ストーリーテキスト/選ばれし城娘と秘伝武具_陸の陣

ページ名:ストーリーテキスト/選ばれし城娘と秘伝武具_陸の陣

目次

選ばれし城娘と秘伝武具 陸の陣[]

秘伝武具 雑賀八咫短筒

平穏な所領に響き渡る、金槌の音……。
城娘たちへの贈り物として武器づくりに励む
やくもだが、彼女の胸には一つの悩みがあった。

前半
――所領。

やくも
…………。

やくも
だにいいいぃぃぃぃぃーーーーーー!!

かちーん こちーん かちーん こちーん かちーん こちーん かちーん!!
  かちーん こちーん かちーん こちーん かちーん こちーん かちーん!!
    かちーん こちーん かちーん こちーん かちーん こちーん かちーん!!

やくも
ふぃー……。

やくも
文句なしの出来栄えだに!
これなら、きっと受け取った城娘も喜ぶに違いないがや!

やくも
あとは、刀……刀だけ、なんやけど……。

やくも
悩ましいだに……。んー……。

やくも
んぅぅーーーー……。

千狐
さっきから唸ってばかりいるけど……どうかしたの、やくも?

柳川城
ここ数日打ち込んでいる刀作りが、
思うようにいかないそうです……。

千狐
ああ、依頼のあった城娘たちに贈る予定の武器ね……。

千狐
工房に刀が沢山並んでいたのを見たけど……あれは違うの?

やくも
あれは全部、失敗したものだに……。

千狐
失敗作?
あれも、充分過ぎる程の出来だったと思うけど……。

やくも
確かに……昔のうちだったら、
あれで満足していたかもしれんだに。

やくも
でも今のうちの力があれば……もっとすごい物が作れる。
そんな気がするがや。

やくも
ただ、そのためには、何かが足りない気がするんやけど……、
その何かがわからないんだに。

やくも
んーー……どーしたらいーんだにぃ……。

千狐
やくもがここまで真剣に悩むなんて、珍しいわね……。

柳川城
ですが、そろそろ出発の時刻が近づいています……。

千狐
そうですね。武器をお渡しする日取りは、
事前に連絡していますから……これに遅れるわけにはまいりません。

やくも
だにぃ……。

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
そうですね。すでに出来上がっている物を先に渡して、
残っている刀作りの方は帰ってきてから改めて……ということにしましょうか。

やくも
確かに……待たせっぱなしになってしまうのは、良くないだに。

千狐
前向きに考えましょう、やくも。
色んな場所を回ることで、良い気分転換になるかもしれないじゃない。

柳川城
ええ、新たな着想を得るきっかけになるかもしれません。

やくも
そうやね……。
工房にずーっと居ても煮詰まるばっかり……。
ここは思い切って旅行を楽しみ倒すだに!

殿
…………!

千狐
それでは準備が整い次第、出発することにいたしましょう!

――――

――数刻後。

千狐
到着しました! 転移成功です!

柳川城
まずは鉄砲……雑賀城さんにお渡しする物ですね。

殿
…………。

殿
…………?

千狐
ん? 確かに、ここは……。
雑賀城さんの御城ではないようですね。

やくも
前にも来たことがあるような気がするんやけど……どこだったがや……。

千狐
おかしいですね……。
ちゃんと雑賀城さんの霊気を頼りに転移したのですが――

パン!パン、パン!

柳川城
っ……!?

柳川城
今のは……銃撃の音?

シュババババ!ザク、ザク、ザク!

千狐
きゃっ……今度は何かが風を切るような音が……?

やくも
あ、あそこ! ……苦無だに!
木や地面……そこら中に沢山刺さってるがや……。

柳川城
殿、身を低くしてください!

殿
…………!

???
すばしっこい奴だね、本当に……これじゃ幾ら弾があっても足りないよ。

???
貴方の腕が不足しているだけではありませんか?

千狐
……?
今の声は……。

雑賀城
言うじゃないか。……でも、
その疲れ切った体でいつまでも逃げ回れるとは思えないね。

小峯城
さて……それはどうでしょうか。
それよりも先に、私の苦無が貴方を捉えるかもしれませんよ?

パンパン!パン、パンパン!

千狐
あちらに見えるのは、雑賀城さん……それに、小峯城さん……。

やくも
銃や苦無で撃ち合って……こりゃあ、只事じゃないだに。

千狐
これはやはり……、
仲違いするような出来事があった、ということでしょうか……。

柳川城
何にせよ、座視しているわけにはまいりません。
止めに入りましょう!

後半
雑賀城

ふぅ。そろそろ良い頃合いかな。休憩にしよう。

小峯城
そうですね……流石にこれ以上は体力が限界です……。

柳川城
はぁ、はぁ……。
休憩……それは、どういう……?

雑賀城
殿、それに柳川城もありがとう。キミたちのお陰で良い訓練になったよ。

殿
…………?

千狐
く、訓練……?

小峯城
ええ。飛び入りでの参入には驚かされましたが、
戦場では想定外が付き物ですからね……。

殿
…………。

柳川城
飛び入りも何も……私たち、
訓練に参加しているつもりはなかったのですが……。

雑賀城
ん、そうだったのか?

千狐
ええ……てっきり千狐は、
お二人が本気で命の取り合いをしているものかと……。

やくも
模擬戦には全く見えんかっただに……。

小峯城
訓練だからといって、手を抜くわけにはまいりませんからね……。
もちろん、少々熱が入ってしまったこともありますが。

小峯城
……ん? そういえば、
いつの間にか見慣れない場所に来ていますね?

雑賀城
ああ……ここは、明石城の辺りか。
熱中している内に遠くまで来てしまったようだ。
それに時間も随分――

雑賀城
っ、しまった……!

雑賀城
なんてことだ。ボクとしたことが迂闊だった……。
今更、こんなことに気づくなんて。

千狐
どうしたのですか、雑賀城さん?
まさか、兜でも現れて――!?

雑賀城
今日は、今日は……!

雑賀城
御坊ちゃんのライブの日じゃないか……!

殿
…………。

小峯城
……まったく。
貴方はいつもその調子なんですから。

やくも
そんなことだろうと思っただに……。

小峯城
雑賀城、貴方の実力に疑う余地はありませんが、
あいどるなどという輩に現を抜かすよりも、するべきことが――

雑賀城
『あいどるなどという輩』、だって?
……聞き捨てならないね。

小峯城
城娘としての本懐を忘れてはなりません、
と申し上げているだけですよ、私は。

千狐
なんだか剣呑な雰囲気になってきたの……。

雑賀城
……偉そうに語るものだね。
ボクにそんなことを言える立場なのかい、キミは?

小峯城
……何が言いたいのです?

雑賀城
ボクはよーく知ってるんだよ、小峯城。
……キミがどういう城娘なのかをね。

小峯城
なんです、私を脅すつもりですか?
……くだらないことを。

雑賀城
くだらない?
……ここでこの事実を、ボクの口から話してしまってもいいのかい?
今の内に謝っておいた方が良いかもしれないよ?

小峯城
好きにしなさい。
私にそのような、後ろめたい秘密などはありませんので。

小峯城
仮にあったところで、私は忍……。
そんな重要な情報をやすやすと掴ませるようなことはしません。

小峯城
つまり、貴方がどのような事実を語ろうと、
私が動じることは……決してあり得ないのです。

雑賀城
そう。それじゃ遠慮なく。

雑賀城
……なんでも、小峯城はあいどるに憧れていて、
厳重に変装した上で、色んなライブにお忍びで足を運んでるとか――

小峯城
わー!?
わー、わー!!

雑賀城
その上、あいどるになりたいって願望を抑えきれずに自前の曲を作っているとか、
誰に見せるわけでもないのに、一人で夜遅くまで練習に励んでいるとか――

小峯城
そこまで、そこまでです!
終わりにしましょう! この話はもうお終い!

殿
…………。

やくも
がっちり掴まれてる上に、むちゃくちゃ動じてるだに……。

小峯城
…………。

小峯城
……す、素晴らしい諜報能力ですね。
流石は雑賀城……お見事です。

雑賀城
そうじゃないだろう?
……いいのかい、ボクにはまだ弾が残ってるんだよ。

雑賀城
例えば、キミの新曲の振り付けが――

小峯城
わかりました、謝罪します!
御坊さん含めあいどる城娘の方々を貶めるような発言をしてしまい、
申し訳ありませんでした!

殿
…………。

小峯城
……えー、何というか。
まったく、参りましたね。

小峯城
あいどるに憧れる小田原城のため、
秘密裏に情報収集を行っていたのですが……。
何やら、誤った形で広まっていたようです。

小峯城
ですが……小田原城を応援する支城たちには、驚きをお届けしたい。
なので、殿……どうか今の話は、ご内密に。

殿
…………。

やくも
(無理やりごまかそうとしてるけど、
 全然ごまかせてないだに……)

千狐
……そうだ、本来の目的を果たさなきゃ……。

千狐
やくも……やくも。
ほら、雑賀城さんに武器を渡すんでしょう?

