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熱帯果樹とは、主に熱帯〜亜熱帯地域に分布し、高温多湿な環境下で果実を形成する果樹の総称である。
「トロピカルフルーツ」という名称でも知られる。
▽目次
概要
特定の分類群を指す学術用語ではなく、栽培環境・気候条件を基準とした便宜的な呼称である。
多くの種が寒さに弱く、年間を通じて高温を必要とするため、温帯地域では露地栽培が困難。
一方で果実は糖度が高く、かつ芳香に富むものが多いので、世界的に重要な食料資源・輸出作物となっている。
我が国においては主に宮崎県や鹿児島県、沖縄県および南西諸島で栽培されるほか、近年は温室・ハウス栽培による商業生産や家庭での栽培も増加している。
大まかな特徴は、以下のとおり。
●高温(概ね20℃以上)かつ多湿な環境を好む種が多い
●霜・低温障害に極めて弱いものが多く、越冬が栽培上の最大の課題
●果実は生食向けが多いが、加工・薬用・油脂原料として利用される種も存在
●被子植物に限らず、ヤシ科など単子葉植物や一部の裸子植物の果樹、一部の草本も含まれる
なお、熱帯原産の果物のなかには品種改良が加えられて温帯での栽培が一般化した種類(例:柑橘類のグレープフルーツやザボン、ライム、レモン等)があるが、これらは基本的には熱帯果樹としては扱われない。
熱帯果樹カタログ
アオイ科
カカオ(加加阿、Theobroma cacao)
中南米原産の熱帯常緑高木で、チョコレートの原料として世界的に知られる。
果実そのものは楕円形で厚い果皮に覆われ、内部に白色の果肉(パルプ)と多数の種子(カカオ豆)を含む。果肉は甘酸っぱく生食も可能だが、利用の中心は発酵・焙煎された種子である。インカ帝国など古代メソアメリカ文明では神聖視され、学名の「Theobroma(神の食物)」にもその文化的背景が反映されている。
クプアス(Theobroma grandiflorum)
カカオの近縁種で、アマゾン流域原産。
ジャガイモないしはサツマイモを思わせるような大型の褐色の楕円形の果実と強い芳香を持つ果肉が特徴で、ジュースやアイス、菓子類に加工されることが多い。カカオより耐病性が高く、近年は代替作物として注目されている。種子から得られる脂肪分は「クプアスバター」と呼ばれ、化粧品原料としても利用される。
コーラノキ(可乐、Cola spp.)
アフリカ原産の常緑高木で、あの「コカ・コーラ」の原料であるカフェインを含む種子(コーラナッツ)が取れることで知られる。苦味と刺激的な風味を持ち、伝統的には咀嚼用や儀礼用として利用されてきた。
近代以降は清涼飲料水の香味原料として世界的に普及したが、現在は人工香料への置換も進んでいる。
ドリアン(榴蓮、Durio zibethinus)
「果物の王様」と称される東南アジア原産の熱帯果樹。
果実は球形ないしは楕円形で、表面は鋭い棘で覆われ、褐色~茶色が買った黄緑色である。成熟果は「タマネギが腐ったような」「長らく入浴していない人の脇汗のような」と形容されるような、極めて強烈な臭気を放つことで知られる。しかし、房状の薄い黄色の果肉は濃厚な甘味とコクを持ち、クリームやカスタードに例えられることも多い。嗜好が極端に分かれる果実の代表例であり、その独特な臭気から、公共交通機関や宿泊施設への持ち込みが禁止される地域も存在する。一方で産地では重要な経済作物であり、文化的象徴としての側面も強い。栄養価が高く、地域文化との結びつきも強い。
より詳しい解説はドリアン(果物)を参照。
なお、ボルネオ島では近縁種のカラントゲン(D.oxleyanus)も人気である。これは全体的な形状はドリアンに似ているが、熟しても果皮がくすんだ緑色のままである点と、果実の直径が4㎝~10㎝と小ぶりな点がドリアンとは異なる。ドリアンらしいあの独特の臭みや雑味がほとんど存在しないので、ドリアン類の中では食べやすい部類に入る。
バオバブ(Adansonia spp.)
アフリカを中心に分布する巨木である。果実は楕円形で、乾燥した粉状の果肉を持つ。酸味が強いので生食には適さず、飲料や食品添加物として利用されるほか、ビタミンC含有量の高さからスーパーフードとしても注目されている。なお、原産地では葉も野菜として食用にされる。
果実の殻は手触りはビロードのようであるが、よく熟したものはヒョウタンのようにカチカチに硬くなるので、殻に絵を彫ったものや、殻をコップないしはビール用のグラス(特に、このグラスでビールを飲むと、ビールがきめ細やかな風味になるといわれている)に加工したものが民芸品として出回ることもある。
太い幹を持ち、かつ木を逆さにして植えたような見た目は、「わがままを言って神様に逆らったために、罰として上下逆さまに植えられた」「鬼が巨木を引き抜いて逆さまに挿した」などの様々な言い伝えがある。
サン・テグジュペリの童話『星の王子さま』にも「怠け者の住む星を破壊した樹」という役回りで登場する。
ピンポンノキ(蘋蔢/鳳眼果、Sterculia nobilis R. Brown)
中国南部やインド、ベトナム、タイが原産の果樹である。果実は「袋果」と呼ばれる性質のもので、全長10㎝前後で表面は鮮やかな赤~茶色で毛が生えている。内面は深紅色~オレンジ色で、黒実を帯びた褐色のクリに似た形状の種子が3~4個入っている。甘味は無いが、焼いたり煮たりすると、クリに似た味がする。この見た目と風味から、Chinese chestnutという英名を持つが、いわゆる天津甘栗の材料であるチュウゴクグリ(シナグリ)とは異なる。
名前に「ピンポン」とあるが、いわゆる卓球の「ピンポン」やインターホンの音の俗称などとは一切関係はなく、中国語の「蘋蔢」が転化したものであると推測される。
アカテツ科
アビウ(Pouteria caimito)
南米原産の果樹で、黄色い果皮とゼリー状の白い果肉を持つ。果実は卵型から球体型,ツノの生えたような形もある。熟すと甘味が強く、そのとろけるような食感はキャラメルに例えられることもあるが、未熟果には渋味が残るため食用には適さない。そのまま食べるか、シャーベットやアイスクリームの中に入れてもよい。流通量は少なく、主に産地周辺で消費される。
我が国ではごくまれに沖縄県で生産される。
カニステル(Lucuma campechiana)
「ゆで卵の卵黄部分」「蒸したかぼちゃ」「蒸かし芋」と評されるようなおおよそ果物らしからぬ、ホクホクとした質感の果肉を持つことで知られる果実。
果実は先端の尖る卵型で、鮮やかなオレンジ色となり、果実内部には一つの大きな褐色の丸い種子が入っている。
甘味はあるが水分が少なく、口の中が粉っぽくなるため好みが分かれる。中米原産で、ミルクシェイクや菓子加工向きとされる。わが国では沖縄県で栽培される。
サポジラ(Manilkara zapota)
幹の表皮からチューインガムの原料「チクル」を産することで知られる果樹。果実は一見するとジャガイモそっくりの見た目をしている。果実は未熟なものは渋みが強くて食用にはならないが、熟すと干し柿に似た風味とシャリシャリとした梨のような食感があり、生食やシャーベットにして食される。熱帯地域では一般的な生食果実である。
「チクル」はチューインガムの原料のみならず、天然の絆創膏としても利用されてきたが、1940年代に石油系合成樹脂が開発されて以来、次第にそちらに取って代わられ、絆創膏としての利用は激減している。
スターアップル(星林檎/水晶柿、Chrysophyllum cainito)
西インド諸島や中南米が原産の果樹である。果実を横断すると星形の模様が現れることからこの名がある。果肉は乳白色または紫色で、甘味が強い。果皮がロウ質で覆われている(果皮表面の光沢はこのロウ質に由来する)ため、果実を食する際には丸かじりするわけにはいかず、ナイフで果皮を剥いてから食する必要がある。熟した果実において、内部の種子の周りの部分、すなわち「種衣」は寒天状になり、甘みが出る。果皮には光沢があり、この果皮の光沢と果実の実り方から、わが国では「スイショウガキ」という和名がつけられている。
マメイサポテ(Pouteria sapota)
大型の勾玉型の果実を実らせる中南米原産の果樹。果皮はざらざらしていて粗い。赤橙色の果肉は甘く、ペーストやアイス,砂糖漬けやミルクセーキに加工されることが多い。熟度判定が難しく、流通上の課題も多いので、我が国ではほとんど見かけない。
ミラクルフルーツ(Synsepalum dulcificum)
西アフリカ原産の果樹で、果実に含まれる糖タンパク質「ミラクリン」により、酸味を甘味として知覚させる作用を持つことで知られる。果実は楕円形で、直径1㎝程度となる。果実自体の味は淡白であるが、味覚変化を体験する目的で利用される点において、他の果樹とは異なる特殊な位置づけにある。実用性よりも話題性や実験的利用が先行している果実である。
