ストーリーテキスト/選ばれし城娘と秘伝武具_漆の陣

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目次

選ばれし城娘と秘伝武具 漆の陣[]

秘伝武具 三木鉄槌

片時の暇を利用し柳川・三柱神社へ訪れた一行。
その時、麺類を勢い良く啜り上げるような轟音が
響く。その先で待っていたのは、果たして――?

前半
千狐

さぁ、間もなく到着ですよ……柳川城さん。

やくも
だに! 目的地の三柱神社まで、あとちょっとがや!

柳川城
……皆さん、此の度は本当にありがとうございます。
私の故郷に帰る機会を作っていただいて……。

千狐
ふふ、殿が提案してくださったんですよ。
最近忙しさのあまり、柳川城さんがご自身の御城に帰れていないから、
慰労も兼ねて……と。

柳川城
そうだったのですね。
お心遣い感謝いたします、殿……。

殿
…………!

柳川城
あ……徐々に周囲の風景が、
馴染み深いものへと変わってきましたね。ふふっ♪

千狐
……自身と縁の深い場所だからか、
いつもより元気が溢れていますね、柳川城さん。

やくも
今回の宴の会場として、柳川城のすぐ近く……。
三柱神社を選んだのは、やっぱり大正解だっただに!

柳川城
そうでした。宴……確か今日は、
お客さんを招いているんでしたよね?
やくもさんの作った武器をお渡しするために……。

千狐
はい。お呼びした城娘は、お二方……。
異国からエゲル城さんと、それから――

???
ずる、ずるる……ずるるるるっ……!
ああ、お蕎麦が……お蕎麦が全身に染み渡っていくよぉ……!

???
ふふ……いい食べっぷりですね、三木城ちゃん。

千狐
――そう、三木城さんです。
……って、あら? 今の声は……?

――――

三木城
ずるる……ずるるるるっ……!

三木城
うま、うまうま……うま……! 美っ味ぁー!
何このお蕎麦、美味しすぎるんだけど~!

天童城
おかわりは沢山ありますから、どんどん食べてくださいね。

三木城
はーい! それじゃ遠慮なく!
ずるる……ずるるるるっ……!

やくも
…………。

千狐
もう宴が始まってるの……。

天童城
あら……?
そちらにいらっしゃるのは、殿ではありませんか。それに皆さんも!
お正月の宴でお会いして以来ですね♪

殿
…………!

三木城
んふぁ、殿~! お久しぶり~♪
ずるるっ……!

柳川城
天童城さんも三木城さんも、お久しぶりです。
……それにしても、どうして天童城さんがこちらへ?

天童城
やくもさんから招待のお手紙をいただいたのですよ。
『年越しそばの味が忘れられんから、機会があったらぜひ』……と。

やくも
ダメ元で頼んでみたんやけど、
まさか、承諾してもらえるとは思わなかっただに♪

千狐
もう、やくもったら……そんなに気軽に呼びつけて、
東北から此地までは、楽な道のりじゃないのよ?

天童城
いえ、いいんですよ。
私も皆さんとお会いしたいと思っていましたから♪

天童城
それに今回の旅は、各地に将棋を広める活動も兼ねているのです。
様々な城娘と交流し、将棋という遊戯の面白さを伝えつつ……、
此地までやってきました。

千狐
なるほど、道中で将棋を伝えながら……。

天童城
むしろ私にとっては、九州に足を運ぶ良い機会になったと思っています。
この宴が終わった後には九州を巡り、将棋を更に普及させ――

三木城
天童城ちゃん、おかわりー!

天童城
――あ、はいはい、ちょっと待ってくださいね……。

三木城
いやー、それにしても助かったよぉ。
播磨国からここまで、やっとたどり着いたと思ったら……限界がきちゃってさ。
それであたし、殿たちが来るまで横になって休んでたんだよね。

天童城
あれは行き倒れという方が正しいと思いますよ、三木城ちゃん……。

三木城
だねぇ。天童城ちゃんは命の恩人だよ、あはは!

やくも
ほんとに三木城は……いつでもどこでも行き倒れてるだに……。

天童城
……というわけで失礼ながら、
一足お先に私と三木城ちゃんとで、お蕎麦をいただいていたんです。
私はもうお腹いっぱい……。

天童城
はい、お蕎麦のおかわりをお持ちしましたよ。三木城ちゃん。

三木城
ありがとー! 天童城ちゃん大好き~!

天童城
ふふ、私も三木城ちゃんが大好きですよ。
お蕎麦を食べて幸せそうな貴方の顔を見ていると、
こちらまで幸せな気持ちになってきます♪

天童城
またお腹が空いたら……いつでも頼ってくださいね?(なでなで)

三木城
て、天童城ちゃん……なんて優しい子なの……!
あたし、今日の出会いは一生忘れないよぉ……。(ぎゅうぅ~)

天童城
きゃっ……ふふ、もうお蕎麦はごちそうさまですか?

三木城
ん~、まだまだ食べ足りないけど……、
今は天童城ちゃんとぎゅーってしたい気分なの。

三木城
天童城ちゃんの身体、柔らかいね。
こうやって寄りかかってると、すっごく落ち着く……。

天童城
そうですか……それでは、
私も三木城ちゃんの感触を堪能させてもらいますね……♪

千狐
ふふ、三木城さんと天童城さん、
すっかり仲良しになってしまいましたね♪

殿
…………。

三木城
でもさぁ……本当は良くないよね、こんなの。

天童城
良くない、ですか……?

三木城
だってあたし、まだご飯食べたばっかだもん。
それなのに、こんなごろごろしてたら、牛さんになっちゃうよぉ……。

天童城
なるほど、そうですね。
こんなことをしていたら、牛さんに……。

天童城
…………牛!?

天童城
(牛、牛…………牛!)

殿
…………?

天童城
……なりません。

三木城
……え?

やくも
…………え?

天童城
身体を動かしましょう。
動かさなければなりません……今すぐに。

三木城
ええっ、なんでなんで!?
急にどうしたの、天童城ちゃん!?

天童城
三木城ちゃんの言う通り、今私たちには危機が訪れています。
ですから私たちは、この危機と向き合い……運命に抗わねばならないのです。

天童城
とにかく、ごろごろしているわけにはいきません!
さ、立ち上がりましょう!

