ストーリーテキスト/討伐武将大兜！上杉景勝

討伐武将大兜！上杉景勝[]

討伐武将大兜!上杉景勝-前-

越中にてある城娘が窮状に陥っているとの報せあり。
彼の地の平穏を取り戻すため、上杉景勝の名を冠する
巨大兜が率いし兜軍団を掃討せよ！

前半
――夜半、某所。 上杉景勝 …………。 桃形兜 カッ、景勝様ーッ！　報告デス！ 突撃式トッパイ形兜 ……松倉城ノ攻城戦ニツイテカ？ 桃形兜 ハイ、ソノ通リニゴザイマス！ 上杉景勝 …………。 突撃式トッパイ形兜 ウム、デハ報告セヨ。 桃形兜 景勝様ノ指示通リニ松倉城ヲ攻メ立テ、 戦況ハ有利ニ運ンデイマシタ。 突撃式トッパイ形兜 流石ハ景勝様！ 突撃式トッパイ形兜 天然ノ要害トシテ名高イ松倉山ガ相手ダロウト、 カツテノ配下トナレバ、攻略ハ決シテ絵空事デハナイ！ 桃形兜 ハイ……デスガ……。 突撃式トッパイ形兜 デスガ……何ダ？ 桃形兜 ソノ後、加勢ノ城娘ガ現レマシテ……。 現在ノ戦況ハ芳シクアリマセン。 突撃式トッパイ形兜 ……加勢ノ城娘、ダト？ 桃形兜 ハイ……。 何デモ、『魚津城』トイウ名の城娘ラシク……。 上杉景勝 …………！？ 桃形兜 ……カ、景勝様、如何サレマシタ？ 突撃式トッパイ形兜 （景勝様ガ動揺サレテイル……？） 上杉景勝 …………。 突撃式トッパイ形兜 ハイ、ナンデショウ景勝様？ 上杉景勝 …………。 突撃式トッパイ形兜 ……先ニ魚津城ヲ攻メ落トス、ト？ 上杉景勝 …………。 突撃式トッパイ形兜 ナルホド……景勝様モ共ニ戦場ヘ……。 上杉景勝 …………？ 突撃式トッパイ形兜 イエ、良イゴ判断カト存ジマス。 突撃式トッパイ形兜 山ノ頂ニ位置スル松倉城ト違イ、魚津城ハ平地ニ築カレタ城。 突撃式トッパイ形兜 景勝様ト共ニ攻メレバ、落トスノハ容易イハズ！ 上杉景勝 …………！ 突撃式トッパイ形兜 デハマイリマショウ、目的地ハ魚津城！ イザ、出陣！！！！ 上杉景勝 …………。 ――数日後。 千狐 到着しました！　転移成功です！ 柳川城 松倉城さんからの手紙を頼りに転移しましたが……、 此地はどこでしょう……？ 千狐 手紙の内容によれば、 兜の軍勢に襲われて大変な状況だという話でしたが……。 殿 …………！ やくも どうしたんだに殿さん、あっちの方に何か……？ やくも ……お？ やくも 向こうから、誰か駆け寄ってくるだに……。 ？？？ 殿～～！！！ 松倉城 おぉっ、お前たち……！ 来てくれたんじゃな！　褒めてつかわすぞ！ 柳川城 松倉城さん……！ 無事だったのですね……安心しました。 柳川城 それで……後ろに控えていらっしゃる方は……？ 松倉城 うむ、紹介しよう。 松倉城 此奴は私の召使いで……名を魚津城という。 今回の戦で加勢として駆けつけてくれた。 魚津城 召使いだなんてひどいです……。 ちゃんと支城って紹介してください～！ 魚津城 はじめまして。魚津城と申しますぅ。 私の御城まで足を運んでいただき、ありがとうございます～。 魚津城 変事の最中ではありますが、 お会いできてとっても嬉しいですぅ。 魚津城 この戦を乗り越えた後には、 皆さんで楽しく宴でもできたら嬉しいですねぇ～。 やくも な、なんだか気が抜けてしまいそうな喋り方だに……。 殿 …………。 松倉城 ……うむ、戦況についてか。 妾の方から説明させてもらおう。 松倉城 ことの始まりは数日前……。 兜の軍勢が、我が松倉城に押し寄せてきたのじゃ。 松倉城 開戦早々から、松倉山の地形を熟知しているような彼奴らの動きに、 妾たちは苦戦を強いられた。 