ストーリーテキスト/車輪の里、忍びの少女

ページ名:ストーリーテキスト/車輪の里、忍びの少女

目次

車輪の里、忍びの少女[]

車輪の里、忍びの少女 -前-

新たな妖怪が出現したとの報あり――。
その名は『輪入道』。姿を見た者は命を失うと
される凶悪な妖怪を討伐せんがため、いざ出陣せよ。

前半
信貴山城

…………。

信貴山城
…………あら?

信貴山城
こんなところに貴方が来るなんて珍しいですね。

信貴山城
……で。

信貴山城
今日はいったい何をしにきたのですか?

信貴山城
…………。

信貴山城
そう。

信貴山城
私と親睦を深めたいと。

信貴山城
なるほどなるほど。

信貴山城
……では、そうですね。

信貴山城
温泉に行くというのは、どうでしょう?

信貴山城
……ええ。

信貴山城
有馬あたりに良い湯があると聞いてますからね。

信貴山城
あ、それとも……。

信貴山城
私と二人きりは、いやですか?

信貴山城
…………。

信貴山城
ふふ……♪
ええ、ならばよしです。

信貴山城
では、いきましょうか。

信貴山城
湯治を兼ねた、二人きりでの温泉旅行を――

???
――って、駄目に決まってるよぉおお!!

???
……ハッ!?

???
なんだよもぉ、夢かぁ……。

???
ハァ……。
最近こういうのばっかりだなぁ。

???
しぎーのやつ、いつもいつも任務の邪魔をしてくるってのに。

???
夢の中にまで現れるなんて冗談じゃないよ、まったく!

???
……しかも、危うく暗殺されかけた
かつての温泉旅行の思い出を夢でみるとか、最悪……。

???
うーん……。
もしかして最近、厳しめの任務が続いてるから疲れてるのかなぁ?

???
さっきの夢じゃないけど、今回の任務が片付いたら、
久しぶりに温泉にいくってのもありだよね~?

???
うん、よーし! 決めた決めたっ!

???
十河流忍法・ご褒美でやる気出すの術発動~!

???
ってことで、妖怪退治にしゅっぱーつ!

――翌日・所領。

飯盛山城
ふんふんふ~ん♪

やくも
……おっ? どうしたがや、飯盛山城?
なんだかえらく機嫌が良さそうに見えるだに。

飯盛山城
えへへ、実はですね~。

飯盛山城
じゃ~んっ!
先ほど多聞山城さんからお手紙が届いたのです!

やくも
……だに?
それが何だっていうがや?

飯盛山城
あれ? 
やくもさんはご存知ありませんでしたっけ?

飯盛山城
私、飯盛山城は多聞山城さんと歌のやりとりをする仲なので、
きっとこのお手紙は、私にむけての連歌のお誘いに違いありません。

やくも
はぇ~。
そげなもんがあるんやねぇ。

やくも
じゃあ、さっそく中身を読んでみるだにぃ~!

飯盛山城
えっとぉ、なになにぃ……。

飯盛山城
――っ!?

飯盛山城
た、たたっ……大変ですぅ!
すぐに殿にお伝えしなくては~!!

やくも
あ、ちょっと待つだにぃ~!
殿さんにも見せなきゃいけんくらいの歌ってどんなもんなんかや~!!

四半刻後――。

飯盛山城
――ということでして、多聞山城さんからのお手紙によれば、
畿内において新手の妖怪の出現を確認したとのことです!

殿
…………。

千狐
今度の妖怪は『輪入道』ですか……。

やくも
いったいどんな妖怪なんかや?

柳川城
たしか、その名の通り車輪の様相を
成した妖怪だったかと記憶していますが……。

飯盛山城
その通りです、柳川城さん!

飯盛山城
さらに、輪入道に関する伝承は恐ろしいものばかりでして。

飯盛山城
やれ、引きちぎれた人間の脚をぶら下げているだとか、

飯盛山城
やれ、知らぬ間に子供を連れ去っていったりだとか、

飯盛山城
さらにすごいものになると、輪入道の姿を見ただけで
命を奪われる――などとも言われてたりするのです!

