登録日:2019/11/30 Sat 00:10:42
更新日:2024/05/16 Thu 10:07:56NEW!
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『鬼太郎霊団』とは、1996年にビッグゴールド誌上に掲載された、現状水木しげる本人の手による最後の鬼太郎シリーズである。
ただし1話で終了。
水木の弟子である小説家の京極夏彦によると、どうやら権利関係の問題で一悶着あったのが原因らしい。
1話だけじゃあシリーズとは呼べないだろうと思われるかもしれないが、なんと翌年に漫画サンデーへ移籍するという形で続きが掲載されている。
ただしこちらも1話で終了。
たった2話しか存在しないため、21世紀になるまで単行本未収録という憂き目にあっていた非常にマイナーな作品。
ところが水木没後に第2話が人気バラエティ番組で取り上げられたため、現在は(ネタ的な意味で)一定の知名度を得るまでに至っている。
ちなみに本作は、掲載誌が掲載誌なだけにかつて週刊実話で連載されていた『続ゲゲゲの鬼太郎』や『新ゲゲゲの鬼太郎 スポーツ狂時代』と同様、いわゆる大人向けの鬼太郎になっている。
現在はちくま文庫の短編集と講談社の漫画大全集で読むことが可能だが、くれぐれもアニメを見て興味を持ったお子様には読ませないよう注意していただきたい。理由はこの記事を最後まで読んでいただければ分かることだろう。
本作最大の特徴は、その設定。
鬼太郎シリーズは新作が発表される度に、その作品のみキャラクター周りの設定が変更されていた。幾つか例を挙げると
といった感じ。
本作も例に漏れず鬼太郎をはじめとする全てのキャラクターの設定が変更されているのだが、その変更具合がかなり思い切っており
鬼太郎たちは一般人の目には見えないし触れることもできない霊的な存在として設定されている。*2
目に見えない以上従来のように手紙を出すという物理的な手段でコンタクトを取ることが不可能となっており、
そのためねずみ男の半妖という設定が今まで以上に活かされる作品となっている。
【あらすじ】
第1話 阿部の奉連想
ジンバブエの古代遺跡から発掘された莫大な財宝を元手に、世界規模で目に見えない霊文化についての研究を行おうというプロジェクトが発足、
日本でも代表選考会が開かれ、超難関の試験を突破して阿部の奉連想という少年が代表に選ばれた。
だが政府は子供を日本の代表とすることに難色を示し、権力をもって代表の座をはく奪してしまう。
失意のうちに奉連想はこの世を去るも、それから彼の自宅周辺で怪現象が起こるようになった……。
水木マニアの方ならここまでのあらすじを読んでピンと来たことだろうが、
この阿部の奉連想のエピソード冒頭部分は水木が貸本漫画家時代に発表した『恐怖の遊星魔人』の冒頭部分と全く同じ展開になっている。
『恐怖の遊星魔人』も現在は比較的容易に入手可能となっているので、両方の作品を読み比べて、以降の展開の違いを楽しんでみるのも一興かもしれない。
第2話 セクハラ妖怪いやみ
大手電機メーカーの「ヨロケ電気」では、社長以下男性社員が揃いも揃って色ボケとなりセクハラが横行するという怪事が起こっていた。
その元凶である妖怪いやみに妻子を人質に取られた水木プロ社員の山田は、鬼太郎の事件への介入を阻止するよう厳命を受ける。
だが運悪く別ルートから事件に首を突っ込んできたねずみ男の手によって鬼太郎霊団が登場、
いやみによって占拠された電機メーカーのビル内で鬼太郎史上最低の戦いが幕を開けた。
上述の通りバラエティ番組にて取り上げられたエピソード。
タイトルからしてお察しの通り、これぞ水木イズムと言わんばかりのエピソードに仕上がっている。
鬼太郎霊団と妖怪いやみとの対決シーンは全て露骨な下ネタで構成されており、非常に読み手を選ぶ内容となっている。
繰り返すが、本作をアニメを見て興味を持ったお子様には読ませないよう注意していただきたい。
【鬼太郎霊団と敵対するモノ】
- 阿部の奉連想
第1話に登場。
陰陽師阿部の晴明の血を引く異能の少年。
実力で霊文化研究プロジェクトの日本代表に選ばれるも、体面を気にした政府に公衆の面前で代表の座をはく奪され、プライドをズタズタにされてしまう。
