SCP-370

ページ名:SCP-370

登録日:2018/06/11 Mon 19:37:12
更新日:2024/02/26 Mon 13:44:34NEW!
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scp scp財団 scp foundation ミーム汚染 keter 収容違反 scp-444-jp+scp-040-jp scp-370




何の鍵か知りたい? わかった、死ね。



SCP-370とは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に存在するオブジェクトの一つである。
項目名は「A Key (鍵)」。
オブジェクトクラスはKeter。



はじめに

まずこの記事の冒頭には、このような警告がある。


SCP-370は極めて伝染性の強いミーム汚染です。職員が本稿を閲覧することで感染したケースは現在まで記録されていませんが、予防措置として本文書は初期症状が発生した閲覧者を終了するための機構が準備された環境でのみ閲覧が許可されます。SCP-370に関してのあらゆる情報を口述で広める行為は即時の終了処分を受ける原因となります。


ミーマチックエフェクトを含んでいること、そして厳重な態勢からそれが致死的を通り越したレベルであることが見て取れる。



特別収容プロトコル

SCP-370は小さな固形の鉛板に埋め込まれ、開口部が存在しない厚さ0.5mの固体の鉄製の箱に保管されます。どのような状況であってもSCP-370をこの箱と鉛板から取り出すことは許可されません。SCP-370が部分的に、または完全に露出した場合、目隠しをした職員が金属探知機で対象を発見する作業に割り当てられます。発見した際は電磁石を用いてSCP-370を移動し、融解した鉛で満たされた小さな鋳型へ移します。SCP-370を封入した鉛板が硬化した後に鉄製の箱へと戻し、そして収容保管室に戻されます。


この箱はサイト-██の特別に指定された保管室に安置されます。SCP-370に一切のメンテナンスは不要であり、一切の調査は認可されません。調査の実行のため、またはその他の理由でSCP-370の保管室へ入ろうとする欲求はSCP-370のミーム汚染による症状です。こうした症状を示したあらゆる職員は即時隔離する必要があり、症状が持続した場合は解雇されます。


SCP-370の物理的な脆弱性は未確認です。こうした種類の実験は行われませんでした。職員に対する汚染の危険性が極めて大きいために将来的にも認可されることはありません。


強い暴力性や嗜虐性の傾向を持つDクラス職員は、SCP-370やSCP-370に汚染された可能性のあるデータの取り扱いに適しています。


SCP-370の存在の徴候が発見された全財団サイトからは生放送を行えるすべての設備が除去され、最後のSCP-370イベントが発生してから1年後に復旧されます。


SCP-370に割り当てられた職員が全体的な幸福感の唐突な向上を表した場合、隔離と睡眠の妨害を行わなければなりません。この処置を行っても職員が”幸福”の症状を示し続けた場合、終了処分が認可されます。


つまり、
「見るな知るな閉じ込めろ」
「収容区画へ入りたいと言ったら終了しろ」
「曝露の兆候が発見されたら放送設備を全部外し、イベント終結から1年後に復旧せよ」
「担当職員が幸せだと突然言い始めたら隔離して寝かすな。元に戻らなければ終了せよ」
ということである。


概要

コイツが何かというと、一本の鍵である。
材質や形状、サイズなどのデータは判明していない。もちろん鍵なのだから調べればいいのだが、警告を見ればわかるとおりコイツはミーマチックエフェクトを含む致死性の情報災害を孕んでいる。
それだけなら、似たようなオブジェクトはいくつもある。ところが問題なのは、このミームのトリガーが何に含まれているか、である。


何とこの鍵の場合、外見やサイズに関する情報そのものが情報災害なのである。
つまり、鍵の実物を見るどころか、それらを記した文章を読むだけでアウト。しかもこれ、書かれていないだけで記憶処理は効きません。


で、実際に曝露するとどうなるのかというと、人格によって異なる三つの症状のいずれかを発症する。
それぞれ、SCP-370-a、b、cと分類されている。
後でわかることなのでここで言っておくが、曝露者もまたミームの媒介と化す。



  • SCP-370-a

自己中心的、または臆病な人格の曝露者が発症する。もっとも多いタイプの発現。
感染初期は症状を示さないが、チャンスがあり次第最小の苦痛で済む手段を使って自殺を試みる。
例えば首つり、リストカットなどは行わず、薬物などを用いるか、拳銃自殺する、または飛び降り自殺を選択するのである。
そして死亡すると、その死体は眩く輝いて原理不明の変身を遂げる。