やくも
ひぇぇ……そげに恐ろしい妖怪なら、
うちは今回、お留守番してた方がええかもわからんね。

飯盛山城
ですね! 私と一緒に歌を詠みながら
お留守番してましょう、やくもさん!

引田城
……飯盛山城さん。

飯盛山城
――きゃっ!?

飯盛山城
って、引田城さんでしたか。
もぉ、驚かさないでくださいよぉ。

引田城
せっかく多聞山城さんがお手紙をくださったというのに、
殿のお手伝いをせずに領内で歌をお作りになるというのはその……どうかと……。

飯盛山城
わ、わかってますって……!
冗談ですから、そのように悲しい顔しないでくださいぃ。

やくも
だに? さっきのは冗談だったがや?

飯盛山城
いや、本当は怖いので、できれば行きたくないのですが……。

飯盛山城
やはり多聞山城さんのご期待に応えられないのもイヤですからね。

やくも
なるほどだに……。

やくも
わかったがや!
そういうことなら、うちもついていくだにー!

柳川城
では、準備ができ次第、すぐに出立とまいりましょう!

殿
…………!

――数刻後。

飯盛山城
……と、千狐さんの転移術のおかげでさくっと到着しましたが。

引田城
明らかにこの地いったいに妖怪の気を感じますね……。
殿、どうか御注意ください。

殿
…………。

飯盛山城
……え?
何か向こうの方に見えた?

飯盛山城
あわわっ、ついに輪入道の出現ですか!?
どど、どうしよう! このままじゃ命をとられてしまいますぅ!!


…………ザザッ!

兜軍団
ザザッ、ザザザッ!!

飯盛山城
あ、な~んだ。桃形兜でしたか。
これなら安心――

輪入道
――フンガァァァァァァッ!!

飯盛山城
ふぁっ!? で、でででっ、出ましたーっ!
殿ぉ、どっからどうみてもアイツが輪入道ですよぉ!!

殿
…………!?

柳川城
は、はい。どうやら飯盛山城さんが仰った伝承のように、
目にしただけで命をとられるということはないようですね。

引田城
では、いつもと同じように戦うことはできるということですね!

輪入道
足……足ィ……足ィィィィィッ!!

柳川城
――っ!?
ま、まずい……輪入道がこちらに向かってきます!

飯盛山城
きゃっ!? あっ、熱いですぅ……!

柳川城
皆さん、気をつけてください……っ!
どうやら輪入道が纏う炎は我々の体力を徐々に奪っていくようです!

引田城
しかも、何だかあの輪入道……。
私たちの足ばかりを狙ってきてるような気が……?

飯盛山城
伝承通りに、足を食いちぎろうって魂胆なのかもしれません~!!

殿
…………!

柳川城
ご安心ください!
殿のお御足はこの柳川城が必ずや死守してみせます!

引田城
い、いや……柳川城さんの美脚も
かなり狙われてるような気がするのですが……?

飯盛山城
もぉっ、そんなことはいいですからとにかく防衛です!
引田城さん、柳川城さん! 力を合わせて頑張りますよー!

後半
引田城

これで――

飯盛山城
――どうだぁ!!

輪入道
ングゴゴゴッォォ…………ッ!!

千狐
やりましたわ!
輪入道を倒せたようです!

殿
…………。

殿
…………!

輪入道
フンガァァ! フンガァァ!!
足ィィィ……足ィィィィィッッ!!

飯盛山城
きゃぁっ――そ、そんなぁ……!
まだいるんですか~!!

引田城
くっ……こ、このまま、では……皆さんの美脚が……っ!

輪入道
フゥンスゥ……フゥゥンスゥァ……ッ!
足ィィ……足ィヲ寄越セェェエ……!!

???
――おっと! そこまでだよ、足好きの妖怪さん!

輪入道
ンゴガガガァァ――ッ!?

殿
…………!?

???
こらこら、キミもボサッとしない!
戦う力が残ってないなら、さっさと逃げなきゃダメでしょ?

車輪の里、忍びの少女 -後-

輪入道の凶悪な攻撃の前に窮地に陥る殿一行。
だが、颯爽と現れた可憐なるひとりの忍びによって、
勝機を見出した殿一行は、再びの戦に打って出る。

前半
???

