ストーリーテキスト/討伐武将大兜！北条氏康

討伐武将大兜！北条氏康[]

討伐武将大兜!北条氏康-前-

――相模の地に兜軍団の侵攻する気配あり。
異変を察知した滝山城からの報を受け、
殿一行は、急ぎ現地へと出立する……。

前半
――この日、所領内には美しい笛の調が響いていた。 滝山城 …………。 やくも だにぃ～。 いつ聴いても滝山城の笛は素敵やねぇ。 千狐 本当ねぇ。 いつまでも聴いていたくなるほどだわ。 やくも ふぁ……。 やくも ん～。 朝餉を食ったばかりやけん、何だか眠くなってきただにぃ。 やくも このまま滝山城の笛を聴きながら、一眠りするがやぁ～♪ 千狐 あ、こらっ、やくも！　今日は城娘の方々から 頼まれてた武具の手入れをするんじゃなかったの！？ 千狐 というより、昨日は領内の誰よりも早く 寝たのに、まだ寝たりないっていうの！？ やくも むぅ……。 ちょっこしだけやけん、そげに目くじらを立てんでほしいだにぃ。 やくも だいたい、眠たいまま作業したって効率わるいと思わんかや？ やくも それに、無理して働いて身体でも壊したら元も子もないだに！ 千狐 そ、それはそうかもしれないけどぉ……。 滝山城 …………。 滝山城 …………。 千狐 （――っ！　ふ、笛の音が止まった！？） 千狐 （どうしよう……もしかして千狐たちが騒いだから、 滝山城さん、怒ってしまったんじゃ……？） やくも （千狐が大声だすからだにぃ！） 千狐 （や、やくもだってけっこう大きな声だしてたじゃないのぉ！！） 滝山城 ――――のあたりが、騒がしいようだな。 千狐 も、申し訳ありません、滝山城さん。 我々のせいで奏を邪魔してしまって……。 滝山城 そうではない、千狐。 滝山城 相模じゃ。 ……彼の地において悪しき霊気の動きを感じる。 千狐 ……え！？ 千狐 ――っ！？ 千狐 た、たしかに……！ これはもしや――。 滝山城 ああ。十中八九、巨大兜の霊気じゃろう。 滝山城 （しかし、妙じゃな……） 滝山城 （兜たちが攻め込まんとしているあたりは、小田原城様が治める地……） 滝山城 （……何かイヤな予感がする…………） 滝山城 すまぬが、至急このことを殿に報せてくれ。 準備ができ次第、出立するぞ……とな。 千狐 は、はい！ やくも こうしちゃおれんだに！ うちも急いで準備するがや！！ ――半刻後・相模国。 北条氏康 …………。 八王子城 ……くっ。　 まさか、小田原城様の留守を狙ってくるとは……！ 八王子城 北条氏康の名を冠する巨大兜よ……。 この地の支配が貴方の望みなのですか？ 北条氏康 ……支配、ダト？ 北条氏康 愚かな……。 既に此世ニオイテ、私に然様なる役目は望マレておらぬ。 北条氏康 その証拠に、本来の此刻に定められていた表出されるベキ事象ニは、 我が魂も……ソシテ貴様も……存在などしていなカッタのだからな。 北条氏康 全くモッテ巫山戯た話ダ……あの御方ノ曖昧さも 此処マデ来ると不快を通り超シテ憐れでスラある。 八王子城 曖昧？　憐れ……？ 八王子城 いや、惑わされるな八王子城。 八王子城 巨大兜め……出鱈目な言の葉を紡ぎ、 私を煙に巻こうという腹づもりですね！ 