ストーリーテキスト/オペレーション:S

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目次

オペレーション:S[]

オペレーション:S -序-

日が昇り、辺りに鐘の響きが木霊する。
どこか聞き覚えのあるその音で目を覚ました
やくもが目の当たりにしたものは――

前半

キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン――

やくも
……んぅ?

やくも
なんだか、今朝の千狐は様子がおかしいだに。
コーンとかキーンとか、カーンとか……。

やくも
……って。
そういえば、前にもこんなことが――

やくも
――はっ。

やくも
こ、これは……これはっ!?

それから――

やくも
来た来た、来たがや~♪
うちはこの日に備えて、
こっそり野球の練習に励んどったんだにー!

足利学校
の、呑気ですね……やくもさんは……。

千狐
以前、同様の事態が生じた際にも、
なんだかんだで楽しんでいましたからね……。

殿
…………。

立花山城
とはいえ、このまま放置するわけにはいかないわよね?
これからどうするかは、考えておかなきゃ。

柳川城
あ、相変わらず、
立花山城さんは飲み込みが早いですね……。

千狐
ですが……仰る通りです。
私たちにできることを考えなければ……。

やくも
まずは部活! 部活動だにっ!
野球でも蹴鞠でも、なんでもいいから身体を動かすがや~♪

殿
…………。

???
……はぁ。

???
……やはりそう簡単には変われぬか。

殿
…………!

足利学校
……その声は!

学問の神
……足利学校よ。
かつて、我が其方に伝えた言葉……覚えているな?

学問の神
今回、我が此地に引き起こした変容は、いわば……種蒔きだ。

学問の神
ゆえに足利学校、其方にはこれから……、
各々の胸の内に蒔かれた種を守り、育てていってもらいたい。

学問の神
……信じても良いか、足利学校?

足利学校
……はい。

学問の神
確かに、其方らが見違えるような変化を見せたのは事実……。
だが、それも一時のことに過ぎなかった。

学問の神
生き生きとしていた足利学校の目から、
日に日に光が失われていく……。
その様を座視していることに、我は耐えきれなくなったのだ。

やくも
ずーっと覗き見しとったがや?
暇な神さんもおったもんだに……。

学問の神
……聞こえとるぞ。

やくも
――ひっ!?

学問の神
…………。

学問の神
……いや、我も驚いたわ!
前回、そこそこ感動的な幕引きを迎えとったし!

学問の神
我も相当迷ったのだ……。
足利学校に任せるべきではないのか……とな。

学問の神
じゃが気づけば……授業中の居眠り、お喋りが横行。
指摘されても悪びれもせず!
今や、学級崩壊にも等しい様相じゃ!

足利学校
学級崩壊っ……!?
そう見えていたのですね……やっぱり!

学問の神
ということで、我の伝えたいことは以前と同じ!
これ以上の説明はもはや不要であろう!

学問の神
変容した此地で、学生らしい生活を!
よく学び、よく遊び、よく食べ、友を尊び、風紀を正す!

学問の神
我の言いたいことは以上!
では……解散!

足利学校
……そ、そんな!
待ってください、神様……神様ぁ!

殿
…………。

千狐
行ってしまったようです……。

柳川城
随分、お怒りの様子でしたね……。

立花山城
まぁ、仮にも神娘という役目にある者が
そんな有り様だったら、
その心境は推して知るべし、といったところでしょうね。

千狐
め、面目ないの……。

柳川城
……いずれにしても、神様から認められるまで、
所領はこのまま……ということですね。

やくも
気難しそうなじいさんやったし、
道のりは遠そうだに……。

立花山城
そうかしら?
説教好きな可愛らしいおじい様、という印象を受けたけれど。
案外、遊び相手がほしいだけだったりしてね。

立花山城
それに、学べと言ってはいたけど、
遊んだり食べることだって許してくれたわ。
そう悲観する状況でもないんじゃない?

足利学校
が、学級崩壊……私のクラスが……崩壊……。

立花山城
だから……ほら。
顔を上げなさい、足利学校。

足利学校
――あ、そうですね……。
ひとまず、外に出てみましょうか。
混乱に陥っている城娘がいるかもしれません。

殿
…………!

――――

殿
…………。

千狐
ひ、広場の様子が……。
それに……あちらに居るのは――


ゾロゾロ……ゾロゾロ……。

烏帽子革張形兜
ハーイ。静カニ、静カニー。
並ンデル最中ノ私語ハ厳禁デスヨー。

烏帽子革張形兜
受付マデハ焦ラズ騒ガズ、オ行儀ヨクシマショウネー。

やくも
……お? 何やら列ができとるだに。

柳川城
そうですね。見世物でも始まるのでしょうか?

立花山城
――ちょっ、兜の大軍じゃない!
『列ができとるだに』『そうですね』って、
呆けるのも大概にしなさいよ!?

足利学校
落ち着いてください……立花山城さん。
あれらは兜に見えますが、その実態は全く異なるものなのです。

立花山城
ま、全く異なるもの? ……どういうことよ?

柳川城
あれらは所領に生じた変容と同じく、
先の神様が生み出したものなのです。

足利学校
危害を加えることもありますが、それはあくまで、
件の神が私たちに強いる試練……『風紀を乱す』程度のもの。
破壊や侵略を行うことはありません。

立花山城
そ、そうなの……?
それなら安心だけど……なんだか落ち着かないわね。
慌てて損しちゃったわ……。

やくも
……ぷくく。立花山城、珍しく慌てとったがや。
『ちょっ』とか言いながら、殿さんに身を寄せて……。
意外と可愛いとこもあるんだに~♪

殿
…………!

立花山城
う、うるさいわね!

千狐
それにしても、これは何の列なんでしょう。
『受付』と言っていましたが……?

烏帽子形兜
……ドキドキ。
初メテノサバゲー……緊張シチャウナァ。ドキドキ。

やくも
……ん? 今、鯖がなんとかって――?

???
――あ、そちらの方~! こっちこっち!
列の最後尾は、こちらですよー!

足利学校
ん、貴方は……?

???
ああ、申し遅れました。
私の名前は――あれ?
もしかして貴方、団長ではありませんか……?

殿
…………!

???
わぁ、びっくり♪ 本当に団長ですっ!
嬉しい……ずっとお会いしたいと思っていたんです~!

マルボルク城
初めまして……私の名前はマルボルク城と申します!

マルボルク城
今はちょうど、観光目的で此地に訪れておりまして。
皆さんの格好を真似てみたのですが……ふふっ。
このお召し物、気に入っちゃいました♪

マルボルク城
……あ、そうだ。
ところで、一つお聞きしたいのですが――

マルボルク城
この列って、何を待っている列なのでしょう?

千狐
あー……。

柳川城
なんだか、混沌としてきましたね……。

立花山城
そうね……。

???
そういうことなら、俺に任せろ!

鳥羽城
知りたいことがあれば、何でも教えてやるぜ♪

殿
…………!

立花山城
貴方は……鳥羽城、よね?
その格好は……?

鳥羽城
説明しよう! この行列はな、
サバゲー部の活動に参加する希望者たちだよ!
何を隠そう、俺もその一人!

柳川城
さ、さばげ……?

鳥羽城
簡単に言えば、遊戯用の銃を用いた遊びのことだな!
こいつは面白いぜ……。朝から所領中を駆け回って、
ようやく俺にピッタリの部活を見つけたんだ!

鳥羽城
ま、とりあえず受付を済ませようぜ!
細かいことは追い追い理解してけばいいからさ♪

――――

烏帽子革張形兜
ハーイ。マズハコチラノ同意書ニ、
必要事項ヲ記入シテクダサイネー。

立花山城
えぇと、なになに……。
『甲は、サバイバルゲームを行うに当たり、
 その危険性を理解した上で、乙に理解させ、乙を本ゲームに参加させることを――』

千狐
あ、頭がこんがらがってくるの……。

やくも
名前はー……や、く、も。
住まいは、所領のー……工房の……っと。

烏帽子革張形兜
ア、料金ノオ支払イモオ忘レナクー。

マルボルク城
お、お金も必要なんですね……。

鳥羽城
フィールドの整備や管理、運営その他諸々。
色んな苦労があるからな……そこは持ちつ持たれつだぜ。

柳川城
と、殿? その……、
えぇと……私、持ち合わせが……。

殿
…………。

足利学校
ルールの方も把握しておかなければ。
相手陣地のフラッグを目指して侵攻……。
被弾時には『ヒット』と申告して退場し――

そして、手続きも無事に完了し――

鳥羽城
……ってなわけで。
受付も済んだし、簡単に説明を行うぜ。
サバゲーが初めての奴は、よーく聞いてくれよな。

鳥羽城
まず一番大事なのは、身の安全!
サバゲーはあくまで模擬戦、遊びの一貫だからな。
怪我だけはしないように、充分注意を払ってくれよな。

鳥羽城
今一度、各種装備の確認をしてくれ。
目、口元の防護には特に気を付けるんだ。いいな?

