ストーリーテキスト/からかさの狂宴

ページ名:ストーリーテキスト/からかさの狂宴

目次

からかさの狂宴[]

からかさの狂宴 -前-

巨大な傘の如き姿形を有する妖怪を確認せり――。
とある城娘より報じられた手掛かりをもとに、
殿一行は新たな妖怪を討伐せんと出立する。

前半
――所領・工房。

やくも
いんやぁ、今日は雲一つない青空やけん、
絶好の武器作り日和だにぃ~♪

鬼ヶ城
おいおい、ずいぶんとご機嫌じゃねぇか。

鬼ヶ城
まっ、昨日までずっと雨天が続いてたからな。
はしゃぎたくなる気持ちも分からなくは――

やくも
――だにぃぃぃっ!?

鬼ヶ城
ど、どうしたんだよ、やくも?
急にヘンな声だしてよぉ……。

やくも
見るだにぃ……。
愛用してたトンカチにヒビが入ってしまったがやぁ!

鬼ヶ城
ヒビだとぉ……?
どれ、ちょっと貸してみ。

鬼ヶ城
……んぅ。

鬼ヶ城
直せないことはねぇだろうが、
かなり年季の入ったもんみてぇだし、寿命なのかもな。

鬼ヶ城
直すよりも、新しいのを買った方が早そうだが、
……どうする?

やくも
そうやねぇ……。

やくも
愛用してたものやけん、たしかに愛着はあるけど、

やくも
この際やけん新しいトンカチに買い換えるのもいいかもしれんだに。

やくも
千狐にお金出してもらえるか訊いてみるがや!

鬼ヶ城
っしゃ! そういうことなら、俺様もついていくぜ!

鬼ヶ城
千狐はヘンなところで出し渋るところがあるからな。
いざとなりゃ、俺様がガツンといってやるぜ!

やくも
こ、心強いけん頼りにしちょーけど、
暴力行為だけは控えてほしいだに……。

鬼ヶ城
わ、わかってらぁ!
俺様だってそこまでバカじゃねぇっての!

鬼ヶ城
ほれ、さっさと行こうぜ。
善は急げってやつだ!

やくも
だにぃ~!

――所領・室内。

やくも
千狐ぉ~! ちょっと話したいことが――

やくも
――って、あれ?

鬼ヶ城
んだよ、どうやら来客がいるみたいだな。

殿
…………。

金亀城
城主様、先日は彦根お姉様主催の
宴にご参加いただき本当にありがとうございました。

金亀城
一家を代表して、改めて御礼申し上げます。

殿
…………。

殿
…………!

千狐
そうですね。城娘の皆さんも大変お喜びのようでしたし、

千狐
かくいう我々も、
日頃の戦において溜まっていた疲れを癒やす、
良き機会になったかと思いますわ。

鬼ヶ城
――んだよ、誰かと思えば金亀城か。

金亀城
鬼ヶ城さん!? 

金亀城
それに、やくもさんまで!

やくも
こんにちはだにぃ~。

やくも
それにしても、この前のお礼を言うためだけに、
わざわざ所領まで来ちょーなんて金亀城は律儀やねぇ。

金亀城
いえいえ、それは買いかぶりというものですよ、やくもさん。

やくも
……だに?

金亀城
楽しき時間とは往々にして刹那に過ぎゆくものなれど、

金亀城
宴や暇を経たならば、その間におざなりになっていた
事柄への対応が自然と差し迫ってしまうのは必然……。

金亀城
というわけで、城主様。

殿
…………?

金亀城
さっそくですが、妖怪退治への協力をお願いしたく存じます。

鬼ヶ城
よ、妖怪退治!?

柳川城
あの、ど、どういうことでしょうか?

金亀城
実は、あの宴の直後に旗下の方々から
新たな妖怪出現の報を受けまして……。

金亀城
迅速に対処せねば――と意気込んだはいいものの、

金亀城
宴後の城娘さんたちは、どなたも各々の守護すべき
地での対応に追われている状況でして…………。

やくも
で、うちらに協力をお願いしにきたってわけやね。

金亀城
その通りでございます♪

殿
…………。

殿
…………!

