メタルブラック

ページ名:メタルブラック

登録日:2016/05/16 Mon 19:25:22
更新日:2024/01/23 Tue 13:04:30NEW!
所要時間:約 10 分で読めます



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最終平和兵器


戦闘準備完了。僕らは、もう、引き返せない。














■PROJECT GUN FRONTIER 2




METAL BLACK』はタイトーが1991年9月から販売を開始したアーケード用横スクロールシューティングゲーム(横STG)。通称メタブラ
元アニメーターである仙波隆綱が率いた「プロジェクト・ガンフロンティア」の二作目だが、第一作の『ガンフロンティア』との繋がりは一切ない。


美麗なグラフィックと、お抱えの音楽集団ZUNTATAによる名BGMを組み合わせた演出に定評があるタイトーのSTGだが、
本作はタイトーSTGの路線そのものを「演出系」として確立させた作品として評価されている。
完全にマニア向けに突っ込んだその作風は、インカムを度外視してアート作品を仕上げたようにも思える。



その評価

インカム面では同年にコナミがリリースした、明るくノリが良くてわかりやすい作風の『XEXEX』の後塵を拝する。
STGとしてはぶっちゃけ凡庸じゃね」「演出過多、ゲームの癖が強すぎ」という批判もあり、大ヒットとはいかなかった。
仙波氏によると「営業部からは販売時期的対抗機種となったK社STG(多分『XEXEX』)と同数が販売展開した報告を受けたものの、実際にはK社STGを複数稼働させる店の方が多かったらしい」とのこと。


しかし、『ダライアスII』におけるハードSF路線の設定と『ガンフロ』における気合の入った演出を融合させ、更に進化させたその作風は、シューター達に衝撃を与えるには十分なものだった。徹底的にハードに仕上げられた『メタブラ』はコアゲーマー、即ちほぼ全てのシューター間で次第にカルト的に評価されていく。
『XEXEX』は『ゼクセクス』で、グラディウスシリーズの長所を受け継ぎながらオタク向けに舵を切り、硬派な連中からは受けが悪かったために、『XEXEX』ファンの中には「メタブラがいなければもっと人気が出たのに」と悔しがる者もいるとか。
「印象的な演出が連続するアドバタイズデモから一面ボーナス終了までがこのゲームの6~7割」とかいうネタ交じりの絶賛(?)もある。


ZUNTATA所属の渡部恭久(Yack.)による音楽の評価も高い。
リリカルでメロディアス、繊細な旋律の音楽は、それまでの「STGといえば元気でノリの良い曲」という固定観念を完全に打ち砕いた。
特に一面曲の「Born to be Free」は、2chゲーム音楽板の「みんなで決める【アーケードゲーム音楽】ベスト1007位、「みんなで決めるシューティングゲーム音楽BEST1001位に輝いている。ちなみに2017年のツイッターZUNTATA曲投票では、2500超のZUNTATA全曲中6位入賞


1992年のゲーメスト大賞ではベストVGM賞2位ベストシューティング賞3位ベスト演出賞2位に輝いた。
演出賞以外の全部門で『XEXEX』に負けたことは言うな



業界においても、『メタブラ』は多くの影響を与えた。『レイフォース』や『ダライアス外伝』がああなったのも本作の影響である。
タイトーの路線変更に反発して辞めていった『Gダライアス』の開発チームが起こした会社・グレフは、本作の遺伝子を引き継いだゲームを幾つか制作している。というかグレフ社長の丸山博幸は冗談抜きで「メタブラに人生を狂わされた男」と言っていいかもしれない。
同人弾幕STG『東方Project』の作者・ZUNも多大な影響を受けたことをインタビューで語っており、実際に作品中でも多数のオマージュを行っている。
STG史を語る上では外すことのできない一作と言えよう。



小規模なチーム、外注並の低予算でも、STGを安定して開発出来る環境の整備を考えた「プロジェクト・ガンフロンティア」。
『メタブラ』の製作期間は7か月(『ガンフロ』から4か月短縮。当初は3か月で作れと言われていた)しかなかったが、予算と人員は少しだけ増やしてもらうことができ、仙波氏としては楽しく仕事が出来たらしい。
ただ、タイトー上層部的にはなんやかんやあったようで、結局仙波氏のプランは社に根付くことなく、本作を持ってプロジェクトGFは解散となった。
この中途半端に成功してしまったプロジェクトGFの末路が、その後タイトーが没落路線に行くことを暗に示している気もしないでもない……。