やくも
と……そうだったがや。
雑賀城用に誂えた、お手製の鉄砲だに。
受け取ってほしいがや。

雑賀城
そうか、今日はこの為にここまで来てくれたのか……。

雑賀城
これは……すごいね。
やくもが作った鉄砲は前にも見たことがあるけど、
あれから、更に腕が上がってるみたいだ。

やくも
うちがただ食っちゃ寝してるだけの神娘だと思ったら大間違いだに♪

雑賀城
すぐにでも性能を確かめてみたいところだけど……今度にするよ。
御坊ちゃんがボクを待ってるからね。

雑賀城
それに……殿もありがとう。
わざわざご足労いただいたこと、感謝する。

雑賀城
やくもから貰ったこの武器で、
今まで以上に貢献するつもりだから……期待してほしい。

殿
…………!

雑賀城
さて……そろそろ出発しないとね。
本当にライブに間に合わなくなってしまう。

雑賀城
で……小峯城。キミはどうするんだ?
予定がないなら、一緒に御坊ちゃんに会いにいくか?

小峯城
え……なんですか、急に?

雑賀城
急にだっていいじゃないか。
キミがあいどるを愛する者だと知ってしまった以上、
それを無視してここを発つわけにはいかないんだよ。

雑賀城
御坊ちゃんのライブをキミと一緒に楽しめたら……、
ボクはとても嬉しいんだけどね。

小峯城
ぁ、ぅ……け、結構です!

雑賀城
今、一瞬迷ったね?

小峯城
迷ってなどいませんっ!

柳川城
私たちも出発しましょう。
武器を渡すべき城娘はまだ残っています。

やくも
それにしても、
忍や隠密って役目にそぐわない賑やかさだっただに、二人とも……。

殿
…………!

柳川城
はい……こうして、訓練や共通の趣味を通して仲を深めるというのは、
素晴らしいことだと思います。

柳川城
特にあの二人は……、
御城としては対立する陣営に属していた時期もありましたから……。

殿
…………。

依然、微笑ましい口論を続けている小峯城と雑賀城の声を背に、
一行は次なる目的地へと向かうのだった……。

秘伝武具 多賀柵天平弩

やくもお手製の武器を配るため、多賀城の許へと
向かった一行。しかし、転移先で見つけた彼女は、
何故か不機嫌そうな表情を浮かべていた……。

前半
千狐

さて、と……次の目的地に到着しました。

千狐
多賀城さんの霊気を辿ってここまで来た……のですが、
ここは……?

柳川城
今回も、多賀城さんの御城ではないようですね……。

やくも
多賀城もどっかに出かけてる最中だったがや……?

やくも
…………ん?

???
…………、……! ……っ、……!

やくも
なんだか、あっちの方から声が聞こえるだに……?

――――

多賀城
むぅ……納得いかんのだ!

足利氏館
気持ちは分かるけど……多賀城ちゃん。
そんな風にほっぺを膨らませてたって、徳丹城ちゃんには会えないわよ?

多賀城
徳丹城の奴、こんな時に限って留守にしておるだなんて……。

多賀城
せっかくわらわが、様子を見てやろうと足を運んだというのに……。

足利氏館
それなら事前にお手紙を送って、都合を伺えば良かったじゃない。
多賀城ちゃんったら、せっかちさんなんだから。

多賀城
徳丹城の奴を驚かせてやりたかったのだ。
突然わらわが目の前に現れれば、さすがの彼奴も動揺するだろう?

足利氏館
まず、徳丹城ちゃんを動揺させる必要はあるのかしら……。

多賀城
それに、わざわざ手紙を送って約束を取り付けるなど……。
まるでわらわが、徳丹城に会いたくて仕方がないみたいになってしまうではないか。

足利氏館
……もう、多賀城ちゃんは素直じゃないんだから。
まぁお母さんは、そういうところも多賀城ちゃんの魅力だとは思うのだけど――

???
多賀城さーん!

多賀城
む……?

多賀城
なんじゃ? こちらに向かってくる人影があるな……?

足利氏館
あら、あれはもしかして――

千狐
良かったです。無事に多賀城さんを見つけられました!

多賀城
殿に、千狐……それから柳川城も……。

やくも
うちも居るだに!

足利氏館
ふふ、やっぱり坊やたちだったのね。また会えて嬉しいわ♪

殿
…………!

千狐
……ここは、徳丹城さんの御城ですよね。
お二人は、どうしてこちらに?

足利氏館
最近、徳丹城ちゃんの顔を見ていないから、様子を見にきたのだそうよ。
お友達の心配をしてあげるなんて、多賀城ちゃんとっても優しいわよね♪

多賀城
や、優しくなどない!
わらわは古代城柵の一角として、
当然の役目を果たしているだけなのだ!

多賀城
というか、足利氏館! 前々から言っていることだがおぬし、
わらわをことあるごとに子供扱いするのはいい加減やめるのだ!

足利氏館
子供扱い? 何のことかしら……?

多賀城
しらばっくれるでない!

多賀城
道は分かると言っておるのに、
わらわの手を引いてここまで案内してしまうし……。

多賀城
途中で茶屋に寄れば、
わらわのお茶をふーふーして冷まそうとするし……。

多賀城
言っておくが、御城としての歴史はわらわの方がずーっと古いのだからな!

足利氏館
それは分かっているつもりなのだけど……どうしてかしら、
多賀城ちゃんを見ているとつい、手を貸してあげたくなっちゃうのよね。

足利氏館
愛嬌があるというか、隙があるというか。
お母さんとしての矜持が、放っておくことを許さないというか……。

多賀城
ぅぐ……またそのようなことを言いおって……!

多賀城
やはり、あれか……おぬしの方が大きいからか!
おぬしのそれが少しばかり大きくて!
わらわのが小さいから! そういうことなのか!?

足利氏館
私が大きい? なんの話かしら……?
ごめんね多賀城ちゃん、お母さんが分かるようにもう少し詳しく……。

多賀城
……もう良い! 徳丹城に会うのは機会を改めることにする!
それでは、失礼するのだ!

足利氏館
あら、多賀城ちゃん……どこへ行くつもりなのかしら?
そっちは――

多賀城
案内は不要! わらわは一人で帰れる!

足利氏館
でも、多賀城ちゃん――

足利氏館
そっち、多賀城ちゃんの御城とは逆方向よ……?

多賀城
…………。

多賀城
そ、それが何だ?
ちょーど散歩をしようと思っていたのでな、遠回りをして帰るつもりだったのだ!

多賀城
とにかく、わらわはこれで失礼する!

足利氏館
あ……多賀城ちゃん!

足利氏館
そっちは道が険しくなっていて危ないわ……待って、多賀城ちゃん!

やくも
殿さん、うちらも行くだに!
うちが作った武器を渡さんと!

殿
…………!

柳川城
そうですね……それに、
多賀城さんをあのまま放っておくのもなんだか心配です……。

千狐
では、お二人の後を追いましょう!

後半
足利氏館

多賀城ちゃーん!

多賀城
足利氏館の奴……まだ追ってきておるのか……。

足利氏館
ちゃんと前を向いて歩くのよー!

多賀城
何なんじゃ、彼奴は……。
待てと言ったり、歩けと言ったり……。

多賀城
足利氏館! 繰り返すが、見送りは不要じゃ!
おぬしも自分の御城へと帰るが良い!

足利氏館
振り向かないで、多賀城ちゃーん!
そこから先は、急な下り坂になってるから――

多賀城
……おっ?

多賀城
うぉ、おおおおおおっ!?

足利氏館
足元に注意よー……って言おうとしたのだけど……。

千狐
遅かったみたいですね……。

多賀城
うおおおああぁぁぁぁーーーーー…………。

やくも
た、多賀城……。

やくも
たがじょーーーーーーー!!

殿
…………。

千狐
…………。

千狐
すごい勢いで転がり落ちていったの……。

やくも
えーみんしてもおかしくない勢いだったがや……。

――――

多賀城
うぅ……膝がじくじく痛むのだぁ……。

足利氏館
手当てはこれで、よし……と。

足利氏館
軽く擦りむいたくらいで、
大きな怪我がなくて安心したわ。

多賀城
……あ、ありがとうなのだ。

多賀城
…………。

多賀城
足利氏館、わらわは――

足利氏館
……私はね、別に多賀城ちゃんのことを見くびっていたり、
見下している訳ではないのよ?

足利氏館
ただ、ちょっと慌てん坊さんなところがあるから、
お節介を焼いているだけなの。

足利氏館
誰にだって不得意なことはあるものよ。子供でも、大人でもね。
だから無理して背伸びなんかしないで……もっと私のこと、頼ってもいいのよ。

多賀城
……すまなかったのだ。

足利氏館
謝ることなんてないわ。
早く怪我を治して、一緒に遊びましょうね♪

千狐
…………。

千狐
あの、多賀城さん……もしよろしければ、
帰り道は千狐の転移でお送りしますが……。

足利氏館
ご心配には及ばないわ、千狐ちゃん。
私がおんぶして送り届けますから。

足利氏館
ゆっくり歩いて……多賀城ちゃんとの時間を楽しもうと思うの♪

千狐
そうですか……はい、そうですね。
……それでは、多賀城さんのことは足利氏館さんにお願いします。

柳川城
やくもさん。お別れの前に武器を……。

やくも
お? おぉー、そうだっただに。
元々の目的を忘れるとこだったがや。

やくも
今日うちらが来たのは、多賀城にこれを渡すためで……。

多賀城
おお、見事な弩なのだ。
そうか……わらわが依頼した武器を、ここまで届けてくれたのだな。

やくも
きっと多賀城の役に立つと思うだに。
だから、怪我が治ったら使ってやってほしいがや。

多賀城
もちろんだ。
この恩は、戦での働きで返そう。

多賀城
この弩……うむ。
背負うくらいなら、今のわらわでも――

足利氏館
いけません。私が一緒に運びます。
だから多賀城ちゃんは、私の背中でゆっくり体を休めなさい?

