ストーリーテキスト/DMM城_オン_ステージ！

DMM城 オン ステージ！[]

蒼天穿つ高楼閣 -前-

遠く離れた何処かで、今……一つの願いが
実を結ぶ。それはすなわち、新たな者が
『城娘』として名を連ねることを意味していた。

前半
殿たちの世界から遠く離れた……何処か。 無数の思念と感情が行き交う街……。 ここで、今……、 一つの願いが実を結ぼうとしていた―― 少女 オーディション会場は……うんっ。 ここで合ってたよね。 ――『ＤＭＭ城オーディション・最終選考会場』 少女 『ＤＭＭ城』の座に、 誰が着くかを決めるオーディションが……、 遂に始まるんだ……！ 少女 だけど……。 少女 ――わぁ、すごい数の人……！ こんなに沢山の子たちが、ＤＭＭ城を目指して……。 少女 この中で選んでもらえなきゃ、 ＤＭＭ城の座は射止められないんだよね……。 少女 …………。 少女 だめだめ……弱気になっちゃ！ もっとポジティブにならないと……！ 少女 始まる前から気持ちで負けてちゃ、 良いパフォーマンスなんか発揮できないよね！ 少女 ここに残ってる子は、猛者揃い……。 だけど、それは私も同じことだもん！ 少女 とにかく今は、ベストを尽くすことだけ考えよう！ 少女 よぉーし、がんばるぞ！ ……えい、えい、おぉ～！！！ 警備員 そこのキミ、静かにっ！ 少女 ひぇっ……ご、ごめんなさいぃ……。 警備員 まったく、近頃の子は―― ？？？ ――ええと、審査員の控室は……どちらでしょう。 警備員 あ……貴方はっ！　お疲れ様ですっ！ 控室はこちらになります……さ、どうぞ……！ 多田野きつね あっ、ありがとうございます……！ 多田野きつね …………。 多田野きつね （あの子は……） 少女 ……せっかくここまで来れたんだもん。 せめて、悔いの残らないように……！ 今の彼女は、名もなきアイドルの卵。 しかし胸の内には人一倍大きな夢と、希望が詰まっていた。 その後……少女はオーディションの舞台において、 彼女は臆することなく、自身の全てをさらけ出した。 果たして、少女の願いはどこへ向かうのか。 半ばにして散るのか、遥かな大空へと羽ばたくのか―― 多田野きつね ……こほん。皆さん、お揃いですね？ 多田野きつね それでは……僭越ながら、 この多田野きつねから、結果を発表させていただきます。 少女 …………ごくり。 多田野きつね その座を射止めるため、 数多の候補たちが競り合った……ＤＭＭ城。 見事、最終選考をくぐり抜けたのは―― 多田野きつね …………。 多田野きつね ――貴方ですっ！ 少女 わー、おめでとうございます～！ 少女 （パチパチパチパチパチ） 少女 …………。 少女 え、えーと……あれ？ 少女 えぇええええええええええええ！！ 私っ！？　選ばれたの、私ですかっ！？ 多田野きつね おめでとうございます♪　今日から貴方がＤＭＭ城ですよ！ これから一緒に、ＤＭＭを盛り上げていきましょうね。 よろしくお願いします♪ 多田野きつね ささ、それではこちらへどうぞ。 ＤＭＭ城としての最初のお仕事が待っていますよ♪ 少女 さ、最初のお仕事ですか？ はい……了解ですっ……！ ―――― やり手のキャメラマン それじゃ、両手を広げてみましょうか！ 元気いっぱいな感じで、こう―― 敏腕デザイナー この手甲には加賀市と縁の深い花、 しょうぶを取り入れておりまして―― 凄腕スタイリスト ん～、そうねぇ。 髪はやっぱりポニテがベターかしら―― 多田野きつね 最後に――はい！ オリジナルのピンマイクです！　どうぞ♪ 多田野きつね さぁ……鏡に映った自分の姿を、見てみてください。 ＤＭＭ城 …………。 ＤＭＭ城 わぁ……♪ これが……私？ 多田野きつね とってもよくお似合いですよ。ＤＭＭ城さん♪ ＤＭＭ城 ＤＭＭ城……。 ＤＭＭ城 そっか。これから私、 ＤＭＭ城になるんだよね……。 多田野きつね 大丈夫ですか？　やはり……不安ですよね？ ＤＭＭ城 ううん、全然！ 緊張はあるけど、ワクワクの方が何倍も大きいの！ やってやるぞー、って感じ♪ 多田野きつね ポジティブなんですね、ＤＭＭ城さんは。 私も見習わなければ♪ 多田野きつね ふふ、貴方なら大丈夫です。 審査員たちが考えに考えて選んだんですから。 多田野きつね それに、貴方の傍には私が居ます！ いつでも隣でサポートしますから、二人で一緒に頑張りましょう。 ＤＭＭ城さん♪ ＤＭＭ城 ありがとうございます。 えと……多田野、きつねさん……でしたよね？ 多田野きつね ふふっ、そんな余所余所しい口調はやめてください♪ 多田野きつね これから私たちは、二人三脚で歩むパートナーになるんです。 貴方がアイドルなら……私はマネージャーのようなものでしょうか。 多田野きつね ですからＤＭＭ城さんは、遠慮なく……、 『きつねちゃん』と呼んでください♪ ＤＭＭ城 …………！ ＤＭＭ城 ありがとう……とっても心強いよ。 これから二人で支え合ってこうね、きつねちゃん！ 多田野きつね はいっ♪ ＤＭＭ城 よぉし。とにかく……これから頑張らなきゃ。 ＤＭＭ城 今の私はＤＭＭ城として認められただけ。 やるべきことや、覚えることが山積みだもん！ 立ち止まってる暇なんてないもんね！ 多田野きつね そうです！　その意気ですよ、ＤＭＭ城さん！ それではまず、私が社屋の案内を―― ドカーーーーーーーーン！！！！ ？？？ キャアアアアァァァァァ！！ ＤＭＭ城 きゃっ……何！？ 急にビルが激しく揺れて……？ 多田野きつね それに、悲鳴も聞こえましたよ！？ あちこちから同時に……！ ？？？ ――ザザッ！ ？？？ ――ザザッ！　ザザザッ！！ 多田野きつね な、何か近づいてくる……。 ＤＭＭ城さん、あちらに隠れましょう！ さぁ……！ ＤＭＭ城 うん、分かった……！ ―――― 突撃式トッパイ形兜 探セ、探セェ――――！ 突撃式トッパイ形兜 城娘ハ、スグ近クニ居ル！ 必ズヤ捕ラエ、九尾様ノ御前ニ連レテイクノダ！ 兜軍団 御意！　御意！　御意！ 突撃式トッパイ形兜 探セ、探セ、探セェ――！ 多田野きつね …………。 多田野きつね あ……あれは、 御城プロジェクト：ＲＥの……兜！？ なぜこんなところに……？ ＤＭＭ城 え、えええええええっ！？ なになにっ？　……今の大きな化物はっ！？ ＤＭＭ城 すっごく大きな、鉄製の……ロボット？　それとも人形？ 何かを探していたみたいだけど……。 多田野きつね 先程の揺れや、悲鳴もおそらく――どうしましょう。 もし捕まったりなんかしたら私たち、どうなってしまうか……。 ＤＭＭ城 （きつねちゃんが怯えてる……無理もないよね。 　あの輩……此世のものとは、とても思えなかったもん） ＤＭＭ城 （だけど、どうしてかな……全然怖くない。 　確かに、危険そうには見えたけど……） ＤＭＭ城 （そういえば、気になる言葉も幾つか聞こえた。 　確か『城娘』とか――） ？？？ コーーンッ！？ ＤＭＭ城 ――そうそう。それから『コーン』とか……。 ＤＭＭ城 ……え？ 千狐 ここはどこなの！？　誰か助けてほしいの～！！ やくも 見たこともない建物がえっぱい……。 こんなおっきいのがびくともせんと突っ立っとるなんて、 どういう原理だに……？ 千狐 何をキョロキョロしているの、やくも！？ 周りは兜でいっぱい……。 今は異界観光なんてしてる場合じゃないの！ やくも ぐぬぬ……勝手なことを言って…… そもそも、うちらが逃げる羽目になっとるのは、 誰のせいだと思っとるだに！？ やくも こんな事態やっちゅうのに、 どうして柳川城を置いてきてしまったがや！？ こんの、ぽんこつ狐！ 多田野きつね ……きつね？ 千狐 仕方ないじゃない！ あんなところに異界門があるだなんて、思いもしなかったんだから！ 気づかなかったのは……やくも！　貴方も同じでしょう？ 殿 …………。 殿 …………！ 千狐 そ、そうですね……とにかく今は逃げましょう！ それからどこかに身を隠し、勝機を伺う……。 今の千狐たちにできるのは、それくらいしか―― ―――― 多田野きつね 声と足音が近づいてきています……！ 多田野きつね どうしましょう、ＤＭＭ城さん。 なんだか荒っぽい声が、混じっているようですが……。 ＤＭＭ城 大丈夫……心配要らないよ、きつねちゃん。 ＤＭＭ城 理由は分からないけど……私、分かるの！ この声の主たちは、悪い人なんかじゃない……ううん、 素敵な人たちなんだ、って。 多田野きつね そ、そうでしょうか……？ ―――― 千狐 では……あちらの物陰に隠れましょう。 やくも ふひぃ～……疲れたがや。 殿 …………！ 千狐 はい！　まずは休息が必要ですね。 こちらの世に転移してから、逃げ回ってばかりでしたから。 千狐 じっくりと策を練れば、 状況を打破する糸口も見えるはずです。 さぁ、こちらへ―― 多田野きつね ――――っ！？ ＤＭＭ城 ――――っ！ 千狐 …………えっ？ 殿 …………？ やくも どうしたんだに、千狐？ 戸を開けたまま、ぼーっと突っ立って……。 多田野きつね え……そこに居るのは、千狐さん……ですか？ 千狐 きつね、さん？　……きつねさんなの……？ 多田野きつね わ……驚きました！　本当に千狐さんです！ 多田野きつね 先程、兜の姿を見つけ、ここに隠れていたのですが……、 まさか、千狐さんたちも来ていたなんて！ 千狐 異界門を通じて千狐たちが転移したのは、 きつねさんたちの世界だったのですね……！ 殿 …………？ やくも ……だに？　二人は知り合い……がや？ 多田野きつね ということは……やはり皆さんは、 あの兜たちを追ってこちらへいらっしゃったのですよね？ 千狐 はい……兜がこちらに転移した以上、放ってはおけません。 ですが……残念ながら今の千狐たちには、兜に対抗する術が―― ＤＭＭ城 …………。 千狐 ――っ！　ちょっと待ってください。 ……そこの貴方は、もしかして……？ ＤＭＭ城 は、はい……？ 千狐 …………！ 千狐 ……やはり、間違いありません！ 貴方が持っている力は正に、城娘そのもの！ 千狐 良かった……これで此世を兜から守ることができます！ こんなところで城娘と出会えるなんて……運命としか言いようが無いの！ 貴方は千狐たちの、命の恩人なのー！ ＤＭＭ城 ま……待って待って。 ちょっと事情が飲み込めてないんだけど……。 ＤＭＭ城 『兜』っていうのは、 さっき通り過ぎてった……化け物たちのこと？ やくも そうだに！　みんなを傷つける……悪ーい奴らがや！ 多田野きつね そんな……ＤＭＭ城さんが、兜と対峙するだなんて……。 多田野きつね い……いけません、ＤＭＭ城さん！ もしものことがあったら、怪我では済まなくなってしまいますよ！？ 多田野きつね ＤＭＭ城さんはこのまま、ここに隠れているべきです！ ＤＭＭ城 …………でも。 ＤＭＭ城 その兜っていう奴らは、 城娘……の力を持ってる私じゃなきゃ、 どうにもできないんだよね？ 千狐 その通りです。猶予が無いので、掻い摘んで話しますが―― 千狐 兜は、千狐たちの世界を侵す悪者なの。 彼らから民や国を守るため……、 殿の下で日々、兜と衝突を繰り返しているの。 千狐 ここは千狐たちの世界とは、遠く隔たれた地……ですが、 それでも、城娘の力が兜に通じることは変わりないはず！ 千狐 ですからお願いです……ＤＭＭ城さん！ 千狐たちにその力を貸してください！ やくも お願いだに～！ 殿 …………！ ＤＭＭ城 （私が、兜……あの化物と戦う……？） ＤＭＭ城 （このままじゃ……、 　きつねちゃんも千狐ちゃんたちも、みんなやられちゃう） ＤＭＭ城 守らなきゃ……守りたい。 今の私に、その力があるなら……お手伝いしたい！ 殿 …………。 殿 …………！？ 多田野きつね これは……ＤＭＭ城さんの身体から、光が……！ ＤＭＭ城 え、うそ……なんで？　……きゃあぁぁっ――！ ―――― ＤＭＭ城 …………。 ＤＭＭ城 こ、これ……私、大きくなってる……！？ やくも すごいがやー！ ＤＭＭ城の力がバシバシ伝わってくるだに！ 多田野きつね …………。 多田野きつね ＤＭＭ城さん……。 ＤＭＭ城 心配要らないよ。 ……きつねちゃんも、他のみんなも、 私が守ってみせるから……！ 殿 …………。 殿 …………？ ＤＭＭ城 うん。できるかどうかは分からないけど……だいたい分かった！ やれる限りのことをやってみる！ 何もしないで隠れてたら、やられるのを待つだけになっちゃうもん！ 殿 …………！ ＤＭＭ城 貴方……『殿』って言ったよね？ お願い……私を先導して！ 貴方の言われた通りにやってみるから！
後半
ＤＭＭ城 兜の姿が見えなくなった……。 ひとまずは安心してオッケー、かな。 はぁぁ……良かった。 ＤＭＭ城 でも、ごめんね……ちょっとだけ、休憩……。 ―――― ＤＭＭ城 はぁ～、疲れたぁ……。 やくも ＤＭＭ城が、元の大きさに……！ 多田野きつね ＤＭＭ城さんっ！　大丈夫ですか！？ ＤＭＭ城 うん……平気。だけど、ちょっと休憩が必要かも。 この勢いでいきたかったんだけど……なんだか、力が抜けちゃって。 千狐 無理もありません。 兜との衝突は初めてだったのですから……。 千狐 ですが……ＤＭＭ城さんの内からは、まだ充分な力が感じられます。 きっかけさえ掴めれば、また巨大化を行うことはできるはずですよ。 ＤＭＭ城 ん、ありがと……千狐ちゃん。 力が戻るまで、少しだけ待っててね……。 殿 …………。 殿 …………？ ＤＭＭ城 ……あ。そういえば、自己紹介がまだだったね。 ＤＭＭ城 改めて……私はＤＭＭ城。 みんなの願いを背負って生まれたアイドルだよ。 よろしくね！ 千狐 千狐は千狐っていうの！ 力を貸してくれて、どうもありがとうなの！ やくも うちはやくも！　それからこちらは、殿さんだに！ 殿 …………！ 多田野きつね 多田野きつねと申します。 お二人とも、千狐さんからお噂はかねがね……！ 千狐 兜の霊気は……まだ、街中から感じられます。 千狐 息を潜めつつこの街を巡り、兜の動向を探ることにいたしましょう。 多田野きつね 分かりましたっ！　それでは皆さん、 私の後に付いてきてくださいっ！

