ストーリーテキスト/ぱっかーんしやがれ!

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目次

ぱっかーんしやがれ![]

ぱっかーんしやがれ! -序-

『夏の行楽を共に』と誘う招待状が、
二人の城娘より、所領に向けて送られた。
日程の困難さから不参加を検討する一行だが……?

前半
所領――――。

千狐
弱りましたね……。

千狐
安平城さん、それから甘崎城さんより……。
『夏の行楽を共に』と誘う招待状が二通……。

やくも
だーかーら、悩んでないでどっちも行けばいいだに!

千狐
……確かに、転移を駆使すれば、行けないこともないけど……。
かなり過密な日程になるわよ?

やくも
無理しない範囲で楽しめばいいだに! 
両方断るよりはよっぽどいいがや!

やくも
……そうするだに、殿さん!
一回より二回楽しめるほうが良いに決まってるだに!

殿
…………。

殿
…………!

やくも
さっすが殿さん! わかってるだにー!

柳川城
では……招待状の日程から考えて、最初に甘崎城さんの御城へ。
……そこで数日滞在した後に、安平城さんのところへ転移……という流れになりますか。

柳川城
今年の夏は、少々忙しくなりそうですね……。

柳川城
…………。

柳川城
(何でしょう……なんだか、頭が重たいような……)

千狐
早速、準備を整えて甘崎城さんの御城へ出立を……。

千狐
……柳川城さん? どうかされました?

柳川城
すみません、私……。急に、めまいが……。

柳川城
(もう、立っていることが……)

殿
…………!?

やくも
や、柳川城が倒れただにっ!?

――――

柳川城
…………。

殿
…………。

千狐
そうですね……旅行は中止にした方が良いでしょう……。

やくも
(声無き悲鳴)

千狐
夏はまだまだ続きますし、
落ち着いてから改めて予定を決めれば……。

柳川城
なりませんっ……!
それでは、安平城さんや甘崎城さんのお誘いを断ることになってしまいます。

柳川城
……私は大丈夫ですから、
お気になさらず、どうぞ楽しんできてください……。

千狐
…………。

千狐
(殿、どうしましょう……?)

千狐
(柳川城さんのことですから、
 招待をお断りすれば、責任を感じてしまうことになるかと……)

殿
…………。

千狐
……わかりました。
千狐たちは甘崎城さんの許へ出発することにします。

千狐
看病役としてツバサを残していきますから、
なんでも申し付けてくださいね!

柳川城
千狐さん、ありがとうございます。
ご迷惑をおかけします……。

――数刻後。

千狐
それでは、準備も整ったようですので、
甘崎城さんの御城に向けて転移を――。

柳川城
あ、待ってください……!

柳川城
出発の前に……これを、やくもさんに……。

千狐
これは……!
石弓……いえ、水鉄砲でしょうか……?

柳川城
私の石弓を模した水鉄砲……。
夏に向けて、やくもさんが作ってくださったものです。

柳川城
これを私だと思って……楽しんできてください……。

千狐
柳川城さん……。

千狐
(そんな、今生の別れじゃないんですから……)

やくも
(柳川城……頭までちょっとおかしくなってしまっただに……)

やくも
わ、わかっただに……。
後のことは、うちに任せるがや。

千狐
……それでは!
改めまして、出発とまいりましょう!

――――

千狐
到着しました! 転移成功です!

首里城
おー!
いらっしゃーい、こくお~!

千狐
首里城さん!
もう到着していたのですね!

首里城
他の城娘たちも集まってるよぉ。
皆、こくおーたちの到着を待ちかねてたさ~。

甘崎城
おぉ! 殿たちもようやく到着ですか!

甘崎城
今回は存分に楽しんでいくといいです!
ばれんたいんの時は迷惑を掛けてしまいましたから、
今回はもてなしまくって最高の思い出を――。

甘崎城
――むっ……?

首里城
どうかしたか、甘崎城ちゃん? 急に神妙な顔して……?

甘崎城
招かれざる客です……この感じ、たぶん兜の集団が近くに……。

首里城
すごいね甘崎城ちゃん!
兜の気配なんて、スイまったく気づかなかったさ~。

甘崎城
ここら一帯の海はわたしの庭……その上わたしは、
船舶を捕まえて税を徴収していた関係から、近辺を行き来する船の気配に鋭いのです。

甘崎城
つまり、わたしにとってはこれくらい朝飯前! 褒められるほどでもねーってことです!

千狐
(とっても嬉しそうです……)

甘崎城
気配はこっちの方から感じられるです! 者ども、わたしの後に続くですー!

千狐
あ、待ってくださーい!

千狐
殿、千狐たちも甘崎城さんの後を追いましょう!

殿
…………!

――――

甘崎城
到着です!

甘崎城
この辺りに、不審な気配を……ん?

桃形兜
イエエエエェェェェェェ!

桃形兜
波ニ乗ルゼエエエェェェェッ!!

やくも
な、波にのってるだに……。

首里城
なんだかすごく盛り上がってるみたいだね……。

千狐
…………。

千狐
この辺りは、波が高――きゃっ……!

千狐
……皆さん。兜はもちろんのことですが、海にもお気をつけて……。
この辺りは波が高くなっているようですから……。

やくも
ん……なんだに、千狐。なんか言ったがや?

千狐
だから、この辺りは波が高いから――。

ざっぱーん

やくも
――ぷぁっ!?

やくも
なんだ、波か……驚いただに。……って、あれ?

やくも
あれ……あれあれ!?

やくも
ないだに!? うちが受け継いだ、
柳川城の形見が何処にもないだにぃっ!

千狐
あぁ……波にさらわれてしまったのね。……言わんこっちゃない。

甘崎城
えぇっ、形見!?

甘崎城
つまり、柳川城はもうこの世に居ねーってことですか!?

首里城
……柳川城ちゃんの姿が無いと思ったら、
そういうことだったんだね……。

千狐
違いますー!
やくも、縁起でもないこと言うんじゃないのっ!

やくも
とにかく、柳川城の武器を見つけないと……。
ここは一つ、うちが海に飛び込んで……!

千狐
だめよ! 兜がそこら中に居るのを忘れたの?

やくも
うぅ……でもぉ……。

甘崎城
だったら兜をとっちめてやればいいですー!
どっちみち兜が邪魔者になることは違いないですし!

首里城
そうだねぇ。
こっちにはこくおーも居るし、
スイや甘崎城ちゃんも居て戦力も充分だし!

千狐
その上、向こうは波乗りに夢中で気づいていないみたいですしね……。

殿
…………!

甘崎城
よぉし! 殿の了承も貰えたことですし、さくっと兜を片付けるですぅ!

甘崎城
それじゃ、いくですよー!

後半
甘崎城

見たですか!みーんな蹴散らしてやったですよ!

首里城
大活躍だったねぇ、甘崎城ちゃん!

やくも
皆が兜を引きつけてくれたお陰で、柳川城の武器も取り戻すことができただに!

千狐
取り戻せたのはいいけど、ずぶ濡れじゃない、もー……。
ほらやくも、顔をこっちに向けて……拭いてあげるから。

やくも
むぐ……どうせまた泳ぐし、気にすることないがや!

甘崎城
ひとまず、気配は消え去りましたが……。

首里城
とりあえず、兜の危機は去ったと言っていいと思うけど……油断は禁物だよね。

甘崎城
ま、気にすることはねーです!
この甘崎城が付いている限り、安全安心なのですー!

甘崎城
さぁ、者ども! 付いてくるです!

甘崎城
今日の日のために用意した、とっておきを見せてやるですよ!