八王子城 こうして武による侵攻に臨んでいるのなら、 貴方には明確な目的があるはずです……！！ 北条氏康 目的……カ。 北条氏康 フ……先んずる結果に対シ過程ヲ宛ガウは 我ガ背負いシ役の一つナレバ、そうさな……。 北条氏康 此刻ノ我が狙いハ……我と縁アル此ノ地でなく……、 北条氏康 マシテや……現状にオイテは対峙することすら能わぬ――――でもナく……。 北条氏康 八王子城……我が狙いハ貴様であると口にしてみせヨウ……。 八王子城 ……わ、私？ 北条氏康 然リ……。 北条氏康 其ノ内奥ニ組み込マレシ、逆行ノ因ヲ狙うとすれば、 成程……私が今、此刻ニテ存スル意味モ生じよう。 北条氏康 だが…………ハァァ。 何とも出来損ナイノ思考ヨな……。 北条氏康 あの御方は……アト幾度、私に斯様ナ茶番ヲ演ジよと言うのカ…………。 八王子城 …………。 八王子城 （やはり、姉さんが言っていた通りだ……） 八王子城 （この巨大兜は――北条氏康の名を冠す巨大兜は、何かがおかしい……） 八王子城 （解することのできない詞に、戦意の感じられぬ霊気……） 八王子城 （純粋なる悪意や敵意を持つ兜よりも、数段やりづらいのは明白……） 八王子城 ですが……。 八王子城 小田原城様の留守を預かる身として、 私は退くわけにはいかないのです！ 北条氏康 ……そう。貴様ラ城娘は、 然うシテ強き詞を紡ぎ、我ら兜に立ち向カウ。 北条氏康 而して――我が矛を向ケンと欲さば――― 滝山城 ――そこまでだ、巨大兜！ 北条氏康 （ソウ……イツだって……どの刻ニオイテモ、斯様な状況ニなるのだ……） 八王子城 ……た、滝山城姉さん！？　 どうしてここに……？ 滝山城 ふふ、そう驚くこともあるまい、八王子城。 滝山城 可愛い妹分の窮地にして、 我らが小田原城様の要所の危機とあらば、 滝山城 この滝山城が異変を察知せんわけがなかろう？ 滝山城 それに、現状から察するにどうやら小田原城様はご不在のようだな。 ……八王子城。よくぞ今の今まで持ち堪えてくれた。後は我らに任せよ。 八王子城 瞬時にそこまで見抜くとは……。 八王子城 さすがは、滝山城姉さんです！ 八王子城 ですが、私だってまだまだ戦える力はあります！ 共に、巨大兜からこの地を守らせてください！ 滝山城 うむ。 ……じゃが、無茶だけはするでないぞ？ 八王子城 はい！ 殿 …………。 千狐 殿……一度、戦ったことのある相手とはいえ油断は禁物です。 どうか、慎重な采配をお願いいたします！ 北条氏康 ホォ……どうやら。 此刻における貴様ラハ、私を識っているヨウだな。 北条氏康 ならば話は早イ……。 ……常時通り、手短に済まセヨウではないか。 北条氏康 先ずは小手調べカラだ……。 ……往くぞ、殿ヨ。
後半
北条氏康 存外、やるではないか……八王子城……。 北条氏康 流石ハ、氏照の築城せし城……トイッタところダナ。 八王子城 そういう貴方こそ、氏康様の名を冠するに不足なき戦ぶり……。 八王子城 ですが、互いに力量を探る段階は過ぎたはずです！ ……そろそろ本気を出したらどうなのですか？ 北条氏康 フッ……面倒なコトこの上ないが……、 これも我が役トシテ定められシ事柄なれば――。 北条氏康 今コソ……貴様らに対峙スベキ…………真ノ力を解放セン…………。