蒼天穿つ高楼閣 -後-

兜の影を追って、異界の街を進む一行。
兜たちの狙いが掴めず、首を捻るが……直後、
殿たちはその真相を思い知らされることになる。

前半
やくも …………。 やくも はぇ～……。 多田野きつね どうしたのですか、やくもさん？ 先程からしきりに周囲を見回していますが……？ やくも この街の風景に、驚いとったがや。 どの建物も、えらい高さで……、 天を衝くみたいにどこまでも続いとる……。 千狐 ……そうね。 見たこともない大きさの建物が、こんなに沢山。 ＤＭＭ城 ところで、兜の気配は感じられる？　……千狐ちゃん？ 千狐 はい……進むにつれて、 兜の霊気が色濃くなっています。 街のあちこちで、兜がうごめいているようです。 千狐 動き回るだけで、 人々には危害を加えていないことが救いです。 でも、だとしたら何が目的なのかしら……？ ＤＭＭ城 もう少し、兜の動向を探ろっか。 ……任せて、この辺りの地理には詳しいから！ 多田野きつね …………。 多田野きつね あの……大丈夫ですか、ＤＭＭ城さん？ ＤＭＭ城 ……えっ？ 多田野きつね 貴方がＤＭＭ城になって以降、 次から次へと色々な事が起きています……。 多田野きつね ですから……もし何か不安があったら、教えてくださいね。 話すだけで楽になることも、あると思いますから。 ＤＭＭ城 ふふっ、心配してくれてありがと、きつねちゃん！ ＤＭＭ城 でも全然平気よ！ ＤＭＭ城としての最初のお仕事だ～、 って気持ちでメラメラ燃えてるの！ ＤＭＭ城 まぁ……確かに最初は驚いたけどね、えへへ。 憧れだったアイドルの座を射止めたと思ったら、 こんなことになっちゃうなんて……びっくり。 やくも ……あいどる？　……おお！ やっぱりＤＭＭ城はあいどる城娘だったがや？ ＤＭＭ城 ……ん？　やくもちゃんは、 アイドルのことをご存知なの？ やくも もちろん、よーく知っとるだに！ ステージの上で歌ったり踊ったりして、 みんなを元気づける人のことがや♪ やくも うちらの世界でも、あいどるは大人気だに♪ 民や城娘を応援したり……反対に、応援を受けたりして、 周囲を笑顔でいっぱいにしとるがや！ ＤＭＭ城 そっか、やくもちゃんの世界にもアイドルが居るんだね！ ＤＭＭ城 アイドルで……しかも城娘ってことは、 私にとっては先輩ってことになるのかな？ ふふっ、機会があったら、一度ご挨拶してみたいな♪ 殿 …………。 殿 …………？ 千狐 はい。あいどる……そして、ＤＭＭ城というその名。 偶然の一致とは思えません。 千狐 千狐たちと離れた此世においても、 『城娘』の概念が形を変えて存在していた……、 ということなのでしょうか。 殿 …………。 ＤＭＭ城 うん……千狐ちゃんの推測は、正しいと思うよ。 ＤＭＭ城 ずっと……自分の中で、不思議な力の気配を感じてたの。 ＤＭＭ城になった時から……、 ううん、その座を射止めた時から。 ＤＭＭ城 それが『城娘』のものだっていうことに気付いたのは、 殿たちと出会ってからだったけど……。 千狐 そうだったのですね……。 ＤＭＭ城 そのせいか……、 あの兜っていう化物を初めて見た時にも、 そんなに脅威だと思わなかった―― 多田野きつね ――っ！？ 多田野きつね 皆さん、あちらをご覧下さい……兜の姿が――！ 兜 …………。（キョロキョロ） 殿 …………。 兜 …………。（スタスタ……） 兜 …………。（スタスタスタ……） 多田野きつね ……ほっ。気づかれなかったようですね。 千狐 兜が消えていった方向から、更に強い霊気を感じます。 おそらく、兜の本陣はこの先に……。 やくも きょろきょろして……何かを探しとったみたいだに。 やっぱり、殿さんのことを探しとるがや……？ ＤＭＭ城 ……あ、そういえば。 ＤＭＭ城 『探す』といえば……兜たちが気になることを言ってたような。 千狐 気になること……ですか？ ＤＭＭ城 うん、兜たちが言ってたの。 城娘はすぐ近くに居るぞー、って！ 殿 …………！ 千狐 ……ということは、 兜たちが探していたのは、もしかして――！？ 突撃式トッパイ形兜 ――ッ！！ 突撃式トッパイ形兜 見ツケタ、見ツケタゾ！！　城娘ダァーー！ 多田野きつね しまった……見つかってしまいましたっ……！ 兜軍団 城娘……捕縛セヨ……。 　　　城娘……捕縛セヨ……。 　　　　　　城娘……捕縛セヨ……。 殿 …………！ 千狐 はい、ここは退きましょう！ ＤＭＭ城さんが力を発揮できるようになるまでは、機を窺うしか……！ 突撃式トッパイ形兜 目当テノ城娘ハモウ目前ダ……追エ、追エー！ ＤＭＭ城 やば、兜がすぐ傍まで……間に合わないかも……！ 多田野きつね 危ない……ＤＭＭ城さんっ！！ （――ドンッ！！） 兜 喰ラエェーーーーー！ 多田野きつね きゃあああぁぁぁぁぁぁっ！？ ＤＭＭ城 ――きつねちゃんっ！？ やくも 兜の攻撃が……きつねさんにっ！？ 千狐 大丈夫ですか、きつねさんっ！？ 多田野きつね だ、大丈夫です……かすり傷ですから。 かわし切れれば良かったのですが……ごめんなさい。 ＤＭＭ城 謝ることなんか……ごめんね、私を守るために……。 兜軍団 城娘……捕縛セヨ……。 　　　城娘……捕縛セヨ……。 　　　　　　城娘……捕縛セヨ……。 やくも あわわ……い、いつの間にか囲まれとるがやぁ……。 殿 …………！ ＤＭＭ城 …………。 ＤＭＭ城 守らなきゃ……守りたい。きつねちゃんも、殿も……！ ＤＭＭ城 みんな、私が守るんだっ――！ 千狐 ――コンッ！？ 千狐 これは……ＤＭＭ城さんの力が、強まっている……！！ ＤＭＭ城 すごい、力が……、 私の内側から溢れてくるのを感じるよっ！ 殿 …………！ ＤＭＭ城 うん、いける……今ならみんなを守れるよ！ 殿、お願い！　指示をちょうだいっ！！
後半
突撃式トッパイ形兜 件ノ城娘ノ力ガ……マサカコレ程トハ。 突撃式トッパイ形兜 コノママデハ分ガ悪イッ！　退ケ！　撤退セヨッ！！ 兜 ギ、御意ッ！ 兜軍団 撤退ッ！　撤退ッ！　撤退ッ！ ＤＭＭ城 ふぅっ、疲れたぁ。ちょっと休憩―― ＤＭＭ城 ――そうだっ！　きつねちゃんはっ？ きつねちゃんは無事なのっ！？ 多田野きつね ええ、平気ですよ。 先程も言った通り……かすり傷のようなものです。 ＤＭＭ城 ごめんね……兜が近づいてることに気づけてたら、 こんなことにならなかったのに……。 多田野きつね 言ったじゃないですか……。 私はＤＭＭ城さんのマネージャーなんです。 多田野きつね 貴方を守るためだったら、このくらいは全然……ぅぐっ！ ＤＭＭ城 ――きつねちゃんっ！！ ……待ってて、私の力で治してあげるからっ！ 多田野きつね いけません、ＤＭＭ城さん。 貴方の力はこの街の人々を守るためのもので……。 ＤＭＭ城 目の前の大事な人が傷ついてるのに、 放っておくことなんてできるわけないよ！ ＤＭＭ城 私の力を注げば……きつねちゃんの怪我もすぐに――うぅっ！ ―――― ＤＭＭ城 あれ……どうして？　私の力が……？ 千狐 無理もありません。ＤＭＭ城さんは先程まで、 兜たちと対峙していたのですから……。 やくも 連続して力を使い過ぎちゃったんだに……。 ＤＭＭ城 だけど、このままじゃきつねちゃんの傷が……！ ＤＭＭ城 ねぇ、千狐ちゃん。 きつねちゃんのこの傷、どうにかならないかな？ ＤＭＭ城 回復アイテムとか魔法みたいなので、 ぽわわぁ～……完治！　みたいな！ 千狐 あ、あいてむ？　……まほう？ やくも だに、名案がやっ！ ＤＭＭ城の言う通り、 千狐ならこの状況をどうにかできるはずだに！ 千狐 コンッ……せ、千狐が……？ やくも きつねさんからは、 千狐やうちと近い力を感じる――ような気がするがや！ それにほら、えー……耳とか尻尾とか、似とるとこもあるし！ やくも やからきっと、千狐の力を注げば、 きっとどうにかなるはずだに！ 千狐 そ、そういう問題かしら……？ 殿 …………？ 千狐 先のやくもの提案……確かに根拠はありません。 ですが、あそこまで強く言い切るということは、 何か感じるものがあったのだと思います。 千狐 悪いことにはならないと思いますし、 試してみる価値はあるかもしれません……！ ＤＭＭ城 少しでも可能性があるなら……お願い、千狐ちゃん。 きつねちゃんに力を貸してあげて！ 千狐 はい……承知しました！ ……それでは、きつねさん。手を……。 多田野きつね お願いします。千狐さん……。 多田野きつね ――くっ……！ 多田野きつね （熱い……。 　千狐さんの力が流れ込んでくるのを感じます！） 多田野きつね （お願い……私に力を貸してください……！） 多田野きつね （そして、叶うなら……、 　ＤＭＭ城さんの支えとなれるような――！） 殿 …………！？ やくも だに……きつねさんの身体が、輝いとるみたいがや。 さっきのＤＭＭ城みたく……！ 多田野きつね きゃ、きゃあぁっ――――！？ ―――― 多田野きつね …………。 多田野きつね …………あ、あれっ？　この姿は……？ 千狐 この姿は……まるで、神娘……！？ 千狐 せ、千狐の持つ力が、どのように作用したのか分かりませんが、 神娘たちと同じ……聖なる力を得たようです。 多田野きつね ありがとうございます……すっかり元気になりました。 それに、力がどんどん溢れてくるみたい……！ ＤＭＭ城 ぐす……良かったぁ……！ 元気になったんだね、きつねちゃん！ やくも ＤＭＭ城、あんなに喜んで……涙を流しとるがや……。 千狐 きつねさんが傷ついたことに、心を痛めていたのね。 元気になって、本当に良かったの……！ 殿 …………！