鬼ヶ城
だなっ! 協力しねぇ理由はひとつもねぇ!

鬼ヶ城
さっそく準備にとりかかるとしようぜ!!

金亀城
皆さん……。

金亀城
ご快諾、心より感謝いたします。

金亀城
それでは戦支度が整い次第、すぐに出立と参りましょう!

――半刻後。

千狐
殿、転移術は成功ですわ!
どうやらここが報告にあった場所のようですね。

やくも
……ん?
なんか辺り一帯に靄みたいなもんがかかっちょるね。

柳川城
昨日までの大雨の所為でしょう……。
此地に漂う悪気とあいまって遠くを見通すのが困難な状況になっていますね。

金亀城
となると、私のような遠距離攻撃を得意とする
城娘は少々気をつけてないといけませんね……。

兜軍団
――――――――――。

鬼ヶ城
ちっ……靄の先にゃ兜たちがわんさかいやがるじゃねぇか。
性懲りもなく、妖怪たちと悪さしようと企んでやがんな。

金亀城
ですが、妙ですね……。
兜たちの姿はあれど、肝心の妖怪の姿が見当たりません。

柳川城
金亀城さん、
先の報告にあったという妖怪の情報は
如何なものだったのでしょうか?

金亀城
えっと、それが……。
巨大な傘のような姿形を有する妖怪ということなのですが。

やくも
傘って……。
金亀城がいっつも持ち歩いてるヤツみたいなもんかや?

金亀城
え、ええ。
報告によれば然様な表現がされています。

鬼ヶ城
とは言ってもなぁ……。
肝心の妖怪の姿は見えねぇし、

鬼ヶ城
そもそも傘のような見た目って言われても、
強そうには思えねぇけどな。

桃形兜
――ムッ!?

兜軍団
城娘ヲ発見セリ! 城娘ヲ発見セリ!

兜軍団
今コソ妖怪共ト連携シテ、殿一行ヲ殲滅スルノダ!!

鬼ヶ城
へっ、今さら気づいたって遅ぇぜ!
こっちは準備万端なんだからよ!

柳川城
はいっ! まずは我々で雑兵を――

金亀城
――ま、待ってください、お二人とも!

鬼ヶ城
あん? どうしたんだよ、金亀城?
まさか今になって怖じ気づいたってのか?

金亀城
い、いえ……そうではなくて!

金亀城
空から、何かが……私たちのもとへと向かってきてます!

鬼ヶ城
はぁ……?
何をバカなことを言って――

からかさ
――グァッサァァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!!

鬼ヶ城
うぉぉぉッ!? 

鬼ヶ城
――――っぶねぇ!
避けんのが遅れてたら、腕をへし折られてたところだぜ……。

からかさ
ゲハッ、アハッ、アババハハハハハハハアッ!!

からかさ
ベロンベロしッてドロッドロンのヌッヂョヌヂョにジデやるざァァアアアッ!!

鬼ヶ城
っち、気持ち悪ぃやろうだぜ……。

柳川城
そして……まさに傘の如き姿形。

柳川城
あれが此度の報告にあった妖怪で間違いないようですね!

金亀城
皆さん、姿を現したとはいえ、
依然として未知数の敵であることに変わりはありません!

金亀城
充分に注意して戦闘に臨んでください!

殿
…………!

鬼ヶ城
ああっ、んなこたぁ分かってんだよ!

鬼ヶ城
だが、まずは攻めねぇことには倒しようがねぇ!

鬼ヶ城
行くぞ、柳川城! 金亀城!
俺様の後に続きやがれーーっ!

後半
鬼ヶ城

おらぁぁあああああああああ!
ぶっ潰れろやぁあああああッ!!

からかさ
――ンフゥゥゥッ!

からかさ
バッァアア! ゾンナノ痛クモ――ナンとも――なインダナァァアア!

鬼ヶ城
そ、そんな……ッ!
俺様の攻撃が、効いてない……だと!?