討伐武将大兜!北条氏康-後-

真の力を解放した北条氏康の名を冠する巨大兜。
再び矛を交えんと侵攻を開始する兜軍団を相手に、
今こそ己が武勇を示し、小田原の地を守り抜け！

前半
北条氏康 今コソ……貴様らに対峙スベキ…………真ノ力を解放セン…………。 殿 …………！？ 八王子城 な……何という、霊気でしょうか！ 千狐 この威圧感……先ほどとは比べものになりませんわ！ やくも ようやく、兜さんも本気ってわけやね……。 北条氏康 サァ……再戦といこうか、殿。 北条氏康 此刻ニオケル我が最上ノ武を以て、相手をシテヤロウ……。 殿 …………！ 滝山城 八王子城よ……。 まだ戦える力は残っているか？ 八王子城 無論です、滝山城姉さん！ 日本五大山岳城を甘く見ないでください！ 滝山城 ふっ……どうやら強がりや痩せ我慢の類ではないようじゃな。 滝山城 ならば、もうひと頑張りじゃ八王子城！ 我らの力でこの地を何としても守り抜くぞ！！ 八王子城 はい！　今こそ小田原城様をお支えする 城娘としての務めを果たします！ 八王子城 いきますよ、北条氏康の名を冠する巨大兜！ この戦いで決着を付けてみせます――っ！！
後半
八王子城 黄幡神の力、とくとご覧に入れましょう！ はぁぁ――――っ！！ 北条氏康 ――ぐっ、ゥ……！ 八王子城 いまです、姉さん！ 滝山城 任せておけ、八王子城！！ 北条氏康 ―――ッ！？ やくも や、やったがや……！？ 北条氏康 …………。 北条氏康 …………ハァァ……。 北条氏康 器ハ傷つけど、魂滅ノ層には至らず……。 北条氏康 やはり……此刻ニオイテハ、互いに……、 斯様な状況マデが限界……トイウことか。 千狐 そ、そんな……。 あれだけの攻撃を受けて尚、平然としているなんて……。 八王子城 姉さん……いったい、どうしたらいいのでしょうか？ 滝山城 いや…………落ち着くのじゃ、八王子城……。 滝山城 霊気の状態をよく見てみよ……。 あの巨大兜には既に交戦の意志はないようじゃ。 八王子城 ……え？ 北条氏康 ………………全軍撤退。 兜 ――氏康様ヨリ撤退命令ガ出タゾ！！ 兜軍団 急ゲ！　急ゲッ！　撤退ッ！　撤退ィィ――ッ！！ 八王子城 ど、どういうことなのでしょうか……？ まだ、あの巨大兜には余力があるというのに……。 滝山城 ヤツの底意はわからぬが……。 端から我々を倒さんとする意気はなかったようにも見えた。 滝山城 いや……むしろ、自ら負けることを望んでいたかのようにも――。 北条氏康 私が敗北を望んデいる……ダト？ 北条氏康 フフッ……滝山城よ。 此刻における貴様も、やはり愚劣極まりナイ城娘ノようだな。 北条氏康 ……敗北ナド……疾うに手段ヘト転ジきっておる……。 北条氏康 アア、そうさ…………。 北条氏康 私はナ……一刻も早ク滅びテしまいタいのダよ……。 滝山城 な、なんじゃと……？ 北条氏康 既に此世ノ趨勢へノ興味は失せた……。 北条氏康 ……後はタダ、必滅の刻を待つノみ…………。 北条氏康 ヤツと対峙する……其ノ刻を、私ハ……ただ…………――――。 八王子城 ……………………。 千狐 ……巨大兜の撤退を確認しました。 どうやら、危機は脱したようですね。 やくも けど、いったい何がどうなってるがや？ あの巨大兜さん、様子がおかしかっただに。 滝山城 ……わからぬ。 滝山城 （だが、先の言動から察するならば、ヤツが求めていた相手とは……もしや……） 滝山城 …………。 八王子城 滝山城姉さん……。 