ストーリーテキスト/謀略と猛勇の挟撃

謀略と猛勇の挟撃[]

謀略と猛勇の挟撃 -序-

備中高松城からの要請を受け
殿一行は美作国へ駆け付けるのだが、
既に其処は、戦の地と化していた……。

前半
――美作国・某森。 そこには、隊列を組んで進軍する兜たちの姿があった。 兜 進メッ！　進メ―ッ！！ 兜軍団 進軍セヨッ！　進軍セヨォ―ッ！！ 福島正則 …………オイ、全員止マリヤガレ。 前方カラ何カ来ルゾ……。 兜軍団 ――進軍停止ィッ！！ 福島正則 アレハ……。 毛利元就 …………。 福島正則 ……ナンダ、アンタカ。 福島正則 イキナリ出テキテ驚カセルンジャネェヨ。 全力デ、ブン殴ルトコロダッタジャネェカ。 毛利元就 ……グ、ギギ……。 福島正則 デ、一体ナンノヨウダ？ 俺様ニモヤルコトガアルンダ。手短ニ頼ムゼ。 毛利元就 ……コレ以上ノ進軍ハ……許サヌ。 福島正則 ……アァン？ 毛利元就 コノ先ニアル城ヘ攻メ入ルツモリジャロウ？ 福島正則 ……ダッタラ何ダッテンダヨ？ 毛利元就 此処、中国地方ハ儂ノ領地。 ……勝手ナ事ヲサレテハ困ル。 福島正則 ……フッ。 福島正則 アンタガ此処ラノ覇者気取リナノハ コノ際、ドウデモイイガヨ……。 福島正則 ダッタラ、何故イツマデ経ッテモ アノ城ヲ攻メ落トサネェンダ？ 毛利元就 儂ニハ、錬ルベキ策ガ在リ……。 ……ソシテ、待ツベキ機ガ在ッタ。 福島正則 ハッ……何ダソノ言イ訳ハヨ？ アンタモ老イボレタモンダナ。 毛利元就 …………。 福島正則 悪ィガ、時間切レダ。 福島正則 俺様ガ先ニ攻メ入リ、『黄鉄鉱』ノチカラヲ頂ク。 毛利元就 ……猪突ノ蛮勇ガ落トセル城トハ思エヌガ。 福島正則 黙リナ、臆病者。アンタハ何時マデモ 頭ン中デ下ラネェ軍議デモ開イテヤガレ。 福島正則 オラァッ、野郎共ォッ！　毛利ノ爺トノ話ハ終ワッタ！ サッサト進軍ヲ再開シロヤァァァアアアッ！！ 兜 承知ッ！！ 兜 進軍！　再開ッ！！ 毛利元就 …………。 毛利元就 …………行ッテシマッタカ。 毛利元就 ……ククク。 毛利元就 全テハ計画通リジャ……。 我ガ必勝ノ策ハ……既ニ始マッテオル……。 毛利元就 此度ノ戦……ドウ転ブカ……見物ヨナ……。 ――翌日。 美作国・某城。 千狐 殿、ようやく美作国に到着しましたね。 やくも 昨日、所領に届いた文によれば、 兜さんに攻めこまれて困ってるって話やけん……。 やくも ――ん？ 備中高松城 皆さーーーん、お待ちしていたのです！ 来てくれて、本当に嬉しいのですぅ！ 殿 …………。 備中高松城 ――あっ。す、すみません。 自己紹介が遅れてしまいました……。 備中高松城 えっと、で、では改めまして……。 備中高松城 私は備中高松城と申します。 よろしくなのです。 殿 …………。 殿 …………！ 備中高松城 えへへ……♪ 備中高松城 って、殿の笑顔に和んでいる場合ではなかったのです！ 備中高松城 すぐに、助けていただきたいのです！ お友達の津山城ちゃんが大変なのです！ 千狐 津山城……さん？ やくも ――あぁぁああっ！？ 殿さん、彼処を見るだに！ 兜 ……進軍……進軍……ッ！ 兜軍団 ……破壊セヨ……強奪セヨ……ッ！！ 津山城 ……はぁ、はぁ……。 まったく、いったいどれだけ出てくれば気が済むのよぉ！ 津山城 ひぃ、ふぅ、みぃ……って、ああもう！ 数えるのが馬鹿らしくなるほどだわ！ 兜 ……此処マデダ……津山城……。 兜軍団 ……覚悟セヨ……覚悟セヨ……ッ！ やくも ――殿さん！　兜さんら殺気立ってるだに！ このままじゃ、あの城娘さんやられてしまうがや！ 備中高松城 お願いです、殿。私では、もうどうすることもできません。 どうか、お友達の津山城ちゃんを助けてほしいのです！ 千狐 殿、すぐに出陣しましょう！ 津山城さんを助けにいかなくては！
後半
兜軍団 ――ト、殿ダァァッ！？ 撤退ッ！　一時撤退ダッ！！ 津山城 ……はぁ……はぁ……よかった。 何とか、今回も退けることが……できた……。 備中高松城 津山城ちゃん！　大丈夫ですか？　 しっかりしてほしいのですぅ！ 津山城 ――くっ、ぅぅ……抱き留めてくれてありがとね。 でも、今回の戦いでさすがに力を使いすぎたわ。 やくも ……そ、そんな。 津山城の姿が……！？ 津山城 ……変身が解けちゃった、か……。 津山城 これで、あなたと同じように、しばらくは わたしも戦場に立つことはできないのね……。 備中高松城 津山城ちゃん……。 備中高松城 ごめんなさい……。わたしも一緒に戦えてれば 津山城ちゃんがこんなに傷つくこともなかったのに……。 津山城 いいのよ、気にしないで。 あなただって、前の戦いで力を使い切っちゃったんだから。 津山城 それに、あなたのおかげでお屋形さまを 此の地に招くことができたんだから。 殿 …………。 津山城 初対面だっていうのに、 情けない姿を見せちゃったわね。 津山城 わたしは津山城。此の地を守る城娘のひとりよ。 津山城 あなたたちの噂は前々から耳にしているわ。 津山城 えっと……あなたが神娘の千狐ちゃんで、 こっちが、やくもちゃんよね？ やくも 逆がや！　うちはやくもだに！ どこらへんに狐の要素があるがやぁ！？ 津山城 ごめんごめん、どうやら間違えちゃったみたいね。 津山城 あなたがやくもちゃんね、よろしくね。 やくも よろしくだにぃ♪ 千狐 あの、それよりもこの状況を説明してもらえますか？ 千狐 どうして、あれほどまでに大量の兜たちが 此の地に攻め入っているのでしょうか？ 備中高松城 そ、それは……。 備中高松城 この『黄鉄鉱』を狙って 兜たちは此の地に攻め入ってきたのです。 千狐 ……黄鉄鉱？ 備中高松城 はい。こちらの黄鉄鉱は、此の地に縁ある鉱物でして、 津山城ちゃんの出自にも関係する大切なものなのです。 やくも 形も色もすごく綺麗だにぃ！ これなら兜さんが欲しくなるのも頷けるにぃ！ 千狐 そうじゃないわ、やくも……。 やくも ……え？ 千狐 この黄鉄鉱には不思議な力が秘められている……。 千狐 兜はきっと、その力を利用しようと企んでいるのよ。 津山城 へぇ、神娘ってそんなこともわかっちゃうのね。 津山城 千狐ちゃんの言うとおり、 兜はこの黄鉄鉱に宿る力を狙ってる……。 津山城 そして、これはわたしの城娘としての力の源のひとつでもあるの。 津山城 兜たちから此の地を守るためにも、 わたしは失ってしまった城娘の力を取り戻さなきゃいけないわ。 津山城 そのためには、この黄鉄鉱がたくさん必要なの……。 津山城 だからお願い、お屋形さま！ 黄鉄鉱を集めるのを手伝ってほしいの。 殿 …………。 津山城 だめ、かな……？ 備中高松城 殿……私からも、お願いなのですぅ……。 殿 …………。 殿 …………。 殿 …………！ 備中高松城 …………手伝っていただけるのですか！？ 津山城 ありがとう、お屋形さま！ きっと引き受けてくれるって信じてたわ！ 津山城 それじゃあすぐに、黄鉄鉱を探し始めましょう！ 敵がまた攻めてくる前に、何としてでも力を取り戻さないとね！

