ストーリーテキスト/討伐武将大兜!宇喜多直家

ページ名:ストーリーテキスト/討伐武将大兜!宇喜多直家

目次

討伐武将大兜!宇喜多直家[]

討伐武将大兜!宇喜多直家-前-

――新たな巨大兜の出現を確認せり。
突如として来訪した城娘による報せを受け、
殿一行は当地へと向かうのだが……。

前半
――所領。

三木城
はへぇぇ……おなかすいたよぉ……。

吉田郡山城
――っ!?

吉田郡山城
もう三木城さんったら、いくら領内と言えど、
そのような状態でふらついてはいけませんよ。

三木城
れもぉ……おなかすいたんらもぉぉん……。

吉田郡山城
仕方ありませんね。

吉田郡山城
でしたら、少し昼餉には早いですが、
私がうどんをお作りしましょう。

三木城
うどんっ!?

吉田郡山城
ええ。

吉田郡山城
少し辛めの味付けですが、うどんの上には豚肉や、
安芸のネギをたっぷりと乗せますので、きっと気に入るかと。

三木城
うぉ~っ! さっすがよっちゃん!

三木城
じゃあ、他の城娘たちも呼んできていいかな?

吉田郡山城
勿論です。
きっと幼い城娘さんたちもそろそろお腹が空く頃でしょうからね。

吉田郡山城
できるだけ大勢に声をかけてください。

三木城
うんっ、わかった!
じゃあ、後で部屋にいくから待っててね!

吉田郡山城
はい。

吉田郡山城
…………。

吉田郡山城
(ふふ、これでまた今日も幸せな一時が……うふふふ)

駆けていく三木城の小さな背を見つめ、
端麗な顔を笑みで緩める吉田郡山城。

――しかしそんな彼女を、僅かに離れた木陰から、
じぃ~っと観察する、ひとりの城娘の姿があった。

石山城
…………。

石山城
ふむ。

石山城
今日の吉田郡山城はぁ……、

石山城
異常なし!

石山城
しからば、大坂城殿にさっそく報告せねば!

石山城
――ッ!?

石山城
(なんだ……この感覚……)

石山城
(強大な毒気……しかし、それでいて、ひどく懐かしいような……)

???
――あらあらまあまあ。然様に怖い顔をなさっては、
せっかくの可憐なお顔が台無しですよ、石山城さん。

石山城
む…………。

石山城
誰かと思えば、金華山城か。

石山城
(……こいつも毒気という点では共通するが)

石山城
(先刻の感覚とは比べるべくもない……)

石山城
で、今日はいったい何用で来たんだ?

金華山城
ふふ、実は殿に少しばかり相談したいことがありましてね。

石山城
…………相談?

石山城
それにしては、やけに荷が多いようだが……。

石山城
もしかして、妙なものを持ち込んでやしないだろうな?

金華山城
気になりますか?

石山城
……きみの生い立ちを知る身としては、
気にするなという方が無理ってものだろ。

金華山城
うふふ。ならば、貴方に先導をお任せしましょう。

金華山城
主にもしものことがあっては、悔いても悔やみきれませんものね。

石山城
べ、別に殿はそんなんじゃ……。

金華山城
あらあら。

金華山城
頬が桜色に染まっていますねぇ。

石山城
う、うるさい!

石山城
いいからさっさと付いてきなって!
グズグズしてると置いてくからな!

金華山城
はいはい。
ちゃんと後に続きますよ、石山城さん。

――――。

殿
…………。

金華山城
ふふ。

金華山城
ええ、実に良き蝮酒ができあがりましたので、
殿や皆さんで、ぜひ召しあがってくださいまし。

千狐
す、すごいですね……。
本当に蛇が入っているだなんて。

やくも
な、なんか……うちが飲むとなると、
共食いみたいになりそうで怖いだに。

金華山城
まぁ、やくもさんったら。
面白い御冗談ですこと。

金華山城
ですが、そうですね。貴方が身につけている、
その蛇を使えば、より上質な美酒を造ることも――、

石山城
バカなことを言ってないで、
そろそろ本題に入ったらどうなんだい?

石山城
きみほどの城娘がわざわざ出向いてきたんだ。
酒のお裾分けなんかで済むわけがない……。

金華山城
まぁ、何だかトゲのある言い方ですねぇ。

金華山城
けれど、ふふ。
たしかに本題はここからにございます、殿。

殿
…………?