八王子城 深く考えすぎです……。 巨大兜の紡ぐ言葉など所詮は内包する虚魂への反射。 八王子城 ヤツは氏康様の名を冠してはいますが、 派生する万象は真になど成り得ません。 滝山城 ……ああ。そうじゃな。 滝山城 なればこそ、今は強敵を退けたことを喜ぶとしよう。 殿 …………！ 八王子城 殿、遅ればせながら感謝を申し上げます。 八王子城 先の窮地においては、皆さんの助力がなければ、 私はこの地を守ることができなかったでしょう。 殿 …………。 殿 …………！ 八王子城 はい。いずれ、このお礼はちゃんとさせてくださいね？ 千狐 それでは、殿。傷の手当てもありますので、 我々は所領へ帰還するとしましょう。 千狐 此度の遠征も誠にお疲れ様でした。 ――その夜。 八王子城の待つ小田原の地に、ひとりの城娘が帰還していた。 小田原城 ……そう、だったのですね。 まさか私がいない間に然様なる事が起きていたとは……。 八王子城 はい……。此度は殿一行や滝山城姉さんが 駆けつけてくれましたので事なきを得ましたが……。 八王子城 もし、私だけでの防衛戦となっていたならば、 いったいどうなっていたことか……。 小田原城 八王子城さん……。 小田原城 貴方には、随分と怖いお想いをさせてしまったようですね。 八王子城 お、小田原城様がお気に病むことなど何もありません！ 八王子城 ……兜との戦いにおける恐怖であれば、 己が意気にてはね除けることができますから。 八王子城 ただ……あの巨大兜の不可思議な言動と、 小田原城様の不在をついての侵攻を成した鋭き戦略眼が、 八王子城 今なお、得体の知れぬ不快となってこの身に巣くっているのです。 小田原城 …………八王子城さん。 小田原城 （氏康様の名を冠する巨大兜……） 小田原城 （此度の貴方の侵攻は……私の不在を狙ったものではないのでしょうね……） 小田原城 （だって……私と貴方は、未だ会うことを此世に許されていないのですから） 小田原城 （………………） 小田原城 （因果の乱れすらも、その兆候を現し始めたのならば……、 私も……己が行を決すべき段階に来たのかもしれませんね） 八王子城 ……小田原城様？ 如何なされたのですか？ 小田原城 ごめんなさい。少し思索の淵に落ちていたようです。 小田原城 ですが、おかげで一つ、成すべきことがわかりました。 八王子城 ……成すべきこと？ 小田原城 八王子城さん。 ひとつ、お願いをしてもよろしいでしょうか？ 八王子城 は、はい……！ 小田原城様の頼みとあらば何なりと。 八王子城 して、どのような事柄なのでしょうか？ 小田原城 それは……ですね――。 小田原城 今後の兜との戦においての講習を主目的として、 久しぶりに支城の皆さんとの交流会を開こうと思います。 小田原城 なので、そのお手伝いをお願いできますか？ 八王子城 ――こ、交流会！？ 八王子城 それは良きお考えにございますね！ きっと皆さんお喜びになるかと思います。 八王子城 それでは、さっそく諸々の手配を――！！ 小田原城 ああ、八王子城さん！ もう夜も遅いですから明日からでも……。 小田原城 ……って、行ってしまいましたか。 小田原城 ふふ、八王子城さんは相変わらず頑張り屋さんですね。 小田原城 私も……もっと彼女を見習わないといけませんね。 ――そう独りごちて、小田原城は空に浮かぶ月を見つめる。 小田原城 氏康様……。 私も心を決めておきます。 小田原城 貴方と出逢う……その刻までに……。

