―――― ――あの方は、私の名を呼んでくれない。 ……いや、気に病むことなど無い。
分かっている……些末なことなのだ。 使命に生き……使命に死ぬ。
守るべき国を民を姉妹を、守る。
それが私……黒船の生き様だ。 それ以外は全て、些末。
提督が何を思うのかも……どうだっていい。 だから、考えるな……考えるんじゃない。 私に選択肢など、無いのだ。
もし考えてしまえば、私は―― ？？？
――さん？ 黒船さん……？ 立花山城
ちょっと……黒船さん？ ……大丈夫？ 黒船の城娘
――っ。 黒船の城娘
……何か用か？ 立花山城
いえ、別に用があったわけじゃないけど。
立ち尽くしたまま、ぼーっとしていたから……。 黒船の城娘
……考え事に耽っていただけだ。
心配は要らん。 立花山城
……あらそう。
不意打ちをするには絶好の機会だったみたいね。
惜しいことをしたわ。 黒船の城娘
して……航海の方は順調か？
次の島はまだ見えないのか？ 三重城
うん……次の目的地はもうすぐ。
島の姿も間もなく見えてくるはず――あっ！ 安宅船 日本丸
ん……どうした、三重城？
何か気になることでもあったか？ 三重城
――……っ！！ どぼーんっ！ 殿
…………！？ 甘崎城
き、急に三重城が海に身を投げやがったです！
足でも滑らせたですか……！？ 柳川城
いえ……どうやら違うようです。
三重城さんの視線の先を御覧ください……！ ？？？
ぷかー……ぷかー……。 殿
…………。 千狐
――コンッ！？
あそこに浮かんでいるのは……人ですか？ ―――― 三重城
はぁ、はぁ……やっと引き上げられた。
みんな、力を貸してくれてありがとね。
お陰でこの子を助けることができたよ……。 首里城
みーちゃんが誰よりも早く気づいてくれたからだよぉ。
お手柄だったね、みーちゃん。 立花山城
それで……彼女の容態はどうなのかしら？ 殿
…………。 ？？？
う、うぅん……。 安宅船 日本丸
――っ！？ 安宅船 日本丸
……ん？ ん、んん……！？ 安宅船 日本丸
ま、待ってくれよ……そいつは、もしかして……！？ 柳川城
この方に見覚えがあるのですか、日本丸さん……？ 安宅船 日本丸
ああ、こいつとは九鬼水軍の仲間として、
長い時間を共に過ごしてきたからな……。
見間違えたりはしねぇ。 首里城
ってことは……この子は、
日本丸ちゃんが前に話してた―― 安宅船 日本丸
そうだ……鉄甲船の大宮丸に間違いねぇ！ 殿
…………！ 鉄甲船 大宮丸
あらぁ……懐かしい声。
もしかして、そこに居るのは日本丸ちゃんかしら……？ 安宅船 日本丸
ああ、あたしだ！ 日本丸だぜ、大宮丸！ 鉄甲船 大宮丸
良かったぁ……合流できたのね。
一時はどうなることかと……。 安宅船 日本丸
いったい何があったんだよ、大宮丸！
お前ほどの城娘が、どうしてこんなことに……！ 鉄甲船 大宮丸
海上で、兜に囲まれてしまったの……。
まるで海賊船のような形をしていたわ。 黒船の城娘
…………。 黒船の城娘
（海賊船のような形の兜……） 鉄甲船 大宮丸
耐えるのは得意だけど、
逃げるのと避けるのはからっきしだから……、
後少しだったんだけど……ごめんね。 安宅船 日本丸
謝ることなんかねぇ！
あたしがもっと早くに着いてりゃ、こんなこと……！ 鉄甲船 大宮丸
気をつけて……日本丸ちゃん。
敵はまだ、すぐ近くに潜んでるわ。 鉄甲船 大宮丸
私が守り抜けたら良かったんだけど、
それはもう、叶わぬ願いみたい……。
後のことは頼んだわよ……日本丸、ちゃん……。 鉄甲船 大宮丸
……ぱたり。 安宅船 日本丸
…………大宮丸？ 安宅船 日本丸
お、おい……嘘、だろ……？
返事をしてくれよ大宮丸……！ 鉄甲船 大宮丸
…………。 安宅船 日本丸
大宮丸……大宮丸ぅぅーーーーーーっ！！ 柳川城
（今、『ぱたり』って言いましたよね……？） 立花山城
（言ったわね……） 甘崎城
今、その子……海賊船に襲われたって言ってたですよね？
それはつまり、海賊城娘であるわたしへの、
宣戦布告と見ていいですよねぇ……！？ 立花山城
貴方は私たちの傍から離れちゃダメよ、甘崎城？
貴方が調子に乗ると、ロクなことにならないんだから……。 甘崎城
…………ふ。 甘崎城
らじゃーですよ……。 安宅船 日本丸
…………。 柳川城
日本丸さん……どうか、お気を確かに……。 安宅船 日本丸
『敵はまだ、すぐ近くに潜んでる』……だって？
……へ、ちょうど良いじゃねーか。 安宅船 日本丸
だったら、すぐにこっちから打って出ようぜ！
この辺りの海域を侵す兜どもは、
元から全部沈めるつもりだったんだ……そうだろ、お頭？ 殿
…………！ 安宅船 日本丸
よっしゃ！ そうと決まれば弔い合戦だ！
行こうぜ、みんな！ | 