かつて存在していた仙波氏のサイトには、アーケードゲーム全盛期だったころのゲームクリエイターの過酷なる実情が(細部をぼかされながらも)記されている。
ゲーム本編とはあまり関係ないところだが、アニヲタ・ゲーヲタにとっては一見の価値ありの興味深い資料なので是非閲覧してほしい。
*1




ストーリー

西暦2042年。伴星ネメシスによってオールトの雲が2600万年ぶりに刺激され、彗星群が発生。
核ミサイルによる彗星群迎撃計画「星の嵐作戦」により、地球への彗星落着は阻止されたものの、アステロイド帯に突っ込んだ彗星の1つが数十万個の隕石雨を生み出してしまう。その数たるや、全ての核ミサイルを使用しても到底対処しきれるものではなかった。
大陸に落ちる隕石は「最低限」の迎撃に留まり、人類滅亡こそ免れたものの、海は干上がり、雨も止み、地球は生態系が崩壊した赤い星となってしまった。


更に時を同じくして、正体不明の侵略者「ネメシス」が出現し、人類に攻撃を開始する。
地球の文明機器と融合し、圧倒的火力のビーム兵器を用いる奴らの前に地球軍は各地で敗退、人類は滅亡を待つのみだった。


抵抗は水面下で続いていた。科学者たちはネメシスのエネルギー源となる物質を「NEWALONE」と称し、解析に成功したのだ。
軍はこれを利用した対抗兵器「CF-345 ブラックフライ」を開発。そして量産した2万機のブラックフライによる大反攻作戦計画「メタルブラック (METAL BLACK)」を推進する。
しかし、政府は唐突にネメシスに対する停戦和平協定を結ぶ。
被害の拡大を恐れ、妥協という名の平和に逃げた政府の手でメタルブラック計画は永久凍結され、ブラックフライも封印された。


西暦2052年6月22日。地球は静寂の時を迎えようとしていた。
そんな中、メタルブラック・テストパイロットの1人であったジョン・フォードは、基地の地下30階に封印されたブラックフライを強奪。
全てを敵に回し、単身でネメシス本拠地があると言われる木星へ飛び立っていったのだった――



設定

97年発売のアレンジサウンドトラック『METAL BLACK -The First-』のブックレットには詳細(すぎる)設定が記載されている。
……のだが、同じ文章が二重に掲載される致命的な誤植が存在し、設定の一部は完全に闇に葬られてしまった。
量が多すぎてとても書き切れないので、気になった人はウィキペディアやファンサイトを参照してほしい。


◆ネメシス
ブックレットに意味が3つも記載されている。
1.彗星群の原因になった恒星
2.軍による敵の呼称
3.敵の本拠地とされる木星軌道上の彗星核


◆ネメシス仮説と伴星ネメシス
1980年代に論文発表された実在する仮説。周期的な大量全滅の原因として、太陽系にもう1つの恒星を仮定。
その重力が2600万年周期でオールトの雲を刺激して彗星群を発生させるのではないかというもの。
ちなみに伴星とは、連星になっている天体の暗い方のこと。


◆ネメシスの敵
隕石雨落下後に出現した知的異星人……?
NEWALONEをエネルギーに使っていること以外、特別なテクノロジーは保有していないが、地球文明の機器と融合して自己強化していく能力を持つ。
一方で、妙に兵器同士の近距離戦を好んだり、わざわざ敵戦力が厚いところに突っ込んだりと、謎の行動を見せる。
そのくせ地球政府との和平に応じるなど、知能があるのかないのかよくわからない。


◆NEWALONE
「不慣れな孤独、ニューアローン」。愛称として「ニューロン」とも呼ばれる。
隕石雨落着後から大気圏内と宇宙空間で観測され始めた物質。他の「NEWALONE」を探し求めるように密集と拡散を繰り返す性質がある。