より詳しい解説はミラクルフルーツ(果物)を参照。
ルクマ(Lucuma bifera)
アンデス原産の果樹で、原産地ではインカ帝国の時代から「聖なる果物」として親しまれ、神話にも登場する。さながら我が国の神話における「桃」のような役割を担っていたといえる。
果実はやや先端が尖る球形で、表皮はくすんだ緑色をしており、果肉は黄色い。果実内部には1個~3個のコロンとした形状の褐色の種子が入る。果肉はほくほくした食感で甘味が強いが、そのままで利用することは少なく、粉末状に加工されることが多い。メープルやキャラメルに似た風味を持ち、近年は健康食品として粉末やサプリメントが国際的に流通している。食物繊維、カロチン、ビタミンA・B・C、鉄分、カルシウムなどさまざまな栄養素が含まれており、「スーパーフード」として注目を浴びている。
アカネ科
コーヒーノキ(Coffea.spp)
アフリカ大陸の中部や東部、エチオピアなどの原産とされる常緑高木で、現在は世界各地の熱帯地方に広く栽培される。わが国への正式な渡来時期はよくわかっていないものの、明治時代にはコーヒーを飲む習慣が日本にも伝わっており、そのころから植物体ないしは種子が導入されたものと推測される。
現在最も多く栽培されるのはアラビアコーヒーノキ(C.arabica L.)で、小さな赤い楕円形の果実をつける。熟すとやや紫がかった色合いになり、光沢が出る。果実内部には青緑色の種子が2個入っている。この種子がいわゆる「コーヒー豆」で、乾燥させるほか、水につけて発酵させて皮を除いたうえで商品として流通する。粉砕して炒ったのち、煎じてコーヒーミルクや砂糖を加えて飲料として飲むほか、菓子類の風味づけに用いる。
近縁種に、樹形がアラビアコーヒーノキに似ているベンガルコーヒーノキ(Psilanthus bengalensis=Coffea bengalensis)があり、こちらはアラビアコーヒーとは異なり黒く熟する。品質はアラビアコーヒーノキより劣るとされるが、アラビアコーヒーノキの代用品として用いられる。
また、結実時期がコーヒー類の中でも早く、大量に収穫でき、かつ病気にも強いことから、アラビアコーヒーの栽培が難しい地域で栽培されるロブスタコーヒーノキ(Coffea robusta)も知られている。こちらはインスタントコーヒーの原料として多く用いられる。
ノニ(八重山青木、Morinda citrifolia)
インドネシアが原産の果樹で、わが国では沖縄県の八重山諸島などの生息が知られる。「ノニ」はハワイ語の名前で、わが国では「ヤエヤマアオキ」という和名でも知られている。
果実はゴツゴツした楕円形で大きさが10cm~23cmほどになり、果皮は薄緑色で表面に斑点がある。熟すると白くなり、独特の匂いを放ち、酸味と渋みを持つ。
果実内部は空洞になっていて海水に浮かび海を渡り、広い範囲に散布される。
東南アジアでは、果実や葉は食用、医薬品に、樹皮や根は染色に利用される。わが国、特に沖縄県では根を染色材料として利用されることが多かったが、近年では果実、葉を用いたサプリメントやジュースなどが健康食品として出回る。
ウリ科
キワノ(角苦瓜、Cucumis metulifer)
アフリカ原産の一年草で、角状の突起を持つ橙色の果実を実らせるのが特徴。内部の果肉は緑色でゼリー状になり、酸味が強くキュウリやバナナを混ぜたような風味とされる。観賞用として流通することもあるが、たいていは生食や加工用として利用される。
なお、「キワノ」の名称はニュージーランドでの登録商標で、植物学上は「ツノニガウリ」の名称で呼ばれるが、現在は登録商標権が消滅したため、「キワノ」という名称を用いることが増えている。
ウルシ科
カシューナッツ(Anacardium occidentale)
熱帯アメリカが原産の常緑高木。膨らんだ花托の先端に勾玉型の果実をつけるという特異な形態を持つ。肥大してリンゴのようになった花托部分、すなわち「カシューアップル」は汁気に富んで傷みやすいが甘酸っぱく、ジュースや蒸留酒に加工される。わが国においてはやはりその傷みやすさからか、生の花托を見かけることはなく、ピュレにしたものの冷凍品が輸入食材を扱う店で出回ることが多い。果実は加熱処理を施して殻を開け、内部の種子を炒って塩などで味付けしてから食用とされる。
タヒチモンビン(Spondias dulsis)
太平洋諸島やポリネシア地域が原産の果樹で、ニューギニア島やソロモン諸島でも生育が確認されているという。
房状に楕円形の果実を実らせ、それぞれの果実の表面には褐色斑点と縦に5本のすじがあり、黄緑色から黄色に熟する。成熟した果実を生食するほか、未熟な果実は強い酸味があるのでピクルス、カレーの具材にする。また砂糖を加えてゼリー、ジャム、シロップ漬け等に加工されることもあり、パイナップルに似た香りがするという。
ホコテ(アメリカアムラノキ、Spondias purpurea)
中米原産の果樹で、未熟果と成熟果で風味が大きく異なる。未熟時は酸味が強く、熟すと甘味が増すため、生食・調理用の双方で利用される。果実の見た目と原産地から「メキシカンプラム」という名称でも知られる。
果肉を食用とするが甘味があり酸味は少ないので、生食やジュースで味わうという。
マンゴー(菴羅、Mangifera indica)
世界的に栽培される代表的熱帯果樹であり、熱帯果実の代名詞的存在。
原産はインド周辺とされ、数千年にわたり人為選抜が行われてきた結果、現在では数百以上の品種が存在する。果肉の繊維量、香気、甘味、酸味のバランスは品種差が極めて大きく、生食向け・加工向けが明確に分かれる点も特徴である。日本では輸入果実としての印象が強いが、沖縄県や宮崎県などでは国産栽培も行われている。
より詳しい解説は個別項目にて。
カキノキ科
ケガキ(毛柿、Diospyros discolor)
フィリピンが原産の果樹である。果実は我が国の柿の実とそっくりな見た目をしているが、表面には桃のようなビロード状の産毛があるのが特徴である。果皮色は初めは黄土色だが、熟すにつれて紅色に変色する。果肉は生食されるが、我が国の柿とは風味が全く異なり、酸味が強く、果汁は少ない。現地では、種子も煎って食用にするといわれる。
原産地では本種の木が野生化していたるところに生えているという。そういう点でいえば、わが国でいうところの「山柿」のような存在であるといえる。
ブラックサポテ(Diospyros nigra)
我が国の柿の実やトマトとそっくりな見た目をしている。はじめ果皮の色は鮮やかな緑色だが、熟すと果肉が黒褐色に変化する特異な果実を持ち、「チョコレートプディングフルーツ」とも称される。
見た目に反して渋味はなく、「チョコレートプディングフルーツ」の愛称のようにチョコレートのような甘みを持つ。但し、黒褐色に変化するころには指で軽く押した部分がへこむほどかなり柔らかくなるので、長期輸送には堪えない。
このため、我が国のスーパーマーケットなどにおいてはほとんど出回らず、通信販売で冷凍品などを取り寄せるしかない。
カタバミ科
スターフルーツ(五斂子、Averrhoa carambola)
果実断面が星形になることで知られる果樹である。果肉は多汁で爽やかな酸味を持ち、生食のほか料理の付け合わせ、ないしは料理の飾りに用いられる。
品種により甘味型と酸味型が存在し、前者は果物として生食ないしはジュースにされるほか、後者は野菜として料理の付け合わせないしはサラダに用いられる。いずれの果実も和梨に似たサクサクとした食感を持つ。
東南アジア全域のほか、中国南部や台湾、ブラジル、ガイアナやトリニダード・トバゴなどカリブ海周辺、アメリカ合衆国のフロリダ、ハワイなどで栽培されており、我が国では、沖縄県や宮崎県などで栽培が行われており、百貨店で出回ることが多い。
また、果実の形状が面白いので、人目を引くために各地の植物園の温室で栽培されることもある。
ビリンビ(Averrhoa Bilimbi)
モルッカ諸島が原産の常緑小高木。スターフルーツに近縁の種で、スターフルーツと似た形状の果実を実らせるが、スターフルーツほど稜が鮮明でなく、ほとんど円柱形に近い形状になる場合もある。
酸味が非常に強く、生食よりも調味料や保存食への加工が中心となる。例えば、その酸味を生かして漬物や肉・魚料理の付け合わせ、カレーの材料として用いる。また、この酸味の元はシュウ酸なので、食用以外にも硬貨の錆取りに用いることもある。
カンラン科
カンラン(橄欖、Canarium album (Lour.) Raeusch.)