魚津城 …………。 千狐 松倉城さんの御城は今……無事なんですか……？ 松倉城 あぁ。危ないところだったが健在じゃ。 魚津城の救援もあって、幸いな……。 魚津城 支城として当然のことをしたまでですよ。 松倉城ちゃんの身を守ることができて、ホッと一安心ですぅ♪ 松倉城 こら魚津城、妾は主じゃぞ！ 『松倉城ちゃん』はやめろと……！ 魚津城 あら、うっかりしてました～。 ちゃん付けは二人きりの時だけ、でしたっけぇ。 松倉城 じゃ、じゃから……！ そういう話を口に出すと、私の権威というものがだな……！ 殿 …………。 松倉城 ……ごほん。話を戻すぞ。 松倉城 先ほど話した通り、一度は兜を退けることに成功した。 松倉城 ……じゃが、奴らはまだ諦めていない。 松倉城 今度は、山岳という地形に守られた妾から、 平城の魚津城へと矛先を変えたのじゃ……。 柳川城 なるほど……標的にされてしまった御城を守るために、 松倉城さんは魚津城さんの許へ移動したのですね……。 松倉城 うむ……その上、敵は松倉山と同様に、 魚津城周辺の地形も把握しているらしく……そうじゃな、魚津城？ 魚津城 ……はい。兜の動きを見るに、 此地に縁のある巨大兜が指揮を執っていると考えて、間違いないかと……。 魚津城 そして、私の見立てが正しければ、相手は――。 魚津城 …………ッ！？ 魚津城 この気配は……！　皆様、あちらをご覧に！ ――――。 突撃式トッパイ形兜 景勝様、敵ノ姿ガ見エテキマシタ……。 ドウヤラ殿モ居ルヨウデス。 上杉景勝 …………！ 突撃式トッパイ形兜 ドウサレマシタ、景勝様？ 上杉景勝 …………。 突撃式トッパイ形兜 （景勝様……ヤハリ魚津城ヲ気ニカケテイル……？） ――――。 柳川城 兜の軍勢です……！ 率いているのは、上杉景勝の名を冠する兜……！ 松倉城 やはり魚津城の見立てが当たってしまったか……。 魚津城 景勝様……。 松倉城 大丈夫なのか、魚津城？ ……下がっていても良いのじゃぞ。 魚津城 …………。 魚津城 ……お心遣い感謝いたします、松倉城様。 ですが、心配には及びません。 魚津城 できることなら、避けて通りたかったですぅ……。 魚津城 なーんてことは毛程も考えておりませんから♪ 松倉城 …………。 魚津城 私はただ、自分の役目を果たすまでです。 松倉城 ……お前がそう答えるなら、これ以上は何も聞かぬ。 じゃが―― 松倉城 ――戦場に立つからには、 足手まといになるような真似は許さんからな、魚津城。 魚津城 もちろんです……では、まいりましょう。
後半
上杉景勝 …………！ 千狐 巨大兜が体勢を崩しました！　もうひと押しですっ！ 突撃式トッパイ形兜 景勝様ッッ！ 突撃式トッパイ形兜 皆ノ者、景勝様ヲオ守リスルノダ！ 桃形兜 御意ッ！ 兜軍団 ――ザザッ！ 兜軍団 ――ザザザッ！！ やくも だにぃっ、兜の大軍に阻まれてしまうがやっ！？ 魚津城 ……私にお任せください。 魚津城 この弓で、必ず仕留めてみせます。 松倉城 …………。 魚津城 景勝様……。 魚津城 今の貴方様に理解できるかは分かりませんが……、 一言伝えさせてください。 魚津城 ……あの時。 景勝様が送ったお手紙は、ちゃんと……私の許に届いていましたよ。 上杉景勝 …………！ 魚津城 …………ふっ――！ 上杉景勝 …………ッッッッ！！？ 千狐 魚津城さんの放った矢が兜たちの間を縫って、 巨大兜を射抜きました！ 兜軍団 景勝様ッ！？ 突撃式トッパイ形兜 景勝様ァァァァァァァーーーーー！！！

