ストーリーテキスト/2-8_薩摩隼人の覚悟

2-8 薩摩隼人の覚悟

玉陵の様子をうかがう殿たちの前に、再び
島津義弘率いる薩摩の城娘たちが姿を現す。彼女たちへ
改めて協力を願い出た首里城は、以前に言われたこと
――薩摩の流儀で覚悟を示す決意を固める。

前半
――玉陵（たまうどぅん）。 勝連城 見えた……あれが玉陵さぁ。 殿 …………。 柳川城 話によれば『王家の陵墓』なのですよね？ 古墳のようなものを想像していましたが、 半ば石の要塞ですね……すごいです。 玉城城 それだけ私たちにとって、お墓――ようはご先祖様は、 大事に守らなければならないものなの。 それも、王家のご先祖ともなれば……ね。 マジムン …………。 千狐 ものすごい数のマジムンです！ 彼らも琉球の守護霊であるならば、 玉陵は守るべき重要な場所なのでしょう。 勝連城 だからこそ、わったーが取り返す意味がある。 それに、寝ぼけたマジムンに 墓守を任せるわけにもいかないさ。 勝連城 おちおち永眠もできやしない……。 中城城 いや、死なないでよそこは！？ 勝連城 うふふ……死にかけジョークさぁ。 中城城 あ、相変わらず笑えない……。 ？？？ ――お～い！ 黒船 サスケハナ む……この声は。 安宅船 日本丸 お～い、どうやら宴にゃ間に合ったようだな。 甘崎城 ほら、やっぱりなんだかんだで海を回ったほうが早かったのです！ 柳川城 日本丸さんに甘崎城さん！ 良かった……ご無事だったんですね！ 安宅船 日本丸 あたしらがそう簡単に沈むタマかよってんだ。 三重城の読みもドンピシャだったな。 甘崎城 頭に変な声が響いた後に『首里に向かうなら、きっとみんな玉陵に寄る』 って、助言をもらったのです。 そしたら殿さまたちに出会えるなんて！ 首里城 みーちゃんが……うん、だって、みんなにとって大事な場所だから。 それで、他のみんなは？ 安宅船 日本丸 本島に来てから、手分けしてマジムン退治をやってたからな。 今、大宮丸が仲間を集めてこっちに向かってるぜ。 あたしらは、それを伝えに来たってわけだ。 殿 …………！ 安宅船 日本丸 大したことはねぇよ。 それより、なんで昇平丸も一緒なんだ？ 帆船 昇平丸 あたしのこと？ それはもう、海よりも広くて深い事情が―― 黒船 サスケハナ 待て……空から何か来る！ 黒船 ミシシッピ まっすぐに玉陵へ……あれは、砲弾ですか？ 帆船 昇平丸 違う！！　あれはたぶん―― ――ズドォォォォォォン！！！ 千狐 な、『何か』が玉陵の中央に着弾しました！ すごい土煙なの……！ 島津義弘 ……まっこと、死ぬには良い日じゃ。 島津義弘 もっとも、勝って正義を示すは島津の方じゃ！ 柳川城 殿、島津義弘さんです！ 単騎でマジムンに戦いを仕掛けています！ 帆船 昇平丸 違うわよ！　よく見て！ 鹿児島城 さーて、お頭どんにいいところ全部持って行ってしまわれますわよ～。 岩剣城 わ、私はそれでも別に……。 内城 ……右に同じく。 佐土原城 それじゃあつまんないよ～！ わたしもマジムンと鬼ごっこする～♪ 立花山城 島津の突破力で散り散りになった敵を、 後続が各個撃破ってわけ……さすがの手際ね。 帆船 昇平丸 うわ……えぐっ。 外から見るとあんな感じなんだ、 あたしらの戦いって。 帆船 昇平丸 ……って、なんか見たことない子が増えてるわね。 荒神城 お茶碗に米粒ひとつでも残せば淑女の名折れ。 清く正しく根絶やしにしてさしあげます！ 甘崎城 あ……あれ？ 黒船 サスケハナ 甘崎城、どうかしたのか？ 