ストーリーテキスト/解き放たれた妖怪

ページ名:ストーリーテキスト/解き放たれた妖怪

解き放たれた妖怪[]

解き放たれた妖怪 -前-

活性化した兜らが集う地に辿り着いた
殿一行は、其の地に封じられていた
危険な妖怪の復活を目の当たりにする。

前半
闇の中を進む、兜たちの姿が其処に在った――。

古桃形兜
……ハァ……ハァ……クソ、ドウシテ見ツカラナイノダ……!

古桃形兜
我ラ兜ニ、更ナルチカラヲ与エル可能性ヲ秘メシ存在……。

古桃形兜
『妖怪』ヲ封ジシ岩ガ、此ノ地ニ在ルトイウ情報ヲ得タトイウノニ――!!


――伝令ッ!
探シ求メテイタ岩ヲ発見シタトノ報アリ!


至急、確認ヲ……ッ!!

古桃形兜
ナニッ!? 
何処ダ! 
何処ニ在ルトイウノダ!?


此方デス! 
オ急ギクダサイ!

古桃形兜
ハァ……ハァ…………。

古桃形兜
…………オォ!?
コ、コレガ……コレガソウナノカ!

古桃形兜
何ト頑強ソウナ岩カ……
此レノ破壊ニハ、カナリノ時ヲ要シソウダナ……。

古桃形兜
――総員ニ告ゲル!
何時、殿一行ガ来ルカ分カラヌ故、事前ノ打合セ通リニ事ヲ運ベ!


ア、アノ作戦ヲ……本気デヤルツモリナノデスネ!?

古桃形兜
アア……辛イカモシレヌガ、此モ我ラ兜ガ更ナルチカラヲ得ル為ダ……。

古桃形兜
サァ、今スグニ各自持チ場ニツケ!
殿タチニ勘付カレルマデ、ソウ時間ハナイゾ!

兜軍団
御意ッ! 御意ィ――――ッ!!

――翌日。

深夜・所領。

大宝寺城
ねぇねぇ、殿ぉ……起きてよぉ……。
……ねぇってばぁ……。

殿
…………。

大宝寺城
お願いだよ、殿……ぐすっ……。
ひとりじゃ怖くて厠にいけないんだよぉ……。

殿
…………。

殿
…………ぐぅ。

大宝寺城
うぅぅぅ……。

大宝寺城
ぶおお~ん! ぶおお~ん!
(お願いだから起きてよぉ~!!)

殿
…………!?

殿
…………。

殿
…………?

大宝寺城
ごめんね、殿。
こんな夜中に起こしちゃって……。

殿
…………。

殿
…………!

大宝寺城
えへへ、ありがとう。やっぱり殿は優しいね♪

大宝寺城
あっ……殿ったら、口元にヨダレついてるよぉ?

大宝寺城
待ってて、いま拭いてあげるからね。

殿
…………!

やくも
……ん~。いったい何の騒ぎがや?
せっかくうちが兜さんを格好良く倒す夢を見てたっていうのにぃ……ふわ~ぁ。

大宝寺城
あ、やくもちゃん! 

やくも
なんだ……さっきの法螺貝の音はやっぱり大宝寺城だったがや。

やくも
所領内で無闇に法螺貝を吹いちゃだめだに。
先週、千狐にも注意されたの忘れたがや?

大宝寺城
ご、ごめんなさい、やくもちゃん……。

大宝寺城
でも、前に殿がね、どうしても自分が起きない時は、
法螺貝で起こしてもいいよって言ってたから……。

やくも
そ、それは初耳だに……。

やくも
なら今度うちにも吹かしてほしいがや!
殿さんをぶおぉ~んって目覚めさせてあげたいだに!

大宝寺城
うん、いいよぉ~!

大宝寺城
あっ、そうだ! 
どうせならやくもちゃん専用の法螺貝も作っちゃおうよ!

やくも
え~。うちも法螺貝携帯するのはちょっとなぁ……。

大宝寺城
そんなこと言わずにぃ、お揃いの法螺貝で毎朝殿を吹き起こしちゃおうよぉ~。

千狐
――そんなこと言ってる場合じゃないわよ、やくも! 
大宝寺城さん!

やくも
千狐!? 
どうしたがや、そげに怖い顔して……?