金華山城
もうお分かりかと存じますが、

金華山城
此度の来訪は、
兜討伐遠征における助力の願い出に他なりません。

殿
…………。

金華山城
ええ。かねてより安土城から、
貴方たちの活躍は聞いておりますもの。

金華山城
本来であれば、織田方の城娘のみでの討伐を――と考えていたのですが、

金華山城
安土城や丹波亀山城らは、
別件の対応に追われている状況にあり、

金華山城
更には此度の討伐対象は新手の巨大兜ということで、
さすがに私だけではどうにも心細いと思うに至ったわけです。

殿
…………。

柳川城
そうですね。
新たな巨大兜ということであれば、手伝わぬ理由はありません。

柳川城
すぐに出立の準備に取りかかります!

石山城
なら……今回は私も一緒に行くよ、柳川城。

やくも
だに? 石山城が参加するなんて珍しいこともあるもんやね。

やくも
いつもは領内で罠の研究だか何だかしてるだけやのに。

石山城
だけって……。
ひどい言い方するなぁ。

金華山城
あっ……もしや、私が殿に何かするとでもお思いで?

石山城
微塵もない、とは言わないけど、

石山城
それだけが理由じゃないさ。

石山城
(そう……先刻のあの感覚……勘違いで済ますには、あまりにも強烈だった)

千狐
いずれにせよ、準備が整い次第すぐに出発するとしましょう。

殿
…………!

――四半刻後。

千狐
殿、無事に転移術は成功ですわ!

やくも
ここが、新手の巨大兜が出現した場所がや?

柳川城
それにしては、兜たちの姿が見えませんが……。

金華山城
おかしいですね……。
安土城らが斯様なことを間違うなど有り得ないのですが。

石山城
――っ!?

石山城
みんな、止まるんだ……。
どうやらここで間違いないみたいだ。

殿
…………!?

???
おお、オオ……ヨクゾ、参られた……ヨクゾ、参られたァ……。

???
御辺らが……噂に名高き殿一行にテ、相違ナイナ?

殿
…………。

???
フフ……そう身構えずともヨイ。

???
コノ通り、逃げも隠れもセズ……吾輩は姿ヲ現したノダ。

???
然ラバ……正々堂々の真っ向勝負ニテ……雌雄を決シヨウデハないか。

柳川城
真っ向勝負……ですか。

柳川城
卑怯な手を使う兜たちの中にあって、
貴方はどうやら武人としての心を持ち合わせているようですね。

柳川城
ええ、いいでしょう。その潔さに応えるべく、

柳川城
柳川城……いざ、参ります!

石山城
(いや、ちがう……)

石山城
(この感じ……それに、あの『兒』の一文字は……)

石山城
待て、柳川城! どうみても――これは罠だ! 

柳川城
え……?

???
ケフッ――今さら気づいたトコロデ遅い……遅すぎルワ……。

???
無情――――斉射。

砲撃式トッパイ形兜
承知ッ!!

柳川城
――ッ!?

金華山城
案ずることはありません……この程度、我が槍術の前には紙片も同じ。

金華山城
はぁ――ッ!!

???
ホウ……やるではないか。
マルデ、狙撃ニヨる暗殺を先読んでイタかの如き疾駆ヨな。

金華山城
ふふ、貴方の悠然たる気色は、たしかに素晴らしき擬態でしたが、

金華山城
それを旗下の者たちまでもが模倣できているとは限らない。
……もう少々、調練を積ませた方がよろしいかと。うふふ。

???
ケフッ……フフフフフ……。

やくも
それにしたって、卑怯すぎるだに!
正々堂々じゃなかったんがや!?

石山城
やくもの言うことも解らなくはないが……、

石山城
……けれど、勝利への執着は見事なり。

やくも
え……?

石山城
いいかい、やくも。

石山城
真の戦国乱世において、正道なんてのは幻影さ。

石山城
(それも……あんな異形を目前にすれば、尚のこと意識させられる……)

石山城
(もはや偶然や勘違いなどではない……これは……これは間違いなく……)

柳川城
い、石山城さん……?

石山城
柳川城……きみの清廉さは往々にして美徳と成り得るが、

石山城
しかし――いまこの戦場においては煩わしさすら感じる光だ。

石山城
けれどそれは……そんなきみを放置していた、他の城娘の所為でもある……。

石山城
考えてみれば、きみとの共闘は久方振りだったね……。

石山城
なればこそ……たまには邪道の戦い方を教示するのも悪くない。

石山城
――ついてこい、柳川城!
敵の策が展開する前に、こちらから仕掛けるぞ!