◆メタルブラック計画


the Military Enforce Totalwar for Absolute Liberty
完全なる自由のための軍事的総力戦):
Beam
Lesson
Aircraft
Carrier
作戦遂行のために必要なビーム兵器・パイロットの育成・戦闘機・母艦の開発):
Kill off
今作戦の最終目的、敵の殲滅


量産化されたブラックフライ2万機と空母編隊を中心とした反攻計画。無理やりな当て字だがカッコいいので問題はない。



◆CF-345ブラックフライ
“CF”はネメシスの技術を利用したことを表す「Copy Fighter」の略。
空間に漂うNEWALONEと水素原子を取り込み、半永久的に戦闘が可能な超高性能戦闘機。
全長24.02 m、全幅15.29 m、全高3.62 m、総重量45,160 kg。
武装はIRG-00重金属粒子砲一門と、20mm化学レーザー砲。補助武装としてSAAM-90E ピラニアミサイル112発を搭載する。


その形状はとにかく「適当」、下手をすれば「醜悪」。
とりあえず重粒子砲にコクピットと推進器つけてカバーで覆いました」と言わんばかりで、その醜さ故に「黒蝿」と揶揄される。
大気圏離脱用のブースターをつけると更に不恰好に。この歪なデザインも本作のテーマを如実に示している。


なお正式な型番は自機である試作機は"CF-345TD"、量産型は"CF-345IS"であるがゲーム中では自機は小さく判別しにくく、量産型はバッドエンドしか登場せず
一見違いはないように見えるが、後年フィギュア化され機体後部のエンジン回りが大きく異なっている。
このフィギュアシリーズでは自機・量産型のみならず大気圏離脱用ブースターを付けた自機のブラックフライも立体化されている。



ダミーストーリー

宇宙海賊ワイルドリザードに蹂躙された地球、
反撃の手段は妥協の平和によって永久に封印された。
地球が死にかけていたまさにその時、今一度の反撃のため、
最終平和兵器「メタルブラック」が闇を解き放ち蘇った!



ゲーム雑誌やセガサターン移植版の取説に記載されているこのストーリーは、実は真っ赤なウソ。
「ハードSF路線は保守的な社の上層部や今の業界にはウケない」と判断した仙波氏が、上層部を騙して開発許可を取るために用意したプレゼン用シナリオなのだ。
『ガンフロ』の敵役だったワイルドリザードを出して、あたかも『ガンフロ』の流れを汲むような活劇系だと思わせている。
ちなみに実際のゲーム中のデモは全て英語だが、これもプレゼンと違うことをパッと見で分からなくするため


だが、広報を通じて外部に流出し報道されてしまったばかりか、何故か移植版取説にもこっちが記載されるという本末転倒な事態になってしまった。
後年、ゲーメストが仙波氏に正しいストーリーに基づいた漫画化を打診し、コミックゲーメスト紙上にて連載されたが、人気が振るわず打ち切られた。
仙波氏の画風がかなりリアルな劇画だったことも影響しているのかもしれない。一説にはタイトー側に話を通していなかったため、とも。




ゲーム内容

独特なシステム

8方向レバーと2つのボタンでブラックフライを操作する。自機の移動スピードは固定。
メインショットは標準で連射機能を備えているが、ショットボタンを押し続けると砲身冷却のために連射速度が低下するため、最大火力を出すなら連打する必要がある。お察しの通り連射機能搭載の筐体では常時フルパワー状態。
弾は真正面にしか飛ばず拡散もしないが、自機の上下部分には僅かな当たり判定が生じている。


パワーアップアイテムは存在せず、代わりに画面外からふよふよ飛んでくるNEWALONEを取得する。
NEWALONE蓄積によって自機のビームレベルが6段階刻みで上昇し、メインショットの威力が変動する。
ビームレベルは難易度ランクの上昇にもつながっており、レベル3が自機の火力と敵の耐久力の兼ね合いで最も易しくなる。
ただし、レベル上昇に従ってショットの当たり判定も大きくなる。高レベル状態では自機の殆ど後方まで覆うようになり、これを使った「腹撃ち」が生死を分ける状況も多い。


