってしまう。
生殖力も弱く性格が高潔で優しすぎるため、次々に数を増えていく人間に対し、その存在を維持することはできなくなってもいた。
他の生物に自身の血を大量に輸血することにより、その者は満月期の人狼並の身体能力を持つようになり、しかもそれは月の欠けで弱体化されない。
だがそれは一時的な暴走に過ぎず、時間経過とともにその力は失われていく。本作で犬神明から輸血され死の淵より蘇った千葉は、血の効果が切れるともに死亡した。
この展開の元ネタは、原作2巻目「狼の怨歌」とアダルトウルフガイの「人狼、暁に死す」というエピソード。その更なる元はウルフガイシリーズと原作者が同じ、[[池上版スパイダーマン>スパイダーマン(池上遼一版)]]。
「狼の怨歌」では、健康体の時に人狼の血を過度に輸血された人間がいたが、死因は手榴弾を至近距離かつ連続で食らったため。
同じく「狼の怨歌」からは、人虎が登場するのだが、人虎はスペック的に人狼を凌駕するにもかかわらず、木に頭を強打しただけで気絶した。
上記の要素を総合すると、ヤングチャンピオン版は原作より人狼の能力は上がっているものと思われることと、過度の輸血自体は死へと直結するとは限らないことが分かる。
前半(1~7巻)のストーリー
生まれつき人間の凶暴性を引き出す性質の持ち主である犬神は、転校早々絡んできた羽黒グループの幹部・黒田からナイフで刺されそうになるが、
自分に累が及ばぬように反撃をせず、巧みな体さばきで黒田を自爆させ撃退する。
この事件で黒田の双子の兄は弟の仇を討たせるため、犬神を屋上に呼び出し羽黒グループメンバーにリンチさせる。
だが青鹿が目撃した少年のように、無抵抗にも関わらずどんなに暴行され傷つこうが、全くダメージが通っていなかった。
それどころか、グループで唯一、犬神が誇り高い人間と認めたプロボクサー志望の幹部・千葉に対しては、拳が傷つかぬよう打たせるという離れ業を見せる。
ついに羽黒本人もリンチに参加し、カミソリで大きく「犬」という字を刻み付ける。だが自分のような怪物との報告とは裏腹に、そこまでされても相変わらず無抵抗の犬神に興醒めさせられその場を後にする。
青鹿は現場に居合わせてしまった丸山という生徒から一部始終を聞くも、暴行されても堪えないどころか、傷跡が見る間に塞がっていき、それが当然のことのごとく屋上から飛び降りたという――
犬神の不死身ぶりを聞かされた青鹿は、酔った帰りで会った少年と同一人物であると確信する。
犬神の謎を解き明かしたい衝動を抑えられなくなった青鹿は、就業時間終了後の夜に、犬神が独り暮らしをするマンションを無断にも関わらず訪ねることを決意する。
犬神の部屋は施錠されておらず、不法侵入し勝手に電気を点けて内部を物色する青鹿。
突然電気が消され、暗闇の中から青鹿に、今回の不法侵入を咎め今後自分に深入りしてはならぬ旨の、犬神よりの忠告が投げられる。
青鹿が電気を点けると、そこには狼男の顔をした犬神の姿があった。
犬神は正真正銘の狼人間であり、満月が近い時期は感情が昂ると獣人化を抑えられなくなるため、人間の姿に戻れなくなっていた。
犬神はそのような非現実的な事実は打ち明けず、羽黒グループから受けた傷を隠すための特殊メイクと嘘をつくも、気が動転した青鹿は犬神が本物の狼男であると言い張る。
青鹿はマスクが本物であるかどうか見極めるため犬神に掴みかかるも、転んで押し倒すことになってしまう。
その熱烈すぎる自分への執着に辟易した犬神は、これまでより冷たい態度で青鹿を突き放す。押し倒した際に性的に興奮したことすら自覚した青鹿は、羞恥と犬神の態度から失意のまま帰宅することにした。
その道中に変質者にスタンガンを喰らわされ強姦されそうになる。そこに動物園から脱走したライオンが出現し変質者を殺す。
それを目撃した青鹿は気絶し、あわや次なるライオンの犠牲者になるところに青鹿の悲鳴を超聴力により聞きつけた犬神が現れる。
犬神は偶然とはいえ青鹿を変質者から救出したことへ感謝を抱きつつも、ライオンは精神が崩壊していることを本能的に察知し戸惑う。
事実そのライオンは廃園寸前の動物園でロクにケアを受けられず、病院に搬送中に限界がきて脱走したのだった。
自分と同じく人間に翻弄される生への同情により、犬神はこれ以上ライオンを辱められぬよう止めを刺す。
事件の後遺症から1週間欠勤した青鹿だが、その間も犬神はまたも羽黒グループに絡まれそれを翻弄していた。
だが今回は、生徒の丸山がその様子を盗撮・動画サイトにアップロードし、マスコミの取材に対し一部の生徒が、
博徳学園は羽黒グループに支配され教師はそれを見てみぬ振りをするという惨状を訴えていた。
それどころか、英雄的に見える犬神の行動に対し、生徒会副会長の木村紀子を中心に、羽黒グループへの反旗を翻すべきという気運が高まっていた。
同時に黒田兄は他校の不良を集め犬神への報復を企むも、反羽黒の生徒とそれに賛同した青鹿は更なる博徳学園の惨状についてより詳細な情報を提供するためにマスコミを呼び出す。
衆人環視のもとで暴れ回るわけにもいかず黒田らは退散する。
犬神は木村らにインタビューを受けるよう依頼されるも、自分を英雄扱いして担ぎ上げるな、不良の報復にせいぜい注意しろと、冷たく突き放す。
青鹿は事件後の帰路、報道陣に追われるところを神明と名乗るルポライターの手引きで抜け出す。
彼の狙いは多くのマスコミ関係者と異なり博徳学園のことではなく、青鹿が遭遇したライオンを殺した者、及び山下公園で不良たちを撃退した怪物についてであった。
ライオン殺害の現場には狼の体毛が残されており、不良たちは狼男に襲われたと証言していた。
両事件に共通する「狼」とは犬神明ではないかと推測し、同時これ以上近寄るなと忠告する神明だが、得体の知れない彼の前から青鹿は退散する。
リンチによる犬神の傷が消えていると報告を受けた羽黒は、その確認のために千葉をけしかけ、犬神は千葉から立会人もいない一対一の勝負を挑まれる。
人狼としての身体能力がほぼ失われる新月期にも関わらず、持ち前の運動神経で千葉の攻撃を完璧にいなす犬神。
そんな犬神に対し千葉は、自分はかつて羽黒の圧倒的な暴力を目にし心折られたこと、
その上今も犬神にパンチをかすらせることすらできない自分はボクサーとして無価値ではないかと、心情を吐露する。
格の違いに完全敗北を認めた千葉は、自分が負けた以上は今後羽黒以外からは手をだされないだろうということ、同時に羽黒に気を付けるよう忠告し去る。
千葉とは別に、羽黒の情婦である小沼竜子が犬神を誘惑し服を脱がせ傷の確認をしようと試みるも、無視される。
だが竜子が去り際に残した、青鹿が過去強姦されたことがあるという言葉に動揺する。
博徳学園の生徒会は、かつての羽黒グループの支配とそれの抑止をしない学校側の対応について、マスコミも巻き込んだ公開弁論会を開いた。
会に引っ張り出された犬神は、自分を英雄視する生徒・厄介者扱いする教師たちを、自らでは戦えないのに調子に乗るな、他者を担ぎ上げるのではなく自分たちで責任を取れと一喝する。
静まり返った体育館に手榴弾が爆発する。それは羽黒が秘蔵する銃火器で武装した黒田兄が投げた物であった。その後も集会に参加した人々を虐殺する黒田。
木村紀子も黒田に殺されかかるもそこに犬神が現れる。事件前に黒田の双子の弟は入院中羽黒に暗殺されるのだが、