柳川城
は、はい!

???
ケフッ……なんと清々しき威勢に満ちた城娘タチかァ……。

???
善き……実にィ善きィィイイイイイイイイイイイぃぃぃいぃぃ……。

???
嗚呼……アア……その武威ヲモッテ……我が器を砕いてミセよ、城娘ェ……。

後半
???

サァ、今ゾ……挟撃ニテ敵ヲ屠るのだ……。

兜軍団
オォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

金華山城
あらあら……またも懲りずに伏兵ですか。
いったいどれだけの数を用意しているのやら。

柳川城
それに……先刻から、なんともいやらしい戦い方をしかけてきますね。

柳川城
勝気は希薄……されど、徹底した負け戦に進まんとする心も感じられない。

柳川城
……いったい、何が目的なのでしょうか?

石山城
さぁね……。

石山城
けれど、ヤツの繰り出す攻撃には、間違いなく殺気が備えられている。

石山城
加えて、先刻の暗殺まがいの砲撃に、『兒』の一文字…………。

石山城
(そして、此地に来てから際限なく強まる不可思議な感覚……)

石山城
間違いない……ヤツは、直家。

石山城
宇喜多直家の名を冠する巨大兜だ!

千狐
宇喜多直家……!?

やくも
ゆ、有名な人なんかや?

金華山城
ええ。

金華山城
その名の主は、かの尼子経久や毛利元就と共に
中国地方三大謀将に数えられる戦国大名……。

金華山城
また同時に、悪逆暴戻たる逆臣にして、
生まれながらの奸佞とも呼ばれた存在なり。

金華山城
而してその腹心は、冬の夜空よりもなお黒き闇が巣くうとされ、

金華山城
実の娘すらも政略の手駒とし、果てにて、
自死にまで追い込んだ人物とされています。

柳川城
そのような人物の名を冠するとは……。
これまでの戦いぶりも頷けますね。

石山城
…………。

石山城
(八郎……そうだな。今の世にあっては、それがきみの形容なのだろう)

金華山城
しかし、おかしいですね。

金華山城
それほどの名を冠するわりに、下卑た策謀以外には、
見るべきところはないように思うほどの脆弱ぶり……。

石山城
いや……なにもおかしいところはないだろうさ。

金華山城
と言いますと……?

石山城
あの巨大兜は、名にまつわる表面だけを力としているのさ。

石山城
故に、謀略と欺瞞にのみ特化した存在として顕現するは必定……。

石山城
しかし――なればこそ。
手に負えぬ存在となる前に、ここで早々に勝負を決めるべきだ!

宇喜多直家
グッ……が、はッ……ッ!?

千狐
石山城さんの矢撃が、直撃しましたわ!

石山城
(そうだ……下手に長引かせるべきではない)

石山城
(ヤツのためにも……そして、他ならぬ私のためにも……)

石山城
このまま仕留めてやる……覚悟しろ、巨大兜!!

意気込みのままに、石山城は異形へと肉迫し、
鈍色の雨水が如く矢撃を解き放ち続ける――。

宇喜多直家
ケフッ、フ、ハハ……さすがだ、石山城……。

宇喜多直家
ソレデコソ……ソレデコソ、ダ…………ァァ……ッ……。

宇喜多直家
御辺がソソぐ痛み……そして、与え続ケル苦シミ……。

宇喜多直家
ソウ……コレコソ……吾輩が待ち望んでいた、力の源流ナリぃぃぃいいいい!!

石山城
――なッ!?

宇喜多直家
ケフッ……ギハハハハハハハハハハッ!
ようやく捉まえたぞ、石山城ォォオオッ!

石山城
ま、まずい……これは……ッ!!

討伐武将大兜!宇喜多直家-後-

ついに凶悪な本性を露わにした宇喜多直家の
名を冠する巨大兜。繰り出される毒手を前に、
石山城たちは絶体絶命の窮地へと立たされる。

前半
石山城

ま、まずい……これは……ッ!!

宇喜多直家
吾ガ怨嗟……直接、御辺ニ注ぎ込んでくれるわァッ!!

柳川城
石山城さん!!

石山城
がっ……はっ……!