中国南部原産の果樹で、直径2cmほどの楕円球形の果実をつけ、黄緑色から白色に熟す。食すと最初は渋みがあるが、徐々に甘みが出てくる。生食には適さないが、蜜煮や塩漬けなどの加工により独特の風味が引き出される。
中国や我が国では薬用植物としても扱われてきた。のどに刺さった魚の骨を取り除く際によいとされため、「ウオノホネヌキ(魚の骨抜き)」という和名でも知られる。
わが国には江戸時代に渡来し、鹿児島県や沖縄県で栽培されるほか、中華料理の食材を取り扱う店で、「中国オリーブ」の名称で果実を水煮あるいはシロップ漬けにしたものの缶詰がまれに出回ることがある。
「マタイ福音書」に出る「橄欖山上の垂訓」に登場するほど、栽培植物としての歴史は長い。
余談だが、しばしばオリーブ(モクセイ科オリーブ属)の和名に「橄欖」が充てられることがある。これは、果実の見た目がオリーブに似ていることや、旧約聖書の中国語版の初版で同書中の「橄欖山上の垂訓」とは別の章に登場するオリーブに「橄欖」の字を誤って当ててしまったことで、結果として「オリーブ=橄欖」と誤解されてしまったことに由来する。
火成岩や変成岩に含まれている黄緑色の鉱物で、「ペリドット」という名前でも知られる「カンラン石」は、本種の果実の形状と色合いに由来する。
キョウチクトウ科
カリッサ(Carissa spp.)
アジア、アフリカ、オーストラリアの熱帯・亜熱帯を原産とする。カリッサ属の植物は20~30種あり、その中で果樹としてとくに有名なのはオオバナカリッサ(C. macrocarpa)やカリッサ(C. carandas)である。
花は別の科ではあるがクチナシのそれと似た見た目をしており、芳香があるため、花を観賞用にするために庭に植えることがある。果実はスモモのような球形ないしは楕円形で、熟すと赤くなる。果肉は甘酸っぱく、ジャムやゼリーに加工される。一方、有毒植物が数多く含まれるキョウチクトウ科だけあって、熟した果実以外の植物体(未熟な果実も含む)には毒性があるため取り扱いには注意を要する。
キントラノオ科
アセロラ(Malpighia emarginata DC. あるいは Malpighia glabra L.)
西インド諸島、南アメリカ北部から中央アメリカが原産とされる常緑低木で、鮮やかな赤色の果皮の、サクランボに似ているがややごつごつとした形状の果実を食用とする。果実にはレモンの約17倍ものビタミンCを含むといわれている。
果実は酸味が強く、また熟したものは日持ちしにくいため、生食よりもジュースやジャム、ゼリーやサプリメント原料として利用されることが多い。
クスノキ科
アボカド(鰐梨、Persea americana)
中米原産で、果肉に脂質を多量に含む極めて特異な果実を形成する。果実は洋ナシ型で、表面は細かな瘤で覆われている。この細かいこぶと果実の形状から、「鰐梨」という別名がある。英名のAligator pearもこれにちなみ、和名はこの英名を翻訳したものであろう。
果皮色は当初は鮮やかな緑色だが、熟すと黒緑色ないしは黒褐色に変色する。なお、赤みがかっていると熟しすぎである。
糖度は低いが、ねっとりとした食感とナッツ様の風味により、果物でありながらサラダやタコス、ワカモーレ(ディップソース)などの野菜に近い利用が定着している。実際、スーパーマーケットでもパプリカやセロリ、レタスなどのサラダ用野菜のコーナーに置いてあることが多い。栄養価の高さと用途の広さから、熱帯果樹の中でも独自の地位を占める。
より詳しい解説は個別項目にて。
グネツム科
グネモンノキ(Gnetum gnemon)
マレーシアなど東南アジアが原産の樹木である。低木の物から樹高20mほどの高木の物まで変異がある。一見すると被子植物のように見えるが、実際は裸子植物の一種で、普通風媒花である裸子植物には珍しい虫媒花である。
この性質は、裸子植物から被子植物への進化の過渡期とされる。
仮種皮は緑色から赤色に熟す。種子は楕円形で先端がとがり、一つの種子を仮種皮が包むようにして実り、我が国でいうところの「銀杏」のような構造である。インドネシアでは「メリンジョ」または「ビリンジョ」の名称で食材として親しまれ、若い仮種皮や若葉は野菜として食用になる。特に、仮種皮を油で揚げて作った「ウンピン」という揚げせんべいは現地で人気である。
クロウメモドキ科
インドナツメ(印度棗、Ziziphus mauritiana)
インドを中心とした南アジアから東南アジアにかけての地域が原産の果樹である。現在は同地域や台湾、中国南部でも栽培される。わが国でも流通量は少ないが、沖縄県で商業栽培される。
果実は鮮やかな黄緑色で、ほぼ球形または楕円形となり、青リンゴをそのまま小さくしたような見た目である。直径は2cm~3.5㎝程度になり、熟すとオレンジ色に変色し、ややしわが出てくる。果肉はリンゴのようにさくさくした触感を持っているが、果汁は少ない。わが国のナツメ(棗)のように、果実中心部には一つの硬い種子がある。甘みもあるが、幾分酸味がある。
我が国においては薬効のあるナツメと比較され、古くは「イヌナツメ」と呼ばれた。これは本種において目立った薬効が知られておらず、「薬用植物のナツメと比較して役に立たない」*1ということでそう呼ばれたのだが、目立った薬効が知られていないにしても、本種が熱帯果樹における重要な地位を確立していることは言うまでもない。現在はこの呼称はほとんど用いられなくなり、原産地や栽培地の名前を冠した「インドナツメ」や「台湾ナツメ」という名称で流通する。
クワ科
アイギョクシイタビ(愛玉子、Ficus pumila var. awkeotsang Makino)
台湾が原産の果樹で、園芸植物として流通する蔓性植物のオオイタビの変種である。「果実」のように見える部分は「果嚢」と呼ばれ、実際は花にあたる部分である。イチジク属の植物の花は大きさに差はあるが、ほとんどがこのような構造である。
この部分の形状はイチジクとよく似ているが、イチジクが熟すにつれて柔らかくなるのに対し、本種や母種のオオイタビは硬くなり、熟すと下から大きく裂け、ペクチンを多く含むジャムのような物質とともに、種子のようなごく小さい無数の果実の塊を露出する。
ここの部分を取り出して裏返し、乾燥させたものを5〜10分間水の中で揉み、ペクチン質の部分が水を吸ってぷるぷるのゼリー状になったものを冷蔵庫などでキンキンに冷やし、レモンシロップや蜂蜜などで味をつけてから「愛玉子」の名称でデザートにする。
チェンペダック(小波羅蜜、Artocarpus integer)
マレーシアなど東南アジアが原産の果樹である。パラミツに近縁の種で、樹高は10m~25m。果実は全長15㎝~30㎝とパラミツより小さいが、より強い香気と柔らかい果肉を持つ。熟した果実の表皮はややべたつく。
果肉は後述のパラミツ同様、細かな部屋のように分かれている。果肉の食味は濃厚で、パラミツがしゃっきりとした食感であるのに対し、本種はねっとりとした食感である。
パラミツ同様、熟すと独特のにおいを放つため好みが分かれるが、在地では高く評価される。果実の小ささから「コパラミツ(小波羅蜜)」という和名でも知られる。
ニオイパンノキ(Artocarpus odoratissimus)
インドネシアのボルネオなど、東南アジアが原産の果樹。原産地においては「タラップ」と呼ばれ、同属(アルトカルプス属)のパラミツやパンノキに次ぐ知名度を誇る果実である。
樹高は25m前後。果実は巨大な丸いたわしを思わせるような見た目で、直径10~20cmほどにまで成長し、生で食べることができる。果肉は甘味が強く、多汁で可食部も多い。バニラクリームのような味わいとわずかな酸味を持つという。
和名の「ニオイパンノキ」は、果実が熟すと強烈でフルーティーな香りを放つことから。
種子はゆでたり、炒ったりして食べることができ、ナッツのような香りがする。未熟な果実は、野菜としてカレーなどに用いられる。
パラミツ(波羅蜜、ジャックフルーツ、Artocarpus heterophyllus)
インドからインドシナ半島が原産である。世界最大級の果実を形成することで有名である。枝に実るとその重みで枝が折れかねないため、「幹生果」という実り方を選択した果樹である。多数の小果が集合した構造を持ち、果肉・種子ともに食用可能。完熟果は甘味が強く、未熟果は加熱調理に用いられる。果物と野菜、主食の境界を横断する存在であり、熱帯地域の食文化を象徴する果樹である。
果実を鉈で割ってから、細かな部屋のように分かれた黄色い果肉を取り出して生食する。熟すと鮮やかな緑色から、若干緑がかった褐色に変色し、人によってはやや不快に感じるような独特のにおいを発する。
太平洋戦争中、戦局が悪化するところへもってきて食料不足にさいなまれた日本軍はこの果物の果肉を蒸かしたものを食し、命をつないだという。
また、ミャンマーでは本種の樹皮から黄色の染料をとり、比丘の僧衣を黄色く染めるのに用いる。
我が国ではごくまれに果物屋で扱いやすい大きさに切られたカット品が出回る。
パンノキ(Artocarpus altilis)