問題なのはこの部分で、変身のプロセスに関する知識、そしてこの時に発せられる光もまたミーム媒介である。
この変身の後、曝露者の死体は消滅し、回収に成功した事例は一切存在しない。



  • SCP-370-b

外交的、利他的な人格あるいは嗜虐的、暴力的な人格の曝露者が発症する。
感染初期は非常に穏やかになるが、この状態が数秒続いた後、手近な人物に文字通り無差別に、手当たり次第に攻撃を始め、大量殺人に打って出る。
で、この状態の曝露者に殺された人物もまた、タイプaの曝露者同様眩く輝いて変身を遂げる。お察しの通りこのプロセスの知識と発する光はミーム媒介である。


最初のうちは単なる暴力的人物だが、2~3人を殺すと、曝露者は黄色い光を放ち始める。
この光は、目視した人物の交感神経の反応を妨害し、反撃や自衛を困難にさせる。さらに5~6人を殺すと、光の強さは3倍に達し、さらに曝露者との皮膚接触は即死となり、曝露者の目がミームの媒介と化す。


個人差があるものの、平均して12人、以前から暴力的だった場合50人前後を殺すと、曝露者は行動を停止して感染の最終段階に入る。
空へ向かって両手を広げ、大きな声で「████俺を家に帰せ!」と叫ぶ。
この声は一般的な耳当てや防音壁を透過し、そもそも耳が聞こえない場合を除けば、声が届く範囲にいる人物はミームに曝露する。


この叫びの後、曝露者の周囲に可視スペクトルの光の柱が形成され、空高くに浮遊した後何らかの行動を行って消滅する。
こちらの場合も、消えた曝露者の痕跡は発見できない。


ただしこの症状を発症するタイプの場合、人を殺さない限り感染が広がらないため、隔離した状態で間接的に指令を出すことで汚染データを扱わせることができる。



  • SCP-370-c

知能指数が高く、冷静・理知的な人格の曝露者が発症する。三つのタイプの中でもっとも危険。
その関係上、大半の財団職員はSCP-370に曝露した場合これを発症する可能性が高い。


感染初期、曝露者は30秒ほどの間、目を閉じて静止する。この時に何をしているか問われると「祈っている」と答えるのだが、財団内でこの行動が発見された場合、その人物は必要となるありとあらゆる手段を駆使して即座に終了させなければならない。


初期段階を過ぎると表向きは普通に行動するが、幸福感の著しい増大を示し、強制的に不快を与えられてもこれは持続する。
この状態の曝露者は過去に曝露したかどうかを問わず、SCP-370の外見とその性質についての正確な知識を備えていると予想されている(曝露した場合最終的には間違いなく死ぬので、この辺の事実は少々疑問符が付くが)。
そして、日常生活の中で、周囲の人間を積極的にSCP-370に曝露させようとするのである。
主に、


  • 日常会話の中でミーム媒介となる情報を口にする
  • 調査、または破壊実験のためにSCP-370を取り出そうとする
  • 財団の研究資料や報告書にミーム媒介の情報を追記する
  • ミーム媒介の情報を放送する

などを試みる。
これらの手段で50人ほどの感染に成功すると、症状が最終段階に入る。
この段階に入った曝露者の周囲の空気は可視スペクトル光を発し、かすかな黄色の光を放つようになる。この光は、見た者の副交感神経に鎮静反応を誘発し、さらに見ている人物に対して毎分数パーセントの確率でミームへの曝露を引き起こす。
この状態になってからおおよそ24時間以内に、燃え上がるナニカが接触・通過したあらゆる物質の表面に焼跡を残す。そして、曝露者は痕跡を一切残さず、どこかへと去る。


さらにこの後、目に見えない感染性の空間が残され、ここを通過するとミームに曝露することになる。
これは7日ほどで効果がなくなるが、念のため2週間は接近が禁じられることになっている。




……とまあ、要するにコイツは、自身に関する情報を知った者を媒介にミームを感染させる鍵なのである。
曝露者自身は元より、曝露者に殺された者、曝露者の発する光、症状ごとに違うがその他に種々のトラップを仕掛け、次々と感染させていく。
日本支部で言うと、緋色の鳥の情報にねこですの拡大能力が合わさったようなものである。何だこの悪夢のコラボレーション。