それは黒田兄の犬神への敵愾心を煽る策略であり、そうとは知らず弟の復讐を果たすため犬神を銃殺せんとする黒田。だが満月期の犬神には効かず、暴発した手榴弾により自爆する。
事件の死傷者が搬送される病院で、余りの惨事に気落ちする青鹿に対し犬神は、自分もいるから気を張ってほしいと、これまでと違う優しい言葉をかける。
どうしようもない怒りの中、犬神が自身の幼少期を反芻していた。それは、両親は自分を連れて何かから逃げるように都会からアラスカの雪山の奥に移り住んだこと、
そこで野生の狼たちと友になったこと、その後両親は何者かに殺されたという内容であった。
自分の不幸に巻き込んだせいで弁論会に参加した者達を殺したという後悔から、激情を押し込みつつ夜の街を徘徊する犬神。
そこを羽黒から尾行されていることに気付くも、その羽黒も他の暴力団が雇った殺し屋から狙われていた。
犬神はその場を脱出し、羽黒はサブマシンガンと暗視装置で武装した殺し屋たちと単身拳銃で挑むことになるが、驚くべき戦闘力で撃退する。
だがそこを一定の距離から見ていた犬神に襲撃され、完全に屈服させられる。
負けを認めた羽黒は自分を殺すよう唸るが、犬神は獣人化した自らの姿を見せつけ、自分は人間たちのように無闇な殺しはしない、
だがお前たちがこれ以上手を出すのであれば、どうあっても手が出ないように全力で逃げ切ってやる、と吐き捨てその場を去る。
自ら化け物と呼ばれ続けるも、犬神との生物としての性能差に羽黒は心を折られる。
黒田兄銃撃事件の被害者が入院する病院に、再び犬神が現れる。博徳の生徒たちからお前のせいで皆死んだ、責任を取れと糾弾されるが、青鹿は犬神に責任をなすり付ける態度を叱る。
犬神は別れ際に青鹿に転校届を渡す。そこでは席だけをおくことにし、もう誰とも関わらないと言い残す。
数日後、それでも犬神に会いたい青鹿は犬神のマンションを訪れるが、すでに転居済みであった。
帰り道の公園で狼の声を聞き、そこにあるはずのない山深い森林と狼の姿を目撃する。思わず狼に対し犬神の名で呼びかけるも青鹿。
そしてかつて見た人狼姿の犬神は変装ではなく、本物であると確信する。
そこに神明が現れ幻覚は晴れる。神明は自分も犬神と同じ人狼であると告白し、人狼と深く関わった人間は最後お互いに不幸になり人間側が恨み言を言って去っていく、
犬神にも同じ経験をさせたくない、青鹿の愛が深いほど犬神は傷つくからこれ以上関わらないでほしいと懇願し去る。
犬神に敗れて以来、自傷行為を繰り返すなど、羽黒の精神は崩壊していた。失調した自分を怪物に戻すには、本物の怪物である犬神を殺すしかないと決意する。
転校した犬神の行方を探すため、教師らを訊問しようとするも、毅然として犬神の行方を告げない青鹿の態度を前にその場を去る。
竜子から犬神は人死にに当てられて腑抜けたと言われるが、犬神は人間を見下し切っておりいくら死のうが気にもしない男だと返し、それを証明せんとグレネード弾を博徳学園の校舎に打ち込む。
ニュースで羽黒の博徳学園へのテロ事件を知った犬神は、学園の人間に死傷者が出ていないか、無意識に青鹿の顔を思い浮かべながら現地へと確認に赴く。
そこで千葉と偶然会うが、彼もしばらく登校していなかったため事情は知らないという。
それから取りとめない会話をし千葉と別れた犬神は、青鹿が銃撃事件により負傷し、病院で安静にしていると知る。
会話をしただけの千葉を、犬神との友情を育んだと勘違いし嫉妬した羽黒は、千葉を瀕死に追い込むまで暴行し犯し、その体を病院前に放り出す。
同じ病院を青鹿の容体を探るために遠巻きに観察していた犬神は偶然にもそれを察知する。
輸血用の血が足りないため、同じ血液型である自身の血を輸血させ、無言でその場を去る。本来は輸血の甲斐もなく死を待つだけの重傷を負った千葉であったが、人狼である犬神の血の効果により蘇生する。
だがその際に人格は破壊されており、自身を殺した羽黒に対する復讐のみで行動する怪人と化していた。
神明は千葉を止めるため一戦交える。だがかつて自身も瀕死の人間に輸血した際、いずれ血の効果が切れてしまう死んでしまったことを目にしたことがあるため、
死に行く千葉の思いを遂げるためにそのまま行かせることにした。
それは、千葉の怨みは羽黒一点に向かっているため行かせても他に被害を及ぼさないであろうこと、
千葉が羽黒を殺せば犬神と青鹿の関係の障害を排除できるだろうという、打算にも基づいてのことでもあった。
千葉に襲撃された羽黒は、対犬神用の近代兵器で武装していたが、全く歯が立たたない。やがて、千葉は犬神の血の効果により、悪鬼のような姿に変貌する。
その姿を見た羽黒に、この生き物をそのままにしておけば、今まで貪欲に繁栄してきた人類すら滅亡すると、天啓のような想念が駆け巡る。
人類繁栄・存亡のためにこの怪物を退ける力を授けよと叫び、今まで全く歯が立たなかった千葉の首を切り落とす羽黒。
羽黒に切られたタイミングで人狼の血の効果は消滅したのだが、そうとは知らない羽黒は怪物を撃退した自信から、犬神に敗北する前よりさらに強固な精神と、人間的感情を手にする。
千葉撃退後、犬神は人類を軽蔑しているのではなく憐れんでいると知った羽黒は、知り合いであれば誰でも助けに現れるだろうと、竜子に暴行する。
その最中に竜子は、犬神は青鹿に惚れており、自分より餌として適任であると告げ口する。
登場人物紹介
・犬神明
本作の主人公で、人狼の母と人間の父のハーフの少年。一応中学三年生だが、一部テニヌ選手と見紛うばかりに老けている。
性格は自分が認めた一部の人間以外を完全に見下し切っており、それを一切隠さないほど傲慢。
不良からリンチにあっても、反撃して叩きのめしてはこいつらと同等と思っており、心の底から軽蔑しつつ無抵抗を貫く。
逆に自分を過度に持ち上げる人間に対しては、自分では何もできない弱者と臆面もなく言い放つ。
これは年齢相応の厨二病という以上に、自身の過去や人間による人狼への差別及び人類史全体からくるところが大きい。
だがそれ以上に人間を憐れんでおり、自分の手の届く範囲で窮地に陥った者は救わずにいられない程優しい。ただし悪党は例外。
5歳の頃にアラスカの雪原に移住、そこを母の人狼としての身柄を狙う者たちから襲撃され両親とは死別する。
その後狼たちに養育されながらしばらく暮らすが、父方の伯母である山本勝枝に拾われ人間社会に出ることになる。
人狼は自他を巻き込む災難の星の元にあるが、犬神はそれが際立っており、彼を視た占い師はその後飛行機の落下に巻き込まれ死亡してしまったほど。
それだけでなく、人間の暴力性に狙われるという別の人狼の性質もあわさり、周囲に暴力が絶えない(アメリカ大陸という土地柄、銃撃沙汰になることもザラ)。
結果、本来優しい性格故に塞ぎ込むようになってしまった。ただし完全に引きこもらなかったり狼たちの元へ帰らなかったのは、一応引き取ってくれた伯母への礼もあると思われる。
伯母の計らいにより平和な日本へ移住させられるが、そこでも不良から狙われ続け住んでいたアパートを焼かれ他の居住者たちが死んでしまい、
そのトラウマから博徳学園に転校する際は本作における最初の住居である高級マンションに引っ越した。
転校先で本作のメインヒロインであり犬神のストーカー(笑)である青鹿晶子と、リアル系不良漫画悪役の邪悪さとヒーロー漫画悪役の怪物さを併せ持つ羽黒獰に出会い、その運命は大きく動くことになる。
