ストーリーテキスト/討伐武将大兜!蒲生氏郷

ページ名:ストーリーテキスト/討伐武将大兜!蒲生氏郷

目次

討伐武将大兜!蒲生氏郷[]

討伐武将大兜!蒲生氏郷-前-

蒲生氏郷の名を冠する巨大兜が陸奥に出現せり。
残虐にして非道たる所業にて人々を苦しめる異形を
討伐せんがため、仲間の城娘と共に出陣せよ!

前半
この日、領内の一角には、分厚い本を
読み耽る、ひとりの美しい城娘の姿があった。

黒川城
ふむふむ……なるほどぉ……。

黒川城
やはりお世継ぎ問題に対しては早めの対応が必要――

黒川城
――んっ!?

黒川城
な、なんでしょう……この気配は…………。

黒川城
乱れ……。

黒川城
そう……これでもかと、風紀を乱さんとするような霊気が迫って……。

黒川城
――ま、まさか!
彼女がここに来ているのでは……!!

???
やぁ、久しぶりだな、黒川!
まさかキミが出迎えてくれるとは思わなかったよ。(ぎゅっ)

黒川城
――きゃっ!?

黒川城
な、なな……っ!

黒川城
いきなり背後から抱きしめるなど、
何を考えているんですか、青葉さん!

青葉城
ん? なぜ怒る?

青葉城
これぐらい異国では普通のことだぞ?

黒川城
ここは日の本の――それも御殿様の領地ですよ!
然様に妙な風習を持ち込まないでください!

青葉城
ハァ……。
相変わらずお堅いねぇ、キミは。

青葉城
反して、ここはこ~んなにも柔らかいというのに……。(つんつん)

黒川城
ふゃ――っ!?

黒川城
……は、ぅぅ…………。

青葉城
ふふ、そうそう。
それぐらいリラックスして接してもらいたいものだ。

青葉城
さぁ、黒川。もう一度、再会のハグと行こうか!
今度はキミからも、背に手を回してくれよ?

黒川城
そんなことできるわけないでしょ!

青葉城
誰も見てないのにか?

黒川城
衆目の有無とか関係ないでしょ!

青葉城
Why!?

黒川城
ならぬことはならぬものです!

青葉城
キ、キミが什の掟のそのフレーズを
そんなふうに使っていいのか!?

黒川城
誤用と言いたくば言いなさい!
貴方の危険な流儀から所領を守ることこそが一義です!

青葉城
くぅ……目の覚めるような頑固さだな……。

黒川城
まったく……何をしに来たのかは識りませんが、
ここでは無闇に風紀を乱すような言動は慎んで――

黒川城
――って、そういえば青葉さん……。
貴方、何をしにここにいらしたのですか?

青葉城
ん? 何を今さら。
そんなの決まってるだろ?

青葉城
兜退治の協力を頼みにきたのさ。

黒川城
――んなっ!?

黒川城
どうしてそういう大事なことを先に言わぬのですか!

青葉城
キミが愛らしい反応を見せ続けるからだろ?

黒川城
そ、そうやって……また私をからかって……。

黒川城
いいから、さっさとついてきてください!
すぐに御殿様へのお目通りの機を整えなくては……!

青葉城
やれやれ。せっかくの再会だというのに忙しないね、キミは。

――半刻後。

殿
…………。

青葉城
――と、いうわけなんだが。どうだろう、殿。
蒲生氏郷の名を冠する巨大兜の討伐を手伝ってはもらえないか?

殿
…………。

殿
…………!

青葉城
ふふ、ありがとう。
キミならば、そう言ってくれると思っていたよ。

千狐
青葉城さんからの報告によれば、
兜が出現しているとされる場所は陸奥のようですが、

千狐
確かこの場所は黒川城さんの……。

黒川城
はい。私が中心となって守護体制を構築している地ですが……。

黒川城
おかしい……どうして、斯様な状態になるまで
私は、気づくことができなかったのでしょう……。

青葉城
…………黒川。

青葉城
然様に肩を落とすことはない。
……こればかりは仕方の無いことなのだから。

青葉城
(そうさ……これより向かう地は、
本来ならば〈彼女〉こそが立っていなくてはいけない場所……)

青葉城
(だというのに黒川が、所領内に在るということは……)

千狐
青葉城さん……?