千狐
ある地域で大量の兜の霊気を感じ取ったの!
既に柳川城さんと鬼ヶ城さんが先行して現地の調査にあたってるわ!

やくも
本当がや!? 
ならすぐにうちらも行かないとだに!

大宝寺城
あっ、待って待って!
私もすぐに準備するから、置いてかないでよぉ~!

大宝寺城
……って、その前に殿ぉ……。
一緒に厠についてきてほしいんだけど……。

大宝寺城
だめ……かな?

殿
…………。

殿
…………!!

こうして、真夜中の兜討伐遠征が幕を開けた――。

鬼ヶ城
お、見ろよ柳川城!
殿たちが来たみたいだぜ!

鬼ヶ城
おーい、こっちだこっち!
柳川城と俺様はここにいるぞー!

柳川城
お、鬼ヶ城さん……!
あまり大声を出しては周囲の兜たちに気づかれてしまいます。

鬼ヶ城
あ、悪ぃ……わざとじゃないんだ。

殿
…………!

柳川城
殿、さっそくですが、現状を報告させていただきます。

柳川城
急激に活性化した兜が、この地一帯に溢れているのは
既に千狐さんから聞いているかもしれませんが……。

柳川城
ここにいる兜たちの動きは、
いつも目にする兜たちとは異なって、どこか奇妙なのです。

やくも
奇妙……?
いったいどういうことがや?

鬼ヶ城
何かよくわからねぇんだけどよ、
ヤツら、人間を襲う気配が全くないんだ。

鬼ヶ城
しかもよ、何考えてるんだか知らねぇが、ここら一帯の草むしりだったり、
通行に邪魔な岩をどけてたりしてて、ぱっと見、善行くせぇことしてんだよ。

千狐
兜が、善い行いをしている……?

柳川城
はい……今のところは、ですが。
観察する限りは、そうとしか見えません。

柳川城
……ですが、そんなことが有り得るのでしょうか?

大宝寺城
んー。
よくわかんないけど、とりあえず兜に直接聞いてみるってのは?

鬼ヶ城
馬鹿野郎! 
んなことのためにヤツらに近づいて、
いきなりお前が攻撃でもされたらどうするんだよ!

柳川城
鬼ヶ城さん……!
声がぁ……声が大きすぎますよぉ……。

兜軍団
――ムムッ!?

やくも
――だにぃっ!? 
兜さんに気づかれてしまったがや!?

鬼ヶ城
っち……こうなりゃ、
責任とって俺様が真正面から突貫して全員ぶちのめ――

古桃形兜
――待テ! 
我々ニ交戦ノ意思ハ無イ!

鬼ヶ城
……な、に?

柳川城
交戦の意思がないって……。

大宝寺城
ど、どういうことなの?

古桃形兜
ソノママノ意味ダ。

古桃形兜
我々ニ、交戦ノ意思ハ無イ。
大事ナ事ダ。二回言ッタゾ。

千狐
千狐たちが、そう簡単に信じると思っているの!?
貴方たちが今までにしてきたことを忘れたとは言わせないわよ!

古桃形兜
言葉ダケデ理解シテモラエナイコトハ重々承知シテイル……。

古桃形兜
ダカラコソ、我々ハ行動デ示サント、
コウシテ社会奉仕活動ニ励ンデイルノダ。

千狐
社会……奉仕、活動……?


――僕ハ、コンナニ沢山ゴミヲ拾ッタヨ!

兜軍団
――僕ハ、コノ辺リノ雑草ヲムシッタヨ!

兜軍団
――僕ハ、其処等ノ花ニ水ヲアゲタヨ!

千狐
ほ、本当に奉仕活動をしてるだなんて……。

古桃形兜
オワカリイタダケタダロウカ?

古桃形兜
後ハ、彼処ニアル交通ノ邪魔ニナッテイタ
巨大ナ岩ヲ砕ケバ、此ノ地ニオケル活動モ終ワリ……。

古桃形兜
ソウナレバ我々ハ、マタ違ウ場所ヘ出向キ、
ソシテ、新タナ奉仕ヲ開始スル予定ダ。

古桃形兜
ダカラドウカ、暫シノ間、見守ッテイテハクレナイダロウカ?