ぱっかーんしやがれ! -破-

休暇中に殿と遭遇した不運を嘆く兜たち。
そんな中、人魚の姉御の叱咤が響き渡り、
辺りに漂う悲壮感を霧散させる――。

前半
烏帽子形革張形兜

チクショウ、チクショウ……!

烏帽子形革張形兜
日頃ノ激務ニ追ワレナガラ、
ヤット手ニ入レタ夏休ミダッテイウノニ……!

烏帽子形革張形兜
何モ……今日殿ニ遭遇シナクタッテ……!

烏帽子形革張形兜
……アチラト戦力ヲ比ベルト、
ドウ考エテモ……コチラノ分ガ悪イ。

桃形兜
ソレジャ夏休ミノ間ズット……、
コソコソシテ暮ラサナキャイケナイノ……?

人魚形兜
アンタタチ……甘エタコト言ッテンジャナイヨ!

烏帽子形革張形兜
ニ、人魚ノ姉御……!?

人魚形兜
嘆イタトコロデ、状況ハ何モ変ワラナイダロウ!
辿リ着キタイ未来ガアルナラ……自ラノチカラデ勝チ取ルンダ!

人魚形兜
ソノチカラハ持ッテイルハズサ……。
アンタタチハ、コノ夏休ミヲズット……心待チニシテキタ。

人魚形兜
私ダッテソウサ……ソノ証拠ニ、ホラ見ナ! コノ舞ヲ!

烏帽子形革張形兜
人魚ノ姉御……!
ソノ舞ハ、異国ノ島国ニ伝ワルトイウ……!?

桃形兜
アノ腰使イ……一朝一夕デ身ニツカナイコトハ明白……!

烏帽子形革張形兜
人魚ノ姉御モ、コノ夏休ミヲ楽シミニシテタンダ……。

桃形兜
ソウダ……僕タチダッテ、
ズット……ズット前カラ楽シミニシテタ……。

烏帽子形革張形兜
我ラノ心ハヒトツ!
今コソ殿ヲ打倒シ、夏休ミヲ……コノ手ニ!

兜軍団
コノ手ニッッ!!

兜軍団
オオオオォォォーーー!

――――

その頃、殿一行は――。

甘崎城
到着しました!
ほら、これを見るです!

殿
…………!

千狐
これは……! スイカ、ですよね?

千狐
凄まじい数です……。
こちらから向こうに向けて、ずらーっと……。

やくも
(ごくり)

やくも
すごいだに……。
でも、甘崎城はどうやってこれだけのスイカを……?

紫禁城
我の故郷から持ってきたのだ!

千狐
あなたは……?

紫禁城
我が名は紫禁城! 中国において、
長きにわたり皇帝の居城となった由緒正しき城だ! 

紫禁城
付近の城娘に配るだけではとても消化しきれないのでな。
観光も兼ねて日の本へと渡ってきた、というわけだ。

やくも
けど、こんな沢山のスイカを運ぶなんて……すっごく大変だったんじゃないがや?

紫禁城
なに、皆の笑顔が見れるなら、大した労力でもない。
我が国自慢のスイカ、其方も好きなだけ食べていくがいい!

やくも
なんって良い城娘だに……それじゃ、遠慮なくいただくがやー!

立花山城
まったく……。

立花山城
皆の笑顔のために、というのは素晴らしいことだけど、
迷惑を被る側の気持ちも考えてもらいたいものね……。

殿
…………!

千狐
あなたは……!

立花山城
どうも、こんにちは。……いえ、お久しぶりって言ったほうがいいかしら?
……それとも、はじめまして?

立花山城
どうやら、彼女は不在みたいね?
ほら……いつも貴方の傍に控えている……。

千狐
…………。

千狐
柳川城さんのことなら、今は所領でお休みになられています。
どういうわけか、体調を崩してしまって……。

立花山城
城娘が体調不良ね……不摂生か、それとも……。

立花山城
……まぁいいわ。今はそんなことより大事なことがあるもの……。
そう、今考えるべきなのは……。

立花山城
あの、紫禁城とかいう城娘……許せないわ。

立花山城
この炎天下で私をこき使うなんて……。
船から城へスイカを運んで、せっせせっせと……。

紫禁城
……おぉ、そうだった! 其方には感謝しているぞ、立花山城よ!

紫禁城
此度の功労者は間違いなく其方! 本当に助かったぞ!

立花山城
別にあんたから礼を言われたって嬉しくないのだけど……。

紫禁城
おやおや、ヘソを曲げてしまったか……。
まったく憎まれ口ばかり叩いて……其方は本当に――

紫禁城
本当に……可愛い奴だなぁ♪

立花山城
……なんですって?

紫禁城
無愛想で口は悪いが、働く時はてきぱき、仕事ぶりも丁寧!
今となっては口が悪い部分も含めてそなたの魅力だと、理解できる!

甘崎城
ですです! 文句を言う割に、
わたしの招待にもすんなり応えてくれましたし!

首里城
素直になれないだけで、根は優しい子なのかもしれないね~。

立花山城
違ーう!
私はただ、褒美がもらえるっていうから手伝ってただけ!

立花山城
そしたら何よ!
『一番にスイカを割らせてやる』って!

立花山城
私がそんなに、スイカを割りたそうにしてるって見えたわけ!?

紫禁城
うむ、好きなだけツンツンしてくれ。
そなたの思いの丈を我にぶつけるがよい。

甘崎城
立花山城が居ると、とっても賑やかになるですねー。

首里城
あんまり褒められ慣れてないのかもしれないね~。

立花山城
あんたたち……さっきから私をおちょくって……!

殿
…………。

甘崎城
……ッ!?

甘崎城
殿、また奴らが来たです!

殿
…………!

千狐
奴らというのは……兜のことですね?

甘崎城
そうです! 沖合から攻め込んでくる気配を感じたです!

千狐
……見えました! 先程と同じく波に乗って――

――――

烏帽子形革張形兜
…………。

烏帽子形革張形兜
……ナンダ?
浜辺ニ並ベラレタ、アノ……大量ノ球体ハ……?

人魚形兜
……マサカ、砲弾? アレダケノ数ヲ揃エルトハ……、
殿ッテ奴ハ、ナンテ恐ロシイ男ナノ……?

桃形兜
消シ飛バスツモリナンダ……僕タチノ夏休ミヲ、跡形モナク……。

烏帽子形革張形兜
違ウ、ヨク見テミロ! アレハ、スイカダ!

桃形兜
スイカ? ッテコトハ、
ツマリ……戦イニ備エテ、兵糧ヲ用意シタンダ!

烏帽子形革張形兜
消耗戦ニ持チ込マレルト分ガ悪イ……全テ壊シテシマエ!

兜軍団
承知ッッ!

立花山城
…………。

立花山城
あいつら、今なんて言った……?
私の聞き間違いだと思うんだけど……。

立花山城
もしかしてこのスイカを、
傷つけるって……言ってなかった……?

立花山城
させるものですか……。

立花山城
私の働きを無に帰そうとするなんて……。

立花山城
思い知らせてやるわ。
粉々になるのはあんたたちの方だってね……。

千狐
立花山城さん、とっても怒ってるみたいです……。

立花山城
準備はいい、殿?
私たちのスイカを守るのよ!

殿
…………!

立花山城
精々足掻くがいいわ、兜ども!

後半
立花山城

やったわね!これでスイカは全て守り抜いたわ!

紫禁城
立花山城……本当に其方という奴は――。

紫禁城
我らのスイカを守るため、先陣を買って出るとは……。
スイカへの深き愛、それがそなたの本心ということじゃな? な?