不幸中の幸い、オブジェクトの存在を知るだけではギリギリセーフなのでまだ対処の仕様はあるし、実際現在はかろうじて、だが収容に成功している。
が、それゆえに財団内ではこんな問題も。


SCP-370-cの感染症が一部の職員によって財団職員の拷問や殺害の口実に利用されていたことが明らかになりました。責任を問われた職員はDクラスへ降格されました。SCP-370-cがもたらす深刻な脅威を考慮しても、上記の収容プロトコルが改正されることはありません。 - ███████博士


オブジェクトよりも人間の狂気の方が怖い、とは誰の言葉だったか。



補遺

ところでSCP-370は、その特性上調査の類は一切不可能である。
にもかかわらず、ミームの特徴や発生する症状、その影響について詳細に記されているが、これは財団が初めてこの鍵を収容して、その後起きた大規模収容違反に繋がる中で、一人の博士が残した日記から得られた情報である。


最初の収容時の情報は全く残っておらず、廃墟となったとある財団サイトの密封された保管室にて、前述の状態で収容されたSCP-370と、現在のプロトコルの原型を記した書類、そしてそのサイトに勤めていた、仮称X博士の遺体と共に発見されている。
このサイトは大規模収容違反が起きたらしく、戦闘の痕跡があちこちに残っていたが、X博士以外の死体はひとつも見つからなかった。


サイトに残されていたデータからはSCP-370に関する情報は全て消し去られ、破壊されていたが、他のオブジェクトのいくつかの収容について有効な情報がサルベージされている。
で、どうやらSCP-370を回収する中で感染イベントが何度か起きたらしく、恐らくはここで情報が記録されたのだろう。
が、これらが職員に極端な先入観を与えてしまい、一時コイツはSafe認定されていた。


ところが、その後別のサイトに収容してから、コイツに起因する、あるいは関係する何かのインシデントが勃発したらしく、収容当初のKeter指定が復旧、現在のプロトコルが策定されることになった。
また、同時に全財団サイトの反ミームセキュリティが強化され、コイツの収容違反に備えられている。



X博士の手記

この仮称X博士は、廃墟と化した収容サイトの職員であり、財団では有名な悪魔主義者として知られていた。
そして、彼の遺体と共に見つかった手記から、サイト内で収容違反したSCP-370を、彼がほぼ一人で封じ込めたことが判明した。
なりふり構っていなかったためか、あるいはマジで霊的実体の力を借りたのか、手記の中身はミーム媒介となる情報災害が含まれていた。
現在は特殊な措置によってミーム媒介を除去し、許可を得ることで閲覧が可能となっている。
ちなみに、全て2009年の出来事であるため日付は省く。


まずは、全ての始まり。

Richardのチームが昨日戻った。チームの生き残りが、というべきか。ほぼ全員が一種のミーム感染で壊滅していた。彼らはアーティファクト、鍵だか何かを遺跡から持ち帰ってきた。そのRichardの様子がおかしい。本当なら悲嘆に暮れていてしかるべきだろう。大勢のエージェントを失っておきながら、彼はただ微笑んでいた。


同時に、SCP-███の研究は惜しくも中止になった。次回の総合テストは[無関係なデータとして消去]。


SCP-370は、どうやらどこかの遺跡から回収されたようだ。
で、調査チームの隊長たるRichardは、どうやらタイプbに曝露していたらしく、X博士はこの時点で鍵が原因だと睨んでいた。


翌日。

は! 私は正しかった。あの笑顔は何かの異常が関与していると知ってたんだ。


今日彼らはアーティファクトを外に持ち出した。それを目撃した連中の半分は目についた人間を手当たり次第に攻撃し始めて、そして鎮圧された。生存者は検疫に掛けられた。死亡者の遺体は焼却処分、生存者は今もまだ隔離中だ。アーティファクトは回収されてSCP-370に指定された。ちなみに、私は観測型のミーム汚染が大嫌いだ。見られもしない[罵言により削除]なものを一体どうやって研究すればいい?