謀略と猛勇の挟撃 -破-

黄鉄鉱集めを開始した殿たちだったが、
先の戦いから間もなく再び兜たちが襲来する。
蔵を狙う兜に注意しつつ、敵を退けよ！

前半
突撃式トッパイ形兜 ……城内ニ、殿ガ入ッタカ……。 古桃形兜 厄介ダナ……非常ニ、厄介ダ……。 椎形兜 ……ソウハ言ッテモヨ。 黄鉄鉱ヲ集メナクチャダロ……？ 椎形兜 正則ノ兄貴ダッテ、ソウ何度モ 俺タチノ失敗ヲ許シテハクレナイゼ？ 古桃形兜 ソレハ……ソウダガ……。 突撃式トッパイ形兜 ……此処デウジウジ考エテタッテ、 答エナンカ見ツカラナイ……。 古桃形兜 ――エッ？ 突撃式トッパイ形兜 俺タチャ福島正則ノ兜軍団ダゼ？ 突撃式トッパイ形兜 悩ムヨリ先ズブン殴レ、ダ。 古桃形兜 ……フッ。ソレモソウダナ。 隼形兜 ヨッシャ、行コウゼ！ 隼形兜 殿タチヲブチ殺シテ、 黄鉄鉱ヲ全テ奪ウゾ！ 突撃式トッパイ形兜 ソウト決マレバ、 景気ヅケノカチドキヲアゲルゾ！ 兜 鋭ィッ！　鋭ィッ！！ 兜軍団 応――――――ッ！！ 津山城 ――！？ 津山城 な、何なのこの声は……！？ 備中高松城 見てください、殿！　 向こうから兜たちが攻めてきます！ 津山城 そんな……っ！ こんなに再来が早いなんて予想外だわ！ 備中高松城 まだぜんぜん黄鉄鉱を集められてないのですぅ……！ 津山城 これじゃ、わたしたちは戦えそうにないわね……。 津山城 お屋形さま！　悪いけど、 わたしたちはこのまま黄鉄鉱探しを続けるわ。 津山城 ……だから、兜の方は任せたわよ！ 殿 …………。 殿 …………！ 千狐 殿、いきましょう！ 黄鉄鉱を奪われるわけにはいきませんわ！
後半
津山城 さっすが、お屋形さま！ あれくらいの敵じゃ相手にならないって感じね！ 備中高松城 殿、見てくださいなのです！　皆さんが戦っている間に、 いっぱい黄鉄鉱を見つけることができたのですぅ！ やくも うちも少しやけど、黄鉄鉱ひろったがやぁ！ 津山城 おぉ、どれどれ～。 津山城 ひぃ、ふぅ、みぃ……。 津山城 ――ひふみっ！？　ちょっとやくもちゃん！ これ、黄鉄鉱じゃなくて『金』じゃない！ やくも ……はぇ？ 津山城 ほらっ！！ やくも …………。 やくも ――ほ、ほんとだに！？ 備中高松城 生活には欠かせないのです！ やくもちゃん、すごいのですぅ！ やくも おぉ～！　うち、すごいがやぁ！ 津山城 ……でも、ごめんね。 今は金より黄鉄鉱が必要なの。 津山城 これはやくもちゃんにあげるから、 次は黄鉄鉱をよろしくね！ やくも わ、わかっただにぃ……。 やくも それじゃ、これは――。 やくも ほい、千狐。 黄鉄鉱やないから、あげるだに！ 千狐 ――え？　なんで千狐なの？ 千狐 別にやくもが持っててもいいのに……。 やくも だって、うちが持ってると無駄づかいしてしまうだに。 千狐が持ってた方が安全がや。 千狐 …………そう。 千狐 そういうことなら、わかったわ。 千狐 それじゃあ、所領に戻ったら、 今度のご飯のおかずを少しだけ豪勢なものにしましょう！ やくも わーいだにぃ！　楽しみにしとるがやぁ♪ 突撃式トッパイ形兜 ………………クソォ……。 楽シソウニシヨッテ……。 椎形兜 金……イイナァ……。 突撃式トッパイ形兜 ソ、ソンナコト言ッテル場合カッ！？ 隼形兜 ……デモ、正直ナトコ、ドウスル……？ 隼形兜 ヤハリ、自分タチダケデハ……ドウニモナラナインジャ……。 福島正則 ――ムシロ、 オメェラダケデ、ドウニカナルト思ッテタコトニ驚キダゼ。 兜 マ、正則様ァッ！？