太平洋諸島のポリネシアを原産地とする。果実を加熱して主食的に利用する果樹。デンプン質に富み、果樹と穀物の中間的存在として重要である。
フィジーやサモアなどでは主食とされており、当時のイギリス人入植者によりBreadfruitの名称がつけられたが、風味はパンというよりも、むしろサツマイモに近いという。栽培品の多くはタネ無しだが、種子のある古い品種も存在する。この場合は種子も焼いて食され、クリに似た風味であるという。
我が国では観葉植物として栽培されるほか、植物園で栽培される。ただ、結実に至ることはまれであるという。
モンキージャック(Artocarpus rigidus)
東南アジアが原産の果樹。たいていは野生品を採取して食用にするのだが、原産地であるマレーシアやインドネシアでは、果樹として栽培することもある。
果実は同属の果樹と同様に球形で、直径7㎝~13㎝になり、棘状の突起が果皮の周囲を覆っているのが特徴である。但し、他の同属の果樹とは異なり、あまり匂い立つような独特の香りは持たない。果皮色は当初はくすんだ黄緑色だが、熟すと黄色味の強いオレンジ色に変わる。
果肉はオレンジ色で、汁気が多くて甘いのだが、それと同時に酸味も併せ持つ。
コミカンソウ科
アムラ(庵摩勒、Phyllanthus emblica)
インド原産の果樹で、極めて高いビタミンC含有量を持つ。果実はロウ質で、球形である。透明感のある黄緑色で、六条の線が入る。
強い酸味と渋味を有し、そのままあるいは料理の材料として食用にされるが、南インドでは特に漬物とすることが多い。ビタミンCを豊富に含む。
わが国では果実を見かけることは植物園以外ではほとんどなく、果実の抽出物を配合したヘアケア製品やフェイスジェル、石鹸などが販売されている程度である。
別名の「庵摩勒」は、サンスクリット語のamalakaに由来する。
正倉院に収められた『種々薬帳』に「菴麻羅」という植物性の薬の名前が記されており、その原料が本種ではないかとされている。
アメダマノキ(飴玉木、Phyllanthus acidus)
熱帯・亜熱帯に生息する樹木である。アジア全域だけでなくカリブ海地域、中南米でも見られる。原産地はマダガスカルであるとする説が有力視されている。
果実は和名のように飴玉を思わせるような形状で、概してまばらな肋のある極小のカボチャのような形状で、薄い黄色である。生のまま食べたり料理の風味づけとして使ったりする一方、「アメダマ」という名前に反してそのまま食べるのには酸味が強すぎるため、ほとんどは砂糖漬け、塩漬けのほか、チャツネやレリッシュ、ジャムに加工されて使われる。
「オタハイト(タヒチ島)グーズベリー」[マレーグーズベリー」の別名があるが、見た目と酸味があるという点以外ではグーズベリー(スグリ科)との共通点はない。
サトイモ科
モンステラ(蓬莱蕉、Monstera deliciosa)
メキシコが原産の多年草で、革質で光沢があり、羽状に深く切れ込んでところどころに穴が開く葉を観賞用にするために栽培される。サトイモ科の例にもれず、「仏炎苞」と呼ばれる巨大な苞を伴う棒状の花を咲かせる。
開花から1年後に、細長い棒状の集合果をつける。果実色は最初は緑色だが、熟すと黄色くなる。この果実は熟すと甘みが出て、パイナップルとキウイフルーツを足して2で割ったような風味があるが、果実全体が黄色くなった程度ではまだ果実に高濃度なシュウ酸や酵素が含まれていて、口に鋭い刺激が走る。いうなれば、まだ熟していないパイナップルを食べて口がピリピリすることがあるが、それよりも刺激が強い状態となる。この場合は獣肉を柔らかくするために用いる。全体的に熟れてきてぐちゅぐちゅになってきた頃がようやく生食に向く。しかし、このころになると日持ちしないというデメリットがある。
結実から1年かかるうえ、生食可能なまでに熟すとなると放置しすぎて食べるころには腐ってしまうことも見込まれることから、食用果樹としての経済的栽培はほとんどないのが現状である。
サボテン科
カクタスペア/トゥナ(仙人掌、Opuntia ficus-indica)
ウチワサボテン類が結ぶ果実で、英語では Prickly pear、スペイン語圏では Tuna と呼ばれる。果皮は赤・紫・橙・黄色など多彩で、内部の果肉は甘味と軽い酸味を併せ持つ。多数の硬い種子を含むが、ゼリー状の果肉部分は生食・ジュース・ジャムなど幅広く利用される。
栄養面ではビタミンC、食物繊維、ベタレイン系色素を豊富に含み、抗酸化作用が注目されている。メキシコではアステカ文明期から重要な果実であり、現在でも国民的果物の一つである。果実だけでなく若い茎も「ノパル」または「カクタスリーフ」と呼ばれ、包丁で棘(他のサボテン類に比べて短く、個体によっては棘がほとんどないこともある)をそぎ落とし、表皮を剥いてから野菜として利用される。
ゲッカビジン(月下美人、Epiphyllum oxypetalum)
メキシコの熱帯雨林地帯を原産地とする、クジャクサボテン属に属するサボテンの一種である。
茎が昆布を思わせるような波打った形状の扁平な葉状茎になっており、棘は退化して、茎のくぼんだ部分に産毛状のものが生えているが、これが退化した棘の名残である。
葉状茎の草丈が1mから2mにまで達するとつぼみの形成が見られ、花を咲かせる。花は純白で、強い香りを放ち、夜に咲き始め翌朝までの一晩でしぼむ。原産地では、この強い香りに誘引されたコウモリによって受粉される。
古くから日本に普及していた株は、原産地から導入されたたった1つの株から挿し木や株分けで増やされた、いわゆる同一の「クローン」であった。
このため、「自家不和合性」すなわち「同一種のクローン間の受粉では結実を見ない」という性質により、受粉しても果実が付きにくかった。
しかし、1980年代に原産地から野性の別のクローンが持ち帰られ、それらが増殖、普及されたため、今日では複数のクローンが幾つもの園芸業者によって国内流通しており、それらを受粉することで、果実を実らせることができるようになった。こうして、別のクローン同士で受粉を人工的に施し、果実を実らせることができるようになった株が「食用月下美人」という名前で流通するに至ったのである。
果実は楕円形で、表皮は鮮やかなマゼンタピンクである。果肉は純白で、黒ゴマのような無数の種子がある。この部分は汁気に富んでいて甘いため、後述するドラゴンフルーツのように果物として食することが可能である。
また、花も食用にすることができ、台湾では開花中の花ないしはややしおれてきた花をスープの具材にして食するという。
ドラゴンフルーツ(赤皮白肉種:Hylocereus undatus/赤皮赤肉種:Hylocereus costaricensisとHylocereus polyrhizusの2種/黄皮白肉種:Selenicereus megalanthus)
中南米原産のサンカクサボテンというサボテンの一種が結ぶ果実で、現在ではベトナム・タイ・台湾・沖縄などで広く栽培されている。外見は鱗片状の突起を持つ派手な姿で、果肉は白色または赤色、黒い小種子が散在する。
味は淡白でクセが少なく、低カロリーかつ食物繊維に富むことから健康志向の果実として評価されている。果肉は白色や赤色で、無数のゴマ粒のような種子があり、果肉ごと食することができる。種子はごく小さいので、果肉と一緒に食べてしまって問題ない。果皮が黄色く果肉が白い「イエローピタヤ」という名称で呼ばれる品種は植物学上ではヒロセレウス属ではなく、セレニケレウス属という別種であるが、「ドラゴンフルーツ」の一種として市場に少数ながらも流通する。
夜に咲く巨大な白花は非常に観賞価値が高く、「一夜限りの花」として知られる。果樹・観賞植物・輸出作物という三面性を併せ持つものである。
シクンシ科
モモタマナ(桃玉名、Terminalia catappa L)
太平洋諸島からインドにわたる熱帯域を中心に分布し、我が国では琉球列島と小笠原に分布する。大木で、枝が水平に伸び、また大きな葉をまとめて広げるので、木陰を作る。
このため原産地では街路樹として栽培されるほか、果実から油をとるために栽培される。果実内部には一つの大きな種子が入っており、その種子の中の仁はアーモンドに似た風味があって食用になり、大抵は炒って食べる。
心材は加工しやすく、建材や家具材、造船材になる。
センダン科
サントール(Sandoricum koetjape)
マレーシアやニューギニアが原産の果樹である。果実はグレープフルーツ台で、表面は産毛が生えて桃のようになる。果実の構造は別科(フクギ科)のマンゴスチンに似ており、褐色の厚い果皮と白いふわふわとした質感の果肉を持が、果皮の厚みに対して果肉量は少ない。果肉部分は少しの甘みと酸味が混在し、わずかに渋みも感じられる。そのまま食べるか、スパイスをかけて食する。厚い果皮の部分も同じようにして食せる。さっぱりとした甘みで、酸味がやや強いためか、調理用、例えばジャムやシロップ漬けにして食す利用法が最も知られている。
トケイソウ科
オオミノトケイソウ(大実時計草、Passiflora quadrangularis L.)