柳川城
鬼ヶ城さん! そのままでは危険です!
敵から距離をとってくださいーーッ!!

鬼ヶ城
ちっ……仕方ねぇ!
ここは一旦――――、

鬼ヶ城
――ッ!?

からかさ
グァッサアアァアアアアアッ!!

からかさ
グァッサアアァアアアッ!! クサアアァアアアッ!! グァッサアアァアアアッ!!
 グァッサアアァアアアッ!! クサアアァアアアッ!! グァッサアアァアアアッ!!
  グァッサアアァアアアッ!! クサアアァアアアッ!! グァッサアアァアアアッ!!

金亀城
まずい……ここに来て新手が現れるなんて!?

からかさ
城娘ェッ! ジロッ、ム゛ズム゛ェェェエッ!! ベロッベロロロロロォォォオオオオッ!!

鬼ヶ城
ひぁッ!? や、やめろッ! 
何をしやが――んぁぁぁああああああああッ!!

からかさの狂宴 -後-

あらゆる攻撃をふわりと無効化する妖怪を相手に、
殿一行は窮地に陥ってしまう。しかし、敵の妙な
所作に気づいた金亀城は或る策に打って出る……。

前半
鬼ヶ城

ひぁッ!? や、やめろッ! 
何をしやが――んぁぁぁああああああああッ!!

千狐
鬼ヶ城さんーーッ!!

鬼ヶ城
くぅ、ぅ……ハァ……ハァ……離れ、やがれぇっ!!

からかさ
バッガめぇェエエエエエエッ!! 効カナインッだおォォォオオオオオ!

鬼ヶ城
んぅっ!! こ、こんのぉぉ……ッ!!

柳川城
殿、このままでは鬼ヶ城さんが危険です!
いったいどうすれば……。

殿
…………。

金亀城
……え? 攻撃を受ける際に、
妖怪たちが眼を閉じて飛び上がっている?

金亀城
(たしかに……今までの攻撃においても、あの妖怪たちは同じ動きを取っていた)

金亀城
(となれば、その挙動を解除させることができれば、或いは――)

金亀城
鬼ヶ城さん! 防御を固めてください!

鬼ヶ城
……はぁ? な、何を言ってんだ!
この状況でそんなことしたら、袋だたきにされるだろうが!

金亀城
どちらにせよ、このままでは舐め殺されるだけです!

金亀城
いいから黙って、私の言うとおりにしてください!!

鬼ヶ城
くっ……その言葉、信じるからな!

金亀城
ええっ!

金亀城
この金亀城が、貴女を救ってみせますッ!!

やくも
ど、どこを撃ってるがや、金亀城!
妖怪さんたちに砲弾が当たってないだに!

金亀城
いいえっ! これでいいんです!

金亀城
見てください! ヤツらの様子を!!

やくも
……だに!?

からかさ
――ゲァッザァッザァァアアアアアアアアアア!?

柳川城
っ!! よ、妖怪たちが怯んでいますッ!?

鬼ヶ城
俺様の攻撃ではビクともしなかったのに、どういうことなんだ……これは。

千狐
そ、そうか……。

千狐
地面に砲弾を撃ち込んだ衝撃を利用したのですね!

金亀城
さすが千狐さん、その通りです!

金亀城
恐らく、あの傘型妖怪は、
己が手で弱点であろう眼を覆うことで、
我々の攻撃を無効化していたのでしょう。

金亀城
なればこそ、直接的な攻撃ではなく、
間接的な衝撃波や振動で心身を揺さぶり、
その絶対的防御の型を崩せば……、

鬼ヶ城
活路を見いだせるってことか!

鬼ヶ城
っしゃあ! そういうことなら、
俺様にだってできらぁ――っ!!

からかさ
――グァッバァァァアッァアアアアアアアアアアアアァッ!?

やくも
すごいだにっ! 妖怪さんたちが驚いて
眼から両手を離し始めちょーがや!

柳川城
これなら倒せるはずです!
金亀城さんが示した勝機、無駄にするわけにはいきません!