石山城
くっ、そ……何とか、距離を取ることは、できたが……。

石山城
ダメだ……身体に……充分な力が、入らない……。

石山城
こ、これは……まさか……毒…………なのか……?

宇喜多直家
ケフッ……ギハハハハハハッ!!
ソウだ。その通りぞ、石山城ッ!

宇喜多直家
此ノ器に宿った虚魂より導かれた我が特質――、

宇喜多直家
ソレこそは膿血出ずるガ如き毒性の付与に他ならヌ!

宇喜多直家
故に――吾輩ガ触れた者は悉く緩やかに死へと向カウ定めナリィ!!

石山城
ばか、な……それほどの強力な毒を生み出すには、
相応の〈犠〉を要するはず…………。

石山城
ハッ――まっ、まさか!?

宇喜多直家
ケフッ……ようやく気づいたようダナ、石山城。

宇喜多直家
貴様ノ様相――然もありなんッ!
マサに吾輩は御辺を死に至らしめるに相応しき毒を宿すため、

宇喜多直家
苦痛と憎悪を獲得センと、敢エテ御辺らの攻撃を受けていたまでのこと!

宇喜多直家
ドウダ……? 苦しかろう? 憎かろう?

宇喜多直家
吾輩が拵エタ毒は、さぞ御辺に馴染むに違いなァいィィ。

石山城
くっ……私としたことが、こんな醜態を晒すとは……。

やくも
どうすればいいがや!?
このままじゃ、石山城が死んじゃうだに!?

千狐
そうは言うけど、あの巨大兜が培った毒は、
そこらの薬草などで癒やせるものじゃないわ……。

柳川城
そんな……。
では石山城さんを助ける手段はないというのですか!?

金華山城
ええ。並大抵の解毒処置では如何ともできぬ事態でしょう。

金華山城
……ですが。

金華山城
毒ならば、私もそれなりの縁深き城娘。

金華山城
常道ならざるやり方であれば、あるいは――、

石山城
――ちょ、何をする気だ、金華山城!?

金華山城
ふふ。私に妙案があります。
ですからどうか、少しばかり眼をお閉じになって。

石山城
……?

石山城
こ、こうか?

言って、石山城はおもむろに双眸を閉じる。

すると――

金華山城
ふふ……そのまま、じっとしていてくださいね、石山城。

――直後、金華山城の艶やかな唇が、石山城のそれに重なった。

石山城
……ッ!?

石山城
ぷぁ――っ!

石山城
はぁ……はぁ……な、何をしているんだ、金華山城!?

金華山城
あらあら? 知りませんか?

金華山城
いまのは接吻――というのですよ。

石山城
そ、そんなことは言われなくてもわかる!

石山城
そうじゃなくて、どうしてこんな時に――、

石山城
って、あ、あれ?

金華山城
うふふ。
その様子ですと、どうやら解毒は成功したようですね。

宇喜多直家
ば、バカナ……!?
なぜ、イトも容易く吾輩の毒を相殺するコトができたのダ!?

金華山城
これもひとえに、城娘同士の情愛がなせる奇跡がひとつ――にございます。

宇喜多直家
あ、愛……ダト!?

金華山城
というのは冗談として。

金華山城
我が口内に常時忍ばせてある解毒薬を、
口移しで石山城さんに与えたまでのこと。

金華山城
無論――接吻が本当に必要かと問われれば、
応答に困るところではありますが、

金華山城
純粋なる薬効だけでは、恐らく貴方の毒は解除されない。

金華山城
ならば、我が業と霊気、そして毒にも似た我が体液をも混合させ、
じかに対象へと注ぎ込まねば斯様な結果には至れなかったでしょう。

石山城
……だ、だからって、断りもなく殿の前でするなんて……。

金華山城
ん?

石山城
い、いや……何でもないって。

石山城
過程はどうあれ、こうして回復できたことに変わりはない!

石山城
殿の前で醜態を晒す羽目になったんだ。
……巨大兜。ただで済むと思うなよ!!

宇喜多直家
これはこれは……ケフッ、ギハハハハハハッ!!
その殺意も憎悪も、等しく吾輩の毒に変じてみせヨウゾ!

宇喜多直家
さぁ、者共……加減はモウ必要ない!
今コソ思いのママニ再びの戦に臨むのだ!

兜軍団
――承知!
   ――承知!
      ――承知!