謀略と猛勇の挟撃 -急-

殿たちの前に姿を現した巨大兜・福島正則。
その登場によって士気の上がった兜軍団は
これまで以上に激しい進撃を開始する……。

前半
兜 マ、正則様ァッ！？ 熊形兜 オ待チシテマシタゼ、兄貴ッ！！ 突撃式トッパイ形兜 コレデ勝テルゾォ！ 福島正則 ダァッ、ヤカマシイッ！！ 少シハ落チ着ケッテンダヨ！ 兜 落チ着ケェッ！ 兜軍団 落チ着ケェッ！　落チ着ケェィッ！！ 福島正則 ッタク、ヨウヤク静カニナッタカ。 福島正則 ……デ、此処ガ、 毛利ノ爺ガ攻メアグネテタ城ッテワケカ。 福島正則 ……成ル程。ナカナカニ良ク出来テヤガル……。 福島正則 …………クックック。 福島正則 ソレデコソ、壊シ甲斐ガアルッテモンダヨナァァァッ！！ 津山城 ――――！？ な、何なのよあのデカブツは！？ 備中高松城 わ、私……聞いたことあるのです……。 備中高松城 巨大兜という、兜の中でも飛び抜けて危険な力を持つ怪物がいると……。 津山城 そ、そんなのが此の地を狙ってただなんて……。 津山城 お屋形さまに助けを求めていて本当によかったわ。 福島正則 ……ンダテメェ？ 見タトコロ城娘ミテェダガ。変身ハシネェノカヨ？ 津山城 う、うるさいわね！ あんたらのせいで変身できなくなっちゃったのよ！ 福島正則 ……ソイツァ御愁傷様。 ンナラ、指クワエテ黙ッテ見テルンダナ。 福島正則 俺様ノ手デ、テメェノ大事ナ場所ガブッ壊サレルトコロヲヨォ。 津山城 ……こ、こいつ！ 津山城 そんなこと、絶対にさせないんだから！ 津山城 ――お屋形さまがね！ 福島正則 ハァ？　オヤカタサマ、ダト？ 殿 …………。 福島正則 ホォ……何ダヨ、オメェモイタッテノカ。 福島正則 相変ワラズ、何処ニデモ現レヤガル……。 福島正則 ダガ、ソレデコソダゼ…………。 福島正則 ソレデコソ、暴レ甲斐ガアルッテモンダゼェェエエッッ！！ 熊形兜 全軍、正則サマニ続クゾォォォッ！！ 火焔形兜 シュゴッ、ンゴゴゴゴゴゴォォォ―！！ 備中高松城 ふぇぇ……っ！？ みなさん、物凄く怖い感じになってるのですぅ……。 津山城 あのデカブツが出てきた途端に、 兜全体の士気が膨れ上がったみたいだわ。 津山城 気をつけて、お屋形さま。 これまで通りに戦ったら、勝てないかもしれないわよ。 殿 …………。 殿 …………！ 福島正則 サァ、目ノ前ノ餓鬼ドモヲ、派手ニ喰ライニ征クゾォォォオオオ――ッ！！ 熊形兜 ウォォォォォォォォッ！！ 火焔形兜 シュゴッンゴッンゴゴゴゴゴォォォ―！！ 備中高松城 と、殿ぉ……兜たちが一斉に向かってくるのですぅ！ 津山城 お願い、お屋形さま！　あいつらを何とかして！
後半
福島正則 ――ッチ……ヤルジャネェカ……殿ォ。 福島正則 イイカ、コレデ終ワリダナンテ思ウンジャネェゾ！ 此ノ地ハ未ダ俺様タチガ包囲シテンダカラナァッ！！ 福島正則 少シ休ンダラ、今度ハ本気ノ喧嘩ヲシヨウゼ……アバヨ！ 備中高松城 …………。 備中高松城 ………………兜たちが、退いていくのです。 備中高松城 何とか、危機は去ったようなのですぅ！！ 津山城 …………。 備中高松城 あれ？　どうしたのですか、津山城ちゃん？ 津山城 ……お屋形さまって、あんなに強いんだ……。 備中高松城 ……ふぇ？ 津山城 すごい。すごいよ！　 これなら、わたしたちが戦えなくても 此の地を救うことができるかもしれないわ！ 備中高松城 え、ちょっと……あっ、はぅぅ……い、痛いですぅ！ 抱き締めるなら、もっと優しくしてほしいのですぅ！ やくも …………。 やくも 何だか津山城たち、妙に嬉しそうやね。 千狐 巨大兜を退けたのだから、喜びもするわよ。 千狐 ……でも、まだ戦いは始まったばかりだわ。 奴らはまた此の地に攻めてくるんだもの。 津山城 ――おっと、そうだった！ まだまだ戦いは続くのよね。 津山城 それまでに、わたしも城娘として戦えるように、 黄鉄鉱を一個でも多く集めなくちゃ！ 備中高松城 はい！　私も頑張って探すのです！ 津山城 よーし、それじゃあお屋形さま！ 黄鉄鉱集めを再開するわよーっ！！