後半
天童城

はぁはぁ、はぁ、はぁ……。

三木城
はぁ、はぁ……ごめ……あたし、もー限界……。

天童城
はい……私ももう、一歩も動けません……。

三木城
で、今のはなんだったの……天童城ちゃん。
びっくりしちゃったよ、あたし……。

天童城
申し訳ありません、取り乱しました。
……お正月以降、この手の話題には少々敏感になってまして。
牛とか、肉とか……。

柳川城
(お正月の福山城さんの言葉が、
 響いているのですね……)

三木城
まぁ、あたしもいい腹ごなしになったから、いいけどさ……。

天童城
ですがこれで、ひと安心……。
たらふく食べたお蕎麦の分は帳消し……のはずです……。

三木城
だね……でも、はぁ……少し休んだ方がいいかも。
さすがに、疲れちゃった……。

天童城
ええ……私も、休憩をいただくことにします……。

秘伝武具 紅花の棘鞭

三柱神社の付近にて、野良猫の一団と遭遇する
殿一行。しかしその最中、猫の愛くるしさに
目の眩んだとある城娘が、暴走を始める……!

前半
千狐

大丈夫ですか……天童城さん、三木城さん。

天童城
はい。充分休息をいただきましたので、もうすっかり……。

三木城
ん~……あたしも大丈夫。
天童城ちゃんの身体に包まれたお陰で、ばっちり元気だよ♪

???
にゃー……。

柳川城
……ん? 今、何か声がしたような……?

???
にゃー、にゃー……。

千狐
気のせいではないようです……にゃーにゃー、
と猫の鳴き声のようなものが、どこからか……。

三木城
近くで野良猫がたむろしてるのかもしれないよ!
ねぇ天童城ちゃん、行ってみよ!

天童城
え……あ、はい。
では、一緒に行ってみましょうか。

やくも
うちも一緒に行くがや!

――――


にゃぁ、にゃぁ……。

エゲル城
おいでー、おいでー。
……ふふ、可愛いね。

ダノター城
不思議……。
こんなに沢山の野良猫が集まっているなんて。

エゲル城
ふふ、猫って素敵……ちっちゃくて、暖かくて。
触ってるだけで、生きてるって感じが伝わってくる……。

エゲル城
予定よりも早く着いたし、
王さまと会う前にもう少しここで猫ちゃんと――

三木城
――猫っ! どこっ!?

三木城
……って、あれ?
あなたたち、もしかして……城娘?

エゲル城
うん……そうだけど、
あなた――あ、そこに居るのは!

殿
…………!

エゲル城
王さま、それに皆も! わー、お久しぶり♪

千狐
エゲル城さん! もうこちらに到着されていたのですね♪

エゲル城
ついさっきのことだけどね!
ダノター城ちゃんと一緒に♪

ダノター城
……どうも、ごきげんよう。

やくも
おお、ほんとだに。ダノター城も居るがや!

エゲル城
お友達の大垣城ちゃんって子から、招待の手紙が来てて、
いつ日の本に行こうかーって時期を見計らってたんだって!
ちょうどいいから、あたしと一緒に行こーって誘ったの♪

ダノター城
そういうことだから……よろしくね。日の本の皆さん。

ダノター城
(どうせだったら、
 エディンバラ様もついて来てくれれば良かったのに……)

ダノター城
(エディンバラ様ったら
 『きっとダノターちゃんにとって良い経験になるから』なんて、
 保護者みたいなことを言って……)

エゲル城
……でね、やくもちゃんからの招待状の通り、
この三柱神社に到着したのはいいんだけど……。
そしたらこの、猫ちゃん軍団と遭遇しちゃって!

エゲル城
こんなに可愛い猫ちゃんを無視するわけにもいかないでしょ?
それで、ギリギリまで可愛がることにしようって決めたところだったの!

猫ちゃん軍団
にゃぁにゃぁ……にゃぁにゃぁ……。

柳川城
た、確かにこの可愛さ。
無視をすることはできそうにありませんね……。

ダノター城
…………。(じー)


…………?

ダノター城
ほら、こっちよ……。
私の方にも、ほら……来なさい……。


(ぷいっ)

ダノター城
…………。

ダノター城
……ねぇエゲル城。さっきからこの猫たち、
私に全く寄り付いて来ないのだけど……。

エゲル城
ダノター城ちゃんにはまだ、
恥じらいが残ってるもん。もっと心を開かなきゃ!
猫は賢い動物だから、あたしたちの心も敏感に読み取るんだよ~。

ダノター城
こ、心を……?
猫という生き物は、そんな能力を備えているの?

エゲル城
そう……だから猫と向き合う時は、
雑念を捨てて……心を穏やかに。

エゲル城
そして目線を合わせて……可愛くポーズ!
小首を傾げて、ゆっくり手招き!
おまけにトドメの鳴き声♪

エゲル城
にゃあ、にゃあ♪

エゲル城
……って、
自分も猫ちゃんになったつもりで話しかけるの! 分かった?

ダノター城
わ、分かった……やってみるわ……。

ダノター城
…………。(ごくり)

ダノター城
(小首を傾げ、手招き。
 おまけにトドメの……)

ダノター城
にゃあ、にゃあ……にゃあ……。


…………!


(とことこ……とことこ)

ダノター城
あら……ふふ、やったわ。
まだ警戒しているようだけど、少し心を開いてくれたみたい……。

柳川城
にゃあ、にゃあにゃあ……。

柳川城
あっ、私の方にも来てくれました♪

三木城
見て見て、あたしのとこにも!
ふわふわで柔らかいよぉ♪

殿
…………♪

エゲル城
……あっ。皆、抱き上げる時は、猫ちゃんの爪に気をつけてね?
ふとした瞬間に引っかかると、服が破けたり、怪我につながったりするから。

三木城
あ、そっか……気を付けなきゃだね。

エゲル城
それにしても……猫の爪って素敵だよねぇ。
普段はしまわれてるけど、有事の際にはにゅぅって、
顔を出して……相手を引き裂く。

エゲル城
形も、硬さも、機能も……獲物を捕えるために洗練されてる。
すごいよね、綺麗だよねぇ……柳川城ちゃんも、そう思わない……?

柳川城
え? え、ええ……そうですね……?

エゲル城
こんなにちっちゃくて可愛い生き物が、
こーんな武器を持って生まれてくるなんて……面白いよね。
ふふふ……。

エゲル城
あたしの御城の拷問器具とかに、応用できないかなぁ。
できたら面白いんだけどなぁ……。

やくも
…………。

天童城
……あの方が猫を愛でているのを見ていると、
背筋に寒気が走るのですが……私だけでしょうか。

千狐
いえ……千狐も今、
同じような感覚を味わっていました……。

???
にゃーにゃー……にゃー……。

エゲル城
……っ!?
今度はあっちの方から鳴き声が……!

