ストーリーテキスト/重ねし欠片と白亜の城

重ねし欠片と白亜の城[]

重ねし欠片と白亜の城 -序-

スピシュ城という名の城娘より救援の要請あり。
異国からの助力の求めに応えるため、
殿一行は海を越えんと出立の準備に取りかかる。

前半
――所領。 四稜郭 総裁、そうさ～～～～～いっ！ たいへんたいへんたいへんだよー！！ 殿 …………？ 千狐 そ、そんなに慌ててどうしたのですか、四稜郭さん？ 四稜郭 とにかくこれを見て、千狐ちゃん！ 千狐 これは、手紙……？ やくも 差出人は……スピシュ、城？ 柳川城 名前からして、異国の城娘の方からでしょうか？ 四稜郭 うん！　スピちゃんは、少し前にコンウィ城お姉ちゃんからの 紹介で、ペンフレンドになってくれた城娘なんだけどぉ……、 四稜郭 どうやら、スピちゃんの故郷が 兜たちに狙われてるみたいなの！ 千狐 ――な、なんですって！？ やくも なら、すぐに助けにいくだにぃ！ 柳川城 ……ですが、スピシュ城さんは遙か遠き異国の地の城娘ゆえ、 助けに行くにしても、ここからですとかなり時間がかかるのでは？ 四稜郭 それは……そうだけど……。 四稜郭 せ、千狐ちゃんの転移術で何とかできないかな？ 千狐 そう、ですね……スピシュ城さんから送られてきた この手紙を媒として術を発動させれば転移は可能だと思いますが……。 千狐 失敗した場合、海の上へ転移……ということも有り得ます。 千狐 ですから、より術を確かなものとするためにも、異国の城娘の協力や、 スピシュ城さんに縁のある品が手元にあるとありがたいのですが……。 やくも 異国の城娘さんの協力……かや。 やくも ――あっ！ 柳川城 そういうことなら、彼女に相談すればいいのでは……！？ 殿 ……！ 四稜郭 なるほどー！ だったらさっそく相談しにいこぉ、総裁！ ――四半刻後。 シノン城 ……というわけで、このロワール最古の城娘であるところの、 シノン城に白羽の矢がぶっ刺さってしまったわけですねー！ シノン城 ならば、拙者！　喜んで助太刀いたすでそーろー！ シノン城 ……と、言いたいところなのですが、 シノン城 ごめんなさい、王様……。 今のシノンには先約がありましてぇ……。 殿 …………？ シノン城 はい……実は私も王様たちと同じ様に、 同郷のシュノンソーちゃんから、 兜討伐の助太刀を頼まれていまして……。 シノン城 だから、ごめんなさい……！　 今回はお力になれないようです。 四稜郭 そっかぁ……シノンお姉ちゃんも、やっぱり忙しいんだね。 シノン城 ……本当にごめんなさいです。 シノン城 こうなったら覚えたてのハラキリ土下座で、お詫びするしか……！ 四稜郭 ――だ、だめだよシノンお姉ちゃん！ そんなことしたら痛くてきっと泣いちゃうよぉ！ 柳川城 （そ、そういう問題なのでしょうか……？） 四稜郭 それに、切腹には介錯する人が必要だから、 勝手にそんなことしたら周りに迷惑をかけちゃうんだよー！ シノン城 おぉ、そこまでシノンのことを思って忠告してくれていたとは……。 シノン城 やっぱりシニョーカクさんは優しいですねぇ♪ 四稜郭 わ、わたしの名前は四稜郭だよぉ～。 シノンお姉ちゃん、やっぱりまだちゃんと覚えられてないんだねぇ。 四稜郭 うーん。でも困ったねぇ、総裁。 四稜郭 五稜郭お姉ちゃんも、 今は千代城ちゃんやツバサちゃんたちと一緒に、 陸奥の方へ遠征に行っちゃってていないし……。 殿 …………。 四稜郭 ……え？　今までスピちゃんと手紙のやりとりをしていたのなら、 他にも何か転移術の媒として使えそうなものがあるんじゃないか？ 四稜郭 ――あっ！　そういえば！ 四稜郭 えへへ♪　ちょっと待っててね、総裁！ 殿 …………？ 柳川城 も、物凄い速さで屋内に駆けていってしまいましたね……。 シノン城 あれぞ、ダットのゴトーシというやつですね！ 千狐 ……な、何か違うような気が…………？ やくも って、見るがや、殿さん！ 四稜郭のやつ、もう戻ってきたみたいがや！ 四稜郭 はぁ、はぁ……。 お待たせぇ、総裁ぃ～！ 殿 …………！ 四稜郭 じゃーんっ！　どう？　これ、使えないかな？ 前にスピちゃんからもらったものなんだけど……。 殿 …………？ 四稜郭 そうだよ、総裁！　これはね、前に手紙と一緒に スピちゃんが送ってくれた絵なの！ 四稜郭 わたしも絵を描くのが好きだから、 お互いの絵を送り合ったりしてるんだよ～！ 柳川城 綺麗な絵ですね。もしかして スピシュ城さんの故郷の風景画でしょうか？ 四稜郭 そうそう、そうなの！ 四稜郭 ねぇ、千狐ちゃん。これなら手紙だけの時よりも、 ぐぐぐ～っと転移術の成功率が上がるかな？ 千狐 はい！　この絵があれば、心象の抽出が容易になりますので、 きっと転移術を成功させることができるはずですわ！ やくも なら、急いで準備をしてスピシュ城を助けに行くだにぃ！ 殿 …………！ シノン城 はい。別行動となりますが、 私もしっかりと務めを果たしてきます！ シノン城 それでは、皆さんに良きゴビューンがあらんことを。 四稜郭 ごびゅーん？ 柳川城 ご、御武運と言いたかったのではないでしょうか？ シノン城 そうですそうですぅ！ さすがはヤナヤナ城さんですねぇ～♪ 柳川城 柳川城です！ シノン城 おぉ、これまたうっかり丸ですぅ～。 シノン城 ……っと、何だか話が逸れてしまいましたね！ シノン城 それでは改めて皆さん。よき御武運を。 シノン城 スピシュ城さんはたしか、中央ヨーロッパ最大級の 規模を誇る名城の城娘さんだったかと記憶しています。 シノン城 それほどの方が助けを求めるということは、 よっぽどの事態が起きているということです。 シノン城 ですからどうか、無理だけはしないように……王様。 殿 …………。 殿 …………！ 千狐 それでは、殿。 準備が出来次第、出立と参りましょう！ ――半刻後。 千狐 殿！　転移完了ですわ！ やくも 何とか、海にボチャンッ、だけは避けられたみたいやね！ 柳川城 ここから見える景色……。 四稜郭 スピちゃんが送ってくれた、この絵にそっくりだね！ やくも よっしゃ！　そういうことなら、 さっそくスピシュ城んとこに―― ？？？ ――きゃぁぁぁああ！ 柳川城 こ、この声は！？ 兜軍団 城娘……追詰メタ……。 ……城娘……追詰メタ……。 スピシュ城 こ、こっちに来ないでぇ～！ わたし、そんなにお金なんか貯め込んでないですよぉ～！ 兜 ……黙レ……スピシュ城……。 兜軍団 金ナド……我ラハ……求メテイナイ……。 兜軍団 欲スルハ……貴様ノ……塩ダ……。 スピシュ城 だ、ダメですぅ！　 それだけは……それだけは絶対にダメですぅ……！ 兜軍団 ナラバ……無理矢理ニデモ奪ウマデ……ッ！ スピシュ城 はぅぅぅ……このままじゃ……このままじゃあ……！ スピシュ城 誰かぁ……誰か助けてくださいぃ～っ！！ 四稜郭 総裁！　きっとあれがスピシュ城ちゃんだよ！ すぐに助けに行かなくっちゃ！！
後半
スピシュ城 ……あ、ありがとうございます。 危ないところを助けていただいて……。 スピシュ城 ですが、あなたたちは……？ 四稜郭 スピちゃん！　わたしだよ！　四稜郭だよ！ スピシュ城 ……しりょう、かく……？ スピシュ城 え！？　そ、それじゃあ、 いつも手紙を書いてくれてた、あの……！？ 四稜郭 うん！　そうだよ！ スピちゃん、やっと会えたね～♪ スピシュ城 ぐすっ……うわ～～～んっ！ 四稜郭ちゃ～んっ！　怖かったよぉ～！ 四稜郭 おー、よしよし。 もうだいじょうぶだからねぇ。 そうして、四稜郭に抱きしめられたスピシュ城は変身を解除し、 ひとしきり泣いた後、現状について殿たちに語り始めた――。 スピシュ城 実は……一週間前ほどから、この地に兜たちが押し入ってきて……。 スピシュ城 わたしは必死に抵抗したのですが、何度も戦を繰り返すうちに、 兜たちに城娘としての力も殆ど奪われてしまって……ぐすっ……。 スピシュ城 これ以上はもう……独りではこの地を守り切れないと思い、 ペンフレンドであった四稜郭ちゃんに助けを求めたのです……。 スピシュ城 ……でも、手紙だけのやりとりのわたしのことを、 本当に助けに来てくれるとは思ってなかったから……。 スピシュ城 四稜郭ちゃん……本当に、ほんとーに……わたし、嬉しいよぉ……！！ 四稜郭 えへへ、そんなに泣かないでスピちゃん！ 友達が困ってるんだもん！　助けるのは当然のことだよぉ♪ 殿 …………。 殿 …………！ 柳川城 はい。何とかスピシュ城さんを助ける ことができてよかったですね、殿。 千狐 ですが、本人も仰っているように、長い籠城の所為で、 城娘としての力は殆ど奪われてしまっているようですね。 やくも ……寄って集ってヒドいだに！ どうして兜さんはスピシュ城を狙うがや？ スピシュ城 そ、それは違います、やくもさん……先ほどの言動から確信しましたが、 ヤツらはわたしじゃなくて、 この『岩塩』を狙って攻めてきてるみたいです。 やくも ……岩塩？ スピシュ城 はい。この地で採取できる岩塩はとても貴重なものとして知られ、 同時に、わたしに縁深き代物として不思議な力を秘めているのです。 千狐 確かに……この岩塩には清浄な霊気が充ち満ちている……。 きっとこの力を取り込まんとして兜たちが目を付けたのでしょう。 柳川城 ということは、この地に存在する岩塩を多く集めることができれば、 スピシュ城さんの力を回復させることができるということですね？ スピシュ城 はい、間違いありません……！ 四稜郭 なら、やることは決まったね、総裁！ 殿 …………！ スピシュ城 ……ほ、本当に協力してくださるのですか？ スピシュ城 わたし、皆さんの頑張りに見合った報酬を それぞれに払ったりなんて、できませんよ……？ 四稜郭 もう、そんなこと気にしなくていいのにぃ。 四稜郭 い～い？　わたしはスピちゃんを助けたいから助けるの！ 四稜郭 だから、スピちゃんが元気になってくれれば それがわたしへの報酬だよ！　わかったぁ？ スピシュ城 ……四稜郭ちゃん。 スピシュ城 ありがとうございます……っ！　手紙でしかやりとりしてなかったけど、 四稜郭ちゃんはやっぱり思ってた通りの優しい城娘だったんだね！ 四稜郭 えへへ、それほどでもないよぉ～♪ 柳川城 それでは、殿。スピシュ城さんのためにも、 この地の防衛準備と岩塩の収集にあたるとしましょう！