人間社会への絶望から消極的な自殺願望の持ち主。満月期に高所から落下した際は「今度こそ死ねるかと思った」とひとりごちていた。
これと暴力を呼び寄せ新月期は耐久力が人間並に弱体化する人狼の性質を合わせれば既に死んでいてもおかしくないが、人間嫌いな性格上、悪党からの暴力はいなしていたのだろう。
終盤、青鹿先生を終生かけて愛すと誓うことにより、結果的に自殺願望は消えた。
幼い頃に両親と死別したためか重度のマザコン。それ故に強い母性を持つ青鹿先生に惹かれ、亡き母を回想する際は思わず彼女を思い浮かべ慌てたりしてる。
ファザコン要素がない理由は本作・原作ともに語られていないが、死別したのがほんの幼い頃で記憶が曖昧の上、父親が人間のため上記の人間嫌いも相まって印象が薄くなったのかもしれない。
原作に比べ人間に対する憎しみと、人間に弄ばれる生き物たちへの同情が強くなっており、
本作における青鹿先生を襲ったライオン撃退&羽黒のアジトのドーベルマンの撃退と、羽黒の舎弟を殺す際の描写がその象徴。
ライオンは痴漢から結果的に青鹿先生を助けてくれた恩と人間以外の生物への優しさもあり、最初は戦いたくないと思っていた。
だがロクなケアが受けられない動物園で心身ともに疲弊し精神が崩壊していることを本能的に察知し、これまで人間にその生を弄ばれてきたのだから、せめて最後人間に銃殺されるよりはと、自身の手で介錯した。
ドーベルマンは青鹿先生救出の障害として無情にも撃退しているが、それは軍用犬として使い捨てにされることへの同情も含む、苦さを伴う行為でもあった。
その後羽黒舎弟の暴力団員に対しては、ドーベルマンを殺すことに比べれば何ともないと、無感動かつ憎しみをこめて殺していった。
原作ではなんと羽黒を殺したことを後悔しており(原作羽黒はまだマシだったのもあるが)、適当に脅しておけば逃げてくれたのではないかと言っている。
羽黒を襲撃し自分に関わるなと脅しつけたエピソードは原作のif展開ともいえるが、本作における羽黒はそれで引き下がるタマではなく、これにより更なる悲劇を生みだしてしまった。
羽黒との最終決戦では、月齢が新月、アジトに乗り込む前に羽黒の情婦の竜子に刺される、アジトに着いたら多勢に無勢の上羽黒の舎弟はサブマシンガン・ガトリングガンで武装し対戦車地雷まで用意され、
羽黒本人も装甲車で犬神を轢きにかかる始末で、何より青鹿先生救出が最優先と徹底的に犬神に不利になるような展開になっている。
いわゆる主人公補正のマイナス面が集中したかのような不運っぷりだが、新月ですら人狼の身体能力は人間としては怪物の羽黒すら遥かに凌駕しており、新月以外となればなおさら。
ここまでしないと犬神が普通に羽黒を倒してお終いになってしまいかねないため仕方ないことかもしれない。
原作終盤では自身の母の怨霊とも言える存在からともに人類を滅ぼさないかと持ち掛けられるも、色々あって人間に対する態度が柔らくなったため(ある意味人間社会に屈服したとも取れる)、それを蹴っている。
原作2巻以降において青鹿先生は最終的に(頭にダークと付くとはいえ)ヒーローもののメインヒロインとは思えない非業の死を遂げるのだが、
もし本作の続編が出るとして、青鹿先生は狼の紋章時点で原作より遥かに悲惨な目に遭っている上に原作と同じ死に方をした場合、
より人間への憎悪が強いヤングチャンピオン版犬神明が人間への態度を軟化させるか、そして上記の申し出を断るか怪しい。
・青鹿晶子
本作のメインヒロインで博徳学園の英語教師。年齢不明だが脚本の田畑由秋によれば「原作では20代前半だったのだから、ドジッ娘な感じ」とのこと。ちなみに原作では24歳と明記されている。
だがあまりに母性的過ぎる外見と人格のせいで、読者から失礼にもアラサー扱いされたりも。
初期は酔っぱらいながら不良どもはさっさと自分のクラスから卒業しねぇかなぁとクダを巻く「普通の大人」だったが、
自身の窮地を救う転校生の犬神明に惹かれることにより、彼の高潔さに影響されるかのようになっていく。
結果、辞職や報復も覚悟でこれまで恐れをなしていた羽黒グループに立ち向かったり、周囲が英雄視し担ぎ上げる犬神の裡にある孤独を感知し慈しむように接することになる。
さらには、犬神を担ぎ上げておきながらその不幸に巻き込まれて疫病神として非難する者たちを叱りつけたり、羽黒に犬神の転居先を言うよう脅迫された際は頑として断った。
犬神に惹かれる過程で、リンチにあった犬神の怪我が残っているか確かめるため服を脱がせ知らず知らずの内に半裸をしげしげと見つめていることに気づいて慌てたり、
犬神の正体を確かめるため鍵が開いてるからって住居に勝手に侵入して私物を物色した挙句、突如現れた人狼に変身した犬神をまだ正体を知らない段階にも関わらず本物の人狼だと非現実的なことを言い張ったり、
そう言われて犬神は「怪我を隠すための特殊メイク」だと誤魔化すも、被り物だったら脱がせてやると掴みかかった勢い余って押し倒してその時に性的に興奮したことに気づいてこれまた慌てたりと、
年に似ず「恋する乙女は盲目」とばかりに初期は残念かつ可愛らしい言動が目立った。
ただし年齢だけでなく、後述するように物理的にも「乙女」ではないのだが・・・
立場や人格は聖女的なところがあるが、青年漫画のお色気キャラクターでもあるため、作中スイカップと呼ばれるほどおっぱいがとても大きい(超乳とか魔乳とか奇乳という程ではないが、現実的には最大クラスのサイズ)。
バストサイズだけなら生まれ持ってしまった性質と言えるが、教師の割にスカートは短くタイト、そして何故か谷間をチラ見させるような格好をしている。
そして室内着はノーブラ派(服の上からポッチが浮いてる)。そりゃ四六時中ブラジャーをつけてるわけにはいかないだろうが、やっぱり胸の大きさから着けなくて色々と大丈夫かと心配になる。
以下の通りレイプトラウマの持ち主だと言うのに何故こんな格好をしているのか・・・
設定面でも、子供時代から肉付きが良いせいでセクハラを受け、中学・高校では強姦すらされ、その過去から逃れるように学生結婚するがトラウマのせいで結婚生活は破綻し早期に離婚。
下品な言い方をすればそれなんてエロゲ状態、と言うかここまで悲劇かつメインのエロ担当として極まったキャラクターは、18禁アダルト作品でも珍しい気がする。
ムチムチ爆乳で顔は可愛らしくも年相応だが、女学生専門の痴漢という本来ならストライクゾーン外の変質者すら引きつけられるほどの凄まじいフェロモンの持ち主。
その痴漢曰く姿を見ただけで全裸なのかと勘違いし、襲わずにはいられなくなってしまうほど。まぁこいつは事に及ぶ直前で脱走したライオンに殺されるけど。ザマァ
後半、羽黒らから輪姦された際は、一度この女を犯した人間はその快楽が忘れられなくなって(羽黒のような異常者を除けば)頭がおかしくなる「性の化け物」的な評価をされた。
トラウマから性的不能気味になった精神と肉体の性的資質が見事に乖離しており、より悲劇性が強調されている。
ちなみにこの「性の怪物」的要素はアダルトウルフガイシリーズの石崎卿子を彷彿とさせる。ただしこちらは精神的な淫乱性も肉体並に怪物的で、自身と寝た男は色々「吸い尽くされて死ぬ」とのこと。
作中の描写・読者の評価ともに強姦絡みが多いが、一応青鹿先生本人にとっても幸せなエロシーンはあり、それは上述の犬神の自宅に不法侵入し押し倒した時に、性的に興奮して子宮が疼くというもの。