甘崎城 あ……ああああぁぁぁぁぁぁ！？ 甘崎城 い、妹！　あれ、わたしの妹です！ なんで！？　どーして！？ 千狐 い、言われてみれば確かに似ているような……。 中城城 えっと……ほっといたら全部やっつけちゃいそうな勢いだけど、 いいのかな？ 柳川城 か、加勢しましょう！ 玉陵を奪還するという目的は同じようですし……！ ――しばらくの後。 柳川城 殿、目につくマジムンはすべて撃退しました……が、 ここは首里城の目と鼻の先です。 警戒は怠らずに参ります。 殿 …………。 島津義弘 まさか、三度相まみえることになるとは、 まっこと面白か縁じゃ！ 鹿児島城 殿どんもみなさんも、ご無事で何よりですわ～。 柳川城 鹿児島城さんたちも、流石のお手並みでした。 甘崎城 こ、荒神城ちゃん！ どうしてここにいるのですか！？ 荒神城 あら、これはお姉様こと甘崎城ちゃんじゃありませんか。 『どうしてここに』なんていうのは、私の台詞です。 荒神城 勝手に領地を飛び出したかと思えば、 行き先も告げずに旅に出て…… 探しに出た私の身にもなってくれませんか？ 甘崎城 え、そ、それはその……『水軍城の大先輩』として、 海の異変にも敏感だったというか、なんというか。 荒神城 どうせ、面白そうだから飛び出していっただけでしょう。 そういうの全部わかるんですよ、姉妹なんですから。 甘崎城 む、むむむ……。 帆船 昇平丸 ねぇ、お頭、聞いて聞いて！ 殿たちがね、桜島の噴火を止めてくれたんだよ！ 島津義弘 なんじゃと？ 帆船 昇平丸 積もった灰は片づけないといけないけど…… でも、みんなで力を合わせればそう遠い未来の話じゃない！ だから、帰れるんだよ！　薩摩に！ 内城 そ、それは何という僥倖でしょう！ 岩剣城 本当に帰れるんですね……！？ 私、このままずっと琉球で生きていくことになるのかと……！ 首里城 桜島の異変は、地気の乱れが負の力に働いたためのものだったよ。 ユタの助言に従って、それを収めたのさ。 そして……琉球でもきっと、同じことが起こっているの。 首里城 マジムンたちは、そのせいで無理やり目覚めさせられてしまって、 寝ぼけて混乱している……だから、彼らを鎮めて、 もう一度ちゃんと、琉球の守護者としての役割を果たしてもらいたい。 首里城 そのために、スイたちは首里城を取り返したい。 だけど、マジムンと渡り合うにはスイたちにも仲間が必要だから…… 三度目の縁だって言うのなら、今度こそ、薩摩の力を貸して欲しい。 島津義弘 ……桜島を、薩摩を救ってくれたことには感謝しかなか。 ほんのこて、頭ん下がる思いじゃ。 島津義弘 首里奪還という目的は同じ。 薩摩は薩摩で戦う。おんしらはおんしらで戦う。 それで何の問題もなか。 首里城 それじゃあ、喧嘩別れみたいになっちゃう。 琉球の教えは『ゆい』の教え。 『ゆい』の先に、琉球と薩摩が共に歩む未来がある。 島津義弘 …………。 首里城 そのためならスイは、薩摩の教えにも従うよ。 みんながスイに託してくれた琉球のことだもの。 スイは、もう迷わない。 島津義弘 決着をつけよう……ちゅうことじゃな？ 首里城 ……うん。 殿 …………。 島津義弘 ……見届け人もおんなら、断る理由はなか。 ひとつ派手に、ぶちかましてやっど！！ 佐土原城 なに、なに、まだ終わりじゃないの？ やった～、もっと遊ぶ～♪ 荒神城 これは好都合です。 私たちが勝ったら、甘崎城ちゃんは伊予に帰ってもらいますよ。 甘崎城 えっ！？　そんないきなりですか！？ 荒神城 当然です！ 