重ねし欠片と白亜の城 -破-

スピシュ城の失われた力を取り戻すため、殿一行は
岩塩集めに乗り出す。しかし、こうしてる間にも
着実に兜たちの黒き影は忍び寄ってきていた……。

前半
四稜郭 おっしお、おっしお、ぱっぱっぱ～♪ スピシュ城 もーひとーつおーまけーに、ぱっぱっぱ～♪ 四稜郭 岩塩さーがし、がーんばーるぞー♪ スピシュ城 四稜郭ちゃんとー、がーんばーるぞー♪ 千狐 ふふっ。スピシュ城さんったら、先ほどの涙顔が嘘のようですね。 柳川城 お会いするのは初めてということでしたが、 すっかり四稜郭さんと仲良くなられたようで。 やくも 二人とも気が合うんやろうね。 うんうん、いいことだに！ 柳川城 ――って、あ、あれ？ 千狐 どうしたのですか、柳川城さん？ 柳川城 そ、それが……先ほどまであちらにいたはずの お二人の姿が見当たらないのですが……？ 千狐 ……え？ やくも ほ、本当がや？ 二人してどこにいったがや？ 殿 …………！ 柳川城 そうですね。あたりには兜らが潜んでいるはずです。 すぐにお二人を探しにいきましょう！ ――同時刻・殿たちから少し離れた場所にて。 四稜郭 うーん、もっとたっくさん岩塩が集まるところはないかなぁ？ スピシュ城 ね、ねぇ四稜郭ちゃん……。 あんまり千狐さんたちの傍を離れたら危ないよぉ？ 四稜郭 確かに、ちょっと危険なのはわかってるんだけどぉ……。 四稜郭 こういう時は、虎穴に入らずんば虎子を得ず――なんだよ！ スピシュ城 こ……けつ？　いらーずん？ スピシュ城 なぁに、それ？　なにかの呪文なのかな？ 四稜郭 ううん。これはね、古い時代から伝わる 由緒あるありがたやーなお言葉でね！ 四稜郭 えっとぉ……何か欲しいものがある時は、 危なそうな穴の中に入れーって、意味だよ！　たしか！ スピシュ城 へぇ～！　そんな言葉があるんだねぇ！ 四稜郭ちゃんは物知りさんだなぁ～♪ 四稜郭 えへへぇ、前に五稜郭お姉ちゃんに教えてもらったんだぁ。 スピシュ城 でもさでもさぁ……。 スピシュ城 危なそうな穴って、どこにあるのかな？ 四稜郭 …………。 四稜郭 ……確かに！ ？？？ モシ、ソコノ御嬢サン……。 四稜郭 ――っ！？ な、なにこの声？ スピシュ城 あそこだよ、四稜郭ちゃん！ あの洞穴から聞こえてくるよぉ！ 四稜郭 ……むぅ。 そこにいるのは誰なのー？ ？？？ アッシハ、シガナイ商人デサァ。 ？？？ ソレモ、岩塩ノミヲ取リ扱ウネ。 四稜郭 ということは、岩塩屋さんってこと！？ 岩塩屋さん（？） エエ、ソウデストモ。 良心的ナ岩塩屋サンデストモ。 四稜郭 すごーいっ！　わたし初めて見たよぉ！ 四稜郭 それじゃあ岩塩、あるだけくださーいっ♪ スピシュ城 ちょ……だ、ダメだよ四稜郭ちゃん！ あんなのいくらなんでも怪しすぎるって！ 四稜郭 えー？　でも、良心的って言ってるよ？ スピシュ城 そ、そんなの自分で言ってるだけかもしれないよ？ 四稜郭 ……なるほどぉ、自称ってやつだね！ 四稜郭 でもさ、スピちゃん！ これこそ虎穴に入らずんば～っ、だよ！ 四稜郭 何かを得るには、危険な穴でも――ううん！ 危ない岩塩屋さんでも入っていかなくっちゃ！ スピシュ城 ――あっ！？ ちょっと待ってよ四稜郭ちゃん！ 四稜郭 おじさーん！　 このお金で、買えるだけ岩塩くださーい！ 岩塩屋さん（？） ヘヘ、毎度ォ。 岩塩屋さん（？） ――ッテ、何ダコレハ？ 日ノ本ノ貨幣ジャナイカ！ 四稜郭 ……え？　使えないの？ 岩塩屋さん（？） 此処ヲ何処ダト思ッテルンダ！ 使エル訳ナイダロ――ッ！！ 四稜郭 ひゃぅ……っ！？ ご、ごめんなさいぃ……！ 四稜郭 じゃ、じゃあ……わたし、どうしたらいいのぉ？ 岩塩屋さん（？） ソウダナ……。 岩塩屋さん（？） 金ガ無イナラ、身体デ払ッテモラウシカネェナ！ 四稜郭 ――か、身体っ！？ 烏帽子形兜 瘴気散布ッ！！ 四稜郭 ふゃぁっ！？　な、なにっ、これぇ……っ！？ 身体が……あつく、なって……やっ、ぁぁ――っ！！ 烏帽子形兜 グヘヘヘッ！　馬鹿メ、マンマト引ッ掛カッタナ！ 四稜郭 は、ぅぅっ……スピちゃん、逃げ……て……っ！ 四稜郭 このままじゃ、わ……わたし……くっ、ぅぅ……っ！！ スピシュ城 四稜郭ちゃん……っ！！ 柳川城 ――こ、これはいったい！？ 何がどうなっているというのですか！ スピシュ城 や、柳川城さん！？ スピシュ城 ごめんなさい！　わたしたち、岩塩を探してたら、 四稜郭ちゃんが兜の瘴気を浴びちゃって……！ やくも 何となくそげな予感はしてたけど……。 こうも予想通りになるとはびっくりだに！ 千狐 もぉ、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ！ 柳川城 殿、すぐに四稜郭さんを助けにいきましょう！ 急ぎ出陣の準備をお願いいたします！