こう書くと青鹿先生が実は淫乱のように思えてしまうかもしれないが、運命の人と出会うことで性的に再起しかけた、と考えると意義深いシーンと言えるかもしれない。
初期は教師なのに生徒である犬神を気に掛けることへの背徳性を気にしていたが、彼と接するうちに間違いなく恋愛感情を抱いていると自覚するようになった。
その愛し方に男の庇護下にありたいという意識はなく、
「強く見えても本当は純粋で傷つき易いあの子を慰めてあげたい」といった具合の、おねショタのお姉さん側の王道といえる感情である。
羽黒のことは最終的に呼び捨てにするが、犬神のことは最後まで「犬神君」「この子」などと呼んだ。
羽黒は悪い意味で大人と認められたわけだが、犬神のことは恋愛感情を抱きつつ子供扱いは変わらなかった。このことが犬神との関係のおねショタっぽさをより強調させている。
原作は本作より描写が薄いせいか、教師と生徒・大人と少年といった禁断の愛という面はそこまで目立っていなかった。
かようにエロ担当としての「あざとさ」があるが、それでもメインヒロインとしての清楚さが損なわれなかったあたり、製作陣の豪腕ぶりが窺える。
その色気とエロと清楚さと母性のキメラっぷりから、「実写化時のキャストが全く想像できない」と言われることもある。そもそも実写化しないだろうし、してほしくないけど。
上記の過去通り不幸な女性で、そこへ本人以上に災難を呼び寄せる犬神と逢ってしまい、さらなる悲劇に遭うことになってしまう。だが同時に、短い間に一生物の濃密な愛を育むことになった。
そのさらなる悲劇とは、8巻以降の輪姦及びそれを拡散されることによる社会的殺害描写。これにより売り上げも話題性も上がったが同時に卑猥なイメージが定着してしまう。その作品自体へのドーピングっぷりは、羽黒による彼女に対する評価を借りれば、正に「麻薬みたいな女」。
ただし上記の通り自身に宿る性的魅力は本人にとっては甚だ不本意な存在であり、麻薬みたいな、と言われても彼女としては悲嘆と恥辱と絶望に暮れる以外に他はないであろう・・・
原作では強姦や離婚に関する過去は詳細に書かれず本人の表層意識上にも出なかったため、裏設定じみた扱いだった。
原作でも羽黒に監禁されるのだがその過程は、犬神が心配だから羽黒宅に家庭訪問、そのまま監禁というもの。
犬神への不安だけでなく「暴力団宅だからといって、過去家庭訪問した時は大丈夫だったから」ということも羽黒宅を訪ねた理由なのだが、
一触即発の状況でそのようなことをしたのは迂闊と言わざるを得ず、自宅で睡眠中に誘拐された本作より本人の責任の度合いが強い。
犬神と羽黒の決戦時に人狼に力を与え邪を払う巫女のような能力を発揮しているが、原作にそういった能力はなく、これも上記石崎卿子の件と同じくアダルトウルフガイシリーズの寺島雛子に近い。
犬神と羽黒の決着後、死んでしまった(と思われていた)犬神の遺志を継ぐような形でアラスカで狼の観察・保護をするウルフマンとして生きていくのは変わりないが、その経緯は本作と原作で異なり、
本作では強姦動画を拡散されてしまい日本において社会的に殺されてしまったためで、原作は羽黒を殺した犬神の関係者として東明会に指名手配されてしまったからということだった。
原作2~4巻において獣人の不死性を狙う組織から犬神の弱点として拉致、強力な麻薬を投与され意識が破壊された挙句犯され、妊娠までしてしまう。最終的には麻薬・妊娠中毒の合併症により死亡する。
・羽黒獰
本作のメイン悪役で博徳学園三年生、青鹿先生のクラスの生徒。指定暴力団東明会次期首領候補の息子。
顔は犬神が問題にならないくらい中学生に見えない。老けてるとかそういう問題でなく、とてつもない凶相。
15年間暴力塗れ、それも犬神と違って自分から他者を蹂躙するような人生を送ってきたからこんな顔になったのか。
人間的な感情がないかのごとく、他者を暴力的かつ無機的に屈服させずにいられない性質で、学生の不良だけでなく、プロの暴力団員すらを従えている。
博徳学園を自身のグループの暴力で支配し学園外の不良たちからも恐れられているが、これはあくまで本人にとっては「ガキのお遊び」であり、
本業は暴力団員を用いたより危険な犯罪行為と思われるが、作中それについては明記されていない。
その戦闘能力は生物学的に人間とはとても思えず、小学生の頃に銃撃を受けるも持ち前の強運と体捌きで急所は避け、完治していない状態で下手人を完膚なきまでに叩き潰した。
外国人総合格闘家を手もなく再起不能にしたこともあり、自身がプロモーターになるほどの熱心な格闘技ファンの父親から叱責されていた。
その父親は息子を格闘技の表舞台に出そうとはしなかったが、それは舎弟の千葉曰く「人間とライオンが素手どうしで闘うようなもので興行にならない」から。
夜間にナイトゴーグルとサブマシンガンで武装した複数の殺し屋から襲われるも、周囲の環境を活かしつつ持ち前の戦闘能力で、拳銃一つの状態から逆転している。
この戦闘自体は犬神の襲撃で中断されたが、最後まで続いた場合でも余裕で全員撃退したことであろう。
かように凄まじい暴力の天才ではあるが、鍛錬は欠かさず酒も煙草も薬も一切関わっておらず、人格の邪悪さとは裏腹に強さに関することは真摯ですらある。
ただし、同じチャンピオン系列出身で、酒も煙草も嗜みまくりで、鍛えることすら女々しいとすら評される信念の持ち主の同年齢の暴力団の息子と違って侠気や優しさなど皆無である。
ちなみに原作において本作ほど戦闘力は高くなく、あくまで「超強いチンピラ」程度であった。
リンチされても全く堪えないという転校生・犬神に興味を持つも、最初は自身が動かず舎弟を直接・間接的にけしかけて様子を見ていた。
だが犬神本人に襲撃され完全敗北してその人狼としての姿を見せつけられ、さらには「自分にはもう関わるな」と脅されたことにより、これまで自他ともにイメージしてきた「怪物」としてのアイデンティティーと精神が崩壊してしまった。
その結果、自傷行為を繰り返したり物凄い変な顔で泣き笑いしたり「犬神は他人が傷つこうが気にもかけない冷酷な男」という思い込みを証明するためだけに博徳学園にグレネードランチャーを打ち込んだ。
それらは犬神を打倒せねばかつての自分を取り戻せなくなると、強烈な執着を抱いての凶行であった。
その後、犬神から輸血され満月期の人狼と同じ戦闘力を誇るようになった千葉に襲撃された際、最初は無様にあがくだけであったが、最終的には日本刀でその首を切り落とし、その自信からより強固な人間性を獲得する。
これは刀を当てるタイミングが早すぎれば効かず、遅すぎれば自然死しており、上記の変貌にはつながらなかったわけだが、これはただ運が良かったからで済ませられるものではない。
戦闘中、人類滅亡級のカタストロフとそれを乗り切る犬神のヴィジョンを視、他者を蹂躙してでも貪欲に生る人類の代表としてこの天敵を破る力を与えよと念じることにより、
悪霊じみた力が宿らせたからこそ、そのような豪運を呼び寄せることができたかのように描写されている。
犬神に敗れ恐怖と屈辱を知り、犬神並の化け物を自身の手で止めを刺せた(ように見えた)ことにより、結果、これまでの無表情に舎弟の黒田の指を千切るような無機質さはなくなり「無機的な暴力装置」から、
猛悪な哄笑を浮かべながら他者を蹂躙するような「邪悪な人間性」「悪霊的な存在を操る力」を得ることになった。