足利氏館
軽傷で済んだとはいえ、
今の多賀城ちゃんは怪我人なんだから。ね?

多賀城
……わ、分かったのだ。
すまぬが、お願いするのだ。

足利氏館
(多賀城ちゃんったら、
 随分しおらしくなってしまったものね……)

足利氏館
(この流れなら……)

足利氏館
…………。

足利氏館
帰り道の間も、私の言うことをちゃんと聞くのよ。できるわね?

多賀城
分かったのだ……大人しく足利氏館の言うことを聞くのだ……。

足利氏館
ああ、それから今後は、
私のことを『お母さん』と呼んでいっぱい甘えるのよ。できるわね?

多賀城
……分かったのだ。
今後は足利氏館のことをお母さんと――

多賀城
――ん?

多賀城
って、どさくさに紛れて何を言わせようとしてるのだー!

足利氏館
惜しかったわね……あとひと押しだったのだけど。

多賀城
本性を表したな……やっぱり足利氏館は、
わらわを子供扱いしようとしてるのだ!

多賀城
本当に心配してくれているのだと、じーんとしてたのに!
ちょっと感動してたのに!

足利氏館
はいはい、文句は帰り道で聞きますからねー♪

足利氏館
それでは皆さん、またお会いしましょう。
さようなら♪

殿
…………!

無事に目的を果たした殿一行は、
重なり合った二つの背中を見送り、次なる目的地へと向かうのだった――

秘伝武具 友を尊び、詩を紡ぐ

続いて中国へと向かった一行は、白帝城の御城に
到着する。その時漂ってきた香ばしい匂いに
つられて歩みを進めると、その先にあったのは――。

前半
――中国、某所。

千狐
さて、と……転移に成功したところまでは良かったのですが、
到着まではまだしばらく掛かりそうですね。

千狐
白帝城さんとは面識がありませんから……、
付近まで転移して、後は徒歩で移動するしか手立てはありません……。

千狐
それで……やくも?
ここから先は任せていいのよね?

やくも
もちろんだに!
うちにどーんと任せておくがや!

殿
…………。

やくも
と、殿さん……。
そんな不安そうな顔をしないでほしいだにぃ……!

やくも
心配はいらんだに……白帝城までの道のりなら、
ここに地図を用意してるがや!

やくも
この地図によれば白帝城は、んー……。

やくも
…………。

やくも
……千狐、案内を頼むだに。

千狐
もちろんいいけど……白帝城さんのところまでの地図なんて、
そんなものどうやって手に入れたの?

やくも
え? ……それはそのー、あれだに。
まだ教えることはできないがや。
異国風に言うと、さぷらいずって奴だに。

千狐
さぷらいず……?

やくも
と、とにかく! 急いで白帝城に向かうだにー!

――――

柳川城
御城が見えてきました。
どうやら、無事に到着できたようですね……。

千狐
ええ……ひと安心です。やくもが用意した地図を頼るなんて、
一時はどうなることかと思ったけど……。

やくも
なんだか、すごく失礼なことを言われてる気がするだに。
……ん?

やくも
これは、どこからか……、
美味そうな匂いが漂ってきてる気がするがや……?

千狐
確かに、香ばしい匂いが――ん?
あそこに見えるのは……?

甲府城
いらっしゃい、やくもちゃん!
来てくれたんだね♪

やくも
おお、甲府城もこっちに来てたんやね!
会えて嬉しいだに♪

甲府城
それはこっちの台詞だよー。
あの件ではいっぱい苦労をかけちゃったし……。

やくも
なんのなんの、
あんなの苦労の内に入らんがや♪

千狐
あら……やくも、甲府城さんと知り合いだったの?
それに、あの件っていったい……?

やくも
だに。甲府城とは最近、
ちょっと手紙のやり取りをしてて――

やくも
――と。なんでもないがや。
さぷらいずだから、これ以上は喋っちゃだめなんだに……。

千狐
ふーん……?

甲府城
殿とは始めましてになるね。僕は甲府城!
甲斐国の中心地として栄えた町、甲府の御城だよ。
古くから伝わる祈祷術でいっぱい手助けするつもりだから、よろしくね♪

殿
…………!

柳川城
ということは……。
そちらにいらっしゃるのが、白帝城さんですね?

白帝城
うむ……お初にお目にかかる。
我が名は白帝城……白帝山上に位置し、
古来より――くちゅんっ!

白帝城
古来より軍事の要衝として――くちゅんっ!
知られる御城で……こほ、こほっ……。

白帝城
す、すまない……み、見ての通り、
少々病気がちなところもあるが……何卒、よろしく頼む。

殿
…………!

やくも
それで、さっき美味そうな匂いがしたんやけど……、
宴会でもしてたんだに?

千狐
真っ先にする質問がそれなのね……。

白帝城
宴会……まぁ、そう呼んでも間違いはないのだが、
一応、目的は情報交換ということになっているな。

甲府城
もちろん、美味しい料理でお腹をふくらませるのも、
大事な目的だけどね♪

柳川城
先程感じられた香りは……、
お二人が食べていたお料理から漂っていたものだったのですね。

やくも
……ってことは、そのお皿に盛られてる真っ赤なのは、
これも、料理なんだに?

白帝城
ああ、それは友人からの差し入れだよ。
麻婆豆腐といって――

やくも
くん、くん……。
おお、さっき感じた美味そうな香りの正体は、これやったんやね♪
一口、貰ってもいいがや?

白帝城
もちろん構わないぞ。
ただ、一つ注意してほしいのが――

やくも
やっただに♪
それじゃ一口……あむっ。

千狐
まったくやくもは、こんなところでも食い意地を張って……。

やくも
もぐ……くれるって言うんだから、遠慮なんてすることないだにー♪
もぐ、もぐ……。

やくも
んー、美味いだに♪
鶏がらの風味に……後から、ぴりりと香辛料の辛味が効いて……。

やくも
き、効いて……。

千狐
……?
どうしたの、やくも?

やくも
か、か……か……!

やくも
辛、辛あぁぁぁぁ!?

やくも
な、なんだにこれは! か、辛い……辛すぎるがやっ!?

やくも
これ、間違えてるだに……!
何かはわからないけど、
何かの分量を間違えてるとしか思えんだに!

白帝城
み、水を飲むのだ! さ、これを……!

やくも
んぐ……ごく、ごく……。
もっと水を……水をよこすだにぃぃぃ……!

千狐
因果応報なの……。

――――

甲府城
大丈夫、やくもちゃん?
……もう落ち着いたかい?

やくも
一時はどーなることかと思ったがや……。

甲府城
異国の料理って面白いよねぇ、ほんとに。
海を一つ越えるだけで、ここまで文化に差が生まれるなんて。

甲府城
辛い辛いとは聞いていたけど、実際味わってみて驚いちゃったよ。

千狐
そう言っている割には、甲府城さん……。
先程からお料理に手を付けていないように見えますが……。

甲府城
いやいや、僕も手は付けたんだよ?
余りに辛かったから、一口舐める程度にね……。

甲府城
やくもちゃんみたいに頬張ったりなんてしたら……。
考えるだけでもぞっとしちゃうよ。

やくも
まだヒリヒリしてるだに。
後遺症が残るかもしれんがや……。

柳川城
そのお料理、差し入れ……と仰っていましたが、
白帝城さんはこれほど辛いものを、日常的に食べているのですか……?

白帝城
ああ、健康法の一環として、なるべく毎日食すようにしている。
病気がちなこの体が、今の状態で踏みとどまってくれているのも、
この激辛健康法のお陰だ。

白帝城
この麻婆豆腐は友人……成都城が作ってくれたものでな。
もっと辛い方が彼女の好みには合っているらしいのだが、
私としても今の辛さが限界で……。

白帝城
まぁ、それでも……時折、
軽い腹痛に悩まされることがあるのだが……。

やくも
(それ……ほんとに健康になってるんだに……?)

千狐
それで、話題が逸れてしまいましたが……確か、
目的は情報交換……と仰っていましたよね。
甲府城さんはそのために、海を越えてここまで?

甲府城
うん、そうだよ♪ 最近読んだ本や、
新しく得た知識なんかを共有してたんだ。
勉強会って言ってもいいかな。

甲府城
本と縁の深い僕たちは、
そこに記された記憶や思いも、一緒に背負って生きているからね。

甲府城
だから、本によって得た知識を語り継いでいくことは、
僕らにとって大事な役目の一つでもあるんだよ。

白帝城
異国の書物から得られる情報には、
発見も少なくない……良い刺激にもなる。
……他には、自分たちで作り上げた物語を語って聞かせることもあるな。

甲府城
そっちは趣味というか……雑談みたいなものだけどね。
沢山本を読んでると、物語の主人公に憧れちゃうんだよ。

やくも
ほぇー……。
甲府城が主人公の物語……どんな物語だに?