甘崎城ちゃんが御城にいなかったら、 いったい誰が私を守ってくれるんですか！？ 安宅船 日本丸 どんな理由だよ、そりゃ！？ 安宅船 日本丸 妹だろうがなんだろうが、 甘崎城には何だかんだで手を焼い――世話になってるんだ！ んな一方的な理由で頷けるかよ、なあ、甘崎城！？ 甘崎城 その通りなのです！ 水軍たるもの船の舵は自分で取るものなのです！ 甘崎城 あと、言いかけた言葉は聞かなかったことにします！ 大人ですので！ マジムン …………！ 鹿児島城 あらあら、ずいぶん賑やかになったせいか、 新手のマジムンも現れてしまいましたね～。 島津義弘 構わん。 まとめて薙ぎ払えばよか！ 島津義弘 薩摩の魂……この島津義弘が示すッ！！
合戦中
島津義弘 琉球の覚悟、この島津義弘が受け止める！ 柳川城 島津さん、これまでにない気迫です。 それに、見たことのないマジムンがちらほらと…… 本隊が近いことの表れでしょうか。 首里城 ここはスイ自身にとっても大事な場所。 先代王たちの前で、負けるわけにはいかないさ。 荒神城 さぁ、甘崎城ちゃん。 一緒に故郷へ帰りましょうね♪ 甘崎城 それを決めるのは、わたしです！ いくら荒神城ちゃんでも、それだけは譲れません！ 荒神城 あぁ……！？ だったら、少し痛い目を見ても仕方ねぇよなぁ！？ 安宅船 日本丸 （な、なんだあいつ……こえぇ……） 島津義弘 驚いたとは言わん。 おんしらが強いのは、よう知っちょる。 島津義弘 じゃから、全力で応じるが薩摩隼人の答え！ 受け切ってみせい、首里城！ 首里城 スイたちは、ここで折れるわけにはいかない！ 琉球の未来がかかっているんだから！！
後半
立花山城 柳川城、今よ！！ 柳川城 はああぁぁぁぁぁぁ！！！ 内城 流石は柳川城さんと立花山城さん……手強いっ！！ 鹿児島城 手伝いましょうか～？ 二人には二人で挑むべきですわ～！ 岩剣城 ……っ！？ 鹿児島城さん……あぶないっ！ ――ガギンッ！ 勝連城 わんの動きが見切られるとは……なかなかやるさーね。 岩剣城 い、いえ……影が薄い人がどの辺に居そうか、 私も自分のことみたいに分かるだけで……そんな。 佐土原城 岩剣城ちゃん、ずるい！ わたしもや～るっ！！ 中城城 そんな槌の一撃を喰らっちゃったら、 勝連城が死んじゃうでしょ～！！ 勝連城 それはたぶん、ジョークじゃなくてマジさ。 中城城 変なこと言ってないで、 この子は私に任せて首里城ちゃんの方を！ 安宅船 日本丸 そらそらそら、大盤振る舞いだ！ 全部持っていきやがれ！ 荒神城 うわぁぁぁぁぁん！ 甘崎城ちゃん、助けてよぉぉぉぉ！ 甘崎城 わっ、日本丸さん、流石にやりすぎなのです！ 安宅船 日本丸 えっ、そうか？ そ、そりゃ悪かったな―― 荒神城 うがあああぁぁぁぁぁ！ 二対一なんだから、ちょっとは空気読めや！！ このタコ助がああぁぁぁぁ！！！ 甘崎城 うわー！ 荒神城ちゃんがキレたー！？ 荒神城 沈め沈め沈めぇぇぇぇ！！ 安宅船 日本丸 な、なんだよあんた！ 別人みてーじゃねぇかよ！？ 甘崎城 荒神城ちゃんはキレると手が付けられないのです！ こうなったら覚悟を決めるしかないのです！！ 安宅船 日本丸 ちくしょう、どうなってもしらねぇからな！ 姉妹なんだからケツは持ってくれよ！？ 島津義弘 島津の戦にようついてくる！ これが、殿と琉球の底力か！ 島津義弘 じゃが、戦ならば薩摩は――島津は負けはせん！ ちぇすとぉぉぉぉぉぉ！！！ 首里城 ぐっ……！？ 玉城城 だ、大丈夫？ あんまーに何かできることある！？ 