ビーム解放ボタンを押すと、レベルに応じた持続時間中、高威力な収束ビームを放つ。
一度発砲するとビームレベルがゼロに戻るまで解除できない=暴発させるとビームレベルがチャラになるため、細心の注意を払うこと。
MAXレベルでは画面全体に攻撃判定のある拡散ビーム(要は無敵時間のないボム)が炸裂するが、ボタンを押しっぱなしすると長時間持続する収束ビームを放てる。
解放ボタンにまで連射機能をつけている筐体には注意。収束ビームがどうやっても撃てない。


各ROUND(ステージ)終点のボス戦では、ボスも画面上のNEWALONEを吸収、蓄積具合に応じて強力な攻撃を繰り出してくる。
定期的にMAXビームを放ってくるが、ここで自機のMAXビームをぶつけるとビーム同士が干渉し、連打合戦となる。ボスに打ち勝てば大ダメージを与えられるが、負ければ圧殺。
目安として干渉時に敵のビーム出力よりこちらの出力が高い場合は干渉球が青色に、逆に低い場合は赤色に変化する。


ROUND1、3のクリア後には一人称視点のボーナスステージが入る。移動する敵をセンターに捉えてスイッチボタンを押せばピラニアミサイルが掃射され、敵を撃ち落とす。敵を全滅させればボーナス点。
このミサイルと回避行動をとる敵機の動きが凄まじくクール。流石は『逆シャア』でメカ作画監修をしていた仙波プロデュースである。


ストーリー設定では上記の通り主人公はあくまでジョン・フォード一人で、奪われた機体も1機のみなのだが、
セールス上の都合からか、実際のゲーム上では二人同時プレイが可能。2P側は設定上では存在しないはずの「2機目」である緑色のブラックフライを操作する。
アーケード版の販促用パンフレットのイラストやセガサターン版のパッケージ絵でもよく見るとブラックフライが2機描かれている。


批判の原因

主に3つ。
1.自機の微妙な使いづらさ
2.敵キャラ出現が散発的でメリハリがなく、爽快感に欠ける
3.演出面以外で機能していないシステム(演出を除くと凡庸すぎる)


移動速度が遅いのに前方にしか弾が飛ばない、レベルによって変化する火力、初めから最後まで続く淡々とした敵出現パターン……。
ビーム解放・干渉についても、大抵は最大解放とMAXビームしか使わないし、死に物狂いの連打で干渉勝ちしても特典は何もない(殺しきれないと拡散ビームを失っている分危険だし、勝てても次ROUNDの開幕が危険)。ボーナスステージも慣れてくると無駄に長く、だれる。
前述の開発期間の短さのために細部の作り込みが追い付かなかったのだろう。後発のフォロワーはこうした指摘を上手く勘案して実装していく。


敵キャラの攻撃が嫌らしい上に、アルゴリズムのランダム性が強いのも難易度を上げている。
パターン化しづらいばかりか、前後左右から容赦なく出てきて斜め2WAY弾や6WAYビームを出して飛び去って行く敵には本気で殺意が湧く。
敵の出現位置・タイミング自体はほぼ固定なのでクリア自体が運ゲーという程酷くはないが、攻略する上では理不尽な事故死に悩まされる事になるだろう。
序盤からやや陰険な初見殺しもあり、ROUND1のヤドカリ中ボス出現時に逃げる方向を誤って空母に文字通り圧殺された人は多いはず。


ただ、こうした欠点こそあれど、「クソゲー」とか「微妙ゲー」とか面と向かって罵倒されるほど酷いわけではない。断じてない。
初心者でも実行しやすい1コインクリア指南を上げているサイトもあるため、物おじせずに是非とも挑戦して頂きたい。



素晴らしき演出

各ROUNDではシーンが移行するたびに、現在流れているBGMの題名が表示される。
楽曲名はいずれも、そのステージで描かれるストーリーを示唆するものとなっている。このさりげない演出も魅力の1つ。
石川勝久(ばびー)担当の効果音も楽曲の一部なので、まずはプレイ動画を一覧してみよう。