青葉城
おっと、すまない。

青葉城
どのような出で立ちで戦いに臨もうかと思案していたのでね。

黒川城
もう、貴方という人はこんな時でも巫山戯た物言いを……。

黒川城
(ですが、だからこそ心強い……)

黒川城
(伊達に縁在る城娘としての因縁を今ばかりは黙殺し、
協力するに足る不敵さが、眼前の青葉さんには確とある……)

殿
…………。

殿
…………!

青葉城
オーケー、殿。
では各々の準備が整い次第、現地へ向かうとしよう。

――陸奥国・某城内。

兜軍団
進撃……進撃……。
……皆殺シ……皆殺シ……。

黒川城
そんなっ……まさか、これほどまでの状況となっているとは……っ!

青葉城
落ち着け、黒川。
未だ本丸を落とされてはいない。

青葉城
要は、アイツを墜とせばいいんだ。
それだけ……只それだけであるということを肝に銘じよ。

黒川城
は、はい……。
申し訳ありません、青葉さん。

青葉城
(黒川……やはり心が乱れているようだな)

青葉城
(だが、気に掛かることがある……)

青葉城
(黒川や〈彼女〉がこの地に在ることを許されていなかったのならば……)

青葉城
(代替としての――――が、配置されているのがセオリーなのだが……)


――ムムッ!?

兜軍団
城娘! 発見! 城娘! 発見!

兜軍団
氏郷様! 黒川城ニゴザイマス!

蒲生氏郷
アア……漸ク……参ッタカ……我が愛しき城娘ヨ……。

黒川城
蒲生……氏郷、さま……。

黒川城
ううん。もう惑わされたりしません……!

黒川城
魂に導かれ、この地に誘われた憐れな木偶よ!
……今こそ我が一刀にて両断してくれましょう。

蒲生氏郷
ゲニ……強キ詞を放チヨル……ナァ……。

蒲生氏郷
是も又……虚魂ガ進まんとスル終焉ヘノ道程ナレバ……。

蒲生氏郷
此刻ノミ振る舞イ得ル狂気ニテ……魂ヲ共鳴サセヨウ……ゾ。

青葉城
来るぞ! 殿、指揮は任せる!
我らの武を最上の智にて揮ってみせよ!

後半
黒川城

――捉えた!巨大兜、覚悟ぉ!!

蒲生氏郷
フッ……ゲニ、鈍き剣閃……ナリ……。

黒川城
そん、な……!
今のを避けるのですか!?

青葉城
下がれ、黒川!
得物の差異が招きし逆境なれば、ここは私が請け負う!

蒲生氏郷
青葉城……貴様、ソノ武器ハ……!?

青葉城
さぁ、遊びは終いだ、蒲生氏郷。
我が連撃にて其の魂ごと堕としてやろう。

蒲生氏郷
私ヲ……堕トス……ダト?

蒲生氏郷
其レは又……ゲニ、愚カナル思考……ヨナァ……。

青葉城
なん、だと……?

蒲生氏郷
己が引キ金ヲ絞るハ……。

蒲生氏郷
我が手中ニアル城娘ノ命ヲモ散らすト、知れ……。

黒川城
手中にある……城娘……?

三十二間星形兜
サァ、来イ……二本松城……!
氏郷様ノ勝利ノタメ、人質トシテノ務メヲ果タスノダ!

???
うっ、ぅぅ……や、だ……離して……離してよぉ……っ!!

討伐武将大兜!蒲生氏郷-後-

人質として兜らに捉えられていた二本松城の姿を目
にし動揺する殿一行。だが、そんな最中にあっても
青葉城は不敵な笑みを浮かべ仇敵へと銃口を向ける。

前半
???

うっ、ぅぅ……や、だ……離して……離してよぉ……っ!!

黒川城
そんな……!
どうして二本松城が!?

千狐
二本松城……さん?

青葉城
(そうか……やはり〈彼女〉の代替なる城娘は二本松城だったのだな)

青葉城
二本松城は豊臣秀吉による奥州仕置以後、
蒲生と上杉の支城として城代が置かれた城ゆえ……。

青葉城
恐らくは、黒川城らの代わりに
ここら一帯の守護にあたっていたのだろう。

黒川城
そ、そういえば……。
私は二本松に託していた記憶が……ある……。

黒川城
けど、どうして……?

黒川城
なぜ、今までこのような大事なことを……私は、忘れていたの……?

青葉城
……それも皆、この世の歪みが成した異事だろうさ。

黒川城
……え?

青葉城
いや、なんでもない……この刻に至る因を探るよりも前に、
今は二本松をどうするかに頭を働かせよ、黒川!