甲府城
んー、やっぱり、戦場で勇ましく振る舞っている姿を想像することが多いね。
僕は普段、室内で本を読みふけってばかりいるから、その反動かな。

甲府城
時には、白帝城ちゃんと敵対して、
大立ち回りを演じる物語を考えてみたりとかね……。
そうだなぁ、例えば――

後半
甲府城

――みたいな感じかな。
物語と呼ぶにはお粗末かもしれないけどね。

甲府城
今は生きるか死ぬかの時代だけど……いつか平和が訪れたら、
文化や物語がもっと重要なものになると思うんだ。

甲府城
だから……本を守り、
先人の言葉を語り継いでいくことは、とても大事なことだと思ってる。
……戦で民を守ることにも、負けないくらいにね。

白帝城
何にせよ……甲府城や、殿たちが、
ここまで足を運んでくれるのは……本当にありがたい。
この体では、長旅もそう簡単にはできないのでな……。

白帝城
ん……そうだ、
突然の来訪で聞きそびれてしまっていたのだが、
殿たちは、どうして私の御城にまでやってきたんだ?

白帝城
何か御用があるなら、伺っておこうと思うのだが……。

甲府城
えへへ、それはねー……。
やくもちゃん、準備はいい?

やくも
ふふふ、もちろんだに……。

やくも
それじゃー、白帝城の質問にお答えするだに。
うちらがどうして白帝城の御城に来たか、それは――

やくも
これを白帝城に渡すのが目的だったんだにー!

白帝城
む、これは……本か。

甲府城
僕がやくもちゃんに協力をお願いしたんだよ。
白帝城ちゃんが好きそうな本を手に入れることはできないかなぁー、って。

やくも
武器を作ることなら、うちの十八番やけど……本ってなると難しいがや。

やくも
でも、何の力にもなれないっていうのはイヤだったから、
できる限りのことをやってみたんだに!

やくも
本に縁のある城娘に、色んな知識を持つ城娘……。
うちらが今まで出会ってきた城娘には、色んな子が居るだに。

やくも
だから、知り合いの、その知り合いの……そのまた知り合いの……、
って辿っていけば、きっと良い本が見つかると思ったがや。

千狐
やくもが言ってたさぷらいずって、このことだったのね。

白帝城
そうか……そうだったのか。
それでわざわざここまで。

白帝城
…………。

白帝城
私の、この体の病弱さは城娘としての業……。
生涯を通じて付き合っていかなければならないものだが、
決して……悪いことばかりではないのだな。

白帝城
守られ、支えられなければ、私はここまで来ることはできなかった。
……だからその分、多くの優しさと出会うことができた。

甲府城
…………。

白帝城
そして今日。甲府城や、やくも……皆がくれたこの優しさが、
これからの私を、作っていくんだ。

白帝城
いつか……この恩に報いる働きをしてみせる。心から誓うよ。

白帝城
私を支えてくれる皆のためなら、
どんなことでもできる……そんな気がするんだ。

殿
…………!

甲府城
さぷらいず作戦は大成功だね!
ありがとう、やくもちゃん♪

やくも
白帝城に喜んでもらえたんなら何よりだに♪

柳川城
さて……当初予定していたものは、
これで全て渡し終えましたね。

やくも
つまりは、あとはうちが刀を仕上げるだけ、ってことやね……。

千狐
そうだけど……大丈夫?
刀作りはどうにかなりそう……?

やくも
んー、やってみないとわからんけど、
良い気分転換にはなっただに!

やくも
帰ったらすぐに工房にこもって、
やれるだけのことをやってみるがや……!

殿
…………!

千狐
承知しました!
それでは、所領に帰還いたしましょう!

こうして、目的を果たした一行は白帝城と甲府城の笑顔に見送られ、
所領へと帰還するのだった――

外伝 とある浮遊少女の願い

空にぽつりと浮かぶ科学と叡智の結晶、ラピュータ。
そこに姿を現した一人の城娘が、静寂で包まれた
その美しい御城に、賑わいをもたらす。

前半
エーリューズニル

むにゃ……んぅ、
父様……父様ぁ……。

エーリューズニル
……ん?

エーリューズニル
あら……ここは、どこかしら……?
お部屋のベッドで眠っていたはずなのだけど……?

???
……ようやく目覚めたか。

エーリューズニル
……?

???
……よくぞここまで来た。
誇るが良い……お前は運命によって選ばれたのだ。

エーリューズニル
運命……選ばれた……?
どういうこと?

???
だが気を緩めるでないぞ、試練はまだ始まってすらいない。
お前はまだ挑む権利を得たにすぎないのだ……。

エーリューズニル
貴方……いったい、何を考えているの……?

???
さぁ、お前の力を見せてみるがいい!
フハハハハハ……!

???
フハハハハハハ……。

エーリューズニル
こ、これって……。

エーリューズニル
これって……私も乗っかった方が良いのかしら……。

ラピュータ
フハ、ハハハ…………。

ラピュータ
ハハ、ハ…………ハ……。

エーリューズニル
…………。

ラピュータ
…………。

ラピュータ
……ようこそ。科学と叡智の結晶、空飛ぶ島の御城へ。
私の名前はラピュータよ。

エーリューズニル
(何事もなかったかのように自己紹介を……)

ラピュータ
貴方は……城娘、よね?
お名前を聞かせてくれる?

エーリューズニル
わ、私はエーリューズニル……。
北欧の神話に謳われる、死の国の女王が住む館よ。

ラピュータ
よく来てくれたわね。
ちょうど退屈していたところだったの。

ラピュータ
あまりの退屈さに……ここ数日は、
来訪者を歓迎する奇抜な手段を考えることで、
頭がいっぱいになってしまっているほどよ。

エーリューズニル
(それであんな振る舞いを……)

ラピュータ
着想は悪くなかったのだけど、
私が演じられるか……という問題があるのよね。
……教訓にしなきゃ。

エーリューズニル
ええと、それで……ここはいったい、どういう場所なのかしら?
それに、どうして私はここに……?

ラピュータ
そうね。まずはこの島……いえ、この世界について、
教えてあげた方が良さそうね。

ラピュータ
案内するわ、ついてきて。
ついでに、貴方のことも教えてもらえるかしら?

エーリューズニル
ええ、わかったわ……。

後半
ラピュータ

――ということなのだけど、理解してもらえたかしら。

エーリューズニル
……物語を愛し、語り継ぐ者たちの願いが作り上げた世界。
それがこの島、ということなのね……。

エーリューズニル
理解はしたけど……驚いたわ。
物語の世界と、こんな風に行き来できるなんて。

ラピュータ
ふふ、それは仕方のないことよ。頭の中に描いたことはあっても、
実在するとは夢にも思わない……それが私の世界だもの。

ラピュータ
……でも、それを言うなら私だって驚いたわ。
神話で謳われる死の国の女王が住む館……だったかしら?

エーリューズニル
ええ。今は王様が治める所領で、
城娘のお友達と一緒に暮らしているわ。

エーリューズニル
王様は……私を外の世界に連れ出して、自由を与えてくれた……。

ラピュータ
なるほど……顔を合わせた時、今まで出会ってきた城娘とは、
違った力を秘めている印象を受けたけど……気のせいではなかったのね。

ラピュータ
それにしても、死の国とは……興味深いわね。
神話も一つの物語と捉えるならば、貴方と私は近い存在と言えるのかしら……。

エーリューズニル
貴方と私が? ……そうなの?

ラピュータ
そんな貴方が今は……王様の世界に存在している……。

ラピュータ
もしかしたら、私が此地を離れられないのも、
『ここが隔絶した場所にある』という想念に縛られているだけなのかも……。

エーリューズニル
……ごめんなさい。
私、難しいことはよくわからなくて……。

ラピュータ
いえ、こちらこそごめんなさい。
……答えがほしかったわけではないの。

ラピュータ
でも……王様が外の世界に連れ出して、
自由を与えてくれた……か。

ラピュータ
ふふ……王様はいつでも、
誰かのために戦っているのね。

エーリューズニル
いつでも?

ラピュータ
ここに来た城娘が王様の話をする時は、いつもそう。
王様が誰かを守るために、誰かを救うために戦った……そんな話を聞かせてくれる。

ラピュータ
…………。

エーリューズニル
……ラピュータ?

エーリューズニル
…………。

エーリューズニル
……ラピュータは、王様に会いたいのね。

ラピュータ
……? ええ、そうね。
もう一度会って、ゆっくりお話しができたら……、
そう夢に見たことは、一度や二度じゃないわ。

エーリューズニル
…………。

エーリューズニル
……寂しくは、ないの?

ラピュータ
……え?

エーリューズニル
この島は、素敵な場所だわ。
……空気は澄んでいて、景色も綺麗。
だけど、すごく……。

エーリューズニル
すごく、寂しい場所だわ……。

ラピュータ
…………。

エーリューズニル
ラピュータは、こんな所で暮らしていて……心細くはないの?

ラピュータ
……ふふ。
この島に来た子はね、皆同じようなことを言うのよ。
寂しくはないの、辛くはないの、って……。

エーリューズニル
それは……当然のことだと思うわ。
……だって、こんな空の真ん中で、
ずっと一人ぼっちでいるって考えたら……。

ラピュータ
そうね。確かにここは、寂しい場所だわ。
最近は、そう感じる機会が増えた気がする……。

エーリューズニル
昔はそうじゃなかったの……?

