登録日:2011/04/11(月) 16:56:08
更新日:2023/08/18 Fri 18:54:52NEW!
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鋼の錬金術師 宗教戦争 内戦 架空の戦争 イシュヴァール人 民族浄化 鬱 戦争 賢者の石 荒川弘の本気 みんなのトラウマ 国家錬金術師 虐殺 人体実験 過去編 鬱展開 マッチポンプ イシュヴァールの英雄 アニメ1期=旧アニメは別物 鬱展開の嵐 だいたいこれのせい 民族問題 イシュヴァール殲滅戦 キンブリー 死から目を背けるな 殺す人々のその姿を正面から見ろ 回想 忘れるな ※少年漫画です 壮大なマッチポンプ 恨みます
傷ついた身体と荒んだ精神。
横たわる死の臭いに次第に追い詰められていく兵士達。
そして戦争というこの舞台で、軍は「賢者の石」の実験を行う…。
イシュヴァール殲滅戦とは、荒川弘による漫画『鋼の錬金術師』の作中において、本編開始の13年前に起こった架空の内戦である。
背景として、かねてよりアメストリス人とイシュヴァール人は宗教問題等を巡って対立していた。
そんな折、軍将校が誤ってイシュヴァール人の少女を射殺するという事故を契機に対立はとうとう大規模な戦争へ発展。
軍部は当初単なる内乱として処理していたが、イシュヴァール人の予想以上の屈強さや隣国アエルゴによる支援等により内乱は数年に及び、戦火は次第に東部全域に広まった……。
事態を重く見たキング・ブラッドレイ大総統は「イシュヴァール人の殲滅」を指示。多くの軍人だけでなく国家錬金術師も投入される*1。
後々これがトラウマとなり資格を返上した者も大勢居たらしい。後述の2009年版アニメでは、軍に反旗を翻してテロ活動に走った元国家錬金術師も登場していた。
また、その傍らでイシュヴァール人や戦傷者を材料とした「賢者の石」の精製や人体実験等の非人道的行為も多数行われた。
この戦争は関係者の心にも大きく闇を落とし、「傷の男」の復讐劇もここから始まった。
マスタング大佐が大総統を目指す原点もここ。
ウィンリィの両親の死も間接的にこの戦争がもたらしたものであり、ストーリーに与えた影響は大きい。
また、エドは手足の欠損の理由を尋ねられた際に、この戦争に巻き込まれたためと説明する。
ストーリー前半では断片的に言及されるのみだったが、15巻にてコミックス一巻分まるまる使った回想という形で語られた。
その様は一口に説明するのは難しいが、とにかく『ハガレン』の中、いや数ある少年漫画でもトップクラスに重い展開と生々しい描写が待ち受けている。心して読んでほしい。
やり過ぎだとの声が上がる一方で、
- ファンタジー漫画ながらも極めてリアルな戦争風景
- 極限状態における人間心理
- イシュヴァール人だけでなく軍人や軍医といった多種多様な視点
- どうしても説教臭くなりがちなテーマをただ淡々と描いていく点
……等、重いテーマではあるがこのエピソードは高く評価されている。
ちなみに作者はこれ描くにあたり、第二次世界大戦の経験者を取材しに回ったという。
第13話で初登場したものの、囚人の身で顔が見えぬままだった紅蓮の錬金術師・キンブリーが本格的に登場。全編にわたって(旧アニメ版とは全く違う)彼なりの思想と狂気に満ちた活躍ぶりを見せてくれる。
その他、4巻で死んだヒューズも回想という形としてだが登場し、喜ぶファンも多かった。
本編では故人となっているグラン大佐もここで活躍。コマンチじいさんもちょっとだけ登場している(作者はもっと描きたかったらしいが)。
ブラッドレイの宗教観、「傷の男」の兄の研究成果、リザとマスタングの関係等も描かれ、精神的には堪えるが本作を読む上で避けては通れないエピソードである。
以下ネタバレ注意。
この戦争の本当の目的は、イシュヴァール地方を国土錬成陣の一部とする為の「血の紋」を刻むことであった。
つまり完全にホムンクルスの差し金で、発端となった少女殺害事件も、エンヴィーが実在する軍将校に化けて仕組んだものである。*2
2003年版アニメにおける原作との相違点
- 将校による射殺事件そのものが嘘。
殲滅戦が発生した真の発端が、ドルチェットやマーテルが所属していた特殊部隊がイシュヴァール人の住居を襲撃したという事件になっている。
表向きには反政府のテロ組織の拠点を叩くというであった。また軍はこの後、証拠隠滅の為に同部隊隊員の多くを殺害、生かした者はキメラとした。 - 射殺事件を起こしたとされる将校に「ジュリエット・ダグラス」という名前が付いている。しかし、その人物は2年前に殉職していることになっていた。*3