黒川城
で、ですが……。
飛翔する兜に捕らえられていてはこちらは手も足も出せないのですよ!?

青葉城
ならば……。

三十二間星形兜
――ムッ!? アノ城娘……マサカ!?

青葉城
そのまさか、さ……。

青葉城
殿や黒川を惑わす枷となるならば、
人質ごと貴様を撃ち抜くまでのこと。

二本松城
……え!?

黒川城
な、何を馬鹿なことを言ってるのですか、青葉さん!!

千狐
そうですよ! 城娘が城娘を撃ち抜くなど、あってはならないことですわ!

青葉城
だが、二本松の命を救うのと、
我ら全員が討たれるのとでは、どちらが良いというのだ?

千狐
そ、それは……。

黒川城
何か他に……そう、他に策があるはずです!

青葉城
だったらその策とやらを即刻出してみせよ、黒川!!

黒川城
……っ。

青葉城
それにな。私にとって二本松という名は
我が業に刻まれた不穏たる歴の一つでもある。

黒川城
貴方……こんな時に『粟之巣の変事』を持ち出すというのですか!?

青葉城
当然だろう?

青葉城
我が城主・伊達政宗の父君こと伊達輝宗は、
二本松義継に捕らえられ、二本松城へ連れ去られかけた。

青葉城
あの出来事、あれさえなければ、
政宗が父殺しへと至ることはなかったのだ。

青葉城
なればこそ……。

黒川城
……ここで報いを、と……そういうことなのですか!?

青葉城
ふふっ、理解が早くて助かるよ。

青葉城
キミは寸刻、目をつむっていればいい。
全ては一瞬の出来事さ……!

黒川城
止めて……止めてください、青葉さん!!

二本松城
ぐすっ……黒川城……さまぁ…………。

二本松城
いいのです……あたしの不出来が招いた事態ですから……。

二本松城
構わず……どうか……巨大兜をお倒しください……!

青葉城
ということだ。
さぁ、ショーの始まりといこうか……兜たちよ!

三十二間星形兜
クッ……バ、バカナ……!
貴様、狂ッテルトデモイウノカ!

青葉城
伊達政宗に縁深き城娘なれば、
この程度の事で狼狽えられるなど愚弄に同じ!

青葉城
あの世で詫びろ――異形共っ!!

三十二間星形兜
ヒ、ヒィ――ッ!!

青葉城
(臆したことで、拘束に隙が生じた……!)

青葉城
今ならば外しはしない! 青葉七連――斉射っ!!

三十二間星形兜
ギァァ――――ッ!?

二本松城
あわわっ……!!
落ちる……落ちるぅぅぅぅ!!

青葉城
受け取れ、黒川!
貴様を支える城娘がひとり、二本松の矮躯をな!!

黒川城
は、はい……!!

二本松城
うっ、くぅぅ……く、黒川城さまぁ……!

黒川城
大事ないですか、二本松?

二本松城
な、何とか……。
捕らえられていただけで、手傷は負わされてませんので。

蒲生氏郷
当然のコト……我が愛しき城娘のヒトリなれば、
ドウシテ傷つけるコトなどできよう……カ?

青葉城
なら、私たちのことも傷つけずに、
ここから撤退してはどうだ、氏郷?

蒲生氏郷
ソレハナラヌ……。

蒲生氏郷
ならぬコトは……ならぬモノ……ダ。

青葉城
ふっ、黒川のようなことを口にして。

青葉城
なら仕方ない……。
今再びの戦をもってキミを文字通り撃退させてもらうとしようか!

青葉城
殿、黒川!
戦う力は残っているか?

殿
…………!

黒川城
はい! もはや我らを縛るものは皆無!
今こそヤツを討ち取ってご覧に入れましょう!

二本松城
ま、待って……。
黒川城さま……あたしも、一緒に……。

黒川城
二本松……!?
無理はいけません、休んでいなさい!

二本松城
ううん……!
これはあたしの矜持を保つための、わがまま……なの……。

二本松城
やられたままの格好悪いあたしじゃ、
これから先、黒川城さまの隣で一緒になんて戦えないもん!

黒川城
二本松……あなた。

青葉城
はっはっは! それだけの威勢があるのならば充分だ。

青葉城
ならば、共に征こう!
我らが力を合わせ氏郷の名を冠する異形を退けるのだ!

後半
青葉城

捉えた……ふふっ、派手に踊れッ!

蒲生氏郷
ゲ、ハァ――ッ!?
……ゲニ、苛烈ナル弾幕、ゥゥゥゥッ……!!