鳥羽城
それから、銃口の向きには常に注意を払うこと。
無闇に人に向けたりするのはご法度だぜ。

足利学校
ふむふむ……。

鳥羽城
――と、基本的な説明が済んだところで、
試し撃ちをしてみようか。
あの的に向かって何発か、撃ってみてくれ!

やくも
あの的に向かって……よぉし……。

パパパパパパパ……。

やくも
お、おおおおおおっ……!

やくも
な、なんか……癖になりそうな感覚だに……!

マルボルク城
わ、私はちょっと見学してようかなぁ……。

烏帽子革張形兜
本日行ウノハ、3ゲーム!
休憩ヲ挟ミナガラ、毎回ルールヲ変エテ行イマス!

烏帽子革張形兜
両チーム各種装備ヲ確認ノ上、定位置ニ着イテクダサイ!

烏帽子革張形兜
ソレデハ、開始ー!

合戦中

立花山城
さっきの兜が、
ナントカ戦って言ってたけど……どういう意味かしら。

鳥羽城
一口にサバゲーって言っても、細かなルールに違いがあるんだ。
今回は『復活戦』……弾を食らって退場扱いになった奴にも、
復活する機会が与えられる、ってことだな!

柳川城
なるほど……ルールに応じた戦略を都度、
練る必要がありそうですね……殿。

殿
…………!

後半

烏帽子革張形兜
ピピーッ! ゲーム終了!

烏帽子革張形兜
両チームノ撃破数ヲカウントシマス。
ヒィ、フゥ、ミィ……ッ!!

烏帽子革張形兜
――勝者、殿チィーーッム!!

烏帽子形兜
ク……負ケタァァァ!
イイトコマデイッテタノニィィィ!!

鳥羽城
やったな殿、大勝利だ!
あんたの的確な指示のお陰だぜ!

殿
…………!

立花山城
遊びとは思えない緊張感……恐ろしさ。
どんなものかと思ったけど、案外楽しいじゃない。

柳川城
……はい! 鳥羽城さんが、
あれほど熱っぽく魅力を語っていた理由が理解できました!

鳥羽城
よぉし……この雰囲気で、次のゲームも押し切ろうぜ!

一同
おぉー!!

オペレーション:S -破-

1ゲーム目の敗戦を悔やむ兜チームに、新たな
メンバーが合流する。その者が携えた武器を
前に、苦戦を予感する足利学校だが……。

前半

烏帽子形兜
1ゲーム目ハ惨敗。
策ヲ練ロウニモ戦力差ガ……。
ク……先輩ガ来テクレレバ、コンナコトニハ……!

???
チィース……スマセン、チョット遅刻シマシター。

烏帽子形兜
ハッ、コノ声ハ……トッパイ先輩!?

トッパイ先輩
……ヤッパモウ始マッテタカ。
悪イナ……相棒ノ整備ニ手間取ッチマッテ。

烏帽子形兜
ハ、ハイ。
コレカラ2ゲーム目ガ始マルトコロデ……。

トッパイ先輩
……コノ空気。
1ゲーム目ハ、負ケタミタイダナ?

烏帽子形兜
ハ、ハイ……! 相手チームノ奴ラ、
初心者揃イト思ッタラ妙ニ熟レテテ……!
百戦錬磨ノ兵ヲ相手ニシテルヨウデス!

トッパイ先輩
……フゥン、面白ェ。

トッパイ先輩
俺ト相棒ヲ楽シマセテクレル奴ダト、嬉シインダケドナ。

烏帽子形兜
…………。

烏帽子形兜
(ゴーグルノ位置、ソレデ合ッテルノカナァ……?)

一方その頃、殿一行は――

足利学校
(敵のチームに新手が加わった……)

足利学校
……鳥羽城さん。
あのトッパイ形兜が携えていた武器について、
お聞きしたいのですが――

鳥羽城
いいかっ!? 次の作戦は前進!
ひたすら前進あるのみだ!

鳥羽城
ただの勝利じゃ面白みがねぇ!
一瞬で制圧、そのまま圧倒……。
俺たちの実力を見せつけるんだ!

やくも
やってやるだにぃ~!

足利学校
い、嫌な予感がするのですが――

――パカラッ、パカラッ、パカラッ。

足利学校
……ん? この音は……馬の蹄、ですか?

合戦中

千狐
ええと、次のゲームは『大統領戦』……。
……だ、だいとーりょー……ってのはなんなのでしょう?

鳥羽城
チームを統べる長のことだな。
そいつが退場したら負けになっちまうんだ。
うちの大統領はもちろん……殿だぜ!

殿
…………!(どやぁ)

立花山城
相手チームの中に一体、手強そうなのが居る……。
それが向こうの大統領……倒すべき標的ってことね。

鳥羽城
そーいうこと!
それじゃ殿、このゲームも張り切って――

……パカラッ、パカラッ、パカラッ。

グレートヘルム兜
ム……今日ハ愛馬ノゴ機嫌ガナナメミタイデース。
コウナッタラ、新鮮ナ人参ヲアリッタケ――オゥッ!?
ウェイウェイウェイッ! ドコヘ向カウノデスカ我ガ愛馬ヨ!?

烏帽子形兜
……アレハ!
馬術部ニ体験入部シテルッテイウ、
留学生ノグレートヘルム兜君ジャナイカ!?

鳥羽城
あの勢い……こっちに向かってくると厄介だぜ。
留学生の動向にも、注意する必要がありそうだな。

後半

鳥羽城
(――ぅぐっ!?
 し、しまった……足が……!)

トッパイ先輩
ソコダッ! 喰ラエェェェェ!!

パパパパパ……!

鳥羽城
く、ヒットー!
殿、皆……後は頼んだぜ!

トッパイ先輩
後ハ標的ヲ倒スノミ。
コノママ行ケバ、俺タチノ勝利ダ……!

柳川城
……そうはさせませんよ!
はあああぁぁぁぁっ!!

トッパイ先輩
ンナ……ナンダトォッ!?

殿
…………!

烏帽子革張形兜
ピピーッ! ゲーム終了!

烏帽子革張形兜
……勝者、殿チーム!

トッパイ先輩
気ヲ抜イタ一瞬ノ隙ヲ……ナンテザマダ……!
チクショウ……チクショオォォォォーーーー!

柳川城
……殿の身は、必ず守り抜きます。
たとえそれが、遊びの中であっても……!

立花山城
……やるじゃない。
鳥羽城がやられた時は流石に焦ったけど、
それも見越していたのね……柳川城。

柳川城
……鳥羽城さんには感謝しなければ。
敵チームの注意を集めてくれたお陰で、
隙を伺う余裕が生まれました……。

やくも
向こう見ずでやけっぱちな鳥羽城の働きが、功を奏したがや♪

足利学校
そ、それは褒め言葉になっていないような……。

柳川城
――と。そうでした……鳥羽城さんはご無事ですか?
勝敗が決する間際の交錯で、
転んでしまったようですが……?

鳥羽城
ああ、俺なら大丈夫だぜ……柳川城。

柳川城
……鳥羽城さん!

鳥羽城
いいとこを持ってかれちまったのは残念だが……勝てて良かった。
各メンバーの動きもチームワークも、徐々に良くなってる……。
この調子で、次のゲームもよろしくな。

柳川城
は、はい……ですが……。

鳥羽城
……悪ぃ。
俺、ちょっと向こうで休んでくる。
ハードなゲームが続いたし、流石にな……。

殿
…………。

千狐
……行ってしまったの。
鳥羽城さん……大丈夫でしょうか……?

マルボルク城
……わ、私! ちょっと様子を見に行ってきます!