謀略と猛勇の挟撃 -絶壱-

――備中高松城。大人しく引っ込み思案な
性格で、趣味は園芸。そんな彼女の実力に
疑問を持ったやくもは、ある質問をぶつける。

前半
備中高松城 むむむぅ！？　 何だかこのあたりが怪しいのですぅ！ 備中高松城 てやぁっ！！ 備中高松城 ――あっ！　これは、もしかして！ 備中高松城 やっぱり思った通りです！ 黄鉄鉱を見つけたのですぅ！ 津山城 ――え、また見つけたの！？ 津山城 すごいわね！　これでいったい何個目よ？ ひぃ、ふぅ、みぃ……。 津山城 ――ひふみっ！？　 こ、こんなにたくさん見つけてたなんて……！ 津山城 もしかして採掘の才能があるんじゃないの！？ 備中高松城 えへへ♪　そうなのでしょうかぁ？ 千狐 千狐もそう思いますわ！ 千狐 何だか備中高松城さんは土を触るのがとても楽しそうに見えますし、 こういった作業に慣れているのでしょうか？ 備中高松城 えっと、じ、実は園芸が趣味でして、 土いじりとか、大好きなのです……。 千狐 園芸ですか、いいですねぇ。 千狐 実は千狐も、所領にお花を植えたいと思っていたので、 そういったことに詳しい方とお話ししたかったのです。 備中高松城 本当ですか！？ 備中高松城 そういうことなら、ぜひともお力になりたいのですぅ！ 津山城 あらあら。いつもは割とおどおどしてるのに、 園芸の話となると、あんなに積極的になるんだから。 やくも んぅぅ…………。 津山城 ――って、あれ？ やくもちゃん、どうしたの？ やくも いやぁ、ひとつ疑問があーけん、 ちょっと聞いてもいいがや？ 津山城 うん、いいわよぉ。 お姉さんに何でも聞いちゃいなさい！ やくも じゃあ遠慮なく質問させてもらうだに……。 やくも ……えっとな。 やくも こうして、黄鉄鉱をみんなで集めてるわけやけど、 それって、津山城と備中高松城が戦えるようになるためやね？ 津山城 ええ、そうよ。 津山城 そのことに、何か思うところでもあるの？ やくも んとな、津山城が戦ってるところは、 少し前にうちもちゃんと見たから、強い城娘さんだってのはわかるだに。 津山城 ふむふむ。 やくも けどな……。 やくも 備中高松城は、本当に強い城娘さんなんかや？ 津山城 …………。 津山城 …………え？ 備中高松城 …………ふぇ？ やくも だって、備中高松城は こんなに優しくてほわほわっとした娘さんだに。 やくも それに、さっきもうちにお菓子くれたし、 園芸も得意みたいだし、とにかく一緒にいて楽しいがや。 やくも でもな、殿さんと一緒にこわーい兜さんらと 戦えるのかって言われたら、ちょっと疑わしいだにぃ……。 千狐 こ、こら、やくも！ 備中高松城さんに何て失礼なことを言ってるの！ やくも でもぉ……。 千狐 でももへちまもないの！　すぐに謝りなさい、やくも！ 備中高松城 い、いいんですよ、千狐さん。 備中高松城 それに、やくもさんが、そう思われるのも無理ないのですぅ……。 備中高松城 ただ……あ、あの、真正面から強いかどうかと聞かれると、 自分で、すっごく強いのです、とかって言える自信はないのですぅ……。 津山城 なーに言ってるのよ！ 津山城 備中高松城ちゃんは、ものす～っごく強いわよ！ やくも ――本当がや？ 津山城 ええ、本当よ。 やくも じゃあ、どれぐらい強いがや！？ 津山城 洒落にならないくらい！ やくも よくわからんだに！ 津山城 とにかく、す～っごく強いの！ 怒らせたりしたら、手に負えないくらいなんだからね？ 備中高松城 ――え？　わ、私……そんなこと……。 津山城 （いいから、話を合わせて） 備中高松城 （え？　あ、はい……わ、わかったのですぅ……） やくも なぁなぁ、備中高松城は怒るとそんなに怖いがや？ 備中高松城 ……え、えっとぉ。 備中高松城 は、はい！　もうそれはそれは、びっくりするくらい怖いのです！ 虎さんや熊さんよりも怖いはず……なのです！ やくも うーん。いまいちピンとこないだにぃ……。 津山城 それなら、やくもちゃん。 少し想像してごらん……。 やくも ……想像？ 津山城 そ、何か粗相をしちゃったやくもちゃんが 備中高松城ちゃんを怒らせたとする。 やくも ……うんうん。 津山城 すると、備中高松城ちゃんは抜刀し、 兜の大軍と共に攻め込んでくるかもしれない！ やくも ――兜さんどっから来たがや！？ 津山城 細かいことは気にしないの！ 想像なんだから♪ やくも な、なるほど……。 津山城 で、何だかんだあって、殿と備中高松城ちゃんが それぞれの軍団を率いて戦うことにまで事態が発展する！ 備中高松城 ――な、何かトンデモないことになっちゃってるのですぅ！ やくも そ、それで……いったいどうなるがや！？ 津山城 ん～とね。 津山城 たぶん、こんな感じになると思うの♪
後半
津山城 どうだった、やくもちゃん？ これで、備中高松城ちゃんの強さがよーくわかったかな？ やくも 津山城の事細かな説明のおかげで、 十分すぎるほどにわかっただにぃ……。 やくも ……まさか備中高松城が、あげに強い城娘さんだったなんて……。 やくも さっきは失礼なこといって悪かったがや。 許してほしいだにぃ……。 備中高松城 え……？　べ、別に私は怒ってなどはいないのですが……？ 津山城 いいからいいから♪ せっかくやくもちゃんが、謝ってるんだからさ。 備中高松城 そ、それじゃあ……。 備中高松城 やくもさん、と、特別に許してあげるのです！ もう私のこと弱いとかって思ったら、めっ……なんですからね？ やくも わかっただにぃ！ 強い上に優しいだなんて、尊敬するがやぁ。 備中高松城 （な、何だか、こちらがたじろいでしまうほどに、 やくもさんからきらきらの眼差しを向けられてるのですぅ……っ！） 津山城 （弱いと思われるより、ずっといいじゃん。ね？） 備中高松城 （ま、まあ、それはそうかもしれませんがぁ……） 備中高松城 （はぁ。津山城ちゃんの話術は相変わらず凄いのですぅ……） やくも よっしゃ！　そうとなったら黄鉄鉱をえっぱい集めて、 はやく二人が殿さんと一緒に戦えるようにするだに！ 津山城 うんうん、その意気よ、やくもちゃん！ 津山城 それじゃあ、お屋形さま。 引き続き、黄鉄鉱探しを頑張っちゃいましょー！

