黒船の城娘
……さて。
計画を進めるためにはまず、
不要な荷物を捨てなければなるまい。 鯰尾形兜
ニ……荷物？
荷物トイウノハイッタイ――ゥグッ！？ 黒船の城娘
私の労力は最小限で済みそうだ。
殿の軍勢が殆どの兜を片付けてくれたお陰でな。 鯰尾形兜
オ待チクダ――ィ！ ――、――様ッ！？
ギ、ゥ……グ、グァ……！ 黒船の城娘
……黙れ。大人しくしていれば、
苦しむ前に沈めてやる……。 殿
…………。 柳川城
黒船と呼ばれていたあの城娘が、
兜たちに攻撃し始めましたよ……？ 千狐
仲間割れでしょうか……？ 立花山城
というより……利用価値が無くなったから、
切り捨てたっていう風に見えたわね。 安宅船 日本丸
一時的に手を組んでいただけ、ってことか――ん？ 甘崎城
こ、こっちに向かって近寄ってきてるですよ……！ ぱち、ぱち、ぱち、ぱち……。 殿
…………？ 黒船の城娘
これが噂の『殿』か……いやはや。 黒船の城娘
敗北はしてしまったものの……、
我らにとっては、吉報と言えるだろう。
貴様らの力を把握することができた。 黒船の城娘
この程度で沈むようでは、同盟を結んだところで、
平和を手にすることなどできないだろうからな。 立花山城
……日本丸といい、あの子といい。
いちいち戦ってからでないと、相手を認められないのかしら。 甘崎城
ほんとに困ったものです……。 安宅船 日本丸
聞こえてるぞ、こら……。 安宅船 日本丸
――でも聞いたか、今のあいつの言葉？
同盟を結んで平和を、って言ってたぜ！ 安宅船 日本丸
ってことは……あんた、悪い奴じゃないのか？
あたしらの味方だって思っても……良いのか？ 黒船の城娘
……情に訴えかけるのは主義に反する。
曖昧な情報に左右されても、
好ましい結末は望めないだろう。 黒船の城娘
私の望みは、互いの利益につながる条約が交わされること。
さすれば、信用だの安心だのという、
曖昧な情報に流されずに済む……違うか？ 殿
…………。 立花山城
一部肯定、一部保留……ってところかしらね。 立花山城
条約とやらが理に適っている保証も、
貴方が馬鹿正直にそれを守る保証もないでしょう？ 黒船の城娘
妥当な判断だな。
……もちろん、伝えるべき情報は共有するつもりだ。
質問があれば可能な範囲で答えよう。 黒船の城娘
交渉のテーブルに着いてもらえれば、私は充分だ。 黒船の城娘
ただ……ここで一つ、情報を開示しておこう。 黒船の城娘
こちらはまだ充分な戦力を残している。
私に匹敵する力を持つ城娘だ……いや、
『城娘たち』と言った方が正しいか。 殿
…………！ 黒船の城娘
砲口はどこに向けることもできる。
私が貴様らを敵と判断した暁には……分かるな？ 柳川城
そんな……！ 甘崎城
日の本に攻撃を仕掛けるつもりです！？ 黒船の城娘
となれば……貴様らがどれほど強くとも、
全てを守り抜くことは不可能だろう……それだけは間違いない。 殿
…………！ 黒船の城娘
くく……顔色が変わったな。 黒船の城娘
繰り返すが……元より信用は期待していない。
貴様が何を思うかにも興味が無い。
腹の探り合いなど、徒労でしかないからな。 黒船の城娘
手を結ぶことによる利益、結ばないことによる損失。
それらを理解した上で、判断を下してもらいたい。 立花山城
（苦手な質だわ……この女） 殿
…………。 柳川城
承知しました……まずは詳しい話を伺いましょう。
先のことはそれからですね……。 黒船の城娘
……うむ。
それでは、彼女にも姿を現してもらおうか。
同席してもらった方が、円滑に進行できそうだからな。 立花山城
……彼女？ 黒船の城娘
……出てこい。 ？？？
は、はいた～い……。 殿
…………！？ 首里城
首里城だよー。
久しぶりだね……国王、みんな……。 柳川城
し、首里城さん……！？ 首里城
実は今、琉球国が大変なの。
国王の力を貸してもらえないかなぁ……？ 柳川城
琉球国が大変……？
……ええ、もちろんです！ 力になりますよ！ 殿
…………！ 立花山城
もしかして……。
貴方が、そこの仏頂面な城娘と一緒にいるのも、
琉球国が関わっているのかしら？ 首里城
あ、うん……。
詳しい事情を話すと長くなるんだけどね―― 黒船の城娘
…………。 黒船の城娘
（……ここまでは計画通り） 黒船の城娘
（良い土産話が持って帰れそうだ。
期待していてくださいね……提督） | 