エゲル城
こうしちゃ居られない!
あっちの様子も見てみようよ、ダノター城ちゃん!

ダノター城
ええっ? ちょっとエゲル城、待ちなさい……!

三木城
これ……追いかけた方がいいよね?
理由は分かんないけどなんか、胸騒ぎがする!

殿
…………!

柳川城
そうですね……すぐに後を追いましょう!

後半
ダノター城

――エゲル城はどこ?

やくも
見失ったがやっ!?

天童城
足跡が向こうへと続いています!
急ぎましょう、エゲル城さんが猫を見つける前にっ!

殿
…………!

――――

エゲル城
猫ちゃーん、出ておいで。
お姉ちゃんがいっぱいいっぱい可愛がってあげるから……、
怖がらなくていいよぉ……。

猫?
にゃあ、にゃあ……。

エゲル城
あ、聞こえた……そこの木陰かな?
今お姉ちゃんがぎゅううぅってしてあげるから、
そこを動いちゃ、ダメだからね……!

やくも
エゲル城があそこに! やっと追いついたがや!

千狐
お待ちください、エゲル城さん!
一旦落ち着いて――!

エゲル城
猫ちゃんまであと……、
三歩、二歩……一歩ぉ――そこだぁっ!

彦根城
……にゃっ!?

エゲル城
…………。

殿
…………。

エゲル城
猫ちゃん……じゃない?

彦根城
…………。

彦根城
ど、どうも……こんにちは、ですにゃぁ……。

秘伝武具 舞鶴天翔弩

鳴き声の元を追った先に待っていたのは、何とも
可愛らしい猫ちゃん――ではなく、彦根城だった。
一行は、彼女が此地に訪れた訳を尋ねてみるが……。

前半
彦根城

ど、どうも……こんにちは、ですにゃぁ……。

千狐
ひ、彦根城さん……どうしてこちらに?

彦根城
はい……私、こほっ……こほっ。
殿に差し入れをお持ちしようと、こちらまで伺ったのですが……。

三木城
差し入れ? なになに、食べ物かなっ?

彦根城
ええ、近江の牛です。
故郷自慢の味を、殿にもお裾分けしたいと思いまして。

天童城
(牛……!)

彦根城
ですが……けほ、けほっ……。
殿の所領まであと少し、というところで問題が起きてしまったのです。

ダノター城
問題……?

彦根城
はい、なんと私……。
とっても可愛らしい猫さんと遭遇してしまったのです……!

殿
…………。

彦根城
尻尾を揺らめかせながら、ゆっくりと歩き……私の方をちらり。
あの子の所作は明らかに、私を誘惑していました。
そして私に、その魅力に逆らう術は……なかったのです。

エゲル城
それは仕方ないね……。
あたしも同じ立場だったら、逆らえなかっただろうし……。

ダノター城
貴方の場合はそうでしょうけど……。

彦根城
結局私は、所領へ向かう道から逸れて……、
猫さんとの時間を満喫しました。

彦根城
追いかけっこしたり、一緒に日向ぼっこしたり、なでなでしたり……。
そして気づくと私は所領ではなく――

天童城
ここまで来てしまった、と……。

彦根城
ですが結果……こうして殿とお会いすることができました。
お陰様でより早く、美味しい牛肉を振る舞うことができます。
もしかしたら、猫さんが導いてくれたのかもしれませんね♪

三木城
それじゃ今日の宴には、
近江の牛を使った料理が並ぶってことだね!

やくも
これは……これは、
とんでもないことになってしまっただに……!

やくも
こんなことなら……昨日から絶食でもして、
もっと腹を空かしとくべきだったがや……!

天童城
ではそろそろ、宴の準備に入りましょうか。
私も、皆さんの分のお蕎麦をご用意しなければなりません。
……ふふ、腕がなりますね♪

彦根城
私もお料理の準備、お手伝いしますね。
近江の牛の素晴らしさをご堪能いただけるよう、尽力いたします♪

千狐
ありがとうございます、彦根城さん。
彦根城さんもぜひ、一緒に宴を楽しんでいってください♪

――――数刻後。

三木城
もぐ、もぐもぐ……。

三木城
ん~、うまーい♪
この牛さん、絶品すぎるよぉ……もーあたし、
近江に移住しちゃおっかなぁ……。

三木城
――あ、そういえば。
……ねーねー、やくもちゃん! 今日の目玉はまだ~?

やくも
だに? 今日の目玉って……何の話だに?

三木城
もー、しらばっくれないでよぉ。
今日の宴は、やくもちゃんお手製の武器を、
私とエゲル城ちゃんに渡すための場でもあるんでしょ?

エゲル城
そうだよ~。それを聞いて以来あたし、
ずーっと新しい鞭のことばっかり考えてきたんだから。
どんな音が鳴るのかなぁ……とげとげかな、つるつるかなぁ、って♪

やくも
おお、それはすまんかっただに。
蕎麦と牛があまりに美味かったから、つい……。

やくも
じゃ、そろそろ武器を渡すことにするがや!
これ以上引っ張っても仕方ないし……、
早いとこ、二人の喜ぶ顔を見たいだに♪

三木城
おお♪ ってことは、もうここに用意してあるってことだね?
あたしとエゲル城ちゃんの武器!

やくも
もちろんだに!
試行錯誤を重ねて完成した……自信作を用意しとるがや!

やくも
だーけーどー……実は今回、二人以外にも……、
さぷらいずな贈り物を用意しとるだに♪

柳川城
さぷらいず……?

殿
…………。

やくも
柳川城……これを受け取るがや!

柳川城
これを……私に……?

柳川城
これは……石弓ではありませんか……。
見たことのない形……それに、非常に精巧に造られています。

やくも
とーぜんだにっ! 性能から形状まで、
うちが練りに練って作り上げた、特注品がや!

やくも
いっつも一生懸命な柳川城への、感謝を込めた贈り物だに♪

柳川城
感謝……。

千狐
柳川城さんは本当にいつも、
殿や千狐たちのために頑張ってくれています……。

千狐
もうそんな状態が、ずっと続いていますが、
それは当たり前のことなんかじゃない……、と殿や千狐たちは思ったのです。

殿
…………!