謀略と猛勇の挟撃 -離-

再びの襲撃に備えて準備を行ってきた殿たち
の前に、巨大兜率いる兜軍団が姿を現す。
遠近反転の布陣で、敵を退けよ！

前半
津山城 ――大変よ、お屋形さま！ 殿 …………。 やくも いったいぜんたい何がどうしたがや！？ 備中高松城 ま、また兜たちが攻め込んできたのです！ それも、ものすごい数なのですぅ！！ 千狐 落ち着いてください、備中高松城さん！ こちらも敵の再来に向けてちゃんと準備してきたではないですか！ 千狐は問題ないと思いますわ！ 備中高松城 で、ですが……おっきな兜も一緒なのです……。 やくも だからどうしたがや！ あのでっかい兜さんのやり口はわかっちょーけん、 前みたいに苦戦することはないはずだに！ 津山城 それが、そういう訳にもいかないのよ……。 千狐 ……え？　それはいったいどういう―― 兜 ――ザザッ！ 兜軍団 ザザッ、ザザザッ！！ やくも あ、あれは……！？ 毛利元就 クックック……。 千狐 そんな、どうして……！？ 前に戦ったのとは異なる巨大兜が現れるなんて！ 毛利元就 クックック……。 全ク……慣レトハ、恐ロシイモノジャナ……。 毛利元就 ……来襲スルヲ福島殿ト断ジ……、 其ノ浅慮ニ相応シキ布陣ヲ整エタ様ジャガ―― 毛利元就 ――其レコソガ、儂ノ術中ニ嵌マッタ証拠……クックック。 自ラヲ活カスベキ陣立テガ、悲劇ノ舞台ト転ズル恐怖ヲ味ワウガ良イ……。 千狐 あの口振り…………まさか！ 先に攻めてきた巨大兜と組んでいたとでもいうの！？ 備中高松城 そ、そんなのズルいのですぅ……！ 毛利元就 卑怯千万……大イニ結構……ククク。 サテ、進軍開始トイクカノゥ……。 三十二間星型兜 矢ヲ番エ…………今コソ殿ヲ……討ツ…………！ 兜 前進セヨッ……前進セヨォッ！！ 津山城 ――注意して、お屋形さま！ あの兜たち、前のデカブツが率いていた兜とは攻め方が全然ちがうわ！ 備中高松城 兜の軍団にもそれぞれ特徴があるみたいなのですぅ……！ 千狐 （まずいですわ……先の戦いと同じ布陣では敗北は必至……） 千狐 こうなったら…………！ やくも 千狐、いったいどうするつもりがや！？ 千狐 殿！　近距離攻撃を得意とする城娘と、 遠距離攻撃を得意とする城娘たちの配置を それぞれ逆転させての迎撃を進言しますわ！ 津山城 ……近距離と遠距離を……逆転？ 津山城 ――そうか！　その手があったわね！ 津山城 お屋形さま、急場凌ぎかもしれないけれど、 今のままよりずっといいわ！ 備中高松城 殿、どうかお気をつけてなのです……。 負けちゃ、いやなのですぅ……。 殿 …………。 殿 …………！ 備中高松城 はい、殿を信じて待っているのです！ やくも 遠距離とか近距離とかよくわからんけど、 殿さん、とにかく出陣の準備をするだにぃ！
後半
毛利元就 クックック……付ケ焼キ刃タル布陣変形トハ、 単純ニシテ実ニ効果的ナ策ヲ思イツクモノジャ……。 津山城 余裕ぶってられるのも、そこまでよ巨大兜！ これからお屋形さまが、あんたをボッコボコにしちゃうんだから！ 毛利元就 ……グ、ギギ……其レハ恐ロシイノゥ……ククク。 備中高松城 ……ど、どうしてあんなに悠然としているのでしょうか？ 何だかとっても不気味なのですぅ……。 やくも なーんも怖がることないだに！ 勝つ見込みが無くなったんで、自暴自棄になってるだけがや！ やくも 殿さん、このまま一気に勝負を決めるだに！ 毛利元就 儂ガ自暴自棄トハ……クックック……是ハ愉快ジャ……。 やくも な、何がおかしいだに……！ 毛利元就 最上タル策トハ、謀ラレタ者ガ 其ノ事ニ一切気ヅカヌモノジャ……。 千狐 な、何を言っているの……？ 毛利元就 ――見ルガ良イ愚者共ヨ……。 背後ニ迫ル、死ノ行進ヲ……。 津山城 ――お屋形さま！ 後方から、何かが来るわ！ 備中高松城 そ、そんな……。 備中高松城 こんなことが、有り得るわけ……ないのですぅ……。 福島正則 ……約束通リ、戻ッテキテヤッタゼ、殿ォ……。