討伐武将大兜!上杉景勝-後-

魚津城が放った矢を喰らい、巨大兜は意識を失う。
勝利を確信する殿一行であったが、その時、巨大兜の
心の内では一つの変化が起きようとしていた……。

前半
魚津城 今の貴方様に理解できるかは分かりませんが……、 一言伝えさせてください。 魚津城 ……あの時。 景勝様が送ったお手紙は、ちゃんと……私の許に届いていましたよ。 上杉景勝 ……………………。 ――――。 兵 景勝様っ！　春日山城に危機が迫っております！ すぐにここを発たなければなりません！ 兵 目前まで迫りながら、助けることができない……。 辛い決断だとは思いますが、背に腹は代えられません。上杉家全体の危機なのです……！ 兵 ここで判断を誤れば……我々に明日はありません！ 兵 景勝様が送った手紙も無事に届いたと伺っております！ きっと、城の者たちの励みになっていることでしょう！ 兵 ですから景勝様、魚津城は家臣たちに任せ春日山城へお戻りください！！ すぐに出発を――！ ――――。 上杉景勝 …………？ 桃形兜 アッ、景勝様ガ目ヲ覚マサレマシタ！ 突撃式トッパイ形兜 景勝様、ゴ無事デスカッ！？ 兜軍団 景勝様ッ！ ――――。 やくも 立ち上がったがや……。 魚津城の矢は間違いなく巨大兜をとらえたはずなのに……どうしてだに？ 千狐 ……コンッ！？　この霊気の高まりは！？ やくも どうしたんだに、千狐っ？ 千狐 上杉景勝の名を冠する巨大兜の霊気が強まっています……今、この瞬間も……！ 松倉城 ……察するに、生前に縁のあった妾や、 魚津城と戦ったことをきっかけに、魂と器の繋がりが強まったのじゃろう。 魚津城 そして最後に、私のあの言葉が止めになってしまった……。 柳川城 ……手紙が魚津城さんの許に届いた。 先程、そう仰っていましたよね？　それはどのような意味ですか……？ 魚津城 手紙というのは……。 かつて『魚津城の戦い』において、景勝様が送ったお手紙のことですぅ。 柳川城 魚津城の戦い……。 魚津城 織田軍に囲まれた上杉軍は……私、魚津城に立てこもりました。 魚津城 戦力の差は大きく、勝ち目も見えない……城主はすぐさま救援を求めます。 しかし、一方の景勝様も手を離せない状況にあったのです。 松倉城 当時、越後の国の周囲にはまだ、 敵対する勢力が残っておったからのう……。 魚津城 景勝様は魚津城の目前にまで迫りながらも、 救援を打ち切り、その場を去ったのですぅ。 魚津城 その後、籠城は長期化しますが……戦力の差を覆すことはできず。 城を護っていた将たちは自刃を選びましたぁ……。 松倉城 …………。 魚津城 景勝様がその敗戦をどう受け取ったかまでは、私には分かりません。 ですが……。 魚津城 『魚津城の戦い』や、その前後に勃発した織田軍との戦いでの出来事が、 景勝様のお心に深く刻まれたことは、間違いないと思います……。 千狐 心の深奥に根ざした、戦の記憶……。 それを取り戻したことで、魂の定着が大きく進行した……ということですか。 魚津城 はい、おそらくは……。 千狐 それにしても、凄まじい霊気です。 先程までとは比べ物にならない程……。 殿 …………。 魚津城 申し訳ございません、皆さん……。 魚津城 私が軽率に過去の話を持ち出したせいで、こんなことに……。 松倉城 …………。 松倉城 ……ふん。何を思い上がっとる。 お前が原因だとは、断定できんじゃろうが。 魚津城 ……え？ 