中央アメリカないしは南米が原産の蔓性果樹である。果実はトケイソウ属の中でも最大となり、マクワウリを思わせるような楕円型で長さ20~30cm、果重約2kgに達する。
果皮は熟すと薄黄色から黄緑色になる。種子を包む半透明の仮種皮を食用とするが、味が淡泊で生食よりも加工に向く。
分厚い果皮を食べやすい大きさに切ってカレーの具材とすることもある。
パッションフルーツ(果物時計草、Passiflora edulis)
ブラジルが原産で、わが国には明治時代の中ごろに渡来し、現在は沖縄県や鹿児島県などで栽培されている。白色または薄紫色の花を咲かせ、花弁と萼片が5個ずつ交互に並ぶ。またひげ状の副花冠が長く垂れ下がるのが時計の針に似ており、「トケイソウ科」の特徴を如実に反映している。古くは「クダモノトケイソウ」と呼ばれた。
果実は緑色から赤紫色ないしは黄色に熟す。表面に若干しわが寄ったころが食べごろであるとされる。このしわこそが完熟の指標とされ、外見が劣化したように見えるほど内部の香味が強くなるのである。果肉には甘酸っぱい風味と芳香があり、生食やジュース、ゼリーの材料にされる。
なお、本種の名前の「パッション(Passion)」は「情熱」ではなく、もう一つの「キリストの受難」という意味である。この意味はメル・ギブソン監督の映画『パッション』(2004)でご存じの方も多いかもしれない。
本種と「キリストの受難」がどう関係するかというと、大航海時代にパッションフルーツの花を見たポルトガル人宣教師が、おしべとめしべの様子が「まるで十字架に磔にされたキリストのようだ」と感想を抱いたことに起因する。
グラナディーラ(甘味果物時計、Passiflora ligularis)
南米が原産の果樹で、パッションフルーツの近縁種だが、果実は熟すとオレンジ色になる。果肉の性質もパッションフルーツのそれによく似ているが、パッションフルーツのそれとは異なり、酸味がほとんどなくて甘味が強い。
ミズレモン(Passiflora laurifolia)
熱帯アメリカ州原産の果樹で、和名のようにレモンを思わせるような楕円形の果実を実らせる。果実の形状ないしは色合いから「タマゴトケイソウ」または「キミノトケイソウ(黄実の時計草)」の和名も付けられている。果実の風味はパッションフルーツのような酸味はなく、甘みが濃くて汁気に富み、芳香がある。普通生食されるが、ジュースにも向く。果皮の甘味が強いことから「スイートパッション」という名前でも流通し、我が国においてはデパートや百貨店においてまれに出回る。
ナス科
タマリロ(木立蕃茄、Solanum betaceum)
南米アンデス原産の小高木で、トマトの近縁にあたる。果実は卵形で赤色または橙色、内部はゼリー質の果肉と多数の種子を含む。味はトマトに似た酸味を基調としつつ、ほのかな甘味と独特の香りを併せ持つ。
生食のほか、ジャム、ジュース、ソースなど加工利用が中心で、ニュージーランドなどでは商業果樹として定着している。草本野菜的イメージの強いナス科の中で、明確に「木になる果実」である点が特徴である。
ナランジラ(Solanum quitoense)
南米原産の半木本性植物で、果実は表面が産毛で覆われた橙色の柿のような見た目をしている。果実内部は黄色で、種子の周囲はやや緑がかる。味は強い酸味と爽やかな芳香を特徴とし、現地ではジュースやアイス、カクテルの素材として不可欠な存在である。
果皮や茎には細かい刺を持つ場合があり、栽培・収穫には注意を要する。生食よりも加工向きでである。
ペピーノ(Solanum muricatum)
アンデス地域原産の多年生植物で、果実は先端の尖る楕円形で、黄白色の地に紫色の腹側な縞模様が入る独特の外観を持つ。
果肉は多汁で、メロンや洋ナシに似た穏やかな甘味を呈する。このため、まれにPear melonという英名で呼ばれることがあり、種苗がメロンの一種として出回ることがあるが、本種はナス科の植物であって、ウリ科ではない。
比較的冷涼な環境にも適応するため、温帯地域でも栽培例があり、日本では「果実的野菜」のような位置づけで扱われることが多い。
パイナップル科
パイナップル(鳳梨、Ananas comonus)
南米が原産の多年草で、わが国には江戸後期に紹介されたが、本格的な栽培が始まったのは大正以降である。現在はもっぱらコスタリカ、フィリピン、ブラジル産のものが流通するほか、我が国においては小笠原諸島や沖縄県などで栽培される。
夏に花を咲かせ、花は集合花で、花托が成長して果実になる。果実は甘みと程よい酸味があり、生食されるほか、ジュースや缶詰に加工される。
より詳しい解説は個別項目を参照。
バショウ科
バナナ(甘蕉/実芭蕉、Musa x paradisiaca)
世界各地の熱帯もしくは亜熱帯地域で栽培される多年草植物。世界の果実生産量・消費量の双方において最大級を誇る熱帯果樹。食用バナナの多くは種なしで、栄養繁殖によって維持されている。
品種改良の歴史が長く、現在流通する「キャベンディッシュ系」は耐病性と輸送性に優れる一方、バナナパナマ病への耐性の低さ*2と遺伝的多様性の低さが問題視されている。生食用の果物としての品種以外にも、熟しても甘みが出ず果肉が硬いままで、主食作物として栽培される「プランテイン」という品種もある。
より詳しい解説は個別項目を参照。
パパイヤ科
パパイヤ(蕃瓜樹、Carica papaya)
メキシコなどの中央アジアが原産の常緑小高木で、現在は世界じゅうの熱帯地域や姉帯地域で栽培される。外見は樹木に見えるが、実際には幹部は木質化せず、しかも台風や病害虫の害を受けて倒れることも多いので、大型草本ともいえるような植物体である。
単幹の直立茎の先端部に掌状葉を展開する。
果実はウリのような楕円形で、最初は緑色だが、熟すにつれて黄色~オレンジ色になる。果実の内部は橙色で中空、半透明の種衣に包まれた無数の黒褐色の種子がある。若い果実は傷つくと白い乳状の液体を出すので、「乳瓜」という別名がある。また、果実の形状から「木瓜」という別名もある。
よく熟した果実を果物として生食やジュースにする。沖縄やタイ、フィリピンなどでは未熟果(青パパイヤ)を野菜としてサラダや炒め物、煮物にして食用にする。
現在は耐寒性を持たせた改良品種が広まり、関東でも青パパイヤの生産が始まっており、夏から冬にかけて首都圏のスーパーマーケットや百貨店で見かける機会が増えてきている。
ババコ(Vasconcellea × heilbornii (V.M. Badillo) V.M. Badillo)
マウンテンパパイヤ(Vasconcellea pubescens)とその同属のスティプラタ種(V. stipulata)との自然交雑によって生まれたとされている。
果実は先端の尖る細長い五角柱形で、生食の他、ジュース等に加工される。パパイアにイチゴ、キウイフルーツ、パイナップルを混ぜたような風味があるという。果肉は酸味が強く、生食よりもジャム、シロップ漬け、菓子材料などに向く。特に南米やニュージーランドではデザート果実として一定の地位を確立している。
耐寒性があるものの、我が国のような蒸し暑い気候では育ちにくくなるという傾向があり、我が国では1980年代に一度紹介されたものの、「知る人ぞ知る」という立ち位置にあり、未だ普及していない。
バンレイシ科
アテモヤ(Annona × atemoya)
チェリモヤとバンレイシの人工交雑によって生まれた改良果樹である。両者の長所を併せ持ち、果実は大型で果肉量が多く、甘味・香気ともに優れる。外皮は比較的滑らかで、扱いやすさも向上している。