ラピュータ
城娘として顕現したばかりの頃はね。
……独りで生きるのが当然のことだと思っていたわ。

ラピュータ
独りで居る時は……本を読んだり、空を見上げたり、見下ろしたり。
別段、悩みを持つこともなく暮らしていたの。

エーリューズニル
…………。

ラピュータ
そんな中でも、ずっと一人ぼっちというわけではなかったわ。
時々……この世界に迷い込む城娘がいたの。今の貴方のようにね。

ラピュータ
色んな人が訪れては去って……。
静かになったと思ったら、また賑やかになって。その繰り返し。

ラピュータ
それでも、しばらくは……これまで通りの私でいられた。
むしろ、来訪者をうっとうしいと思う時もあったくらい。

ラピュータ
だから……その変化がいつ起きたのかは、
自分でもはっきり思い出すことはできないんだけど……。

エーリューズニル
変化……?

ラピュータ
ある日、突然……、
原因の分からない不安に襲われるようになったの。

ラピュータ
何をしていても落ち着かない、
どこか、物足りない……そんな感覚……。

ラピュータ
それからしばらくの間、私は……、
この島を端から端まで、幾度も歩き回ったわ。
そうすれば、この不安をどうにかできるんじゃないか、って……そんな気がしたの。

ラピュータ
そんな日が何日も続いて、やっと気づいたわ。
この島は心細くて、とても寂しい場所で……。
私が感じているのは『寂しさ』なんだ、って。

エーリューズニル
……それまでは、気づかなかった?

ラピュータ
気づかなかったわ。この世界には、私独りだけだったから……、
寂しさなんて感情は、存在すらしてなかったのよ。

ラピュータ
でも、私は知ってしまった。
遠く隔てた向こうの世界に、城娘がいっぱいいて……、
その子たちはもしかしたら、私の友達になってくれるかもしれない、って。

ラピュータ
皆と居る時間が楽しくなった分……、
独りで居ることを辛く感じるようになった。

ラピュータ
こんな思いをするならいっそ――

エーリューズニル
……ずっと、独りで居たほうが良かった……?

ラピュータ
ええ。そう考える時もあった。
今も時々、考えてしまうことがあるわ……。

エーリューズニル
…………。

ラピュータ
……ごめんなさい。少し話し過ぎてしまったわ。
こういう思いは、口にしない方が良いって分かっていたつもりだったのだけど……つい。

エーリューズニル
…………。

エーリューズニル
私に……私に、お手伝いはできる?

ラピュータ
お手伝い……?

エーリューズニル
そう……ラピュータが幸せになるための、お手伝い。
こうしてお喋りすることでも、貴方の前からすぐに姿を消すことでも、何か……。

ラピュータ
…………。

ラピュータ
それに手を伸ばすのか、諦めるのか……。
どちらが幸せかは、今の私にはまだ分からないわ。

ラピュータ
でもね、エーリューズニル……。
一つ間違いないことがあるの。それはね――

ラピュータ
貴方がここに来てくれたことを、今……。
私がとっても嬉しく思っている、ということよ。

エーリューズニル
ラピュータ……。

ラピュータ
独りで居ることしか知らない時は、寂しさに苦しむこともなかった。
でも、その代わり……楽しい、嬉しい、って思いに心が華やぐこともなかったわ。

ラピュータ
だから私は……どんな形であれ、
この島にやってきた城娘は、精一杯もてなしてあげたいって思っているのよ。

ラピュータ
……そして、素敵な思い出を、
少しでも多く持ち帰ってもらいたいの。

ラピュータ
ふふ、ごめんなさい。……今日の私は、自分の話ばっかりね。
今度はエーリューズニル……貴方の話を聞かせてくれる?

エーリューズニル
私の……話?

ラピュータ
そう……貴方がこれまで見てきたもの、感じたこと。
楽しいことでも、辛いことでも……なんでも良いわ。聞かせてちょうだい。

エーリューズニル
…………。

エーリューズニル
ええ、喜んで。
ラピュータの話に負けないくらい長いお話を、いっぱい聞かせてあげる。

今この時を楽しむことだけ考えよう――
ラピュータは、心の片隅に居座る不安から目を逸らしつつ、
自らに何度も、そう言い聞かせるのだった……。

秘伝武具 ラム・ド・ジュスティス

一行が所領に帰還してから早、一週間。城娘たちの
間では、所領のとある場所で、夜な夜な呻き声が
聞こえてくる……という噂が広まっていた。

前半
――所領。

殿一行が白帝城から戻ってから一週間、
刀作りに励むやくもの苦悩は、未だに続いていた――

やくも
うううぅ~~~…………。

千狐
やくも……まだ悩んでいるのね……。

坂戸城
そうか……刀作りがここまで難航していたとはな……。

千狐
ごめんなさい……坂戸城さん、江戸城さん。
ご依頼の刀をお渡しするのが、遅れてしまって……。

坂戸城
いや、謝ることなどない。確かに刀の製作を依頼はしたが……、
急ぎでいただきたいというわけではないんだ。

坂戸城
ましてや、やくもがここまで苦しんでいるとなれば、なおさらだ。
急ぐことなど……いや、むしろゆっくりと、
無理のない範囲でやってもらえればと思うのだが……。

江戸城
私も同感です。
やくもさんの納得いく物ができあがるまで、幾らでもお待ちするつもりですよ。

やくも
二人が急かしてるわけじゃないってのは分かるんやけど……。
うち自身、この状態がずーっと続くことに堪えられそうにないんだに。

やくも
奥歯に物が挟まったというか、骨が喉に引っかかったというか……。
できることなら、少しでも早く完成させたい~って思ってるんだに。

やくも
それに、出来上がるまであと一歩、
あと一歩やと思うんやけど、ん~~~……。

江戸城
やくもさん、辛そうですね……。

坂戸城
ああ……何か、我々にも力になれることがあれば良いのだが……。

江戸城
ですが……この分だと、
今回のお話は見送った方が良さそうですね。

坂戸城
今回のお話?

江戸城
はい。実は、ふらんすの城娘から招待を受けていて――

???
なるほど……。
やはり呻き声が聞こえますね。こちらの方かしら……?

千狐
ん? どなたかいらっしゃったようですね……?

彦根城
あら……千狐さん。
それに江戸城さんと坂戸城さんも。

江戸城
彦根城さん……やくもさんの工房に御用ですか?

彦根城
いえ、そういうわけではないのですが……なるほど。
ここはやくもさんの工房だったのですね。謎が解けました。

坂戸城
謎? 謎、というと……?

彦根城
私、所領に少々用事がありまして、
数日前から滞在しているのですが……。
お友達の城娘から噂を聞いたのです。

彦根城
所領のとある場所にて……夜な夜な、
呻き声のような物が聞こえてくる、と……。

やくも
うぅ~~~~~ん……。

坂戸城
とある場所、というのは……この工房の辺りで?

彦根城
ええ、この工房の辺りで。
幼い城娘などは、あやかしの類が出たと言って怯えているらしく……。

千狐
その正体がやくもだった、と。
もう、夜ふかしはいけないって言ってるのに……。

千狐
ですが……良くないですね、このままだと……。

彦根城
そうですね。このままでは妖怪騒ぎが広まって、
やくもさんの工房に誰も寄り付かなくなってしまいます……。

千狐
あ、いえ……そちらの問題もそうなのですが、
このままではやくもの体が限界を迎えてしまいそうで……。

坂戸城
やくもの体が?
今のところは、元気そのものに見えるが……?

千狐
もちろんやくもは、神娘と呼ばれるに相応しい力を持ってはいます。
ですが、特別体が丈夫というわけではないんです。

千狐
今のやくもは目の前の作業に夢中になっています……きっと、
自分の体のことなんて考える暇もないくらいに。
ですから、このままだと……。

江戸城
心よりも先に体が音をあげてしまう、ということですか……。

千狐
はい……。

彦根城
千狐さん……やくもさんのことが心配なのですね。

千狐
それは……当然です。
あの子の世話を焼くのは、千狐の役目なんですから……。

坂戸城
しかし……千狐の言うことはもっともだ。
この勢いだとやくもは、力尽きるまで作業に没頭してしまう。

彦根城
やくもさんを工房から連れ出してあげれば良いのですね?

千狐
そして、できれば……一度、
刀のことを忘れられるような場所に連れていければ良いのですが……。

坂戸城
うむ、なかなか難しい注文だが、
それができないと、気分の転換にもならないからな……。

江戸城
そうですね……。
あ、そういえば……?

江戸城
そうです、思い出しました!
ちょうど今、私のところに良いお話が来ていたんです!

千狐
良いお話、ですか……?

江戸城
はい。実を言いますと、
ふらんすのコンシェルジュリーさんからご招待を受けていまして。

江戸城
日の本の皆さん……殿や、城娘たちと一度、
顔を合わせてお話しする機会をいただきたい、と……。

彦根城
こんしぇ……ふらんすとはまた、遠くから……。

江戸城
誠に恐縮ですが、日の本で名が知れている城娘ということで、
私を頼ってきてくださったそうです。

江戸城
元はと言えば、このご招待の件で、
殿や皆様にお声がけするために所領へ参ったのですが……、
すみません、すっかり忘れてしまっていて。

坂戸城
うむ、ふらんすで異国の城娘たちとの交流か。
……心の淀みを晴らすにはうってつけじゃないか。

千狐
ええ、正に渡りに船……では、申し訳ありませんが江戸城さん、
頼らせてもらっても良いでしょうか。

江戸城
勿論です。この度の旅行が、
皆さんにとって有意義な物になるなら、これに勝る喜びはありません!

千狐
それでは、殿や柳川城さんにもお声がけして、
すぐに出立いたしましょう!