オペレーション:S -急-

チームの垣根を忘れ、昼食を堪能する一行。
しかし同じ頃、皆から離れた場所にて一人、
険しい表情を浮かべる鳥羽城の姿があった……。

前半

2ゲームを終えて……時刻は昼。

腹が減ってはサバゲーは出来ぬ……ということで、
フィールドを離れた戦士たちは、片時……チームの垣根を忘れて、
共に安穏とした時を過ごしていた。

烏帽子革張形兜
オカワリガ欲シイ子ハ、
遠慮ナク言ッテクダサイネー。

やくも
もぐもぐ……もぐもぐ♪
んぅぅ~……美味い!

やくも
サバゲーのお供にはやっぱりカレー!
これが無くちゃサバゲーを楽しんだとは言えんだに♪

足利学校
そ、そうなのですか……?

やくも
――だに! さっき、
そこの兜さんが言うとったのを聞いたから、
間違いないがや!

殿
…………!(はふはふ、はふはふ)

立花山城
こら……そんなに慌てて食べないの。
ちゃんと冷まして食べなきゃ。ふぅー……ふぅー……。

柳川城
(――あぁっ!? ちょっと目を離した隙にっ!)

その頃、一方――

鳥羽城
――ってぇ……。
どんどん痛みが酷くなってきやがる。

鳥羽城
思いっきり躓いちまったからな……ちくしょう。

鳥羽城
だが、残すはあと1ゲーム……。
皆を誘ったのは俺なんだし、
ここで戦線から離脱するのは許されねぇ……!

鳥羽城
この程度の痛み、なんてこたぁねぇ。
気合で耐え抜くんだ……持ち前の海賊魂で……!

マルボルク城
…………。

マルボルク城
(鳥羽城さん……)

そして、一抹の不安を残しながら、
昼休憩は終わり――

鳥羽城
――ということで、作戦については以上だ。
共有事項があれば聞くが……何か伝えておきたいことはあるか?

マルボルク城
…………。

マルボルク城
――すみません。
私から一つ、皆さんに知らせておきたいことが……。

殿
…………?

マルボルク城
皆さん……鳥羽城さんは今、足に怪我を負っています。

鳥羽城
……っ!!

柳川城
……やはり、そうでしたか。
先のゲームで躓いた時に、足を挫いたのですね……?

鳥羽城
い、いやいや! 大げさだって!
確かに怪我をしたことは事実だが、大したもんじゃない。
運動に不自由するようなことは――

マルボルク城
――一番大事なのは、身の安全。
あくまで模擬戦、遊びの一貫だから……。
鳥羽城さんは最初、そう言いましたよね?

鳥羽城
…………。

マルボルク城
……患部も確認しましたが、軽症とは思えませんでした。
平静を装っている今も、激しい痛みに襲われているはずです。

マルボルク城
……覗き見るようなことをしてしまって、すみません。
でも……取り返しのつかないことになったら、
凄く悲しいって……思ったから。

鳥羽城
マルボルク城……。

立花山城
……それで?
正直なところを聞かせてくれる?

鳥羽城
……大したことない、とは言えねぇな。
こうして立ってるだけでも、ズキズキと痛んでやがる。
今後のことを思うなら……激しい運動は避けるべきだろう。

千狐
では、やはり鳥羽城さんには安静にしてもらった方が……。

鳥羽城
――けどよ!
これで終わりにしちまうなんて……、
俺は受け入れらんねぇよ!

殿
…………。

鳥羽城
無茶を言ってるのは分かってる……でも!
この所領は、いつ元通りになっちまうかも分からねぇ。
もしかしたら、次のゲームで最後になるかもしれないんだ……!

鳥羽城
それに、ここで俺が抜けちまったら、
このチームは……ゲームの勝敗は……!

足利学校
……待ってください、鳥羽城さん。

足利学校
確かに、怪我の悪化は避けるべきです。
となれば、激しい運動はご法度……それもその通り。

足利学校
ですが……鳥羽城さんの退場が、
避けられないことかと言うと……。
まだ、考慮の余地はあると思います。

鳥羽城
……ど、どういうことだ?

足利学校
幸い、次のゲームは『防衛戦』……そして私たちは、守り手側。
一箇所に留まり、相手を迎撃する立場です。つまり――

柳川城
……なるほど!
足を使わず、それでいて本人の腕も活かせる。
そんな役回りを鳥羽城さんに任せることも可能、ということですね?

足利学校
……そう。補い合い、支え合えば良いのです。
サバゲーはもちろん……学園生活も同じこと――いえ、
これまでも私たち城娘は、そうやって苦境を越えてきたのですから。

マルボルク城
つまり……鳥羽城さんは、団長の身辺の護衛を。
他のメンバーでその援護を……ということですね?

鳥羽城
い、いいのか……皆に頼っちまっても?
本来なら、俺が引っ張らないといけねぇのに……。

立花山城
勘違いはしないでね?
もちろん、手助けはするけど……、
貴方にもちゃんと働いてもらうんだから。

やくも
相変わらず、立花山城は素直じゃないだに~♪

立花山城
う、うるっさいわね!
思ったことをそのまま言っただけよ!

柳川城
補い合い、支え合う……ですね。
鳥羽城さんの力無くして、
我がチームの勝利はあり得ませんから。

千狐
コンッ! 千狐も精一杯応援するのっ!

鳥羽城
ありがとな、皆……。
力を合わせて次のゲームを乗り切ろうぜ……!

殿
…………!

合戦中

鳥羽城
次のゲームは『防衛戦』……。
攻め手は相手の殲滅に、守り手は拠点での応戦に、
それぞれ集中することになる。

柳川城
私たちのチームは守り手側……。
殿を中心に小さく集合し、堅い陣を敷くことにいたしましょう。

鳥羽城
相手の攻めは、これまでにない苛烈さを見せるだろう。
厳しいゲームが予想されるが、皆……よろしく頼む!

後半

烏帽子革張形兜
ピピーッ! ゲーム終了!
……勝者、殿チーム!!

柳川城
やった……やりました! 三連勝です!

千狐
鳥羽城さんを中心に見事な連携……!
内容も結果も、文句無しだったのー!

殿
…………!

鳥羽城
ふぅー、どうにかなったみたいだな。
怪我人は……出てないか?

立花山城
全員無事よ……貴方以外はね。
それで、鳥羽城……足の具合はどうなのよ?

鳥羽城
……問題無しだ! 皆が支援してくれたお陰で、
足にも負担を掛けずに済んだぜ……ありがとな。

立花山城
い、要らないわよ、お礼なんか……。
というより、その言葉を伝える相手は他に居るでしょ?

立花山城
ほら……あの子。ゲームの間もずっと、
不安そうに貴方を見守ってたんだから……。

マルボルク城
……鳥羽城さん。

鳥羽城
マルボルク城……。
悪ぃ、世話……掛けちまったな。

鳥羽城
あんたが勇気を出して、皆に伝えてくれなかったら、
俺は怪我を隠したまま前線に出て、無惨なことになってただろう。

鳥羽城
全部……マルボルク城のお陰だよ。ありがとな。

マルボルク城
わ、私のお陰だなんて……そんな。
ぐす……うぅ……ぐす……良かった、ですぅ……。

鳥羽城
ふ……なんだよ、泣くほど嬉しかったなんて――

マルボルク城
あぁいえ、花粉で目が……ぐしゅ。
日の本の春……恐るべしですぅ……。

鳥羽城
いや花粉かよ……もらい泣きするとこだったじゃねぇか……。

殿
…………。

――――

烏帽子形兜
アーァ、負ケチャッタ。
最後ノゲームハ惜シカッタンダケドナァ……。

トッパイ先輩
連敗、ダト……コノ俺ガ……!?
グ、グギギ……グ、悔ジィ゛ィ゛……!

トッパイ先輩
コノママジャ終ワレン……。
カクナル上ハ、カクナル上ハ……!

オペレーション:S -絶壱-

予定されていた3ゲーム全てを勝利で飾り、
片付けを進めていた殿一行。だがその時、
相手チームから泣きの一回を請われて――

前半

やくも
片付け、片付け……おっ片付けーっと。

柳川城
……なかなか興味深い遊びでしたね。
普段は後ろから援護する機会が多いので、新しい発見も得られました。

立花山城
そうね……ゲームとは分かっているのだけど、
佳境に差し掛かると、つい熱が入っちゃう。

殿
…………!

鳥羽城
楽しんでもらえたようで、嬉しいぜ。
第二回が開催されることを、俺は楽しみに――

トッパイ先輩
――マ、待ッテクレ!

足利学校
……ん? 貴方は――?