後半
四稜郭 はぁ……はぁ……あ、ありがとう……総裁……。 おかげで、なんとか身体の自由を取り戻せたよぉ……。 スピシュ城 ……ごめんね、四稜郭ちゃん。 わたしが、もっとちゃんと止めてればこんなことには……。 四稜郭 ううん、わたしが無理しちゃったのがいけないんだもん……。 スピちゃんが謝ることなんてないよぉ。 四稜郭 ……でもね、わたし……。 はやく、スピちゃんの力……取り戻してあげたくて、だから……。 スピシュ城 四稜郭ちゃん……。 柳川城 お気持ちはわかりますが、ひとりで無茶をしてはダメです。 ここは日の本ではなく、我々の知らぬ異国の地……。 柳川城 なればこそ、互いに協力しなければ 兜たちにやられてしまう危険だってあります。 四稜郭 ……うん。反省するよぉ。 千狐 けど、良かった……今回襲ってきたのが、 あのような雑兵級の兜ばかりで……。 千狐 もし、先ほどの場に巨大兜がいたら、今頃どうなっていたことか……。 ？？？ ――巨大兜ガイタラ……デスカァ～？ フフフ、ナラバ御期待ニ応エマショウー！ 殿 …………！？ 柳川城 と、殿！　注意してください！ 向こうから何か強大な力を備えた存在が――！！ シュテファン フフフ……久シブリデースネッ！ コンナ所デ遭ウトハ思イマセンデシタヨーッ！

重ねし欠片と白亜の城 -急-

ついにスピシュ城の故郷を狙う兜軍団の首魁、
シュテファン大公の名を冠する巨大兜が姿を現す。
仲間と共に出陣し、眼前の巨悪を討ち果たせ！

前半
シュテファン フフフ……久シブリデースネッ！ コンナ所デ遭ウトハ思イマセンデシタヨーッ！ やくも …………！ シュテファン 驚キノ余リ、声モ出ナイト言ッタトコロデショーカ？ やくも なぁんだ……またあんたがや。 身構えて損しただにぃ……。 シュテファン ――ンナァッ！？　 何デスカ、ソノガッカリ反応ハァ！？ やくも だって、異国の城娘さんとこにいくと、 大体あんたが現れよーけん、さすがにもう驚けんだに！ 四稜郭 そ、そうかなぁ？　わたしは初めて 目にするから、けっこう怖いけどぉ……。 四稜郭 でも、やくもちゃんのこの反応を見る限り、 もしかして、とっても弱い巨大兜なのかな？ シュテファン 弱イトカ言ウナデースッ！　 言葉ニ気ヲ使エデースッ！ スピシュ城 ゆ、油断しちゃだめだよ四稜郭ちゃん！ あの巨大兜はとっても強いんだから……。 スピシュ城 その証拠に、ヤツのとんでもない力のせいで、 わたしの大事な場所がボロボロにされちゃったんだから……！ 千狐 スピシュ城さんの言う通りですわ！ 千狐 いくら見慣れきった巨大兜と言えど、 強敵であることには変わりません！ 柳川城 殿、これまで何度も勝利してきた相手ですが、 どうか、お気を抜かずにお願いいたします！！ シュテファン ……グヌヌ！ イチイチ勘ニ障ルコトバカリ言イヤガルデースッ！ シュテファン コウナッタラ私ノ強サヲ思イ出サセテヤルデースッ！ 覚悟ナサイ、日ノ本ノ城娘ドモォーッ！！
後半
シュテファン ――ナッ、ニィ！？　ソンナ、バカナ！？ ドウシテ、私ガ圧倒サレテルデースッ！？ 柳川城 貴方の方こそ、私たちを甘く見ていたようですね！ 柳川城 かつてコンウィ城さんたちと共に戦った時よりも、 私たち日の本の城娘は成長しているのです！ シュテファン オ、オノレェ……！ シュテファン 仕方アリマセン……此処ハ一旦退クデースッ！ 殿ォ！　柳川城！　覚エテヤガレデースッ！！ やくも ………………ふん、口ほどにもないヤツだに！ 千狐 やくも……貴方は何もしてないでしょ。 やくも ……それは言わん約束だにぃ。 スピシュ城 …………。 四稜郭 あれ？　どうしたの、スピちゃん？ もしかしてさっきの巨大兜が怖くて、腰抜けちゃった？ スピシュ城 ち、違うよぉ！ スピシュ城 四稜郭ちゃんたちが、あの巨大兜を圧倒するくらい 強いだなんて知らなかったから、驚いてたのぉーっ！！ 四稜郭 えへへ、わたしのこと見直してくれたかな？ スピシュ城 うん！　四稜郭ちゃん、すっごく格好良かったぁ♪ スピシュ城 でも、おかげで自分の非力さを痛感したよぉ……。 スピシュ城 わたしも、はやく城娘としての力を取り戻して、 四稜郭ちゃんたちと一緒に戦いたい……。 スピシュ城 せっかく友達に会うことができたのに、 迷惑ばかりかけてるのは、やっぱりいやだもん……。 四稜郭 スピちゃん……。 四稜郭 その気持ちは嬉しいけど、焦りは禁物だよ？ 四稜郭 わたしたちが絶対にスピちゃんの力を取り戻してみせるから、 また変身できるようになったら、その時は一緒に頑張ろうね！ スピシュ城 ……うん！　 スピシュ城 ありがとう、四稜郭ちゃん！ 柳川城 それでは殿、巨大兜の再来に備えて、 引き続き岩塩の収集と防衛を進めてまいりましょう！