耐暑性・耐病性が高く、商業栽培に適することから、近代以降急速に普及した。風味はチェリモヤに近く、栽培特性はバンレイシに近いとされる。バンレイシ科における人為選抜と品種改良の成果を象徴する存在であり、「現代型バンレイシ果樹」と位置づけられる。
ギュウシンリ(牛心梨、Annona reticulata)
熱帯アメリカが原産の果樹で、果実表面は亀の甲羅のようになり、形状は牛の心臓に似ている。果実色は初めは黄緑色だが、熟すと赤みの強い褐色もしくは黒みがかった赤色に変色する。特有の芳香があり、風味はセイヨウナシに似ているが、甘みはバンレイシやチェリモヤより劣り、また種子が果肉から離れにくいので、やや食べにくいのが難点である。
果実は柔らかくて傷みやすいので長期輸送に堪えず、現地での消費に限られるが、耐病性が高いため、他のバンレイシ科の果樹の苗の台木にすることもある。
ソンコヤ(Annona purpurea)
中米原産の果樹で、一見すると小さなドリアンに似た見た目をしている。果実は大型で外皮が硬く、果肉は橙色から赤橙色を呈する。風味は甘酸っぱく、やや繊維質である。
国際的流通は限定的だが、原産地周辺では在来果樹として重要な位置を占める。バンレイシ科の中でも特に地域色の強い果樹であるといえる。
チェリモヤ(Annona cherimola)
バンレイシ科を代表する看板果樹であり、「アイスクリームフルーツ」の異名で知られる。原産は南米アンデス山麓の比較的冷涼な高地とされ、他の多くの熱帯果樹とは異なり、温帯寄りの気候にも適応する特性を持つ。果実は心臓形から卵形で、表面に鱗状の隆起を持ち、内部には白色で非常に柔らかい果肉が詰まる。
果肉は強い甘味とバニラ様の芳香を持ち、生食での評価が極めて高い。果実の風味はしばしば「バニラとパイナップルを合わせたかのよう」と例えられる。アイスクリームにしてもよい。
トゲバンレイシ(棘蕃茘枝、Annona muricata)
バンレイシ科の中でも特に大型の果実を形成する種である。果実は楕円形で、柔らかい棘状突起を持つ外皮が特徴的で、果肉は白色、多汁で甘味と酸味が混在する。
生食も可能だが、ジュース、シャーベット、アイスクリームなど加工利用が中心である。「イチゴとパイナップルの組み合わせに、バナナやココナッツを思わせる下にあるクリーミーな香りと対照的な酸っぱい柑橘系の香りが加わった物」と表現されることがある。フィリピンでは、若い果物を野菜として利用することがある。
近年は健康食品として注目される一方、果実成分に含まれる生理活性物質の神経毒性が指摘され、学術的議論の対象にもなっている。
嗜好性と潜在的リスクが同時に語られる、現代的評価の揺れる果樹である。
バンレイシ(蕃茘枝、Annona squamosa)
南米原産の果樹で、果実表面の鱗片状構造が釈迦の頭部に似ることからこの名で呼ばれる。果実は比較的小型で、熟すと果皮が裂開しやすい。果肉は白色で非常に甘く、チェリモヤよりも野性的で濃厚な風味を持つ。
インド、東南アジア、台湾などで古くから栽培され、地域によってはチェリモヤ以上に親しまれてきた果樹である。加工適性は低いが、種子や葉には殺虫・忌避作用があり、民間利用の歴史も長い。食用果樹でありながら薬用植物的性格を強く残す点が特徴である。
ポンドアップル(池林檎/犬蕃茘枝、Annona glabra)
湿地や河岸に適応した特異なバンレイシ科果樹である。果実は球形で、外皮が滑らかながら、まばらに棘が生えている。果肉は淡色で、果実:ジュース・ゼリー・ワインにされるが、食味はバンレイシやチェリモヤなどの同科の果樹と比較して淡泊または劣ると評価されることが多い。わが国では英名を直訳した「イケノリンゴ」という和名以外に「イヌバンレイシ」という和名で知られているが、やはり食味がバンレイシなどと比較して劣ることにちなむ*3。
食用果樹としての価値は高くないが、耐水性・耐塩性に優れ、台木や環境保全植物として重要である。
ポポー(Asimina triloba)
北米が原産で、バンレイシ科の果樹の中では耐寒性がもっとも高い。わが国には明治末期に渡来し、現在は庭木として栽培される。
秋に長さ10㎝~15㎝の細長い楕円形の緑色の果実をつける。これを追熟させ、数日して芳香が出たころに生食あるいはアイスクリームにして食す。果肉は柔らかく、「森のカスタードクリーム」と呼ばれるようにクリーム状で大変に味が良い。また、柿を思わせるような風味と果実の見た目がアケビに似ていることから「アケビガキ」の和名で呼ばれることもある。
ただ、熟すと柔らかくなって傷みやすくなるので、あまり市場には出回らない。
ビワモドキ科
ビワモドキ(Dillenia indica)
インドやマレーシア、スリランカやタイが原産の常緑高木で、ほかに中国雲南省やベトナムにも分布している。繊維状パルプから構成される15個内外の分厚い心皮が癒着してできるので、特有の形状になる。この部分は強い酸味があり、生食はされない。砂糖とともに煮てジャムにするほか、ダール(ヒヨコマメペースト)やチャツネ(カレーのベースとなる調味料)の材料とする。果物というよりかは野菜に近い利用法をする果樹であるといえる。
ここまで読むと、「ビワモドキ」という和名の「ビワ」の部分と共通する箇所がないように見える。本種は、はっきりした波形の表面に目立つ葉脈を持った、遠目から見るとビワの葉を思わせるような見た目の長楕円形の葉をつけるのである。これが「ビワモドキ」という和名の由来である。
フクギ科
キヤニモモ(黄脂桃、Garcinia xanthochymus)
インドから東南アジア諸国、中国南部が原産の常緑高木である。開花後に直径5㎝程度でやや先端が尖る球形の果実を実らせる。この果実は当初は黄緑色であるが、熟すと黄色く変色する。和名は「黄脂桃」という字を当てるが、これは果実の形状が先端が尖る球形で、まるでモモの果実のような形状であることと、そこから黄色い樹脂(ヤニ)のような物質がにじみ出てくることに由来する。
酸味が強い果肉は生食、シャーベット、薬用にする。また、果樹以外にも、樹皮から樹脂を採取して染料ないしは顔料として利用する。
名前の「ヤニ」にあまり良いイメージがないためか「タマゴノキ」という別名で呼ばれることもあるが、これはウルシ科のタヒチモンビン(クドンドン)を指すこともあり、紛らわしい。
マンゴスチン(Garcinia mangostana)
東南アジアが原産の常緑高木で、「果物の女王」という愛称で有名である。わが国には明治~大正時代に渡来している。
果実は濃い紫色の厚くてかたい果皮に包まれ、内部には白色で房状に分かれた果肉(仮種皮)がミカンの房のように収まっている。この果肉は、透明感のある甘さと穏やかな酸味を併せ持ち、非常に繊細で清涼感のある味わいを持つ。
前述のとおり、果皮は厚みがあって硬いのだが、その硬さの反面日持ちがしにくい。
フトモモ科
カムカム(Myrciaria dubia)
アマゾン川流域の湿地帯を原産とする低木性果樹で、世界でも屈指のビタミンC含有量を誇る果実をつけることで知られる。果実は小型の球形で、完熟すると赤紫色を帯びるが、強烈な酸味のため生食されることは少なく、粉末やジュース、サプリメントなど加工用途が中心となる。
先住民社会では古くから滋養果として利用され、近年は「機能性果実」の象徴的存在として国際的な注目を集めている。一方で、栽培には高温多湿な環境と水辺条件が必要で、商業栽培の地域は限定的である。
グアバ(蕃石榴、Psidium guajava L.)