トッパイ先輩
先程ノゲームハ見事ダッタ……完敗ダ。
ダガ、日ガ暮レルマデハマダ時間ガアル。
ソコデ頼ミタインダガ……モウ1ゲームダケ、付キ合ッテクレナイカ?

立花山城
……はぁ? もう決着はついたでしょ?
往生際の悪いこと言ってんじゃ――

柳川城
立花山城さん、あくまでゲーム……ゲームですから……!

トッパイ先輩
ジ……実ハ、マダ使ッテナイエアガンガアッテサ……。
弾モ余ッテルシ『フルオートOK』デ……ナ? ドウダ?

鳥羽城
フルオートOKか……いいな、それ。

鳥羽城
……悪い、皆。
もう1ゲームだけ、付き合ってくれないか?

足利学校
ですが、鳥羽城さん……まだお怪我が……。

鳥羽城
……だな。俺の足は見ての通り……次のゲームでも、
皆の助けが必要になっちまうだろう。

鳥羽城
けど……向こうがせっかく申し出てくれたんだ。
余った弾を使い果たすつもりで、
パーッと……付き合ってくれねぇか?

殿
…………!

立花山城
ふ……仕方ないわね。それじゃ付き合ってあげるわ。
私もようやく、面白さを理解し始めたところだし。

柳川城
ただし、前のゲームと同じく、
鳥羽城さんは殿の護衛に徹する……約束ですよ?

マルボルク城
(最後にもう1ゲーム……。
 え、エアガンは怖いです。けど……先程のように、
 祈っているだけよりは……私も……!)

マルボルク城
……ん~! やらずに後悔するくらいなら、
やって後悔する方を選びます!
今回は私も鳥羽城さんの力に……!

鳥羽城
お、おい! マルボルク城!?
どこへ行くんだ、マルボルク城っ!

烏帽子革張形兜
本日最後ノゲームハ『フルオートOK』!
ソレデハ各チーム、所定ノ位置ニ移動シテクダサイ!

合戦中

マルボルク城
今回のゲームは私も力になりますよ、鳥羽城さん!
エアガンの扱いはちょっと難しいけど、囮役なら私にだって果たせます!
相手チームの足止めは私にお任せを!

鳥羽城
待て、マルボルク城! 今回の相手はフルオート!
さっきまでとは威力も連射も段違いで――!

柳川城
――行ってしまいました。
無事でいてくれると良いのですが……。

殿
…………。

烏帽子形兜
……アレ?
次ノゲームッテ……セミフルドッチデスカ?

トッパイ先輩
フルオートOKッテ言ッテタダロ……。
サッキノアナウンス、聞イテナカッタノカ?

烏帽子形兜
ア、イヤ……聞イテタンデスケド、
本当ニ大丈夫カ確認シタクナッチャッテ。

後半

トッパイ先輩
ク……一ツモ勝チ星ヲ拾エズトハ。
シテヤラレチマッタナァ、今日ハ……。

鳥羽城
良いじゃねぇか、お互い楽しめたんだからさ。
……ま、リベンジならいつでも待ってるぜ♪

トッパイ先輩
アア……見テロヨ。
チームワークヲ高メテ、新シイ装備モ揃エテ……。
必ズリベンジヲ果タシテ見セルカラナ……!

鳥羽城
おう、楽しみにしてるぜ!

トッパイ先輩
ニシテモ……アレハ何ダッタンダ?
場違イナ格好デ、フィールドニ紛レ込ンデタ……大太鼓ノ……。

足利学校
場違い……大太鼓……。

立花山城
もしかしなくても……マルボルク城のことよね。

トッパイ先輩
アレニハ驚イタゼ。
気ヲ取ラレテツイ、手元ガ狂ッチマッテ……。

鳥羽城
――っ! そうだ、マルボルク城!

鳥羽城
……あいつはどこに居る?
無事なら返事をしてくれ……マルボルク城っ!

マルボルク城
……はぁ~い。
こっちぃ……こっちですぅ~。

鳥羽城
無事か、マルボルク城?
――はっ!?

マルボルク城
うぅ……おでこがヒリヒリしますぅ……。

鳥羽城
…………。

鳥羽城
……て、手を貸した方が良さそうだな?

マルボルク城
……お願いします。

そして――

柳川城
……結局、所領は元通りになりませんでしたね。

立花山城
それはそうでしょう……。
朝から晩までサバゲーを楽しんだだけだもの、私たち。

殿
…………。

鳥羽城
しっかし、この学園って場所は……ほんとに平和だよなぁ。

鳥羽城
模擬戦を遊びとして楽しむ、俺たちの部活もそうだけど……。
勉学や運動にここまで打ち込めるなんて、なんだか不思議な環境だぜ。

足利学校
『戦の無い平穏な世においては、
 学問こそが世を渡る術として重用される』
所領を変容させた学問の神様は、以前そのように仰っていました……。

鳥羽城
へぇ……ってことは、
当たり前のようにこんな生活を送る未来も有り得るってことか。

鳥羽城
そいつぁ、素敵な世界なんだろうな……きっと。

鳥羽城
……改めて理解したよ。
こういう平和を実現するために、
俺たち城娘が居るんだな……ってさ。

鳥羽城
ま、俺の場合、
勉学の方はからっきしなんだけどよ。ははっ♪

やくも
それはうちも一緒だに! はははっ♪

千狐
やくものそれは笑い事にならないの……。

鳥羽城
つまりさ……殿。あんたにとっちゃ、
今の所領は結構な事件かもしれないけど、
そんなに焦る必要は無いと思うぜ。

鳥羽城
俺の勝手な想像だけど、
この穏やかな暮らしは……案外、殿や城娘たちに対する、
神様からの贈り物なんじゃねーかな。

殿
…………。

鳥羽城
今だって……実はこっそり、
俺たちの様子を覗いてるかもしれないぜ?

足利学校
そうなのでしょうか……神様?

…………。

学問の神
……こほん。

マルボルク城
あ、咳払い! 咳払いみたいなのが聞こえましたよ!

やくも
照れ隠しっぽい感じだったがや!

学問の神
ええい、うるさいうるさい!
部活動に励むのは結構じゃが、いい加減勉学にも精を出さんか!

学問の神
これ以上怠けるようなら、我は容赦せんぞ! ……特にやくも!

やくも
ど、どうしてうちだけ名指しなんだにぃぃ~!?

殿
…………。

――――

――時を同じくして、体育館。

???
――ソーエイ! オーエイ!

ダムダム、ダム――

都於郡城
はぁ、はぁ、はぁ……。
……ようやく体が温まってきました。

都於郡城
ですが、これはまだウォームアップに過ぎません。
チーム四十八城のため、さらに自らを追い込み――

ツバサ
た、大変! 大変だよぉ!
都於郡城ちゃ――せんせ~!!

都於郡城
――ツバサさん。
なんと素晴らしい幼み――こほん。走り……ですね。

都於郡城
……如何です?
貴方も我がチームの一員として、青春の思い出を――

ツバサ
それどころじゃないんだよぉ!
事件だってば、事件!

ツバサ
ば、ばば……ばばば……!

都於郡城
(……ババァ?)

ツバサ
バスケ部が、廃部になっちゃうって!!

都於郡城
――っ!?
な、なんですって……!?

――続く。

オペレーション:S -離-

春の陽気を見上げながら、日課の散歩を
楽しむ教師、都於郡城。しかしその時、
幼き者の声が彼女の耳朶を震わせる……!

前半

都於郡城
――ふわぁ。ふふ、いけませんね。
春の陽気に誘われて、つい欠伸が……。

都於郡城
それにしても……本当に良い天気。
こんな日には、生徒たちと一緒に校庭で――

???
待ってぇ、置いてかないでよぉ~っ!

都於郡城
――っ!? この声はっ!

元気いっぱいな初等部少女
ねぇっ、今日のテストは大丈夫そ?
赤点だと追試で合格するまで、居残りさせられるんだって!

おさげの素敵な初等部少女
私よりそちらの方が、よっぽど心配では……?

都於郡城
(……しまった。
 つい姿を隠してしまいました……)

都於郡城
(ですが、思った通り。
 先の声はあの二人のものでしたか……!)