そして人間性を理解できるようになった結果、「犬神は窮地に陥った関係者を助けずにはいられない」という性質を利用して、自分にとって手近な犬神の知り合いである龍子を監禁・暴行し犬神を誘き出すための餌にしようとした。
その際龍子からは「犬神が惚れてるのは青鹿先生であり餌としては誰よりも適している」と指摘され、アドバイスどおりに青鹿先生を拉致、ここから物議を呼んだ8巻以降の展開へとつながってしまう。
無機質な存在が心に触れ生の尊さを知るという展開はよくあり、からくりサーカスの最古の四人やフランシーヌ人形などに見られるが、この男の場合は逆に生まれ持った邪悪さを加速させることになった。
性癖について、物理的にはバイセクシャルだが、精神的にはホモ(それも頭にクレイジーサイコとつくレベル)かと思われる。
女性を犯している時は無表情*1だが、男である千葉を犯している最中は実に嬉しそうだったし、犬神との関係は運命と言ったり指を喰って勃起したりしているし。
そのホモ的感情からくる行状の凶悪さは、シャア・アズナブル、フェイスレス、うちはマダラといった、男への執着で世界を滅ぼしかけたメンツに匹敵するほど。
羽黒の場合は世界を滅ぼすほどのことは行っていないが、犬神を誘き寄せるために舎弟たちとともに青鹿先生を輪姦、それをネットにバラ撒き社会的に抹殺するという、
リアルに最悪(実際に現実で頻繁に起こり得るかは別として)なダメージを喰らわす吐き気を催す邪悪っぷりは、上記シャア以外の2人を足して2乗したくらいでも足りないくらい。
青鹿先生への凶行は犬神を誘き寄せる以外に、「こんな汚らしい女は最高の男であるお前には相応しくない、だから俺と一緒になれ」と突きつけるために行ったフシもある。
犬神に物理的に止めを刺された際ただ死ぬだけでなく、その魂はかつて自分が殺した者たちに暗黒へと引きずり込まれるという描写がされている。
千葉撃退時に得た人間の邪念は、超人である羽黒にも制御しきれるものではなく、その死に様を見るに結果的に犬神や青鹿先生だけでなく自身の不幸も呼び寄せてしまったと言えるだろう。
また、青鹿先生の祈りにより自身に取り憑かせた邪念は力を失うのだが、作中「全人類の意志」のように表現された存在が、
怪物を愛する一人の女性の想いに屈することになったので、あまり当てになる存在とは思えない。
本作における殺人のエリート的能力は原作2巻目から登場するCIAの殺し屋・西城恵がモデルの可能性がある。
また廃ホテルで犬神を迎え撃つ際に見せた、「悪霊的カリスマ性で場を覆う」能力は、原作5~9巻に登場するグレートセイタンに似る。
犬神への病的な恋愛感情で無実の女性を犯し映像に残すという凶行については、原作の外伝「“女狼”リツコ」に登場する「アイス(ピック)の律子」が同じようなことをしている。
原作の続編の月光魔術團シリーズには「真黒獰」という(原作の)羽黒にそっくりな少年が登場する。このキャラクターはスターシステム的存在であり、羽黒本人とは何の関係もなく、作中二人の容姿が似てることについて言及されていない。
こちらも麻薬を売買するような犯罪不良少年だが気配りのできる根はやさしい人間で、羽黒のように理不尽な暴力で他者を圧するようなことはしない。
彼と犬神が出会うことはなかったが、原作においては羽黒が本作ほど凶悪ではなかったため、会ったとしても大きな悶着は起きないと思われる。
仮に本作の延長線上として月光魔術團も漫画化され(可能性は低いが)、さらには犬神明との邂逅も描かれたら、少なくともファーストコンタクトでは最悪の印象を持たれてしまうことは確実であろう。
・神明
ルポライターでもう一人の「人狼」。30代半ば。
元ネタは、もう一つの人狼の活躍を描いた「アダルトウルフガイシリーズ」の主人公であり、そちらでの名前は本作の主人公と同じく「犬神明」。これは本作オリジナル要素ではなく、原作からしてそうである。
犬神と同じく暴力を呼び寄せる性質の持ち主だが明るい性格。人付き合いもよく、警察の人間とのパイプもある。
アダルトウルフガイの犬神明は、戦後間もない頃孤児になったところを娼婦たちから養ってもらったのだが、アダルト~の犬神明をモデルとする神明も同様な幼少期を送ったとすれば、
少年ウルフガイの犬神明ほど幼少期に人間を憎むような環境ではなかったと思われ、これが少年~の方と違って明るく人付き合いのよい理由だろう。
まぁ原作及びアダルトウルフガイの連載開始が70年代初頭に対し、本作は07年から開始なので、流石にこの漫画においては日本で戦災孤児ということはなかろうが。
犬神と同じ占い師に視られた際は、占い師が交通事故に遭った。人狼特有の災難体質には違いないが、飛行機落下事故で死亡してしまった犬神に比べればマシ。
初対面の青鹿先生相手にナンパ紛いの態度をとるなど、一見ふざけているが、人狼とその周囲の人々の身を案じており、青鹿先生には度々犬神の元から離れるよう懇願している。
だが同時に、犬神と青鹿先生はこれまでの自分と違い、確かな絆で結ばれた恋人同士になれるのではないかと期待している。
性格が大人かつ意外と慎重でルポライターとしての仕事もあるせいか、犬神の起こしてしまうトラブルには気を揉みつつもそこまで積極的に関わらず、運命に任せるような姿勢をとる。
それがためにより災いはより大きくなってしまった面もある。
その代表として、怪物化した千葉を近いうちに寿命が来ると知りつつ羽黒への復讐を止めず、さらにはそのフォローもしなかったこと。
死に行く千葉が羽黒を殺せば犬神と青鹿先生の邪魔をする者がいなくなるという理由からだが、千葉は横浜ベイブリッジ上で羽黒を襲撃、
対する羽黒も重武装していたため、多数の無関係の人間を巻き込むことになってしまった。
さらには千葉が撃退されるとは思っておらず、予想外にも羽黒がさらに強化されてしまうことになる。
だが襲撃場所はともかくとして、羽黒が千葉の首を切るタイミングで人狼の血の効果が切れるなど予想できるものではなく、これも犬神が起こす災難の結果と言えるかもしれない。
ちなみに千葉が犬神の血で復活した際は、かつて自分も人間に輸血したことがあると述懐している。これはアダルトウルフガイの「人狼、暁に死す」というエピソードが元。
青鹿先生救出行にももっと積極的に犬神に協力していればスムーズに進んだかもしれないが、新月期ということもあれば責められないだろう。
犬神が中心になって起こった事件を「自分の三十余年のトラブルを凝縮したよう」と表現しているが、
アダルトウルフガイシリーズでは重武装した国家諜報機関や犯罪組織相手に大立ち回りすることもザラであり、青鹿先生以上に悲惨な経路で社会的に死亡してしまった人物も存在する。
破壊規模・死傷者数・各人へ降りかかる不幸について、本作の事件も流石にアダルト~全て合わせた分と同等までは言えず、その点から神明はアダルト~の「犬神明」と根本的には別人と言えよう。
・千葉
本作オリジナルキャラクター。羽黒の(元)舎弟で青鹿先生のクラスの生徒。プロボクサー志望。犬神と同じくらい老けてる。
羽黒グループの中心メンバーであるが、他人を力づくで従わせることに興味はなくストイックにボクサーとしての道を歩んでおり、
本作において唯一最初から犬神に「誇り高い男」と対等に認められた人間でもある。(青鹿先生のことは最初は鬱陶しがってたし…)
羽黒の父の援助を受けているプロボクサーの兄を目指して研鑚を積んできたが、羽黒の圧倒的な暴力を目にし一度心折られ従うようになる。