こらこら、キミもボサッとしない!
戦う力が残ってないなら、さっさと逃げなきゃダメでしょ?

殿
…………?

柳川城
彼女も城娘……なのでしょうか?

やくも
見たことのない攻撃の仕方やけど、味方……なんかや?

千狐
あ、あの……貴方はいったい?

???
ん? 名前が知りたいの?

???
ふふ、ごめんね。アタシは影に生きる者ゆえ、
そう簡単に素性を明かすことはできないの。

???
まぁ、可憐なる謎の忍者城娘とでも覚えておいて――

飯盛山城
――ああっ! 
誰かと思えば十河ちゃんだぁ!

十河城
……え?

引田城
間違いありません、十河ちゃんが助けにきてくれたのですね!

十河城
な、ななっ!
どうしてアタシの名前を!?

十河城
って、引田城ちゃんに飯盛山おねえちゃん!?

柳川城
お知り合いなのですか?

飯盛山城
はい! 十河ちゃんは私の妹分みたいなものでして、
忍者城娘として各地を渡り歩いてる不思議な娘なのです!

引田城
まぁ、色々と裏で暗躍しているために、なかなか会えないので、
最近は何をしていたのか我々も知らなかったのですが……。

飯盛山城
でも、こうして輪入道のいる場所に駆け付けたってことは、
今回は妖怪討伐の任務にあたってるってことなんだよね?

十河城
そ、その通りなんだけどぉ……。

十河城
むぅっ……せっかく謎の忍者~って感じで格好良く決めたのに、
こんなに知り合いばっかりじゃやりづらいよぉ!

輪入道
フンズァッ――! 足ィィ……足ィィィィイ――ッ!!

十河城
っと、そんなこと言ってる場合じゃなかったね!

十河城
いちおう輪入道対策として秘策は用意してきたんだけど、
兜たちが邪魔で、今はちょっと発動するのが難しいっぽいから……。

十河城
引田城ちゃんに飯盛山おねえちゃん!
アタシが敵の注意をひきつけるからその隙に法術で雑魚共を一掃して!

引田城
つまりは十河ちゃんが囮になるってことですよね?
……あ、あの……本当に大丈夫ですか?

十河城
心配無用! アタシの強さを忘れちゃったの?
忍者城娘はそう簡単にやられたりしないんだから!

飯盛山城
そこまで言うなら、頼んだよ、十河ちゃん!
私たちも全力で頑張るからね!!

十河城
ニンニンッ♪ 十河ちゃんにお任せあれっ!

十河城
それじゃあ、みんなーっ! 
輪入道討伐のため、いざっ、ニニンっと出撃だよ!!

後半
十河城

ほいっ、ほいっ、ほい~っと!
これで、どーだぁ!!

兜軍団
ギャァァァァアアアアアアアッ!!

十河城
よし、これで兜は全滅させた……!

十河城
引田城ちゃん! 飯盛山おねえちゃん!
お願い、法術でちょっとだけ輪入道を足止めして!!

引田城
わかりました!

飯盛山城
最後の力を振り絞りますよ~!

輪入道
――フングァッ!?

十河城
よーしよし! そこでじっとしててね、足好き妖怪さん!

十河城
さーて、それじゃあ仕上げといきますか!

十河城
とぉりゃ~!!
呪符をぺたぺたぺた~っとね!

輪入道
フッ――フンズァァァアアアアアアッ!?

千狐
やりましたわ!
輪入道たちが撤退していきますわ!

柳川城
すごい……十河城さんの呪符のおかげで大勝利です!

やくも
けど、どうしてそげにすごい呪符を持ってるのに、はやー使ってくれんかったがや?

十河城
仕方ないでしょ~? いくら強力な呪符といえども、
少しくらいは弱らせないと効果は発揮できないんだから。

飯盛山城
……あれ? それよりも十河ちゃん。
その呪符、なんて書いてあるのぉ?

十河城
ん?

十河城
ああ、これはね
『此所勝母の里(このところしょうぼのさと)』って書いてあるんだよ!

引田城
此所……勝母?

飯盛山城
――ああっ!? そうでしたぁ!