元気いっぱいな初等部少女
テストが終わったら、何しよっか?
わたし、体育館に行こうと思ってるんだー。
思いっきり身体を動かしたいなーって♪

おさげの素敵な初等部少女
体育館……私は本を読みたいです。
スポーツではきっと敵いませんし……。

元気いっぱいな初等部少女
まーまー、堅いこと言わずに!
勝ち負けにはこだわらずに、賑やかにやろうよ。
せんせーたちにも声を掛けてさ♪

都於郡城
(――せ、せんせーたちにも……!?
 となれば、白羽の矢が立つのは必然――)

ダムダム、ダム――

元気いっぱいな初等部少女
せんせっ……せんせーってば、聞いてる?
わたしにもボール、回してよぉ。

都於郡城
な、何を言っているのです……!
貴方たちは敵チームではありませんか。
その頼みだけは……絶対に聞けません。

おさげの素敵な初等部少女
そんな……確かにチームは違いますけど、
私たち、これまでずっと一緒に頑張ってきたじゃないですか……。

おさげの素敵な初等部少女
なのに……どうしてそんな、
悲しいことを言うんです……せんせ?(うるうる)

都於郡城
――い、いけませんっ!
そんなに密着しては……そんなに密着してはっ!!

(※都於郡城の妄想です)

元気いっぱいな初等部少女
せんせが言うことを聞いてくれないなら、
わたしにも考えがあるよ……えいっ!!

おさげの素敵な初等部少女
ぐいぐい……ぐいぐいぐい……。
こっちにボールを、渡して……くださいっ……!

都於郡城
だ、だめ……バスケットは紳士のスポーツ!
身体の接触は厳禁なのに……なのに!

おさげの素敵な初等部少女
そんなこと言わずに……いいでしょ、せんせ?

(※都於郡城の妄想です)

都於郡城
(理性の限界が近い……このままでは、
 ホールディング不可避……!)

都於郡城
(その前に、少しでも長く……この状況を堪能して――)

???
――わ、ととっ……!?

足利学校
と――都於郡せんせ……きゃああぁぁぁっ!?

(どしぃーーーんっ!)

都於郡城
――はっ!

足利学校
いたた……すみません。
思いっきりぶつかってしまいましたぁ……。

都於郡城
……あ、足利先生?

足利学校
先日……大事な眼鏡を失くしてしまって、
以来、ぶつかったり転んだりの連続なんです。
どこにいったのかしら……私の眼鏡……。

都於郡城
いいえ、私の方こそぼーっとしてしまって――

都於郡城
――そうです、足利先生。
時に、放課後の予定は空いていらっしゃいますか?
よろしければ、偶然を装って一緒に体育館へと――

足利学校
ほ、放課後……?
何を言っているのです、都於郡先生。
私たちが受け持つ子たちの成績を……忘れてしまったのですか?

都於郡城
…………あ。

――所領。

殿
…………。(ごくり)

静かな教室に、緊迫した空気が満ちる。そして――

足利学校
それでは……答案を返します。

足利学校
アビラさん……42点。

城塞都市アビラ
はぁ~……やっぱりこうなっちゃいましたかぁ。

足利学校
鳥羽城さん……29点。

鳥羽城
――おっ。意外と採れてるじゃねーか。
当てずっぽうに書いたのが当たったか? へへっ♪

足利学校
最後に、やくもさん……11点。

やくも
ぃよぉーっし! 二桁達成っ!!

足利学校
…………。

足利学校
(ふらっ)

柳川城
――あ、足利学校さんっ!?
しっかり! 私に掴まってくださいっ!

足利学校
……衝撃です。
覚悟はしていましたが、まさかここまでとは……。

都於郡城
まずいことになりましたね……はぁ。
このままでは、私のバスケ部が廃部に……うぅ。

都於郡城
うぅ……うっ……うっ、うっ……!
どうして……どうしてなのぉ……!

足利学校
お気持ちお察しします。
でも、大丈夫……この後には追試が待っています。

足利学校
この子たちなら、きっと乗り越えてくれますよ。
ですから私や殿、教師陣で一丸となって――

都於郡城
――どうして……どうして初等部じゃないのぉ……?
私の受け持つクラスは、初等部以外にあり得ないというのに……!

千狐
そ、そういう話でしたっけ……?

城塞都市アビラ
し、初等部はともかく、状況は私や鳥羽城さんも同じだよ!
成績が上がるまで部の活動は認めん、って手紙が届いたの!

鳥羽城
まー……勉学を疎かにしてたのは事実だもんなぁ。
好きなことだけってのは、虫が良すぎるよなぁ……やっぱ。

やくも
な、なんか……。
勉強しなきゃいかんっぽい空気になってきとるだに……?

千狐
誰よりも勉強しなきゃいけないのは、
やくもだと思うの……。

殿
…………。

こうして授業が始まり、
成績も順調に上がっていくかと思われた。しかし――

都於郡城
こちらの問は一見難解に見えますが、先程の例題を振り返ると――

城塞都市アビラ
(かきかき……めもめもめも……めもめ――)

城塞都市アビラ
(――べきっ)

城塞都市アビラ
……あ。またやっちゃいました。

やくも
あぁー、うちが貸した筆がぁ~!
何本へし折れば気が済むんだにー!?

都於郡城
――この後に待ち受ける追試も、
これらを頭に置いておけば、間違えることは――

城塞都市アビラ
あはは……すみません。
生まれつき力持ちなんですよね……私。
次からは加減を――

城塞都市アビラ
(――べきっ)

鳥羽城
すでに次の筆が犠牲になってるじゃねぇか……。

やくも
もー怒っただに!
うちの筆はぜぇーったい貸してやらんがや!

城塞都市アビラ
そんな……許してよぉ、やくもちゃん。
これじゃ授業の内容が写せなくなっちゃう――

都於郡城
……貴方たち。いい加減にしなさい。

都於郡城
私がいつまでも優しくしていると思ったら……大間違いですよ?

足利学校
(おお……毅然とした態度。これは頼もしい味方が――)

都於郡城
もし皆さんの成績が上がらなかったら、
どうなるか……分かっているのですか?

城塞都市アビラ
あ……そ、そうですよね。
ごめんなさい。このままじゃ所領が――

都於郡城
――違います! そんな話はしていません!

城塞都市アビラ
……へ?

都於郡城
このままでは、私が初等部の生徒と、
バスケットを楽しめなくなってしまうのですよ?

都於郡城
そうなったら貴方たち……どう責任を取るつもりですか?
貴方たちに、美しき無垢なる少女たちの代わりが務まりますか?

やくも
もっともらしい感じで、
とんでもないことを言い出しただに……。

鳥羽城
指導が必要なのは、こっちなんじゃねぇか……?

足利学校
は、はーい。皆さんちゅうもーく。
授業を再開しますよー。

城塞都市アビラ
な、何事もなかったかのように……。

鳥羽城
足利先生も大変だな……。
これ以上苦労を掛けないよう、俺たちも勉学に精を出して――

???
ワオォォーーーーーーン……。

柳川城
……ん。遠吠え……教室の外から?

やくも
あああっ! 見るだに、校庭の外っ!
でっかいわんこが走っとるがや! 耳と尻尾がとっても可愛いだに~♪

千狐
む……耳と尻尾なら、
千狐のをいつも触ってるじゃない……。

立花山城
(嫉妬してる……?)

城塞都市アビラ
わぁ、本当です♪ 可愛い~!
撫でたりしても大丈夫でしょうか?

鳥羽城
迂闊に近づかない方がいいかもな。
かなり大型だぜ、ありゃあ……。

みんな
(わいわい、わいわい――)

足利学校
(ぱんぱんっ!)

足利学校
はーい、よそ見はダメですよ。
わんちゃんよりも今は、黒板に集中を――

犬形兜
ワォーーーンッ!
ワンワンワン、ワォ~ン♪

鳥羽城
――って言ってる傍から兜じゃねーかっ!?

岡城
わぁーーーー!?
だめだめだめっ、だめだってば~~~~!!

殿
…………!?

岡城
うわぁ、殿っ!? それにみんなもっ!
あああ、ごめんなさい~!
目を離した隙に逃げられちゃって……!

岡城
――ど、動物ちゃんたちぃ~!
お願いだから、あたしの言うことを聞いて~!
お家に帰ろうよぉ~~!!

足利学校
き……危険ですっ!
生徒たちは私の背に隠れて……さぁっ!

合戦中

岡城
わぁ~!? みんな、どいてどいて!
そこに居ると危ないよぉ~~!

柳川城
あちこちから鳴き声が聞こえてきます。
犬に猿に、熊に象……!

立花山城
穏便に終わらせることは難しそうね。
……殿、下知をお願いできるかしら?