熱帯から亜熱帯に広く分布する代表的な果樹で、世界各地で在来化・栽培化が進んでいる。果実は品種によって果肉色が白色・淡紅色・濃紅色と多様で、甘味と酸味、特有の芳香を併せ持つ。
ビタミンCや食物繊維が豊富で、生食のほか、ジュース、ジャム、菓子原料としても重要。葉は民間薬としても用いられ、果樹・薬用・庭木の性格を併せ持つ点がフトモモ科らしい。熱帯果樹の中でも比較的耐性が強く、家庭果樹として普及しやすい存在である。
ジャボチカバ(木葡萄、Plinia cauliflora (Mart.) Kausel)
ブラジル原産の果樹。幹や太い枝にいきなり花が咲き、その跡に果実が育つ「幹生果」という視覚的にも強い印象を与える性質をもつ。
果実は黒紫色の球形で、素直に表現すると「でっかいブドウの実」。
よく結実した樹を遠目から見ると、ブドウの実を拡大したような深紫の実がなんか普通の樹の幹にボコボコ湧いているという、知らないまま見るとかなりすごい外観になる。
果実は厚い果皮の中に白色半透明の果肉があり、甘味が強い。生食して美味しいのだが劣化の早い果物なため流通性に乏しく、生食用途は産地周辺に限定される。それを補うためワインやリキュール、ジャムにも加工する方向性も試されている。
樹姿の美しさと結実風景の独特さから、果樹と観賞樹の境界に立つ存在といえる。
ストロベリーグアバ(Psidium littorale)
グアバ類の一種で、イチゴを思わせる芳香をもつことからこの名で呼ばれる。果実は小型で赤色、甘味と酸味のバランスが良く、生食適性が高い。
比較的耐寒性があり、温帯寄りの地域でも栽培可能な点が特徴で、フトモモ科果樹の中では分布域が広い。果実の香りの個性が強く、少量でも存在感があるため、家庭果樹やジャム原料として重宝される。
ピタンガ(Eugenia uniflora)
南米原産の果樹で、肋が入ってカボチャのような見た目の独特の果実形が特徴的。色は橙色から赤、濃紫色まで幅があり、完熟度によって風味が大きく変化する。
未熟果には松脂のようなクセがあるが、完熟すると甘酸っぱく芳香が強まる。ビタミン類が豊富で、ジュースやゼリーに加工されることも多い。樹形はコンパクトで、生垣や観賞果樹としても利用される。
我が国では沖縄県でまれに栽培される。
フェイジョア(Acca sellowiana)
南米原産で、フトモモ科の中では比較的冷涼な気候に適応する果樹。果実は楕円形で、果肉は半透明のゼリー状、パイナップルやミントを思わせる複雑な香味をもつ。このため、「パイナップルグアバ」という別名でも知られる。
果実だけでなく、肉厚で美しい花弁も食用となり、観賞性と実用性を兼ね備える点が評価されている。日本では庭木果樹として定着しつつあり、フトモモ科果樹の中でも温帯向きの代表例といえる。
フトモモ(蒲桃、Syzygium jambos)
東南アジア原産の果樹。「フトモモ」の名は、中国名の「蒲桃」に由来する。果実は淡黄色〜薄紅色で、果肉は軽く、薔薇のような香気を持つ。
生食のほか、砂糖漬けや加工品にもされるが、保存性は高くない。このため、生食以外にジュースやジャムにすることが多い。
果実よりも樹姿や芳香のある薄黄色の雄しべがよく目立つ花を観賞するために栽培される場合も多い。
レンブ(蓮霧、Syzygium samarangense)
マレー半島が原産の果樹で、ジャワから台湾、ハワイなどで栽培される。栽培地から「ジャワフトモモ」とも呼ばれる。
果実は釣り鐘型で、表面はワックスを塗ったような光沢がある。果実の色は白色または薄紅色である。果肉は白色で、果汁は少なく、海綿質である。しばしば生食され、風味は「ナシとリンゴを一緒に食べたようである」と評され、食感もサクサクしており、リンゴに似ている。
マメ科
インガ・エドゥリス(Inga edulis)
南米が原産の果樹で、植物学上はマメ科植物の中ではネムノキに近い種である。
ペルーやエクアドル、コロンビア、ブラジルに分布している。樹高は30m程度となり、直径は60㎝と太くなる。
密生した穂状花序に花を咲かせ、開花後に全長20㎝程度のくすんだ黄緑色の莢果を実らせる。さやの中には白く水分の多い厚い果肉の中に包まれた黒い種子があり、食用になるのはこの果肉部分である。果肉部分はバニラアイスクリームのような味がするという。この為英語圏ではIce cream beanと呼ばれる。
キンキジュ(金亀樹、Pithecellobium dulce)
メキシコなど中南米が原産の果樹で、全長10㎝~15㎝の程度の莢に包まれた豆果をぶら下げるようにして実らせる。莢果は環状となり、ソラマメの莢がとぐろを巻いたような見た目となる。莢色は最初は黄緑色だが、熟すと桃色ないしは朱色となる。完熟すると莢が裂け、白い果肉があらわになる。
この果肉部分はほんのりとした甘みを持ち、生食されるほか、ジュースの原料にもなる。種子そのものも食用となる。
タマリンド(朝鮮藻玉/羅望子、Tamarindus indica)
熱帯アフリカが原産の果樹である。ソラマメをそのまま大きくしたような形状の果実を実らせる。熟した果実は、莢状の果皮と果肉が容易に外れる。内部には褐色でペースト状の果肉が詰まっており、甘味と強い酸味が共存する独特の風味を持つ。
果肉は世界各地で食文化に深く根づいており、東南アジアでは調味料や飲料に、インドではカレーやチャツネに、ラテンアメリカでは清涼飲料の原料として利用される。甘味・酸味・旨味を同時に加えられる果樹として重宝されている。
実は、我が国においても意外なところで利用されている。それは、株式会社桃屋の販売する「ごはんですよ」や「梅ぼしのり」などの海苔の佃煮で、あのとろりとした食感はタマリンドから抽出した増粘剤によるものである。
樹木自体は乾燥や高温に強く、街路樹や日陰樹としても利用される。
ミカン科
ウッドアップル(長柄蜜柑、Limonia acidissima)
インドが原産の果樹である。ミカン科には珍しく、落葉高木である。わが国には1918年に、植物学者の島田弥市が当時わが国の植民地であった台湾にジャワから輸入したものを紹介したが、わが国にも台湾にもそれほど普及することはなかったという。それはおそらく、後述する完熟した果実の見た目と臭気のせいであろう。
花の後には直径8㎝から10㎝の真球形の果実をつける。この果実は白っぽい褐色で、表面の果皮は厚さ4㎜程度の木のようにカチカチに硬い殻となる。それゆえ「ウッドアップル」と呼ばれる。また、果肉は茶色くてドロドロしており、古くなった味噌のような独特のにおいがあって酸味が強い。果実の硬い殻をハンマーや鉈などでかち割り、果肉に砂糖をかけ、スプーンですくって食べるが、極端に甘かったり、極端に酸っぱかったりして大変当たりはずれの大きい果物であるという。
外も中身もとても果物とはいいがたいような見た目だが、ビタミンCやタンパク質、ポリフェノールの含有量が非常に高いので、現地では健康食材として親しまれている。
果実の殻は硬いので、洗って磨いたのち吸い殻入れや小物入れに加工する。
ホワイトサポテ(Casimiroa edulis)
アメリカ大陸原産の果樹で、メキシコの高地から中央アメリカにて栽培される。
テニスボール大~ハンドボールより一回り小さい程度の果実を実らせる。果皮は黄緑色〜黄色で、果肉は白く、西洋ナシやバナナ、カスタードを思わせるなめらかな食感と風味を持つ。
風味は非常に優れているのだが、果肉が柔らかいので、日持ちしにくい。わが国では沖縄・鹿児島・和歌山などで商用栽培されているが、これもやはり日持ちのしにくさからか、いかんせん出荷量や流通量が少ないのが現状である。とはいえ、耐寒性は熱帯果樹の中ではそれなりにあるので、現在は園芸店の通信販売で家庭果樹として苗木が売られていることが多い。
ムクロジ科
アキー(Blighia sapida)
カリブ海地域原産の果樹。果実は成熟すると自然に三裂し、内部の淡黄色の仮種皮のみが可食部となる。未熟果や種子には強い毒性があり、調理・摂取の誤りは重篤な中毒を引き起こす危険がある。このため「正しく扱われて初めて食材となる」代表例としてしばしば言及される。一方で適切に処理された果実は「スクランブルエッグのような」と評される独特の食感と風味を持ち、ジャマイカ料理では塩漬けタラと合わせた料理が国民食として定着している。危険性と食文化が表裏一体となった、極めて象徴的な熱帯果樹である。
我が国では生の果実を見かける機会は皆無に等しいが、輸入食材店においてアキーの缶詰が売られていることがあるほか、ジャマイカ料理専門店では缶詰にしたものを料理のメニューに用いることがある。
マモンチーロ(Melicoccus bijugatus)
中南米からカリブ地域に分布する果樹で、緑色の硬い果皮の内側に透明感を帯びたオレンジ色の果肉を持つ。「ライムとライチを合わせた味」と評されるように甘味と酸味のバランスが良く、吸うようにして食べる独特の食べ方が特徴。流通性は低く、主に地域内消費に留まるが、在地では身近な果実として親しまれている。
ライチ(茘枝、Litchi chinensis)
ムクロジ科を代表する世界的果樹。赤く粗い果皮の内側に、白色半透明で多汁な仮種皮を持ち、非常に高い糖度と芳香を誇る。中国南部では古代より栽培され、詩文や逸話にも頻繁に登場する。唐の時代に、かの楊貴妃がこれを大変に好み、華南から都長安まで早馬で運ばせたという逸話でも有名である。鮮度の低下が早く、収穫後の品質管理が難しい点も特徴で、急速冷凍したものが出回ることが多い。
ランブータン(Nephelium lappaceum L.)