青葉城
動きが鈍ったぞ! 今だ黒川、一気に斬り込め!!

黒川城
今度こそ――我が一刀を、其の身に刻め!!

蒲生氏郷
グ、ァ……ッ!! こ、コノ太刀筋……ハッ!?

黒川城
さぁ、仕上げです!
派手にやってしまいなさい、二本松!

二本松城
お任せを、黒川城さま!

二本松城
よくもヒドい扱いをしてくれたわね!
お星様まで吹っ飛びなさい、巨大兜――!!

蒲生氏郷
グギァァァァァアアアアアアアアアアアアアアッ!!

黒川城
直撃……!
今のを喰らって、さすがに動けるはずは――

蒲生氏郷
――グ、ハ……アァァ……。

二本松城
そんな……まだ、戦えるっていうの!?

青葉城
いや、よく見てみよ……。
雑兵どもが主を守護する陣形を組み立てている。

黒川城
ということは……。

蒲生氏郷
総員……撤退……ダ……。

蒲生氏郷
口惜シヤ……愛シキ城娘ラニ……コウモ拒マレル、トハ……。

蒲生氏郷
ナラ、バ……次なる地ヲ……目指すハ……ゲニ、賢シキ行……ヨナァ……。

千狐
……………………兜たちの撤退を確認!

千狐
やりましたわ、この地を兜から守ることができたようです!

二本松城
よ、よかったぁ……。

二本松城
でも……もう、限界……座っても、いい……よね?

黒川城
二本松――っ!?
やっぱり無茶をしていたのですね!

二本松城
だって……少しでも、助けになりたかったから……。

二本松城
捕まっちゃって……ごめんなさい、黒川城さま……。

黒川城
いいのです……。
貴方が無事ならば、それで……。

殿
…………。

青葉城
うむ。げに美しきは仲間を思う心よなぁ……といったところか。

黒川城
あ、あの……。

青葉城
ん?

黒川城
その……二本松を助けてくれて、本当にありがとうございました。

青葉城
なに、当然のことをしたまでさ。

二本松城
で、でも……。
二本松の名は青葉さまにとっては恨みの対象では……。

青葉城
なんだ、そんなことか。

青葉城
忘れたか、黒川。二本松。

青葉城
二本松城はな。
奥州仕置以前においては伊達の支城でもあったのだよ。

青葉城
なればこそ、私にとってもキミは大切な城娘だということさ。

二本松城
青葉さま……。

殿
…………。

青葉城
それじゃあ、私は自分の故郷へと戻るとするよ。
あまり羽目を外しすぎると白石城のヤツが煩いからな。

殿
…………!

青葉城
ああ。また近々、所領に顔を出しにいくさ。

青葉城
二本松、それまでにきちんと身体を回復させておくのだぞ?

二本松城
は、はい……!

青葉城
では、さらばだ! Nos vemos!

殿
…………?

黒川城
い、今のは異国の言葉で
『また会いましょう』……といった意味だったかと。

黒川城
まったく、最後まであの人らしいというか何というか。

黒川城
それでは殿、我々も帰還するとしましょう。
二本松の手当てもありますからね。

二本松城
……え?
あ、あたしも行っていいの……?

殿
…………!

二本松城
ありがとう、殿!
それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね♪

千狐
それでは我々の所領へと帰還しましょう!
殿、此度の遠征も本当にお疲れ様でした。

討伐武将大兜!蒲生氏郷-絶-

蒲生氏郷の名を冠する巨大兜の戦いから数週間後。
所領には、朝も早くから蚕の世話をせんとして
桑の葉を集める二本松城の姿があった――。

前半
蒲生氏郷の名を冠する巨大兜との戦いから数週間後。

卯ノ刻・所領。

二本松城
く~わのはく~わのは、はっぱっぱー♪
きょ~ぅもげんきにめ~しあ~がれ♪

黒川城
ん、ぅぅ……二本松……朝から、精が出ますね……。

二本松城
あっ、おはようございます、黒川城さま!

二本松城
……って、何だかまだまだ眠そうな感じだけど、大丈夫?

黒川城
昨晩は、殿と遅くまで戦術会議をしていましたから。
……ふぁ~ぁ。まだ頭がぼっーとしていて……。

二本松城
だったらまだ寝てればいいのに……。

黒川城
いえ。これも領内の風紀を乱さないためです。
私が皆の手本とならねば!

