登録日:2011/12/14(水) 00:23:43
更新日:2023/08/12 Sat 18:49:36NEW!
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ライトノベル sf 電撃文庫 sfファンタジー 秋山瑞人 猫の地球儀 海が、 ピーターアーツvsガリレオガリレイ
ものすごく余裕のない社会に生まれてしまったものすごい天才が、
その社会の価値観と真っ向ぶつかるような夢を追いかけようとすれば、
その周囲には迷惑を被ったり不幸になったりする人が必ず出てきます。
それでもその天才は前に進むのか。
この本は、そういうお話です。
む。なんかスカした言い方。
うん。こっちのほうが近いな。『ピーター・アーツ VS ガリレオ・ガリレイ』。
この本はそういう話です。だと思います。
【概要】
イリヤの空、UFOの夏で有名な秋山瑞人のライトノベル。電撃文庫から全二巻が発行されている。イラストは椎名優。
秋山瑞人の類い稀なる描写力と夢を追う事とそれによる犠牲という硬派なテーマ、登場人物への容赦のなさで人気を呼んだSFファンタジー。
遅筆王、未完王として知られる秋山瑞人の初のオリジナル作品であり、大学時代に出した同人誌の同名の作品が基になっている。
第32回星雲賞日本長編部門最終候補作。
【あらすじ】
遠い未来。宇宙に浮かぶトルクという名のコロニー。
そこでは既に人間は滅び、代わりに知性を持った猫たちがロボットを使役して暮らしている。
禁忌とされている「地球儀行き」を目指すスカイウォーカーの黒猫・幽と、最強を目指すスパイラルダイバーの白猫・焔。
そんなふたりが出会うところから物語は動き始める。
【主な用語】
【トルク】
物語の舞台となる、天使が遺した円筒形のスペースコロニー。「夜と霧と黴の世界」。
大昔に放棄されたと思われ、随所で気密が破れていたり、酸素黴が繁茂し森を形成していたりする。
【大集会】
トルクにおける統治機構にして統一宗教機構。
その教義から外れた行動・思想は徹底して弾圧する官僚機構であり、幽・焔はそれぞれその支配体制に対してアウトローな猫である。
【地球儀・金星儀・太陽儀】
ぶっちゃけ地球/金星/太陽。惑星のことを「儀体」と呼び、〇〇儀と呼称する。
トルク内で「大集会」が説くところにおいては、地球儀は「あの世」と同義。
トルクで死んだ猫の魂は地球儀に落ちてゆき、その過程で「汚れを焼き落とされる」。ぶっちゃけただの隕石
そうして地球儀で100年の寿命を全うした魂は金星儀でもう1000年を過ごし、その後金星儀で死んだ猫の魂は太陽儀に誘われる、とされる。
太陽儀より先があるのかなどと問うてはならない。
この「三段階至天航路」を初めて説いたストーリーメイカー「剣」は、膨大な観測を背景にした研究成果としてこれを発表したのだが、
後に発見された天使の古文書では「金星儀と太陽儀の間に水星儀がある」とされておりこれと矛盾する。
【スパイラルダイブ】
トルクの中心、通称「螺旋階段」で行われる格闘技の試合のようなもの。猫がロボットを使役しながら戦う。
【猫】
にゃんこ。トルクに残された種族であり、天使なき現在は知性を持った彼らがトルクを統治しトルクに暮らしている。
特異な点として、額から「電波ヒゲ」が生えており、このヒゲからデジタル電波を送受信できる。
猫同士の意思疎通はもちろん、薄暗いトルクを歩くためのレーダーとしても使えるし、天使の遺したロボットへの指令などもこのひげを介して行う。
主食はネズミ(こっちの主食はゴキブリ等虫)で、余ったら燻して保存するのが一般的。
【スパイラルダイバー】
トルクの格闘技「スパイラルダイブ」を生業とするもの。
トルク中央部の無重力空間にある螺旋階段、その上下端に設置されたカタパルトから自身ごとロボットを射出し、螺旋階段の宙域において格闘戦を行う。
うまく運動量を保存できれば、超高速で移動し全方位にワイヤーブレードやら鉄屑やらを撒き散らしながらの熾烈な戦闘が繰り広げられることになる。
「試合の前にはお互い生前葬をしておく」という慣習からもわかるように超危険な職業であり、ほとんどヤクザ者。
このチャンピオンには「多爾袞」という尊称が与えられ、歴史的経緯から大集会においてもそれなりの権威を保証される。
【ドールマスター】
ロボット技師。
もちろんロボットは天使の遺物であり、もっとも優秀な部類のドールマスターでも一からロボットを創造できるわけではない。
それどころか体系的な理解すらしておらず、「ここをこうすればこうなる」を経験知として蓄えているだけ。
【博打屋】
博打屋。主にスパイラルダイブの結果について賭けをする。
【スカイウォーカー】
地球儀を生きたままたどり着くことを目標とする研究者。
大集会の教義に真っ向から喧嘩を売る直球ど真ん中の異端であり、過去の36匹は大集会が最優先で抹殺し続けた。
しかしその研究成果は第37代・幽にまで伝わっており、彼に言わせればトルクは軌道高度6000km・軌道速度5600m/sで地球儀の周りを回っている。