エゲル城
いつも王さまの隣で、あちこち飛び回ったり、
戦ったり……絶対楽じゃないはずだもんね。

ダノター城
いつ救援を求められて、出陣することになるかも分からない。
……そんな状態が続いているんだものね。

やくも
柳川城には……うちも千狐も、
もちろん……殿さんも! 日頃からえっぱい助けられとる!

やくも
だから今日は、この柳川城の故郷・三柱神社でこの思いを伝えようって……、
殿さんと千狐と、相談して決めたんだに!

柳川城
そうだったのですね……。

柳川城
ありがとうございます。殿、千狐さん、やくもさん。
この石弓はずっと、大切にします……!

彦根城
……そうです、良いことを思いつきました。

彦根城
柳川城さん、その武器を使って……、
私と演舞を行いませんか?

柳川城
え、演舞……ですか?

彦根城
新しい武器の具合を試すには、良い機会になると思いますよ。

やくも
そりゃいい考えだに! 武器を作ったうちとしても、
柳川城がその石弓をどう扱うか見てみたいがや!

彦根城
そうです。それに――

彦根城
(――柳川城さんのいいところを、
 殿に見てもらう好機ではありませんか♪)

柳川城
(ひ、彦根城さん――それはっ……!)

彦根城
日頃……影に日向にと皆さんを支えるため、力を尽くしているのです。
たまには前に出たって、罰は当たりませんよ。ね?

柳川城
うぅ……わ、分かりました……。

柳川城
……では、皆さんのご期待にお応えできるよう、
全力で……演舞に臨ませていただきます……!

後半
彦根城

ここまでにしましょうか……けほ、けほっ……。

彦根城
腕を上げましたね、柳川城さん。
誠に、素晴らしい舞でした……。

柳川城
はぁ、はぁ……ありがとう、ございます。
……彦根城さんもお見事でした。

柳川城
それに、やくもさんから頂いた石弓……凄まじい力を感じました。
これがあれば今後は更に、殿のために活躍できそうです。

やくも
うちが武器を作る腕も、着々と進化していってるんだに♪
うちの今後も、楽しみにしておくといいがや!

エゲル城
柳川城ちゃんと彦根城ちゃんの演舞、すごかったぁ。
……思わず見惚れちゃったよぉ。
ね、王さまもそう思うでしょ?

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
あ……ありがとうございます。
殿からそのような、お褒めの言葉を頂けるなんて……。

柳川城
ですが私にとっては、殿のお役に立つため、
共に過ごしているこの瞬間も……掛け替えのないご褒美です。

柳川城
ですから私は、この日々がいつまでも……、
平穏が訪れた後も続くことを、願うばかりです。

殿
…………。

柳川城
改めて……これからもよろしくお願いします。殿。

殿
…………!

やくも
それじゃ次は、
三木城とエゲル城に武器を贈る番だにー♪

宴はその後も、大いに盛り上がり……。
日が暮れて、夜が更けるまで続いたのだった――

外伝 江戸城一家の一日

時を同じくして、江戸城の御城。この日、起源を
同じくする城娘が集い、宴の開催が予定されて
いたが、輪の外でたじろぐ者の姿が、一つ――

前半
――時を同じくして……ここは江戸城の御城。

ここでは本日、此地に縁ある城娘を集め、
宴を開催することが予定されていた――

寛永江戸城
やああぁぁーーー!

千代田城
むっ……!!

千代田城
……ふふ。どうした、寛永江戸城?
今日の稽古は、いつにも増して気合が入っているじゃないか。

寛永江戸城
はい、今日はお母様とお祖母様もいらっしゃると聞きました。
ですから……無様な姿を見せるわけにはいかないと思って……。

千代田城
ふ……なるほど、そういうことか。
では次は、もう少し厳しくいくとしようか。

寛永江戸城
はいっ、お願いいたします!

江戸氏館
ずずー……。

江戸氏館
……はぁ。
天気が良いと、お茶も美味しいねぇ……。

――――

元和江戸城
…………。

元和江戸城
うわ~、何あの空気……。

元和江戸城
皆で集まって、
ちょっとお茶して解散……みたいな感じだと思ってたのに。

元和江戸城
どうしよ。このまま帰るわけにもいかないし。
あー、でもなぁ~……。

江戸城
――何をしているのです?

元和江戸城
ぎぇっ……!?
あぁ、江戸城母さんか……びっくりした。

江戸城
ぎぇ、とはどういう反応ですか、貴方……。

江戸城
……それで、こんな場所で何をしているのです。
皆、貴方の到着を待っていますよ?

元和江戸城
んー、分かってますよぉ。
それは分かってるんですけどね……。

江戸城
……? 何か、躊躇う理由でも?

元和江戸城
…………。

元和江戸城
ほらあそこ……寛永ちゃんが居るでしょ?
前からあの子ね、私のことを過剰に持ち上げたり、
畏れたりしてるんですよ……。

元和江戸城
それがなんというか、こう……、
凄く……居心地が悪くて。

江戸城
可愛らしいではありませんか。
貴方に憧れて、鍛錬に励むなんて。

元和江戸城
いやいや、考えてみてくださいよっ!
私があの子の憧れに応えられるような器を持ってるとお思いですか?
どう見ても過大評価ですって!

元和江戸城
正直、私……あの子の期待に応えられる自信が無いんです。
だからここで、色々考え込んでしまって……。

江戸城
…………。

江戸城
貴方という子は、相変わらず……。
そういう、自己評価の低いところを直せば、
私を超えることだって充分できるはずなのに……。

元和江戸城
ほらぁ、母さんまでそんなこと言うし……。

元和江戸城
(このままでは旗色が悪い。かくなる上は――)

元和江戸城
それでは、私はここいらで――御免っ!!

江戸城
あっ!?
どこへ行くのですか、元和江戸城!
こら、待ちなさいっ!

後半
江戸城

はぁ、はぁ……。
さぁ、追い詰めましたよ。観念しなさい。

元和江戸城
いーえ、観念なんかしませんよ。
私は必ず、逃げおおせて見せます……!

江戸城
まったくこの子は、なんという逃げ足ですか。
この力を普段から発揮してくれればいいのに……。

元和江戸城
(流石に母さんが相手だと一筋縄じゃいかないか。
 さぁて……こっからどう逃げるか――)

寛永江戸城
やあああぁぁぁぁーーーっ!