金華山城
(先刻よりも、明らかに戦意が増している……)

金華山城
こちらも、心してかからねばならないようですね。

金華山城
殿……貴方に采配を委ねます!
どうか聞きしに勝る叡智を、この戦場にてお示しください!

後半
金華山城

我が梟雄たる槍捌きをもって――今こそ悪を駆逐せん!

兜軍団
ギャアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

千狐
すごい……瞬く間に巨大兜を守護する雑兵を一掃するなんて!

柳川城
――今です、石山城さん!

石山城
ああ、わかっている!

石山城
この一撃で――決めるぞ!!

宇喜多直家
――グゥぁッ!?

宇喜多直家
ア、ゥグぅぅ……サ、流石ハ……吾が名に縁深き城娘……。

宇喜多直家
……これほどの一矢を繰り出すトハ……マ、コト……見事ナリ……。

宇喜多直家
だが……ケフッ、ギハハハハハハア――――ッ!!

宇喜多直家
コノ痛みィィィイイ――ッ!

宇喜多直家
そして、コノ憎しみこそッ!!

宇喜多直家
吾輩が求めたモノに他ならぬ!!

宇喜多直家
アア、そうだッ……此度ハ前哨が如き戦ッ!

宇喜多直家
再びマミえる刻コソ……吾輩の毒をもって……ッ!! 
御辺らを蝕んでクレヨウぞォォオオオオオオ――!!

宇喜多直家
ケフッ……ギィハハハハハハハハハハッハハハハハッハハハハッ!!

石山城
…………ちっ。
なんて逃げ足の早いヤツだ。

金華山城
ですが、あの損耗からして、
しばらくは悪事を働くこともできぬでしょう。

千狐
とはいえ……なんとも厄介な兜が出てきたものですね。

柳川城
はい……。
まさか、毒を駆使するとは……。

やくも
けんど、そげに心配する必要はないように思うだに。

柳川城
……え?

やくも
だって、毒に侵されたとしても、
金華山城がいればすぐに治してくれーがや!

柳川城
金華山城さんが……って。

柳川城
それは、もしかして――。

金華山城
うふふ。
柳川城さんの唇はどのような味がするのか、今から楽しみですねぇ。

柳川城
い、いえ……私は自力で何とかしてみせますので……、

柳川城
だから、その……だ、大丈夫です!

金華山城
あらあらまあまあ。さすがに冗談でしたのに……。

金華山城
然様に拒まれると、さしもの私も少し傷つきますねぇ。

石山城
こら、金華山城。
あんまり柳川城をからかってやるな。

石山城
……いずれにせよ、対策が必要になるのは間違いない。

石山城
今日のところは所領に帰還し、
明日にでも軍議を開くとしよう。

――こうして、宇喜多直家の名を冠する巨大兜を退けた殿一行。

しかし、その夜……。

石山城
…………。

石山城
(まったく……忌々しき一日だった……)

石山城
(常ならば、罠や調略にて臨むはずが……
 あの巨大兜を前にした途端、頭が真っ白になってしまうなんて)

石山城
(これも、ヤツが冠する名の所為……か)

金華山城
あらあら、石山城さん。
このようなところにいらしたのですね。

石山城
……なんだ、きみか。

石山城
もう、務めは果たしたんだ。
さっさと安土城のところへ戻ったらどうなんだい?

金華山城
ふふ、然様につれないことを言って。

金華山城
共に唇を重ねた仲ではありませぬか。

石山城
だからこそだよッ!

石山城
ああもう、せっかく忘れかけていたというのに……。

石山城
――っ!?

金華山城
……っと。
大丈夫ですか?

石山城
ご、ごめん……急にふらつくなんて……変だな。

石山城
まだ戦闘での疲れが残ってるのかも……あはは。

金華山城
…………。

金華山城
そのような嘘が通ると、お思いですか?

石山城
うっ……。

石山城
…………殿たちには内緒にしておいてくれないか?

石山城
未だ、この身体に……ヤツの毒が残って
いることを知るのは、きみだけなのだから。

金華山城
ええ。それは構いませぬが……。

金華山城
遅かれ早かれ、露わになる秘事に相違はありませんよ。

石山城
それでも……さ。

石山城
これはきっと、肉体的な侵食ではなく、
もっと深い……精神的な部分に応ずる咎。

石山城
そう……業にも左右しかねない、縛鎖にも似た毒だ。

金華山城
……わかりました。

金華山城
けれど、その毒を備えた果てで、貴方に何が生じるのかは、
私といえど、想像はつかぬ事柄なれば……、

金華山城
今暫く傍にいることくらいは……お許しいただけますか?