報復として狂言自殺を敢行するが、その方法というのが陰陽道の秘術「屍の法」を使って実際に仮死状態になるというもの。
葬儀まで挙げたにもかかわらず政府に反省の色が見られなかったため実力行使に出る。
霊体のまま活動し、式神を用いて襲撃した相手を妖怪に変異させることで社会を混乱に陥れた。
政府の要請を受けた水木しげるが鬼太郎霊団と繋ぎを取ろうとしているのを察知すると、配下の妖怪たちを使って武力で水木プロを占拠している。
その実力はかなりのもので、鬼太郎との直接対決でも拮抗状態になり決着がつかなかったほど。
最終的には政府と和解し、正式に日本代表となった。
- ももん爺、ずんべら坊、樹木子
奉連想によって生み出された妖怪たち。
ももん爺とずんべら坊のみ、人間が襲われて妖怪化するシーンが描かれている。
実は結構簡単に人間に戻すことができる。
- 川赤子
水木家のペットの猫が奉連想の手によって妖怪化した姿。
空を飛んで相手に襲いかかり、死ぬまで血を吸い尽くす恐るべき吸血妖怪。
- 大入道
水木プロを占拠した妖怪集団の中にいつの間にか混じっていた。
やはり奉連想の手によって生み出された妖怪だが、その正体は当時大相撲で活躍していた元大関の小錦だった。8年後にはデーモンになっているし小錦も大変だな。
- いやみ
第2話に登場。
人間の男性を色ボケに変えてしまう能力を持った妖怪。
その能力を活かして、企業から依頼を受けライバル会社をスキャンダルで潰すという商売を開始する。
直接対決の際には下記の非常にお下劣な攻撃を用いて襲いかかってくる。
- 男根砲
幻術で生み出した全裸美女軍団の股間に生えた男性器をミサイルのように発射して相手を攻撃する技。非常にイカ臭い。 - おっぱいミサイル(仮称)
同じく全裸美女軍団のおっぱいを発射する技。鬼太郎も大量のおっぱいの下敷きになってしまった。 - 陰毛攻め
いやみ自身の陰毛を伸ばして相手を絡めとる技。とにかく絵面が酷い。酷すぎる。
この技で鬼太郎を捕らえようとするが、チョコマカと動く鬼太郎を追ううちに毛が絡まって動けなくなり自滅するという最期を迎えた。
- 化け机
いやみの妖術で粗大ごみの机が変化した人食いの化け物。
鬼太郎の介入によって商売の邪魔をされることを恐れたいやみに操られ、山田の妻子を人質に取り傍若無人に振る舞う。
いやみが倒されたことで元の机に戻ったらしい。
【その他登場人物】
今までは一貫して幽霊族と呼ばれる種族の末裔という設定だったが、
本作では有史以来世界の生と死や禍福のバランスの監視・調停を行っている巨大な霊的存在の使者として霊団*3を率いているという設定。
普段はこの世とは別の世界におり、妖怪退治は調停の一環として必要と判断した時のみ地上に顕現して行っている。
戦闘力の高さは変わらないが、色気に弱いのも相変わらず。
第2話では上記のおっぱい攻撃で気を失い、目を覚ました直後に「バカにオ〇〇コ臭いな」という迷言を放つ。
今回は『続』の時のように女性器の中に潜ったりはしない。
逆に言うと本作ではそこまで印象に残るような見せ場は存在しない。
本作における「半妖」は人間界と鬼太郎たちの住む世界との橋渡し的存在のことを指しており、
鬼太郎霊団を呼ぶためには絶対にねずみ男を間に挟まなければならない。
それを良いことに助けを求める人たちに対しては毎度暴利を吹っかけており、
第1話では鬼太郎霊団に繋ぎを取る対価として、水木しげるから全財産をふんだくっている。
シリーズによって設定が大きく異なるキャラだが、本作では完全な妖怪として霊団に所属している。
第2話にて床に落ちた男根を食べ物と勘違いして口に咥えていた。アニメ5期や6期の猫娘で脳内再生した人は反省文を書いて提出な。
- 子なきじじい
第2話では小豆洗いと一緒に全裸美女の股間に杖を挿入して攻撃している。
「どうじゃまいったかーっ」
- 砂かけばばあ
第2話では上記のような痴態を晒した猫娘を諫めていた。
「だめそれ食べ物じゃない」
- 一反木綿、ぬりかべ
ぬりかべは第1話で大入道と対決するという見せ場があったが、一反木綿の方は目立った活躍が少なく影も薄い。