謀略と猛勇の挟撃 -結-

二体の巨大兜、その名は毛利元就と福島正則。
謀略と猛勇の挟撃が今、殿一行に襲いかかる。
恐るべき兜軍団の進撃を、全力で迎え討て！

前半
福島正則 ……約束通リ、戻ッテキテヤッタゼ、殿ォ……。 やくも あ、あれは……最初に攻めてきた巨大兜さんだに！ 津山城 やられた……。 ヤツに背後を取られたことで、挟撃の形になってしまったわ。 備中高松城 さ、最初からこれを狙っていたということなのですか……？ 千狐 まさか、こんな手を使ってくるなんて……。 福島正則 ――アァン？ 何ダカ殿タチノ様子ガオカシイガ……ドウイウコトダ？ 突撃式トッパイ形兜 兄貴、見テクダセェ。 彼処ニ毛利ノ爺様ガイマスゼ。 福島正則 ……ハァ？　毛利ノクソ爺ダトォ？ ンナ事ガアルワケ――。 毛利元就 クックック……。 福島正則 ――ッテ、マジデ爺ガイヤガルジャネェカ！？ 毛利元就 ナカナカ良イ時点デノ来襲ジャ、正則殿。 是デ、我ガ策ハ終ニ完成ヘト至ッタ訳ジャ……。 福島正則 策ダト……？ 福島正則 ――ッ！？ マサカアノ野郎……俺様ノ進撃ヲ利用シタッテイウノカ？ 突撃式トッパイ形兜 毛利ノ爺様ノ位置ト俺ラノ位置ハ実ニ見事ナ挟撃陣形デスゼ。 十中八九、爺様ノ謀略ニ組ミ込マレタトミテ間違イ無イカト……。 福島正則 ……ッチ。俺様ガ此ノ地ニ来タ時カラ、 クソ爺ノ策ハ始マッテタッテ訳カヨ……。 三十二間星型兜 ドウシマスカ……？ 福島正則 ドウモコウモネェヨ……。 福島正則 爺ノ策ダロウガ何ダロウガ、 目ノ前ニ殿ガインダ……。 福島正則 爺ントコノ兜ヨリモ先ニ、 俺様タチガ首級ヲアゲンゾ、コラァッ！！ 兜 御意ッ！ 兜軍団 御意ッ、御意ィィィイイッ！！ 毛利元就 クックック……気持チノ良イ迄ノ即断ジャナ……。 ホレ、儂ラモ進軍開始ジャ……鯨波ノ声ヲ上ゲヨ。 兜 鋭ィッ！　鋭ィッ！！ 兜軍団 応――――――ッ！！ 津山城 ……お屋形さま、兜たちが前後から一斉に向かってきてるわ……。 備中高松城 こんなの、勝てるわけ……ないのですぅ……。 津山城 せめて、わたしたちの力が戻っていれば……。 殿 …………。 殿 …………！ 津山城 ……え？　だ、だめよそんなの……！ いくらお屋形さまでも、死にに行くようなものじゃない！ 備中高松城 ここで逃げても、誰も責めたりはしないのですぅ……！ 殿 …………！ 津山城 ……わかったわ。 どうしたって、戦うのね……。 津山城 なら、絶対に勝ちなさいよね！ ……死んだりなんかしたら、タダじゃおかないんだから！ 殿 …………！ 千狐 殿、兜がもうすぐそこまで来てます！ 城娘の皆さんに下知をお願いしますわ！
後半
福島正則 ク、ソォ……ヤルジャネェカ、殿ォ…………！！ 毛利元就 ソンナ、莫迦ナ……我ガ必勝ノ策ガ……破ラレタ、ジャト……？ 毛利元就 何ヲ間違エタ……何ガ足ラナカッタトイウノジャ……？ 福島正則 ブツブツトウッセェゾ、クソ爺ッ！ ソモソモ俺様ニチャント相談シテネェ時点デ間違ッテンダヨ、阿呆ガ！ 毛利元就 ワ、儂ガ阿呆……ジャト！？ 儂ノコトヲ……愚者ト断ズルトイウノカ……！？ 福島正則 アァモウッ、面倒クセェナ！ 何デモイイカラ、サッサト退クゾ！ 死ニタクナカッタラ付イテキヤガレ！ 毛利元就 ……次コソハ……次コソハ……必ズ……グ、ギギギ…………ッ！！ 千狐 ………………。 千狐 兜、全軍退いていきますわ！ 津山城 …………勝った……。 津山城 お屋形さまが、勝っちゃった……。 津山城 すごい、すごぉ～いっ！ お屋形さますごすぎるよぉ！！ 殿 …………！？ 千狐 ――えっ！？ やくも ――だにぃっ！？ 備中高松城 津山城ちゃんが、押し倒す勢いで殿に抱きついてるのですぅ……！？ 備中高松城 まるで、恋人さんみたいなのですぅ♪ 津山城 ……え？ 殿 …………！ 津山城 ち、ちが……！　こ、ここ、これはべつに！　 お屋形さまのことが好きとか……、 津山城 そんなんじゃないんだからーーーっ！！ 備中高松城 ……つ、津山城ちゃん！？ 殿のほっぺをひっぱたいたらダメなのですよぉ！ 殿 …………！ 備中高松城 と、殿も嬉しそうに笑ってたらダメなのですぅ……！ やくも まぁ何にせよ、兜さんらを追い払えてよかったがや！ やくも 巨大兜さんが二体も出てきてびっくりしたけど、 やっぱり殿さんの敵じゃなかっただに！ 千狐 ええ。千狐も、さきほどの 殿の戦いぶりには驚かされましたわ！ 千狐 本当に、お強くなられましたね、殿。 千狐は言い知れぬ感動を覚えていますわ！ 殿 …………！ 津山城 …………うにゅぅ。 備中高松城 あれ？　どうしたのですか、津山城ちゃん？ 何だか浮かない顔をしてるのですぅ……。 津山城 だって……お屋形さまが、 あんなにすっごいものを見せつけるから……。 備中高松城 ……ふぇ？　どういうことなのです？ 津山城 城娘として、あんな凄い戦いを見せつけられて 黙っていられないってことよぉ！ 備中高松城 ふぇぇ！？　津山城ちゃんが何だかお怒りなのですぅ！ 津山城 わたしもお屋形さまと一緒に戦いたかったぁー！ もーっ！　なんで城娘の力を失っちゃってるのよわたしぃ！ 津山城 こうなったらぁ…………ついてきなさい、備中高松城ちゃん！ わたしたちも早く、元の自分を取り戻すわよ！ 備中高松城 ひゃぅっ……！？　ま、まってくださいぃ……！ そんなに乱暴にしなくても、ちゃんとついていきますからぁ……津山城ちゃ～んっ！！　 やくも 津山城のやつ、何だかえらく気合いが入ってしまったようだに……。 千狐 それだけ、戦えなかったことが不本意だったのね……。 千狐 殿、千狐たちも津山城さんたちに同行し、 黄鉄鉱集めをお手伝いすることにしましょう！ 千狐 もちろん、戦いの疲れを癒やしてからですからね？ 殿、先の戦い、本当にお疲れ様でしたわ！