これ以上ないX博士の本音である。
ところが知っての通り、SCP-370はそこまで甘くはない。


[罵言により削除]。観測型じゃない。もっと悪い。我々が過去に出くわしてきた中でおそらく最悪のミームだ。あれについて書かれたメモを読めば目で見るのと全く同じ影響を受ける――私が感染していないのはただの偶然だ。口頭で情報を伝えても結果は同じ。今や調査スタッフの3分の1以上が隔離中だ。(少なくともその人数を隔離しなければならなかった。その中の一部は忽然と姿を消した。)


もう頭がおかしくなりそうだ。昨日は慈悲の儀式を行い、いくらか気分が良くなった。[儀式の詳細は削除]。この状況でRichardに会うと本当に混乱する。彼はもう彼ではない――気紛れで陽気で躁病寸前、彼はすでに3度隔離を破ろうとした。複数の感染を引き起こしたあの絶叫の内容はおそらくSCP-370の詳しい外見についてだろう。[罵言により削除]、どんな情報が感染を広げるのかさえ把握できていない。
本日、私は自己の判断で内容を閲覧することなく大量の文書を破棄し、そして隔離に抗議した者たちを処分した。C博士も隔離した。彼は私がパラノイアに陥っていると言った。


X博士もまた媒介情報に触れていたはずだが、筋金入りの悪魔主義者だった彼は、恐らく日常的な習慣だったのだろうマジモンの悪魔儀式によって正気を保っていたようだ。
Richardの絶叫についても、どうやらまともには聞かず、「慈悲の儀式」の恩恵で曝露を遅らせることが出来たようだ。
情報が媒介と見たX博士は、関連すると思われる情報を確認せず破棄、隔離に抗議した者を終了することで対処している。的確な判断だったが……。


やっと消失した職員の謎が解けた。感染者の一部は自殺した後、眩しい閃光を放って自身の姿を消す。私はその光をほんの僅かに視界へ捉えてしまったかもしれない。汚染されてしまったのか――思考の片隅をあの鍵が漂っているのを感じられる。そうしようと思>えば、頭の中でそれの姿形を見ることができるのだろう。ああ。


私は収容手順を執筆し始めた。[罵言により削除]を永久に収容しておくために。それが私の精神を守ってくれる……あの鍵から。感染には3種類存在する――殺人を犯す種類、自殺する種類、幸福になる種類だ。自殺者と殺人者は意欲的に感染を蔓延させようとはしない。しかし、370に起因する死者は皆感染性の光を発生させるようだ。幸福な感染者は精神的な影響を受けていないように見える。
だが、連中の持つ唯一の欲求はあらゆる手段を用いて感染を広げることだ。しかし、連中は賢い。影響を受けていない振りをする。表に出すのは幸福感だけだ。たとえ連中を拷問にかけたとして、奴らは苦痛を味わっても気に止めない――その程度で不幸にはさせられないのだ。


救いがある事実としては、C博士とクラスDを仲立ちにして会話ができたことだ。彼は███へ自分で行けと言ったが、彼に行かせた。


X博士はタイプaの曝露者が発する光を、視界の隅に捉えて曝露してしまったようだ。
しかし、誰にとって幸運で不幸なのか、博士はミームに支配されることなく自らの意志を保ち、SCP-370の収容に取り掛かり始めた。
財団職員はこの手のオブジェクトについても「何をすれば、どこがどうなってどんな影響が出るのか」を調べた上で収容を維持しているが、彼らは本当に人間なのだろうか……。


我々はこの事態に対する制御を失った。リチャードとチームはまだ収容されているが、しかし微笑み野郎どもが施設内を自由にぶらついている。私は拳銃を携帯し、幸せそうな人間を見かけるとどれも撃ち殺した。スタッフが皆どれだけやつれて悲愴な顔をしているかを思えば、誤検出などまずあり得ない。


私はすべての通信システムを破壊した。感染は必ずこの施設で押し留める。


私の内の感染が徐々に広がっているのを感じる。考えないための意識的な努力をし始めた……あれについて。ここに神はいない。神とは私だ。


さすがのX博士もミーム汚染には逆らえず、徐々に自らの意識が侵食されているのを自覚していた。
それでも収容のために動く辺りは筋金入りの職員と言えるが、これ以後の日記は文章がどんどん不安定になり、さらにミーム媒介の情報が含まれるようになっていた。



サタンは私にとってただのシンボルだった。私自身の抑圧なき欲求のシンボル。自由の象徴。


私は意見を変えた。[ミーム消去]に誓った。ある禁じられた儀式を思い出し、執り行った。C博士を[編集済み]利用しなければならなかった。初めは気が咎めたが、しかし、すべては財団のためなのだ。