重ねし欠片と白亜の城 -絶壱-

スピシュ城を救出するため異国へとやってきた夜。
四稜郭は、その日に感じた感動や恐怖を
思い返し、絵日記をつけていたのだが……。

前半
――シュテファン大公の名を冠する巨大兜を退けた日の夜。 四稜郭は、異国での出来事を絵日記にまとめていた。 四稜郭 〇月△日。 今日は文通相手のスピちゃんこと、スピシュ城ちゃんを助けるために、 日の本からすっごーく離れた場所にある異国の地にやってきたんだよ！ 四稜郭 それで、たくさんのわるーい兜たちに襲われそうになってる スピちゃんを、総裁や柳川城ちゃんと一緒に助けたの！！ 四稜郭 スピちゃん、すっご～く喜んでた！ 四稜郭 わたしも、すっごーく嬉しかったの！ 四稜郭 そのあと、スピちゃんの失ってしまった城娘の力を取り戻すために、 ちょっと不思議な岩塩を集めることになって……。 四稜郭 総裁とぉ、わたしとぉ、スピちゃんとぉ、柳川城ちゃんとぉ、 千狐ちゃんとぉ、やくもちゃんとぉ、みんなで頑張ることにしたの。 四稜郭 …………。 四稜郭 …………多いなぁ。 スピシュ城 ――ん？　何が多いの、四稜郭ちゃん？ 四稜郭 うわわっ！？　す、スピちゃん！？ スピシュ城 あれ？　何を書いてるの？ 四稜郭 えへへ、これはね。絵日記だよぉ♪ 四稜郭 異国に来る機会なんてなかなかないからね、 今日あったことは今日のうちに書いちゃおうと思って！ 四稜郭 ……あ、けどぉ。 スピシュ城 けど……？ 四稜郭 今日は兜たちの瘴気で大変な目に遭っちゃったから、 そのことも書かなくちゃ……。 スピシュ城 そう、だねぇ……。 四稜郭 はぁ～あ。やっぱりシノンお姉ちゃんも一緒だったら、 こんなことにはならなかったのになぁ。 スピシュ城 ……シノンお姉ちゃん？ 四稜郭 うん！　わたしと総裁が生活してるところにはね、 シノン城っていう格好いいお姉ちゃんがいるの！ 四稜郭 ジャンヌダルク様っていう有名な方と縁があって、 すっごく勇敢な城娘のお姉ちゃんなんだよ！ スピシュ城 ジャンヌダルク様ぁ！？　わたしも、その名前しってるぅ～！ スピシュ城 すごいなぁ。四稜郭ちゃんの周りには 勇敢な城娘さんがいっぱいいるんだねぇ！ 四稜郭 あ、でも、ちょっと待てよぉ……？ スピシュ城 ふぇ？ 四稜郭 シノンお姉ちゃん、たまーにぼんやりしてる時があるからなぁ。 四稜郭 ……んー。 四稜郭 もしかしたら、シノンお姉ちゃんが一緒だったとしても、 結局わたし、操られちゃってたのかも……！？ スピシュ城 ええっ！？ 四稜郭 しかも、シノンお姉ちゃんも一緒に瘴気にやられちゃって！ ふたりして総裁に向かっていって、最後には…………――、
後半
四稜郭 ――…………。（妄想中） 四稜郭 なぁんて、さすがにそんなことは起きないよね！ シノンお姉ちゃんは、いざという時はすっごく頼りになるし！ スピシュ城 ……んぅ。四稜郭ちゃんのお話を聞いてると、 シノン城さんがどういう城娘さんなのかわからなくなってきたよぉ。 四稜郭 えへへ、だいじょうぶだいじょうぶ！ ここでの戦いが終わったら、スピちゃんもすぐに会えるはずだよ！ スピシュ城 本当に！？ 四稜郭 うん！　ほんとほんと～！ 四稜郭 それに、わたしには五稜郭お姉ちゃんっていう、 すっごく格好いいお姉ちゃんもいるんだよぉ～！ スピシュ城 おぉっ！？　またまた新しいお姉ちゃんだぁ！ スピシュ城 ねぇねぇ、その五稜郭お姉ちゃんは どんな城娘さんなのぉ？ 四稜郭 えっとねぇ、戦いの時はすっごく格好良くてねぇ、 四稜郭 総裁の前だと、ものすっごーく甘えん坊さんになってぇ、 四稜郭 でも、わたしがピンチの時は、いつだってすぐに駆け付けてくれる とっても頼りになる、世界で一番のお姉ちゃんなのぉ～！！ 四稜郭 あ、そうだ！　せっかく用紙があるんだしぃ、 シノンお姉ちゃんと五稜郭お姉ちゃんの絵を描くね～！ スピシュ城 ふふっ、どんな絵ができあがるのか、今から楽しみだよぉ♪ 四稜郭 任せて～！　すっごく上手に描いてみせるからね～！ ――時同じくして。 西洋のとある地点。 シノン城 は……ふぁ……―― シノン城 ―――っくちゅん！ シュノンソー城 だ、大丈夫ですか、シノンお姉様？ シュノンソー城 もしかしてお風邪を召された……とか？ シノン城 ん～。そういうんじゃないと思うぅ。 シノン城 これは、そう……！ シノン城 誰かが私の噂をしちゃってる感じですね！ シュノンソー城 噂……？ シュノンソー城 たしかに、シノンお姉様はロワール最古の城娘ですからね。 多くの城娘にとって、話題の中心になりやすいのかと……！ シノン城 ふふっ、もしかしたら四稜郭さんが 私のことを話してるのかもですねぇ～？ シュノンソー城 四稜郭さん……というと、 確か日の本で出会ったご友人ですよね？ シノン城 うん！　すっごく可愛くて、すっごく絵の上手な城娘なんだよぉ♪ シノン城 いつもニコニコしてて、好奇心が旺盛でね、 きっとシュノンソーちゃんも仲良くなれるはず！ シュノンソー城 ふふ、それはぜひともお会いしたいものですね。 シュノンソー城 けれど今は、この地の防衛が先決です、シノンお姉様。 どうか、油断をなさらぬようにお願いしますね？ シノン城 それに関しては、だいじょーぶだよシュノンソーちゃん！ シノン城 ジャンヌ様のように勇敢に、そして気高く、 シノンはこの地を絶対防衛してみせます！ シノン城 さぁ、シュノンソーちゃん、休憩は終わりだよ！　 四稜郭さんたちに誇れるよう、精一杯頑張って戦い抜かないと！ シュノンソー城 あ、ま、待ってください、シノンお姉様！ ひとりで突撃しては危険ですよぉー！ こうしてシノン城たちも、殿たちとは遠く離れた場所で、 兜を相手とした戦いの渦中に飛び込んでいくのだった。

