登録日:2011/07/10(日) 22:39:30
更新日:2024/05/27 Mon 20:32:59NEW!
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「旅人還る」とは、藤子・F・不二雄の短編の1つ。「漫画アクション増刊」の1981年03月07日号に掲載された。NHKBSのドラマ「藤子・F・不二雄SF短編ドラマ」において実写化された。(放送初出は2024年5月19日)
キーワードとなる「フダラク計画」の元ネタは、かつて中近世の日本で行われた「補陀落渡海」。
観音が住まう補陀落へと旅立とうと、生きて帰る事のない死出の旅へと向かう難行の様に、本作では片道切符で「果て」へと旅立ったある男の物語を描いている。
そして彼が最後に「還る」場所とは…
◆あらすじ(キャストは「SF短編ドラマ」より)
宇宙を漂う宇宙船の中で1人の男(演:森山未來)が冷凍睡眠から目覚める。
一体どれだけの時間眠っていたのだろうか。
何年……いや、何十万年、何億年。
あるいは何兆年……。
そして今自分がいる場所はどこなのだろう……
男はシャワーを浴び、やっとはっきりしてきた頭でこれまでの出来事を思い出して行く……。
搭乗員の帰還を考えず、光速まで極限に近づく亜光速航行とコールドスリープを併用することで「宇宙の果て」を目撃するという「フダラク計画」。
主人公は反対する恋人(演:成海璃子)を押し切り、この計画に志願し、見事搭乗員に選ばれる。
百万年分の食糧と主人公ただ1人を乗せて宇宙船は途方もない片道旅行に出発したのだった……。
以下ネタバレ注意
孤独な日々が続いたがそれは元より覚悟の上。
観測したデータを地球に送ったり、体が鈍らないよう外郭をランニングしたり……。
会話やゲームの相手もしてくれるメインコンピュータの「チクバ(CV:林原めぐみ)」とも親友のような関係を築いた。
ホログラフで地球の景色を楽しむことも出来るし生涯かかっても読み切れないほど本も積んである。
太陽系を抜ける頃、1回目のコールドスリープに入る。
眠っている間に彼は別れた彼女の夢を見る。
未練だな 彼女を捨てて宇宙を選んだのはぼくの方じゃないか。
それからも1つの恒星系を過ぎる度にコールドスリープを繰り返す。
おかげで彼は生理的には殆ど年をとっていない。
しかしその間にも船は光速に近づき地球上の時間と船内時間のギャップはどんどん広がっていった。
無数の恒星系を通り過ぎ、いくつもの地球型惑星を発見したが文明がある星は皆無だった。
退屈そうですね、少しは体を動かさないとなまっちゃいますよ。
……よけいな心配するな。
面白い本はいかがです、そうだとっておきのホログラフがありますよ。
もういい。
どんなに臨場感があってもしょせんは虚像だ、みればみるほど空しくなる。
全ての星が不可視領域に入り、船の速度も臨界に達した。
もはや地球では何万年経過しているかもわからない。
銀河を抜けてはまた新たな銀河に入る。
抜ける……入る……。
繰り返し……。
繰り返し……。
二百億光年! ここは宇宙の地平線、これより遠くの星はどんな手段によっても地球からは観測できません。知ってますか?
なぜかといえば毎秒三十万キロ以上、つまり光よりも早く地球から遠ざかっているからです。
なぜ遠ざかっているかといえば宇宙全体が百数十億年前から膨張を続けているからです。ビッグバン以来です。御存じですか。
宇宙の始まりは百数十億年前、高湿度高密度のエネルギーで物質のかたまりが大爆発し四方に散らばりそれから星が形成されていったわけですが。
以来、宇宙は拡散を続け星と星との間は離れるばかり、その度合いは中心から遠ざかるにつれていちじるしくなります。だから地平線があるわけ。
ただしここは地球からみての地平線、この先には二百億光年の彼方が新たな地平線となります。その先には又、新しい地平線が……。
そうだ。最後のお別れに地球を見ませんか。もっとも針の頭ほどの光線をとらえて最大限に増幅し補整することになりますが。
そんなことができるのか。
映し出されたのは朧気な緑の球体
それはこれまで見たどの星よりも美しかった。出発したころと少しもかわりがない……。
しかしこれは二百億年前に発せられた光。
主人公達が出発してから50億年後。
地球は既に赤色巨星と化した太陽に呑まれてしまっていたのだ。
主人公は二百億年間たまりにたまった涙を止めどなく流し泣いた。
全宇宙規模の異変が起きた。
宇宙が膨張から収縮に転じたのだ。
全ての空間が速度を速めながら1点に収斂されていく……。
主人公は最後のコールドスリープに入った。
そして全ては無に帰した。
……そうだ、時間も空間も全てが無に帰したのだ……。
無に帰した……筈なのに……。
するとこれは何だ!!