飯盛山城
たしか逸話によれば、その文字が書かれた呪符があると、
輪入道は近づくことができないとかなんとか……。

十河城
もぉ、知ってたのならどうして
飯盛山おねえちゃんも呪符を作ってこないのさぁ。

十河城
せっかくの巨大筆が泣いてるよぉ?

飯盛山城
というよりもう、私自身が泣いてますぅ~!

十河城
まったく相変わらずだね、飯盛山おねえちゃんは。

殿
…………。

十河城
っとと、これは失敬。改めてまして!
アタシの名前は十河城。忍者城娘のひとりだよ♪

十河城
にしし、アナタが噂の殿だよね?

殿
…………。

十河城
ふむふむ……。

十河城
いいねぇ。さっきの戦いぶりもそうだけど、
しぎーが気に入るだけのことはあるよー!

殿
…………?

十河城
え? ああ、うん。しぎーこと信貴山城とは腐れ縁でね。

十河城
まぁ友達とか仲間って言葉とは一番程遠い存在かな?

柳川城
な、何だか色々と訳ありのようですね……。

十河城
ふふっ、まぁこの話はいずれまた……ね?

十河城
それじゃあ、アタシはもう行くね!
任務完了を依頼主に報告しなきゃいけないからさ~!

殿
…………!

十河城
うん! またどこかで一緒に戦えたらい~ね!

十河城
あ、でも、その時は――

十河城
――アナタのこと、御頭って呼ばせてもらうからね!

殿
…………。

殿
…………!

十河城
えへへ、そうそう!
そっちの方が忍者っぽいでしょ? 

十河城
ニンニン♪

殿
…………。

十河城
それじゃあ、みんな! またねー!

千狐
………………行ってしまいましたね。

やくも
なんだか忙しない城娘やったね。

柳川城
ですが、あの身のこなしや風変わりな戦い方を有する十河城さんが
殿の仲間になってくれれば、戦略の幅をもっと広げることができるかもしれません。

引田城
そういうことでしたら、今度、
所領に遊びにくるよう誘ってみますか?

飯盛山城
あ、いいですね!
久しぶりに色々とお話もしたいですし。

殿
…………!

千狐
それでは殿。我々も帰るとしましょう。
此度の遠征も誠にお疲れ様でした!

車輪の里、忍びの少女 -絶-

忍びとしての任務を終え、ようやく自由な時間を
得た十河城は、美味しいうどんを食べるため、
引田城らの待つ所領へと向かうのだが……。

前半
妖怪・輪入道との戦いから数週間後――。

十河城
ふぅ……。

十河城
今回の任務もバッチリ終わったし、

十河城
これで忍者のお仕事は一段落ついたわけだね! ニンニン♪

十河城
ってなわけで――

十河城
十河流忍法・明日はた~っぷり羽を伸ばすぞの術――発動ぉっ!!

――翌日。

十河城
にしし、今日はしっとりお淑やかな町娘に変装してきたぞぉ♪

十河城
これならきっと、所領にいる引田城ちゃんや
飯盛山おねえちゃんもビックリするはずぅ――

飯盛山城
――あれ? あそこにいるのって……。

飯盛山城
わぁ、十河ちゃんだ~♪

十河城
にょわ――っ!
い、飯盛山おねえちゃん!?

十河城
うぅぅ……なんですぐにバレちゃうかなぁ?
せっかく気合いいれて変装してきたのにぃ。

飯盛山城
変装? 

飯盛山城
どっからどうみても十河ちゃんにしか見えないけどぉ?

十河城
ええ……そんなことないよぉ……。

十河城
だいたいね、これは世を忍ぶ仮の姿のひとつなんだから!
すぐに十河城だってわかるのは、おねえちゃんくらいのもんだよぉ!

飯盛山城
はいはい、そーだねぇ。
まぁ、そんなことはとりあえず置いておいてさ。

飯盛山城
十河ちゃん、今日はアレを食べにきたんでしょ?

十河城
えへへ、なーんだ。
飯盛山おねえちゃんも知ってたんだ♪

十河城
引田城ちゃんのアレは、
白くてモチモチしてて美味しいからね!

十河城
今日はた~っくさん食べさせてもらうよ、うどん!

飯盛山城
ふふっ、それじゃあさっそく引田城ちゃんのところへご招待~。
あっちの方で、うどんを作って十河ちゃんを待ってるよぉ!