立花山城
こ、言葉のアヤよ!
自分で運んだスイカを傷つけられたくなかったってだけ!

立花山城
……でも、まぁ。ひとまず兜は片付いたわけだし。

立花山城
だから、その……やるんでしょ、スイカ割り……。

千狐
コンッ!?

千狐
待ってください、皆さん! 兜たちに動きが!

殿
…………!

桃形兜
マダ……マダダ……。

桃形兜
僕タチノ夏休ミハ……マダ始マッテナインダ……!

ぱっかーんしやがれ! -急-

執念を燃やして立ち上がる、兜たち――。
甘崎城の平穏を取り戻し、夏の思い出を輝かしい
ものとするため、城娘たちを連れて出陣せよ!

前半
兜軍団

海水浴……波乗リ……日焼ケ……。

千狐
なんて執念……。何がそこまで、兜たちを……?

紫禁城
兜ども……。

紫禁城
どうやら負けられない理由があるようだが……。
それは我らも同じこと。

甘崎城
その通りです!

甘崎城
この夏を最高の思い出にするために!
負けるわけにはいかねーですぅ!

紫禁城
よし……では行くぞ。準備は良いか、殿よ!

殿
…………!

紫禁城
正面から正々堂々、蹴散らしてやろうッ!

後半
烏帽子形革張形兜

チクショウ、チクショオオオォォォォーーーー!

烏帽子形革張形兜
必ズ夏ヲ楽シンデヤルカラナ、覚エトケヨォォ!

殿
…………。

千狐
これで、兜の気配はきれいさっぱり消えてなくなりました!

紫禁城
では、ようやく安心してスイカ割り大会が開催できるな!

甘崎城
ですです。早速一番手は準備を始めるです!
ほら、立花山城!

立花山城
や、やっぱり私なの?

立花山城
準備、とか急に言われても……よく分からないのだけど。
私、スイカ割りって初めてで……。

紫禁城
なんと、立花山城はスイカ割りをやったことがなかったのか!

立花山城
そ、そうだけど……。

甘崎城
仕方ないです。
それじゃ、わたしが教えてやるから、それに従うですぅ。

立花山城
えぇ……わかったわ……。

甘崎城
まず、この手拭を巻いて視界を塞ぐです!

紫禁城
うむ、我が手伝ってやろう! じっとしているがいい!

立花山城
ん……あんまりきつくしないでよ……?

首里城
(なんだかんだ言いつつ素直なんだねぇ、立花山城ちゃん……)

紫禁城
……これでよし、と!

紫禁城
どうだ? ……目隠しはできているか?

立花山城
えぇ、視界は真っ暗……何も見えないわ。

甘崎城
それじゃ、次の段階に移るですー!

甘崎城
さ、両手を出してこれを受け取るです!

立花山城
…………?

立花山城
これは……棒、かしら……?

立花山城
目隠しをした状態で、
この棒を使ってスイカを割る遊戯……ってことね?

甘崎城
そのとーり! ……ですが、
開始する前に一つ、重要な儀式を行う必要があるです。

立花山城
儀式……?

甘崎城
この棒を地面について、
その場でぐるぐる十回転、です!

立花山城
ぐるぐる……?
そんなことをしたら、まともに歩けなくなっちゃうじゃない……!

紫禁城
だから面白いのではないか!

紫禁城
さぁ回れ、回るのだ立花山城!

立花山城
ぐるぐる……ぐる、ぐる……ぐる……。

千狐
…………。

千狐
……楽しそうで何より、ですね。

殿
…………!

千狐
柳川城さん……安平城さんの集まりには来れると良いのですが。

殿
…………。

千狐
そうですね。安平城さんの御城に向かう前に、
一度所領にて容態を確認いたしましょう。

やくも
なぁ……千狐、千狐。

千狐
ん……どうしたの、やくも?

やくも
スイカを一つ、拝借しちゃだめだに……?

千狐
だめよ。

千狐
やっとスイカ割りを始められたというのに、
やくもだけ先にいただくわけにはいかないでしょう。
もうちょっとだけ我慢しなさい。

千狐
あと少ししたら、イヤって言うほど食べれるはずよ。

やくも
ぐぎぃ……空腹が限界だにぃ……。

千狐
見てなさい、今に立花山城さんが……ぱっかーん、とスイカを……。

紫禁城
いかんぞ立花山城っ!

甘崎城
立花山城、そっちは海ですよー!!

立花山城
ぐるぐる、ぐる……。ごぼごぼ……。

千狐
…………。

やくも
…………。

千狐
も、もう少し時間がかかりそうね……。

やくも
……だにぃ。

――

――――

甘崎城
ふぃー……。

甘崎城
とことん遊んだです。後は御城に戻って騒ぐだけ……。

甘崎城
……お? あそこに居るのは……首里城ですか。

首里城
…………。

甘崎城
……なに黄昏れてるです。
水平線を見つめるのが、そんなに面白いですか?

首里城
……甘崎城ちゃん。

首里城
皆喜んでたねぇ。
招待してくれてありがとー、って皆言ってたさ~。

甘崎城
……そうですか。皆に楽しんでもらえて良かったです。

甘崎城
……それに、わたしも嬉しい気持ちでいっぱいですぅ。

甘崎城
首里城の笑顔を見ることができましたから。

首里城
……え?

甘崎城
いつからかは分からないですが、わたしは……もう長い間、
以前のような首里城の笑顔を見てなかった気がするです。

甘崎城
理由を聞く気はないです。
けど……笑顔は多いに越したことねーです。

甘崎城
だから、首里城がみんなと一緒にわいわいして、スイカ割って、食べて……笑顔になる。
これを見れてわたしも、はっぴーな気持ちになったです。

首里城
…………。

首里城
……そっか。

甘崎城
そうです! ま、城に戻ってからもまだまだ楽しむつもりですけどね!
枕投げとか、やるべきことは山積みです!

首里城
あははっ。甘崎城ちゃんは元気だねぇ~。

甘崎城
あったりめーですっ!
十人のうち九人には『甘崎城は元気だけが取り柄だね』って言われるくらいですから!

首里城
それは褒められてない気がするけど……あはは……。

首里城
……おっと、そうだ。大事なことを忘れてたよ。

首里城
スイね、こくおーとお話ししておかなきゃいけないことがあったんだった。

甘崎城
お? そうだったですか。
殿でしたら、あっちの方でまったりしてたですけど……。

首里城
そりゃ良かった。それじゃひとっ走りいってくるさ~。

首里城
甘崎城ちゃんは先に御城に戻っててー!
少し遅れるけど、すぐに戻るさ~!

甘崎城
いってらーですー。

甘崎城
…………。

甘崎城
(にやり)

――――

首里城
こくお~!

殿
…………?

千狐
首里城さん。
もう御城に戻られたかと思っていましたが……どうされました?

首里城
ちょっとお願いがあって……。
殿と、それから千狐ちゃんに……。

殿
…………?

千狐
お願い、ですか……?

首里城
こくおーたちにも安平城ちゃんから、招待状来てたよね?

首里城
安平城の敷地で大規模な宴を開きますわ~、
ぜひおいでくださいまし~、って……。

千狐
ええ、いただいてますよ。
この後、安平城さんの催しにも参加するつもりでした。

首里城
やっぱりそうだったんだ! それで、お願いしたいんだけど……。

首里城
安平城ちゃんの御城に転移する時に、
スイも一緒に連れてってほしいなぁ~なんて……。

千狐
なるほど、そういうことでしたか!
もちろん、問題ございません!