殿
…………!

金亀城
はいっ、再び浮遊される前に一気呵成に攻め込みましょう!

金亀城
城主様、今こそ我らに勝利への下知をーーッ!!

後半
金亀城

逃しはしません!
既に貴方たちの動きは把握しています!

からかさ
グァサァァアアッ!?
   グァッザァァアアッ!?
       グァッサァァアアッ!?

柳川城
砲弾の衝撃で敵がたじろいでいます!
鬼ヶ城さん、今こそとどめを――!!

鬼ヶ城
ああっ、任せておけ!

鬼ヶ城
さっきは散々、俺様の身体を弄びやがったな……。

鬼ヶ城
千倍にしてかえしてやらぁああああああああああああ!!

からかさ
ゲ――ッバザァァアアアアアアアアアアアアッ!?

やくも
さっすが鬼ヶ城! 一発で仕留めただにぃ!!

桃形兜
ソ、ソンナ……ッ!

兜軍団
ボク達ダケジャ、ドウシヨウモナイヨォ!!

兜軍団
タ、退散! トニカク逃ゲルンダァッ!!

千狐
……兜軍の撤退を確認。

千狐
どうやら、此地を解放することができたようですね!

鬼ヶ城
ハァ……ハァ……。
ようやく、終わったみてぇだな……。

鬼ヶ城
う、くぅ……ッ!

金亀城
――あっ!?
だ、大丈夫ですか、鬼ヶ城さん?

鬼ヶ城
わりぃ……ちょっとフラついただけだ。
そんな、心配そうな顔すんなよ……。

金亀城
ふふっ、それだけ強がりを言えるなら、
背負う必要はなさそうですね。

鬼ヶ城
へへ……。

鬼ヶ城
……それにしても、危ないところを助けてくれてありがとな。

鬼ヶ城
お前のおかげで何とかくたばらずに済んだ。
この借りはいつか必ず返すぜ……。

金亀城
ええ。気長にお待ちしてますよ、鬼ヶ城さん。

殿
…………。

柳川城
そうですね。皆が無事で本当によかったです。

千狐
では鬼ヶ城さんの手当てのためにも、所領へ帰還するとしましょう。

千狐
殿、此度の遠征も誠にお疲れ様でした!

――三日後。

鬼ヶ城
ふっ……はっ! せいっ――おらぁっ!!

やくも
――だにっ!? 
鬼ヶ城、もうそげに動いて大丈夫なんかや?

鬼ヶ城
おっ、やくもか。

鬼ヶ城
ああ、千狐の手当てのおかげで、
すっかり元通りさ!

鬼ヶ城
それよか、ついさっき金亀城のやつから手紙が送られてきたんだがよ、

鬼ヶ城
どうやらこの前の妖怪は、『からかさ』って名を持つ妖怪だと判明したらしいぜ。

やくも
……からかさ?

鬼ヶ城
ああ。なんでも、使い古されて捨てられた傘が、
その恨み辛みで人に徒なすもんに成り代わっちまった妖怪らしい。

鬼ヶ城
……が、その情報はあくまで口碑みてぇなもんらしくてな。
真偽は定かじゃねぇみたいだ。

やくも
そうやったんやね……。

やくも
…………。

鬼ヶ城
ん? どうしたんだよ、やくも。

鬼ヶ城
……って。

鬼ヶ城
ああ、なるほど。

やくも
なぁ、鬼ヶ城……。
ちょっと頼み事してもええがや?

鬼ヶ城
勿論だぜ。

鬼ヶ城
そのトンカチ、買い換えずに直して、
また使うつもりなんだろ?

やくも
…………。(こくり)

やくも
別に、これを捨てたら、いつかトンカチの妖怪になって
襲ってくるのが怖いとか、そういうわけじゃなくて……。

やくも
やっぱり、付き合いのながい相棒みたいなもんやけん、
直る可能性があるんなら精一杯のことはしてあげたいだに。

鬼ヶ城
へっ、やくもにしちゃいーこと言うじゃねぇか。

やくも
やくもにしちゃ――って、どういうことがやぁ!?