蒼天穿つ高楼閣 -絶-

多田野きつねに襲った危機を乗り越え、一行は
徐々に兜を追い詰めていく。街の平穏を取り戻す
べく、ＤＭＭ城と共に前進を続けるが――

前半
殿 …………。 千狐 はい……先の戦で勝利を収めたことにより、 兜は大きく数を減らしています。 ＤＭＭ城さんに助力いただいたお陰です。 殿 …………！ 千狐 そうですね。まだ気を抜くことはできません。 兜の動向に注意しながら、慎重に進んでいきましょう。 やくも だにぃ～！ 多田野きつね それでは、次はあちらの方へと―― ＤＭＭ城 ――きつねちゃん、きつねちゃーんっ♪ 多田野きつね わっ――ど、どうしたのですか、ＤＭＭ城さんっ？ ＤＭＭ城 怪我の具合は大丈夫？ 辛かったら、私に寄りかかってもいいんだよ？ 多田野きつね ふふっ……ご覧の通りです。 千狐さんのお陰で、今は元気いっぱいですよ。 ＤＭＭ城 うんうん、それなら安心だね。 だけど、油断は禁物だよ？ 何かあったら、すぐ私に言ってね？ 多田野きつね はい、分かりました。 ところで……ＤＭＭ城さんの方は大丈夫ですか？ 直に、再び兜と対峙することになると思いますが……。 ＤＭＭ城 うんっ、まっかせといて♪ ＤＭＭ城 自由自在に……ってわけにはまだいかないけど、 徐々に力の扱い方が掴めてきたの！ ＤＭＭ城 きつねちゃんのことも、 ちゃんと守り抜いてみせるから……安心して♪ 多田野きつね ふふっ……はい、頼りにしていますよ。 殿 …………。 千狐 ――ＤＭＭ城さん、さっきからきつねさんにべったりなの。 やくも きつねさんの怪我が治ってから、ずっとあの調子がや。 殿 …………！ 千狐 ……苦難を経たことで、仲を深めたのですね。 一時はどうなることかと思いましたが……良かったの。 やくも だに♪　この調子で、 平和を取り戻せれば、万々歳―― 多田野きつね ――っ！？ ＤＭＭ城 ……ん？　どうしたの、きつねちゃん？ 多田野きつね ……千狐さん。この気配は……。 千狐 はい……兜の霊気と見て、間違いありません。 きつねさんも気付いていらしたんですね……。 多田野きつね 千狐さんから力を与えてもらった影響でしょうか……。 いつの間にか、周囲に潜む兜の気配を、 感じ取れるようになっていたようです。 千狐 それでは……千狐と協力して兜の影を追いましょう。 協力をお願いできますか？ 多田野きつね はい、喜んで協力しますっ！ ＤＭＭ城 この街の平和を取り戻すまで……あと少し。 一緒に頑張ろうね、きつねちゃん！
後半
ＤＭＭ城 はぁ、はぁ……はぁ……。 ―――― ＤＭＭ城 兜の気配も残りわずか。 街に平和が戻るのも、あと少し……。 兜 ヒ、ヒエェ……聞イテナイヨ、コンナニ強イダナンテ……！ 兜 マダ力ヲ得テ間モナイカラ、 簡単ニ連レテ帰レルッテ聞イタノニ……！ 突撃式トッパイ形兜 ク……コウナッテハ仕方ナイ。 コノ世界カラハ退散スルゾ。 『向コウノ世界』ニテ一度、力ヲ蓄エネバ……！ 兜 シ、承知シマシタ……！ 撤退、撤退ィィ――！ 千狐 残党が逃げていきます……！ やくも こらぁ～！　逃さんだにぃ～！ 殿 …………！ ＤＭＭ城 私たちも追いかけよう、きつねちゃんっ！ 多田野きつね はい、承知しましたっ！ ―――― 兜軍団 逃ゲロ、逃ゲロ逃ゲロ～ッ！！ メイド兜 ン～、ン～ンン～♪ ……ン？ メイド兜 ――アレ？　皆、何シテルノ？ 随分慌テテルミタイダケド……？ 突撃式トッパイ形兜 オ前ノ方コソ何シテルンダ……ソンナ格好デ……？ メイド兜 エ、知ラナイノ？ コレハ『メイド服』ッテ言ッテ、 コノ世界ノ正装ナンダヨ！ メイド兜 皆モ着替エタ方ガイイヨ？ セッカク異界ニ転移シテキタンダカラ、 チャントソノ場ニ即シタ装イニシナクチャ！ 突撃式トッパイ形兜 …………。 兜軍団 …………。 突撃式トッパイ形兜 ……ソ、ソウダ！　オ喋リナドヲシテイル場合ジャナカッタ！ スグニコノ場ヲ離レナケレバッ！ オ前モ付イテコイ……サァッ！ メイド兜 エ、エエッ！？　待ッテヨ……ボク、 マダマダコノ世界ヲエンジョイシタイノニ……！ 突撃式トッパイ形兜 イイカラ逃ゲルンダヨォーー！！ ―――― 多田野きつね あ、あと少しで追いつけそうなのに……！ ＤＭＭ城 むー……なんて逃げ足なの！ だけどこの調子なら、あとちょっとで―― 千狐 ――お待ちください！　ＤＭＭ城さん、きつねさんっ！ ＤＭＭ城 えっ……どうしたの、千狐ちゃん？ 千狐 今、兜が逃げていった先から、 異様な空気を感じました。 多田野きつね 異様な、空気……ですか？ 千狐 はい……『歪み』とでも言うべきでしょうか。 ひと目見ただけでは分かりませんが……、 非常に不安定な状態にあります。 殿 …………？ 千狐 その通りです。 千狐たちがこの世界に転移してきた時と、似たような……。 ＤＭＭ城 ――ってことはつまり、 ここから先へ進んでいくと、また別の……？ 千狐 はい。こことはまた別の、 異界へ転移することになるかと……！ やくも うひぃ……それは大変だに。 やけど、このまま放置しとくわけにもいかんがや……。 殿 …………。 殿 …………？ ＤＭＭ城 ……とーぜん♪ ここで見逃すことなんてできないよ！ ＤＭＭ城 兜たちが居なくなるまでは、 私たちの世界に安心は訪れないもん！ やくも だにっ！ こっちから乗り込んで、平和を勝ち取るがや！ 多田野きつね ＤＭＭ城さん……！ 千狐 承知しましたっ！ 今後も兜との衝突が続くかと思いますが……、 力を合わせて乗り越えましょう！ 千狐 それでは――出立なのっ！ 殿 …………！ やくも だにぃ～！！