ぼくがさっきから眺めていたこれは!! ……。
地球を出た時と寸分違いのない星空ではないか。
死んだぼくが冥界の星空を眺めているのだろうか、それとも……。
ブラックホールを抜けて異次元の世界へでも入ったというのか、それとも……。
それとも……。
それとも……。
そして宇宙船は地球にたどり着いた。
こんな説がある。
脈動宇宙説。
宇宙が収縮し終焉を迎えた後、再びビッグバンが起こり、宇宙は再生するという説だ。
つまり、ここは再生された地球なのだろうか?
とりあえず町へと歩き出す主人公だったが、これまでの旅で体はすっかり鈍りきっており、途中で休憩し夜が明けるのを待つ。
日が昇った頃、主人公の前を見覚えのある女性が通りかかる。
そして遠くで宇宙船が出発した。
彼女は二度と帰らない「彼」を見上げ泣き崩れる。
主人公はそんな彼女の肩に手をかけ……
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▷ コメント欄
- 比較的近い内容のSF短編「一千年後の再会」もいい。 -- 名無しさん (2013-09-08 22:56:09)
- 結局主人公は殆ど代償無しに任務を達成したわけか -- 名無しさん (2013-10-23 11:41:46)
- これ意味がわからなかった・・・・・・。何度呼んでも -- 名無しさん (2013-10-23 11:52:44)
- 主人公の幻想、夢、幻かもしれない、でも本当に地球に帰ってきたのかの知れない。 -- 名無しさん (2014-02-13 10:37:45)
- 記事の途中で石川賢ユニバースに突入したかと錯覚したw -- 名無しさん (2014-02-13 13:06:30)
- きっちりオチを付けるF氏の短編としては珍しく想像に任せます系のオチだね -- 名無しさん (2014-02-13 15:38:35)
- これも一種のパラレル系?いや、それとも...... -- 名無しは駆け巡る (2015-02-01 01:15:30)
- でももし辿り着いた地球が一巡後の世界なら、それはそれでそんな前代未聞の出来事に大変なことになりそうだよなあ…w -- 名無しさん (2015-11-08 23:37:30)
- これラスト、恋人がやたらボロボロなのはなんでだろ。主人公が自分を捨てたことに悲しんでジサツ図ったけど死にきれなかったのかな -- 名無しさん (2021-03-13 10:38:12)
- 要はこれってジョジョのメイド・イン・ヘヴンじゃね?宇宙が一巡して再び同じ歴史を進んでいたが、主人公だけが前の周回から迷い込んだ -- 名無しさん (2021-05-26 02:00:51)
- これめちゃくちゃ好き 主人公がああもう地球も残ってないんだな…って思いながら泣くのほんと好き SF短編で一番好きかもしれん -- 名無しさん (2021-12-19 16:17:16)
- なお元ネタの補陀落渡海は途中で流された僧が結局恐怖に負けて脱走したり、はたまた全くの偶然で生き延びてしまった場合でも余程の特例か幸運(補陀落渡海するも当時の琉球王国に流れ着いて仏教を伝えたという日秀って人とか)が無ければ、生死問わずで海へ投げ込んでしまう事もあったそうな。流石に理不尽と思われたか江戸時代に入る頃には得の高いお坊さんの水葬の為の形式になってった -- 名無しさん (2022-06-10 08:43:02)
- 海外SF小説の「タウ・ゼロ」にちょっと近いな。あっちの宇宙船には大勢乗ってたけど -- 名無しさん (2022-06-10 09:03:32)
- 星野之宣の初期短編集「はるかなる朝」収録の「遠い呼び声」も似たようなプロットで、反転するのは宇宙ではなく超光速に達してしまったロケットだった。 -- 名無しさん (2023-06-23 20:06:39)
- お前たちには計り知れないことだろうが宇宙は『一巡』する! -- 名無しさん (2023-06-23 20:54:51)
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