それだけであれば、羽黒は別格・どうあっても敵う訳がないと意識的に無視し我が道を行くこともできた。
だが、羽黒から「犬神の不死性が本当か見極めること」を命令され、犬神と一対一の勝負を挑んだ際は、
自分を「弱い」と言い張り一切反撃もしない犬神に(更に言えば、千葉は知らなかったが新月期で犬神は大幅に弱体化していた)パンチをかすらせることもできず、
二度目の圧倒的強者との遭遇から個人の戦闘能力を競う世界、つまりはボクサーとしての道を諦めることになった。
犬神は羽黒よりさらに強烈に自身を「弱者」と印象付けた存在であるが、人徳の差及び圧倒的過ぎる実力差からかボクシングを諦めさせられても全く恨むことはなかった。
それどころか羽黒の命令より犬神の立場を優先し、犬神は人間並と嘘をついたり、その後羽黒以外の不良には絡まれなくなったのも千葉の計らいかもしれない(ただし黒田兄のようなマジキチまでは止まらなかったけど)。
犬神は千葉からボクシングを辞めると告げられた際は、珍しく「俺のせいで辞めるみたいじゃねぇか!」とコミカルな顔で慌てるという、まるで「普通の少年のような」反応を見せた。
同じ「好意的な相手」でも、青鹿先生は慈母のような存在で色々気にかかるのに対し、千葉は自然体でつきあえる存在と言えよう。
その後ロクに他者と交流しない犬神が千葉と普通に話したこと、それと上記の嘘の報告で犬神を庇ったことが発覚、
それが重なり羽黒は千葉を「犬神の親友」と勘違いし嫉妬、瀕死の重傷を負うほどまでに暴行し強姦した。
犬神は千葉を救うため自身の血を輸血する。本来は輸血だけでは到底回復不能なほどの重傷を負わされていたが、人狼の血の効果により復活する。
しかしその際に人格は崩壊、羽黒への復讐心に凝り固まり巻き添えで多くの人間を死傷させても意にかけない怪物と化してしまう。
羽黒をいたぶることに時間をかけすぎ、止めを刺す前に人狼の血の効果が切れ羽黒に首を刎ねられる。
その後、廃ホテルで犬神を待ち構える羽黒の前に幽霊として出現する。
原作2巻目以降にも千葉のような「犬神の同年代かつ対等の友人」は存在しない。本作のより人間への憎しみが強くなった犬神が千葉と死別したことは、更なる暗い未来を予感させる。
- 小沼竜子
青鹿先生に次ぐ本作のエロ担当で羽黒の情婦。やはり青鹿先生のクラスの(ry。そこまで老けてはいないが、中三と思えない程発育が良くて派手な顔立ち。
スケベなことが大好きの典型的なビッチで、羽黒の情婦でありながらより強い存在である犬神にも恋い焦がれ抱かれたがっていた。
さらには自身をカノジョと称してマンションの管理人を誤魔化し、犬神の家に不法侵入し裸でベッドに入る、犬神をオカズに本人の前でオナニーを始めるなどやりたい放題した。
犬神からは基本的に相手にされないが、女の勘および自身の強姦経験から青鹿先生も強姦されたことがあると見破り、それを犬神に伝えた際は動揺させた。
千葉撃退後の羽黒に犬神を誘き寄せるための餌として監禁・暴行されるが、犬神が恋がれてるのは青鹿先生のため餌としてこちらの方が適任、と告げ口した。
その際、そのことが分かっていなかった羽黒のことを「人間の感情が理解できていない」と指摘した。
原作でもエロい不良少女だったが、本作ほど性格は破綻しておらず、いつの間にかフェードアウトしたほど影が薄い。犬神宅に不法侵入時にやったのも、裸でベッドに入るまでである。
第二のエロ担当ではあるが、正直青鹿先生の前では霞む。ビッチ萌えの人にとってはこちらの方がいいかもしれない。
でも青鹿先生は精神は清楚・母性的だが、肉体は男を誘わずにいられない凄まじいフェロモン体質であることを考えると…
青鹿先生強姦動画拡散事件後に、羽黒に命じられ居場所を教えるために犬神に近づくも、命令を無視しお互いを忘れられない存在にするために刺し殺そうとする。だが犬神は起き上がる。
その際に犬神から黄金のオーラを幻視、それが原因で頭がおかしくなったのか、エピローグでは自分を買った男に馬乗りになり刺殺していて、警察に逮捕された。
「犬神に病的な恋愛感情を抱く悪人」という点で、羽黒とともに「アイスの律子」の属性を共有していると言える。
原作3巻目以降(及び少年ウルフガイシリーズの直接の続編である「月光魔術團シリーズ」)に、本作における竜子以上に淫乱なエリノア・ハンターという少女が登場するが、
こちらは元から根は善良な性格であるうえ、竜子とは逆に犬神に影響されることで浄化されるようになった。
- 黒田双子
青鹿先生の(ry。原作にも登場するが一人だけで、双子なのはオリジナル要素。
他者から迫害される系の外見にしか見えないが、内に秘めた残虐性は凄まじく、自身を苛めた者たちの首謀者の体の一部を切り取り、以降羽黒グループの幹部になるほど一目置かれる存在になる。
もっとも原作では羽黒グループのNo.2である黒田だが、本作では千葉が実質的にNo.2の地位にいるので黒田双子はNo.3ポジションとなってしまっている。
弟は転校直後の犬神を刺殺しようとして自滅してしまい、病院送りになる。
兄は弟の仇を討とうと画策するも悉くが失敗、羽黒から責任を取らされる形で指を千切られるも、それを逆に羽黒に認められた証と思い歓喜する変態。
その上、羽黒は入院中の黒田弟を暗殺して犬神への敵愾心を煽る。
羽黒が弟を殺ったとは知らない黒田兄はマンマと策略に乗る形で犬神への殺意をより強くし、羽黒が秘蔵していた重火器を手に博徳学園の実態を知らせるための公開弁論会を襲撃する。
生徒・教師・テレビ局の取材班といった多くの人間を殺害し犬神も殺そうとするも、満月期では重火器も効かず、手榴弾の暴発により死亡した。
廃ホテルで犬神を待ち構える羽黒の前に、双子揃って幽霊として出現し恨み言を放つ。
だが黒田兄は羽黒に指を千切られて悦ぶような奴で、同じ人格の弟もそうであった可能性が高く、羽黒のせいで死んでもそれを恨むかどうか怪しい。
まあ羽黒の立場からすれば、黒田弟が普通に羽黒に殺されるならまだしも、犬神によって病院送りにされた後で羽黒が暗殺しているので「恨みをかっているのでは」と考えるのは普通であろうが。
ただしこれら幽霊は羽黒の妄想の可能性もあり、そうだとすると上記のように黒田双子が自分を恨んでいると思っている羽黒は、竜子から指摘された通り「人間の心が理解できない」と言える。
- 木村紀子
青鹿先生(ry。博徳学園生徒会副会長。身も心も真面目な眼鏡の少女。
羽黒グループにリンチされても無抵抗を貫く犬神を最初は英雄視し、グループ追放のため協力を要請するも、意見を同じくする他の生徒たちとともに自分たちでは何もできない弱者と侮辱される。
周りの人間はそれでも犬神を頼りにするが、彼女だけは犬神に反発する負けん気を見せる。
犬神の災難に巻き込まれる形で博徳学園の生徒たちは黒田兄に虐殺され、その結果かつて犬神をヨイショしていた生徒たちは疫病神扱いし非難するも、
非難しないどころか救ってくれたことへの感謝の念の方が強く、並の人間より芯が強いことを見せた。
その後、明確に恋愛感情と言えるか不明だが、犬神を強く気にする態度を見せて、青鹿先生を少し嫉妬させたりもしている。
エピローグでは、青鹿先生の輪姦動画拡散事件について掲載された雑誌を足元に、沈んだ表情で引きこもってしまっている様を描かれた。
- 丸山
青鹿先(ry。