松倉城 かの『魚津城の戦い』では、 松倉城城主・上条政繁が先発隊としての出陣を景勝公から命じられた。 松倉城 景勝公との縁について、お前は何も特別ではないのじゃ！ 妾との接触が原因となっている可能性だって、多いにあるじゃろう！ 魚津城 松倉城ちゃん……。 もしかして、励ましてくれているのですか？ 松倉城 妾は客観的な事実を述べているだけじゃ。 ……それと、その呼び方！　ちゃん付けは止めよと言ったじゃろうが！ 松倉城 ……して、どうするつもりじゃ？ 松倉城 責任を感じるのはお前の勝手じゃが……それで、どうする？ 落ち込むだけで終わりにするつもりではあるまいな？ 魚津城 …………。 魚津城 ……けじめを付けなければいけませんね。 魚津城 私の手で景勝様を討ち、この戦いに幕を引く……。 今の私にできることと言えば、それくらいでしょうか。 松倉城 ……うむ。妾も力を貸そう。 松倉城 景勝公に縁ある御城として、ここで退くわけにはいくまい。 魚津城 ありがとうございますぅ、松倉城様。とっても心強いです。 ――――。 上杉景勝 …………！ 突撃式トッパイ形兜 者共、景勝様ノ指揮ニ従エ！　攻メ込ムゾォォー！！ 兜軍団 オオオオオオオォォォォォ――――！！！！ ――――。 松倉城 来るぞ……！　全員構えよ！ 魚津城 ……お殿様、ご下知をお願いします！ 殿 …………！
後半
魚津城 これで最後です！ やぁ――――ッッッ！！！ 上杉景勝 …………ッッッ！？ 千狐 やりました！　命中ですっ！ 魚津城 はぁ、はぁ……。 突撃式トッパイ形兜 景勝様、景勝様ァッ！　オ気ヲ確カニ！ 上杉景勝 …………ッ。 突撃式トッパイ形兜 景勝様！　……私ノ声ガ聞コエマスカッ！？ 上杉景勝 …………！ 突撃式トッパイ形兜 ヨシ、景勝様ヲ連レテ撤退ダ！ 兜軍団 御意ッッ！！ 魚津城 ……逃がすものですかっ！ 松倉城 待て、魚津城っ！ 松倉城 妾たちも疲弊しきっている……。 このまま後を追うには不安が大きすぎる……！ 魚津城 ……そうかもしれませんがっ！ 兜軍団 撤退、撤退イィィーーーーーー！！ 魚津城 …………！ 松倉城 ……今日のところは諦めよ、魚津城。 魚津城 …………っ。 千狐 …………。 千狐 ……兜たちの撤退を確認。 松倉城 ……のう、魚津城。 これは妾の気のせいじゃろうか……。 魚津城 ……はい？ 松倉城 戦いの最中……妾の目には、 景勝公がためらっているように映った。 松倉城 かつての戦で、苦渋を飲んで見捨てることになったお前を……。 今度は自らの手で落とさなければならない―― 松倉城 ――その現実を前に、迷っているように見えたのじゃ。 魚津城 …………。 魚津城 ……気のせいですよぉ。 考えすぎです、松倉城様。 魚津城 だいたい、仮にそれが事実だったとしても……考慮には値しません。 魚津城 だって、そんなことを考えたところで……、 矢を放つ手が狂う以外に、影響が無いじゃありませんか。 松倉城 魚津城、お前は……。 魚津城 ……さて、皆さん！ 此度の戦い、本当にありがとうございましたぁ！ 魚津城 私も……そして主の松倉城様も、 心より感謝しております～！　ね、松倉城様？ 松倉城 …………。 松倉城 ……うむ！　皆のもの、まことに大義であった！ この恩義にはいずれ、必ず報いてみせようぞ！ 松倉城 今日のところはひとまず、 戦いの傷を癒やすことにしよう！ 魚津城 ええ、そうしましょう！ 皆さん、私の御城でゆっくりと休んでいってください！ 殿 …………！

