ストーリーテキスト/2-7_悪霊の楽園

2-7 悪霊の楽園

いよいよ琉球本島へ足を踏み入れた殿たちだったが、
島はマジムンたちで溢れかえり、さながら悪霊の楽園
と化していた。合流した中城城から事情を聞いた
一行は、勝連城を助けに行くことにするが……。

前半
――琉球本島。 殿 …………。 柳川城 ついにたどり着きましたね。 琉球の本島に。 首里城 ここまで、ずいぶん長い旅だった気がするさ。 本当なら『めんそーれ』って歓迎したいところだけど。 玉城城 おもてなしはまた今度にしましょうね～。 黒船 サスケハナ まずは島の様子を確認しなければな。 桜島における『地気の乱れ』を正したことで、 琉球の異変も解決していれば良いが。 マジムン …………！ 立花山城 言ったそばから、熱烈なお出迎えのようだけど？ 帆船 昇平丸 というか、めちゃくちゃ多くない！？ 残党とかってレベルじゃないんだけど！ ？？？ はぁぁぁぁああああ！！！ マジムン …………！？ 首里城 中城城ちゃん！ 中城城 はいたい！ ……って、挨拶するのはあと、あと！ 中城城 この辺りは、ほとんどマジムンの縄張りだから、ついてきて！ 殿 …………！ ――どこかの集落。 中城城 ここなら大丈夫……今のところはね！ 中城城 あらためて、はいたい！ 無事に本島に戻ってこられて良かったさ！ 首里城 中城城ちゃん、さっきのマジムンたちは……？ 本島は今、どんな状況さ？ 中城城 この島は今、マジムンだらけさーね。 数日前まではこんなことなかったのに、 突然の大量発生でびっくりしたさー。 玉城城 そんな……桜島の地気を鎮めれば、 マジムンの発生も収まるはずだよね？ 千狐 ユタの見立てが間違っていたということなのでしょうか？ それとも別の原因が……？ 『突然』というのが気になります。 黒船 サスケハナ 日本丸たちが、他の城娘を連れて先に此の地へやってきたはずだが？ 中城城 こんな状況だから、みんな散り散りになって本島各地の救援に向かってるさ。 わんもこの後、向かわなくっちゃ。 黒船 ミシシッピ 『向かう』とは、どこへ？ 中城城 勝連城――この辺りで一番の、マジムンの巣窟さーね。 ――勝連城・近隣。 病弱な城娘 ……ケフッ、ケフッ。 あれ……わんの着物、いつの間に赤く…… 病弱な城娘 あ……これ、わんの血？ 久志弁柄みたいで綺麗さーね……ふふふ。 病弱な城娘 でも、まだ死ぬわけにはいかないさ。 琉球の平和をこの手に掴むまでは。 病弱な城娘 ねえ……スイ。 スイの創る未来なら、わんは喜んで骨をうずめる覚悟さーね。 ……今のところは。 立花山城 ここが勝連城……山がそのまま城になったような、 いわば天然の要塞ね。 中城城 気を付けてね。 今や地の利はマジムンたちにある。 ずっと昔から、琉球のことを知り尽くしているみたい。 玉城城 ほんとは守護霊なら、当たり前のことなのかもしれないさ。 きっと、私たち城娘が生まれるよりもずっと前から、 この島を守って来たんじゃないのかな？ 中城城 だけど、勝連城のことならわんも知り尽くしてる。 後れを取ることはないさ。 殿 …………？ 中城城 えっと……わんと勝連城って、昔はずっと敵対していたから。 攻めるために、構造から何から全部頭に叩き込んでて……。 中城城 そうやって琉球の未来のため、目と鼻の先でにらみ合って…… 最後に勝ったのは勝連城。 中城城 彼女の実力で言えば、当然の結果さ。 でも……あの子、何考えてるのか分からなくって、 今でもちょっと苦手さーね。 首里城 悪い子じゃない――と、思うけど。 みんなと同じくらい……下手したらそれ以上に、 琉球の未来を思っているのは本当だと思う。 中城城 あと、身体が丈夫じゃないから、それも心配で―― マジムン …………！ 柳川城 殿、マジムンです！ そしてあれは……与論島の時の女の子？ 病弱な城娘 あれ……力が上手く出ないさーね。 血ぃごーごー吐き過ぎた……？ 帆船 昇平丸 流石にあのままじゃまずいんじゃないの！？ 助けに行かなくっちゃ！ 中城城 あの子……いったい、何をやってるさーね！ 中城城 はぁぁぁぁああああ！！！ マジムン …………！？ 中城城 何をしてるさ、勝連城！ 自分の御城で良いようにやられて、 悔しくないさーね！？ 勝連城 中城城……何でここに？ 中城城 何でって、心配だからに決まってるさー！ わんのこと討った時の、あの気概はどうしたさーね！？ 王国に反旗を翻した麒麟児は！？ 黒船 サスケハナ 中城城、後ろだ！ マジムン …………！ 中城城 えっ、うそ、間に合わな―― ――ズバン！ マジムン …………！？！？ 中城城 えっ……あれ……？ 無事……？ 勝連城 麒麟児なんて……周りのみんなが言ってるだけさ。 わんはただの、琉球の未来を憂う、死にかけの城娘。 勝連城 だから、この身が朽ち果てるその時まで…… 国にとっての悪しきを成敗し続けるって決めたさーね。 中城城 勝連城……。 柳川城 い、今の……何にも見えませんでしたが、 あの方がやったのですか？ 首里城 うん……その身ひとつで圧政をくじき、 最後には首里すらも掴みかけた反逆の麒麟児―― 勝連城 わんこそが勝連城。 琉球に仇なす存在なら、どんな相手であっても―― 勝連城 ――その『ぬち』頂戴するさ。