足利学校
私も協力いたします!
不埒者にはお仕置きを……そして生徒たちには、
彼女らの才能が花開くよう、手助けをいたしましょう。

鳥羽城
すばしっこいのも多いから、
逃さないように気をつけなきゃな! ……行くぜ、殿!

後半

岡城
よ、よぉし……これで最後の一匹っ!!

足利学校
はぁ、はぁ……皆さん、無事ですか?

城塞都市アビラ
上手く、いきましたね……ちょっとハラハラしましたけど、
足利学校さんの声援を聞いていたら、
不思議と力が沸いてきて……無事に乗り越えることができました……!

鳥羽城
俺もだ……足利学校の声が聞こえた時かな、
身体の内側から、力が沸いてくるような感覚を覚えてよ。
流石は俺らの先生ってことか、ははっ。

殿
…………。

都於郡城
……とにかく。
これで初等――皆さんとのバスケッ――こほん!
補習に集中することができますね……!

立花山城
もう隠す意味ないんじゃない、それ……?

岡城
うぅ……ありがとぉ、みんなぁ~!
お陰で飼育委員としてのお仕事を、ちゃんと果たせそうだよぉ……!

岡城
それじゃ、あたしはこれで!
みんなも授業、頑張って――

足利学校
お待ち下さい。
時に岡城さん……成績の方は大丈夫ですか?

岡城
――っ!!

足利学校
ちょうど今、補習を行っておりまして。
よろしければ岡城さんもご一緒に――

岡城
――あーーーー! 大変っ!

岡城
――き、急用を思い出しちゃった!
水やりとか蛇さんのご飯とか、虫とりとか日向ぼっことか……!
どうしてこんな大事なこと、忘れてたんだろっ!

岡城
ということで、あたしはこれで! お邪魔しましたぁ~!

殿
…………。

立花山城
(逃げたわね……)

オペレーション:S -結-

昼休みに差し掛かり、授業は一段落。
校庭に出てテニスに興じるアビラと鳥羽城だが、
気配を殺しながら接近する、不穏な影が……。

前半

キーンコーンカーンコーン――

やくも
うぉーーーー!!(カリカリカリ)

足利学校
……やくもさん。やくもさん。
先ほどから待ちわびていた、お昼休みの時間が来ましたよ?

やくも
――はっ、ほんとだに。鐘が鳴っとるがや……。

千狐
やくもがそこまで勉学に没頭するなんて、珍しいの……。

立花山城
鳥羽城もアビラも、
びっくりするくらい集中してたわね……。

足利学校
……その調子ですよ、やくもさん。
ですが、頑張り過ぎは身体に毒です。
しばらく頭を休めて、午後に備えましょう?

やくも
お昼休み……ってことは、
しばらくは勉強しなくてもええんよね?
ゴロゴロしてもええんよねっ?

足利学校
ゴロゴロはともかく……皆さん、よく頑張りましたね。
お昼休みは好きに過ごして、英気を養ってください。

やくも
ふっふっふ……この時に備えてこしらえた、
おにぎりさんの出番が来たがや……!

城塞都市アビラ
――せんせ、せんせっ!

足利学校
はい? どうしました、アビラさん?
というより、その格好は……?

城塞都市アビラ
好きに過ごしていいってことは、テニスも大丈夫なんですよね?
練習してきても、良いんですよねっ!?

足利学校
アビラさん……ふふ。もちろん良いですよ。
ただし……次の授業が始まるまでには、必ず戻ってくること。
分かりましたね?

城塞都市アビラ
ありがと、先生っ! それじゃーいってきまーっす♪

やくも
アビラは元気いっぱいだにぃ。
うちは勉強でくたくた……運動なんてもっての外がや。
なぁ、鳥羽城……?

鳥羽城
――っしゃあ! それなら俺も付き合うぜ、アビラ!
壁を相手にするより、そっちの方が練習になるだろっ?

柳川城
……ふふ。お二人はやっぱり、
身体を動かす方が性に合っているようですね。

城塞都市アビラ
――えいっ!

ぱこーん!

鳥羽城
……とりゃっ!

ぱこーん!

城塞都市アビラ
筋が良いですね、鳥羽城さんっ!
とても初めてとは思えません!

鳥羽城
ははっ、そうか? そんじゃ、
サバゲー部とテニス部、兼部するってのも悪くないかもな!

城塞都市アビラ
ええ! 鳥羽城さんさえ良ければ、
いつでも我が部に――えいっ!!

――ぱっこーん!!

鳥羽城
ぉ……おいおいアビラ……飛ばし過ぎだぜ。
ボールがあっという間に見えなくなっちまった……。

城塞都市アビラ
ご、ごめんなさいっ!
力加減やコントロールが、どうしても上手くいかなくて。

城塞都市アビラ
それでは、気を取り直して……!

???
ヒソヒソ……ヒソヒソ……。

鳥羽城
……ん?

???
ミ、見ナサーイ……アビラチャンデース。
アビラチャンガ居マース……。

???
エエ、ヨク見エマースヨ。
ナンテ清楚デ……ナンテ可憐ナンデショウ……♪

???
正ニ『コートヲ舞ウ妖精』……!
モットモット穴ガ開クホド見ツメテ、記憶ニ焼キ付ケナケレバ。

城塞都市アビラ
せせっ、清楚? 可憐……!?
そんなぁ……それほどでもぉ……。

鳥羽城
照れてる場合か……相手は覗き魔だぞ?

城塞都市アビラ
――はっ。確かに。
言われてみるとさっきの言葉も、邪な感じを含んでいたような……。

鳥羽城
……おい、そこで隠れてるお前たち!
スポーツに興じる女子をこっそり覗き見なんて、
行儀がなってないんじゃねーか?

鳥羽城
そのまま覗き続けるつもりなら、容赦はしねぇ……。
黙って立ち去るか、姿を現して頭を下げるか!
今すぐどっちか選びやがれっ!

???
――ヒィ。ナ、ナンダアノ生徒ハ……。

???
野蛮……凶暴。
アンナ子ハアビラチャンニ相応シクナイデース……!

???
ソウダ……アビラチャンガ染メラレテシマウ前ニ、
我々ガ引キ離シテアゲナイト……ソレガアビラチャンノタメデース。

――ザザッ!

――ザザザッ!!

鳥羽城
な……なんだっ!
何をするつもりだ……お前たちっ!?

その頃、教室では――

足利学校
では、問題です……ここにおにぎりが九つ。
これを千狐さん、殿、やくもさんで分け合ったら……、
はい、一人いくつ食べられるでしょうか?

やくも
もぐ……もぐもぐ……愚問! そんなことはありえんがや!
おにぎりさんはぜーんぶ、うちの腹に収まるって決まっとるだに♪

立花山城
テストで同じ問題が出たら、
本気でこの答えを書きそうよね……この子。

都於郡城
地頭は良いのですが、
興味の幅があまりに狭すぎるんですよね……。

千狐
これはなんとも……先行きが――

城塞都市アビラ
きゃーーーーーーー!!

殿
…………!?

柳川城
……悲鳴っ!? アビラさんの声です!

合戦中

モリオンヘルム兜マ、待ッテクダサーイ、アビラチャン……!
ワタシタチハタダ、貴方ノ美シサヲ守リタイダケデ……!

城塞都市アビラ
しし、知りませんそんなの!
とにかく離れてください、こっち来ないでください~!

柳川城
な、なんですか。この騒ぎは……!?

鳥羽城
そ、外でアビラとテニスしてたらさ、
あの、留学生――って言ったっけ? そいつらが群がってきてよ……!

立花山城
西洋の兜……あの勢い。ちょっと手こずりそうね。

足利学校
アビラさんも混乱している様子……!
彼女の怪力ぶりを思うと……放ってはおけませんね。
昼休みが終わる前に、ことを収めなければ……!

鳥羽城
……次にまた、アビラに付きまとったりしたら、
タダじゃおかねぇ……分かったな!?

モリオンヘルム兜ハ、ハイッ!姐サンッ!

鳥羽城
よーし、良い返事だ!
それじゃ教室に戻って勉学に励め……解散っ!

モリオンヘルム兜ハッ!!

後半

キーンコーンカーンコーン――

城塞都市アビラ
――って、次の授業が始まっちゃう……!
すぐに準備しなきゃっ!