討伐武将大兜!上杉景勝-絶-

上杉景勝の名を冠する巨大兜との戦いから数日後。
魚津城は松倉城の出立を阻止しようとしていた。
そんな時、気怠げな表情の城娘が姿を現す――。

前半
上杉景勝との戦いから数日後――。 松倉城 ええい、引っ張るな引っ張るな！ 着物が乱れるじゃろうが！ 魚津城 だって、離したら帰っちゃうじゃないですかぁー！ 松倉城 宴も終わり、殿たちも所領に戻った！ 帰るにはちょうど良い頃合いじゃろう！ 魚津城 だからって、そんな急いで帰ることないじゃないですか！ もう少しだけ、お願いですからぁ……！ 越中高岡城 …………むにゃ。 越中高岡城 なんだか……今日の魚津城さまはとっても騒々しい……。 松倉城 ん？　なんじゃお前は……城娘か？ 越中高岡城 はい……私は越中高岡城と……ふわあ、ぁ……。 越中高岡城 むにゃ……申します……以後よろしく。 魚津城 わぁ……！ 越中高岡城ちゃんが来てくれるなんて……感激ですぅ！ 越中高岡城 魚津城さまに危機が迫っていると聞いて、慌てて飛んできたの……。 魚津城 あぁ、その件を聞きつけて来てくださったのですね～！ 実はですね、兜との戦はもう乗り切ったんです。お殿様が助けに来てくれたおかげで！ 越中高岡城 あ、そうなんだ……それじゃ一安心……。 魚津城 でも驚きました～！ 越中高岡城ちゃんが外に出ているだけでも凄いことなのに……わざわざ私の御城まで！ 魚津城 ……ですから松倉城様、少しだけ遊んでいきましょ？ 三人で一緒に、ね？　せっかくの機会なんですから！ 松倉城 わかったわかった、付き合ってやる。 ……その代わり少しだけじゃぞ？　日が暮れる前には城に戻りたい。 魚津城 やったぁ～！　ありがとうございます！ ――――。 松倉城 で、遊ぶとは言ったものの……何をするつもりじゃ？ 魚津城 んー……そうですねぇ……。 越中高岡城 私に任せて。 ……今までにない、革新的な遊びを教えてあげる。 松倉城 ほう……？　大口を叩くじゃないか。 そこまで言うなら教えてもらおうか……。 越中高岡城 それじゃ……今から私がすることを、よく見ていて……。 越中高岡城 どっこい、しょ……っと……。 魚津城 ……どうしたのですか～？ 急に寝そべったりなんかして？ 越中高岡城 ふふふ……。 松倉城 まさか……これが革新的な遊びか？ 傍から見ていると、昼寝しようとしている風にしかみえぬが……？ 越中高岡城 ……………………。 越中高岡城 ……えーと。 魚津城 （昼寝だったのですねぇ……） 松倉城 （昼寝だったんじゃな……） 越中高岡城 松倉城さまはわかっていないようだから説明するけど……。 要するにこれは……籠城ごっこなの。 松倉城 籠城ごっこ？ 越中高岡城 見張り、軍備の管理、食事、そして睡眠……。 いずれも城を守り抜くためには欠くことのできない、重要な務め。 越中高岡城 ……籠城戦という、過酷な状況を想定して、 それぞれが務めを全うする……それが籠城ごっこ。 越中高岡城 加えて、魚津城さまは籠城戦で有名な御城。 ……よって、この遊びの舞台としては最適といえる。 松倉城 つまり今お前は……、 籠城中という状況下で『英気を養う』という務めを全うしている、と……？ 越中高岡城 そう。それが籠城ごっこ。 魚津城 ……昼寝ではなく？ 越中高岡城 ……そう。昼寝ではなく。 越中高岡城 …………。 越中高岡城 …………すこー。 魚津城 寝ちゃいましたぁ……。 松倉城 ……寝たのう。 越中高岡城 んぁ……、ごめんなさい。 床のひんやり感が心地よくて、つい昼――英気を養ってしまった。 魚津城 （もはや昼寝したい欲求を隠しきれていないですぅ……） 越中高岡城 あれ……どうして二人共つっ立ってるの？ ほら、そこに寝転がって。 魚津城 あのぅ……これって、籠城戦を想定しているのですよね？ 全員寝てしまうと、見張り番が一人も居なくなってしまうのですが……。 越中高岡城 見張りは他の兵に任せた……という状況を想定してる。 