――――

数刻後――

江戸城
――ということで……当初ご連絡していたよりも、
大所帯になってしまったのですが……。

コンシェルジュリー
いえ、問題ありません。その分交流の機会も増えるというもの。
私としては、ありがたい限りです。

コンシェルジュリー
と、……それでは、まずはご挨拶を……。

コンシェルジュリー
私はコンシェルジュリー。正義の名の下に、
フランスの安寧を守ることを宿命付けられた城娘。

コンシェルジュリー
王様、そして日の本の城娘の皆様。
ここまでご足労いただき、誠にありがとうございます。

殿
…………!

千狐
なんだか……すごく真面目な城娘なの……。

ロンドン塔
そうなんです。コンシェルジュリーちゃんは真面目な子……。
あまりの真面目さに、見ている方が疲れてしまうほどで……。

千狐
ロンドン塔さん!
あなたもこちらにいらっしゃっていたのですね。

ロンドン塔
ええ。実を言いますと……王様たちを招待しましょう、
とコンシェルジュリーちゃんに提案したのは私なんです。

柳川城
ロンドン塔さんが……?

ロンドン塔
はい……コンシェルジュリーちゃんとは以前から付き合いがあるのですが、
あの子……江戸城さんに――

コンシェルジュリー
そ、その話は後にしましょう! とにかくまずは御城へ!
皆様、ご案内しますのでついてきてください!

ロンドン塔
もう……コンシェルジュリーちゃんは……。

――――

――――

坂戸城
しかし、良いのだろうか。
千狐や殿に勧められるまま、付いてきてしまったが……。

彦根城
はい……私もまさか、異国に飛び立つことになるなんて……。
ですが、殿たちと一緒にお出かけするのは久しぶりのことなので、
なんだか胸が高鳴ってしまいます♪

坂戸城
まぁ……滅多にできない経験であることは間違いないな……。

やくも
だにぃ……。

やくも
工房に戻りたいがやぁ……。

千狐
そんなこと言わないで……。
あのまま刀作りに没頭してたら、体を壊してたかもしれないのよ?

やくも
そうかもしれんけど……ふらんすに来たって、
何が変わるわけでもないだにぃ……。

やくも
この前だって中国にまで足を伸ばしたけど、
結局刀作りは上手くいかんかったし……。

柳川城
ですがふらんすは、あの中国からも更に離れた異国の地。
千狐さんの転移がある私たちでも、気軽に足を運べる場所ではありません。

柳川城
目に映るものはどれも、日の本とは趣向の違うものばかりです。
ちょっとしたきっかけが、新たな着想につながるかもしれませんよ。

やくも
確かに……ふらんすの物は何もかも、
日の本とは発想が根っこから違うって感じがするがや……。

やくも
ん……あそこに見えるでっかい建物は――?

コンシェルジュリー
到着しました。
こちらが我が城、コンシェルジュリーになります。

やくも
…………!!

やくも
(な、なんだに……あの御城は……!)

やくも
(ぱっと見た感じ、すごく豪華できらびやかやけど……、
 どこか重苦しい、異様な空気も感じられるがや……。)

やくも
…………。

千狐
やくも……どうしたの?
ぼーっと突っ立っちゃって……?

やくも
こーぼー……。

やくも
コンシェルジュリー!
この街に、工房はあるがや……?

コンシェルジュリー
こ、こうぼう……?

やくも
うちはこれから、
今すぐに……刀を打たなきゃいけないんだに!

やくも
そうしないと……この、
頭の中に浮かんだ想像が消えてなくなってしまうがや……!

やくも
そんなことになってしまったら、
うちは……うちは、死んでも死にきれんだに!!

千狐
死ぬだなんて、大げさな……。

コンシェルジュリー
よ、よく分かりませんが、緊急事態ということですね……?

コンシェルジュリー
鍛冶を行う設備でしたら、
心当たりがあります! ご案内しましょう!

――――

――――

やくも
だにぃぃぃいいいいいい!!

かちーん こちーん かちーん こちーん かちーん こちーん かちーん!!
  かちーん こちーん かちーん こちーん かちーん こちーん かちーん!!
    かちーん こちーん かちーん こちーん かちーん こちーん かちーん!!

やくも
…………。

やくも
出来た……出来たがや!
うちが思い描いた物と、寸分の違いもない刀が……!

やくも
今まで行き詰まっていたのが嘘みたいに、
すんごい刀が出来上がっただにぃ~!

千狐
ええ……すごいわ、この刀。
確かにこれなら……工房に捨て置かれた、
あの見事な刀が失敗作と呼ばれていたのも頷ける……。

千狐
……って、やくも? これ、
コンシェルジュリーさん用に誂えられた物のように見えるのだけど、
気のせいかしら……?

やくも
そりゃそーだに。
コンシェルジュリーの御城を見た時にびびびーっときて、
その閃きに従うまま作った刀なんやから。

千狐
…………。

千狐
(江戸城さんと坂戸城さんの刀は……って話は、
 今はするべきじゃないわよね……)

千狐
(とりあえず刀作りが行き詰まっているところから、
 脱したことを喜びましょう……)

やくも
というわけで……はい。
この刀をコンシェルジュリーに贈呈するがや。

コンシェルジュリー
私にこんな素晴らしい刀を?
……良いのですか?

やくも
もちろんだに♪
きっとコンシェルジュリーなら、気に入ってくれると思うがや!

コンシェルジュリー
あ、ありがとうございます。
では、慎んでお受け取りします……。

コンシェルジュリー
っ……! これは……。

コンシェルジュリー
(初めて握るというのに、この刀……。
 まるで自分の手足のように感じられる……!)

コンシェルジュリー
(これを戦場で、思い切り振るうことができたら、
 どれほど良い気分が味わえるのでしょうか……)

ロンドン塔
…………。

ロンドン塔
ふふ、コンシェルジュリーちゃん……。
その刀の具合をすぐにでも試してみたい……そんな顔をしていますよ?

ロンドン塔
腕試し程度で良ければ、私がお相手しましょうか?

コンシェルジュリー
ぁ、いや……そんなことは、決して……。

やくも
無理してるのが見え見えだに♪
刀をじーっと見つめてニヤニヤ笑ってたがや!

コンシェルジュリー
それは……もちろん、刀の見事さに高揚を覚えたことは事実です。
……ですが、今回皆様を招待したのは私です。
そのような身勝手は許されません。

江戸城
身勝手などとは、決して思いませんよ。
その刀に対する興味を抑えきれない、
コンシェルジュリーさんの気持ちは……よく分かります。

江戸城
私も貴方と同じく、刀を武器として扱う城娘ですから。

坂戸城
ああ……それに、異国の剣術を見る機会などなかなか無いからな。
お目に掛かれるというなら、ぜひ見てみたいものだ。

ロンドン塔
……だそうですよ。コンシェルジュリーちゃん。

ロンドン塔
前から言っているじゃないですか。
……貴方は少し、力を抜くべきなんです。

ロンドン塔
この機会に、自分の求めるままに、
振る舞ってみるのも良いのでは……と思いますよ。

コンシェルジュリー
…………。

コンシェルジュリー
……承知しました。皆様がそう仰ってくださるなら。

コンシェルジュリー
演舞という形ではありますが、
このコンシェルジュリーの剣技……皆様の目にご覧に入れましょう!

後半
コンシェルジュリー

これは……予想以上です。
自分の実力が、十二分以上に発揮されている感じを覚えました。

ロンドン塔
ええ、本当に素晴らしい刀。
……私用にも一つ、弩をお願いしたいくらいです。

コンシェルジュリー
ありがとうございます、やくもさん。
こんな素敵なプレゼントをいただけるなんて。
このお礼はいつか……必ず果たさせていただきます。

やくも
礼を言うのはうちの方だに!
きっかけをくれたのはコンシェルジュリーがや!

やくも
この調子でふらんすを見て回れば、きっと……、
江戸城と坂戸城の刀もすぐに出来上がるに違いないだに!

千狐
もう、急にご機嫌になって。
さっきまでは落ち込みっぱなしだったのに……。

柳川城
ですが安心しました。
やくもさんがいつもの調子に戻って……。

殿
…………!

やくも
さぁ、コンシェルジュリー!
案内の続きを頼むだに!

コンシェルジュリー
ふふ、承知しました。
それでは次は……こちらへどうぞ。

秘伝武具 姫鶴一文字

コンシェルジュリーの案内でフランス観光を
続ける一行は、彼女の御城に建った四つの塔の
内の一つ、時計塔の前に訪れていた……。

前半
コンシェルジュリー

次は……こちらの建物になります。

やくも
ほぇー、でっかい時計だに……。

コンシェルジュリー
こちらの時計塔は、我が城に建つ四つの塔の一角。
壁時計としては、この辺りで最も歴史の古い物となっています。

コンシェルジュリー
時計を挟んで左右に並び立つ二人の女性が示しているのは、正義と力……。

コンシェルジュリー
今でも私は、時々この塔に立ち寄ります。
法廷という役割を与えられた自分の在るべき姿を、忘れないように、と……。

ロンドン塔
…………。

やくも
ほーてー?
ほーてーってのはいったい何なんだに?

柳川城
裁判が行われる場所のことですね。
人や組織の衝突を解決するための、
話し合いを行う場……と言えば良いでしょうか。

千狐
最初にコンシェルジュリーさんが『正義の名の下に』と仰っていたことには、
このような背景があったのですね……。

やくも
んー……喧嘩の仲裁役みたいなものがや?