- イシュヴァール人が錬金術を忌み嫌う理由は、原作では単に宗教の解釈によるもの*4だったが、こちらでは「イシュヴァールにもかつては錬金術に似た技術があり賢者の石を作ることも可能であったが、それにより大きな悲劇*5が発生したため、悲劇を繰り返さぬようにするべく錬金術が誰にも使われないようにするため」というものになっている。
- スカーの兄の「真実」が改変されている。
サービスシーンの存在が…… - 戦争を起こした真の黒幕はダンテ(ライラ)で、
その目的はイシュヴァール人を攻撃することで彼らの間で禁忌とされた錬金術を使わざるを得ない状況に追い込ませ、賢者の石を作らせること。 - 戦争に参加していたグラン准将が、研究途中だった「賢者の石」を戦場に配布して徹底的な虐殺を行ったり、
軍にとって邪魔だったロックベル夫妻を当時部下だったマスタングに殺させる等、非道な行動を取っている。*6 - 原作同様、戦争中にロックベル夫妻が殺されているが、上記の通り犯人はグラン准将の命令で殺害を強要されたマスタングになっている。
- 原作では賢者の石による大虐殺を行ったのはキンブリーくらいだが、前述した通りグラン、マスタング、アームストロングもこれを断行。
増幅された錬成力により、4人は一瞬にして町を破壊しつくした。
この当時のマスタングとアームストロングは慙愧の念で心が潰れそうになっていた。
また、作中での回想シーンを見る限りこれ以外にも軍属の国家錬金術師たちは同様の大錬成を行った模様。 - キンブリーはまだ2ページしか出番がなかった頃の話なので、彼が投獄された理由は
「敵味方関係なく人間を爆弾化させたから」という原作以上に卑劣なものになっている。 - 原作ではマスタングやアームストロングと共に前線に配備されたヒューズ中佐が、アニメでは動員されていない。
2009年版では30話にて描かれ原作に準拠した内容となっているが尺の都合か一部キャラの描写がカットされている。その一方で原作では名前のみだった関係者であるアイザック・マクドゥーガルが第1話(戦争から13年後)で登場している。
また、スカー視点の内容は前倒しされ22話の回想として描写されている他、一部の回想では色あせたような画面にアメストリス人の青く光る瞳とイシュヴァール人の赤く光る瞳とで対比される演出がなされた。
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▷ コメント欄
- この話を描くために第二次世界大戦の経験者にインタビューした作者は、たいしたものである。 -- 名無しさん (2013-12-18 19:11:16)
- 恨みますのセリフに読んでるこっちがビビってしまった -- 名無しさん (2014-07-05 16:17:43)
- 2003年版アニメでは殲滅戦が起きたきっかけや起こした理由が違っているんだっけ? -- 名無しさん (2014-07-16 00:32:03)
- あの「恨みます」は爺さんなりの情けかなんかだと思ったりもする。 -- 名無しさん (2014-07-16 00:38:35)
- 仕組まれたとは言えキッカケがかの「ロス暴動」と似てる…気がする。アレも白人の警官が黒人の女の子を射殺したからだし -- 名無しさん (2014-07-27 18:46:02)
- 神を信じることすらできない人生を歩んできたブラッドレイにとって、神を信じてきたイシュバール人は太陽のように眩しく見える存在だったのかもな。 -- 名無しさん (2014-11-14 20:54:32)
- ↑天罰など存在しないと思ってるから、神罰を語るイシュバール人はとるに足らない存在だったんじゃないかな。自分を罰するモノがあるならそれは人の手によるものとか言ってたし -- 名無しさん (2014-11-24 03:26:35)
- ↑4 辞世の言葉を聞くというロイの気概に合わせた言葉だと思ってる -- 名無しさん (2014-11-24 04:05:03)
- ドキュメンタリー映画の『アクト・オブ・キリング』でインドネシア虐殺事件実行犯の軍人が嬉々としてその蛮行を武勇伝のように語るのを見てこれを思い出したわけだが、やはり『事実は小説より奇なり』と思い知らされる。 -- 名無しさん (2015-02-27 22:42:56)