都於郡城
こんな調子で……追試を乗り越えられるのかしら。
勉強にあまり力を注げていないような気がするのですが……。

立花山城
気がする……というか、正にそんな状況よね。

殿
…………。

足利学校
きっと大丈夫……いえ、大丈夫にしてみせます!
あの子たちは、必ず合格させます……教師としての誇り、全てを懸けて!

オペレーション:S -絶弐-

遂に追試の時が訪れる。緊張の面持ちで殿たちが
見守る中、生徒たちは必死に筆を走らせる。
果たしてこれまでの努力の成果は実るのか……?

前半

城塞都市アビラ
…………。

鳥羽城
…………。

やくも
んぅ~~~~……。

予定していた授業を全て終え……追試が始まった。

筆を走らせる生徒たち。
口をつぐみ、それを応援する教師、殿たち。

皆の努力は実るのか、はたまた――

鳥羽城
(――へへっ。こりゃ楽勝だ。
 俺もやりゃできるんだな♪)

やくも
おお……おおおお……!
手がっ……脳に追いつかねぇ……だに!

城塞都市アビラ
(ここも、そこも……全部分かる!
 ありがとう……ありがとぉ、先生ぇ……!)

殿
…………。(ごくり)

柳川城
(皆さん、頑張ってください……!)

立花山城
(子供を見守る親って、こんな心境なのかしらね……)

足利学校
…………。

足利学校
――やめっ!

――――

やくも
なぁなぁ、まだ結果は出ないんだにー?
そんなに勿体ぶらなくても良いがやー。

足利学校
少々お待ちを。
もうちょっとで終わりますから……。

鳥羽城
く~……結果を待つだけってのは落ち着かないぜ。

城塞都市アビラ
早くこの緊張から解放されたいです……。

足利学校
――これでよし、と。
都於郡先生……そちらは?

都於郡城
はい……私の方も、採点が完了しました……。

足利学校
そう、ですか……。

やくも
そ、それで? 結果はどうだったんだにー?

足利学校
はい、結果は……結果は――。

足利学校
――全員、合格ですっ! おめでとうございますっ!

鳥羽城
ぃぃよっっっしゃああぁぁぁ!!
これで部活動が再開できるぜー!!

城塞都市アビラ
よかったぁぁ~~~……。
私だけ不合格だったら、どうしようかと……!

やくも
ふひぃ……千狐の雷を喰らわずに済んだがやぁ……。

柳川城
やりましたね、皆さん。
今だから言えますが、正直……不安も小さくはありませんでした。

立花山城
まさか全員合格だなんてね。
正直、信じられないわ……。

殿
…………!

足利学校
予想を遥かに上回る点数でした。
皆さん、本当にお疲れ様です……!

都於郡城
うう……うっ、うぅ。
良かったぁ……これで、体育館が……。
バスケットがぁ……!

足利学校
都於郡先生。涙を流して喜ぶなんて……。
生徒たちのことをそこまで想ってくれていたのですね。

やくも
(絶対、初等部絡みの涙だに……)

千狐
(――しっ。それは口にしてはいけない約束なの)

都於郡城
――す、すみません。
つい、感極まってしまって。

都於郡城
とにかく皆さん……お疲れ様でした。
……あ、そうです。せっかくですし皆さん、
教室を出て体育館へ向かいませんか?

やくも
体育館……どうしてそんなとこに行くがや?

都於郡城
机に向かってばかりで、肩も凝ってしまったでしょう?
気晴らしにレクリエーションでもしようかと思いまして♪

足利学校
確かに……目的を達成したのですから、
ご褒美とお祝いは必要ですね。流石は都於郡先生……。
私は追試ばかりで、その後のことが頭にありませんでした。

都於郡城
いえいえ、それほどでも~♪

都於郡城
(――作戦通り)

――――

城塞都市アビラ
体育館で、気晴らし……?
まだ放課後にはなってませんけど、良いのですか?

都於郡城
……ええ。追試を乗り越えた皆さんに、私からの贈り物です。
勉学はもちろん大事ですが、級友と思い出を共有することも、
同じくらい尊いものですから。

都於郡城
……構いませんよね、足利先生?

足利学校
はい。生徒も我々も、
根を詰めてばかりでしたからね……皆で息抜きといたしましょう!

殿
…………!

鳥羽城
先生たちからの粋な計らいってことだな!
そんじゃ、皆で楽しめそうな遊戯を何か――

???
お待ちなさい、そこの貴方たち!

???
この体育館も、殿も……独り占めは許しませんよ!

殿
…………?

金亀城
追試に授業……それも城主様にとっては重要な役目の一つ。

聚楽城
ですから金亀城さんと私は涙を呑み、
待ち続けることを選びました……ですがっ!

金亀城
それも、もはや限界……だって私たちも、
この学園で思い出を作ることを楽しみにしていたのですから。

聚楽城
よって、この場で貴方がたに……勝負を申し入れます。
体育館で殿と思い出を作るのは、誰なのか。
それを決めるために……!

金亀城
確か、貴方……バスケ部に所属していましたね?

都於郡城
……はい。確かに、
私はバスケ部の監督を務めていますが……。

金亀城
……承知しました。私もアスリートの一人です。
そちらの得意分野で勝負を挑みましょう。

聚楽城
なるほど……バスケ勝負ですか……!

金亀城
手荒な真似をするつもりはありません。
正々堂々、恨みっこなしで勝負しましょう……ね?

レッドスコーピオン
――ウィィィィン。

城塞都市アビラ
などと言いながら、
バスケと無関係そうなからくりが、
音を立てているんですけどー……!?

立花山城
あくまであの子たちの理屈……だけど、
穏便に済ませることは難しそうね。
殿が追試組の子に付きっきりだったことは事実だもの。

柳川城
はい……それに、あの状態になった金亀城さんを、
言葉だけで制するのは、困難かと……。

都於郡城
…………。(きょろきょろ)

都於郡城
(そんなことより……あの子たちは?
 追試に臨んでいた私たちよりも、
 早く体育館へ向かっているはずなのに、姿が――?)

???
ねぇねっ! どう、体育館の様子は?

都於郡城
――っ!!

おさげの素敵な初等部少女
残念ながら……先約でいっぱいのようです。

都於郡城
(――幼っ!?)

元気いっぱいな初等部少女
あらら、本当だー。
残念だけど、諦めるしかなさそうだね……。

おさげの素敵な初等部少女
……はい。そのようですね。

都於郡城
…………。

都於郡城
――いけません。

足利学校
……ん、都於郡先生? 今、何か――?

都於郡城
そこの初等部の城娘、二人!! 止まりなさいっ!

おさげの素敵な初等部少女
――ひっ!?

元気いっぱいな初等部少女
わ、わたしたちのこと……?

都於郡城
……大丈夫。安心してください。
貴方たちの遊び場は、私たちが守ります。

都於郡城
……ですから。
此地に太平が訪れたら、私とバスケ……してもらえませんか?

元気いっぱいな初等部少女
(ちょっと、意味が……)

おさげの素敵な初等部少女
(よく分からないです……)

都於郡城
奪われている。
楽しげに駆け回る、幼き城娘の居場所が……自由が。

柳川城
と、都於郡城さん……?

都於郡城
でも……私には、ちゃんと聞こえています。
彼女たちの心の叫びが……魂の衝動が!

都於郡城
……つまり! 体育館と初等部、そして私。
これらが揃うことで、全ては円満! 大団円に至る!
分かりますねっ!?

都於郡城
――よって! 私が水面下で進めてきたあの作戦!
『オペレーション:S』を実行に移す時がやってきたのです!

鳥羽城
お……おぺれーしょん、えす……だと?

かくして、都於郡城の口から
『作戦名:初等部(Operation:Shoto-bu)』
の発令が宣言されたのだった。

――ふぁさっ。

都於郡城
都於郡城……出ますっ!

――都於郡城の決意に満ちた表情を見て、一同は察した。
『ここは下手に異論を唱えない方が良い』と……!

都於郡城
……審判、試合開始の合図を!

殿
…………!?

殿
…………!(こくり)

ピイイィィ――ッ!

合戦中

城塞都市アビラ
四方八方から、不穏な気配……。
ただのバスケと思っていたら、
痛い目を見ることになりそうです。

都於郡城
正に四面楚歌。
でも負けられない……この戦いだけは!

都於郡城
監督として皆を支援し、プレイヤーとしてシュートを決めて……。
見ていてくださいね……私、この一試合に全てを尽くします!