二本松城
あんまり無理はしちゃだめだからね、黒川城さま。

黒川城
ええ、わかっていますとも。

黒川城
それよりも二本松。
その桑の葉は蚕たちにあげるものですか?

二本松城
うん! 『桑かけ』は早朝から半刻かけて丁寧に
やらないと蚕たちがお腹を空かせちゃうからね!

黒川城
半刻……。
毎日続けるのは大変じゃありませんか?

二本松城
そんなことないよ、黒川城さま!
愛情をこめた分だけ蚕たちだって大っきくなるし!

二本松城
それに、家畜化した蚕はちゃんとお世話しないと生きられない……。
だからこそ責任を持って面倒を見ないといけないの!

黒川城
養蚕は貴方にとっては業の一つ……。
なかなかに難儀なものを備えてしまったようですね。

青葉城
――だがそれによって生まれる富や縁は絶大ゆえ、
二本松は何だかんだと多くの城娘らとの繋がりがあるのだぞ?

黒川城
あ、青葉さん!?
貴方……どうしてここに!?

青葉城
何を驚く、黒川?
私は二本松から手紙をもらい生糸を頂戴しにきただけだぞ。

黒川城
き、生糸って……まさか!?

二本松城
ごめんなさい、黒川城さま。
文を出したのはつい先日だったので、お伝えする暇がなかったの。

二本松城
というより、青葉さまも青葉さまです!
こんなに早く来るなんて思ってもみませんでしたよ!

青葉城
善は急げというやつさ。
それに、ちょうど新たな衣装が欲しいと思っていたからな。

青葉城
二本松の生糸を使って、より美しい衣を纏うことで、
殿に私の存在を――

黒川城
――ちょっとお待ちなさい、青葉さん。

青葉城
ん?

黒川城
もしかして、新しい衣装というのは
今と同じくらいの露出を想定しておいでで?

青葉城
いや、さすがにそれはない。

黒川城
……ほっ。
それならば風紀は乱れな――

青葉城
――今よりももっと肌を露わにして、
ガンガンに攻めた奇抜な恰好をと考えている次第だ!

黒川城
そんなのダメに決まってるでしょーが!

青葉城
な、なぜだ!?
洒落た服を着るのは私の趣味の一つなのだぞ!

黒川城
何がお洒落ですか!?
これ以上、所領内の風紀を乱そうったってそうはいきませんよ!

黒川城
青葉さんの新しい服は、
私がいま着ているようなものにしてください。絶対に!!

青葉城
え~。

黒川城
何ですか、その反応は!

青葉城
だって、地味じゃん。

黒川城
んな――っ!?

黒川城
青葉さん、言ってはならぬことを口にしましたね……。

青葉城
……っ!?

黒川城
二本松よ、今よりこの黒川が命ずる!

黒川城
不埒な青葉さんを羽交い締めにするのです!

二本松城
ええっ!? あ、あたしですか~っ!?

黒川城
これも風紀のため……!
やるのです、二本松!

二本松城
し、仕方ないなぁ……。

二本松城
そういうことなので、ごめんなさい、青葉さま!
これもお支えすると誓った黒川城さまの命です、お覚悟を。

青葉城
――あっ、ちょ、ちょっと!
はっなっせぇ~! やめないか二本松ぅ~!

黒川城
さぁ、まずは採寸ですよ、青葉さん。
奇抜だなんだと露出高めな服装は今日限りだとお思いください。

青葉城
そ、そんな……冗談だろ……?

青葉城
採寸だか何だか知らぬが――、

青葉城
そんな荒縄で縛り上げるとか、どうかしてるぞ!!

黒川城
うふふふふ……。

青葉城
くっ……風紀の鬼と成りはてたか、黒川……!

青葉城
ええいっ! 奥州の青葉をなめるなっ!
二本松、貴様の脇の甘さは熟知しておる!

二本松城
――ふぇ?

二本松城
あっ、ちょ、ちょっと……きゃははっ……あはっ、は……っ!
も、もぉ! 青葉さま、くすぐるとかナシですってば~っ!!

青葉城
(よし、今だ……っ!!)

二本松城
そ、そんな……っ!! ごめんなさい、黒川城さま! 
くすぐられている隙に逃げられてしまいましたぁ~!!

黒川城
大丈夫です、二本松!
あのような恰好ではそう遠くには逃げられないはず……追いかけますよ!

二本松城
はいっ!!

…………。

青葉城
ハァ……ハァ……誰か……助けて、くれ……。
このまま、では……わたし、は……あ、ぅぅ……。

殿
…………?