私は計画を練った。


全感染者が[ミーム消去]までに[ミーム消去]に私が[ミーム消去]へ接触するための開口部を作らせなければならない。鉛板で覆われた鍵の本体を私の実験装置からSCP-███と共に取り出した後は、どこかの財団の者が我々を発見するまで[ミーム消去]。


……


それから鍵を巨大な█████の鉄箱へと収めておくべきだろう。当然だが、念のため記す。


X博士はSCP-370の知識を得たことで、それらを生かして特別収容プロトコルの策定に取り掛かったようだ。
消去されている部分が多いが、どうやら曝露した感染者は消えた・去った後、この世ならざるいずこかへと集結しているようだった。恐らくそうなってからでは遅いのだろう。
そしてX博士は、とある恐ろしい儀式を用いてSCP-370のミームを強引に封じ込めた。執行者の血液を80%使用するこの儀式は、再現実験を行ったところ被験者が失血死したため全て失敗している。
博士の場合、事前に行った儀式によってそれを無理やりクリアしたようだ。


[儀式の詳細は消去]


敵対者の名において私は門を封ずる。[ミーム消去]御身の王座へと戻られ給え。


[ミーム消去]


そして全てを終えたX博士は、収容に成功したSCP-370、そして手記と共に収容室の中で命を落とした。
最後の記述はこれ。


私は何をしていた? 記憶が曖昧だ――ここ2、3日の私の精神に起きたことを考えれば不思議ではない。収容は成功したに違いない。私自身が370とこの本と共に密封されているのだから。それでいい。


儀式の影響は徐々に薄れ始めている。ひどく強い目眩、意識が薄らいでいくのを感じている。私は何を為したのだろう? 究極の身勝手か、あるいは究極の自己犠牲か? さもなければ取るに足らない意地悪の極みか?


リチャード、君に謝罪しなければ。


ミームに半ば支配された状態で収容を完了したため、正気に戻ったものの記憶が混乱していたらしい。
自ら狂気を編み出し、それを武器に狂気と戦い、命と引き換えに勝利を収めた。財団職員の底力である。




財団の致命的失敗


で、ここまで書いておいて何だが、X博士の封印はとっくに破られてしまっている。
博士はこの鍵を収容するにあたり何と記したか?


それから鍵を巨大な█████の鉄箱へと収めておくべきだろう。当然だが、念のため記す。


この箱が、370を封印している箱だと、普通は考えるだろう。
しかし、思い返してもらいたい。博士の遺体と鍵を収めた箱が見つかったのはどこか?


前記の収容プロトコルの原形と前述した鉄製の箱が、密封された保管室内部にて一つの死体と共に発見されました。


収容は成功したに違いない。私自身が370とこの本と共に密封されているのだから。それでいい。


博士の手記にもミーム汚染情報が含まれていた。それがわかっていたから、博士は自らと手記と370を一まとめにして「収容」した。


財団は、箱を、開けてしまった。


現在は曲がりなりにも封じ込められてはいるが、次に収容違反を起こしたならばその時はX博士のケース以上の被害が出ることは疑いない。
それでなくてもこの手のオブジェクトは影響の拡散に特化しているのだから、財団には頑張ってもらいたいものだ。



それにしても、この「鍵」は一体どこの、何の鍵なのだろうか?
消えて行った者達はどこに集まっているのだろうか?



……恐らく、その謎が解かれることは永久にない。



オブジェクトクラスについて

ところで、このオブジェクトの収容クラスはKeterである。しかし、オブジェクトクラス/収容クラスはあくまでも「収容の難度」を示したものであり、危険性とイコールではない。
370は現在のところ、何をどうすればミーム汚染が発生するかがわかっていて、収容違反したらどうすればいいかという手順も確立されている。
いくら致死性ミーム汚染の拡散力に特化していると言っても、それを起こさせないための収容は既に行われているのだ。
これはX博士による初期収容と、それを引きついだ別のサイトによる二次収容で確定されている。


じゃあなんでKeter=収容困難なのか?