首里城 大丈夫……これは、スイの戦だから。 島津義弘 よか心意気じゃ。 おんしの魂ば見せてみぃ。 首里城 島津義弘……さん。 でも、スイは……。 島津義弘 ここまで来て臆すのか？ だったら、儂からいっど！ 首里城 臆したなんてことはない！ 琉球のためにするべきことを……スイは！ 首里城 やる、さあああぁぁぁぁぁぁぁ！！！！ 島津義弘 ……っ！？ 島津義弘 …………。 島津義弘 それまで……！ 儂の負けじゃ！ 首里城 えっ……？ 島津義弘 ……よかばい。 その国を背負う主君としての覚悟、 こん島津義弘が確かに受け取った。 島津義弘 おんしらは、ほんのこて強かね。 これ以上やったら互いに退くところを失って、 マジムンどころではなくなってしまう。 島津義弘 己の領地で一歩も引かんかった、琉球の勝ちじゃ。 外様は引き際ば弁えんと。 荒神城 えええぇぇぇぇぇ！！ それじゃあ、甘崎城ちゃんは！？ 島津義弘 それは自分らで何とかせい。 姉妹じゃろ。 荒神城 そ、そんなぁ……しゅん。 甘崎城 た、助かったのです……ほっ。 柳川城 それでは、薩摩のみなさんも首里奪還に力を貸してくださるのですね？ 鹿児島城 そう言うことになりますわ～。 う～ん、でももうちょっと上手くやれたような気もしますね～。 鹿児島城 柳川城ちゃん、また今度、やりましょうね～。 柳川城 は、はい……次は、お手柔らかにお願いします。 島津義弘 だが、本島についてから思ったより消耗してしもた。 昇平丸、補給物資は持ってきてくれたんじゃな？ 帆船 昇平丸 も、もちろん！ た～っぷり積んで来たわ！ 島津義弘 なら、薩摩は一度補給を済ませてから、 首里城にて合流する。 よかね？ 首里城 うん……ありがとう！ 黒船 サスケハナ ……結局、昇平丸は手を出さなかったな。 帆船 昇平丸 そ、そういうあんたたちだって。 あたしはその、どっちの味方にもなっちゃったから、 下手に手を出せないっていうか……。 黒船 ミシシッピ 日の本と琉球のことですから、 わたくしたちが手を出すことではありませんわ。 ねえ……サスケハナ。 黒船 サスケハナ ああ……手を出すべきではないのだ。 おそらくは、初めからずっと―― 帆船 昇平丸 …………？ ――しばらくの後。 柳川城 薩摩の方々は、行ってしまわれましたね。 首里城 でも、力を貸してくれるって約束してくれたから。 スイは、とっても頼もしいよ。 殿 …………？ 立花山城 そうね……今後のことを考えないと。 玉陵は確保したとはいえ、 決して安全な場所ではないわ。 立花山城 味方が到着次第、すぐにでも首里城へ出陣しないと。 浦添城 みんなぁぁぁぁぁぁ！！！ 殿 …………！？ 柳川城 あれは浦添城さん！？ 浦添城 た、大変だよぉ！ シーサーが……シーサーが……！ 首里城 ど、どうしたの？ おちついて？ 浦添城 シーサーが、動いたんだよぉぉぉぉぉ！！！ 首里城 ………………え？ 柳川城 あ、あの、浦添城さん……何が何だか、 私たちにはさっぱりなのですが―― ――ゾクッ！ 柳川城 ……っ！？ い、今の感覚は……！？ 千狐 お、おびただしい力を感じるの！ これは、桜島の時と同じ……！？ 千狐 とても近いです……場所はおそらく首里城！！ 首里城 ……いかなくちゃ！ スイは、首里を守らなくっちゃ！！ 柳川城 首里城さん、おひとりでは危険です！ 殿、私たちも参りましょう！！ 殿 …………！

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