千狐
千狐の転移を使うなら、
首里城さんも慌てて出立する必要もなくなるでしょうし♪

首里城
助かるよ~。
ありがとね、千狐ちゃん、こくおー♪

殿
…………!

千狐
そうですね。では、時期が来ましたら一度所領に戻って、
柳川城さんの容態を見てから――

甘崎城
…………。

甘崎城
安平城で大規模な宴……つまりはお祭りってことですね……。

甘崎城
これを聞いてしまっては、
わたしも……黙っているわけにはいかねーです……。

甘崎城
ふっふっふ……。

ぱっかーんしやがれ! -絶壱-

甘崎城に殿が到着する数日前のこと。
とある城娘が大量の西瓜を携えて、
琉球の地に颯爽と上陸する――。

前半
甘崎城にてスイカ割り大会が開かれる、数日前――。

紫禁城
……よし、と。

紫禁城
やっと到着か!
隣国とは言えど、案外時間がかかってしまったな。

紫禁城
船を降りたら、早速城娘の姿を探さねばな……。

首里城
……あれ?

首里城
ねぇ甘崎城ちゃん……あそこに居るのって、もしかして……?

甘崎城
お? ……おぉ?

甘崎城
おぉー! 紫禁城じゃねーですか! 久しぶりですぅ!

紫禁城
首里城! それから其方は確か……甘崎城と言ったか!

紫禁城
以前に一度、船に乗って我が城を立ち寄ったことがあったな?

甘崎城
ですですぅ! 覚えてくれていましたか!

紫禁城
しかし、どうして其方が琉球に?
甘崎の地からは、かなり距離があったと記憶しているが……。

甘崎城
いくら離れていようと、なんのそのですぅ!
何せわたしは、村上水軍の拠点として大活躍した、水軍城の大先輩!

甘崎城
むしろ、甘崎にこもっている方が不自然というやつです!

首里城
船に乗って、日の本各地を回っているみたいよ~。

甘崎城
日の本だけじゃねーですよ!
たとえ異国だって、そこに海があって船が進めるのなら、わたしの道となるのですぅ!

紫禁城
なるほど……以前其方が我が城に立ち寄ったのも、そういう理由があったわけか。

甘崎城
そーです! お陰で色んな城娘と知り合うことができました。
わたしは島国に収まらない、すけーるのでっけぇ城娘ってことです!

首里城
それで……紫禁城ちゃんの方はどうしてここまで?
距離でいったら、甘崎城ちゃんにも負けないくらい離れてたと思うけど……。

紫禁城
よくぞ聞いてくれた!

紫禁城
最も大事な理由は、お裾分けだ! 我が故郷自慢の名産品を、
日の本の城娘たちにも味わってもらおうと思ってな!

甘崎城
味わう……? 食べ物ですか?
もしかして、甘ーいお菓子だったりするですか?

紫禁城
残念ながら菓子ではないが、甘くてとっても瑞々しい……夏を代表する果物だぞ!
甘崎城にも満足してもらえるはずだ!

甘崎城
もしかして……もしかして……!

紫禁城
その通り! スイカだー!
船に積み込んで、たんまり持ってきたぞ! 見るが良い!

甘崎城
うおおおぉぉーー! なんちゅう数ですか!?

甘崎城
これはさっそく、スイカ割りをやるっきゃねーですぅ!

首里城
スイカ割りかぁ、そういえばこの夏はまだやってなかったねぇ。

甘崎城
スイカ割りは良いです……。
ぱっかーん! とキレイにスイカが割れた時には、さいっこーの気分になるです!

首里城
うんうん。スイカ割りをやらなきゃ、
夏を楽しみきれてないって感じがしちゃうよねぇ~。

紫禁城
……スイカ割り? 遊戯か? それはいったい、どのようなものなのだ?

首里城
えっとね、スイカ割りがどんな遊びかっていうと――

甘崎城
待つですっ!

甘崎城
準備にも大した時間はかからないですし、
どうせだったら、実際に体験してもらった方がいいです!

甘崎城
船から一つスイカをいただいて……浜辺に急ぐですー!

――――

首里城
――と、こうして目隠しをして、
ぐるぐるーっと回ったら準備完了、ってわけさ~。

紫禁城
ぐるぐる、ぐる……ぐるぐる……ぐる……。

首里城
うんうん、その状態で、スイカの場所を……。

紫禁城
うむ、理解したぞ……。

紫禁城
視界は塞がれ、平衡感覚を狂わされ……真っ直ぐ歩くこともままならない……。

紫禁城
この状況で……残された感覚のみを頼りに、
スイカの場所を探り当てろ……というわけだな?

紫禁城
日の本の城娘は、遊び感覚でこのような鍛錬を行っているというわけか……。

首里城
でね、紫禁城ちゃん。スイカの場所は――。

紫禁城
すまない、口を閉ざしてくれ。
余計な情報が交じると、スイカの気配がかき消されてしまう。

首里城
…………。

首里城
す、スイカの気配……?

首里城
紫禁城ちゃん、なんか勘違いしちゃってるみたいだね……。

甘崎城
……まぁ、しばらく様子を見るです。

甘崎城
生き物ならいざしらず、スイカの気配を見極めるなんて……。
そんなことできるわけないに決まってるですぅ。

紫禁城
…………。

紫禁城
相手は、我の故郷にて育った果物……異国の此地においては、
くっきりと気配が浮かび上がるように、感じ取れるはず……。

紫禁城
…………。

紫禁城
(よし、こっちだな……)

首里城
…………っ!

首里城
(甘崎城ちゃんっ、ゆっくりだけど紫禁城ちゃんがスイカに近づいていってるよ!)

甘崎城
(ど、どういうカラクリですかっ!?)

首里城
(中国には気功っていう不思議な力があるって聞いたことがあるけど……、
 もしかしてそれなのかなぁ……?)

甘崎城
…………。

甘崎城
(……なんだか怪しいです。
 もしかして、インチキとかしてるんじゃねーですか?)

首里城
(インチキって……でも、スイはきっちり手ぬぐいで目隠ししたから、
 前が見えてるってことはないと思うよ……?)

甘崎城
(なら、別の方法をとったに違いないです……。)

甘崎城
(場所を報せてもらったって失敗することがあるのに、
 この状態でスイカを叩きわるなんて、できるはずないです……)

甘崎城
(……よぉし)

首里城
(甘崎城ちゃんっ!? 何をするつもり?)

甘崎城
(そこで黙って見てるです。
 今わたしが、カラクリを明らかにしてやるです)

甘崎城
(そーっと、そーっと……近づいて……)

甘崎城
(こっそりスイカの場所を動かせば……よし、と)

甘崎城
(これでどうです?
 まさか、これでもまだスイカの位置を把握するなんてことは……)

紫禁城
…………。

紫禁城
…………む。

紫禁城
これはなんと……邪な気配か……。

紫禁城
何者かは知らぬが……。
我のスイカ割りに横槍を入れるとは、良い度胸だ……。

紫禁城
我が拳で、叩き割ってやろう!

甘崎城
…………!?

甘崎城
(目隠ししたまま紫禁城が、こっち目掛けて追っかけてくるです……)

甘崎城
(ひええええぇぇっぇぇ!?)

紫禁城
覚悟するがいいっ!!

後半
甘崎城

ぜぇ、ぜぇ……し、死ぬかと思ったですぅ……。

首里城
スイカごと甘崎城ちゃんまでぱっかーんされるところだったね……。

甘崎城
ごめんなさいですぅ……。

紫禁城
まさか、邪な気配の正体が甘崎城だったとは……。

紫禁城
我もまだまだ未熟、ということだな。……反省しよう。

甘崎城
で、ですね……これからも精進するといいです!