柳川城
何でしょうか、今の声は……?
あちらから聞こえてきたような?

青葉城
お、おおっ! 殿に柳川城か!
頼む、助けてくれ! 緊急事態なんだ!

柳川城
あ、青葉城さん!?
其の恰好は、いったい……?

黒川城
こら~っ! 待ちなさい、青葉さん!

黒川城
所領内の風紀は何としても私が守ります!
行きますよ、二本松!

二本松城
は、はいぃ……!
(うぅぅ、まだ桑かけ終わってないのにぃ……)

殿
…………!?

青葉城
そ、そうだ! 状況は一目瞭然だろ!?

青葉城
このままでは黒川に乱暴されてしまう!
お願いだ、今こそキミたちの力を貸してくれ!

殿
…………!!

柳川城
何だかよくわかりませんが、黒川城さんたちは興奮しているようです!
とりあえず間に入って仲裁するとしましょう、殿!!

後半
二本松城

く、ふぅぅ……どうして、こんなことにぃ……。

黒川城
ご、誤解です柳川城さん……。
私たちはただ、青葉さんの服装を正そうとしていただけで……。

柳川城
……え? 服装?

青葉城
な、なんだ……?
そんなにジロジロと……私は見世物ではないぞ……!

柳川城
(確かに、これは……)

殿
…………。

青葉城
…………ぅぅ。

青葉城
と、殿も何とか言ってくれ!!
このままでは私だけが悪者になってしまう。

殿
…………。

殿
…………!

青葉城
おおっ、そうかそうか。
やはりキミならばわかってくれると思っていた!

柳川城
と、とりあえず青葉城さん。
その……まずは変身を解除していただけませんか?

青葉城
おっと、そうだったな。
さすがに変身したままでは殿も困るだろう。

柳川城
(いや……どちらかというと、目のやり場に困るというか……)

殿
…………。

黒川城
御殿様……。
その、所領内で荒事を起こしてしまい申し訳ありませんでした。

黒川城
ですが、青葉さんはその……少々、
過激な服装ゆえ風紀の乱れが懸念されまして。

青葉城
ばかな……いったい何を案ずることがあろうか?
だいたい、キミは少し厳しすぎる。そうは思わぬか二本松よ?

二本松城
え、えっと……。

二本松城
あたしは黒川城さまに日頃から言いつけられてますので、
普段はこのように、びしっと着込んでますので……。

青葉城
むっ……そ、そういえばそうか……。

青葉城
ならば柳川城はどうだ!?

柳川城
……へ?

青葉城
ほら、よく見てみろ黒川!
この裾丈は許されるのか?

黒川城
ふむ、たしかに言われてみれば……。

柳川城
……え? ええ!?

殿
…………。

柳川城
あ、あの……そんなふうに、じっと見ないで……ください……。

黒川城
うーん。

黒川城
柳川城さんの裾丈でギリギリですね。

青葉城
あれで、ギリギリ……か。

柳川城
(私、ギリギリなんだ……)

殿
…………!

黒川城
そ、そうですね、御殿様。
……まぁ本当ならば、私や二本松のような服装を規定としたいのですが、

黒川城
それでは皆さんの自主性を蔑ろにすることになりますからね。

青葉城
では……私のお洒落も許してくれ――

黒川城
――青葉さんはとりあえず、二本松さんに生糸をもらうのは許可しますが、
新しい服の意匠については私と白石城さんとで協議させてもらいますからね?

青葉城
そ、そんなぁ……!
アイツが絡んでしまってはより地味なものになってしまうじゃないか!

黒川城
じゃあ生糸は諦めますか?

青葉城
うぅぅ……それは困る……。

青葉城
仕方ない。これ以上は条件を悪化させるだけだ。
……今日のところはキミの言う通りにしよう。

黒川城
ふふっ、よろしい。

黒川城
では、青葉さん。二本松の桑かけを邪魔して
しまったのですから我々も手伝うとしましょうか。

青葉城
邪魔したも何も、キミが騒ぎ立てたのが原因だろうに……。

黒川城
……何ですか?

青葉城
い、いや……何でもない!
何でもないから、眼鏡キラーンはやめてくれ……怖いから。

二本松城
あのぉ、お二人とも……そんなに気を使わなくても大丈夫ですよ?

二本松城
それに、蚕のお世話って皆さんが思ってるよりも大変ですし……。

青葉城
遠慮などしなくていいぞ、二本松。

青葉城
私が身に纏うものを拵(こしら)える蚕なれば、繭を作る前から
面倒を見るというのもまた、新たなお洒落の作法と言えるしな!