- 第二次世界大戦に参加した人のインタビューの話、「戦争の映画なんて見ない」とぽつりと零した、その一言が印象的だったと書いてあったね・・・ -- 名無しさん (2015-04-02 13:16:15)
- 当時はコマンチ爺さんの戦いが見たいと思ってたけど、こんなテーマで余計なバトルシーンなんか挟み込んでる暇なんか無いわな。 -- 名無しさん (2015-05-25 07:46:58)
- 「恨みます」の一言を聞いて、受け止めつつもやはり殲滅戦の完了のために殺したマスタング ギンブリーの言葉はマスタング達に生き方の一つを見せたよなぁ -- 名無しさん (2016-01-15 00:11:38)
- この話がきっかけでキンブリーの見方も変わったなあ、1期から入っただけに -- 名無しさん (2017-12-13 09:13:28)
- 凄かったよな、読んでいて震えたものだ。あれだけ殺しあって敵も味方も悪いのはホムンクルス(とキンブリー)だけっていう点が恐ろしかったよ。 -- 名無しさん (2019-05-23 14:52:54)
- スカ―の復讐鬼へ堕ちる描写も納得の凄惨さだった -- 名無しさん (2020-01-02 16:01:42)
- ↑11白人警官が黒人男性を逮捕する際に過剰な暴行を加えた事件と韓国系の店員が黒人少女を銃殺した事件を混同してると思うぞ。 -- 名無しさん (2020-02-14 20:17:53)
- 無能なフェスラー准将にバキュンした後の、「流れ弾だ」「流れ弾ですな」のやりとりが好き。 -- 名無しさん (2020-07-07 02:11:57)
- この項目の内容、アニメ版がメインで(というかアニメ一期と原作の差異がメインで)、原作の展開にはほとんど触れていないな。原作での推移・進展がほとんど書いてないから、アニメの原作と違う場面を列挙されてもよく分からん -- 名無しさん (2021-02-06 21:37:31)
- ↑マジで説明が難しいんよ。基本はリザが語り部なんだけど一枚絵でキャラの過去を表現したり、群像劇のように視点が切り替わったり敵サイドの動向が描写されたりと、細かく説明すると実況中継みたいになっちゃうから。15巻まるごと一巻分列挙するのもなんだし、これで気になって詳しく知りたいなら原作を読んでネ -- 名無しさん (2021-03-20 02:24:31)
- ちなみにアニオリの殲滅戦は存在しない軍人がなぜ今まで素人2人に調べられるまでバレなかったかとかなんで動員を蹴ったヒューズが中佐になれてるのか結構ガバいので、スロウスの秘書設定とグリードの部下達の掘り下げがあるんだなくらいの理解度で事足りる。 -- 名無しさん (2021-03-20 02:29:12)
- 一期中尉は殲滅戦に参加してたのかな? -- 名無しさん (2021-03-20 02:44:03)
- ちょうど単行本が出る頃にイーストウッドの硫黄島二部作が公開されてて余計に心に来るものがあったなあ -- 名無しさん (2021-04-01 04:18:20)
- >(2021-03-20 02:24:31) だからスカー視点を別回に回したり、アニメFAじゃ色々構成を見やすさ意識して変えてたのかな?とはいえグランの活躍がカットされてたのは惜しいが。 -- 名無しさん (2021-11-29 16:26:24)
- この戦争からリタイアしたアームストロング少佐、その後の心中と周囲からの評価は察するに余りある ヒューズは「賢いやり方」と言ってたけど、軽蔑したり恨んだ人間も多いだろうと思う -- 名無しさん (2023-05-08 05:11:33)
#comment
*2 軍将校本人は結果的に濡れ衣を着せられた末に言い訳すらできずに軍法会議で裁かれたとの事。
*3 「ジュリエット・ダグラス」という名前はホムンクルスのスロウスこと大総統秘書官の偽名としても使われており、
上記の通り射殺事件自体が嘘だったので、将校の方は名前だけを使われた実在しない人物だった可能性が高い。
*4 スカーの兄のような錬金術をよしとする者もいた。
*5 詳細は明らかにされてないが、恐らく原作におけるクセルクセス王国滅亡と似たような物と思われる。
*6 グラン准将は2003年版アニメ放送当時、原作では名前しか登場していなかったためにキャラが不明で極悪人という扱いにされていた。したがって原作と2003年版アニメではキャラが違いまくっており、もはや名前が同じだけの別人と思って差し支えない。
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