？？？
……、く……ぅ……。 立花山城
酷い怪我だわ……すぐに手当てしないと……。 千狐
それなら千狐にお任せください！
力を注げば、応急処置程度はできるかと思いますので……！ 黒船の城娘
て……手当て？ 力を貸して……くれるのか？ 安宅船 日本丸
ったりめーだ！
放っておいておっ死んじまったら、
寝覚めが悪ぃだろう！ 安宅船 日本丸
分かったらお前も運ぶのを手伝いやがれ！
お前の仲間なんだろ、黒船！？ 黒船の城娘
あ、ああ……分かった……！ ―――― ざざー……ざざーん……。 殿
…………。 殿
…………？ ？？？
……皆さん、こちらにお揃いのようですね。 甘崎城
おおっ！？ 怪我はもう大丈夫なのですか？ ？？？
ええ、千狐さんの看病のお陰でだいぶ良くなったわ。
心配してくれてありがとう、可愛らしい城娘さん。 首里城
ほっ、何事も無かったみたいで安心したさー……。 三重城
うん……見つけた時はどうなることかと思ったよー……。 黒船の城娘
……まずは、礼を言わせてほしい。
彼女の命を救ってくれたこと……心から感謝する。 ？？？
……ありがとうございました、皆さん。 安宅船 日本丸
……んだよ。
これまでとは随分態度が違うじゃねーか。 鉄甲船 大宮丸
……日本丸ちゃん、そんなにツンツンしないの。 黒船の城娘
いや……お前たちの気持ちは……理解しているつもりだ。
これまでの私の態度を振り返れば、当然のこと。 黒船の城娘
だが……だというのにお前たちは、
彼女を――私の姉を、救ってくれた。 柳川城
姉……彼女が、貴方の……？ 黒船の城娘
皆の動きには、疑いも迷いも無かった。
どころか……彼女の命を盾に、取引を持ちかけることすらしなかった。
……私が逆の立場なら、迷わずその選択を選んだだろう。 黒船の城娘
お人好しな奴らだと思ってはいたが、
改めて、その真髄に触れたような気がする……。 立花山城
褒めてるんだか、けなしてるんだか……。 殿
…………。 柳川城
……ここまで胸中を明かしてくれるということは、
貴方たちの真意を聞かせていただけると思って……良いのですね？ 黒船の城娘
…………。 ？？？
ええ……もはや我々に退路はありませんわ。
隠し続ける意味は、とうに失われてしまいましたから。 黒船の城娘
……全ての始まりは我らの故郷、アメリカにある。
突如、強大な力を有する巨大兜が、我々の前に姿を現したのだ。 ？？？
……わたくしたちが『提督』と呼ぶ存在です。 黒船の城娘
提督は……あまりに強かった。
城娘や民が力を合わせても、
犠牲を重ねるだけであることが……戦わずとも分かるほどに。 黒船の城娘
私たちは相談を重ねた後……、
苦汁を飲んで、提督の傘下に下ることを選んだ。
そうせざるを……得なかったのだ。 殿
…………。 立花山城
（……巨大兜が、突如？
足利義昭を討った際に散らばった『珠』と、
何か関わりがあるのかも……） 黒船の城娘
提督は……母国の支配には消極的だった。
魂の在り方ゆえか、何らかの意図があるかは分からぬが、
外海へと繰り出すことに執心のようだった……。 ？？？
そして、そんなある日……わたくしたちは一つの情報を得たのです。 黒船の城娘
遠い東の島国に、城娘を統べる主が居る……。
そしてその者が、兜を討ち滅ぼし太平をもたらした……と。 甘崎城
殿さまのことですね！ 黒船の城娘
……その情報を掴んでいたのは、提督も同じ。
奴の興味は、すぐに日の本へと向かい……、
我ら黒船の城娘を、先鋒として遣わすことを決断した。 ？？？
わたくしたちにとって、その展開は正に『渡りに船』……。
状況を覆す好機となり得るだろう、と考えていました。 三重城
状況を覆す、好機……？ 黒船の城娘
殿一行との衝突が、提督の支配を揺るがす端緒になると考えたのだ。 柳川城
私たちを母国へと連れ帰り、
件の『提督』と衝突させる。
そうすればどちらも無事では済まない……ということですね？ ？？？
……ご明察ですわ。 立花山城
けれど、その目論見は挫かれてしまった……と。 黒船の城娘
…………。 ？？？
わたくしたちの真意を読み切ったか……それとも、
なんらかの策の内か、でなければ単なる気まぐれか。 ？？？
答えを知る術はありません。
ですが間違いないのは、わたくしたち黒船の城娘が、
切り捨てられた……ということですわ。 黒船の城娘
…………。 殿
…………。 立花山城
……ふぅん。なるほどね。
つまり、こういうこと？ 立花山城
……主に見捨てられたから、
次の主に頭を垂れる……と。
随分と虫の良い話もあったものね。 柳川城
立花山城さん、そのような物言いは……！ 立花山城
酷い言い草であることは百も承知だけど……これは必要なことよ。 立花山城
これまでの彼女の振る舞いに対して、
精算してもらわなくちゃならないの……。
……でなければ、関係が進展することなんてあり得ないわ。 立花山城
そうでしょう……殿？ 殿
…………。 黒船の城娘
……そうだな。
立花山城の言うことは正しい。
……私たちは、貴様らを利用しようとしていたのだから。 黒船の城娘
『信じてほしい』などという言葉を口にする資格は、
とうの昔に失われた……それはよく理解しているつもりだ。 黒船の城娘
それでも……言わせてくれ。 黒船の城娘
殿よ……日の本の城娘たちよ。
貴方たちと肩を並べて戦うことを、どうか……許してほしい。 黒船の城娘
国を取り戻すためなら私は……どんな命令でも聞こう。
躊躇うこと無く、全てを捧げよう。 黒船の城娘
だから、どうか……私たちを……。 ？？？
……わたくしからも、伏してお願いいたしますわ。
提督を倒すため、共に戦わせてください。 殿
…………。 立花山城
情に訴えかけるのは主義に反する……じゃなかったの？ 黒船の城娘
ああ、そうだな……だが、
私たちからそちらに差し出せるものはもう、
何も残っていないのだ。 黒船の城娘
私たちにできることはただ一つ。
今後の働きを誓い……それを信じてもらうのみ。 黒船の城娘
今の私にはもう、それしか……！ 殿
…………。 殿
…………！ 黒船の城娘
…………な。 黒船の城娘
良い……のか？
私たちが味方に加わることを、許してくれるのか……？ 殿
…………！ 立花山城
……はぁ。
ま、こうなる気はしていたけどね……。 柳川城
……ええ。
清も濁も全て信じ抜き、受け入れてしまう。
そうやってここまで来ましたから、殿は……。 黒船の城娘
……そうか。
やはり……疑わぬのだな、お前は。 殿
…………。 黒船の城娘
ではここで……改めて、自己紹介をしておこう。 黒船の城娘
……『黒船の城娘』などという、
余所余所しい名で呼ばせるわけにはいくまい。 黒船 サスケハナ
私の名は……サスケハナ。
祖国の威信を背負った黒船――その旗艦だ。
今後とも、どうかよろしく頼むぞ……殿。 黒船 ミシシッピ
同じく、黒船が長姉……ミシシッピ。
サスケハナの姉として……部下として、彼女をお支えいたします。 黒船 ミシシッピ
提督の野望から世を守るため、
妹と共に、この身を尽くさせていただきますわ。 新たな仲間を加えた一行は、次なる地へ向けて海路を征く。 船が向かう針路は南……三重城たちの故郷、琉球へと向かう―― | 