首里城
(甘崎城ちゃんの心が邪だったことは当たってると思うけど……)

首里城
(というか甘崎城ちゃんも、逃げ回ってないで、
 声を上げて助けを求めれば良かったのに……)

紫禁城
それにしても、スイカ割りとは面白い遊びだな! 良い鍛錬になったぞ!

甘崎城
おう! 感謝するといーです!

首里城
そもそも鍛錬じゃないんだけどね……。

紫禁城
スイカの数には随分余裕があることだし、もう一度やるとしようか!

甘崎城
さんせーですぅ~!

――――

甘崎城
しゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃく……。

紫禁城
つい熱中して、割りすぎてしまったな!

甘崎城
この程度の量なら、なんてことないです! 全部わたしが片付けてやるですぅ!

甘崎城
しゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃく……。

首里城
だけど、スイカはまだまだ余ってるね~……。

首里城
といってもこれだけの数だと、
琉球の城娘みんなに配っても、まだ余りそうだよね……。

首里城
しゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃく……。

紫禁城
うむ……。なので、このまま船で本州に向かい、
日の本観光を楽しみながら各地の城娘にスイカを配っていこうと思っている。

紫禁城
我が故郷のスイカを、
もっと多くの人に味わってもらうことが今回の旅の目的なのでな!

首里城
……琉球に居座ってても、
偶然城娘が通りかかるってこともなさそうだもんね。

甘崎城
…………!

甘崎城
……今、神がかり的な閃きがわたしの頭に降りてきました!

甘崎城
スイカ割り大会です……!

紫禁城
……スイカ割り大会?

甘崎城
……実はこの夏、わたしの城に殿を招待してるです。

甘崎城
何をやるかは後で考えればいいやーでしたが、
これだけスイカがあるなら、殿たちを楽しませるには充分です!

紫禁城
それは素晴らしい!

紫禁城
一箇所に集めてスイカを振る舞えれば……と思っていたが、
まさか既に場所が手配されていたとは!

紫禁城
日の本の城娘たちを統べる『殿』という男にも、
以前から会ってみたいと思っていたのだ!

甘崎城
ふふーん♪
わたしの先見の明に恐れおののきましたか♪

首里城
それは先見の明じゃなくて、無計画って言う気がするよぉ……。

紫禁城
そうと決まれば早速出発だ!
皆、我の船に乗り込め!

甘崎城
よぉし、行くです~!
途中で寂しそうにしている城娘がいたら、拾ってあげるです!

首里城
そんな都合よく見つかるかなぁ……?

甘崎城
きっと居るです! この季節、一緒にわいわいする相手が見つからず、
浜辺でぽつーんとしてる城娘が、一人くらい!

紫禁城
そうだな!
もし見かけることがあったら、必ず声をかけよう!

紫禁城
では、甘崎城の御城に向けて出発するぞ!

甘崎城
おおぉー!

ぱっかーんしやがれ! -離-

台湾の地に到着した殿一行を、安平城たちが
笑顔で迎える。そんな中、あの海賊城娘が
人知れず一行の許へ接近しつつあった――。

前半
千狐

到着しました!転移成功です!

首里城
いつ見ても見事だねぇ、千狐ちゃんの転移は。
目的地までひとっ飛びだもん。

千狐
案外制約も多いのですけどね……短期間に多用できなかったり、
転移先が限られていたりと……。

千狐
とにかく、無事に揃って安平城さんの許に到着することができました。
柳川城さんの体調も良くなりましたし♪

やくも
これで一緒に夏の思い出を作ることができるがや♪

柳川城
ご心配をおかけしました。
休養をいただいて、今は普段よりも元気なくらいです。

柳川城
(本当に良かった……)

柳川城
(これで、夏に向けて進めてきた準備が、水の泡にならなくてすみます)

柳川城
(浴衣に、それから……)

柳川城
(うぅ……でも、殿に見られるのはやっぱり恥ずかしいです。どうしよう……)

やくも
……で、安平城や招待された城娘の皆は、どこにいるだに……?

千狐
御城の中にいらっしゃるのか、それとも……。

千狐
……あっ、浜辺の方を見てください! 皆さんお揃いのようですよ!

安平城
…………あら?

安平城
総督さま、それに皆さん! ようこそいらっしゃいました!

柳川城
こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。

安平城
今回は、我が台湾の地からほど近い場所にある、
九州や琉球の方も招いたのです。

首里城
琉球に至っては、本州より台湾の方がよっぽど近いもんねぇ。

安平城
えぇ、皆さんにとっては、馴染みのある方もいるかと思いますわ♪

延岡城
お殿様、それに柳川城さん……。こんにちは♪

柳川城
延岡城さん!

殿
…………!

延岡城
高鍋城先生に危機が迫った際には、力を貸してくれてありがとうございました。
またお会いできて嬉しいです♪

久留米城
私も居ますよ、柳川城ちゃん!

柳川城
久留米城ちゃんも! 久しぶりです!

久留米城
それはこっちの台詞です!

久留米城
だって柳川城ちゃん、全然こっちに帰ってこないんですから。
笹原城も寂しがってましたよ……?

安平城
今回、総督さまたちをお呼びしたのは、久留米城さんの発案だったのですよ。

久留米城
殿ともしばらく会ってませんでしたし……殿が来るなら、
柳川城ちゃんにも会えるかと思って……!

柳川城
久留米城ちゃん……。

柳川城
呼んでくれてありがとうございます♪ いっぱい楽しみましょうね。

久留米城
はいっ!

千狐
……それで安平城さんは、どういった経緯で宴の開催を?

安平城
とにかく、自分の城でパーティーを開きたかったのですわ!

安平城
わたくしが『王城』として栄華を誇っていたのも、今は昔……。
近年は、貧乏暮らしを余儀なくされていました。

安平城
ですが先日、商売の繁盛という幸運に恵まれ、
まとまったお金を手に入れることができました。

安平城
なので……こちらのお金と、我が城の敷地を存分に活用して、
大規模なパーティーを開こうと決めたのですわ♪

安平城
その後、日の本の城娘さんたちから助言をいただき……、
屋台が立ち並ぶ形式にすることとなりました。

千狐
……なるほど♪
では今回の宴は、日の本の夏祭りのような形式になるわけですね!

安平城
はい♪ 姉様たちが外出中の今は、
招待した日の本の皆様に楽しんでいただくことが、何よりの目的……。

安平城
そのため……この度は、
日の本の流儀に寄せるのが最適だと考えた次第です♪

安平城
……ですから皆様、今夜は思う存分楽しんでいってくださいまし!

――――

その頃、安平城付近の海岸――

甘崎城
…………。

甘崎城
…………ふふん。

甘崎城
甘崎城、上陸……!

甘崎城
確か安平城はこの辺りだったはずですが……。

甘崎城
にしても……、
安平城でぱーてぃーが行われる情報を手に入れられたのは、幸運でした。

甘崎城
今年の夏は、いつもの何倍も楽しみ倒してやるです……!

甘崎城
…………ん?

甘崎城
なんです? あちらの方から声が聞こえてきますが……?

――――

桃形兜
……ソレデ、新兵器開発ノ首尾ハイカガデスカ?

突撃式トッパイ形兜
無論、問題ハ何ヒトツ無イ。先程、完成ニ漕ギ着ケタトコロダ。

桃形兜
ナント、完成シタノデスカ!