地下30階へ一目散に階段を駆け下りるジョン・フォードの足音をバックに、世界観や「NEWALONE」が説明されるアトラクトデモ。
音楽と完全に連動したオープニングを乗り越え、ブラックフライは壊滅したビル街の間を縫って飛んでいく。
隕石落着で完全に干上がった東京湾上空を、迎撃に出てきた友軍の戦闘機を撃ち落としながら進むROUND1。撃破されたボスの凄まじいエフェクト。
ブースターを吹かし、虎の子のピラニアミサイルを撃ちまくりながら引力圏を離脱するボーナスステージ。
前方からネメシスの敵、後方からは地球軍が放った核ミサイルに挟まれながら、二つの月を望んで飛ぶROUND2……。


作品を通して描かれる終末観と人の業。
廃墟化した地表や放棄されたコロニーの描写や、環境汚染や人種差別に基づくコードネームをつけられた敵ボスたち。
時に悲しく、時に滑稽に、時に壮大に奏でられる、シーンごとにマッチしすぎているBGM。
未だに語り草となっているトゥルーエンディングの幻想的な光景、そして最終ROUNDで力尽きたときの壮大な罠であるバッドエンディング――


第二の月、廃棄コロニー、ワームホールを超えて木星軌道にたどり着いたジョン。
しかし、そこには敵の本拠地などは存在しなかった。ここに至って、ジョンはこれまで政府が流した情報が全て欺瞞だったことを悟った。
真実を知ろうとして飛び立った彼は、最初から嘘の中で戦っていたのだ。
後年の仙波氏インタビューによると、「ネメシスの敵」は水星から飛来したケイ素生命体であり、軍の和平は
「時を経て大気が循環し、再び雨が降り出せば、ケイ素生命体の奴らは湿度に負けて撤退するはず」という目論見によるものだった。
つまりジョンの決起は全くの無駄骨だった、ということになってしまったのだが……。



銀河系の中心部を見るジョンは、突如として不思議な空間へ誘われ、ラストボス・Ωゾーンと対峙する。
実体を持つのか持たぬのか、NEWALONEを生み出す謎の存在・Ωゾーン。各ROUNDボスBGMのメドレーに乗せて展開する戦いの背景では、様々なビジョンがコラージュされて映る。

吼え狂う恐竜達の化石
松明を振りかざした猿人
流れゆく鋼鉄の機械
ミサイルランチャを担いだ兵士に迫る攻撃機
無数の機械のゴミと千切れた人形の頭


そして、全てを見通すようにこちらを見るオッドアイの猫――


THE DEATH OF ONE SOLDIER CAUSED
A COUP OF THE MILITARY.
TWENTY THOUSAND MASS PRODUCED
"BLACK FLY" FLEW INTO THE SKY
AREA OF NEMESIS.



ジョンの死によって決起した軍は、2万機のブラックフライを木星へと発進させた。
死にゆく赤い地球から飛び立つ無数のブラックフライ。その光景はさながら、死骸から生まれた黒蝿が一斉に羽化するが如く。
設定を知らなければ一見するとたった一人で敵に立ち向かった英雄の行為を無駄にしないための一斉蜂起によるある種のハッピーエンドにも見える。


しかし木星には何もない。彼らもまた、ジョンの後を辿る運命なのである。


WAS ITS PHANTASM
THE LAST ATTACKING
OR ITS LAST MOMENTS
AND WAS THIS FOR REAL
OR WAS I DREAMING
NOBODY KNOWS YET…



凄まじい断末魔と視覚的ノイズを発して消滅するΩゾーン。その最後に映ったのは、真っ二つに割れる青い地球だった。
全てが終わった後、ジョンは大海原のビジョンを見る。水平線上で輝く太陽は、日の出か、それとも落日なのか。
そもそもこの光景は現実なのか、それとも夢か幻か? 知るものはいない……。


ネメシスとはなんだったのか? 地球の自殺遺志だったのか? ジョンは母星にトドメを刺してしまったのか?
政府は何故、欺瞞情報を流したのか? 政府は全てを知っていたとでも言うのか?
しかし、ジョンが旅立った時点で地球は赤く死にかけていた。ではあの青い地球は?
最期の大海原は?