――。

十河城
引田城ちゃ~んっ!
おうどん食べにきたよぉ~♪

引田城
ようこそです、十河ちゃん。
しっかりと準備して待ってましたよぉ!

十河城
わぁ~い、引田城ちゃんのおっうどん♪
引田城ちゃんのおっうど~ん♪

十河城
って、あれ?

天童城
……ん?

やくも
だに……?

やくも
ああっ、十河城かや。
今日はなんだかふつーな恰好しちょるんやね。

十河城
ええ……ど、どうしてアタシだってわかったのぉ……?

十河城
って、ふつーの恰好ってなによぉ、普通の恰好ってぇ!

飯盛山城
あはは、やっぱり十河ちゃんだってバレてるぅ。

飯盛山城
にしても、天童城さんとやくもさんは、
どうしてこのような場所に……?

やくも
天童城が蕎麦をご馳走してくれるっていうんで、
うちはいま、出来上がるのを待ってるところだにぃ♪

飯盛山城
なんと! 天童城さんの蕎麦とはこれまた珍しい!

飯盛山城
美味しいんですよねぇ、天童蕎麦。あー、ヨダレが。

十河城
(けど、引田城ちゃんがおうどん作ってる隣で
お蕎麦を作るとは……命知らずな城娘さんだなぁ……)

天童城
ふふ、アナタが十河城さんですよね?
よければ、ご一緒しませんか?

引田城
――ご一緒しません。

天童城
え……。

引田城
だって、飯盛山城さんと十河ちゃんは
私のおうどんを食べにきたのですから。

天童城
あらあら。

天童城
まぁ、いいでしょう。やくもさん以外にも
私のお蕎麦を食べにきた方はいらっしゃいますので。

岡豊城
……んぅ~?
どうしたの天童ちゃん? もぉ、お蕎麦できたのぉ?

十河城
――んな!
お、おまえは……!

岡豊城
ふぇ……?

十河城
出たな、岡豊城!
まさか、こんなところで会うとは……!

岡豊城
んー。あなた、だ~れぇ? 
町娘のお友達なんて、私にいたっけ……?

飯盛山城
うわっ、彼女には変装効果バッチリじゃないですか!?

十河城
ふっふ~ん♪
見たか! アタシの変装術ぅ!

岡豊城
ん? ああ、なーんだ。
よくみたら十河ちゃんか。久しぶりだねー。

十河城
んな……!
結局バレてるしぃ……何なんだよぉ、もぉ……!

十河城
――って、岡豊城!
久しぶりだねー、じゃないよ!

十河城
十河と長宗我部の因縁、忘れたとは言わせないよ!

岡豊城
……って言われてもぉ。
別に私、ケンカなんてしたくないしぃ。

天童城
そのうえ岡豊城さんは日中はぽわわ~んっとしてますからね。
十河城さん、あまり剣幕を向けないでいただけますか?

十河城
むむむぅ。アタシだって別にケンカなんかしたくないけどぉ。

十河城
でも、この前のお礼……アタシ、岡豊城からちゃんとしてもらってないんだもん!

岡豊城
この前?

十河城
そうだよ! 鬼ノ城ちゃんが鬼たちに捕まってた時のこと、覚えてないの?

岡豊城
……んー。

岡豊城
ああ、あの時かぁ。うん、思い出したよぉ。

十河城
じゃあ、鬼ノ城ちゃんが鬼たちに捕らえられてるって
教えてあげたのが、アタシだってことは覚えてる?

岡豊城
うんうん、覚えてる覚えてるぅ~。

十河城
なら、鬼若子の異名を持つアナタと、
鬼十河の異名を持つアタシとで救出しようって話はぁ!?

岡豊城
あったねぇ、そんなお話もぉ。

岡豊城
でも確かぁ、私が殿たちにも協力してもらえないか相談したいって言ったら、
十河ちゃん、やっぱり今回の話はナシで――って言って、どっかに逃げちゃったじゃん。

十河城
だ、だって……。

十河城
アタシのことは、あんまり多くの人に知られるわけにはいかないから、
当時は、御頭たちと共闘するのが立場的に難しかったんだよぉ……。

十河城
でも……でもさぁ……。

十河城
アタシとアナタとで鬼ノ城ちゃんを助けに行きたかったんだよぉ~! もぉ!