幻想戯る夢高座 -前-

兜の脅威を打ち払うため、根城にあたる空間へと
転移を果たした殿一行。その先では新たな境地に
至った兜たちの、狂宴が催されていた……！

前半
――異界にて、兜の姿を見つけた殿一行。 その影を追い、 さらなる別世界へと転移を果たしたのだが―― やくも だにぃ……ここは……？ 千狐 さっきの街並みと、 まったく違う風景が広がっているの……。 多田野きつね ……幻想的な風景。 ですが、この場所には見覚えがあるような……？ ＤＭＭ城 …………ねぇ、殿。 殿 …………？ ＤＭＭ城 多分だけど……この空間は、 私と深い繋がりを持ってる……んだと思う。 やくも ＤＭＭ城とのつながり？ どうやってそんなことを見抜いただに？ ＤＭＭ城 見抜いた、というより……思い出した、って感じかな？ どうしてそんな風に感じたかは、 上手く説明できないんだけど……。 殿 …………。 殿 …………？ 千狐 は、はい。そうですね。 まずは兜の気配を探らなければ……！ 千狐 ……むむっ。 千狐 ……間違いありません。 周囲から……兜の力が無数に感じられます。 やくも ってことは……やっぱり、 またあちこちに兜さんが潜んどるっちゅうことがや！？ 千狐 ううん、というよりも……まるで、 この空間そのものが、兜の力で満たされているような……。 殿 …………！ 千狐 ……はい。どうやらこの空間には、 兜の力が深く関わっているようです。 千狐 先程、ＤＭＭ城さんが仰っていたことを考えると、 ＤＭＭ城さんたちの世界に兜の瘴気が作用し、 この空間が生まれてしまった……ということかと思います。 多田野きつね ということは、やはり私たちの世界を守るためには兜を―― ？？？ イラッシャイマセ、ゴ主人様！ ＤＭＭ城 ――ん？　今の声は……？ 何かに目覚めた兜 タ……タダイマ……。 メイド兜 ……アァッ！？　ヤダモ～！ 超オ久シブリジャナイデスカ、トッパイ様♪ メイド兜 嫌ワレタカト思ッテアタシ、 毎晩枕ヲ濡ラシチャッテタンデスケドー！ 何かに目覚めた兜 ウ、ウン……最近ハチョット忙シクテ……。 メイド兜 ソウダッタンデスネ★　デモ会エテ良カッタ～♪ ……ゴ注文ハイカガナサイマスカ？ 何かに目覚めた兜 ウン……ソレジャ、 『愛情全開★ラブラブオムライス（チェキ付）』ヲ一ツ―― メイド兜 御意ッ♪　オ飲ミ物ハ要リマセンカ？ 何かに目覚めた兜 ジャ……。 『利休モ悶絶！？　激渋玉露（チェキ付）』ヲ一ツ―― メイド兜 ハイッ、御意ノママニ～★ ―――― やくも …………。 殿 …………。 千狐 ど、どうやら……。兜たちも少なからず、 皆さんの世界から影響を受けているようですね……。 多田野きつね え、影響……ですか……。 ＤＭＭ城 ――と、とにかく！ ＤＭＭ城 私たちの世界を守るためには、 兜たちの相手をしなくちゃいけないんだよね？ ……あそこに居るのも含めて！ 千狐 そ、その通りです！　瘴気が払われなければ、 根城にあたるこの空間は、 ＤＭＭ城さんたちの世界に危害を加え続けるでしょう……！ やくも 何やらごっこ遊びに興じとるみたいやけど、 悪さを働く存在であることには、変わりないがや！ ＤＭＭ城 うん、そうだよね……！ 多田野きつね ……ＤＭＭ城さん。 多田野きつね ……信じていますよ。 きっとＤＭＭ城さんならやれると……！ 多田野きつね 今の私には……ＤＭＭ城さんの無事を、 祈ることしかできませんが……。 ＤＭＭ城 『祈ることしか』なんて。 私にとってはこれ以上ないエールだよ♪ ＤＭＭ城 待っててね、きつねちゃん！ すぐに終わらせて帰ってくるから♪
後半
ＤＭＭ城 はぁ、はぁ……どう、きつねちゃん？ 私のパフォーマンス、見てくれた？ 多田野きつね はい……素敵でしたよ、ＤＭＭ城さん！ 千狐 兜の力は削がれています……もうひと押しです！ メイド兜 ヤダ……ヤダァッ！ アタシ、アタシ……マダオ給仕ヲ続ケタイノニ……！ 何かに目覚めた兜 コ……ココハ逃ゲヨウ、桃形チャン！ メイド兜 デモ……デモ……！ 何かに目覚めた兜 大丈夫サ、何ガアッテモ。 俺ガ守ルカラ……！（ニコッ） メイド兜 トッパイ様ァ……♪（キュン） 何かに目覚めた兜 サァ、逃ゲヨウ！ 俺ノ手ヲ離シチャダメダカラネッ！ メイド兜 ハイ、トッパイ様ッ！ やくも ああっ、兜たちが逃げてくだに！ 殿 …………！ ＤＭＭ城 ……うん！　後を追いかけよう！ でも……待って。ちょっとだけ疲れた、かも……。 ―――― ＤＭＭ城 えへへ……力、使いすぎちゃった……かな。 多田野きつね ＤＭＭ城さんっ！？ 多田野きつね …………。 多田野きつね （ＤＭＭ城さんが……、 　私たちのために何度も、危険な目に） 多田野きつね （もし……今の私に少しでも、 　千狐さんの力が宿っているのなら……！） 多田野きつね （お願い……どうか、ＤＭＭ城さんの後押しを――！） ―――― 多田野きつね …………っ！！ 殿 …………！ やくも おおっ！？　またきつねさんの格好が……！？ 多田野きつね 頑張って……頑張ってください、ＤＭＭ城さんっ！ ＤＭＭ城 ……ありがとうっ！ きつねちゃんの想い、受け取ったよ！ ＤＭＭ城 ……さぁ殿、準備はいい？ ここまで声援を貰って、 カッコ悪いところは見せられないよね！ 殿 …………！ ＤＭＭ城 兜たちに追いついて……二人でビシッと決めようよ、殿っ！

幻想戯る夢高座 -後-

逃走劇を繰り広げ、殿一行の追走に喘ぐ中、
千狐と多田野きつねに狙いを定めたメイド兜
たちの良からぬ企みとは、いったい……。

前半
やくも 待て～！！　待つだにぃ～！ 殿 …………。（ぜえぜえ） ＤＭＭ城 はぁ、はぁ……。あの兜、 動きにくそうな格好をしてるのに……やけに機敏ね！ メイド兜 フフンッ！ コノ衣装ハ、メイドノ戦闘服ナノヨ～！ メイド兜 ……ケド、 コノママ逃ゲ続ケテモ埒ガ明カナイワ。 ドウシマショウ、トッパイ様？ 何かに目覚めた兜 …………。（チラッ） 千狐 そろそろ、千狐の体力も……限界、なのぉ……。 多田野きつね だ、大丈夫ですか、千狐さん……？ 何かに目覚めた兜 （狐耳ニ……尻尾。ソレガ二人……） 何かに目覚めた兜 アノ……モ、桃形チャン。 チョット提案ガアルンダケド……イイカナ？ メイド兜 ン……ナァニ？ 何かに目覚めた兜 エエト、ソノ……ゴニョ、ゴニョゴニョゴニョ……。 メイド兜 フン、フンフン……。 メイド兜 ――マァ、ソレハ名案ダワ！ ヤルジャナイ、トッパイ様！（ナデナデ） 何かに目覚めた兜 エ、エヘヘ……ソレホドデモ……♪ メイド兜 ソウト決マレバ、早速行動ニ移シマショ！ 逃走劇ハココマデヨ！ 何かに目覚めた兜 ウ、ウン……ソウダネ！ ―――― 殿 …………！ 多田野きつね はぁ、はぁ……やっと、追い詰めましたよ……。 ＤＭＭ城 逃げ回るのも、ここまで……さぁ、観念しなさい！ 何かに目覚めた兜 …………。 メイド兜 観念ナンテアリ得ナイワ。メイド道ヲ歩ム以上、 ゴ主人様ヲ守リ抜クコトヲ、諦メルワケニハイカナイモノ。 メイド兜 ソレニ……マダ、 アタシタチハ追イ詰メラレテナンカイナイ……！ 千狐 な……なんですって？ メイド兜 ――今ヨッ、メイド部隊！　デアエ、デアエ～！！ メイド兜軍団 ――ザザッ！ メイド兜軍団 ――ザザッ！！　ザザザッ！！ 殿 …………！ やくも すごい数のめいどさんだに……！ ＤＭＭ城 待ち伏せ……！？ 千狐 ですが、千狐たちの優勢であることに間違いはありません！ このまま押し切ってしまいましょう！ ＤＭＭ城 うん、そうだよねっ！　じゃ殿、すぐ出陣しよ！ 殿 …………！
後半
何かに目覚めた兜 ――ヨシッ！　目的ハ完遂シタ！ 撤退スルヨ、桃形チャン！ メイド兜軍団 撤退ッ！　撤退ッ！　撤退ッ！ 殿 …………！ ＤＭＭ城 あれ、逃げ始めた？ 逃走は諦めたと思ったのに……また？ やくも どうせ、ＤＭＭ城に恐れをなして尻尾をまいたんだに！ ほら、千狐も『やくもの言う通りなの～』って頷いてるがや！ やくも …………。 やくも ……ん？　千狐？ 殿 …………。 殿 …………！？ やくも あれ……あれっ、あれあれ！？ やくも おらんだに！ 千狐の姿が、どこにも見えんだに～！？ ＤＭＭ城 …………。 ＤＭＭ城 ち、ちょっと待って……。 ＤＭＭ城 ……せ、千狐ちゃんだけじゃない。 きつねちゃんも居なくなってる……！？ ＤＭＭ城 まさか……これが兜たちの狙いだったっていうの？ 殿 …………！ ＤＭＭ城 か・ぶ・とめぇ～……どうやら、 私を怒らせる術は充分に心得てるみたいね……！ やくも お、おおお落ち着くだにＤＭＭ城。 ここは冷静に次の策を……。 ＤＭＭ城 やくもちゃんこそ落ち着いて！　大丈夫、ノープロブレムよ！ 殿 …………。 ＤＭＭ城 殿の言う通り！　私たちの目的はハッキリしてる……！ ＤＭＭ城 さっきと同じく、兜を追うことだけを考えましょう。 ……すなわち、全力ダッシュよ！ 殿 …………！ ＤＭＭ城 では、しゅっぱ～っつ！