二本松城
う、うーん……。
何だかよくわからない理屈だけど……。

二本松城
青葉さまがそこまで仰るのなら、手伝ってもらうとしましょうか。

二本松城
ただし! やるからにはあたしが先生なので、
きちんと言うことを聞くように。わかりましたか?

青葉城
うむ! ビシバシしごいてくれ、二本松!

黒川城
ご指導ご鞭撻のほどお願いしますね、先生。

二本松城
な、何だかくすぐったいけど、
これはこれで悪くないかも……なぁ~んて。

二本松城
えへへ♪

殿
…………。

柳川城
そうですね、せっかくの機会ですから、
我々も桑かけのお手伝いをすることにしましょう!

――夜・所領。

青葉城
ふはぁ~。良い湯だった。
さすが殿の所領! なかなか洒落た浴場であったな。

黒川城
ああもう、青葉さんったら……。
しっかり髪を乾かさないと風邪をひきますよ?

青葉城
む……。

青葉城
何だか黒川が、白石城のようなことをしてくるな。

黒川城
誰がさせてるんですか、誰が!

黒川城
はい、これでよし……っと。

青葉城
うむ。感謝するぞ、黒川♪

黒川城
…………。

青葉城
…………。

青葉城
案ずるな、ここには私とキミしかいない。

青葉城
訊きたいことがあるのだろう?
遠慮無く申せ。

黒川城
ど、どうしてそれを?

青葉城
今日一日、キミの様子は何か変だったからな。

青葉城
ずっと私と二人きりになる機を窺ってたように感じた故、
先日の件についての相談事か何かだと思っていたのだが。

黒川城
……かないませんね、貴方には。

黒川城
仰る通り、私が問いたかったのは、
蒲生氏郷の名を冠する巨大兜との戦いの日のことです……。

黒川城
巨大兜の侵攻に気づけなかったことだけでなく、
二本松に防衛を任せたはずの私が、

黒川城
どうしてそのことを忘却していたのか……ということを。

青葉城
……やれやれ。
これはまた答えづらい問いだな。

青葉城
この世に許される言の葉にて、その問いに応じるならば、そうだな……。

青葉城
我々が戦った地が〈会津若松城〉だったから――。

青葉城
この辺りが私に許された限界と言えるだろう。

黒川城
……どういうことでしょうか?

青葉城
ふっ。今はわからなくていい。

青葉城
いずれ刻が来れば、嫌でも理解するのだからな。

青葉城
その為にも、黒川……。
キミはもっと強くならねばならない。

青葉城
そうだな……。

青葉城
あの巨大兜を倒すためにも、
私のように得手を銃に変えてみるというのいいかもしれぬ。

黒川城
……わ、私が銃ですか?

黒川城
そんなこと、考えたこともありませんでした。

青葉城
試してみる価値はあると思うがな。

青葉城
それに書を棄て、武の修練に励み、
銃を使うことで遠方を目す機を増やさば眼鏡も不要になるかもしれぬ。

黒川城
……そ、そういうものでしょうか?

青葉城
ああ。私の視力が常人の三倍であるという点が、証左の一つにもなるだろうさ。

黒川城
だったらそのダテ眼帯を外したらどうですか?

黒川城
勿体ないですよ。綺麗なのに……。

青葉城
はは、久しぶりに黒川に褒められた気がするな。

青葉城
だが、これだけは……外すわけにはいかないのだ。

黒川城
どうして?

青葉城
お洒落だからさっ!

黒川城
……。

黒川城
……ハァ。
青葉さんって、時々バカですよね。

青葉城
な……っ!?

黒川城
ですが、こうして私と仲良くしてくださることには感謝しています。

青葉城
……感謝?

黒川城
だって、そうでしょう……?

黒川城
貴方は伊達の城娘……なのですから。

青葉城
…………。

青葉城
なんだ、そんなことか。

青葉城
身内や同胞を愛することができてようやく人並。

青葉城
他者から愛し得られるに至って初めて是れ城娘――。

青葉城
而して――仇敵を愛し得るに至ることで、我らは真なる伊達者とならん。

青葉城
……そう、私は思ってる。

黒川城
相変わらず奇妙な論理の裡で生きているのですね、貴方は。

青葉城
だが、洒落ているだろう?