岡豊城
だったら、最初からそう言ってもらえないとわからないよぉ……。

十河城
うぅぅ、そうなんだけどぉ……そうなんだけどぉ……!

天童城
まぁまぁ、過ぎたことですし、ここはひとつ
共にお食事をして、お怒りを鎮めていただけませんか?

岡豊城
そうそう。いま大事なのは~、
美味しいお蕎麦がいつできあがるかってことなんだからぁ。

やくも
だにぃ! うちもう、辛抱溜まらんだにぃ。

引田城
お蕎麦……。

引田城
……みんなして……お蕎麦……。

飯盛山城
(――はっ!? 引田城さんが、ちょっと怖い顔してる……!!)

引田城
みんな……うどんより…………お蕎麦……ですか…………はぁ……。

飯盛山城
ひ、引田城さん!
私たち、はやく引田城さんのうどんが食べたいなぁ~。

十河城
あ、そうだったぁ~!
ねぇねぇ、引田城ちゃん、はやくはやく~♪

引田城
……うどん。

引田城
そうですね! 天童城さんたちとは別に、
こちらはうどんの美味しさを楽しむとしましょう。

飯盛山城
(ほっ……よかった。引田城さんが一瞬、
禍々しい気を発していましたが……何とかなりましたね)

殿
…………。

十河城
あっ、御頭~!
どーもぉ、お邪魔させてもらってま~す!

殿
…………。

殿
…………?

十河城
え? アタシが誰だかわからないの?

殿
…………。

十河城
もぉ、やっぱりアタシの変装術はちゃんと機能してるってことじゃ~ん♪

十河城
い~い、御頭ぁ。実はアタシはね、
何を隠そう、あの十河城ちゃんなんだよぉ?

殿
…………。

殿
…………?

十河城
いや、だから誰だ――じゃなくて、十河城ちゃんだってば!

殿
…………。

殿
…………?

十河城
むぅ~! なにその、
あたしゃ記憶にございやせんよ、みたいな顔は~!

殿
…………。

十河城
もぉ、そういうことなら――

十河城
――これで、どうだ~っ!!

殿
…………。

殿
…………!?

十河城
ハァ……ハァ……そ、そうだよぉ……。
輪入道の時に、一緒に戦ったでしょぉ?

殿
…………。

殿
…………!

飯盛山城
(殿……あの様子からして、本当は最初から気づいてたんじゃ……)

天童城
……と、それよりも殿。
昼餉がまだでしたら、今日はお蕎麦などいかがでしょうか?

殿
…………!

引田城
ちょ、ちょっと待ってください!
殿、食べるなら私のうどんを……っ!

殿
…………!?

飯盛山城
もう、お二人の圧が強いから、
殿が笑顔のまま困ってるじゃないですかぁ。

岡豊城
そんなふうに無理矢理つきつけないで、
どっちも食べてもらえばいいのにぃ。

引田城
ならば、うどんを先に!(ずいっ)

天童城
いいえ、蕎麦を先に!(ずずいっ)

殿
…………。

引田城
…………。

天童城
…………。

十河城
ど、どうしよう……。
何だか二人とも怖い顔してるよ!?

岡豊城
なんとかして、殿に最初の一口をたべさせようとしてるみたいだねぇ。

引田城
こうなっては仕方ありませんね……。

天童城
ええ……これも、我らがさだめなれば……。

引田城
…………いざ尋常に。

天童城
勝負とまいりましょう……。

殿
…………!?

飯盛山城
ま、まずい! どっちも完全に我を忘れてしまってます……!

十河城
しかたない……御頭!
とりあえずアタシの後ろに下がって!

十河城
十河流忍法・とりあえず悶着仲裁の術――発動だよ! ニンニンッ!

後半
引田城

うぅぅぅぅ――――どーんっ!

天童城
そぉぉぉ――――ばぁーっ!!

殿
…………!?

飯盛山城
す、すごい……!
殿ったら、うどんと蕎麦をほぼ同時に口に入れましたよ!?

岡豊城
結局のところ、こうするしかなかった感じだねぇ……。

十河城
それよりも、御頭……口ん中あつくないのかなぁ?