突撃式トッパイ形兜
甘崎城デ休暇ヲ楽シンデイタ兜タチハ、
殿ニヨッテ一網打尽ニサレタトイウ話ダガ……。

突撃式トッパイ形兜
我々ハ奴ラトハ違ウ……タトエ今ガ夏ノ盛リデアロウト、
目的ノタメ、粛々ト働キ続ケル。

突撃式トッパイ形兜
……ソウシテ作リ上ゲタ新兵器ガ……コレダ!

桃形兜
コレハ……スイカ?

突撃式トッパイ形兜
ソウ、スイカダ……ドコカラドウ見テモ、スイカニシカ見エマイ。

突撃式トッパイ形兜
シカシソノ正体ハ、破壊力抜群ノ爆弾……!

突撃式トッパイ形兜
コノ時期、
人間ヤ城娘タチノ間デ盛ンニ催サレル遊戯……スイカ割リ。

突撃式トッパイ形兜
誰モガスイカニ注目シ、ソノ周囲ニハ多クノ人ガ集マルダロウ……。

桃形兜
ソシテ……城娘ガ『ココダ!』ト棒ヲ振リ下ロシタ、ソノ瞬間ニ……。

突撃式トッパイ形兜
ドカン……トイウ訳ダ……。

桃形兜
ナンテ恐ロシイ……合戦中ナラマダシモ、
完全ニ気ノ緩ンダ遊戯ノ最中ヲ狙ウトハ……。

突撃式トッパイ形兜
ソウ……ダカラコソ、確実ニ奴ラヲ仕留メラレル……。

桃形兜
確カニ……コノ方法デアレバ……。

突撃式トッパイ形兜
ヨシ……デハ次ハ、
ドウヤッテスイカヲ紛レ込マセルカ、相談スル必要ガアルナ……。

――――

甘崎城
(とんでもねー話を聞いてしまったです……。)

甘崎城
(兜たち、そんなことを……。このままでは、安平城が危険です……)

甘崎城
(でも、都合よく情報をきゃっちすることができたです)

甘崎城
(これを殿や安平城に伝えれば、きっと喜んでもらえるはず……)

甘崎城
(この前のスイカ割り大会で皆からの評価は上がる一方!
 ここで手柄を立てれば、もっともーっと褒めてもらえるに違いないです!)

甘崎城
ふふふ……ふっふっふ……。

甘崎城
…………。

甘崎城
(それにしても、お腹が減ったですね……)

甘崎城
(安平城のぱーてぃーを楽しむつもりで、ご飯を抜いてきたのが裏目に出たです)

甘崎城
(こういう時に備えて、ちゃんとご飯を食べておけば――)

甘崎城
(ぐううぅぅ~~)

突撃式トッパイ形兜
ッッ!?

突撃式トッパイ形兜
何者ダ!?

甘崎城
しまったですぅ!?

桃形兜
城娘デス! 城娘ガ居マス!

突撃式トッパイ形兜
シカシ他ノ城娘ノ姿ガ見エナイゾ……斥候カ?

突撃式トッパイ形兜
……タッタ一人ナラ恐ルルニ足ラン! ヤッテシマエ!

甘崎城
ひ…………。


――ザッ!

甘崎城
ひえぇ……。

兜軍団
――ザザッ! ザザザッ!!

甘崎城
びええええぇぇぇ~~~! ごめんなさいですぅうううう!

――――

首里城
…………ん?

首里城
あそこに居るのは……甘崎城ちゃんだよね?

やくも
どうしてここに……自分の船でここまで来たがや?

千狐
そんなことより!
殿、甘崎城さんの後ろを見てください!

殿
…………!

柳川城
あれは……兜の軍勢……!?

甘崎城
ば、爆弾ですううぅぅぅ!

久留米城
爆弾っ!?

甘崎城
見た目はまるっきりスイカで、
中は火薬がぎっちぎちに詰め込まれてるです!

甘崎城
スイカ割り気分でつついたら大惨事です!
とっても危険です~!

久留米城
爆弾なんて……せっかく皆でお楽しみを始めようって時に……!

久留米城
柳川城ちゃんも、殿も……誰も傷つけさせたりはしません!

後半
久留米城

これでどうだあぁぁぁーッ!

柳川城
久留米城ちゃん、お見事ですっ!

千狐
ひとまず、兜は片付きましたが……。

千狐
甘崎城さんはどうしてここに……?

甘崎城
え、えぇと……。

甘崎城
ここには、船旅の途中で偶然立ち寄ったのですが、
そこで、また偶然に兜の会話を聞いてしまって……。

安平城
そうだったのですね……。

安平城
今回は日の本の城娘さんを数多くご招待しましたから……、
スイカ割りを催す可能性は大いにありました。

延岡城
そこにもし、スイカ爆弾が含まれていたらと思うと……ぞっとしますね……。

安平城
感謝いたしますわ、甘崎城さん。
あなたのお陰で、わたくしの御城の安全は保たれました!

甘崎城
褒める程のことでもないです……偶然が重なっただけですから……。

甘崎城
そう、偶然が重なっただけです……けど!

甘崎城
偶然すら味方につけ、城娘たちを救ってしまう程の、幸運……。
それもわたしの実力……と言っていいかもしれねーです!

安平城
その通りですわ♪
お礼に、今夜は精一杯おもてなししますから、ぜひ楽しんでいってくださいな♪

ぱっかーんしやがれ! -結-

一度は兜を退けたものの、このままでは安心して
夜の宴を楽しむことができない。この状況を打開
するため、殿一行は兜の本拠へと出立する――。

前半
甘崎城

……ぱーてぃーはとっても素敵ですが、
今夜を楽しく過ごすためには……兜の残党を倒す必要があると思うです。

甘崎城
兜の奴ら、とんでもないことを考えてるです。

甘崎城
休暇気分で緩んでる安平城を、
ぼっこぼこにする……みたいなことを言ってたです。

安平城
まぁ、そんなことを……。

柳川城
甘崎城さんの仰る通り……。
このままでは宴どころではありませんね、殿……。

千狐
兜の気配は、向こうの方から感じ取れます。

やくも
うちの宴を邪魔するなんて許せんだに! 一網打尽にしてやるがや!

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
……承知しました。
それでは、兜たちの本拠に向けて出立いたしましょう!

――――


…………。

兜軍団
…………。

首里城
本当にいたね。兜が沢山、ぞろぞろと……。

延岡城
向こうが準備を整えてしまう前に、
こちらから攻め込むのが良いかと思いますが……。

甘崎城
わたしはいつでも出陣できるですよ……!

安平城
わたくしも準備万端ですわ!

殿
…………!

延岡城
はい、それでは出陣いたしましょう、お殿様……!

延岡城
聡明なご下知を、お願いいたします!

後半
兜軍団

ギャアアァァァァァァッ!

延岡城
やりましたっ!

延岡城
周囲に兜の気配は感じられませんが……、
如何でしょう、千狐さん?

千狐
ええ! 兜は全て討伐したと見て、間違いありません!
皆さん、お疲れさまでした!

安平城
感謝いたしますわ、皆さん!

安平城
総督さまたちは、まだ到着したばかりだというのに、
手伝っていただいて……本当にありがとうございます。

殿
…………!

柳川城
これで思う存分、夏を楽しむことができますね……!

柳川城
(この日のために用意してきた衣装を、殿にお見せする時……!)

安平城
我が国、台湾の料理は当然のこと、
日の本の夏祭りで見られる料理も用意しましたので、ぜひともご堪能ください!

やくも
料理……宴……祭り……!

数刻後――――。

柳川城
殿、千狐さん。
お料理を取皿によそってきましたよ。一緒にいただきましょう。

千狐
ありがとうございます!