討伐武将大兜!北条氏康-絶-

北条氏康の名を冠する巨大兜との戦いから数日後。
所領にやってきた八王子城を出迎えた滝山城は、
同伴してきた城娘らの姿を目にし驚愕の声をあげる。

前半
――北条氏康の名を冠する巨大兜との戦から数日後。 殿 …………。 殿 …………！？ 八王子城 ふふ、こんにちは。殿。 滝山城 おお、八王子城ではないか。 今日はいったいどうしたのじゃ？ 厩橋城 もしかして、また兜討伐のご相談……でしょうか？ 山中城 ううん！　兜絡みではあるけど、 今回は討伐のお願いじゃないよぉ！ 山中城 ね、忍城ちゃん！ 忍城 はい。今日はわりと平和的なお願いをしにきたのです！ 厩橋城 はわわっ！？　山中城ちゃんに忍城ちゃんですぅ！？ 滝山城 ほぉ。汝らが一緒になってこの領内にくるとは、珍しい……。 滝山城 ――って、ちょ、ちょっと待て！ 滝山城 もしや、汝らが一緒ということは、 まさか……その後ろにいらっしゃるのは…………。 小田原城 お久しぶりですね、滝山城さん。 滝山城 お、おだ、だ、だだ……だ……。 滝山城 ――小田原城様ぁぁ！？ 小田原城 えっと……。 小田原城 はい、小田原城です。 滝山城 おぉぉ……こ、こんなにも近くでご尊顔を拝することができるとは……！！ 滝山城 これはいったいどういうことなのじゃ、八王子城！？ 八王子城 ふふっ、実はですね、 先日の戦いの後のことなのですが……、 八王子城 小田原城様がご帰還された折に、 巨大兜との戦についてお伝えしたところ――。 山中城 今後の対策や方針をファンクラブに所属する城娘に 伝えるため、交流会を開くことになったんだよーっ！ 忍城 なので、その準備をお手伝いしてくださる方を集うことになりまして……。 八王子城 私、八王子城と！ 山中城 山中城にくわえて～！ 忍城 この私、忍城も参加することとなったのです！ 滝山城 ……な、なんと羨ましいっ！！ 厩橋城 いいなぁ、いいなぁ～。 山中城 おや？　ということは二人とも、 あたしたちみたいに小田原城さまのお手伝いがしたいと？ 滝山城 当然じゃ――っ！ 厩橋城 滝山城ちゃんも私も、小田原城さまのファンクラブ会員だもん！ 八王子城 ……やはり、そうですよね。 山中城 ね？　だから言ったでしょ、小田原城さま？ 滝山城ちゃんも厩橋城ちゃんも喜んで引き受けてくれるって！ 小田原城 あのぉ、本当によろしいのでしょうか？ 滝山城 良いに決まっています！ 小田原城様、妙な気遣いは不要ですぞ！ 厩橋城 うん！　私たちにもお手伝いさせてください！ 小田原城 あぁ、何と心強い申し出でしょうか。 小田原城 お二人が加わってくださるのなら、 きっとより良い交流会となることでしょう。 やくも …………だにぃ。 やくも 何だか滝山城たちの様子がいつもと違う気がするがやぁ。 千狐 確か、滝山城さんも厩橋城さんも、 小田原城さんをお支えする組織に属しているって聞いたことがあるわ。 やくも ほへ～。 やくも でも小田原城って、そげにすごい城娘さんなんかや？ 山中城 ――なっ！？ 滝山城 ――んっ！？ 忍城 ――でっ！？ 八王子城 ――すっ！？ 厩橋城 ――とっ！？ やくも ……あ、あれ？ なしてみんな、そげに怖い顔しちょるがや？ 忍城 まさか、小田原城さまの偉大さを知らぬ者がいるとは……！ 滝山城 寝耳に水とはまさにこのことじゃ……！！ 山中城 ……それに伝え聞いたところによると、 殿もあんまり小田原城さまの凄さを理解してないって話だし！ 厩橋城 ええっ！？　そうなのですか、殿！！ 殿 …………？ 八王子城 ならばここは一つ、我らが小田原城様のすごさを 教えてさしあげるしかないようですね……！！ やくも だにぃ！　なんで揃いも揃って変身しちょーがやぁ！？ 柳川城 な、何だか妙に殺気立ってますね……。 柳川城 殿、念のため私の後ろにおさがりください！ 殿 …………！？ 小田原城 ちょ、ちょっと皆さん……！ あまり乱暴なことはダメですよぉ？ 八王子城 ご安心ください！ その点はきちんと心得ております！ 八王子城 さぁ、殿！　お勉強の時間ですよ――っ！！ しかと、我々の小田原城様への愛をお感じください！