コンシェルジュリー
はい、そのように受け取っていただいて間違いありません。

コンシェルジュリー
事実私は、フランスの城娘たちの間で時折起きる、
喧嘩の仲裁を頼まれることもありますから……。

ロンドン塔
ふふ……フランスの城娘たちは皆、ロワールの姉妹たちも含めて、
本当の姉妹のように仲が良いですからね……。

コンシェルジュリー
はい……ですからその分、
小さなことでぶつかり合うこともあって……。

坂戸城
…………。

坂戸城
ふ……姉妹喧嘩の仲裁、か。

コンシェルジュリー
……坂戸城さん?
何か、思うところでも……?

坂戸城
いや……私のかつての城主が、
内乱で義兄弟と争ったことがあったのでな。
……ふと、それを思い出してしまったのだ。

坂戸城
まぁ、ふらんすの城娘たちの喧嘩と比較するには、
毛色が違いすぎるかもしれんが……。

コンシェルジュリー
……差し支えなければ、
詳しいお話を聞かせていただけますか?

坂戸城
ああ……構わない。

坂戸城
内乱は上杉家の当主……謙信公の死をきっかけとして始まったものだ。
……各地で見られる家督争いと、大きな違いはない。

坂戸城
ただ、一つ特筆すべき点があるとするなら、
家督を継ぐ候補にあたる両者が、どちらも強い力を有しており……、
その上、その力が拮抗していたということだ。

坂戸城
ゆえに、その戦の爪痕は……、
勝者である我が城主にも、深く刻まれることとなった。

坂戸城
この内乱を堺に上杉家の力は衰退し、
後々まで影響を及ぼすこととなってしまった……。

坂戸城
……無論、あの内乱が起きた頃にも司法という物は存在していた。

坂戸城
だが、それでも……どうにか、別の結末に至る手立ては無かったのだろうか、と……。
其方の話を聞いていて、そのようなことを思ってしまったのだ。

コンシェルジュリー
…………。

コンシェルジュリー
それは……非常に難しい議題です。

コンシェルジュリー
正義というものは、自身を侵す別の正義と遭遇した時……、
互いを否定しなければならない。そういった運命にあります。

コンシェルジュリー
坂戸城さんの知る、その内乱が……どのような物かは分かりません。
ですが……きっと互いに譲れない正義があったのだと、私は想像します。

坂戸城
そうだな。戦が起こるからには、誰もが正義を掲げている。
私の城主も……対敵となった義兄弟も、そうだった。

コンシェルジュリー
……正義は、絶対ではありません。
そして、その下に布かれる法もまた、絶対では……ないのです。

コンシェルジュリー
私という御城は今まで、多くの結末を見届けてきました。
多くの判決……そして、多くの処刑を。

コンシェルジュリー
当時、私に隣設されていたのは革命裁判所……。
つまり、私の役割は恐怖政治下における、政敵の抹殺にありました。

コンシェルジュリー
その時、背負っていた正義が平等であったか、公平であったか、
と問われたら……私はそれに頷くことができません。

ロンドン塔
コンシェルジュリーちゃん、その話は……。

コンシェルジュリー
いいんです、ロンドン塔さん。
隠すようなことではありませんから。
むしろ、私はこの事実を……重く受け止めなければならないのです。

コンシェルジュリー
私が強く、自分に戒めていること。
……それは、私は正義の番人であって、正義そのものではない……ということです。

コンシェルジュリー
それが私、コンシェルジュリーという御城の歴史に対する……、
我が業に対する……在るべき姿勢だと考えています。

殿
…………。

コンシェルジュリー
申し訳ありません。少々重たい話になってしまいました……。

コンシェルジュリー
ただこの考えは……強き力を有する皆様にも、
通じる所があるかと思い……お話しさせていただきました。

江戸城
ありがとうございます。私も、
日の本を守る城娘の一人として……学ぶべきところが数多くありました。

彦根城
そうですね。力の振るい方には常に気を払わなければなりません。
私たちもまた……日の本を守る、という正義を掲げているのですから……。

坂戸城
景勝公の正義……そして景虎公の正義、か……。

やくも
…………。

千狐
どうしたの、やくも?
難しい顔をして……。

やくも
しっ……静かにするがや……。

やくも
今、うちは……想像の翼を広げて、
大空に飛び立とうとしてるだに……。

千狐
な、何を言ってるの……?

やくも
正義と、正義……。
つまり、刀とは戦場に立つ者にとっての……ぶつぶつ……。

やくも
……………………。

やくも
………………よし。

やくも
行くだに……行かなきゃ、ならんがや……。

千狐
……え?

やくも
呼んどる……工房が、工房がうちを呼んどるだに……。

千狐
やくも……ちょっと、やくもー……?

――――

――――数刻後。

やくも
ぃよぉーーし! 完成だにぃーー!

千狐
まったく……千狐の声も聞かずにふらふらと工房に向かったと思えば……。

千狐
それにしても、また……凄い刀ができあがったわね……。

柳川城
ええ。先程のコンシェルジュリーさんに贈られた物とは、
また……違った威容を漂わせています。

坂戸城
それは……私の刀だな。

やくも
……わかるだに?

坂戸城
ああ。見ているだけで伝わってくる。
やくもがその刀に込めた、思いが……。

やくも
遅れてしまって済まなかっただに……。
でもお陰で、納得がいくまで拘ることができたがや!

坂戸城
とんでもない。私の刀のために、
ここまで悩み抜いてくれたこと……心から感謝する。

坂戸城
では、ここで一つ……私もこの刀を用いて、
演舞を披露させてもらおうか。

コンシェルジュリー
演舞……ですか?

坂戸城
ああ。先程はコンシェルジュリーに良い物を見せてもらったからな。
こちらからも返礼が必要だろう。

コンシェルジュリー
はい……ぜひ見せていただきたいです。
坂戸城さんの舞を……!

彦根城
では、お相手は……私が務めさせていただきましょうか。

坂戸城
ありがたい。
彦根城が相手なら……遠慮なく、力を出し切ることができる。

彦根城
ふふ、それはこちらも同じこと。
観光のついでに、良い思い出を持って帰ることができそうです♪

坂戸城
よし……では、参るぞっ!

後半
坂戸城

ふぅ……少々、はしゃぎ過ぎてしまったようだ。
この辺りで幕引きとしようか……。

彦根城
はい……私も、坂戸城さんの熱にあてられてしまったのか……、
少々頑張り過ぎて、しまいました。こほ、こほっ……。

坂戸城
だ、大丈夫か、彦根城……?

彦根城
ご心配には及びません。
それより……皆さんの顔を見てみてください。
どうやら、私たちの演舞にご満足いただけたみたいですよ。

コンシェルジュリー
ありがとうございます……坂戸城さん。
素晴らしい演舞でした。

コンシェルジュリー
坂戸城さんの演舞を目にしたことで、
貴方が背負う業の一端を垣間見れたような……そんな、気がしました。

坂戸城
そうか……コンシェルジュリーにとっても、
実りある物になったなら、私も力を尽くした甲斐があったというものだ。

坂戸城
しかし、この刀……なるほどな。コンシェルジュリーが、
『十二分以上の力を発揮しているような感覚』と言っていた意味を理解したよ。

坂戸城
まるで、ずっと前から自分の愛刀として、
共に戦場を駆けてきたような……そんな錯覚を覚えた。

坂戸城
……それに、なぜだろうな。
この刀を見ていると酷く……懐かしい気持ちになるんだ。

坂戸城
…………。

坂戸城
所領に帰ったら……この刀を眺めながら、
かつての出来事に思いを馳せるのも良いかもしれんな……。

坂戸城
……ありがとう、やくも。
この刀、大切に使わせてもらう。

やくも
どういたしましてだにー!

江戸城
となると、最後は私の刀ですか。
……ふふ、これは期待するなと言う方が無理な話ですね。

やくも
大いに期待してほしいだに!
うちは必ず、期待に沿う物を……いや!
期待を大きく越える物を作ってみせるがや!

秘伝武具 三池之御太刀

すっかり日も暮れてフランス観光もひと段落
しようかというその時、江戸城は自身の背中に
刺さる視線に気づき、その源を探ろうとする……。

前半
彦根城

観光に熱中しているうちに……すっかり日も暮れてしまいましたね。

坂戸城
ああ……宵の街並みもまた乙なものだが、
そろそろ、体を休めたいところだな……。

ロンドン塔
そうですね……では、観光はこの辺りにして夕飯といたしましょうか。
コンシェルジュリーちゃんの御城に、お料理が用意されているはずです。

江戸城
……ふらんすの料理ですか。
実際に口にするのは初めてですが、どんな味なのか――

江戸城
――ん?

江戸城
(今、あちらの方から視線を感じたような……?)

コンシェルジュリー
(じぃぃー……)

江戸城
コンシェルジュリーさん……?

コンシェルジュリー
っ…………!?

コンシェルジュリー
(ぷいっ)

江戸城
…………。

江戸城
あの、コンシェルジュリーさん……?

コンシェルジュリー
は、はい? 何か御用でしょうか?

江戸城
いえ……先程から、
私の方へ視線を向けられていたので、どうかされたのかな、と……。

コンシェルジュリー
あ、それは……その……。

ロンドン塔
ふふ……コンシェルジュリーちゃんは、
江戸城さんのことが気になるのですよ。

ロンドン塔
お会いしたい、お会いしたい……って、
ずーっと願っていた、憧れの城娘ですから。

コンシェルジュリー
ろ、ロンドン塔さんっ!