謀略と猛勇の挟撃 -絶弐-

――城娘としての力を取り戻した津山城たち。
互いに戦いの勘を取り戻す為に、
真夜中の修行を開始するのだが……。

前半
津山城 えへへ～♪ 備中高松城 どうしたのですか、津山城ちゃん？ 何だかすっごく嬉しそうなのですぅ。 津山城 だってだってぇ……。 津山城 見てよ、備中高松城ちゃん！ わたし、城娘の力を取り戻せたのよ！ 備中高松城 それはもう、知ってるのですよぉ。 備中高松城 それに津山城ちゃんだけでなく、私も殿たちのおかげで、 この通りちゃんと変身できるようになったのですぅ！ 備中高松城 ……あれ？　そもそも、城娘の力を取り戻したから、 こうして夜中に、殿たちに内緒で 修行をしに出かけたのではなかったでしたっけ？ 津山城 そうなんだけどぉ、何か改めて備中高松城ちゃんに この喜びを話したくなっちゃったのぉ！ 備中高松城 ふふ、津山城ちゃんがウキウキしてて 私もすご～く嬉しいのですぅ！ 備中高松城 ――あ！　見てください、津山城ちゃん！ このあたりなら、誰にも邪魔されずに修行できそうなのです！ 津山城 ほんとね、良い感じの原っぱだわ。 津山城 それじゃあさっそく、修行開始よ！ 備中高松城 わかったのです！ 備中高松城 それじゃあ、頑張ってお相手するのですぅ！ 兜 …………。 兜軍団 ………………ジィ～。 兜 …………皆ノ者…………作戦開始ダ…………。 ――数刻後。 千狐 津山城さーん！　備中高松城さーん！ 何処にいるのですかぁーーー？ やくも ダメがや……ぜんぜん見つからんだに。 二人ともいったい何処にいったがや？ 千狐 黄鉄鉱を集めて、お二人とも 城娘の力を取り戻したからといっても、 此の地にはまだ兜の気配があるというのに……。 千狐 やくも、はやく二人を見つけ出さないと、 兜たちに襲われてしまうかもしれないわ！ やくも わかってるに！　何としても見つけてみせ―― やくも ――って、あれ？　向こうから誰かくるがや！ 備中高松城 うぅ……ぐすっ……ふぇぇ……。 殿ぉ、助けてくださいなのですぅ……。 千狐 ――備中高松城さん！？ どうしたのですか、その恰好は！？ 備中高松城 ひぅっ、ぅぅ……津山城ちゃんが……ぐすっ……。 やめてって、いったのに……私のこと、乱暴に……うぅぅ……。 やくも まさか、津山城があんたに乱暴したって言うんかや！？ やくも あげに仲良しやったのに、いったいどうして……？ 備中高松城 わからないのですぅ……うっ、うぅぅ……。 二人で戦いの勘を取り戻すために……ぐすっ……、 修行してた……だけ、なのにぃ……ふぇぇ……どうして、こんなことに……。 千狐 ……二人に何があったというのでしょうか、殿？ 殿 …………！ 千狐 そうですね、とにかく今は津山城さんを探し出して話を聞くしかないですね。 ？？？ ――ソノ必要はナイわよ！ 殿 …………！？ 津山城 ――ハァァアアアッ！！ 殿 …………！！ 津山城 もぉ～！　何デ避けちゃうノヨぉ。 セッカク一撃で仕留めてアゲヨウとしたのに♪ 千狐 な、何をするんですか、津山城さん！ 気は確かですか！？ 津山城 フフ、愚問ね……。 津山城 恋する乙女ガ正気でイラレルわけナイジャナイ！ 津山城 お屋形さま、今度は逃げナイデネ？ わたしの槌とウィンクで、アナタのハートはいただきよ♪ 千狐 …………。 やくも …………。 やくも ど、どうかしてるだに！ あれ、ぜったい正気じゃないがや！ 備中高松城 ぐすっ……あんな津山城ちゃんイヤなのですぅ……！ 殿ぉ……何とかしてほしいのですぅ……。 殿 …………。 千狐 殿？　どうしたのですか、草陰などを見て―― 千狐 ――って、あれはっ！？ 砲撃式トッパイ形兜 フッ……悪ィガ、ソノ嬢チャンハ、 正則ノ兄貴特製ノ瘴気デ操ラセテモラッタゼ……。 千狐 ……兜！？ やはり、貴方たちの仕業だったのね！ 備中高松城 そう言えば、訓練中にちらっと兜っぽい姿が見えたような気がするのですぅ……。 やくも そういう大事なことは先にいうだに！ 備中高松城 ふぇぇ～ん！　ごめなさいなのですぅ……！ 津山城 こ～らァ！　ケンカはダメよ？ 津山城 仲良くデキナイ悪いコはぁ～、 津山城 ワタシがゼ～ンブ打っ叩いちゃうんダカラ♪ 津山城 ソレジャア行くわよ、みんな！ お屋形さまのハートをいただきに出撃ィッ！！ 兜 ハ―ト……イタダク……！ 兜軍団 ハ―ト……イタダク……！ やくも 殿さん、兜さんらヤル気満々みたいだに！ 殿 …………！！ 備中高松城 そんな……殿と津山城ちゃんが、戦うことになるなんて……。 備中高松城 ううん……私だって、ただ見てるだけではダメなのです……。 城娘の力を取り戻したのですから、もう一度頑張らねばなのですぅ！ 備中高松城 えいっ！！ 備中高松城 津山城ちゃん……待っててください！ 必ず元に戻してみせるのです！ 千狐 殿、心苦しいかもしれませんが、 津山城さんを正気に戻すため、出陣しましょう！