後半
山中城 ――小田原城さまの凄いところその壱！！ 北条氏による五代百年にわたる関東支配の拠点だったところぉーっ！ 八王子城 ――小田原城様の凄いところその弐！！ 上杉謙信や武田信玄からの侵攻を退け、 難攻不落にして無敵の城としても知られてるところぉ！！ 滝山城 ――小田原城様の凄いところその参！！ 豊臣秀吉の来攻に備えて城下を囲む総構を 完成させたことで、日の本でも屈指の巨大な城郭となったところぉ！！ 厩橋城 小田原城さまの凄いところその四！！ びっくりするほど綺麗で、とってもとっても優しいところぉ～っ！！ 忍城 小田原城さまの凄いところその伍！！ ファンクラブ会員の特典が有り得ないくらい豪華なところぉ～！！ 小田原城 あらあら、それは初耳ですねぇ。 いったいどのようなものがもらえるのでしょうかぁ？ 柳川城 お、小田原城さんが一番興味津々のご様子ですが……。 八王子城 この何ともいえないぽわっとしたところも魅力のひとつです！ 小田原城 ふふ、皆さんいつもこうして私のことを褒めてくださるのですが……。 小田原城 それもこれも、私をお支えしてくださる皆さんがいるからこそです。 小田原城 ……本当に感謝してもしきれません。 皆さん、いつもありがとうございます。 八王子城 ……お、小田原城様。 山中城 勿体なきお言葉ぁ――っ！！ 忍城 この謙虚さが、なんともいじらしい……！！ 厩橋城 小田原城さま、大好き～っ！！ 小田原城 あらあら、まぁまぁ。 殿 …………。 やくも す、すごい人気ぶりやね……。 柳川城 ですが、これほどの影響力を持つ小田原城さんが、 兜対策に乗り出してくれたのは嬉しいことですね。 千狐 そうですわ、殿！ 我々も小田原城さんたちの交流会へ協力をしませんか？ やくも あ、良い考えやね！ だったらうちは何か作って交流会を盛り上げるだにぃ！ 忍城 ならば小田原城さまの似姿を造ってはいただけませんか！？ 山中城 ああ、いいねいいねー！ 参加者全員に配布しちゃおーよ！！ 小田原城 そ、それは……。 ちょっと恥ずかしい気がするのですがぁ。 滝山城 何を仰るのですか、小田原城様！ 八王子城 もっと小田原城様の美しさを世に知ってもらう好機ですよぉ～！！ 小田原城 そ、そう……なのですか？ うーん。何だかピンときませんがぁ……。 厩橋城 ねぇねぇ小田原城さま～。 この機会に握手会もやりませんか～？ 厩橋城 たしかねぇ、大坂城ちゃんたちのようなあいどるさんは、 色んなところで握手会をやってるって聞きましたよぉ。 小田原城 握手会……ですかぁ。 小田原城 でも、私はあいどるではありませんから、 皆さん、あまり喜んではくれないのではないでしょうか？ 忍城 ――否っ！ すでに我らにとって小田原城さまはあいどる！ 山中城 というより、もういっそのことなっちゃいましょうよ、あいどる！！ 八王子城 いいですね！　小田原城様が皆さんの前で 美しい舞と歌を披露するの、私、観たいです！ 小田原城 そ、そんな……あいどるだなんて、私には無理ですよぉ。 滝山城 ご心配には及びませんぞ！ 作詞作曲ならばこの滝山城にお任せください！ 八王子城 なら諸々の催事の企画制作や印象戦略は私めがっ！！ 小田原城 あ、あのぉ……ですから、そういうことではなくて……――。 小田原城 （……でも、皆さんが少しでも笑顔になってくれるのなら） 小田原城 （暫しの間、あいどるの真似事をしてみるのも悪くはないのかもしれませんね……） ――などと、人知れず考えてしまう小田原城の揺れる心情を後押しするように、 その後も、八王子城たちは交流会についての話に花を咲かせていくのであった。

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