黒川城
さぁ。

――私は貴方と違ってお堅い城娘ですからね。

微笑む青葉城に、然様なる言の葉を返す黒川城は、

闇夜に浮かぶ半月に視線を投げながら、

断じきれぬ温かな思いに、知らず頬を緩めてしまうのでった。



特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

[裏]真田丸

裏]真田丸(チャリン……チャリン……チャリン……)……貴殿か。今日は、話をしたい気分じゃない。足を運んでくれたのに、すまない。一文……二文……三文……四文……五文……六文……銭を数えていなければ、一瞬...

[裏]淀城

]淀城あ~……。あ゛ぁ~……きもちわる。夢見は悪いし、頭はズキズキ痛むし……。ほんっとに最悪な日よ、今日は。誰でも良いから……。どつき回して、ぐちゃぐちゃにしたい気分。…………。……で、なに?そこに突...

[裏]桜尾城

]桜尾城殿……どうかしましたか?……ふふ、今回は間違えませんでしたよ。あなたの安らぐ顔もまた、私の喜びなのですから。私は今……海を見ていました。このどこまでも凪ゆく、厳島の海を……。厳島周辺は神域とい...

[裏]川越城

]川越城お客様かしら……どうぞ。貴方は、確か……ちょっと待ってね……。うん……たぶん、『殿』よね……?やっぱり……人違いでなくて、良かったわ。ふふ。今丁度、過去の私が遺した日記を読み返していたのよ……...

[裏]小田原城

]小田原城…………。……あら、殿。ようこそいらっしゃいました。ああ……いえ、ご心配なく。少し考え事をしていただけですから。今、ちょうど……。昔の出来事に思いを馳せていました。今の私を形作る、原点とも呼...

[裏]小牧山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 所持特技1.4 [改壱]所持特技1.5 計略1.6 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3...

[裏]室町第

裏]室町第殿……ふふふ。どうせまた来るって、そんな気はしていたわ。私がどんなに忠告をしても、貴方は自分の信念を曲げない。本当に……つくづく、強い人ね、殿は。私のせいで、どれほど悪いことが起こっても殿は...

[裏]大宰府

]大宰府おお、殿か。よく来てくれたな。今な、手紙を整理しておったのじゃ。最近は毎日、誰かしらから届くのでな……。この手紙は……、『大宰府ちゃん親衛隊』を自称する者たちからじゃな。大野城、鞠智城、基肄城...

[裏]坂本城

]坂本城大殿様……また来たのね。ふふ……別に、追い返したりしないわよ。というより……私も今ね、大殿様と話せたら、って考えてたところだったの。だから……少しの間、私の話し相手になってくれるかしら?……ふ...

[裏]佐和山城

]佐和山城……また来たのね、あなた。足を運んでくれたところ悪いけど、面白いものは何も見れないわよ?相変わらず、大坂城様のらいぶに向けて、準備をしているだけだもの。……ん、なに?『なぜ、そこまで大坂城様...

[裏]伊勢長島城

]伊勢長島城も~、なんなのあいつら!信じらんない!寄ってたかってライブの邪魔をして!いったいどこから情報が漏れたの?もしかして、殿じゃないでしょうね……!?……そんなわけないか。あたしは、あんたにな~...

[花嫁衣装]鹿児島城

目次1 性能1.1 特技1.2 計略1.3 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< ロケト城 - [花嫁衣装]シャンティイ城 >[花嫁衣...

[花嫁衣装]鮫ヶ尾城

]鮫ヶ尾城はあ……春日山城サマの祝言、想像するだけでドキドキしてしまうっす!ね、ちびサマ~♪……ん?どうしたっすか、トノ?えっ、『主城のことより自分はどうなのか』っすか……?うぐ……これは痛いことを言...

[花嫁衣装]許昌城

]許昌城うーん……。ううーん……。……おや、殿か?すまない、考え事をしていて来訪に気づいていなかった。この間、殿と話してから、結婚に関して城娘達と話をしたのだ。繁栄という目的へ至る手段としての婚姻……...

[花嫁衣装]萩城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]チャンドラ・マハル - [花嫁衣装]新田...

[花嫁衣装]秋田城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< 延岡城 - [花嫁衣装]ロンドン塔 >[花嫁衣装]秋...

[花嫁衣装]春日山城

]春日山城うーん……。……うーん? ……うん?……殿?すみません! お越しいただいていたのに、今の今まで気づかずにいて!実は先日、坂戸城と謙信公の昔話をしてたのですが、その際、跡継ぎの話題が出たのです...

[花嫁衣装]新田金山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]萩城 - [花嫁衣装]アイリーン・ドナン...