合戦中
勝連城 ここはわんの御城。 マジムンの好きにはさせないさ。 中城城 あはは、調子が戻って来たのは良いことだね。 勝連城 スイ……大丈夫。 スイの琉球なら、わんは残りの『ぬち』をかけるかいがあるさ。 首里城 う、うん……ありがとう。 でも、ぬちどぅ宝だもの、でーじにね。 中城城 相変わらず何考えてるのかは分からない……。 勝連城 ――成敗。 柳川城 あ、あざやかなお手並みでした。 とても心強い味方が増えましたね、殿。 殿 …………♪
後半
勝連城 スイも、国王も、みんなありがとう。 おかげでわんの御城を取り戻し――ケフッ！ 勝連城 あ……血が。 柳川城 だ、大丈夫ですか！？ 変身しても、身体が弱いのは変わらないのですね……。 中城城 いきむのは良いけど、死なれるのは困るさーね。 勝連城 その時は、御嶽を通ってニライカナイから帰ってくるさーね。 勝連城 うふふ……死にかけジョークさぁ。 千狐 わ、笑えないですわ……。 勝連城 そう……御嶽。 御城を取り戻したのも、城内の御嶽を取り戻すためさ。 勝連城 わんたちにとって、御嶽は特別だから……仮に守護霊だと言われても、 他人の手に渡すわけにはいかないさーね。 ――否。 殿 …………！？ ――御嶽は琉球の礎にして歴史そのものである。 ――断じて外敵の手に渡して良いものではない。 立花山城 何……頭に、直接声が……。 玉城城 この感覚……マジムンたちのと、なんだか似ているかも。 首里城 まさか……マジムンの意識！？ ――我々に名など無い。 ――我々は全であり個であるがゆえに。 帆船 昇平丸 うう……頭の中に直接響いて、ちょっと気持ち悪い。 そしてなんか、気持ち、怒ってない？ 黒船 ミシシッピ 琉球の民が勝手につけたとはいえ、 『悪霊』呼びですし多少は……ですわね。 首里城 でも、話ができるのなら好都合さ。 スイたち、争うつもりはない。 もしも琉球の守護霊だというのなら、争う理由がないはずさ。 ――由ならばある。 首里城 え……？ ――我々が目覚めた。 ――それが由だ。 ――我々は琉球を守護する者。 ――我々が目覚めし時、それは琉球を守護する由があるということ。 柳川城 それは、桜島の噴火では……？ ――それは応であり否である。 ――かの島の異変もまた我々の目覚めの一助であるが、 ――もとより我々は目覚めるべくして目覚めたわけではない。 ――開くべき時ではない扉が開け放たれた。 ――本来であれば整うべき『気』のうねりが、 ――作意ある者の手で歪められた。 ――かの島と同じように。 千狐 それは……琉球の地気も乱されているということですか？ ――歪みの結果、我々は目覚めてしまった。 ――歪みはいずれ、如何なる災厄を島へ齎すものか分からない。 ――だから我々は守らねばならない。 ――まつろわぬモノの一切を排し、災厄から琉球を守るために。 黒船 サスケハナ …………。 首里城 教えて！ 琉球の地気の乱れはどこ！？ 首里城 スイたちも、琉球を守りたい気持ちは一緒さ！ 争う必要なんてない……一緒に、琉球を守ろう！？ ――――。 ――首里にて待つ。 中城城 ……あ……なんだか急に、頭が軽くなったみたい。 千狐 霊力を感じなくなりました……どうやら、声の主は去ったようです。 帆船 昇平丸 え……なに、マジムンって、あんな神様みたいなヤツだったの？ 勝連城 頭がガンガンする……ねえ、わんの頭、割れてない？ 磯の岩に落とした西瓜みたいに……。 玉城城 お～、よしよしよし。 大丈夫さ～、いっぱい詰まってる。 柳川城 声は『首里にて待つ』と言っていましたが……？ 首里城 首里城……一番最初に、マジムンが発生したところ。 そのせいで御城を追い出されてしまったから、 今はどうなっているのかスイにも分からないさーね。 中城城 もともとみんな、首里奪還のために準備は整えていたけれど、 今のあそこはもうマジムンの本拠地と言っていい場所さ。 中城城 島の各地に散ってる、皆の力が必要になる。 勝連城 首里を攻めるなら、足掛かりが必要さ。 守りは強固、闇雲に攻めても物量に押しつぶされるだけ。 首里城 勝連城なら……どう攻める？ 勝連城 …………。 勝連城 ……玉陵（たまうどぅん）をとる。 首里の目と鼻の先に、刃を突き付けるのさ。

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