殿
…………。

殿
…………!

引田城
どうやら、今回は引き分けのようですね……。

天童城
……はい。

天童城
ですがまたいずれ、決着をつけるときがくるでしょう。

引田城
その時は、手加減無し……ですからね?

天童城
ええ。望むところです……。

やくも
だにぃ……。
何だかんだで二人とも冷静になってくれたようで助かっただにぃ。

引田城
すみません皆さん……。
うどんのこととなると、少しばかり熱くなってしまうようで……。

十河城
いいっていいって!
引田城ちゃんがうどんのことで熱くならなかったらそれこそ気味悪いしさ。

十河城
よーし! それじゃあ気を取り直して、
アタシもおうどん食べるぞ~♪

岡豊城
それじゃあ私はお蕎麦をずるずるするぅ~♪

飯盛山城
……って、それよりも引田城さん。
改めて見たらとんでもない量のうどんですね。

飯盛山城
材料費、けっこうかかったんじゃないですか?

引田城
ふふ、実はですね……。

引田城
先日、信貴山城さんから、讃岐のうどん粉がたくさん送られてきまして、

引田城
『十河城ちゃんが遊びに来るなら美味しいうどんを振る舞ってあげてください』
ってお手紙が添えられていたのです。

十河城
……え?

やくも
だに? 急にどうしたがや、十河城?

十河城
あ、いや……。

十河城
ってことはこれ、しぎーから送られてきた
うどん粉を使ってるってこと?

引田城
はい! とっても上質なうどん粉ですから味は保証しますよぉ♪

十河城
…………。

十河城
ど、どうしよう……。

十河城
……すごく食べたいのに。

十河城
でも、しぎーのうどん粉が使われてるなら……。

十河城
うぅぅ……。

十河城
ぜったいにこれ、ただのうどんじゃないよぉ!!

飯盛山城
またまた~。
作ったのは引田城さんなのですから大丈夫だって。

十河城
ううん! そういうことじゃないんだよ!

十河城
しぎーはね、そういう誰しもが安心しちゃうような
隙をついては、アタシを毒殺してくるんだから!

岡豊城
もぉ、警戒しすぎだよぉ……。

やくも
じゃあ、うちが代わりに十河城の分を食べるがや?

十河城
そ、それは……。

十河城
勿体ないというか……本当は、アタシが食べたいっていうか……。

十河城
あーでも……また毒を盛られたら、明日からのお仕事に差し障るしぃ……。

十河城
…………うぅぅ。

十河城
もぉ、しぎーのやつぅぅ……!
こうなることがわかっててうどん粉を送ってきたなぁ!

十河城
見てろー!
ぜったいにいつか、仕返ししてやるんだからー!!

結局この日、十河城のために用意されたうどんは、
全てやくもの胃袋に収まることとなり……、

代わりに彼女が食したのは、
天童城の手打ち蕎麦となってしまったのであった。

――その夜。

天童城
…………。

岡豊城
ねぇねぇ。もしかして十河ちゃんがああなることを先読みしてたから、
わざわざ天童ちゃんは、引田城ちゃんの隣でお蕎麦を作ったの……?

天童城
ふふ、他の方には内緒ですよ?

天童城
せっかく十河城さんが、所領に足を運んでくださったのに、
何も食べられずに終わってしまうのは可哀想でしたからね。

岡豊城
そっか。そういうことだったんだね。

岡豊城
……でもぉ。

岡豊城
引田城ちゃんとケンカするのはダメだよぉ?

天童城
まさか。今日のことはケンカなどではありませんよ。

天童城
あれが、私たちなりの交歓なのですからね。

岡豊城
うーん。見てる方は、はらはらするから止めてほしいんだけどなぁ……。

天童城
ふふっ、ええ、わかりました。
これからはほどほどに……ですね。

天童城
それでは室内へ戻りましょう。
今日は、十河城さんが泊まられるようですからね。

岡豊城
うん。一緒にお風呂はいるって約束したのぉ~。

天童城
あら。それはいいことを聞きましたね。
ならば、私もお付き合いさせていただくとしましょう。

岡豊城
うんうん、みんなで背中流しっこしよ~♪



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