ヒントはいくつかある。まず、370-cに関する博士の覚書。


SCP-370-cの感染症が一部の職員によって財団職員の拷問や殺害の口実に利用されていたことが明らかになりました。責任を問われた職員はDクラスへ降格されました。SCP-370-cがもたらす深刻な脅威を考慮しても、上記の収容プロトコルが改正されることはありません。 - ███████博士


これを要約すると、「どれほど危険だろうが収容方法は変えねえからな?」という話である。
これは「緩和しない」よりは「厳密化しない」と見るべきだろう。


……おさらいしておくと、SCP-370のミーム感染トリガーとなる情報は「SCP-370の外見に関する情報」である。
本体は鉛に封じ込めて見せなければいい。トリガーとなる情報は編集し、削除し、隠蔽すればいい。
完封条件が揃っているのになぜKeterなのか?


答えは簡単、この収容を370が突破しに来るからである。


現状よりも収容体制を強化するには、文書自体を閲覧禁止にすればいい。緋色の鳥と同じである。
ならば、どうしてそうしない? 監視されながらもなぜ文書を全ての職員が読める?


さらに、プロトコルのこの部分。


SCP-370が部分的に、または完全に露出した場合、目隠しをした職員が金属探知機で対象を発見する作業に割り当てられます。


取り出すな、接触すんな、実験すんな、こっち来んな、と見事に接触を断っているのにどうして露出するのか? そも「部分的に露出」ってどういうこっちゃ?
そしてこれは収容違反時の手順である。プロトコルにわざわざ違反時の対処法が書いてある=SCP-370は収容違反を起こしたことがあるということになる。
370の収容体制は厳重である。収容場所に近づきたいと思うことすらミーム汚染として扱われ終了される……つまり人為的な露出という線はほぼ消える。


じゃあどういうことかと言えば、こんな仮説で説明できる。
つまり、SCP-370は基本特性として、

  1. 勝手に動く
  2. 金属を貫通する

という能力を備えていると思われる。こうしてしょっちゅう外に出ようとするため、対処法が確立されたのだ。
もし文書の閲覧を禁止してしまえば、収容違反時の対処法を現場の職員が知らないという事態が起きる。そうなればX博士の時と同じ大惨事である。