重ねし欠片と白亜の城 -離-

長い時をかけ、大量の岩塩を収集した殿一行。
力を失ったスピシュ城が、再び城娘としての
己を取り戻せるかどうかを、試してみることに……。

前半
――スピシュ城の城娘としての力を取り戻すために、 岩塩の収集を開始してから既に一週間が経っていた。 やくも ……ふぅ！　岩塩集めもかなり進んだし、 そろそろ休憩しておにぎりさんを食べるがやぁ♪ 四稜郭 わぁ、やくもちゃん、そのおにぎりどうしたの！？ 両手で抱えるくらいおっきいのは初めて見たよぉ！ 千狐 というより、よくお米があったわね……。 やくも 異国の地に出立ってわかっとったけん、 ちゃーんとお米さんをえっぱい持ってきたんだに！ 千狐 それにしたって、いくらなんでも多すぎよ！ スピシュ城 これが日の本の主食――オニギリさんですかぁ。 スピシュ城 やっぱりこれだけ沢山たべないと 立派なサムライにはなれないのですねぇ。 千狐 ち、違いますよ、スピシュ城さん。 千狐 これはやくもが大食いなだけであって……、 通常のものはもっと掌に乗る大きさですから。 柳川城 ですが、これだけの大きさともなると、 どんな具が入ってるのか気になりますね、殿。 殿 …………。 殿 …………！ やくも いんや、殿さん。このおにぎりさんには、 なーんも具は入っちょらんだにぃ～！ 柳川城 え……！？ やくも せっかく長い時間をかけて岩塩を集めちょるけん、 ここはスピシュ城の故郷の味付けで塩むすびにするだに！ 千狐 あっ……こら！　収集した岩塩を何てコトに 使おうとしてるのよ！　スピシュ城さんに失礼でしょ！ スピシュ城 そ、それくらいは別にいいのですが、あのぉ……。 スピシュ城 岩塩は普通のお塩とちがって、溶けづらいですので、 料理に際しての扱いが難しいかと思いますが……。 やくも だにぃ！？　ぜんぜんお米さんに馴染まんがやぁ！？ スピシュ城 や、やっぱり……。 やくも まぁ、そげんことなら別々にパクつけばいいだけのことやね♪ 柳川城 ふふ、やくもさんらしい解決方法ですね、殿。 殿 …………！ 千狐 やくも……お腹を満たすことに文句は言わないけど、 あんまり塩分ばっかり取り過ぎないようにね……？ やくも だにぃ～！（もぐもぐ） 柳川城 ……それにしても、気づけばかなり大量の岩塩を集めましたね。 スピシュ城 そうですね！　これだけ沢山あれば、 わたし、城娘として変身できるかもしれません！ 四稜郭 本当に！？　 四稜郭 それじゃあさっそく試してみようよぉ！ スピシュ城 はい！　それでは、いきますよ～！ スピシュ城 スピシュ城、へん……しんっ！ 四稜郭 おぉ……っ！？ 殿 …………！ スピシュ城 えへへ、どうですか？ これがわたし、スピシュ城の本当の姿―― スピシュ城 ――って、あ、あれ？ 四稜郭 どうしたの、スピちゃん！？ スピシュ城 うっ、ぅぅぅ……ごめんなさい……。 どうやら、まだ戦うことはできないようですぅ。 千狐 霊気の状態を見るに、あと僅かに、 岩塩が足りていない……といった様子ですね。 スピシュ城 ……面目ありません。 まさかこれほどまでに自分が力を失っていたとは思わなくて……。 四稜郭 そんなに悲しい顔しないで、スピちゃん！ 四稜郭 わたしたちがまだまだた～っくさん集めるから、 それまでは無理をしないでいいんだからね！ スピシュ城 四稜郭ちゃん……っ！ ？？？ ――フフフ。 相変ワラズ脳天気デスネェ、城娘トイウ存在ハ。 殿 …………っ！？ 千狐 くっ……もう攻めてくるとは、 予想していたよりも随分と早いですね……！ シュテファン 何ヲソンナニ驚イテルデース？　スピシュ城ガ城娘ノ チカラヲ失ッテイル現状ヲ私ガ見逃スワケナイデショウ？ 兜 ――ザザッ！ 兜軍団 ザザッ！　ザザザッ！ スピシュ城 ど、どうしよう……。 この前の時よりもずっと沢山の兜たちが……っ！ 四稜郭 スピちゃんは安全な場所に下がってて！ ここはわたしたちが何とかするからぁっ！ スピシュ城 ……で、でも。 四稜郭 大丈夫っ！　この前は兜たちに 操られちゃったけど、もうあんなヘマはしないんだから！ シュテファン フフフ……勇マシサダケハ一丁前デスネ！ シュテファン サァ、マズハ小手調ベカラデース！ 第一陣、前ヘ出ナサーイッ！！ 兜 城娘……殺ス……！ 兜軍団 ……殿……八ツ裂キ……！ 柳川城 四稜郭さん、ここは力を合わせて戦いましょう！ 四稜郭 うん！　柳川城ちゃん、一緒に頑張ろうね！ 四稜郭 それじゃあ、いっくよぉー！　 四稜郭、出陣するぞぉ！
後半
四稜郭 そ～れぇ！どっか～んっ！！ 兜軍団 ギャァァァァアアアアアアッ！ 兜 ナ、ナンテ攻撃ダ……！？　前ハ簡単ニ操ラレテイタノニ、 四稜郭メェ……アンナニ強カッタナンテ反則ダ……ッ！ 四稜郭 今さら後悔したって遅いんだからねー！ スピちゃんのためにも今日はぜったいに負けないぞぉ！ シュテファン 大切ナ友ヲ想エバコソ、ソノ想イガ、 ヨリ己ヲ強クスル……トイウコトデスカ。 シュテファン ン～ッ！　実ニ美シキ友情デースッ！ シュテファン デスガ私ノ計画――此ノ地ニ秘メラレタ不思議ナチカラヲ 内包スル岩塩ノ奪取ハ、必ズ果タシテミセルデース！ 四稜郭 …………。 四稜郭 ねぇ……。どうしてそんなにここの岩塩がほしいの？ 不思議な力を秘めた代物なら他にもいっぱいあるでしょう？ シュテファン ハ……？ 四稜郭 そもそも兜たちって、生きてくのに塩が必要なのかな？ やくも たしかに……。 むしろ食生活とかどうなってるがや？ スピシュ城 もしかして、塩が主食だったりして？ シュテファン バッ……バカヲ言ウンジャナイデース！ シュテファン ダイタイ、其処ノ蛇ニギュウギュウサレテル神娘！ シュテファン 貴方、サッキカラ握飯ト岩塩ヲ 食ベ続ケテマスガ、一体ドウイウツモリデース？ やくも ……だに？ 千狐 や、やくも……！ 貴方まだ、おにぎり食べ終わってなかったの！？ やくも これだけの量やけん、一口ってのはさすがに無理があるがや！ 千狐 もう、そう言う問題じゃ―― シュテファン ――ソウデース！　ソウイウ問題ト違イマース！ やくも ……はぇ？ シュテファン 貴方、ソレダケノ塩分ヲ摂取シタ場合、 血液中ノ塩分濃度ガ高クナッテシマイ、 ソレヲ下ゲルタメニ水分ヲ多ク溜メ込ムヨウニナルデース！ シュテファン ソウナルト、血液量ガ増エテ血管ガパンパンノパーンッ！ ッテナ具合ニナッテ、間違イナク高血圧ニナルデースッ！ やくも こう……けつ、あつ？ シュテファン エエッ！　ソウデストモ！ シュテファン 更ニソンナ食生活ヲ続ケレバ、動脈硬化ヲ招キ、 腎臓病ヤ尿路結石、骨粗ショウ症ナドナド恐ロシイ病ヲ 発症スルヨウニナル！　――ト、何カノ本デ読ンダデースッ！ やくも な、なに言ってるかさっぱりやけど、 恐ろしいことになるんはわかっただにぃ……！ 四稜郭 って、ちょっと巨大兜！　すごーく長く話したくせに、 わたしの質問には、まだちゃんと答えてないぞー！ シュテファン オォ、ソウデシタネェ！ 塩……ナルホド、ドウシテ岩塩ヲ集メルカ、デスカァ……。 シュテファン 勿論、コノ岩塩ニ潜ム不思議ナチカラガ目的デアルノハ確カデスガァ……。 シュテファン ソレ以上ニ、塩ソノモノハ 戦力ニ大キナ影響ヲ与エルト言ワレテマース！ 四稜郭 そ、そうなの……！？ シュテファン ハーイッ！　塩分ノ取リ過ギハ身体ニ毒デスガ、 摂取シスギナイトイウノモ、コレマタ毒デースッ！ シュテファン 故ニィ、人間タチカラ塩分ヲ全テ奪ッテシマエバ、 目眩ヤ食欲減退ニ始マリ、脱力感ニ脱水症状、 更ニハ筋肉異常ニ精神障害、冷え性、肌荒れナドナド！ シュテファン トニカク！　塩不足ガ貴方タチニ与エル被害ハジンダーイッ！ コレダケデモ奪ウ価値ハ充分ニアルデースッ！　デースッ！！ スピシュ城 そ、そんなことまで考えての計画だったなんて……。 四稜郭 な、何だか今までで一番頭のいい兜な気がしてきたよぉ。 シュテファン エエ、私ハ巨大兜ノ中デモ屈指ノ頭脳派……。 シュテファン ココマデノ下ラヌ長話モ、我ガ霊気解放ノ為ノ時間稼ギト、 貴方タチ城娘ノ注意ヲ戦カラ逸ラス為ノ策デースカラァッ！ 殿 …………！？ 柳川城 ――し、四稜郭さん！　 前に出すぎです！　それでは敵に――！ シュテファン フフフ……ホォラ、私ガ対話可能ナ巨大兜ダト 思ッテ油断シマシタネェ……四稜郭ッ！！！ 四稜郭 ――えっ！？ シュテファン 愚カデ未熟な城娘ヨ！　我ガ間合イニ入ッタコト、 アノ世デ後悔シヤガレデ――――スッ！！！