元和江戸城
(今の……寛永ちゃんの声……。
 まだ稽古、続けてるんだ……)

元和江戸城
(大丈夫かな……怪我とか、しないといいんだけど……)

――――

寛永江戸城
はぁ、はぁはぁ……はぁ……。

千代田城
……よし、もういいだろう。今日の稽古はこの辺で――

寛永江戸城
――いえ、まだです。
まだ余力は残っています。もっと自分を追い込まないと……!

寛永江戸城
だから千代田城様……もう少しだけ、お願いします。

千代田城
そうは言うが、お前……。
もう疲れ切って、立っているのもやっとじゃないか。
少し休憩が必要だと思うが……。

寛永江戸城
私は……私は、もっと……頑張らなきゃいけないんです。

千代田城
頑張らなきゃいけない? ……それは何故だ?
どうしてそうも、自分を追い込もうとする?

寛永江戸城
…………。

寛永江戸城
実は私……以前からお母様に避けられているんです。

千代田城
母……元和江戸城か。

寛永江戸城
……理由は分かりません。
どうすればいいのかも……分かりません。

寛永江戸城
だからせめて……、
今より少しでも強い城娘になれるよう、鍛錬に励まなきゃって……。

江戸氏館
……ずずーっ。

江戸氏館
そんなことあるわけないよぉ。元和ちゃん、
いつも寛永ちゃんのことをあたしたちに自慢してるんだから。

寛永江戸城
え……?

千代田城
その通りだ。元和の奴が、お前の話をする時にはな、
いつも嬉しげな表情を浮かべているぞ。
些細なことも、まるで我がことのように語っている!

寛永江戸城
お母様が……私を?

千代田城
……今のお前たちに必要なのは、対話だな。

千代田城
二人で腹を割って話してみれば、
この状況も変わるに違いない。

江戸氏館
とはいえ……元和ちゃんは面倒くさがりで、
その上恥ずかしがり屋だからね。
ひっ捕らえてでも、寛永ちゃんの前に連れてこないと。

千代田城
そうか。では早速、
元和江戸城捜索隊を結成するか。ははっ!

――――

元和江戸城
…………。

江戸城
今の寛永江戸城の言葉……聞こえましたか?

元和江戸城
…………はい。

江戸城
難しく考える必要なんて、ないのですよ。
貴方はただ、あの子の傍に居てあげればいいのです。

江戸城
私たちは、皆……、
起源を同じくする、家族なのですから……。

元和江戸城
……そうですよね。
愛し合ってる家族なのに一緒に居られないなんて……。
そんなの、悲しすぎますよね。

江戸城
さ……行きなさい。
寛永江戸城が待っていますよ。

元和江戸城
分かりました……ありがとう、母さん!

元和江戸城
おぉーい、かんえーちゃーん!
貴方の愛するお母様の、ご到着ですよぉ~!

江戸城
ふぅ……まったく元和江戸城は、
昔から本当に手の焼ける子です……。

江戸城
…………。

江戸城
元和江戸城に、寛永江戸城。
私の……更に次の時代を担う城娘たち……。

江戸城
私が先達から多くのものを受け継いだように、
次は、私があの子たちへと……。

江戸城
――さて。私も向かいましょうか、
あの子たちの待つ場所へ……。

そんな呟きを残しながら江戸城は、
家族たちの待つ場所へと向かうのだった――

秘伝武具 桜乱騎兵銃

空飛ぶ島の主・ラピュータの策略に嵌まり、人質
となってしまった千狐。守るべきか討つべきか……
究極の選択を迫られたやくもが下した決断は――

前半
ここは日頃、皆が過ごしている世界とは隔てられた場所……。
物語を願う者たちによって生み出された、空飛ぶ島・ラピュータ――

そして今日もまた、
此地に訪れる城娘の姿が、一つ……。

会津若松城
すー……すー……。

会津若松城
…………くしゅんっ。

会津若松城
あれ……ここはー? ん……?

会津若松城
んんん……!?

会津若松城
こ、これはどういうことですっ!?
足元で雲が流れているのですが……!

会津若松城
眠っている間に、誰かが私をここまで……?
いえ、そもそもこの非現実的な場所はいったい――

???
コーン! やめてなのー!

会津若松城
――ん、なんでしょうか。
聞き覚えのある声ですが、もしかして――?

――――

ラピュータ
ふふ、ふふふふ……。

やくも
く、人質を取るとは、えーと――えー……。

やくも
――く、人質を取るとは! なんて卑劣な奴だに!

千狐
や、やくも……!

ラピュータ
ごめんなさい。私も手段を選んではいられないの。

ラピュータ
でも……これで勝敗は決した。
下手な真似をすれば、どうなるか……想像はつくでしょう?

ラピュータ
大人しく投降してもらえると、助かるのだけど……如何かしら。
そうすれば貴方もこのお嬢さんも、命までは失わずに済む。

千狐
耳を貸してはダメよ、やくも!
この方が約束を守ってくれる保証なんて、どこにもないわ!

千狐
千狐のことは気にしなくていいから、やくもだけでも……!

やくも
く、くうぅ……うちは……うちは――!

やくも
――千狐! 心配は要らんがや!

千狐
やくも……!

やくも
うちは千狐のこと、忘れたりしないだに!
千狐の屍を越えて……強くなるがや! 今よりも、ずっと!

千狐
や、やくも……!

千狐
あまりに迷いが無さすぎるの……。
もう少しだけ、千狐を救う手立ても考えてほしいのー!

ラピュータ
…………。

――――

会津若松城
これは、千狐さんが人質に……!?
ですが、これはどういうことでしょう。
やくもさんに脅しを掛けているあの子も、城娘に見えます……。

会津若松城
……いえ、考えている余裕はありません!
ことが起こる前に、私が止めなければ!

会津若松城
待っていてくださいね、千狐さん!
今私が助け出しますからっ!

後半
会津若松城

さぁ、人質は解放しました……!
後は私が、貴方を懲らしめてあげるだけ……!

ラピュータ
何なの貴方、突然割って入ってきて……?

会津若松城
誰だっていいでしょう……ただ私は、
誰かが悲しむ姿を見過ごせなかっただけです!

ラピュータ
まったく……想定外の連続ね。
でも面白いわ……もっと貴方の力、味わわせてちょうだい……!

会津若松城
絶対に傷つけさせはしません……。
千狐さんも、やくもさんも私が守り抜いてみせます!
なんとしてでも――!