幻想戯る夢高座 -絶-

兜の画策により千狐、多田野きつねと分断され、
激しく動揺する一行。果たして彼らは兜を下し、
平穏を勝ち取ることができるのか……！

前半
殿たちが千狐、多田野きつねの不在に気づき、 猛然と兜の追走を行っている頃―― 多田野きつね …………。 メイド兜 …………。 千狐 …………。 多田野きつね なんなんですか、ずっと黙りこくって。 ……いい加減、何か言ったらどうです？ 何かに目覚めた兜 …………。 何かに目覚めた兜 ……イ、イヤ。 真ッ直グニ見ツメテクルカラ、緊張シチャッテ。 メイド兜 チョット、浮気デスカトッパイ様！？ 千狐 …………。 千狐 ……何が狙いですか。 私たちを捕らえて……何をしようというのです？ 何かに目覚めた兜 フフ……フフフ。 オレハネ、キミタチノコトヲヨク知ッテルンダ……。 多田野きつね え、私たちのことを……？ 何かに目覚めた兜 狐トハ古来ヨリ、社ト縁ヲ持ツ生キ物。 ソノ耳ト尻尾ヲ持チ、和装ヲマトッテイレバ……、 導キ出サレル答エハ、タダ一ツ。 何かに目覚めた兜 キミタチハ聖ナルチカラヲ備エテイテ、 アノ城娘ニ力ヲ与エテイタ……ソウダロウ？ メイド兜 スゴイッ！　博識ナノネ、トッパイ様♪ 何かに目覚めた兜 エヘヘ、漫画トアニメデチョコットカジッタダケノ知識サ……。 千狐 よ、よくわからない理屈だけど、 あながち的外れでもないの……！ 何かに目覚めた兜 今頃、奴ラハ慌テフタメイテイルダロウ……。 何かに目覚めた兜 ……ダガ、モウ遅イ！ 奴ラノ戦力ハ大キク削ガレタノダ！ メイド兜 ソシテ、アタシタチノ勝利モ、 大キク近ヅイタッテ寸法ネ、トッパイ様♪ 何かに目覚めた兜 ウ、ウンッ！ コレデキミノコトモ守レルハズダヨ、桃形チャン！ 何かに目覚めた兜 ……ソレニシテモ、ナンテ愛クルシインダロウ。 モコモコモフモフノ耳ニ……尻尾。 何かに目覚めた兜 フフ、フフフ……チョットクライナラ触ッテモ、 罰ハアタラナイヨネ……？ 千狐 ……っ！ メイド兜 ダメヨ、トッパイ様！　コノ耳モ尻尾モ、 貴方ノ心ヲ惹キ付ケルタメノ武器ナンダカラ！ メイド兜 アタシノゴ主人様ヲ誘惑スルトハ、 マッタク……ナンテ邪ナ女ナノ！ 多田野きつね （メイド服姿の貴方が言える台詞ではないと思うのですが……） 何かに目覚めた兜 イ、イイジャン……ソンナコト言ワナイデサ、 チョコット触ルダケダカラ……ハァ、ハァ。 多田野きつね やっ……いやっ！　近づかないでください！ ？？？ ――そこまでよっ！ 殿 …………！ やくも ひーろー見参だに～！ 千狐 やくも……！ やくも 千狐もきつねさんも！　これ以上は傷つけさせんがや！ うちを怒らせたこと、こーかいさせてやるだに～！ ＤＭＭ城 きつねちゃん、無事っ！？ 多田野きつね ぅ……ＤＭＭ城さん……。 ＤＭＭ城 待たせてごめんね、きつねちゃん。 でも、もう安心よ。すぐに迎えにいくから、そこで待っててね！ やくも ……ＤＭＭ城、身体の方は大丈夫だに？ さっきから連続して兜とぶつかっとるけど……？ ＤＭＭ城 ありがと、やくもちゃん。でも……大丈夫。 ＤＭＭ城 ここまで、何度か城娘として兜と向き合ってきて、 だんだん分かってきたの。城娘の力が、どういうものなのか……。 ＤＭＭ城 最初は『私たちの世界を守りたい』っていう、 殿たちの願いを受けて―― ＤＭＭ城 その次は『傷ついたきつねちゃんを守りたい』 『この街を守りたい』っていう思いが高まって―― ＤＭＭ城 つまり城娘っていうのは、 人々の願いや、内なる意志……それらを力に換える存在なんだよね。 多田野きつね ＤＭＭ城さん……！ ＤＭＭ城 今なら……できるよ。 ＤＭＭ城 きつねちゃんや殿たちの願いも、 私の『守りたい』っていう意志も……全部！ 自分の力に換えて、兜と対峙できる！ 殿 …………。 ＤＭＭ城 ……お願い、殿！　私に力を貸して！ ＤＭＭ城 この空間を打ち払って……私たちの世界を守るためにも！
後半
メイド兜 ソンナ……アタシノ、アタシノメイド道ガァ……！ メイド兜 イヤアアアァァァァァァァ……！！ 千狐 この空間を満たしていた兜の力が、消え失せていく……。 千狐 やりましたね殿、ＤＭＭ城さんっ！ これで皆さんの世界も守られますよ♪ 殿 …………！ ＤＭＭ城 大丈夫、きつねちゃんっ！？ あのヘンなのにヘンなことされなかった？ 多田野きつね はい……怖かったですけど、ＤＭＭ城さんが、 助けに来てくれたお陰で……何事もなく……。 ＤＭＭ城 良かったぁ。私としたことが、 きつねちゃんに迫る危機を見逃すなんて……！ もう、絶対絶対離さないからね、きつねちゃん！ やくも 千狐も無事で良かったがや。 ……きっと無事やろうとは思っとったけど、 もしものことがあったらって―― 千狐 …………。 やくも ――だに？　どうしたがや、千狐？ えらく真面目な顔をしとるけど……。 殿 …………？ 千狐 皆さん……どうやら、 勝利を喜んでいる余裕はないようです。 ＤＭＭ城 え……どういうこと？ 千狐 先程まで安定を保っていたこの空間が、 急激に失われています……。 千狐 当初、千狐はこの空間について、 兜の瘴気によるものでは……と推測しましたが、 その見立ては正しかったようです。 ＤＭＭ城 ……ってことは、 まさかこの空間が……無くなっちゃう？ やくも た、大変だにっ！　ここが無くなったら、 うちらはいったいどうなるがやっ！？ 千狐 考えたくもないわ！ ……皆さん、千狐の身体に掴まってください！ すぐに脱出します！ 殿 …………！ やくも し、承知だにっ！（がしっ） 千狐 コッ――！？　尻尾は掴んじゃだめなのぉーーー！！ 多田野きつね えっと……私は、どうすれば……？ ＤＭＭ城 よくわかんないけど……。 千狐ちゃんにがばっと掴まればいいんだよね？ ほらほら、きつねちゃんもっ……え～い♪ やくも ……千狐、脱出！　すぐに脱出するがや！ 千狐 ――はっ、そうだったわ！　それでは……！ 千狐 ――コンッ！　秘技・時空転移術なのぉーーーー！！ ―― ―――― 殿 …………。 殿 …………？ 多田野きつね 皆さん、無事ですね……ですが、ここは……？ ＤＭＭ城 わぁ……きれい♪ のどかな風景が、ずーっと向こうまで広がってる……。 やくも ん～……？　なんだかここ、 うちらの所領によく似とる気がするんやけど……千狐？ 千狐 …………ええと。 千狐 ご、ごめんなさい。勢い余って、 千狐たちの世界まで転移してしまったみたいなの……。 やくも なにをしとるがやっ！？ ＤＭＭ城たちまで連れてきてしまっとるだにっ！ 千狐 仕方ないじゃない、余裕がなかったんだもの……！ ＤＭＭ城 …………。 ＤＭＭ城 ふふ、そんなに慌てることはないんじゃない？ やくもちゃん、千狐ちゃん。 やくも だに……？ ＤＭＭ城 私ね……感じるの。 もう一つの世界の存在を、すぐ傍に。 ＤＭＭ城 だから大丈夫。千狐ちゃんの転移とか、 ちょっとしたきっかけがあれば、すぐに帰ることができるわ。 千狐 それは……確かに、ＤＭＭ城さんの仰る通りです。 二つの世界の繋がりは今、驚くほど安定しています……。 ＤＭＭ城 だけど……帰る前にね、 一つだけこの世界でやりたいことがあるの。 みんな……聞いてくれるかな？ 多田野きつね やりたいこと？　それはいったい……？ ＤＭＭ城 それはね……。 ＤＭＭ城デビュー記念、ファーストライブの開催よ♪ 千狐 ふぁーすとらいぶ……？ ＤＭＭ城 今回の一件で、殿たちにはいっぱいお世話になったよね。 ＤＭＭ城 みんなが居なかったらきっと、 乗り切ることはできなかった……。 本当に……本当に感謝してる。 ＤＭＭ城 だからね、どうしても私から恩返しがしたいって思ったの！ 多田野きつね それで……此地でライブを……。 ＤＭＭ城 うんっ！ それが私からこの世界にできる、 一番の恩返しになるかなって！ ＤＭＭ城 この世界には、アイドル活動を行ってる城娘が居る。 ……やくもちゃん、そう言ってたよね！ ＤＭＭ城 その話を聞いた時から思ってたの。 私が最高のパフォーマンスを見せて、 殿たちの世界の人に喜んでもらえたら最高じゃない、って！ 多田野きつね ＤＭＭ城さん……！ 多田野きつね 良い案です……きっと、みんな喜んでくれると思います！ 私にできることなら何でもしますよっ！ 必ず成功させましょうね♪ ＤＭＭ城 うん……よろしくね、きつねちゃん♪ 千狐 千狐もお手伝いします！ 神娘たちの協力を仰げば、あっという間なの♪ やくも それじゃうちは所領中を回って、お客さんを集めるだに～♪ 殿 …………♪ ＤＭＭ城 ありがとう……ありがとう、みんな！ ＤＭＭ城 この世界で、一人でも多くの人に喜んでもらえるように。 それから……ＤＭＭ城という城娘が、みんなの記憶に刻まれるように。 私……頑張るから！ ――開催されたＤＭＭ城のライブには、多くの民や城娘が集まった。 大盛況のうちに幕引きとなったそのライブは、 ＤＭＭ城、多田野きつねが帰還した後も語り草となり、 各地で噂として広まっていった。 それから時が流れても……多くの者たちは、 ＤＭＭ城のライブが再び開催されることを、 心待ちにし続けている。 その後、二つの世界は分かたれてしまったが、 殿たちは今も……心から信じている。 ＤＭＭ城が与えた感動が……、 彼女との再会を求める皆の願いが、いつかまた……、 二つの世界を結んでくれるはずだ、と――