石山城
……どうせ、イヤと言っても付きまとうんだろう?

金華山城
御明察。

石山城
ふん……勝手にすればいいさ。

石山城
けれど……。

石山城
この毒は、あいつが――八郎が抱え続けた業だ。

石山城
光の側に立つ城娘たちには、あまりにも凶悪に過ぎる。

金華山城
承知しております。

金華山城
――だからこそ、毒を以て毒を制すべし。

金華山城
いざとなれば信貴山城らにも、
助力を請うこともできましょう。

金華山城
故……あまり孤独を愛しすぎぬように。

金華山城
今はそれだけ、御心にお留めください。

石山城
…………うん。

石山城
わかってる。

石山城
……わかって、いるさ。

小さく頷きを返し、石山城は天を仰ぐ。

重い雲に覆われた夜空が視界を埋め、
佇む闇に、己が顛末を重ねかける。

が、にわかにかぶりを振り、

黒灰色の雲の先に在るであろう
星々のひとつを掴まんとするように真白い手を伸ばす。

石山城
八郎……お前の残滓は、私が鎮めてやる。

石山城
だから、今はただ――。

――好きなだけ、此世を憎むといいさ。

討伐武将大兜!宇喜多直家-絶-

宇喜多直家の名を冠する巨大兜との戦いから数日後。
嘗ての己を取り戻さんとして、物思いに耽る石山城
の目前に、今再び金華山城が姿を現すのだった――。

前半
――宇喜多直家の名を冠する巨大兜との戦いから数日後。

石山城
ふぅむ……。

石山城
さて、どうしたものか。

石山城
巨大兜を討伐せんと意志を固めたはいいが、今のままの私ではダメだ。

石山城
かつての残忍な己を取り戻さねば、どうしたって勝てやしない……。

石山城
なればこそ、今いちど原点へと立ち戻り――、

石山城
――殿の寝首を掻く!

金華山城
あらあらまあまあ。
朝からまた物騒な言葉を口にするのですねぇ。

石山城
――んひゃンッ!?

石山城
ど、どこから湧いて出たんだ、金華山城!?

石山城
っていうか、きみ……何日か前に美濃に帰ったはずだろう!?

金華山城
あらいやだ。

金華山城
帰る足があるのなら、再訪の足もあって然るべきではありませんか。

石山城
要は、単に遊びに来たってだけだろう?

金華山城
ふふ、平たく言えば、そういうことになりますね。

金華山城
それよりも、殿を暗殺するとは……、
また大胆なことをお考えになるのですねぇ。

石山城
ふん、もとより私はいつだって殿の命を狙っていたのだ。

石山城
しかし、彼奴は運がいいからな……。
結果として長いこと始末できず、こうして今日に至ったまでのこと。

金華山城
ふむふむ、なるほどなるほど。

金華山城
要するに、最近は殿が相手をしてくれないのが寂しくて、
かまってちゃんをしたいと――そういうことですね。

石山城
そ、そんなわけあるか……ッ!!

石山城
その証拠に、見よ!

金華山城
あら、美味しそうなお団子ですねぇ。

石山城
フフフッ、ただの団子と思うなよ?

石山城
これぞ、特製――毒入りのきび団子なり!

石山城
ひとたび口にすれば、三日三晩は厠の
そばを離れられなくなるという凶悪な団子なのだ!

金華山城
まぁ、こわい。

金華山城
(お通じの来ない方には有り難い一品かもしれませんが)

石山城
何か言ったか?

金華山城
いえいえ、何も。

金華山城
ですが、少々意外性に欠けますね。

石山城
……なに?

金華山城
それに、真の殺意も足りません。

金華山城
これでは、誰かを殺すなんて、とてもとても。

石山城
当然だろう! 本当に殿を殺したら、皆も私も悲しむ――、

金華山城
…………はぁ?

石山城
で、ではなくて!

石山城
今はその、殿がいないと色々と困るだろう?

金華山城
けれど、残忍な己を取り戻すには、
主殺しという行為は必要となりましょう?

石山城
う……ぐぅ……。

石山城
だ、だったらこう、半殺し程度のやり方で、
なにか妙案はないのか、金華山城?