東南アジアが原産の果樹で、果皮に柔らかな毛状突起を持ち、遠目から見れば真っ赤ないがぐりと見まがうような見た目を呈する。果肉はライチに近いが、やや締まりがあり、酸味が穏やかである。東南アジアを中心に広く栽培され、観光地の果物としても知られる。名称はマレー語で「毛」を意味するrambutに由来する。
リュウガン(龍眼、Dimocarpus longan)
中国南部やインドが原産の果樹。わが国には江戸時代に薬用植物として中国から渡来し、鹿児島県や沖縄県で栽培される。直径3cmほどの丸い果実をブドウの房状に実らせる。果皮は黄色がかった褐色で平滑。果肉はライチとは異なり特有の風味があって、好みが分かれやすい。乾燥させた果実は漢方薬材としても利用され、疲労、不眠、貧血、病後、産後の肥立ち、また胃腸に効くという。
ヤシ科
アサイー(若葉甘藍椰子、Euterpe oleracea)
アマゾン川流域を原産とする。細長い幹を多数束生させる特徴的な樹形を持つ。果実は直径1cmほどの小型核果で、黒紫色に熟す。可食部は薄い果肉層(果実は10%が果肉、90%が種子という割合で構成されている)であるが、脂質・ポリフェノール・アントシアニンを豊富に含む点が注目されている。
伝統的には果実を水とともにすり潰し、濃厚な紫色の飲料や粥状食品として消費され、魚料理やキャッサバと組み合わせる地域食文化が形成されてきた。近年は健康志向の高まりとともに「スーパーフード」として国際市場に流通している。
ココヤシ(古々椰子、Cocos nucifera)
ヤシ科を代表する看板果樹であり、単に「ヤシの実」というと大抵は本種の核果を指す。未熟果では内部の液体胚乳が「ココナッツウォーター」として清涼飲料に利用され、成熟果では胚乳が固化し、白色の果肉(コプラ)となる。
果肉は生食・乾燥加工・油脂原料として極めて重要で、ココナッツオイルやココナッツミルクなど多様な加工品が生まれている。さらに、果皮の繊維は縄・マット・建材に、硬い内果皮は器具や燃料に利用されるなど、捨てる部分がほとんど存在しない有用植物とされる。海岸漂流による分布拡大という生態的特性も、本種の世界的分布を支えてきた。本種の海岸漂流する様子は、島崎藤村の作詞した唱歌「椰子の実」にも歌われている。
強靭な繊維が複雑に密集した外皮と単純に硬い内果皮という天然の複合装甲を持ったこの果実、機械の力を借りたとて一撃で切り裂いて中まで開けられるような代物ではない。普通は。
サラク(スネークフルーツ、Salacca zalacca)
東南アジア原産の低木性ヤシで、蛇の皮を思わせる鱗片状の果皮を持つ独特な外観から「スネークフルーツ」とも呼ばれる。果実は卵形で、内部には白色〜淡黄色の果肉が数片に分かれて収まっている。
食感は概してサクサクとしたものであるが、味わいは品種によって差が大きく、甘味・酸味・渋味が複雑に共存するものも多い。生食が一般的で、インドネシアやタイの在地市場では日常的な果物として親しまれている。樹体は鋭い棘を持ち、収穫に手間がかかる点もサラク栽培の特徴である。
チョンタドゥーロ(Bactris gasipaes)
中南米原産のヤシ科果樹で、果実は黄橙色から赤色に熟し、デンプン質に富む点が最大の特徴である。生食には適さず、通常は茹でる・蒸すなどの加熱調理を施して食用とされる。果実は先端の尖る楕円形で、一見すると渋柿に似ているが、繊維質が多く、茹でたカボチャやサツマイモのようなホクホクとした食感がある。
その栄養価の高さと腹持ちの良さから、果物でありながら主食的役割を果たしてきた歴史を持つ。果樹と穀物の中間的存在として位置づけられ、アマゾン地域やアンデス周辺の食文化に深く根付いている。近年は果実のみならず、幹から採取されるパルミット(「パームハート」とも呼ばれるヤシの芽の生長点)も利用される。この「パルミット」は癖がなく、筍とヤングコーンを足して2で割ったような風味があるといわれ、サラダなどに調理して食される。「パルミット」はアサイー(前述)の新芽からも取れるのだが、アサイーのパルミット部分は成長が遅く、なおかつ一時は乱獲の憂き目にあったため、現在はチョンタドゥーロのものにとってかわられていることが多い。
ナツメヤシ(棗椰子、Phoenix dactylifera)
乾燥地帯を代表する果樹で、高温・少雨環境に適応した植物である。果実は和名にもあるように棗を思わせるような形状で細長く、糖度が高い。主に乾果(デーツ)として保存・流通する。古代メソポタミア文明の時代から栽培され、主食・甘味料・保存食として重要な役割を果たしてきた。
宗教儀礼や交易史とも深く結びつき、オアシス農業の中心的存在として人類史に大きな影響を与えてきた果樹である。雌雄異株で人工授粉が行われる点も特徴的で、砂漠環境における高度な栽培知識の蓄積を象徴する植物といえる。
ニッパヤシ(ニッパ椰子、Nypa fruticans Wurmb)
原産地は未詳ながらも、インドから太平洋諸島の熱帯地域に広く分布する常緑のヤシで、河川の傍らの泥湿地帯に生息する。
本種には「幹」と呼べる部分は存在せず、根茎から全長5m~7mほどの羽状複葉を出す。花は雌雄同種で、先端に雌花の花序をつけ、その下部に雄花の花序をつける。
果実は集合果で球状にまとまり、一見すると巨大な褐色の金平糖を思わせるような見た目となる。この集合果は直径15㎝~30㎝程となり、種子は卵形で、全長4㎝~5㎝程となる。熟した果実が水に浮き、海流に乗って流れることで散布されるのである。
花柄を切断して出てきた汁液を採集し、砂糖(パームシュガー)や酒類に加工する。種子内部の柔らかい胚乳をナッツとして食用にするほか、若い芽は野菜、すなわち「パーム・オブ・ハート」としてサラダなどで賞味される。
本種はマングローブを構成する樹種の一つで、わが国では沖縄県に自生しており、西表島の船浦で群落が確認されている。この群落は天然記念物に指定されており、研究目的以外で採集が禁じられている。採取が研究目的であっても事前の申請が必要になっている。
熱帯果樹にまつわるもの
トロピカルジュース・カクテル
熱帯でない場所で熱帯果実を味わおうと考えた時にいちばん手軽なのはジュース。
これはさまざまな熱帯果実の味わいを遠方から入手する最も簡単な方法の一つであり、熱帯果実を用いたジュースは日本でも数多く販売されている。
普段よく見る果物のジュースとは一味違ったフレーバーを楽しめるのが人気のポイント。独特の癖や風味もまた楽しみの一つである。
形態としては、海外輸入食品店などでお手頃に買える缶ジュースや、トロピカル感を売りにしたレジャー施設で提供されるドリンクなど様々。
もちろんカクテルの素材としても優秀。
鮮やかなオレンジ色や赤、紫や緑などを自然由来で出せる強みを持つ果物も多く存在している。
これまで、そしてこれからの熱帯果樹
バナナやパイナップルなどは昔からメジャーであったが、加工・運送技術の発展や多様化も助けになり、様々な熱帯果実が日本に浸透しつつある。
グァバやアサイーなどは日本での一時期のブームから市場定着を成した好例と言えよう。
これらブームは2000年代に入ってから巻き起こったものがほとんどなので、実は日本における熱帯果樹市場はまだまだ未開拓部分の多い夢の鉱山なのである。
この項目を読んで初めて知った果物があったならば、フレーバーを手に入れてみてはいかがだろうか。
追記・修正は珍しい熱帯果樹を我が国に紹介してからお願いします。
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- 聞いたことない果樹ばかりでワクワクするけど大半は日本じゃ食べられそうにないなあ。沖縄や静岡に行けば食べられる? -- 名無しさん (2026-01-26 01:13:38)
- こういう項目だけ読んでてもワクワクするような項目は好き -- 名無しさん (2026-01-26 15:37:59)
- フェイジョア、ポポー辺りは本州でも栽培されているので農協あたりで割と買える、スイートタマリンドは乾物が大型ショッピングセンターで見ることがある。 -- 名無しさん (2026-01-26 21:14:11)
- すごく勉強になる。 -- 名無しさん (2026-01-27 12:11:54)
- ジャボチカバのフレッシュはいっぺん食べてみたくはある。日本国内で結実に成功している農園・植物園の報告もある(もちろん屋内栽培 -- 名無しさん (2026-05-01 11:38:41)
#comment
*2 かつて主流だったグロスミッチェル系の品種がこの病気で絶滅の危機に瀕した過去がある
*3 我が国において植物の名前に「イヌ」という名前が用いられる場合、「価値がない」ということを意味する。例:「イヌタデ」「イヌホオズキ」等
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