柳川城
殿も……どうぞ……。

殿
…………!

柳川城
(殿……気づいていらっしゃるでしょうか……。
 この浴衣……夏に向けて用意したものなのですが……)

柳川城
(お気に召していただけたら……、
 そして、お褒めの言葉なんていただけたら、私は……)

千狐
それにしても、素晴らしい宴です♪

千狐
甘崎城さんの御城で行ったスイカ割りも良いですが……、
こういった、夜店に並ぶような料理に舌鼓を打つ、
というのも夏の風物詩といえますね♪

殿
…………!

千狐
おや、あちらからいらっしゃるのは……?

安平城
総督さま~♪ 楽しんでいらっしゃいますか?

殿
…………!

柳川城
安平城さん! それに皆さんもお揃いで!

延岡城
見てくださいお殿様! 先程あちらで、水風船を釣り上げたんです♪

首里城
こくおーもいっぱい、お料理食べてるみたいだね~♪

殿
…………!

千狐
安平城さん、ありがとうございます。
……これほど豪勢な宴……準備は大変だったのではありませんか?

安平城
手間や費用がかさんだことは事実ですが、
それを補って余りある見返りをいただきましたから♪

千狐
見返り、ですか……?

安平城
ええ! 皆さんの感謝や、笑顔という見返りですわ!

安平城
それに、日頃関わる機会の少ない方とも時間を共有することができます。
日の本の城娘さんや、総督さま、それに千狐さんや、やくもさんも――。

安平城
……あら? そういえば、やくもさんの姿が見えませんね……?

千狐
やくもでしたら、さっきから現れたり消えたりを繰り返してますよ……。

千狐
ここにある料理は、一つ残らず食べきってみせるだに、
と宣言してましたが……本気で制覇するつもりのようですね……。

延岡城
そう言えば先程、
お皿を両手に持って走り回るやくもさんの姿を見た気がします……。

柳川城
やくもさんにとってここは、
宝の山みたいなものでしょうからね……。

安平城
ふふっ、そうでしたか。
楽しんでいただけているなら何よりです。

安平城
それにしても……柳川城さん。
素敵な浴衣ですね。よくお似合いですよ♪

柳川城
ほ、本当ですか?

安平城
柳川城さんの魅力を存分に引き出していると思います。
……総督さまも、そう思いますわよね?

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
あ、ありがとうございます……!

柳川城
(わ……本当に褒められてしまいました……!
 ど、どうしましょう……顔が緩んでしまいそう……)

柳川城
(でも、でも……欲を言うなら浴衣だけじゃなく、
 水着も見ていただきたい……)

柳川城
(お、思い切ってお誘いしてしまいましょうか……。
 明日一緒に海水浴を……なんて……)

柳川城
(……ごくり)

柳川城
(聞いてみるだけです、『明日のご予定は』と一言……)

柳川城
殿、明日の――

久留米城
柳川城ちゃーん!

久留米城
柳川城ちゃん、こんなところに!

柳川城
く、久留米城ちゃん……。

久留米城
柳川城ちゃん、一緒に屋台を……、
ってあれ? どうして悲しげな表情を浮かべてるんです?

柳川城
いえ、なんでもないんです、なんでも……。
それで、なんでしたっけ……一緒に屋台を?

久留米城
そうです! この宴が終われば、また離れ離れになってしまうのですから!
私は少しでも柳川城ちゃんと一緒の時間を楽しみたいんですー!

久留米城
それじゃお殿様、柳川城ちゃんをしばらく借りていきますね♪

殿
…………!

柳川城
あぁっ、引っ張らないで久留米城ちゃん……!
私――!

千狐
…………。

千狐
行ってしまいました……。

延岡城
首里城さんは、次に食べたいお料理などはありますか?

首里城
そうだね……お料理もいいけど、
スイは甘崎城ちゃんに会いたいかなぁ~。

首里城
今、落ち着いて楽しむことができてるのは、
甘崎城ちゃんのお陰だし、お礼を言っておきたいんだよねぇ。

延岡城
そうですね。甘崎城さんは今日の立役者ですから。

延岡城
それでは一緒に、甘崎城さんを探しに行きましょうか♪

安平城
…………。

安平城
……では私も、宴に戻るといたしましょう。

安平城
総督さま、私の御城では数日の間は、こうした宴を催します。

安平城
総督さまの都合さえよろしければ、
しばらく滞在して、宴を楽しんでいってください♪

安平城
それでは、また後ほど♪

殿
…………!

――――

――――数刻後。

殿
…………。

甘崎城
お、殿? 一人で散歩ですか?

殿
…………。

甘崎城
そうです、今はわたしも一人でのんびりですぅ。
今日は、何かと追っかけられっぱなしの一日でしたから……。

甘崎城
……皆、わたしの働きをいっぱい褒めてくれたです。

甘崎城
怒られるのはもちろん嫌いですし、褒めてもらえるのは嬉しいですが……。

甘崎城
自分のお手柄でもないのに、
褒められるというのは何だか変な気分ですぅ。

甘崎城
兜の話を耳にしたのは偶然ですし、
私の御城のスイカ割り大会だって、紫禁城がスイカを用意してくれたものですから……。

甘崎城
…………。

甘崎城
思えば、紫禁城も安平城も……自分のためだけじゃなくて、
誰かの笑顔のためにがんばってたです。

甘崎城
だからわたし、今回のごたごたを振り返って……自分ばかりじゃなくて、
周りを見る余裕を持った方がいいかも……なんてことも考えるようになったですよ。

殿
…………。

甘崎城
なーんて!
真面目になるのはわたしの柄じゃねーですぅ!

甘崎城
評価に納得がいかないなら、
評価に見合うような城娘になってしまえば良い話です!

甘崎城
皆からもてはやされるのはとっても気持ちが良いですが……。
今度は、ちゃんと自分の力で手柄を立てるのも悪くないですね!

殿
…………!

甘崎城
近いうち、殿や城娘たちが喜ぶような報せが、きっと耳に入ってくるですよ!

甘崎城
楽しみにしていると良いです!

ぱっかーんしやがれ! -絶弐-

安平城に滞在し夏の休暇を満喫する殿一行。
その日も日暮れまで海水浴を楽しんだ城娘たちは、
帰り道の途中で不審な人影を見つける――。

前半
安平城に平穏が訪れてから、数日後――

殿一行は安平城の許に残り、
しばしの休暇を楽しんでいた――

首里城
いやぁ~、今日も泳いだねぇ。

延岡城
はい……流石に今日は疲れてしまいましたね……。

久留米城
皆と遊んでいると、時間があっという間です。
ね、柳川城ちゃん♪

柳川城
はい。
こうして羽を伸ばす機会も大切なのだと思い知らされますね。

延岡城
柳川城さんは普段、お殿様のお傍で忙しくされてますものね。

柳川城
そんな、普段ご自身の御城を守っている皆さんと、大きな変わりはありませんよ。

首里城
でもでも~、そんなに普段こくおーの側に居るって思うと……、
ちょっと気になっちゃうねぇ~。

延岡城
気になる、というのは……?

首里城
そりゃ、こくおーと柳川城の間に……な感情が生まれるかも、ってことさ~。

延岡城
な、なるほど……!

柳川城
突然何を言い出すのですか、首里城さん……!

柳川城
ずっと一緒にいるのは、千狐さんや、やくもさんだって同じことですから……。

首里城
んー、そんなに否定されると、逆に怪しく思えてきちゃうね~。

柳川城
(でも、もし殿が私のことを……)

柳川城
(だめ……だめです、
 妄想といえど、殿相手にこんなことを考えては……!)