苛められっ子だったが、リンチされても無抵抗を貫く犬神に触発され、その様を盗撮・動画サイトにアップロードし、博徳学園の惨状を外部に訴えた。
上記は羽黒らからの報復を恐れつつそれを承知の上という勇気ある行為だったが、その後は犬神を英雄視する人間の代表格になった挙句、
黒田兄の銃撃事件後は犬神を非難する人間の代表格にもなるというヘタレっぷりを見せた。
だが彼も普通の人間であり、自分の窮地を救ってれる(と思わしき)人間が現れたり、逆にその人間を中心にして多くの人間が死んでしまっては、過度に持ち上げたり非難するのも仕方ないことと言えよう。
だが、青鹿先生輪姦動画拡散事件にいち早く気づき、それをクラスメイトにドヤ顔で吹聴するという人間の屑ぶりを発揮。これは流石に擁護しようがない。
- 高田
青鹿(ry。博徳学園生徒会会長。
犬神に博徳学園浄化の協力を持ち掛け断られた時は、「彼の意志も尊重しよう」と、少なくとも表面上は人格者な面を見せた。
青鹿先生輪姦動画が拡散された際は、その場の空気の熱狂のままに画面に映った彼女を同一人物と特定できる証拠画像をアップロード。同級生のIPアドレスを入手していた丸山にそれを喝破される。
だが、これはその場の騒ぎに一時的に浮かれての行動であり、如何に自分が許されざる行動をしたか気づいてからは、自責の念から塞ぎ込み心ここにあらずの状態になってしまった。
木村紀子と違って登校はしていたが…
高田が何もせずともいずれは青鹿先生と特定されてしまうことは確実であろうし、一概に彼のせいとは言い切れない。少なくとも自分から触れ回ってなんの罪の意識も感じていない丸山よりはマシ。
- 杉岡由紀
青(ry。
気弱な感じの美少女で犬神に恋をするが、黒田兄の銃撃事件が原因で半身不随になり、彼を恨むようになる。
- 田所
博徳学園教師。青鹿先生の同僚。
物語冒頭で痛飲してクダを巻く青鹿先生に付き合っており、それなりに仲は良いと思われる。
自宅療養する青鹿先生を見舞ったり、不良に絡まれる犬神や羽黒グループのリンチ動画を盗撮した丸山の身を案じるなど人は良いが、
羽黒グループやそれに対処しない博徳学園への糾弾に対しては、青鹿先生と違って積極的に行動しなかった。
犬神が羽黒に誘拐された青鹿先生を捜索する際は、羽黒邸に不法侵入・東明会の構成員に暴行して警察に追われる犬神を匿い侵入時にかけられた手錠を破壊、いち早く青鹿先生拉致強姦事件について警察に連絡を取るなど積極的に協力した。
犬神から青鹿先生を愛していたのではないかと思われたが、仲は良さそうだったにも関わらず同僚以上の関係になれなかった。
告白しても振られたか、それとも告白する勇気がなかったからか。それも過去に何かあると察した上で・・・
エピローグでは憔悴しつつも勤務を続ける様子が描かれた。木村や高田と違い精神に大きく失調をきたさなかった辺りは、「責任のある大人」ということか。
- 山本勝枝
犬神の父方の伯母。三ツ星レストランのオーナーの資産家。
雪原で狼とともに暮らす犬神を引き取るが、狼に変身する彼を最初は自分の家系の恥・化け物として忌避していた。
だがともに暮らすうちに、本当は優しい心の持ち主であることを知り、このような振る舞いをしたことを激しく後悔した。犬神を手厚く養育したのもこういった過去からだろう。
・ロイス=犬神
犬神明の母親で人狼。下世話な話だが、青鹿先生に雰囲気が似た清楚で薄幸そうな美人でバストサイズも同等。
人物について詳細は描写されていないが、幼少期に死別してしまったため、犬神の心に美しく儚い思い出として残り続けた。
原作ではアラスカでの住居の襲撃時に、死亡していなかったことが判明する。襲撃者である「不死鳥結社」の真の目的は、人狼の不死性を研究することであり、その身柄を拘束される。
その肉体は研究対象として粒子になるまで切り刻まれ死亡、その意識は電子的媒体に写され「マー」と呼ばれる存在に生まれ変わる。
それは人類への憎しみと息子への愛に凝り固まった怨霊・グレートマザー的存在であった。
捕獲後から死亡の詳細な描写はないが、「アダルトウルフガイ」の犬神明は幾度も実験動物として凄惨な扱いを受けたこと、それと合わせて原作でも彼女は美しい容姿と描写されていたことを考えると、
社会的面以外(物理的・精神的)では本作の青鹿先生を超えるほど惨たらしい目に遭ったことは想像に難くなく、絶滅させたくなるほど人類を憎むようになってもそれは当然のことであろう。
そしてその事実を原作より人間を憎む息子が知って、はたして彼女への協力を拒否するであろうか…
物議を呼んだ8巻以降のネタバレ
人間関係のしがらみを断とうと引きこもる犬神のもとに、羽黒から本日の夜12時までに犬神が自分の元へこなければ、青鹿を強姦しその動画をインターネット上に無差別にバラ撒くとメッセージが届く。
青鹿暴行の現場と思われる場所に、なんとか12時直前に辿り着く犬神。
だがそこには、羽黒らがいる場所へと通じるモニターがあるのみで、動画を公開されたくなくば人狼へと変身しろと命令する羽黒。
犬神は新月期のため変身能力をはじめとする人狼としての本来の能力は失われていると明かす。
タイムリミットの12時がきてしまったことにより、青鹿の強姦動画は大々的に公開されてしまう。
嗚咽する犬神に、羽黒はさらに追い詰めるため、男たちに犯されながら快感の矯正を上げる青鹿を見せつける。だが、それは麻薬により無理矢理快楽を引き出されたもので、犬神は一目で見破る。
青鹿は麻薬によりまともに周囲を認識できなくなくなっているにも関わらず、モニタ越しの犬神と超能力のような交感をし、犬神には自分を置いて逃げるよう言う。
だが、この体験により犬神は、青鹿を救出する決意をより強固にする。
既に青鹿の強姦動画が公開されてしまったため、これ以上焦るのは羽黒の策に嵌る形で疲弊するだけであり、情報提供のため警察に一旦自身の身柄を預けるという苦渋の決断をする。
出所した犬神は竜子から青鹿が監禁されている場所を聞き、犬神はそこへと駈け出して行く。
羽黒らが待ち受ける廃ホテルに侵入、ドーベルマン、重武装した東明会の組員かつ羽黒の舎弟、ミニガン、対戦車地雷による襲撃を受け、重傷を負いつつ犬神は青鹿の元へと進んでいく。
その頃、羽黒は自分がこれまで殺した人間が幽霊として目の前に現れ、自らの悪行を責められるという体験をする。
最初は幽霊の存在を信じない羽黒であったが、やがて認めるようになっていき、己の糧とするように取り込んでいった。
羽黒らに強姦されたこと、その動画がネットを通じて拡散されたこと、麻薬により強制的な淫乱状態にさせられたこと、それに溺れてしまったこと、
そこに学生時代強姦されたトラウマとそれが原因で結婚生活が上手くいかなかった過去が重なり、青鹿の精神は崩壊、下賎な男たちから応じるがままに抱かれる肉人形になってしまっていた。
そこに犬神が現れ青鹿は正気を取り戻すが、同時に今まで自分がされたことへの絶望で狂気の叫びを上げる。
そんな青鹿を犬神は抱きしめ、かつて天涯孤独になった自分を狼が養ってくれたことを話す。
その狼たちがいる場所は殆ど人が訪れないアラスカの奥地で、羽黒たちにされたことで世間に戻れないのであれば、
そこで自分と自分を受け入れてくれた狼たちとともに人間社会と関わらずに暮らそうと告白する。
青鹿は重傷の犬神に肩を貸すも、彼女も麻薬の後遺症で足元は怪しく、二人の脱出行は困難を極める。そこへ羽黒の襲撃に遭う。