???
カットカット、カットー!

会津若松城
――え?

クロンボー城
ダメじゃない、部外者が入ってきちゃ。
今はクライマックスなのよ。

会津若松城
え……く、くらいまっくす……?

クロンボー城
ただ貴方、演技の方は素晴らしかったわ。
真に迫っていたというか……とても、
演じているとは思えないような迫力だったもの。

クロンボー城
それに、台詞も素敵だったわ。
『ただ私は、誰かが悲しむ姿を見過ごせなかっただけ』
……ふふ、いいわね。これは採用しましょう。

会津若松城
えんぎ……せりふ?

会津若松城
あのぉ……これは、どういうことで……?

クロンボー城
……貴方、城娘よね?
名前を聞かせてくれる?

会津若松城
え、会津若松城と言いますが……。

クロンボー城
会津若松城……なら、アイちゃんね。
いいわ、今回はヤナちゃんとアイちゃんのツインヒロインでいきましょう!

クロンボー城
だけど、まだまだ……、
物足りないところが数多く見られるわね。

クロンボー城
まず演技……。ラピュータにはもっと、感情の抑揚を表現してほしいわ。
ここは大詰めのシーンだから、緊迫感を強調したいの。

ラピュータ
待って、クロンボー城……。
この淡々とした語り口は個性の印象付けよ。
いわゆる、無感情キャラ……。

ラピュータ
彼女は幼少期の悲しい体験により、まともな感情を失ってしまったの。
そして今はただ……引き金を引き、
対象を抹殺することでしか自分の存在価値を示せない……。

クロンボー城
ちょっと……そんな設定、脚本に無いわよ?
役に入り込むのは結構だけど、
私の関与できないところで広げられても――

クロンボー城
――いえ。でも、捨ててしまうには惜しいかも。
自分の書いた脚本にしがみつくのは危険だわ……。
ハプニングも、現場の意見も取り入れていかなきゃ。

クロンボー城
運命により自由を奪われた少女……そうか。
彼女もまた、追い詰められていたのね。
これなら、悪役という枠を越えたテーマを与えられるけど……。

柳川城
あのー、クロンボー城さん?
私と殿の出番はまだでしょうか……?

殿
…………。

クロンボー城
あら、ごめんなさい。
それじゃヤナちゃんと王様も含め、
一旦休憩にしましょうか。脚本を調整するわ。

会津若松城
…………。

会津若松城
あの……誰か、説明を……。

――――

千狐
――ということなんです。
掻い摘んだ説明になってしまいましたが、
ご理解いただけたでしょうか……?

会津若松城
物語を願う者たちによって生み出された世界……。
そして、その世界で顕現した城娘、ラピュータさん。
なるほど……そのようなものが存在したとは……。

やくも
会津若松城も、ラピュータの物語を読んだんだに?

会津若松城
はい……青葉城から押し付けられた本の中に、
そのような物語があったことを覚えています。

会津若松城
空飛ぶ島に関する記述はもちろん……、
その他の内容にも興味を惹かれたので、強く記憶に残っていました。

会津若松城
……それにしても、殿たちは凄いですね。
この環境に、すっかり順応しているように見えます。

柳川城
私たちがここへ訪れるのは、もう二度目ですから……。
初めてここに来た時には、
会津若松城さんと似たような反応をしたものですよ。

千狐
やくもは最初から、
能天気に喜んでいましたが……。

ラピュータ
……最近は、こちらに城娘が訪れる機会も随分増えたわ。
私という城娘の存在を願う思いが、力を増しているのかもしれないわね。

ラピュータ
中には、クロンボー城のように、
強い憧れを抱いてこちらに渡ってくる城娘もいるし……。

クロンボー城
ふふ。物語に縁ある城娘として、
一度行ってみたいと夢見ていたの。
エリュちゃんから詳しい話も聞いていたし……。

千狐
千狐たちの世界には、
ラピュータさんの物語を広めている方が、沢山いらっしゃるのですね。

ラピュータ
……本当にありがたいことだわ。
お陰で、また……王様と一緒に過ごすことができるもの。

殿
…………!

ラピュータ
ふふ。今日はいっぱいおもてなしするから、
存分に楽しんでいってちょうだい。

クロンボー城
……さて、休憩はここまでにしましょうか。
脚本も整ったことだし、そろそろ再開を――

???
な、なんだここは!?
空……雲? 御城っ? 夢か、幻かっ!?

ラピュータ
――あら。

???
支城の皆はどこだ? それに……小田原城は?
小田原城は無事かっ!?

ラピュータ
――なんて話をしていたら、またお客様のお出ましみたい。

殿
…………。

ラピュータ
ええ、すぐに向かいましょう。
慌てているようだし、ちゃんと説明をしてあげなきゃ。

秘伝武具 風魔乱影苦無

続いて空飛ぶ島に訪れたのは、小峯城。彼女が
執心する『あいどる』という存在にラピュータ
が興味を示したことから、思わぬ展開に……。

前半
千狐

――ということなの。
小峯城さん、ご理解いただけましたか?

小峯城
ラピュータさん……空飛ぶ島の城娘ですか。
なるほど、納得いたしました。

小峯城
甲府っち――甲府城さんから借りた本の中で、
そんなものが出てきたことを覚えていますが……驚きましたね。

会津若松城
大変ですね。毎回こんな風に、
説明をしなければいけないなんて……。

ラピュータ
ふふ、もうすっかり慣れてしまったけどね。

ラピュータ
けれど、今回は私も少し驚いたわ。
貴方……少し変わった格好をしているのね。

ラピュータ
お名前からして日の本の城娘なのでしょうけど……。
その服は、伝統衣装か何かなのかしら?

小峯城
ああ……この装いは、忍装束とでも申しましょうか……。
私、小峯城が忍と関わりを持つことに、由来するものなのです。

ラピュータ
忍? 忍って……ニンジャのことよね?
それなら聞いたことがあるわ……。
暗殺術や諜報に長けた者たちのことでしょう?

小峯城
その通りです。
ラピュータさんは、忍に興味がおありなのですか?

ラピュータ
話には聞いていて、一度お目にかかりたいと思っていたの。
……あの、何て言ったかしら、小型の短剣を使って戦うのよね?