柳川城
都於郡城さん……凄まじい闘志です。
彼女の力を借りながら、皆で勝利を目指しましょう!

後半

タイマー
――ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、

(17秒、16、15、14――)

城塞都市アビラ
あぁ、ボールがコート外に――!?

都於郡城
(届いて……お願いっ!!)

遠ざかるボールへと、
必死に手を伸ばす都於郡城……しかし――

ダム、ダム、ダム…………。

都於郡城
――あぁっ……。

1ゴール差のビハインド……。
残る時間は僅か。その上ボールは相手チームに……。

都於郡城
はぁ、はぁ、はぁ……。

それまで司令塔として、
チームを支えてきた都於郡城の脳裏に、初めて――

都於郡城
(――だめ。弱気になっては……)

都於郡城
(でも、この状況からどうやって……)

元気いっぱいな初等部少女
あの……先生。……先生?

おさげの素敵な初等部少女
ボール……こっちに転がってきたん、ですけど……。

都於郡城
――っ……どうも。
ありがとう、ございます……。

おさげの素敵な初等部少女
……あの。

おさげの素敵な初等部少女
頑張って……ください。

都於郡城
…………っ!

おさげの素敵な初等部少女
苦しい状況かもしれない、けど……。
先生が諦める姿は、見たくない……です。

おさげの素敵な初等部少女
……そ、それだけです。失礼しましたっ!

元気いっぱいな初等部少女
――しましたっ!

都於郡城
…………。

都於郡城
これは……負けるわけにはいかなくなってしまいましたね。

そして、試合は再開され……再びタイマーが動き出す。

金亀城
(残り時間はわずか。
 パスを回しながら、時間を使い切れば――)

金亀城は注意深く、慎重に戦況を見極めていた。
絶対の安全策……勝利に向かう無二の道筋。
しかし、それゆえに都於郡城の付け入る隙が――

都於郡城
――そこっ!!

金亀城
――なっ!?

城塞都市アビラ
――パスカット! やった、都於郡城さんっ!

(13、12、11――)

都於郡城
(切り込んで得点するのは……至難。
 ――それなら!)

――きゅっ!

聚楽城
……ロングシュートっ!?

金亀城
ですがこれは、あまりに……遠すぎるっ!

(10、9、8――)

おさげの素敵な初等部少女
……うん、大丈夫。
先生なら決めてくれるよ。きっと……きっと!

元気いっぱいな初等部少女
入ってぇ……お願い。お願いだからっ!!

都於郡城
(……感じる。二人の視線を……願いを――!)

都於郡城
――このシュートを、貴方に捧げますっ!!

都於郡城が放ったシュートは、
淀みのない美しい弧線を描き、そして――

(7、6――)

――ぱすん。

おさげの素敵な初等部少女
……入った。

足利学校
……やった! やりましたよ、都於郡先生っ!

鳥羽城
うおおおおぉぉーーー!!
今日のMVPは都於郡城だっ!
誰がなんと言おうが、文句は言わせねぇぇぇ!

(5、4、3――)

都於郡城
(――わ、私の勇姿……見てくれましたか……?)

都於郡城
(――ちらっ)

おさげの素敵な初等部少女
――だめぇー! 目を離さないでえぇぇ!

元気いっぱいな初等部少女
ボール! ボールボール!
まだタイムアップにはなってないよぉー!!

都於郡城
――え?

金亀城
(ダムダムダム、ダム――)

(2、1――)

金亀城
――はあああぁぁぁっ!

――ぱすんっ!

殿
…………! ……、……!(ばっ、ばっ!)

ピイイィィ――ッ!

都於郡城
え……えぇー……。

やくも
ぎ、逆転直後の……再逆転……。

立花山城
勝利を確信した、一瞬の隙を突いて……。
諦めなかった金亀城を讃えるべきか、それとも――

柳川城
か、掛ける言葉が見つからないです……。

都於郡城
あっ、そういえば――(ちらっ)

元気いっぱいな初等部少女
あー、はらはらした。
えへへ、凄かったねぇ……それじゃ、行こっか。

おさげの素敵な初等部少女
あ……はい。そうですね……。

おさげの素敵な初等部少女
…………。(ぺこり)

おさげの素敵な初等部少女
(たたたたたた……)

都於郡城
そ……。

都於郡城
そんなぁぁ……。

都於郡城
うう……ううぅ……。

立花山城
――いつまで塞ぎ込んでるのよ、都於郡城。

柳川城
結果は振るいませんでしたが、都於郡城さんのご活躍で、
レクリエーションを楽しむことができました。
皆、感謝しているのですよ……?

都於郡城
やってしまった……最後の最後に、やってしまいましたぁ……。

殿
…………。

鳥羽城
……ところで、この状況を神様はどう見てるんだろうな。

柳川城
部活動、風紀の維持……追試にレクリエーション。
所領の変容から数日で、多くの課題を乗り越えたわけですが……。

足利学校
……神様。見て……いらっしゃるのですよね?

…………。

学問の神
……ならぬ。

城塞都市アビラ
――あぁ、この声はっ!?

学問の神
確かに、ここ数日の暮らしで、変化の兆しは見えた。
じゃが……まだだ。
其方らはまだ……試練を越えておらぬ。

足利学校
越えていない? なぜですか?
先ほどの追試……その成果を、神様だって見ていたでしょう!?

学問の神
……やはり、其方自身も気づいていなかったか。

柳川城
……どういうことです?

学問の神
論より証拠じゃ……ほれ、やくも。
この問題を解いてみよ。
先の追試でも触れた内容じゃ……難しくはあるまい。

やくも
だにっ! そんなのよゆーで解いてやるがや!
うちの成長を見て、衝撃を受ける……と、良い……だ、に……?

千狐
どうしたの……やくも?

やくも
……はれぇ? ぜぇんぜぇん分からんがや……。

足利学校
……そんな。

学問の神
足利学校が有する、他者の才能開花を促す権能。
それが彼女自身の願いにより、意図せず作用して……追試を合格した。
しかしそれも一時のこと……。

城塞都市アビラ
上手くいきすぎてると思ってたんですよね。
あれ、私こんな頭良かったっけ……って……。

鳥羽城
――ってこたぁ、俺の頭脳は今、
夢から覚めたみたいに……元通りってことか?

学問の神
白紙に戻った……とまでは言わんがな。
足利学校の権能の影響は大きかったじゃろう。
今のやくもを見れば分かる通り……な。

足利学校
……つまり。
授業も追試もやり直し……ですか。

やくも
ええええええぇぇぇ! そ、そんなぁ……。

――それから……。

飫肥城
(だだだだだだだだだ)

佐土原城
あれー、飫肥城ちゃーん? どーこー?

都於郡城
飫肥城ちゃん、飫肥城ちゃーん?
なるほど……鬼ごっこですね? 私が鬼役ですね?

都於郡城
ああ、いいです……燃えてきました。
すぐに見つけて、ひっ捕らえちゃいましょう♪

都於郡城
(パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ――)

飫肥城
(だだだだだだだだだ――)

(――パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ)

柳川城
……蹄の音、でしょうか?

足利学校
悲鳴も聞こえたような……? 気のせいでしょうか。

やくも
足利学校、足利学校!
次はここを教えてほしいだにー!

足利学校
……ああ、はいはい。
ここはですね……。

立花山城
それにしても、随分と勉強熱心になったものね。
先日の一件が身に染みたのかしら。

足利学校
ふふ、やくもさんはまだまだ成長中です。
集中力は人一倍ありますし、
もしかしたら、将来は立派な学者さんになるかもしれませんよ。

千狐
や、やくもが学者? ……信じられないの。

足利学校
(――それにしても、
 私の眼鏡はどこにいったのでしょうか……?)

やくも
はい! はいはいっ、できたがや!
午前中はこれでおしまいだにっ!

柳川城
なんと……もう終わったのですか、やくもさん。

千狐
そんな……千狐よりも早く終わらせるなんて……!

やくも
にひひっ♪ 今日はうちが一番乗りだに~♪

殿
…………!

足利学校
ふふ、言ったでしょう?
皆さんもやくもさんに追い越されないよう、
一層の努力に励まなければ――

足利学校
――と、思ったのですが……残念。
こちらの答案……間違いだらけのようですね。

やくも
……だに?

足利学校
さぁやくもさん、座って。
頭からおさらいをしましょう♪

やくも
そ、そんなぁ……。
うちの努力はいつになったら実るんだにぃぃ~~~……!



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