知るものはいない……。



ただ、やはり後年のコンティニュー誌における仙波氏インタビューによると、ジョンの決起は全くの無駄だったというわけではなく、
Ωゾーンを倒したことが「何かを得て、何かを変える」ことに繋がったという。





設定を知ってから遊び直すと全く違った印象を受けてドハマりし始める、
まさしく演出系STGと呼ぶにふさわしいゲームなのである。





今から遊ぶには

●PC:Taito Legends 2
海外専売のパソコンソフト。『ガンフロンティア』『レイフォース』『ダライアス外伝』『クレオパトラフォーチュン』『奇々怪界』『プチカラット』『影の伝説』『カダッシュ』などを始め、39本のソフトを完全移植(流石にアーケード基板特有の機能は再現できていないが)。
連射機能などはサポートされていないが、そこはコントローラや連射フリーソフトなどを導入すれば何とかなる。
タイトーファンなら是非とも入手したい一品だが、高額な(低需要なので仕方ないが)輸入業者を介するか、米Amazonなどで個人輸入するしかない。


●PS2:タイトーメモリーズ上巻 エターナルヒッツ
25個のタイトーゲーを収録した超お得ソフト。上巻は巫女さんアクションの名作『奇々怪界』、STGスキルが求められる『パズルボブル』、横スクロール2Dアクションの名作『ラスタンサーガ』、サイコな世界観に定評のあるメルヘンベルトスクロール『プリルラ』、キャラものブロック落としの白眉『プチカラット』、墜ちものパズルの傑作『クレオパトラフォーチュン』を始め、『サイバリオン』『グリッドシーカー』『ダライアス外伝』といった名作STGも盛りだくさん。
ただし、初期版とPS2 the Best版は遅延やバグ多数なので購入しないように。最後発のエターナルヒッツ版を選ぶこと。
また連射機能がないため、出来れば連射コントローラも揃えておきたい。


●セガサターン版
こちらもほぼ完全移植。ただし中古価格は高騰している。


●イーグレットIIミニ版
久々の家庭用移植。起動時の警告表示が削除されている以外は完全移植で連射機能も完備。
アーケード復刻ゲーム機の中ではやや値が張るのがネックだがその分、モニター縦横切替、8方向/4方向切替可能レバー搭載等と中々気合の入った作り。


●PS4/Switch版:アーケードアーカイブス
イーグレットIIミニ版と同じく起動時の警告表示削除以外は完全移植。入手しやすさを考慮すると今家で遊ぶならほぼこれ一択だろう。
連射機能(秒間15、20、30連射)搭載はもちろんのこと、殆ど違いはないが海外版も収録。
キャラバンモードでは6面スタートも実装されているのでエンディングを含めた6面の演出を手軽に味わえる。
少々シビアだがトゥルーエンディングを見る事も可能*2なので腕に自信のある方は挑んでみるといいかも。


●Windows(Steam)/XboxOne/XSX/XSS版:メタルブラック Sトリビュート
シティコネクションによるSS版ベースの復刻移植プロジェクトである「Sトリビュート」シリーズの1本。
元々、PS4/Switch版も発売される予定だったが、発売時期のバッティングとユーザーの混乱を考慮の上、PCとXbox系列のみでの発売になった。
販売価格もアケアカの販売価格に近い800円と安価。



外部出演

●スペースインベーダー インフィニティジーン
どう見てもNEWALONEなパワーアップアイテムが登場。更に有料機体としてブラックフライが参戦。
収束ビームを思わせる出っ放しのビームを放ちアイテム取得で円錐状に範囲が拡大、敵弾やビームに当たることで干渉を発生させる。干渉によって発生した球は敵や敵弾が当たり続けているとどんどん大きくなっていき(同時にチェインも上昇)、ビームを外すか一定時間が経つと前に飛ばすことが可能。この球が画面外に出ていくまでレーザーが止まる=無防備になるが、稼ぎにはかなり向いている。


●グルーヴコースター
ZUNTATA生誕祭において、アバターとしてブラックフライと「Born to be free」のアレンジ版[BEFORE TEN ORB」が収録
こちらも演出系音ゲーの名を冠するだけあって、ROUND1の流れをほぼ再現。最後には[[地球>地球]]に見立てた「青い球」が真っ二つに割れる演出も。