後半
備中高松城 これで……最後なのですぅ！！ 砲撃式トッパイ形兜 ――グハァッ……ム、無念…………………………。 備中高松城 はぁ……はぁ……よ、よかったのです……。 これで、何とか兜たちを全部やっつけられたのですぅ……。 津山城 ……………………あ、あれ？ ここは、どこ？　わたし、いったい何を……？ やくも 殿さん、津山城が気がついたみたいだに！ 千狐 大丈夫ですか、津山城さん？ 千狐たちのこと、ちゃんとわかりますか？ 津山城 う、うん……わかる……けど。 津山城 でも、どうしてわたし、 こんなに怪我してるの……？ 備中高松城 ご、ごめんなさい……なのです。 備中高松城 兜の瘴気で操られた津山城ちゃんを 私が元に戻さなくちゃって……だから、痛いコトしてしまったのです……。 津山城 そっか……わたし、兜に……操られてたんだ…………。 津山城 助けてくれて、ありがとね……備中高松城ちゃん。 備中高松城 ……ふぇ？ 津山城 わたしのために、無理させちゃったんだもの。 お礼くらい、ちゃんと言わせてよ……。 備中高松城 そんな……私……。 お礼を言われる資格なんて、ないのです……。 備中高松城 このような大事になる前に気付いていれば……、 津山城ちゃんを助けられたはずなのです……うぅぅ……。 津山城 もう、泣かないの……。 津山城 お屋形さまといっしょに、頑張ったんでしょ……？ だったら、胸を……はりなさい……。 備中高松城 でも……ぐすっ…………でもぉ……。 津山城 まったく備中高松城ちゃんは泣き虫なんだから……。 津山城 って、あれ？　おかしい、な……。 津山城 もっと……いろいろと言いたいこと……ある、のに…………。 ………ごめん……なんだか、眠くなって……きちゃった…………。 備中高松城 ……津山城ちゃん？　しっかりしてなのです、津山城ちゃぁん！！ 千狐 まずいですわ！　気を失ってます！ すぐに所領に運ばなくては手遅れになりますわ！ やくも 千狐、はやく転移術を使うだに！ 千狐 わかってるわ！　それじゃあ行くわよ！ コンッ！　秘技、時空……転移術なのーーーっ！！ ――夜、所領。 既に所領の者たちは皆、深き眠りについていた。 殿と、一人の城娘を除いて――。 津山城 お屋形さま～？ まだ、起きてる？ 津山城 うんうん、よかったよかった♪ まだ寝てなかったみたいね。 津山城 って、なーに驚いてるのよ？ 津山城 ……え？　怪我は大丈夫なのか？ 津山城 ええ、集めてあった黄鉄鉱の残りを使って 千狐ちゃんが治療してくれたからね。 津山城 ほら見て？　この通り、ばっちしなんだから！ 津山城 ……と、明るく振る舞ってみたけど……。 津山城 ……ごめんね、お屋形さま。 津山城 ……いや、だから……。 兜に操られて、迷惑かけちゃったでしょ？ 津山城 …………。 津山城 何言ってるのよ！　気にするに決まってるじゃない！ 津山城 出会った時から助けられてばっかりだから、 取り戻した力で、ようやくお屋形さまの役に立てると思ってたのにさ……。 津山城 兜に操られるとか……意味わかんない……。 津山城 こんなんじゃ……わたし、いつまでたっても、 お屋形さまにとって、迷惑な城娘だわ……。 津山城 備中高松城ちゃんにも、 すごく怖い思いをさせちゃったし……。 津山城 ……はぁ。わたし、こんなに失敗続きなことって、 今までほとんどなかったのになぁ……。 津山城 ……ねぇ、お屋形さま？ 津山城 わたし、あなたの傍にいる資格……あるのかな？ 津山城 …………だって、心配になっちゃうんだもん。 津山城 …………。 津山城 ……わかんないよ。 誰かにこうして仕えるのって、初めてだし。 津山城 それに、こんなに誰かに嫌われたくないって思うのも、初めてなんだもん……。 津山城 ――って、か、勘違いはやめてよね？ べつにお屋形さまのことが好きとか、そういうんじゃないんだから！ 津山城 ……でも、嫌いじゃないってことは、 ちゃんと覚えておいてほしいな……。 津山城 …………。 津山城 …………よし！　反省終わり！ 津山城 え？　気持ちの切替がはやい？ 津山城 そうね。だってうじうじしてるの、性に合わないもの！ 津山城 必要な分だけ後悔と反省をしたら、 あとは汚名を雪げるよう頑張るだけ……そうでしょ？ 津山城 ふふっ、だってそうしないと いつまでたってもお屋形さまに認めてもらえないもんね！ 津山城 それじゃ、夜半に邪魔してごめんね、お屋形さま。 わたし、備中高松城ちゃんのいる部屋に戻るわ。 津山城 えへへ♪　だって今日は久しぶりに一緒の部屋で寝るんだもん。 迷惑かけたぶん、肩とか背中とか揉んであげなくちゃ……なぁんてね？ 津山城 それじゃあ、おやすみなさい！ 津山城 明日からた～っくさん頑張るから、 楽しみにしてなさいよね、お屋形さま！

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