小峯城
苦無のことでしょうか。それならここに用意がありますが……。

ラピュータ
そう、クナイ!
これが実物なのね、すごいわ……♪

クロンボー城
ラピュータったら……小峯城にすっかり夢中ね。

やくも
――けど、ラピュータ……小峯城をただの忍と侮ってはいかんだに!
小峯城の凄い所はこれだけじゃないがや!

ラピュータ
そうなの?
これ以外にもまだ、驚くような力を……?

やくも
だに! 小峯城は忍としての能力の他に、
あいどるに関する知識もえっぱい備えとるがや!

千狐
どうしてやくもがそれを自慢げに話すの……。
というより、そもそもその話は、
小峯城さんがこれまで、ひた隠しにしていたことじゃない……!

やくも
……だに? そうだったがや?

小峯城
……いえ、構いません。

小峯城
確かに、恥じらいの気持ちがあることは認めますが……、
最近は少々考えを改めたのです。
あいどるへの憧れを過度に隠すことは止めよう、と。

柳川城
そうだったのですね……。

やくも
というか……隠そうとしてても、
もはや周知の事実になっていたような――もがっ!?

千狐
(それは本当に言っちゃいけないの……!)

ラピュータ
……あいどる?
初めて耳にする言葉だけど、どういった意味かしら?

会津若松城
あいどるの意味……ですか。
改めて説明するとなると案外、難しいですね……。

やくも
んー、歌ったり踊ったり、爆発したり――
とにかく、皆を楽しませたりする者のことだに!

ラピュータ
皆を楽しませる……なるほど、それは素敵な――

小峯城
ちがーーうっ!!

やくも
――だにっ!?

小峯城
確かに、今やくもさんが言ったことに間違いはありません……ですが!
それは、あいどるという存在の、上澄みをすくっただけに過ぎないのです!

小峯城
一見すると華やかでありつつ、刻一刻と変化する状況に応じ……、
時には三枚目を演じ抜くことも求められる。
その裏には、計り知れない努力や苦悩が隠されているのです……!

小峯城
そして、それらを支えているのは一重に、
『人々の心を満たしたい』という一途な思い!
それを貫かんとする姿勢こそが、あいどるの素晴らしさ、美しさなのです!

クロンボー城
あ、熱い……なんて熱い想いなのかしら……。

小峯城
言葉だけで表すには限度がありますが……。
私の口から伝えられることがあるとするなら、これくらいでしょうか。

小峯城
ご清聴、ありがとうございました……。

殿
…………。

ラピュータ
…………。

ラピュータ
……非常に興味深い話だったわ。
人や城娘をそこまで熱狂させる魅力を持つ存在……。
それがあいどる、ということね?

小峯城
ええ、その通りです。
分かっていただけて嬉しいです……!

ラピュータ
貴方さえ良ければ……小峯城。
もっと詳しい話を聞かせてもらえるかしら?
私、あいどるについてもっと深く知りたくなってしまったの。

小峯城
…………っ!

小峯城
それは誠ですか、ラピュータさん!

小峯城
であれば私は、遠慮なく!
あいどるに関する知識の全てを、披露いたしましょう!
実演付きで!

会津若松城
じ、実演付きで……?

ラピュータ
ふふ、それはありがたいわ。ぜひともお願い。

小峯城
では参りましょう。
これまで密かに積み重ねてきた鍛錬の全てをここで……いざっ!

後半
小峯城

はぁ、はぁ、はぁ……。

小峯城
私のステージは以上となります。
い……如何だったでしょうか……?

ラピュータ
素晴らしかったわ。
忍の技能を備えた小峯城だからこそ、
という動きが随所に見られて……胸が熱くなったわ。

会津若松城
ええ、感動しました。
これが、あいどるの持つ魅力なのですね……!

クロンボー城
私にとっても、非常に良い刺激となったわ。
あいどるの舞や歌には、演劇とも通ずるところが数多く見られたもの。

殿
…………!

柳川城
はい……私も思わず、見入ってしまいました……!

やくも
だに……小峯城が本気を出したら、
冗談抜きで売れてしまうかも……そんな想像が頭をよぎったがや……。

千狐
千狐も……すごく感銘を受けてしまったの……。

ラピュータ
本当に素敵だわ、あいどるって。
……試しに、私も挑戦してみようかしら。

小峯城
ラピュータさんも……ですか?

ラピュータ
ええ、難しいかしら?

小峯城
……いえ、難しいなどということはありません。
胸に情熱を抱いてさえいれば誰でも……それに――

小峯城
(長い手足と、長髪の美しさ……。
 少々無愛想なきらいはあるものの、見方によってはそれも魅力と言えるかも……)

小峯城
(あいどるとしての素養は充分……どころか、
 金の卵と言っても過言ではない……!)

小峯城
そうか……自分が舞台に立つことだけが、
あいどるの在り方ではないのですね……!

小峯城
豊富な知識を利用して、素養を持つ物を掘り出し……売り出す。
そしてゆくゆくは、大坂城や肥前名護屋城をも超えるような、
最前線あいどるを……!

小峯城
ふふ、ふふふふ……♪

やくも
小峯城が怪しい笑みを浮かべてるだに……。

ラピュータ
とにかく……また一つ、
向こうの世界の文化に詳しくなったわ。

ラピュータ
これで以前よりも少しだけ、
王様の世界と近づけたような……そんな気がするわね。
ふふふ……♪

秘伝武具 アダマント・マグナ

『この孤独は、いつまで続くのか』ラピュータが
これまで胸の内に秘めてきたその疑問に、学問と
縁深き城娘・大宰府が一つの答えを与える。

前半
大宰府

…………。

びゅおおおぉぉ――

大宰府
風、雲、空……ふむ。良い景色じゃなぁ……。

大宰府
…………。

ラピュータ
……どう? もう落ち着いた?

大宰府
うむ。苦労を掛けた……もう心配無用じゃ。

殿
…………。

やくも
大宰府があそこまで慌てる姿はきっと、
もう見られんに違いないだに……。

大宰府
すまぬ……なまじ知識に自信を持っていたせいでな、
想定外の出来事にパニクってしもうた。
妾もまだまだ、精進が足りんということじゃろうな。

大宰府
まじぴえん……いや、
ぴえん通り越して、ぱおん……と言うべきか。

ラピュータ
ぴえ……ぱお……?