だから、私たち三人に今できるのは……体を休めることだけなの。 魚津城 なるほど……なんかこう、 意地でも寝るぞ、という意志が伝わってきますぅ。 松倉城 ……仕方ない。妾たちも寝ることにするか。 魚津城 えぇっ！　松倉城様まで！？ 松倉城 ……なんじゃ、なぜそんなに驚く？　お前は嫌なのか？ 魚津城 確かに、せっかく一緒なのに寝ちゃうのはもったいないなぁ、と思ってはいましたが……、 松倉城様の場合は、その……。 魚津城 この妾に、床の上に直接寝ろと申すのか？ 失礼にも程がある！　許さんぞえ！　お前たち、やってしまえ！ 魚津城 ……という印象だったので、少々驚きましたぁ。 松倉城 間違いなくお前が一番失礼じゃからな……。 松倉城 まぁ、お前の言う通り、 日頃から、この立場に相応しい振る舞いをしようと心がけていることも事実じゃ。 松倉城 ただ今日は妾の頭からは決して出てこない、越中高岡城の発想……、 それに従ってみようと思ったのじゃ。 魚津城 これも『せっかくの機会』ということですか。 わかりましたぁ。私も横になりましょう……。 ――――。 松倉城 やはり、急に寝ろと言われても寝られんな……。 魚津城 そうですねぇ……。 越中高岡城 くかー………………。 松倉城 ……こっちはスヤスヤじゃな。 魚津城 いつもはここまで寝る子じゃないのですが……。 久しぶりのお出かけだったようですから、疲れてしまったのですかねぇ……。 越中高岡城 ん……、またウトウトしてしまった……。 この体勢になると勝手に力が抜けてしまって……。 越中高岡城 ……それで、なんだって？　寝れないって言ってた？ 魚津城 そうなんですぅ……。 目をつむってみても、眠気が全く訪れず……。 越中高岡城 んー、そうだなぁ……。 越中高岡城 無理に寝ようとはしなくていい……力を抜いて、ゆっくり呼吸…… それから、楽しいことを想像するといいかも。普段は味わえないようなことを……。 松倉城 想像か。楽しいこと……むぅ……。 魚津城 越中高岡城ちゃんは、 いつもお昼寝する時にどんなことを考えているのですか～？ 越中高岡城 んーと……外を駆け回ったりするところかなぁ。 想像するだけなら御城にこもっててもできるし……。 越中高岡城 例えば、魚津城さまの近所とかで……こう、ぐあーーっと――。
後半
魚津城 すー、すー……。 越中高岡城 くかー…………。 松倉城 （ぱちり） 松倉城 ん……んん……？　日が傾いとる……！？ おい、二人共起きろ！　もうすぐ夕暮れじゃぞ！ 魚津城 んぅ……？　あらぁ？ もうそんな時間？　びっくりですぅ……。 越中高岡城 ……んが。もう朝？ 松倉城 昼寝で朝を迎えてたまるか！　まだ夕刻じゃ！ 越中高岡城 そっか……いやー、それにしても……。 かなり養ってしまったの……英気。 魚津城 ええ……。 思えば、こんな風にゆっくりと過ごしたのは随分久しぶりのことです……。 松倉城 やはり疲れが溜まっていたのじゃろうな。妾も、お前も……。 魚津城 そうですね……自分ではあまり感じていなかったのですが……。 魚津城 ……よし！　英気も養ったことですし！ これから夕餉を作りましょうか！ 松倉城 うむ。では妾も、もう一泊することにして、 今日は魚津城の手料理を楽しむとしようか……。 越中高岡城 料理……楽しみ……。 魚津城 では私、台所へ向かいますね！ 松倉城 心が踊るのう♪ 越中高岡城 （魚津城さまの手料理がいただけるなんて……なんという幸運） 越中高岡城 （しかし、そのためにはこの部屋から出なければいけない……） 越中高岡城 （部屋からでるためには、立ち上がらなければならない……） 越中高岡城 （そして立ち上がるためには…………） 越中高岡城 ………………。 松倉城 ……？ どうした、越中高岡城？　一緒に――。 越中高岡城 …………くー。 松倉城 ――どんだけ寝るつもりじゃお前はああぁぁぁぁぁ！

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