重ねし欠片と白亜の城 -結-

ついに真の力を解放したシュテファン大公の名を
冠する巨大兜。油断しきっていた四稜郭が窮地に
陥るのだが、そこにひとりの城娘が立ちはだかる。

前半
シュテファン 愚カデ未熟な城娘ヨ！　我ガ間合イニ入ッタコト、 アノ世デ後悔シヤガレデ――――スッ！！！ 四稜郭 ――あっ、ぅぅ……こんな、はず……じゃ……。 柳川城 四稜郭さん！！ シュテファン フハハハハッ！　私ヲ舐メルカラソウナルノデースッ！ シュテファン 虚仮ニシタ罪ハ死ヲ以テ償ッテモライマショウカ！ ？？？ ――や、やめなさいっ、巨大兜！！ シュテファン ……ん？ スピシュ城 わ、わたしの友達を……これ以上傷つけないで！ シュテファン ホホォ……スピシュ城。マサカ城娘ノ姿デ 我ガ前ニ立ツトハ思イマセンデシタァ……。 シュテファン デスガ、ヤセ我慢ハヨクナイデースッ！！　今ニモ 崩レンバカリニ霊気ノ状態ハガタガタジャナイデスカー！ スピシュ城 う、うるさい！ スピシュ城 どんな状態であろうと、四稜郭ちゃんは……わたしが守るんだから！ シュテファン ……ヤレヤレ。相モ変ワラズ城娘トイウノハ 自己犠牲ヲ好ム存在ノヨウデースネーッ！ 四稜郭 だ、だめだよ、スピちゃん……！ ……わたしのことはいいから、はやく……逃げて……。 スピシュ城 やだ！　四稜郭ちゃんのお願いでも、 それだけは……それだけはぜったいに聞けない！ スピシュ城 せっかく出来たお友達……それも、遙か遠くの地から駆け付けて きてくれた大事な友達をわたしは見捨てたりなんかしない……っ！ スピシュ城 だからね……できるできないは関係ないの！ スピシュ城 わたしも、四稜郭ちゃんと同じように、 守りたいから四稜郭ちゃんを守るの！ シュテファン ナラバ、セメテモノ慈悲デースッ！ 二人マトメテ、アノ世逝キデースッ！！ スピシュ城 …………っ！？ ？？？ ――待ちな！　大事な妹と、その友達を お前みたいなバケモノにやらせはしないよ！ シュテファン ……ナニッ！？ 柳川城 あ、貴方は……！ 五稜郭 待たせたね、みんな！ 今より、この五稜郭も加勢するよ！ 四稜郭 ご、五稜郭お姉ちゃん！？ 千狐 ですが、どうやってここまで……！？ たしか……日の本にいたはずじゃ？ ツバサ 千狐おねえちゃーんっ！！ 千狐 つ、ツバサ！？ やくも ってことは、あんたが転移術を！？ ツバサ うん！　五稜郭ちゃんがどーしてもっていうから、頑張ったのぉ！ 五稜郭 っていっても、二十回ぐらい転移術を使って、 ようやくさっき、ここに辿りついたんだけどね……。 千狐 もう、あなたって子は……。 千狐 でもよくやったわ、ツバサ！ 五稜郭さんが来てくれたおかげで、勝てる見込みができたもの！ 五稜郭 それは違うよ、千狐ちゃん！ 千狐 ……え？ 五稜郭 可能性や望みなんかじゃない！　 私が来たからには絶対に勝つ！ 五稜郭 それでもって大切な妹も、あなたたちも、 そして私の大好きな総裁も――。 五稜郭 ぜ～んぶ、この五稜郭が守り抜いてみせる！ 殿 …………！ 五稜郭 さぁ、いくぞ巨大兜！　異国の地だろうが何だろうが、 私たちは悪しき兜を打っ倒す！　ただそれだけだ！ シュテファン イキナリ現レトイテ、何ト傲岸不遜ナヤツデスカーッ！！ シュテファン コウナレバ返リ討チニシテヤルデース！ 全軍、突撃開始デー――スッ！！！
後半
五稜郭 総裁、今が絶好のチャンスです！ みんなに攻め込む合図を――っ！ 殿 …………！ 柳川城 はい！　余勢を駆り、このまま敵を一掃します！ 四稜郭 お姉ちゃん！　わたしも最後まで頑張るよー！ 五稜郭 そうだ！　そのまま一気に攻撃を集中させるんだ！ シュテファン ――グァァアア！！　 コ、コレ以上ハ……耐エラレ……ナ……イィッ！！ 五稜郭 さぁ、これでトドメだ、巨大兜ぉ！！ シュテファン ギィァァアァァァアアアアアアアアアッ！！！ シュテファン ……ハァ……ハ、ァ……。 ナント、イウ……コトデショウ……。 シュテファン マサカ、コノ私ガ……コレホドマデノ敗北ヲ喫スルトハ……。 シュテファン ……城娘メェ…………。 シュテファン ……キョ、今日ノトコロハ此処マデニシテヤルデース！ シュテファン ダケド覚エテオクトイイデースッ！！　 次ニ会ウトキハ、今日トハ別ノ結果ニナルハズデースッ！！ 四稜郭 ……あっ！　待てぇ！　何処に行く気だー！ スピシュ城 し、四稜郭ちゃん……行っちゃ、だめ……だよぉ。 これも、また……兜たちの罠かもしれない……。 四稜郭 ……スピちゃん。 四稜郭 うん！　わかったよ！　 前みたいに操られたりしたら怖いもんね！ 五稜郭 へぇ……今日は珍しく聞き分けがいいじゃないか、四稜郭。 四稜郭 えへへ、わたしだって成長してるんだからね、お姉ちゃん♪ 五稜郭 ふふっ……。何があったかは知らないが、 どうやら城娘としてまたひとつ経験を積んだようだな。 殿 …………。 五稜郭 何はともあれ、総裁……。 貴方が無事で本当によかった。 殿 …………。 殿 …………！ 五稜郭 えへへぇ、そ、そんなに褒められると恥ずかしいよぉ、総裁ぃ。 千狐 ――っ！？ いきなり変身が解けた！？ やくも しかもなんだかめちゃめちゃデレデレしちょるだに！ 四稜郭 お姉ちゃんは総裁のことが大好きだからね！ 頭なでなでしてもらえて喜んでるんだよぉ～。 柳川城 （いいなぁ……） 柳川城 （私も……なでなで、してほしいなぁ……） スピシュ城 ふふっ、五稜郭お姉さんも、四稜郭ちゃんと いっしょですごく可愛らしい城娘なんだねぇ。 四稜郭 うん！　けど、戦いになれば、さっきみたいに、 とっても格好いい城娘になるんだよぉ～！ スピシュ城 でも、わたしにとっては四稜郭ちゃんの方が、 ずっとずっと格好いい城娘だって思うなぁ～。 四稜郭 ……え？　どうして？ スピシュ城 だって、会ったことのないわたしのために、 こんなに遠いところに来てくれたし……。 スピシュ城 何より、わたしの傍にいてくれて、 ずっと大丈夫だよって声をかけてくれたんだもん。 スピシュ城 ありがとね、四稜郭ちゃん。 スピシュ城 ……大好き♪ 四稜郭 スピちゃん……。 四稜郭 うん！　わたしも大好きだよぉ♪ やくも だに……友情って素敵やね。 千狐 何を達観してるのよ、貴方は……。 五稜郭 さぁて、この地での防衛はこれで完了だ。 すぐにでも所領へ戻り、皆の怪我の手当てをするとしよう。 スピシュ城 ……え？　わ、わたしも行っていいの？ 四稜郭 もちろんだよ！ スピシュ城 で、でも……この地の防衛は……。 四稜郭 だいじょうぶ！　わたしたちの所領にいる 城娘のみんなが、かわりばんこで御守りするからぁ！ スピシュ城 い、いいのですか？ わたし……そんなに貯金、ないですよ？ 殿 …………。 殿 …………！ スピシュ城 そ、そんな……タダでいいだなんて……。 スピシュ城 ありがとうございます、王様！ このご恩は、一生を掛けてでもお返しします！ 五稜郭 一生って……ちょっと大袈裟すぎないか？ 柳川城 ……ふふ。 それだけ真面目な方ということですよ、五稜郭さん。 千狐 それでは我々の所領へと帰りましょう、殿！ ツバサ ということはぁ、ツバサの転移術の出番だねぇ！ 五稜郭 こ、こら！　やめないか、ツバサ！ 五稜郭 また未熟な転移術でもって、世界のあちこちを 飛び回るはめになるのは、さすがに勘弁だ……。 ツバサ えー！　でも練習しないといつまでたっても上手くならないしぃ。 五稜郭 ダメなものはダメなんだ～！ 五稜郭 ねぇ……総裁も、何とかいってよぉ～！ 殿 …………！ スピシュ城 …………。 スピシュ城 ……ふふ、日の本での生活は、 とっても賑やかなものになりそうな予感がします。 四稜郭 うん！　きっと今よりもずぅっと賑やかになるよぉ♪ 四稜郭 それじゃあ行こうか、スピちゃん！ スピシュ城 はい♪ 殿 …………。 スピシュ城 王様……えっと、あの……。 スピシュ城 とにかく、が、頑張りますので……！ スピシュ城を、どうか末永くよろしくお願いいたします！ 殿 …………！ スピシュ城 ……えへへ♪