鬼ヶ城
ははっ、悪かったって。そんな怒んじゃねぇよ。

鬼ヶ城
んじゃ、一緒に鬼ノ城んとこに行こうぜ。
あいつと俺様と、お前がいれば何とかなるだろうさ。

やくも
だにっ! 三人で力を合わせて、壊れる前よりも
丈夫なトンカチにしてみせるけん、頑張るがや~!

こうして、領内の工房にはしばらくの間、
静穏たる時が流れることとなったのだが、

数日後、以前にも増して鮮やかな槌音が
力強い掛け声と共に響き始めるのだった。

からかさの狂宴 -絶-

再び麗らかなる微笑と共に所領へと訪れたるは、
彦根城の妹――金亀城。彼女はその健やかな威風
と共に領内の城娘たちへ或る提案をするのだが……。

前半
――妖怪討伐の遠征から一週間後。

金亀城
と、言うわけで、

金亀城
金亀城、またまた来てしまいました!

やくも
…………。

鬼ヶ城
…………。

金亀城
あ、あれ?
何だか微妙な反応ですね。

鬼ヶ城
いやだってよぉ、この前のこともあってか、
また何かの討伐依頼かと思っちまうし、

やくも
何だかここ最近、毎週のように会ってる気がするだに。

やくも
あんた……もしかして、暇なんかや?

金亀城
なっ!?

金亀城
私のことを、そんな風にお思いだったなんて……。

鬼ヶ城
(お、おい……さすがに言い過ぎだったんじゃねぇのか?)

やくも
(だにぃ……つい、本音が……)

金亀城
さすがは、やくもさん!
ずばり正解です!!

鬼ヶ城
…………へ?

金亀城
いやぁ、優秀な姉や母を持つと、
やはりこう、いろいろな雑事が呆気なく済んでしまいまして、

金亀城
わりと暇なことが多いんですよね、私♪

鬼ヶ城
んな嬉々として言うことじゃねぇと思うけどな……。

やくも
で、結局なにをしに来たがや?

金亀城
ふふっ、ずばり今日はですねぇ…………――――。

所領・室内。

柳川城
――か、傘作り……ですか?

金亀城
はいっ!

金亀城
少し小耳に挟んだのですが、
聞けば皆さんは、自身の傘をお持ちでないらしいじゃないですか。

前橋城
そうは言っても領内には共用の物があるからな。
自分自身のものを所持している者の方が珍しいのではないか?

鬼ヶ城
っていうか別に雨が降ったとして、
傘なんかささねぇしな。

金亀城
――なんですと!?

鬼ヶ城
そ、そんなに驚くことか?

鬼ヶ城
つーか、俺様は別にいくら濡れようが気にしねぇし。

前橋城
そもそも、それほどまでに濡れることもないしな。

金亀城
んぅ……。
そう言われてしまうと、今日の企画が無駄になってしまうのですが。

金亀城
――では、少し考え方を変えてみましょう!

金亀城
皆さんは、自分の傘が無くてもいいとのお考えのようですが、

金亀城
この必要性を他者へと向けてみたら――如何でしょうか?

前橋城
……他者へ、だと?

金亀城
然りです。

金亀城
皆々様にとっての大切な方を頭に思い浮かべてみてください。

金亀城
時節は初夏……そして、天からは突然の夕立。

金亀城
けれど蓑も傘もない状況に、貴方の大切な方はいます。

金亀城
そこに颯爽とかけつけた貴方は、優雅に!
けれど優しい微笑をもって、その方に自分の傘をさっと差し出して、

金亀城
私のでよければ、なかに入りませんか?

金亀城
……と一言囁くのです。

柳川城
…………。(ごくり)

金亀城
ひとつの傘をふたりで分け合い、
濡れそぼる地をしずしずと歩いて行く。

金亀城
浄瑠璃や川柳に時折見られるこの相合傘なる状況、
皆さんも乙女ならば一度は経験したいと、そう思いませんか?