●ダライアスバースト クロニクルセイバーズ
タイトーコラボDLCとしてインターグレイX-LAYと共に参戦。(システム的な意味で)バースト機とジェネシスシルバーホークのご先祖様である
ショットは高威力で連射力も高いが常に正面にしか飛ばず、無属性のため貫通・弾消し機能がない。バーストゲージがビームゲージとして機能しており残量に応じてショットの威力と当たり判定が強化される。但しゲージ回復はカウンターバーストか、もしくはニューロンを取得するしか無い(雑魚が落とす他、ボス戦で自動的に出現する。原作同様1個につき10点加算)。それ以外は撃ち込みによる回復はおろかバースト回復ルールにおいても一切回復しない。
バーストボタンを押すことでゲージを消費してビーム解放を行い、短押しで自機を中心に広範囲を攻撃する拡散ビームを(倍率ボーナス2倍、最高32倍。ランク=スコアレート上昇無し)、長押しすると少しためて収束ビーム(倍率4倍、最高64倍)を発射する。収束ビームのみ敵のバーストビームに重ねることでカウンターバースト(倍率6倍、最高96倍)が発動する。拡散、収束共にバースト属性のため殆どの敵弾を消せるので防御面でも重宝し途中中断も可能。


赤・緑アイテムによるパワーアップがなく装備状態に縛られないので(ゲージ管理ができれば)常に高火力、ビームもスコア倍率が大きく制圧力もなかなか高いので稼ぎ力はかなりのもの。弱点はショットの斜め・上下方向への攻撃及び敵地形に対する貫通力が皆無(腹撃ちは一応出来るが、当たり判定が小さい)で、更に頼みの弾消しと貫通攻撃がゲージ制のビーム解放しかない事。攻守ともに自然回復なしのゲージに依存しているため、常にビーム解放後のニューロン回収を意識した立ち回りが要求される。


●太鼓の達人
アーケード版『10』、後にPS Vita版『Vバージョン』に「Dual Moon」が収録。
『Vバージョン』では譜面が新しくなっており、曲後半をかけて最後の譜がゆっくり迫ってくることでROUND 2背景の月を再現。
難易度おにだと終盤にもう一つ遅めの譜が現れ、本物の月を再現している。


●アリス・ギア・アイギス
サウンドトラック予約、発売記念の「ZUNTATA特別任務」の一つ「メタルブラック」ステージで「Dual Moon」と「time」が使用された。
ステージ背景に月っぽい衛星が見えるものが設定されていたり、ボスがΩゾーンの虚空から球を出す攻撃を再現したりと、原作を意識した演出が見られる。
プロデューサー兼開発Dの柏木氏曰く「(ゲームの仕様で)猫出したりできないけどDual Moonはループしないから苦渋の決断でtimeを入れさせてもらった」とのこと。