ラピュータ
……まぁ、気にする必要はないわ。
初めてここに訪れた子の反応は、皆似たり寄ったりだもの。

小峯城
ああ……先程の私が良い例だな。

会津若松城
私も随分驚かされました。
千狐さんが人質にされてましたし……。

大宰府
しかし……バルニバービ国のラピュータ……か。

大宰府
ここが現実とは違った摂理で動いているとしても、
実に興味深い場所じゃ……。

ラピュータ
ふふ、気に入ってくれたみたいで嬉しいわ。
好きなだけ見ていってちょうだい。

ラピュータ
ただ代わりに、と言ってはなんだけど……大宰府。
貴方の知識を少しだけ、私にご教示いただけないかしら。

大宰府
む、妾の知識を……そちに?

ラピュータ
聞いたところによれば……貴方は、
学問と縁の深い城娘なのよね?

ラピュータ
だから……他の城娘からは、
聞けないような話が聞けるかもって……興味が湧いたの。

クロンボー城
ふふ……先程のあいどるへの興味といい、
ラピュータは私たちの世界に興味津々なのね。

ラピュータ
そうね……城娘や王様が暮らしている場所だから、
というのはもちろんあるけれど……それ以上に、
ここが閉じられた場所だから、というのが大きな理由かもしれないわ。

小峯城
閉じられた、場所……。

ラピュータ
私という御城も、同じ物語に起源を持つ存在に過ぎない。
だから……この世界に存在するものが、
私に発見や驚きをもたらしてくれることは、殆どないの。

ラピュータ
だから……皆さんの世界のことだったら、
何でも知りたい……そんな風に思ってしまうのかもね。

大宰府
…………。

大宰府
そうか……そちはこの世界でずっと、ただ一人……。

大宰府
……分かった。妾がいくらでも力になろう。
何でも聞くといい……持ちうる限りの知識で応えてやるぞ。

ラピュータ
ありがとう……感謝するわ。
ではまず、私の御城を案内しましょうか。付いてきてくれる?

大宰府
うむ、シクヨロじゃ。では妾は道中の雑談も兼ねて、
そちに知識を披露してやるとしようか♪

やくも
うちも付いてくだにー♪ ほら、千狐も行くがや!

千狐
ちょ、やくも……引っ張らないでほしいのー!

柳川城
では……私たちもご一緒させていただきましょうか、殿。

殿
…………!

後半
大宰府

まったく、幾ら歩き回っても一向に退屈しないのう。
本当に面白い場所じゃ♪

大宰府
ここに訪れることができた運命に、ガチ感謝じゃな♪

ラピュータ
私も感謝しているわ、大宰府。
貴方のお話、とっても面白かった。

ラピュータ
…………。

ラピュータ
王様の世界は、素敵な所なのでしょうね。
聞けば聞くほど想像が膨らんで……また、興味が増してしまう。

ラピュータ
……それを繰り返しているうちに、
王様の世界に近づけているような……気がしてくるのよね。

ラピュータ
根拠は無いし……気休めに過ぎないのだろうけど。

大宰府
…………。

大宰府
いや……あながち、そうとも限らんぞ。

大宰府
聞けば、ラピュータよ……。
最近は、此地へ城娘が訪れる機会が増えている……そうじゃったな?

ラピュータ
ええ……それは間違いないわ。
頻度はもちろんのこと、多様な国々の城娘が次々と……。

大宰府
それはすなわち……城娘を介して、そちの話が語り継がれておる証拠。
結果、妾のような……本来、
異国と深い縁を持たない城娘も、ここへ訪れるに至った。

大宰府
妾たちとそちの結びつきは日々、強固なものへと変容しておるのじゃ。
そして、その結びつきによる行き来が……一方通行しか許されぬ理由など、どこにもない。

ラピュータ
…………。

ラピュータ
確かに……初めて王様をこちらに呼び寄せた時に、
一度だけ……王様の世界に赴くことができた。

ラピュータ
理由は分からなかったし、
あの一度きりだったから、何かの偶然だと思っていたけど……。

大宰府
今のところは、あくまで可能性に過ぎん。
じゃが、一度は現実に起きているのじゃ……。
希望を持つには充分な可能性と言えるじゃろう。

大宰府
じゃから、信じるのじゃ……ラピュータ。
そちの願いはいつか、必ず叶う。

大宰府
遠くない未来……妾の御城に訪れたそちを、
妾の手でもてなせる日が来ると、妾は確信しておるぞ♪

ラピュータ
大宰府……。

ラピュータ
素敵な話をありがとう……こんな風に、
胸の内が期待と喜びでいっぱいになるなんて、初めてのことだわ。

大宰府
そちが味わっている寂しさに思いを馳せると……溜まらなくなってしまってな。
ぬか喜びはさせたくなかったが、つい……元気づけてやりたくなってしもうた。

ラピュータ
ぬか喜びでもいいのよ。
大宰府の言った通りにならなくても、
私が王様の世界に行くことができなくても……いいの。

ラピュータ
これまでよりもずっと、
明日に希望をもって生きることができる……。
それだけで……今は充分。

ラピュータ
……さ、立ち止まっている暇は無いわ。
まだ案内できていないところは沢山残っているもの。

ラピュータ
お別れの時が来る前に、
できるだけ多くの思い出を持ち帰ってもらわなきゃ!
さぁ、付いてきて♪

大宰府
うむ、そうじゃな!
妾もそちに、より多くの知識を伝えねばならん!

やくも
ラピュータ……一気に元気いっぱいになっただに……。

千狐
無理もありません。
この世界でずっと、孤独な想いをしてきたのですから……。

殿
…………。

柳川城
はい、そうですね。今は大宰府さんと、
笑顔で言葉を交わして……。
これまでのラピュータさんとは、まるで別人のようです。

クロンボー城
もしかしたら、私たちがこれまで見ていた彼女は……、
仮初だったのかもしれないわね。

会津若松城
仮初……ですか?

クロンボー城
孤独で居ることに慣れた……感情の起伏の少ない、冷淡な城娘。
そういった姿を演じることで、心の平穏を保とうとしていた――

クロンボー城
――なんて考えるのは、ちょっと穿ち過ぎかしらね。

殿
…………。

クロンボー城
そうね、王様……ラピュータが笑顔を浮かべている。
今はただ、それを喜びましょう。

小峯城
そうです……先程までのラピュータも、今のラピュータも……どちらも同じ城娘。
元気になったり、しょぼくれたりすることは誰にでもあることなのですから。

――そして一同はその後も、
ラピュータと共に楽しい時間を過ごした。

そこで得た思い出、結びつきがこれからに繋がる……心からそう信じて――



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