新月期でも羽黒に身体能力で勝る犬神だが、重傷を負っている上、刀やマシンガンで武装した羽黒に追い詰められていく。
さらには、先ほど幽霊を取り込んだことや、刀で切り落とした犬神の指を喰ったことにより、常人であるはずの青鹿すら悪霊の如き存在に見紛うほどに変貌・強化していった。
羽黒の勝利はほぼ確定であったが、それでも犬神の無事を信じ祈りを捧げる青鹿。そこに犬神と羽黒は黄金の光を見る。
それにより犬神は人狼としての本来の力を取り戻したかのように力が湧き、羽黒が吸収した幽霊の力はその輝きにより退散させられた。
形勢は逆転し、犬神は羽黒に止めを刺す。羽黒はただ死ぬだけでなく、その魂は自分に取り憑かせた幽霊たちにより暗黒の淵の中へ引きずり込まれていった。
脱出しようとする犬神と青鹿は生き残っていた羽黒の部下に取り囲まれるが、犬神とは別にアジト内に侵入していた神明の陰ながらのサポートもあり、犬神は最後の力を振り絞り羽黒の部下を殲滅する。
脱出後、別々に病院へと搬送される二人、青鹿は自分がいなければ犬神は死んでしまうと取りすがるも気絶してしまう。
犬神との別離を夢に見た青鹿は、目覚めた際にそれが事実であると知らされる。犬神喪失の絶望に耐え切れず、青鹿は自殺を試み、それを止めても食事も全く受け付けない状態で、後は死を待つだけであった。
犬神の保護者であり父方の伯母である山本勝枝は、本人の希望と神明の手引きで青鹿の身元引受人になることを申し出る。
山本は甥の犬神を誇りに思っており、そんな犬神の愛した女性である青鹿に生きてもらいたいと願い、犬神がかつて暮らしていたアラスカの雪原へと連れていき、そこで暮らす野生の狼たちを見せる。
犬神と心通わせた青鹿であれば狼たちも彼女を助けられる、だから狼たちとともに暮らすウルフマンとして生きてほしいと山本は提案する。
青鹿はそれを受け入れ、犬神と生きた短い時間を胸に、狼とともに残りの人生を生きていくことを決意する。
犬神は最新設備の整った病院のような場所で目覚める。羽黒の死闘で病院に搬送された後に生存したことは隠蔽、「Phoenix Organ」なる人狼の不死性を狙う組織により拉致されたのだ。
四肢は拘束され、瀕死になった後遺症で記憶は失われていたが、ある女性と心通じ合わせたことは明確に覚えていた。
名前も知らないその女性に会いに行くのは運命だと、拘束を引きずりながら這い、吠える犬神。
アラスカの雪原で狼に囲まれる青鹿はそれに呼応するように振り向き微笑む――
本作の評価について
残念ながら、8巻以降の展開からポルノ漫画的扱いをされてしまうことが多い。
まずダークヒーロー漫画として積み重ねてきた上で本職顔負けの作画による強姦描写は、最初からエロがあることが前提の18禁作品では出せないエロスがあったことは否定しようがない。
言うなれば、タクティクスオウガの「さっすがオズ様話が分かる!」の超強化版といったところか。
更に言えば、そこまでしても本作は他の田畑・余湖コンビの作品に比べてマイナーというのが実情である。
徹底的に男に汚されてしまった女性の悲惨さ、そのような事を笑いながら行う人間の邪悪さを描きたいのであれば、ポルノ的に優れた描写をせずとも可能であったはずで、
それは原作者の小説であったり、機動戦士ガンダムUC、ぼくらの、ゲド戦記といった作品でも、そのような描写がなされている。
直接的にエロティックな描写を制作側が選択した以上、本項冒頭のような評価をされても、彼らにも責任があると言えよう。
ただしある程度以上この漫画に入れ込んだ読者としては、上記のようなことを躊躇いもなくむしろ喜んで行う人間の邪悪さ、そのような被害に遭った女性を加害者より悪いかのように弄ぶ大衆の愚劣さ、
高潔故に汚れた人間社会で生きねばならない人狼の苦悩、だがそんな犬神に過剰に軽蔑したり英雄視せず一人の人間として尊敬する木村紀子や田所、自然体で接する千葉、
そして強い母性を持ちどんなに汚されようと犬神への愛を貫く青鹿晶子と彼女を生涯かけて守り愛し抜くと誓った犬神明、
こういった要素から純粋な物語として評価してもいいのではないかというのが本音である。
また作画の泉谷あゆみはともかく、脚本の田畑由秋と作画監督の余湖祐輝はベテランの漫画作家コンビであり、戦闘シーンの迫力は相当。
流石、忍殺のあの珍妙な世界観を完全再現しただけはある。
本作を読んで原作で続きも読みたくなった方々へ
まじオススメ!
…と言えるかどうか微妙である。
概要や登場人物の説明で書いた通り原作とは相違点も多く、本作の続きを読む気になって原作の2巻目である「狼の怨歌」以降を読んでもコレジャナイな感覚を持ってしまう可能性高し。
さらに言えば5巻目以降は原作者が新興宗教にのめり込んだり、そこと手を切ったりの影響か、作風が4巻以前とはエラい違いになってしまう。
ただし、(元)CIAの雇われ殺し屋の西城恵のピカレスク的な活躍、
本作における青鹿先生ほどではないが犬神を激しく一途に愛し、ヤンデレツンデレ虎獣人娘と今で言う萌え属性の塊である虎4(「ふーすー」と読む)の存在、
そして青鹿先生の死や母(の怨霊みたいな存在)との別離を通しての犬神明のマザコンからの決別など見所も多いので、機会があれば本作と同時に原作を読んでみるのもいいかもしれない。
追記修正は狼に憑かれた方がお願いします。
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▷ コメント欄
- 再会してほしいんだけどなぁ、マジンガーやニンジャスレイヤーで忙しい今は無理か。特に忍殺は、この漫画以上に(原作の進行速読に比べて)筆が遅いし。 -- 名無しさん (2015-06-12 11:20:49)
- ↑今更ながら訂正。再会でなく再開ね。まぁ犬神明と青鹿先生は再会してほしいけど。当然結末は原作とは違う形で。 -- 名無しさん (2015-06-14 16:21:58)
- 青鹿先生の外見とエロスを見ると、劇画調のキャラデザはもっと評価されていい気がする。ただしこの手の絵柄って、龍子のようなビッチはただでさえ派手なのがもっとケバケバしく見えるようになり、木村紀子のような地味娘は本格的にモッサリな外見になるから、「派手過ぎない清楚系」以外はちょっと微妙かもだけど -- 名無しさん (2015-10-17 16:25:40)
- 地獄先生ぬ〜べ〜のぬ〜べ〜は、設定によるとこの小説のファンらしい。(子供バージョンの偽名は、好きな本の主人公からとったという設定らしい。) -- 名無しさん (2016-03-31 00:28:57)
- ↑それは本当?そう言えば、少年時代に女教師に憧れその人は非業の死を遂げ、青年時代には幼な妻をゲットするという女性遍歴も似てるな。ただし、犬神明の方はぬ~べ~より後なんで、それぞれの青年時代の恋人事情については完全に偶然だろうけど -- 名無しさん (2016-04-02 22:43:13)
- 真マジンガーZERO終わったんだから、こっちを再開させてくれないかなぁ・・・ -- 名無しさん (2016-07-10 13:59:19)
- すげーどうでもいいが、例の展開でク●ニしてる奴いて草。羽黒の同類? -- 名無しさん (2023-06-16 18:49:45)
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