夏の浜でも、おんすてーじ♪

次代を担う新人アイドル城娘二人の遭遇。
頂点を目指す以上、衝突は避けられない……。
二人の熱き想いが波乱の幕開けを告げる……！？

前半
――備後国、三原城。 祭りと言えば……夏。 夏と言えば……三原城。 ……三原城の御城では今年も、 賑やかな祭りが開かれようとしていた。 中でも一番の目玉が、 アイドル城娘を招いての盛大なライブ。 ……だったはずなのだが―― 三原城 ああ……大変なことになってしまいました。 三原は……三原は、どうすれば……！ 肥前名護屋城 ……ふんっ。 DMM城 え、えーっとぉ……。 ――肥前名護屋城と、DMM城。 次代を担う、新人アイドル城娘の邂逅。 それはすなわち、波乱の幕開けを意味していた……！ どちらが上で、どちらが下か……。 一度出会えば争うことは避けられない。 それがアイドル城娘の背負った宿命なのだから……！ 肥前名護屋城 ちょっと……ちょっと。 千賀地氏城 ――かくして、 今後長きに渡って繰り広げられることとなる、 アイドル城娘戦国時代の火蓋が切って落とされることに―― 肥前名護屋城 ――ねぇってば！ さっきから一人で何を言ってるのよ、千賀地氏城。 千賀地氏城 ……えへへ。 こうした方が雰囲気が出るかなー、ってね。 なんかピリピリした空気だったしさぁ。 肥前名護屋城 ……ピリピリもするわよ、それは。 新人のアイドル城娘が目の前に現れたんだもの……。 DMM城 …………。 DMM城 ……はじめまして、DMM城でーす♪ よ、よろしくねー？ 肥前名護屋城 （……この子が噂のDMM城。 　日の本でライブを開いたって話は、 　聞いたけど……どんなパフォーマンスをするのかしら） 肥前名護屋城 （……とにかく。 　見くびられないようにしなきゃ。 　先輩としての風格を見せつけるのよ……！） DMM城 ……あ、あれー？ 聞こえてないのかな～……？ DMM城 ねぇ……三原城ちゃん、三原城ちゃん。 ちょっと耳を貸してくれる……？ 三原城 は、はい……？ DMM城 肥前名護屋城ちゃんは、 どうしてあんなに私のことを睨んでるのかな？ DMM城 まるで私のことを、敵視してるみたいな……。 三原城 ま、正しくその通り……！ 肥前名護屋城さんは、DMM城さんのことを敵視しているのです！ 同じあいどる城娘として！ DMM城 あー、やっぱり……？ まぁ、同じアイドル城娘だもんね。 そんなこともあるか……。 三原城 すみません……。 三原が偶然知り合ったDMM城さんを、 お招きしたばかりに……。 DMM城 んーん、謝ることなんか全然！ それに原因も分かったし！　だったら話は早いよ♪ 三原城 おお……まさか、この状況を打破する名案が？ DMM城 うんっ！　ライブを開いて、 私のパフォーマンスを見てもらうの！ 三原城 ら、らいぶ……ですか？ DMM城 アイドル城娘同士なら、言葉じゃなくて実力で語り合うもの！ DMM城 ステージに立つ姿を見てもらえば、 肥前名護屋城ちゃんにも、認めてもらえるはずだよっ！ 三原城 そ、そんなに上手くいくでしょうか……？ DMM城 悩むのは後回し後回しっ♪ ステージは～、っと……おお、あの櫓の上が良さそう！ それじゃ行ってくるね、三原城ちゃん♪
合戦中
DMM城 あーあー、マイクテス……マイクテス……。 ……うん、準備はこれでオッケー♪ DMM城 それじゃいくよ！ DMM城……おんすてーじっ♪ DMM城 はぁ、はぁ……出し切ったぁ。 自分でも百点満点をあげたいくらい……！ DMM城 私の歌と踊り……届いたかな。 この世界に生きる人たちに……。
後半
肥前名護屋城 （すごいわ……。 　これが噂に名高い、DMM城のパフォーマンス……！） DMM城 どうだった、かな……？ 肥前名護屋城ちゃんにも、楽しんでもらえた……よね？ 肥前名護屋城 ま、まぁ……悪くないんじゃない？ 肥前名護屋城 あたしに勝るとも劣らない、と言ってもいいわ。 ギリギリのギリだけど……。 DMM城 もー♪　素直じゃないんだから、 肥前名護屋城ちゃんは♪ 千賀地氏城 ほんとにねー♪ DMM城ちゃんのこと、ほんとは認めてる癖に♪ 肥前名護屋城 んなっ！　どうして分かるのよ！？ 千賀地氏城 だって肥前名護屋城ちゃん、 DMM城ちゃんのライブに、夢中になってたもん！ 曲のリズムに合わせて、身体が揺れちゃってたし♪ DMM城 だよねっ♪　ライブ中には、私と何度も目が合ってたし！ 三原城 三原も、この目で確かに捉えましたよ！ 肥前名護屋城さんが、ノリノリに乗っていらっしゃる姿を！ 肥前名護屋城 ぅ……ぅぐ……。 肥前名護屋城 ……わ、悪かったわよ。 正直に言うと……あなたのパフォーマンス、 すっごく良かったわ……。 DMM城 ふふっ、やった♪ やっと肥前名護屋城ちゃんに認めてもらえたよぉ♪ 肥前名護屋城 それに、凄く驚いた……。 曲も、ダンスも……こっちのアイドル城娘は、 やってないようなことばかりだったし……。 DMM城 そっかそっか。 こっちとあっちじゃ、パフォーマンスの内容も、 全然違ってくるもんね。 DMM城 あ……そうだっ！ それじゃさ、私と肥前名護屋城ちゃんで、 お互いの曲を教え合おうよ♪ DMM城 帰るまでの間に、一緒に踊れるようになったら嬉しいな♪ 私の曲と、肥前名護屋城ちゃんの曲を、 二人でデュエットしたら……もっと素敵になると思わない？ 肥前名護屋城 あたしとあなたの曲を……二人で？ DMM城 せっかくお友達になれたんだもん！ アイドル城娘同士、一緒に高めあっていけたら最高じゃない？ 肥前名護屋城 お、お友達……！ ……友達。アイドルという、 過酷な世界で生きることを決めた肥前名護屋城にとって、 それは……遠い昔に捨ててきたはずのものだった。 千賀地氏城 しかし……彼女の胸の内で、 脈打つようなトキメキが生まれたのは、 疑いようのない事実であり―― 肥前名護屋城 だーかーらー！ 勝手にナレーションを付けるのはやめなさいってばー！ 千賀地氏城 あははっ♪　ごめんなさーい♪ 肥前名護屋城 ……こほん。 肥前名護屋城 でも……そうね。 あなたと一緒に踊れたら、 っていうのは……悪くない話かもね。 肥前名護屋城 同じアイドル城娘として、 あなたのことは認めてる……それに―― 肥前名護屋城 ――あ、あなたみたいな子……嫌いじゃないし。 DMM城 …………！ DMM城 うんうんっ♪ 私も大好きだよ、肥前名護屋城ちゃんのこと！ 肥前名護屋城 だ、大好き……！？ あたしはそこまで言ってないけど―― DMM城 それじゃ次は、二人でステージに立とっ！ 夏の浜辺を二人で盛り上げるの……いいでしょっ♪ 肥前名護屋城 ち、ちょっと……引っ張らないでよ……！ そんなに急がなくても、ステージは逃げないでしょ！ DMM城 ふふっ♪　少しでも早く、 肥前名護屋城ちゃんと踊りたい気分なのっ！ ほーらっ、急いで急いで♪