だったら報告書にそれ書けよ、と思うかもしれないが、待ったをかける最後のヒントがコレ。


しかし最近の[データ削除済]を考慮して対象のKeter指定が復旧され、


要するに、「勝手に動く」という特性についての情報もミーム媒介なのである。
お前さんホントに何なのよ。



追記・修正はSCP-370を調べてからお願いします。



CC BY-SA 3.0に基づく表示


SCP-370 - A Key
by Alias Pseudonym
http://www.scp-wiki.net/scp-370
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INCIDENT-370-A
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  • 最近妙にこれ系増えてるな~、なんじゃこりゃ?と思ってたけどシェアワールドの創作的な奴なのね……流行りのマンガかドラマに出てくるやつかと -- 名無しさん (2018-06-11 20:41:01)
  • 知ったらアウト系はこれ、緋色の鳥、無限地獄、完全遮断情報、バグジー・・・後何があるっけ? どれも効果に差異はあれど、SCiPとしては割とよくあるタイプの効果だよね -- 名無しさん (2018-06-11 20:59:10)
  • 広がり過ぎて世界滅亡も良いけど、こういう努力によって収容できましたって記事が好きだ。 -- 名無しさん (2018-06-12 03:41:19)
  • これは…銀の鍵じゃな… -- 名無しさん (2018-06-12 05:03:46)
  • 大したやつだ… -- 名無しさん (2018-06-12 06:56:38)
  • やれやれ、たまたま趣味で悪魔崇拝してなかったら危なかったぜ -- 名無しさん (2018-06-12 08:16:35)
  • Silver Bullet並みにカッコいい話だ -- 名無しさん (2018-06-12 16:17:38)
  • 3桁ナンバーで、しかも「鍵」といういかにもシンプルそうなオブジェクト…かと思ったら意外と作り込んである話やね -- 名無しさん (2018-06-12 16:42:43)
  • やっぱりSCPにはSCPをぶつけるのが一番いいんだろうね -- 名無しさん (2018-06-12 17:14:25)
  • 最近増え続けてるこのシリーズはなんなの?よく分からんが単独でwiki作ればいいのに -- 名無しさん (2018-06-12 18:49:21)
  • 単独のwikiはあるにはあるがあれだけだと全く理解できないやつとかあるんだよなぁ -- 名無しさん (2018-06-12 19:23:36)
  • 370と一緒に封印されたはずの『博士の手記』が財団によって読まれてる(報告書に書かれている)って時点で、既に博士が施した封印は破られてる=財団が開けてしまった=博士の戦いが無意味と化す=財団の敗北なんだよなぁ -- 名無しさん (2018-06-12 19:36:25)
  • そもそも元がWikiサイトなんだよね。ただそこにあるのは「作品」で解説があるわけじゃないんて解説は別サイトでやっててここもその一つ あとはReddit、SCP Explained、ニコニコ動画などがあるね -- 名無しさん (2018-06-12 19:37:07)
  • 元ネタが分かればこの類の風刺はlolでしかない 日本人だと簡単には分からないだろうけど、向こうだと丸分かりなネタだな -- 名無しさん (2018-06-12 20:00:46)
  • ↑3いや、手記に記載されている情報には鍵のミームは含まれていないぞ -- 名無しさん (2018-06-12 21:46:45)
  • ↑↑もう一本鍵があったりして -- 名無しさん (2018-06-12 22:55:27)
  • ↑2 「鍵を巨大な鉄箱に収めておくべきだろう。当然だが、念のため記す」 -- 名無しさん (2018-06-13 00:44:32)
  • ↑の続き。現状箱に収め「続け」られてはいない。その証拠に コイツはketerクラスのままだし、それは恐らく博士の施した鉄の箱による封印を、財団が解いてしまったのではなかろうか。そういう風に自分は解釈している。 -- 名無しさん (2018-06-13 00:48:52)
  • ↑5 -- 名無しさん (2018-06-13 02:52:53)
  • すまんミスった…… 重ねてすまんが↑6 元ネタについて聞かせてほしい -- 名無しさん (2018-06-13 02:53:58)
  • ↑キリスト教そのもの 鍵ってのはとどのつまり「天国の鍵」  -- 名無しさん (2018-06-13 06:50:18)
  • むしろ「見ただけでミーム災害」とかいう物品の報告書を、制限こそあれ「見ることができる」あたりを考えるべきでは 普通に考えれば緋色の鳥みたいに完全に封じ込めてしまえばいいんだから 要は封印はひとりでに解かれる可能性があるのでは -- 名無しさん (2018-06-13 06:53:45)
  • ↑↑ありがとう!なんとなく宗教ぽいなとは思ってたんだが、「天国の鍵」そのものがキリスト教ワードだったんだね…不勉強で知らんかった -- 名無しさん (2018-06-14 00:12:04)
  • 鍵は動く、鉄を貫通することも出来る、放っておくことは出来ない -- 名無しさん (2018-06-14 10:18:34)
  • 目には目をを、歯には歯を、狂気には狂気をってか。 -- 名無しさん (2018-06-26 13:28:24)
  • キリスト教のアレだから、悪魔崇拝者が対抗できたわけだ この場合の悪魔崇拝は人間を宗教から解放する思想の方のようだし -- 名無しさん (2018-08-20 13:31:55)
  • ブライト博士とか682ぶつけたらなんとかならんの -- 名無しさん (2019-02-10 16:57:52)
  • このSCPについては万が一何かのアクシデントで破られたらヤバいってだけでただの時間稼ぎじゃない収容手順は確立されてるんだから、財団の明日はどっちだ的な表現はちょっと言いすぎじゃないかな……。本当に手の打ちようがなくてもっと絶望的なSCPはたくさんあるし、あんまりその表現を濫用して陳腐化させないでほしい。 -- 名無しさん (2019-03-25 13:10:06)
  • ただ危険なだけの不条理なオブジェクトからのクソ格好いい謎の悪魔主義者の話だな…鍵っていう重要そうな見た目だが何の耳も無い -- 名無しさん (2019-03-25 14:41:59)
  • こういうかっこいい財団職員が登場する話は好きよ -- 名無しさん (2019-05-12 02:12:29)
  • ↑8 自分も浅学で元ネタ知らなかったから博識な方がいてありがたい。知らなかった時はなんで悪魔崇拝で対抗できたのか分からなかったから尚更に。 -- 名無しさん (2019-06-15 17:52:50)
  • そういえば、何かの動画で「部分的に露出」って部分から【実は鍵そのものが物体を通り抜けて勝手に移動する】って説があったな -- 名無しさん (2020-01-25 10:57:06)
  • 久々にwiki見に来たらナックルズ×90の考察丸パクリされとるやんけ -- 名無しさん (2020-04-21 13:58:46)
  • タイプcを忌まわしき云々の像に触れさせても幸せなのだろうか? -- 名無しさん (2020-04-21 14:20:46)

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