- 小豆洗い、油すまし、山彦、べとべとさん、百目
鬼太郎霊団のその他のメンバー。
第1話ではそれぞれの特技を活かして妖怪化した人間を元に戻す活躍を見せた。べとべとさん以外。
- 水木しげる
ご存じ大先生。霊的世界の存在に感応し、漫画という形で発表することで世間一般に啓蒙を続けていた。
第1話ではそこを見込まれ、政府に妖怪化事件の解決を依頼される。
川赤子の頭部をハンマーで叩き割るなど、なかなかアグレッシブ。
第1話のラストは、水木の夢枕に鬼太郎霊団が現れ世界の真実について教えるという形になっている。
- 水木家の人々
ゲゲゲの女房とゲゲゲの娘たち。
次女の悦子が川赤子の襲撃を受け、瀕死の重傷を負ってしまう。
- 山田
水木漫画ではお馴染みの、メガネ出っ歯のサラリーマン。本作では水木プロの社員として窓口を担当。
第2話ではそのせいでいやみに目を付けられ、ヨロケ電気からの助けの電話を水木へ繋がないよう脅迫される。
結局別ルートから霊団が介入して事件を収束させたため、ただただくたびれ損だったという彼のボヤキで物語は幕を下ろす。
- 村山田首相
第1話における全ての元凶。国際的な体面を気にして奉連想から日本代表の資格をはく奪した張本人。
その特徴的な風貌は、どっからどう見ても当時の内閣総理大臣・村山富市である。
【余談】
水木しげるがこのように大胆な設定変更を行ったのは、長年氏の夢枕に古代出雲の神が立ち、啓示を与えられるという不思議な体験をしていることが少なからず影響していると考えられる。
この体験を機に水木は己のルーツについて興味を抱くようになり、実際に隠岐の島へと渡って自分の祖先について調査している。
その集大成として2012年には古代出雲をテーマにした作品を発表している。
上述のバラエティ番組に取り上げられた際、水木プロは本作に対し
この作品は現状最後の掲載作品となっておりますが
あくまでもスピンオフ的なものであり
メインストーリーとしての鬼太郎はまだ最終回が存在しておりません
とコメントを発表している。
その言葉の通り、現在は水木プロの手によって2本の新作*4が発表されている。
なお、生前の水木が執筆した最後の鬼太郎作品は、漫画大全集に書き下ろしで掲載された「妖怪小学校」と、少年ライバルに掲載された読み切り「ねずみ猫の巻」*5。
何がとんでもないかと言うと、本作が発表されたのはアニメ4期放送の真っ只中だったということ。
当時の子供たちがうっかり間違えて読んでいないことを祈るのみである。
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追記・修正はオ〇〇コの臭いを嗅ぎ取れる域に達してからお願いします。
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- オ〇〇コ臭いで思い出したが、別の話だと股間のアレ♂を取られてたよな鬼太郎...「サオがないっ」「お父さん大変だ チ○○コがなくなった」水木さんアレ♂が取れるネタどんだけ好きなんや(笑) -- 名無しさん (2019-11-30 08:21:19)
- 村山田首相はもじってあるのに小錦は実名なのか… -- 名無しさん (2019-11-30 12:39:36)
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*2 作中では読者に分かり難いからという理由でいつもの鬼太郎ファミリーの姿が描かれているが、実際には見えていないことが強調されている。
*3 他シリーズで言うところの鬼太郎ファミリー。少年サンデー版やアニメ5期などのように様々な妖怪が集まった大所帯となっており、常に全員で固まって活動している。
*4 うち1作は水木が残したプロットを形にしたもの。もう1作は水木プロの完全オリジナルで、アニメ3期の板鬼のエピソードのように舞台を江戸時代に設定した特別編となっている。
*5 この2作品は僅か2ヶ月の間に発表されたため、どちらが先に描かれたのかは不明。
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