ストーリーテキスト/1-2_新たな旅立ち

1-2 新たな旅立ち

日本丸を仲間に加えた殿たちは、彼女が目にした
という不穏な城娘の背中を追うことに。しかし、
そんな一行の前に、一人の城娘が姿を現す……。

前半
柳川城 ……皆さん、出立の用意は整いましたね？ 殿 …………！ 安宅船 日本丸 あたしが見た城娘だが……現状、細かな居場所が掴めてねぇ。 手間を掛けちまうが、しばらくはあたしの船で、 日の本近海を捜索することになるだろう……。 やくも なんのなんの、船旅は大歓迎だに！ それじゃ、すぐに出発を―― ？？？ ――すみません。 少々、お時間を頂いてもよろしいでしょうか？ 殿 …………？ 江戸城 ……お初にお目にかかります、殿。 私、江戸城と申します。 殿 …………！ 立花山城 （ふぅん。江戸城……ね） 立花山城 ……そう。 日本丸の騒動を鎮めることで精一杯だったけれど、 いつの間にか、関東の辺りまで来ていたのね。 柳川城 この辺りの自治は、貴方が担っているのですか？ 江戸城 ……はい。兜の残党や街の復興のため、 力を尽くす日々を送っています。ただ……。 江戸城 正直に申し上げると……混乱しています。 やくも 混乱……。 江戸城 此地が『江戸』として知られ、 私が天下の府城としての力を得るのは、 本来であれば、まだ先のこと。 江戸城 それどころか……此世は、 家康様が統べた世とは違う道を辿っている。 自らの存在の不確かさに、不安を覚えずにはいられません。 殿 …………。 柳川城 先程……『お時間を頂きたい』と仰っていましたよね、 私たちに何かご用でしょうか？ 江戸城 あ……そうでした。 これをお渡ししておこうと思って―― 殿 …………。 千狐 これは……石の欠片、ですね？ どこかで見た覚えがありますが……。 やくも うちは覚えとるがや！ あのえらくでっかい、 兜の元締めを倒した時に拾った珠の欠片だに！ やくも 触ろうとした時に駆け巡った、 あのびりびり～って衝撃……うちは未だに忘れとらんがや！ 立花山城 そういえば、そんなこともあったわね……。 江戸城 秘めた力の得体は知れませんでしたが、 その強さは理解できました。 なので、私よりも殿の方が持つべきかと。 殿 …………！ 立花山城 そうね……受け取っておきましょう。 柳川城 ……天下の分け目の決戦の後、 あの者が持っていた珠が弾け、欠片が飛び散りました。 柳川城 ですがその後、散らばった範囲や欠片の数については、 まるで掴めていないのが実情です……。 やくも ほーん……それじゃ、その欠片はまだ、 あちこちに落っこちとるんやね……。 江戸城 お邪魔しました……話は以上です。 それでは私はこれにて―― やくも ……江戸城は、これからどうするんだに？ 江戸城 街へ向かい、民を支えようと思います。 江戸城 近隣の城娘も奮闘しておりますが、 兜が残した傷跡は深く、復興にはまだ多くの時間を要しますから。 江戸城 中でも……衣食住の『住』に手こずっています。 資材の不足に加えて、建築技術に秀でた者は数が少なく……。 やくも ……そっか。そうなんやね。 やくも …………。 やくも ……なぁ。 それ……もしかしたらやけど、 うち、皆の力になれるかもしれんだに。 千狐 ――えっ？ 殿 …………！ 千狐 ち、ちょっとやくも……。 もしかしてあなた、ここに残るつもりなの？ 千狐 殿や千狐たちは……目前の問題を解決するため、 日本丸さんと共に動かなければならない……。 つまり、離れ離れになってしまうのよ？ やくも もちろん、殿さんや千狐や……みんなと、 離れ離れになるのは寂しいがや……。 やくも やけど、うちの力は前線やなくても活かせる……いや！ むしろ、今の江戸みたいな場所でこそ活かされるもんだに！ やくも やったらうちは、うちにできる全力を尽くしたいがや！ いつまでもみんなの世話になっとるわけにはいかんだに！ 千狐 やくも……！ 