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  • サガフロンティアの敵役だと思ったら違った -- 名無しさん (2016-05-16 21:23:03)
  • 悪はさった! -- 名無しさん (2016-05-16 22:41:37)
  • あのラストは何だったのか? -- 名無しさん (2016-05-16 23:35:18)
  • ↑破壊と再生じゃなかった?OPデモで砂漠だった地球がグッドEDでは朝焼けの海になってるし -- 名無しさん (2016-05-16 23:49:05)
  • ラスト描写について軽く追記。 -- 名無しさん (2016-05-17 00:11:55)
  • 本当にすごい作品、としか言いようがない。ゲーム部分がちょい雑なのは残念ではあるが、それを差っ引いても壮大な魅力がある。現存するファンサイトがどれもこれも濃い内容なのが笑える。 -- 名無しさん (2016-05-17 00:17:31)
  • このページの演出も評価したい……開いていきなり「最終平和兵器。」の掴みはとても秀逸だった -- 名無しさん (2016-05-17 00:55:02)
  • ブラックフライ、すげぇ不細工だわ。実にイイ, -- 名無しさん (2016-05-17 02:45:27)
  • ラスタースクロール表現のすさまじい作品のひとつだったな。同社のガンフロンティア、ダライアスIIもすごかったが、この作品もバリバリだった。 -- 名無しさん (2016-05-17 05:11:40)
  • ブラックフライ普通にかっこいいと思うんだが、僕がおかしいだけだろうか… -- 名無しさん (2016-05-18 00:35:58)
  • ↑そんな君はオリジナルサントラのジャケットを見てみよう。あの絶妙に崩れたブラックフライはキモ美しいぞ。 なんというか、戦闘機というよりはモーターボートって気がするんだよなブラックフライは。いかにも無理やり飛んでる感じで「飛行機として」美しくない。 -- 名無しさん (2016-05-18 00:42:08)
  • ↑見てみた。兵器の残骸はなんか独特の美しさがあって好きだ。 -- 名無しさん (2016-05-18 01:35:13)
  • 仙波氏のインタビューによると軍の和平は大気循環で大量の雨が降ることが予想されててネメシスはケイ素生命体だから高湿度に耐え切れず撤退することが予測されたことによるものだったらしく主人公の反逆は無駄だったらしいね -- 名無しさん (2016-05-18 14:30:03)
  • ブラックフライはダラバーCSだと拡散ビーム以外にナナメ攻撃の手段がないのを除けば中々クセが少なくて使いやすい。バーストカウンターも簡単に決められるし。 -- 名無しさん (2016-06-04 00:24:06)
  • しかしショットの威力がゲージに依存し、ただ単に敵を倒しただけじゃゲージが回復しないから拡散、収束ビーム撃った後のフォローが重要になる -- 名無しさん (2016-06-23 22:40:10)
  • ↑雑魚の大群は拡散ビーム撃ちながらのカミカゼアタックかませばビーム撃ちながらニューロン拾えるけどボス戦ではゲージを意識しての立ち回りがいるからそれがまた楽しい -- 名無しさん (2016-07-21 11:44:11)
  • 1面の演出が強く支持されてるけど、個人的に2面の「月」を遠く背景に戦ってたのに目の前にもう一つちゃんとした月が見えて来て「!?」ってなるのがすげえ好き。表示されるBGMタイトルもストーリー演出の一部になってるんだよね -- 名無しさん (2017-01-09 14:22:05)
  • 大気の循環で雨が云々言ってる仙波氏のインタビューって出所どこか知ってる人いる?ずっと気になってるんだけど -- 名無しさん (2017-10-12 18:12:29)
  • ↑たしかコンティニューvol1 -- 名無しさん (2018-02-24 09:34:14)
  • STGヒストリカで立体化されて知ったが試作機と量産型って微妙に形状違ったんだな -- 名無しさん (2018-05-28 14:03:31)
  • 「むき出しのプラズマ発生機とガイドレール、おかげでだらしなく伸びた鼻面の根本に、ついでのようなコクピット。この醜い機体に、ジョン達パイロットは「黒蝿」の蔑称を贈った」 -- 名無しさん (2018-05-28 16:28:31)
  • こんなゲームを高校1年生に与えたらダメだ。おかげで人生狂ったわ(いいがかり) -- 名無しさん (2020-06-18 16:31:57)
  • 他のタイトルみたくiTunesでサントラ配信してほしい。アレンジ版なら売ってるけど、やっぱ原曲が聴きたいのよなぁ -- 名無しさん (2021-11-09 15:22:22)
  • 最初のサントラ(サイトロン版)のジャケットアート、「ブラックフライ号のガワを割ったら中身が本当にハエ」という絵面は衝撃。深読みせざるを得ない。 -- 名無しさん (2022-08-29 19:28:58)
  • アーケードアーカイブスで発売されて一気に敷居が下がった。ぜひ若人にもプレイして欲しい。 -- 名無しさん (2022-11-25 00:01:33)
  • アーケードアーカイブス発売記念で仙波さんが動画(アーケードアーカイバー)出演してたが、やっぱりあのトゥルーエンドの意味は明かされず。ただ「ゲームの中で表現されたものからプレイヤーが受け取ったものが答え」(意訳)と言ってたから、これからも明かされることはないのだろうなぁ -- 名無しさん (2022-11-25 14:58:46)

#comment

*1 https://web.archive.org/web/20140802022254/http://www6.ocn.ne.jp/~t-1008dx/METALBLACK.html  PAGE ONがサービス終了したため、ここに記載しているのはWebアーカイブリンクである。
*2 時間内に「地球割り」演出が終わってエンディングへ移行できるとそのまま最後まで流れ続ける。演出中に時間が切れた場合はそこで終了してしまうので注意。

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