この二つの数字を堅牢な装備と機械仕掛けで突破した暁には、生きたまま地球儀に足を踏み入れられるはずである、と彼は信じ夢を追う。
【エクスプローラー】
トルクに遺された天使の遺物のなかでも、伝説にのみ残るようなものを探し求める夢追い猫。
【ストーリーメイカー】
トルクの成り立ちや神々との関わりを研究する猫。考古学者兼僧侶。
もちろん大集会に属さなければド直球の異端であり、抹殺対象。
どころか、大集会に属していても下手に都合の悪い考察をしてしまうと異端認定を食らうことになりかねない。
【ソウルセイバー】
大集会の尖兵部隊…より正確に言うなら彼らが使役するロボットの通称。宣教指揮官に統率され「御厨の一族」と呼ばれる特殊集団の「オルゴール」で動き、大集会の見定めた異端を抹殺する。
【ヤクザ】
その名の通りのヤクザ。
【トレーダー】
交易商。ここに列挙した中で一番まともな職業。
【天使】
ぶっちゃけ人類。何らかの理由で(少なくともトルクからは)滅んでおり、現在は残された骨やそれを模したとされる一部ロボット等から面影がうかがえるのみ
その遺構であるロボットやトルク内設備の自動放送、それに大集会の教義などを総合すると、なんとなく滅んだ理由が察せられるが…
一部学のある猫はある程度「天使語」の解読・使用が出来ているが、殆どの猫は名前を書くのがやっとの現状で、猫達の会話は電波ヒゲを介して行われるため「天使語の音声会話」は完全に失伝している。
【主な登場人物】
幽
地球儀は死者の魂が行く彼岸なんかじゃない。そんなのは嘘だ。
真っ黒な体と金色の眼をもつスカイウォーカーの三十七番。異端者であるため大集会から追われている。
非常に優れた頭脳とかなり特殊な生い立ちを持つ。
クリスマスを相棒として焔に野試合をふっかけて勝利する。
クリスマス
はれるでしょう。
幽の相棒のロボット。トルクではかなり珍しい天使(人間)の少女型である。記憶力等かなりガタは来ているが先代のスカイウォーカーの研究成果を守りながら次のスカイウォーカーが現れるのを待っていた。
映画やドラマのセリフ、天気予報などを引用して話す。自分では言葉を選べないようで、天使語の発音自体が猫達に理解出来ないこともあり意思疏通はなんとなくでしかできない。
焔
夢なんてな、興味のないやつから見れば鼻クソほどの価値もありゃしねぇ。
トルクで一番の食い物屋を目指してる親父の夢が、お前にとっては目クソの価値もねえようにな。
スパイラルダイバー。相棒は日光と月光。作中にてドルゴンとなる。
ダイブに関しては天才的で、幽の理論もある程度理解できるほどの頭脳や柔軟さも持つ。
幽や楽と出会い、次第に感化されていく。
楽
焔は強いから、今度こそ幽はぼかぼかにやられて死んじゃうの。
だからせめて、それまでは一緒に遊んであげる。
焔の唯一のファンである茶トラの子猫。メス。相棒は震電。
焔の追っかけをやっているうちに焔と幽の野試合に遭遇し、後に幽と友達になるが…
クリスマスとは仲が悪い。
霞
夢とは、かくも手前勝手なものだ。
大集会の僧正。底の知れない猫で、大集会の僧でありながらスカイウォーカーの理論を認めるような発言をする。それが引き起こす結果は一貫して否定しているが。
焔を気に入り、なにかと世話を焼く。また彼の疑問に答え「なぜスカイウォーカーが否定されるのか」を滔々と語ったりと、盲目的に信仰に生きるのではなく社会秩序維持的な意味で大集会を肯定していたり。
相棒として猫の面を被った戦闘用ロボットを連れ、老いた現在でも優れた操作才能を見せている。
箱には「ついき・しゅうせいしてください」と書いてある。
しかし、最近少しおかしなことが起こる。
ときどき、ダンボールの向きが変わるのだ。
「ついき・しゅうせいしてください」と書かれたダンボール箱の、取っ手の穴のある面が、
じっと、ライトノベルの棚の方を見つめていることがあるのだ。
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▷ コメント欄
- 苦しまなかったはずである。 -- 名無しさん (2015-01-03 20:03:38)
- オールタイムベスト級。日本SF史に燦然と輝く金字塔。 -- 名無しさん (2016-05-13 08:38:37)
- 粛清派を抑えられもしない癖に批判だけはいっちょ前のファッキュー霞 -- 名無しさん (2016-12-18 07:35:24)
- 秋山作品の中ではアニメ(劇場)向きだよね、まあ下手にやられても困るが -- 名無しさん (2017-03-14 17:11:20)
- 今でも時々読み返す名作。二巻の「天使戦争」は未だに希望を捨てずに待ってるヨ! -- 名無しさん (2017-03-14 20:38:51)
- 海が -- 名無しさん (2017-08-11 10:21:07)
- 良くも悪くもこういう余韻を残す、本編が静かに重い感じのラノベはみなくなったなあ。派手に悲惨なのは今でもあるけど。 -- 名無しさん (2020-08-26 14:00:25)
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