金華山城
うふふ。よくぞ訊いてくれました。

金華山城
いいですか?
この毒々しい、きび団子ですが、

金華山城
ただ口から食べさせるのではなく、より凄惨なやり方で
体内にぎゅむっとぶち込んでやれば、はい、この通り――。

後半
石山城

――ちょっ! そ、そんなことしたら、
どうやったって殿が死んじゃうだろうが!!

金華山城
あら、これでもまだ加減したつもりだったのですが……、

金華山城
……って、あら?

三木城
もぐもぐもぐ……。

岩国城
……ぱくぱくぱく。

石山城
い、岩国城に三木城!?

三木城
もしゃもしゃもしゃ……あ、ふぁ……。
このお団子、すっごく美味しいねぇ♪

岩国城
うんうん……もぐぱくもぐぱく……なんだか甘味だけじゃなくて、
複雑な酸味もするけど、それがまた癖になるというかぁ……もぐぱくもぐぱく……。

金華山城
まあ、二人してなんという食い気でしょうか。

石山城
あらあら微笑ましい――ってな具合で笑ってる場合かよ!

石山城
こら、二人とも!
さっさと吐き出すんだ!

石山城
じゃないと、大変なことになるぞ!!

三木城
大変なことぉ?

岩国城
大変なことって、どんなことかなぁ?

岩国城
――はぐッ!?

金華山城
(岩国城さんの表情が一変した!?)

石山城
(しまった……どうやら遅かったみたいだ!)

岩国城
ん~~~~~~~~~~~~~っ!!

岩国城
んふぅぅ~~~~~~~~~~~っ!!

石山城
お、おい! 頼むから、我慢してくれ!
すぐに厠につれていくから―――、

三木城
ああもう、岩国ちゃん、まーた喉につまらせちゃったんだね?

三木城
はい、お水。

岩国城
――んく、んく、んく、んく。

岩国城
ぷはぁ……!

岩国城
ふぅ、ありがとう、三木城ちゃん。助かったよぉ。

岩国城
お水……いつもは三原城ちゃんが携帯してくれてるから……、

岩国城
焦ったぁ。

石山城
……え?

石山城
そ、それだけ……なのか?

岩国城
んー? それだけって?

三木城
さっきから何かヘンだぞ、石山城?

石山城
きみたちだけには言われたくないってば!

金華山城
ふふ、どうやら、そもそもこのお団子自体が、
毒など含まれていない失敗作だったということなのでしょう。

石山城
そ、そんなバカな。

石山城
それほどまでに私が日和ったということは、さすがに……。

金華山城
そう気に病むことはありませんよ。
誰にでも失敗はありますものね。

金華山城
さて、ちょうど小腹も空きましたし、
私もお一つ、いただきましょうか。

金華山城
――――。(ひょいぱく)

金華山城
…………。

金華山城
……。

金華山城
あ……れ…………?

三木城
ん? どうしたの、急にお腹なんか押さえちゃって?

岩国城
なんだか、汗もすごいし……具合でも悪いの?

金華山城
うふふ……そ、そうですね……。
実をいうと、今朝から少し体調がすぐれなくて……。

金華山城
す、少し席を外させてもらいます……うふ、うふふふ……。

三木城
……あーあ、行っちゃった。

岩国城
もっとお話ししたかったのにねー。

石山城
(やれやれ……だから、言ったのに……)

石山城
それにしても、この二人の胃袋ときたらどうなっているのやら。

三木城
もぐもぐもぐ……。

岩国城
……ぱくぱくぱく。

石山城
まぁ、いいか。

石山城
毒気を抜かれる――とは、少し違うが。

石山城
きっと、これは天意にも似た何某ゆえ……。
殿に対しての在り方を変えるなんて無為ということなのだろう。

石山城
ならば……違った方向で、私は私を取り戻すとしよう。

三木城
あれ? 石山城ちゃん、何だか良いことでもあったのかな?

岩国城
ほんとだー。珍しく笑ってるー。

石山城
ふふ。

石山城
そうだ。そのきび団子だけじゃ足りないだろう。
他にも私の手料理を食べてみる気はないか?

三木城
うんうん! みるみるーっ!

岩国城
ということは、もっともっと美味しいもの、食べさせてくれるのー?

石山城
ああ。
大いに期待してくれてかまわない。

石山城
今度はもっと強烈なやつを作ってあげるから……ね。



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