みなさん おまたせ、おんすてーじ♪

異様な熱気に包まれたライブ会場……新曲を
引っ提げて再び姿を現したあのアイドル城娘が
全ユーザーちゃんの視線を釘付けにする……！？

前半
――日の本の某所、とある御城の城下町。 ライブイベントを 目前に控えた今……此地は異様な熱気に包まれていた……！ ざわざわ、ざわざわ……。 肥前名護屋城 ええと……楽屋はこっちだったわよね。 本日の主役はどこかしら、っと―― DMM城 …………。 肥前名護屋城 …………？ 肥前名護屋城 ちょっとDMM城？　なにぼーっとしてんの？ 今をときめくスーパーアイドルが会いに来てあげたんだけど？ DMM城 ……あ、肥前名護屋城ちゃん。 来てたんだ……。 肥前名護屋城 ライブ直前だってのに、 なに神妙な顔しちゃってんのよ……あんたらしくもない。 肥前名護屋城 緊張するような質じゃないでしょ、あんた？ DMM城 …………。 DMM城 実は結構緊張しちゃってます……とか言ったら、どうする？ 肥前名護屋城 …………。 肥前名護屋城 ……ふん。あり得ないわね、そんなこと。 DMM城 ……え？ 肥前名護屋城 仮にもDMM城は、あたしが認めたライバルなのよ。 そんな子が、緊張なんかに負けるはずがないわ。 肥前名護屋城 緊張も不安も、全部跳ね除けて……。 ステージの上では最高のパフォーマンスを見せてくれるわ。 DMM城なら……きっとね。 DMM城 ……そっか。 DMM城 そこまで期待されちゃ、 私もかっこ悪いとこを見せるわけにはいかないね。 DMM城 肥前名護屋城はほんっとに、 照れ隠しが下手なんだから……もう。 肥前名護屋城 ……は？ DMM城 そんな言い方したって、心配してくれてるのバレバレだよ？ わざわざ楽屋まで足を運んでくれてるんだもん……そうでしょ？ 肥前名護屋城 ――は、はぁっ！？ そんなわけないじゃない、ばかじゃないの！？ 肥前名護屋城 こ、これは敵情視察よ、敵情視察！ ライバルの最新の情報を掴むためなんだから――！ DMM城 分かった分かった♪ 私も大好きだよ、肥前名護屋城ちゃんのこと！ 肥前名護屋城 話を聞けー！ ―――― 時を同じくして。殿一行は―― 殿 …………。 やくも だにぃ……DMM城のらいぶはまーだ始まらんがや？ 千狐 もう間もなくのはずだけど……なにやら物々しい雰囲気ね……。 立花山城 ええ……まるで、 戦が始まる間際のような……。 ？？？ ……なるほど。 それは存外、的を射た表現かもしれませんね。 殿 …………？ 柳川城 ん……？ ？？？ 貴方がたが感じた、異様な熱気……。 それは一重に、DMM城ちゃんというあいどる城娘が持つ、 『特殊な性質』のためでしょうね。 やくも （聞いてもないのに、突然話し始めよったがや……） 千狐 （――しっ。ここは黙って見守りましょう……） 殿 …………？ 柳川城 ……貴方は？ 通りすがりのファン ……通りすがりのふぁんです。 立花山城 ふぅん……それで？ DMM城の『特殊な性質』というのはどういうことかしら？ 通りすがりのファン DMM城ちゃんのこれまでの活動は、神出鬼没。 らいぶは事前の告知も無く開催され、 狙ってそこに居合わせることは不可能に等しい。 通りすがりのファン なのに、そのパフォーマンスを見たものは、誰もが彼女を絶賛する。 そんな状況で評判だけが独り歩きすれば、 どうなるか……分かりますか？ 殿 …………。 千狐 …………。 柳川城 （えぇと、この沈黙は……。 　誰かが答えなければならないのでしょうか……？） 立花山城 …………。 立花山城 想像するに……ふぁんの期待ばかりが膨らんでいくでしょうね。 通りすがりのファン ――その通りっ！　圧倒的な需要過多、供給不足！ 誰もがDMM城ちゃんとの再会を渇望するが、きっかけがまるで掴めない！ 日の本全土に広がる、DMM城ロス現象！！ 通りすがりのファン そのような状況で幸運にも、 DMM城ちゃんのすてーじが見られるとなれば――！ 千狐 ――観客たちの興奮の程は推して知るべし、ということですね。 やくも ほー……なるほど、納得したがや。 教えてくれてありがとだに！ 通りすがりのファン ……大したことではありません。 この会場に居るものは皆、同志ですから。 殿 …………。 柳川城 あの……つかぬことを伺いますが……。 柳川城 貴方……小峯城さん、ですよね？ 通りすがりのファン？ …………っ！？ 通りすがりのファン？ …………。 通りすがりのファン？ いえ……違いますよ？ 殿 …………。 立花山城 （……これ以上は追求しないでおきましょう） 柳川城 （……そうですね。 　小峯城さんにも事情がおありのようですし――） 殿 …………！ やくも おお、あそこっ！！　DMM城が姿を現したがやっ！ DMM城 みーんなー！　今日は来てくれてありがと～っ！！ 観客たち わああぁぁぁああああああ！！ ファン DMM城チャーン、俺ダー！ 結婚シテクレー！ ファン イヤ僕ダー！　嫁グナラウチニ頼ムー！ 観客たち DMM城ちゃーん！！ 柳川城 あの……平然と兜が混じっているのですが……。 殿 …………。 千狐 すごい声援です……！ DMM城さんの登場をきっかけに、 観客たちの熱気が高まっていくの……！ やくも 予想はしとったことやけど、 ちょっと異常な勢いだに……！？ 立花山城 DMM城の舞に呼応するように、観客たちの熱が……。 まさかこれは……彼女の力が……？ 通りすがりのファン？ ……まずいな。 彼女の城娘としての力が、 予期せぬ形で作用しているようだ……！ 通りすがりのファン？ 騒ぎが広がる前にふぁんを静めないと、手遅れになってしまう！ ――力を貸してくれるか！　柳川城、立花山城っ！ 柳川城 ――承知しました！　殿、ご下知を願いますっ！
合戦中
立花山城 あの観客たち……DMM城の舞によって、 とんでもない力を得ているみたいね……。 やくも まともに一発食らったら、ただじゃ済まないだに……！ 柳川城 ……これは策を練る必要がありそうですね。 手が届かないところから 一方的に退けられれば良いのですが……。 柳川城 やりました……やりましたよ、小峯城さん！ ――って、あれ？　小峯城さんの姿が見えませんが……？ 立花山城 彼女なら、さっさとすてーじの方へ向かっていったわよ。 『ふぁんを静めたのなら、本来の役目に戻る』って。 殿 …………。
後半
柳川城 力を貸していただきありがとうございました、小峯城さん！ 小峯城？ ……ふ、礼は不要です。 私はただ、あいどる城娘に憧れる者としての矜持を―― 小峯城？ ――こほん。は、はて……小峯城とは誰のことでしょう？ 立花山城 ま、まだそこは譲らないのね……。 小峯城？ 此度の主役はDMM城ちゃんです……。 仮に小峯城とやらがここに居たとしても、わざわざ名乗りをあげて、 水を差すような真似はしないと思いますよ？ 小峯城？ ということで……これ以上の会話は不要です。 今はすてーじの様子に集中してください。 小峯城？ DMM城ちゃんも、それを望んでいるはず……！ 殿 …………。 立花山城 なんというか、大変ね……ふぁんというのも。 DMM城 はぁ、はぁ……それじゃ次はお待ちかね！ 今日のために用意してきた、新ナンバーだよ！ DMM城 それじゃ聞いてください……『Do♪More！More！』！！ 観客たち わああああぁぁぁぁあああ！！ ―――― ――その後。 ライブを終えた後の帰り道……。 DMM城 ふぅ……つっかれたぁ……。 柳川城 ……大丈夫ですか、DMM城さん？ DMM城 んー、肥前名護屋城ちゃんが支えてくれるお陰で、どうにか……。 肥前名護屋城 もう、寄っかからないでちゃんと歩きなさいよ……。 DMM城 冷たいこと言わないでよ、肥前名護屋城ちゃん。 みんなの前だからって恥ずかしがらないで、 さっきみたいに優しくしてぇ……。 千狐 さっきみたいに……優しく……？ DMM城 ちょっと！　誤解されるようなこと言わないでよっ！？ 立花山城 ふふっ。なんだかんだ言ってるけど、 貴方も結構、面倒見が良いわよね。 やくも だに！　てっきり、 お高くとまってばかりだと思ってたがや！ 肥前名護屋城 ぅぐぐ……これまで積み上げてきたイメージが……。 柳川城 ……なんにせよ、 盛況のうちにらいぶを終えられて良かったですね。 立花山城 ええ……観客たちの興奮といったら、 暴動と見紛うほどの勢いだったものね……。 殿 …………。 DMM城 あ……そうだっ、ライブ！ さっきの件、お礼を言い忘れてたよ！ DMM城 ライブの最中……、 盛り上がりすぎちゃったお客さんたちを、 静めてくれたんだよね？ DMM城 お陰で最後までライブをやりきることができたよ……。 ほんっとにありがとね、殿！ 殿 …………！ DMM城 ……あ、だけどね！ DMM城のサクセスストーリーはまだまだ続くんだよ！ DMM城 みんながあっと驚いて、 心打たれて感動するようなパフォーマンスを、 じゃんじゃか見せていきたいの！ 肥前名護屋城 ……あんたも相変わらずよね。 能天気っていうか、素直っていうか。 いっつも前ばっかり向いて、突き進んでいっちゃうんだから……。 DMM城 とーぜん！　それが私、DMM城のスローガンですから！ DMM城 なんでもやります、やっちゃいます！ 可能性を感じたら、迷わずアクセル全開だよ！ DMM城 だから殿、これからも私から目を離さないでね！ でないと、次の時代に乗り遅れちゃうよ♪ 殿 …………！

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