甘崎城 ふ……決心は堅いみたいですね。 なら、わたしたちはもう止めないです。 やくもの好きにやるといーです。 安宅船 日本丸 あんたが言う台詞じゃなくないか……それ。 江戸城 ……私たちにとっては、これ以上ない僥倖です。 感謝します、やくもさん。 千狐 やくも……。 ―――― こうして一行は……やくもとの別れを済ませて、 旅立つこととなったのだった―― 安宅船 日本丸 ……どうだ、千狐。 ちったぁ元気を取り戻したか？ 千狐 ……はい。 日本丸さんや、皆さんのお陰で……もうすっかり。 千狐 やくもが自分でやるべきことを見つけたのは、大きな進歩なの。 だったら千狐も……今よりずっと成長しなければ！ 安宅船 日本丸 ま、ほどほどに頑張ろうぜ。 船旅ってのは暇な時間が多いからな……。 あんまり気張りすぎても良いことはねぇ。 安宅船 日本丸 時には頭を空っぽにして、 ぼーっと水平線を眺めてみたりとか――ん？ 安宅船 日本丸 （――なんだ、この気配は……？） 千狐 ――コンッ？ どうかしましたか、日本丸さん……？ 安宅船 日本丸 なんか違和感を覚えてな。 船乗りの勘ってやつかな。 ……悪いが千狐、あっちの方角を探ってくれるか？ 千狐 ――はいっ、承知しました！
合戦中
千狐 ――殿、お気をつけください！ 沖の方から兜が接近しているようです……！ 安宅船 日本丸 思った通り……さっきあたしが感じたのは、 兜の気配だったわけか……！ 安宅船 日本丸 ……とはいえ、早めに察知できたのは幸いだったな。 返り討ちにしてやろうぜ、お頭っ！ 鯰尾形兜 ク……ヤハリ、ワレワレタチダケデハ厳シイカ……。 鯰尾形兜 ココハ撤退シ、本艦ニ合流セネバ。 状況ヲ黒船様に、報告シナケレバ……！ 安宅船 日本丸 兜たちが逃げてく……！ 逃がすわけにはいかねぇ、後を追うぞ！
後半
立花山城 さっきの兜……気になることを言っていたわね。 柳川城 本艦に合流、黒船様に報告……そう聞こえました。 殿 …………。 甘崎城 黒船、様……？ 安宅船 日本丸 ……みんな。 気持ちを引き締めといてくれ。 安宅船 日本丸 あの兜たちが『黒船』と呼んでいる者は、 恐らく……あたしが目にした城娘のことだろう。 千狐 先程は細かく聞けませんでしたが……、 いったい何者なのです？ 日本丸さんが見た、その城娘とは……？ 安宅船 日本丸 あたしが見たのは……黒くて、巨大な船だ。 安宅船 日本丸 場所は九州から更に南下した海……。 そこで、琉球へ向かってく奴らの姿が見えた。 遠目に視認するだけで、接触することは無かったが……。 殿 …………。 安宅船 日本丸 奴らは幾つかの船で艦隊を組み、後ろには兜の姿もあった。 統率の取れた動きで……その城娘に従っているのは明らかだった。 柳川城 兜の軍勢を従えていた……！？ 安宅船 日本丸 脅しをかけて、 無理やり言うことを聞かせるくらいなら、あたしにだってできる。 けど、奴らのそれはまったく別のもんだった……。 安宅船 日本丸 そして、何より目を引いたのは、 艦隊の旗艦に乗船していた、主らしき女……。 安宅船 日本丸 あの表情……瞳。 目的のためなら手段を選ばない……無慈悲さ、冷酷さ。 安宅船 日本丸 ……ごめん、みんな。 安宅船 日本丸 あたしはもしかしたら……。 みんなをとんでもない騒動に、 巻き込んじまったかもしれねぇ……。 ――時を同じくして。 ？？？ ――現状を報告せよ。 桃形兜 セ……先遣隊ガ殿ノ一行ト接触。 抗戦ヲ経テ、敗走ヘ至ッタトノコトデス。 ？？？ その後は……手筈通りに？ 桃形兜 ……ハッ。寄セ付ケズ、引キ離サズ、 殿一行タチガ見失ワヌヨウ、我ガ艦隊ニ向ケテ逃走中トノコト。 ？？？ ……よろしい。委細承知した。 黒船の城娘 艦隊全軍へ通達せよ。 ……開戦だ。

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