重ねし欠片と白亜の城 -絶弐-

――スピシュ城を救出してから数日後。
長き遠征から所領へと戻ってきたシノン城は、
案じていた四稜郭の様子を見に行くのだが……。

前半
――スピシュ城が所領に来てから数日後。 シノン城 王様～、ただいま戻りましてそーろーにごじゃるぅ！ 殿 …………！ シノン城 はい。遠征だったとはいえ、スピシュ城さんを救出するための お手伝いができなくて、本当に申し訳ありませんでしたぁ……。 柳川城 お気になさらず、シノン城さん。 柳川城 それよりも、そちらの遠征はうまくいったのですか？ シノン城 はい！　それはもうバッチリと！ シノン城 ……それに今日は、遠征を共にした 同郷の城娘を連れてきたのですよぉ！ シノン城 ということで、入っておいでシュノンソーちゃん！ 殿 …………！？ シュノンソー城 ボンジュール♪　はじめまして主様。 私がご紹介に与りました、シュノンソー城といいます。 やくも おぉ、またまた異国の城娘さんだにぃ！ 千狐 綺麗な方ですね。シノン城さんとはどういうご関係で？ シノン城 ずばり、私の妹分ですぅー！ やくも ……え？ シノン城 ……ん？ やくも …………。 シノン城 …………。 やくも 逆じゃないかや？ シノン城 というと？ やくも シュノンソー城がお姉ちゃんで、 やくも シノン城が妹ってことがや。 シノン城 ちっがいますよぉ～！ どっからどう見てもシノンの方がお姉ちゃんっぽいですぅ。 シノン城 そうだよね、シュノンソーちゃん？ シュノンソー城 はい。シノンお姉様。 やくも シノンお姉様……！？ シノン城 だから何でそんなに驚くのですかぁ～！ 殿 …………。 殿 …………！ シノン城 って、そういえば四稜郭ちゃんは何処に？ 千狐 彼女ならスピシュ城さんと一緒に 領内の広場で遊んでるはずですが。 シノン城 おぉ～！　すでにそれほどまでに仲良くなってるのですね！ シノン城 ではでは、親睦を深めるために、 シノンも一緒に遊んできまーすっ！ シュノンソー城 あっ、お姉様！　私をひとりにするなんてひどいです！ 領内を案内してくれるという話だったはずでは……！ シノン城 じゃあ、一緒についておいで、シュノンソーちゃん！ このまま領内をずずずい～っと案内するからぁ！ シュノンソー城 もう、行き当たりばったりなのは相変わらずなんですから……。 シュノンソー城 ですが……。 シュノンソー城 ふふっ。それでこそシノンお姉様らしいです♪ 殿 …………。 柳川城 はい。五稜郭さんも一緒にいると思いますので、 我々も後ほど様子を見に行くとしましょう。 ――半刻後。 千狐 あ、あれ……？　おかしいですね。 確かこのあたりで遊んでいると聞いたのですが。 やくも 四稜郭やスピシュ城どころか、 シノン城たちの姿も見えないだに。 柳川城 ……場所を間違えてしまったのでしょうか？ 五稜郭 ――おーい！　総裁ぃ～！　 四稜郭 ここだよ、ここ～！　わたしたちはここにいるよ～！ 殿 …………！？ 千狐 ど、どうして櫓の上に！？ 柳川城 皆さん、そんなところにいたら危ないですよ！ シュノンソー城 ですがぁ、ここからでないと ちゃんと飛べないということなので……。 柳川城 ……と、飛ぶ？ 千狐 い、いったい何をする気なのですか！？ 四稜郭 えへへ、実はねぇ……。 スピシュ城 じゃ～んっ！　見てください、これ！ スピシュ特製のパラグライダー機材ですよぉ！ やくも ……ぱ、ぱらぐらいだー！？ 四稜郭 スピちゃんの大好きなスポーツなんだってぇ！ スカイスポーツ……？　っていうもののひとつなんだよぉ！ 五稜郭 私も話には聞いていたが、やるのは初めてだからな。 五稜郭 ……このドキドキは、簡単には抑えられそうにないよぉ。 シュノンソー城 わっ、わわ……ご、五稜郭さん！　お、押さないでください！　 このままでは、私だけ落ちちゃいますぅ……！　大事故ですぅ！ 柳川城 ……シュノンソー城さんたちの装着している道具を見るに、 柳川城 もしかしてあそこから地面へと滑空してくるつもりでしょうか？ やくも そうだったら、すっごく楽しそうだにぃ！ うちもやりたいがや～！ 千狐 ……って、あれ？ そういえばシノン城さんの姿だけ見当たりませんが……？ シノン城 私ならここですよぉ♪ やくも だにぃ！？　何であんただけ仲間外れにされちょーがや？ シノン城 そ、その言い方は人聞きが悪いですよぉ……。 シノン城 スピシュ城さん曰く、用意していたパラグライダーの機材一式が 足りなかったので、私の分はシュノンソーちゃんに譲ったのです。 やくも 何か意外だにぃ。シノン城なら我慢せずに まっさきに遊んじゃいそうな感じやのに……。 シノン城 ふふっ。こう見えても私はロワール最古の城娘にして、 お姉さんな城娘ですからね。妹分を優先するのは当然のことです。 シノン城 どやぁ♪ やくも …………だにぃ。 千狐 ……あっ！　殿、ご覧ください！ どうやら皆さんの準備が出来たようですよ！ 四稜郭 ――総裁ぃ～！　それじゃあ、いっくよぉ～！ 五稜郭 目標地点はしっかりと設定したな……うん！ それじゃあ各員、スピシュ城の合図と共に行くぞ！ シュノンソー城 はい！　シュノンソー城、準備はばっちりですよぉ！ スピシュ城 それじゃあ、いっきますよー！ スピシュ城 ぱ～らぐら～いだ～っ！！ 殿 …………！！ 千狐 ……す、すごい！ 本当に、城娘の皆さんが空を飛んでますわ！ 殿 …………。 殿 …………？ シノン城 あ、あれ？　何だか……皆さんの動き、おかしくないですか？ 柳川城 たしかに……このままの進行方向だと、こちらにぶつかるんじゃ……。 やくも っというより、このままじゃ どう考えても殿さんにぶつかるだにぃ！ スピシュ城 うわわわっ！？　お、王様ぁ～！ 避けて――避けてくださいぃい！！ 殿 …………。 殿 …………！？
後半
柳川城 ……な、なんとか……衝突だけは避けられましたね、殿。 シノン城 ど、どうやら……そのようでぇ……。 殿 …………。 スピシュ城 はぅぅぅ……ごめんなさい、王様ぁ……。 四稜郭 こんなことになるなんて、思ってなかったよぉ……。 五稜郭 ぐすっ……総裁に嫌われた……ぜったいに嫌われたぁ……。 シュノンソー城 私なんて、初対面でこの失態です……挽回のしようがないですぅ……。 殿 …………。 五稜郭 …………。 殿 …………。 殿 …………！ 五稜郭 本当に、嫌いになってない……？ 殿 …………！！ 五稜郭 うぅぅ、信じるからね？ 五稜郭 ……総裁の言葉、ほんっとーに信じるからねぇ！？ 千狐 と、とりあえず皆さん、変身を解除してください。 いつまでもその状態では身体に障りますので……。 四稜郭 ふぅ……。 四稜郭 それにしても、どうしてこんなことになっちゃったんだろう？ シュノンソー城 風も、そこまで強くありませんでしたし……不思議ですね。 スピシュ城 ……とにもかくにも、このような危険な目に遭わせてしまった手前、 領内でのパラグライダーは、二度とやらないようにしないとですね……。 スピシュ城 ……王様。 迷惑をかけてしまって本当に申し訳ありませんでした。 殿 …………。 殿 …………！ スピシュ城 ……え？　一度の失敗くらいで諦めるな？ 殿 …………！ 千狐 そうですよ。今回は千狐たちの立っている位置も 悪かったと思いますし、そこまで落ち込まないでください。 千狐 それに、スピシュ城さんの持ってきたこの飛行機材があれば、 何か新しい戦術を考案する助けとなるかもしれませんしね。 やくも とか何とか言って、千狐もパラグライダーをやってみたいから、 スピシュ城が機材をしまっちゃうと困るってだけじゃないかや？ 千狐 そ、そんなことないのー！ 四稜郭 どうやら、ちょっとだけ図星……だったのかな？ 五稜郭 何はともあれ、再びやるというのなら、 次はぜひとも成功させられるようにしないとな。 シュノンソー城 でしたら、まずは先刻の飛行状況の振り返りと考察――そして、 改善に向けての議論の場を設けてみるというのはどうでしょう？ シノン城 ならば、皆さんとお話し合いをするためにも、シノンや王様も 一回くらいはパラグライダーを体験してみないとダメですよねぇ？ 柳川城 で、では……私も体験してみたいです！ 四稜郭 ふふっ。何だかんだでみーんなパラグライダーに興味津々みたいだね！ スピシュ城 でも……また、さっきみたいなことになったら、どうしよう……。 四稜郭 ……スピちゃん。 四稜郭 もぉ～！　そんなふうに、考え込んだりしないでだいじょーぶだよぉっ！　 四稜郭 まだまだ時間はい～っぱいあるんだし、たっくさん失敗して、 これからう～んと上手に飛べるようになればいいだけでしょ？ 四稜郭 ここには頼りになるお姉ちゃんたちがいるし、 総裁だって、いつでも相談にのってくれるよ！ 四稜郭 それにさ……。 四稜郭 スピちゃんにはわたしがついてるもん！ 四稜郭 だから、これからもいっぱい頼りにしてね♪ スピシュ城 四稜郭ちゃん……。 スピシュ城 ……うん！　四稜郭ちゃんと一緒なら、 何でも上手くいきそうな気がするよぉ！ 五稜郭 …………。 五稜郭 （ふふ……四稜郭のやつ、いつの間にか随分と成長したものだ） シノン城 ですが、まだまだお姉さん力が足りませんねぇ。 五稜郭 ――はわっ！？ 五稜郭 もぉ、シノン城！　そんなふうにして、 驚かさないでくれといつも言ってるだろうに……。 五稜郭 ……だが、なるほど。お姉さん力……か。 五稜郭 誰かを支えようとする思いが、城娘を強くするのならば、 五稜郭 四稜郭とスピシュ城……あの二人は、 存外、我々が思う以上に良いコンビなのかもしれないな。 シノン城 ……と、良い感じにまとめる五稜郭ちゃんなのでしたぁ。 シュノンソー城 ふふ、もうシノンお姉様ったら。 殿 …………。 殿 …………。 こうして、スピシュ城の持ってきた飛行機材を中心として、 領内の皆は、それぞれに親睦を深めていくのであった――。

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