ロンドン塔
良いじゃないですか……本当のことなんですから。
手紙だって、書き上げてから何日も出し渋って……。

コンシェルジュリー
後ほど推敲しようと思って、置いておいたんです!
なのに、ロンドン塔さんが勝手に日の本へ送ってしまって……!

ロンドン塔
申し訳ありません……。
出し忘れているのかと勘違いしてしまって♪

コンシェルジュリー
うぅぅ……わざとです。
ロンドン塔さんのそれは絶対わざとです……。

江戸城
しかし……なるほど。
コンシェルジュリーさんは私に興味をもってくださっていたと……。

コンシェルジュリー
はい。江戸城さんのご活躍は、
以前から幾度も耳にしていて……。

コンシェルジュリー
そんな江戸城さんと直接会えた訳ですから、
その動きを……一つも見逃さないようにと……。

ロンドン塔
そんな遠回しなことをせずに、直接お話を伺えば良いのに……。
そのためにこちらへご招待したのですから。

コンシェルジュリー
そのつもりでいたのですが、
いざ話しかけるとなると、緊張してしまって……。

江戸城
……なるほど、そうですか。
そうだったのですね……ふふふっ。

コンシェルジュリー
……?
江戸城さん……?

江戸城
すみません、失礼しました。
コンシェルジュリーさんの抱いている想いに、覚えがあって……。
それでつい、笑みが……。

コンシェルジュリー
私の抱く感情に、覚えが……?

江戸城
コンシェルジュリーさんと同じ様に……、
私にも憧れ、尊敬している城娘は数多くいます。

江戸城
直接お話しする前から、逸話だけを耳にしていると、
自分には手の届かない……遥か高みに居るように思えてしまうものです。

コンシェルジュリー
はい……。
私にとっての江戸城さんが、正にそれです……。

江戸城
ですが、そんな偉大な城娘と、実際に会って話してみると……。

江戸城
自分と同じように……弱い部分を持った、
普通の城娘であると気付かされるんです。

江戸城
人を寄せ付けない印象に反して、
実際は口下手なだけであったり……。

江戸城
愛嬌のある方であったり、抜けた部分のある方であったり。
そういったことを……話してみて、ようやく気付くのです。

江戸城
そして、そのような先人たちと触れ合うことで、
私自身……大きく成長することができました。

コンシェルジュリー
…………。

江戸城
ですから……コンシェルジュリーさんにも、
私のことを知ってみてほしいのです。

江戸城
遠い異国の、憧れの城娘……ではなく、対等な友人として。

コンシェルジュリー
対等な、友人……私と、江戸城さんが……?

江戸城
ふふ、嫌ですか?

コンシェルジュリー
いいえっ! 願ってもないことです!

コンシェルジュリー
た、対等なお友達ということはつまり……。
時々、お手紙など送ったりしても……良いのでしょうか。

江戸城
んー……それは少し、困りますね。

コンシェルジュリー
え゛っ……。

江戸城
時々、ではなく……頻繁に送っていただかないと。
先程仰っていたでしょう? 推敲に時間が掛かる、と……。

江戸城
お気軽に、思い立った時で構いませんから、
いつでも送ってください。……お返事、私も書きますから。

コンシェルジュリー
あ、あぁ……そういうことですか。
驚かさないでくださいよ、もう……。

ロンドン塔
良かったですね、コンシェルジュリーちゃん……。

ロンドン塔
ああ、そうです……仲良くなったついでに、
悩みも聞いてもらってはいかがですか?
ほら……ヴェル様との関係のこととか。

江戸城
悩み、ですか……。
私で良ければ、喜んで力になりますよ。

コンシェルジュリー
あ、いえ……ヴェル様のことは、その……。

コンシェルジュリー
えっと……なんと言えば良いか……。

江戸城
…………。

江戸城
すみません、勇み足でしたか……。
もちろん無理に聞き出したいという意味では――

コンシェルジュリー
――いえっ、違うんです!
お話を聞いていただけるのは、ありがたいことだと思っています。ただ――

コンシェルジュリー
ただ……ここに居る全員に聞かせるのは、
少し……というお話なので……。

コンシェルジュリー
可能であれば、江戸城さんと二人きりの時にしたいな、と……。

ロンドン塔
……ふふっ。二人きりで、だなんて。
コンシェルジュリーちゃん、大胆ですね♪

コンシェルジュリー
何が大胆ですかっ!
ただ私は、また重たい話で場を暗くしてしまうのは、と思っただけで……!

コンシェルジュリー
――とにかく、そういうことですから、
江戸城さんさえ良ければ、今夜にでも……。

江戸城
承知しました。時間は空けておきますから、
いつでもお声がけください。

コンシェルジュリー
はい、ありがとうございます。
……それでは皆様、私の御城にて宴を――

やくも
ただいま帰っただに~♪

コンシェルジュリー
やくもさん?
帰った、というのはいったいどこから……?

やくも
ちょっくら工房で……こいつを作ってただに。

コンシェルジュリー
この刀……いつの間に?

柳川城
というより、
いつ工房に行ったのかも気づきませんでしたが……。

殿
…………。

やくも
江戸城とコンシェルジュリーの話を聞いてて、
またびびびーっときたんだに。

やくも
ただ二人の会話を邪魔するわけにもいかんかったけん、
そーっと工房に向かったがや。

コンシェルジュリー
なるほど……。
それは、その……お心遣い感謝します……?

江戸城
……では、やくもさんが抱えているそれが……私の刀、ということですね。

やくも
江戸城の抱く志を体現するような刀を……。
その思いで打ったがや。受け取ってほしいだに。

江戸城
ありがとうございます……。

江戸城
…………。

江戸城
この刀……。
じっと見つめていると……何だか、心が張り詰めていくようです。

やくも
心が張り詰めていく……だに?

江戸城
はい。この刀に相応しい城娘にならなくては、
いや……なれるだろうか、と。
そんな事を考えてしまう程……見事な刀です。

江戸城
…………。

江戸城
コンシェルジュリーさん。
お相手、していただけますか?

コンシェルジュリー
…………。

江戸城
貴方の刀を、私の体で直接……確かめさせてください。

江戸城
そうすることでしか手に入れられない物がある……私は、そう思っています。

コンシェルジュリー
…………。

コンシェルジュリー
江戸城さん……中々熱血なところがあるのですね。

江戸城
ふふ、意外でしたか?

コンシェルジュリー
意外でした。でも、刀を交えれば更に深く……、
江戸城さんのことを知ることができるのですよね。きっと。

江戸城
ええ、そうだと思います……きっと。

コンシェルジュリー
でしたら一つ……試してみましょうか。
私の力が江戸城さんに、どこまで通用するのか……!

江戸城
遠慮は無用です……全力でぶつかり合いましょう。

後半
江戸城

はぁ、はぁ……。

江戸城
コンシェルジュリーさん。
そろそろ、終わりにしましょうか……。

江戸城
これ以上白熱すると……、
どちらかが傷を負うことになってしまいそうです。

コンシェルジュリー
そうですか。……そうですね。

江戸城
……どうかされましたか?

コンシェルジュリー
いえ……この戦いを続けられるなら、
少しくらい傷ついても構わない、と……。
一瞬、そんな考えが頭をよぎったものですから。

江戸城
…………。

コンシェルジュリー
すぐに冷静さを取り戻しましたが、
そんなことを思ってしまうくらい……素敵な時間でした。

コンシェルジュリー
また、いつか……、
手合わせをお願いしても良いでしょうか。

江戸城
ええ、もちろんです。
今度はぜひ、日の本まで遊びにいらしてください。

江戸城
目一杯もてなしますので……手合わせは、その折に。

コンシェルジュリー
承知しました……必ず、伺います。

コンシェルジュリー
……さて。時間も遅くなってしまいましたが、皆様……。
夕飯にいたしましょう。宴の用意は整っています。

やくも
おお、宴だにー……って、ん……?

やくも
そういえば、なんだかうち……、
物凄くお腹が減ってる気がするがや。

千狐
何を言ってるの、当たり前でしょう。
ここ一週間くらい工房にこもりっぱなしだったんだから……。

千狐
千狐が工房に置いておいた料理にも、
手がつけられてない時があったし……。

やくも
あぁ……あの料理、千狐が作ったもんやったんやね。
どっから湧いて出たのかと、気になってたんだに。

千狐
コンッ! やくもが倒れたらいけないと思って、
千狐は一日に何度も工房を覗いてたのっ!
感謝の言葉の一つくらい、あっても良いと思うのー!

やくも
わ、悪かったがや。それにすごく感謝してるだに……。
でもあの時は、刀のことで頭がいっぱいで……。

千狐
まぁ……分かってくれてるならいいの。
刀も無事に出来上がったことだし……。

やくも
とにかく! 今夜の宴は食いまくるがや!
この空腹はきっと、ふらんす料理を満喫するために用意されたものなんだに!

コンシェルジュリー
日の本からの客人に備えて料理は沢山用意してます。
ですから、満足いくまでご堪能ください♪

やくも
うおおぉぉぉ! やっただにぃぃ!

やくも
殿さん、コンシェルジュリーの御城へ向かうがや!
全速前進だに!

殿
…………!

憂いの失せたやくもを止める術はもはや存在せず……、
その後一行は夜遅くまで飲み、語らい……仲を深めあったのだった――



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