鬼ヶ城
(鬼ノ城と相合傘……)

前橋城
(ふむ……古河城は風邪を引きやすいからな)

前橋城
(傘を常備しておくのはいいかもしれぬな)

柳川城
(殿と……ひとつの傘を分け合って帰る……)

柳川城
(……いい)

柳川城
(――すごくいいですっ!)

柳川城
――ぜひっ、作りましょう! 傘!

前橋城
ああっ、異論無しだ!

鬼ヶ城
へっ、やるからには俺様が一番でっけぇ傘を作ってやるぜ!

金亀城
ふふっ、その意気にございます、皆様。

金亀城
……とはいえ、傘作りとは奥の深いもの。

金亀城
私は、この愛用の傘を自作していますが、これほどまでの
ものを生み出せるようになるにはかなりの時間がかかりました。

やくも
なぁに、物作りならうちが得意やけん、任しとき!

金亀城
…………否。

金亀城
そういう手合いが一番、失敗しやすいのです。

やくも
だに……?

金亀城
いいですか、やくもさん。
傘作りにおいて慢心は死を意味します。

鬼ヶ城
お、おいおい。なにをバカなことを言って……。

金亀城
あら、御存知ありませんか?

金亀城
これは、かつて傘作りの職人さんの身に起きた恐ろしい話なのですが――。

後半
金亀城

――と、言うことがありまして、
二度と箸すら持てぬような状態になってしまったとかなんとか。

やくも
…………。

柳川城
…………。

前橋城
…………。

鬼ヶ城
…………。

金亀城
というのは冗談として、

金亀城
作業においては刃物を取り扱ったりしますので、
やるからにはおふざけなしで真剣にやってくださいね。

鬼ヶ城
それだけの注意で、んな怖い話すんじゃねぇよ!

やくも
……うぅ、夢に出てきそうなくらい怖い話だっただに。

柳川城
いずれにせよ、またいつ兜や妖怪たちが出現し、
遠征に臨まなければいけなくなるか分かりません。

柳川城
作るからには、今日中に仕上げてしまいましょう!

前橋城
……柳川城。
なにやら今日のお前は、いつになくやる気だな。

金亀城
ふふ、どのような理由があろうと、
熱意をもってくれるのは有難いことです♪

金亀城
それでは皆さん、まずはこちらの道具を――――

――数週間後。

柳川城
……はぁ。

柳川城
(何とか、金亀城さんたちと共に傘を作ることはできましたが……)

柳川城
(……いつまでたっても雨は降りませんね)

柳川城
いや、たしかに洗濯物がよく乾くので、
良いことと言えば良いことなのですが……。

柳川城
はぁ……。

殿
…………。

殿
…………?

柳川城
と、殿!?

柳川城
あ、いえ……この傘は、その……。

柳川城
(どうしよう……)

柳川城
(快晴の下で傘を持って歩くなんて、ヘンな城娘だと思われてしまったのでは……)

柳川城
えっと……え~っと……。

殿
…………。

殿
…………?

柳川城
え? ひ、日除け?

柳川城
たしかに、近頃は日差しも少しずつですが、
強くなってきていますからね。

柳川城
――っ!?

柳川城
(そうか……日除けを理由に、お誘いをすればいいのでは!?)

殿
…………?

柳川城
あ、あの……。

柳川城
私のでよければ、その……。

殿
…………?

柳川城
(なかに……なかに、入って……)

柳川城
よければ、この傘を日除けとしてお使いください!

殿
…………。

殿
…………?

柳川城
は、はい!
前に金亀城さんに作り方を教えていただきまして。

柳川城
初めて作ったので、不格好かもしれませんが、
それでもよければ……ぜひ!

殿
…………。

柳川城
…………。

殿
…………。

殿
…………!

果たして――領内においては時々、晴れた日であろうと
傘をさす殿の姿が城娘たちの目に留まることとなるのだが、

その訳については、共に傘作りに臨んだ金亀城たち以外、知る由も無かったのであった。



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