久留米城
……ん?

久留米城
……なんでしょう、あそこに誰か居るようですが……?

安平城
…………。

延岡城
あれは……安平城さんですね。何をしているのでしょう?

久留米城
物陰に身を隠して……なんだか、コソコソしてるみたいですね……。

首里城
聞いてみればすぐに分かることさ。……お~い、安平城ちゃーん!

安平城
…………!

安平城
く……間が悪いですわね……。

柳川城
…………?

安平城
あら皆さん、ごきげんよう。
見たところ、海水浴から戻る途中のようですわね?

首里城
そうだよー! 今日もいっぱい楽しませてもらったさ!

延岡城
安平城さんは、お一人で何をされていたのですか?

安平城
ふふ……気になりますか……?

首里城
なになに、もしかして楽しいこと? スイも混ぜてほしいよぉ~。

安平城
えぇ……とっても楽しいことですよ……。
ですが、これは……私と総督さま、二人のお話……。

柳川城
安平城さんが……殿と二人で……?

安平城
そうです。
私、少々……総督さまと、水遊びをしようと思いまして……。

久留米城
殿と……?

延岡城
水遊び……?

首里城
こんな時間に、二人きりで……?

安平城
むしろ、二人きりでなければいけません。
……私と総督さまの間に邪魔が入っては困りますから。

安平城
見てください、この水着。
夏に向けて、時間を掛けて用意したものです。

安平城
これを総督さまにほとんど見てもらえないなんて……、
なんのために招待したか、分からなくなってしまいます。

安平城
ですから隅々まで、
じーっくりと……見ていただきたいのです。

延岡城
(それって、つまり……つまり……!)

首里城
それで、水遊びというのは……。

安平城
それは、まぁ……夜の水遊びといいますか……。
戯れにこの水鉄砲で……遊んでみたりなど、してみたり……。

安平城
総督さまにこの水鉄砲をお渡しして……、
お水を掛けていただくというのも悪くありませんわね……。

安平城
これ以上は言わせないでください……野暮というものですわ。

久留米城
ふーん?
安平城さんは水遊びが好きなのですね……?

首里城
(久留米城ちゃんは心の澄んだ城娘なんだねぇ……)

柳川城
……だ、だめですっ!

柳川城
私は殿をお守りする城娘として、
そんな行動を見過ごす訳にはまいりませんっ!

柳川城
(それに、私だってちゃんと殿に水着を見せられていないのに……!)

柳川城
安平城さんの暴走を止めなければいけませんっ!

柳川城
首里城さん、延岡城さん、久留米城ちゃん! 力を貸してください!

延岡城
は、はいっ!
お殿様が安平城さんの毒牙に掛かってしまう前に……!

首里城
お、おー?

久留米城
事情はよく分かりませんが……。
柳川城ちゃんの言う事なら、お手伝いするよっ!

安平城
あらあら、皆さん乱暴ですのね……?

安平城
多勢に無勢……と言いたいところでしょうけど、
こちらも頭数は揃っていますわ。

安平城
その上、この御城近辺が戦いの舞台となるなら、
地の利は手にしたも同然……。

安平城
さぁ……できるものなら、食い止めてみなさい!

後半
安平城

ぐす……やられてしまいましたぁ~……。

安平城
残りは柳川城さんだけでしたのに……無念です……。

柳川城
貴方という人は……。
こんな危険な水鉄砲は、没収ですっ!

柳川城
……ふぅ。ですが、これで殿をお守りすることができました……。

安平城
ふふ……まだ安心するには早いんじゃなくって?

柳川城
……どういうことです?

安平城
貴方がたがお姉さま人形たちと遊んでいる間、
私が何もしていなかったと思うのですか……?

安平城
あぁ……とぉーっても楽しかったですわぁ……総督さまとの水遊びは……。

柳川城
まさか……ハッタリに決まっています……!

安平城
そうお考えなら……ご自身の目で確認すれば良いのではありませんか?

安平城
このまま進めば……総督さまがお休みになられている部屋はすぐそこです……。

柳川城
…………くっ!

柳川城
安平城さん。
この件については後ほど、お話しいたしますから……!

柳川城
(今は殿の……ご無事を確認しなければ……!)

柳川城
(もし手遅れで、
 安平城さんと水遊びを楽しんだ後だったら、私は……)

柳川城
(……そもそも、
 『夜の水遊び』ってなんなのですか……?)

柳川城
(とにかく殿の許へ急がなければ……!
 殿、ただいま向かいますから……無事でいてください……!)

安平城
…………。

安平城
……行ってしまいましたか。

安平城
ふふ、全ては私の計画通り、ですわ……。

――――

柳川城
殿っ……殿はこちらにいらっしゃいますか……!?

柳川城
殿……!

殿
…………?

柳川城
安平城さんは、
こちらにいらっしゃってませんか?

殿
…………?

柳川城
(ご存知ではない……ということは、
 やはり先程の言葉はハッタリ……)

柳川城
ほっ……安心しました。

柳川城
…………。

柳川城
(……って、よく考えたら私、水着姿のままですっ!?)

殿
…………。

柳川城
(うぅ、殿に見られてる……こんな近くで……)

柳川城
(でも……元はと言えば私は、殿に水着を見てもらうことを望んでいたはず……。
 そしてあわよくば……お褒めの言葉をいただきたい、と……)

柳川城
(…………)

柳川城
(よし……!
 ここは一つ……胸を張って……)

柳川城
え、と……殿。この水着、なのですが……。

柳川城
実は、この夏に向けて用意したものなんです。
いかがでしょうか……似合って、ますでしょうか……?

柳川城
殿にも気に入っていただけたら、私……、
とても嬉しいのですが……。

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
……よく似合っている、ですか?
み、魅力的……本当ですか?

柳川城
良かったぁ……殿に気に入ってもらえて……!

柳川城
実は私……自信が無いのと、恥ずかしいのとで、
殿の視線から逃げ回ってばかりいたんです……。

柳川城
ですから、殿からお褒めの言葉をいただけたことが、本当に嬉しくて……!

柳川城
(こ、この勢いで、先日できなかったお誘いを……!)

柳川城
……ところで、殿。明日のご予定は――

――――

安平城
……ふふ。

安平城
計画通り、ですわ♪

久留米城
なるほど、こういうことだったのですね……。

安平城
柳川城さん……水着を着てる間は恥ずかしがって、
総督さまを避けてばかりいましたから……。

安平城
こうして焚き付けたりしなければ、
総督さまとの距離を縮められないままになってしまう、と思ったのです。

延岡城
良かったです……私、てっきり安平城さんが……。

安平城
ん、なんですの?

延岡城
安平城さんが……、
水を掛けたり掛けられたりすることに執着している、特殊な……の方なのかと……。

首里城
確かに『夜の水遊び』って言葉選びは、
かなり攻めてたよね~……。

安平城
し、しかたないでしょう!
柳川城さんの焦りを誘うため、とっさに思いついた言葉を口にしたのです!

久留米城
…………。

久留米城
柳川城ちゃん、とっても幸せそうです。

安平城
えぇ、そうですわね。策を巡らせた甲斐がありました。

首里城
スイたちは一足先に部屋にもどろっか。
これ以上覗き見を続けるのは、それこそ無粋ってやつだよ~。

延岡城
そうですね。夜も更けてきましたし、
そろそろ布団に入りたいです……。

その後も柳川城は、恥ずかしさと嬉しさに頬を染めつつ、
殿と二人きりの時間を存分に楽しむのだった――。



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