千狐
…………え、えっと……。

千狐
……と、殿。
我々はどうしたらいいのでしょうか?

やくも
悪いことをしてるわけやないけん、手を出すのもヘンな感じだに……。

柳川城
ですが、このままというのは、どうにも落ち着きませんね……。

鬼ヶ城
殿、あんたの判断に任せるぜ。

殿
…………。

柳川城
……え? 
あの岩を破壊させてはいけない?
どうしてでしょうか?

大宝寺城
そういえば、あの岩……何だか見たことあるような気が……。

大宝寺城
あ……あぁあああーっ!? 
そうだ……思い出したよっ!!
あれは悪い妖怪を封印してる岩だよ!

千狐
確かに……何か妙な気をあの岩から感じますわ……。

千狐
殿、すぐに兜たちを止めないと――――。

古桃形兜
ククク……今サラ気ヅイテモ遅イッ!!
サァ、桃形タチヨ! 一気ニ封印石ヲ破壊スルノダ!

兜軍団
破壊スル! 破壊スル! 破壊スル!

鬼ヶ城
――くぅっ……遅かったか――!?
兜のヤツらに封印石を壊されちまったぞ!

柳川城
殿……お下がりください……。

柳川城
何か……イヤな予感がします……。

大宝寺城
ねえ、殿……彼処……。

大宝寺城
見たこともないような生き物が、こっちに向かってきてるよ!


ンフゥゥゥ…………久方振リノ顕界ダデ。
漸ク、封印ガ解ケタトイウワケカ……。 

兜軍団
鬼……鬼ダ……妖怪ダ……!


ン? ナンダオメェラハ? 
……オデニ喰ワレテェノカ?

古桃形兜
マ、待テ! 我々ハ敵デハナイ……。
ソノ証拠ニ貴様ノ封印ヲ解イタノハ我々、兜ナノダ。


兜ダァ……? 


ンガァァ……ァァ…………。


知ラネェ……ンナ名ハ聞イタ事ガネェド。

古桃形兜
仕方ナイ……我々、兜ノコトハ後デ話ソウ。

古桃形兜
其レヨリモ今ハ、
貴様ヲ封ジタ憎キ人間ヘノ復讐ヲシヨウデハナイカ!

古桃形兜
案ズルコトハナイ、我々ガ手助ケヲシテヤルゾ!


アァ? 手助ケヲシテヤル、ダアァ?


オメェ、偉ソウナ奴ダナァ。何カムカツイテキタド!

古桃形兜
――コ、コラ! 離セッ! ナ、何ヲスル気ダ!


腹ヘッタ……久シブリニ、何カ喰ラワニャヤッテラレンド。


クンクンクン…………ベロォ……ベロロロォ……ッ!

古桃形兜
ヒィィッ!? 
ナ、舐メルナァッ!!


ペッペッ……クソマズイ……。
煮ルカ焼クカシナイト、喰エソウニネェド。

柳川城
か、兜を食べようとするなんて……!?


オォ――!? 
オマエ、スゴク美味ソウダナ!
人間トハ何カ違ウミテェダガ……コレナラ生デイケソウダド!

柳川城
な、生で……!? 

柳川城
そんな……私は、美味しくなんかないです!


インヤァ、オデニハ分カル……オメェハ極上ノ雌肉ダデ。


サァ、サッサトコッチニ来テ、オデニ喰ワレロ……ガッガガ!

鬼ヶ城
アイツ、本気で城娘を食う気かよ……!

やくも
鬼ヶ城、あんたも鬼みたいな見た目しちょーけん、
何とか話し合いで解決できんがや!?

鬼ヶ城
おお、そういやそうだったな!
おっしゃ、ここは俺様に任せろ!

鬼ヶ城
――って、無理いうんじゃねぇよ! あれは妖怪だろ!
鬼の名を冠してても、俺様は城娘なんだ! 同類みてぇに言うなっての!

鬼ヶ城
それに、あの鬼……。
……前に『紀伊』で見た妖怪とは違うヤツみてぇだ。

鬼ヶ城
とは言っても、発する不気味さも、
感じられる気の強さも……あの時の妖怪並みにヤバそうだぜ。

やくも
じゃ、じゃあ……あの時みたいに逃げた方がいいがや……?

鬼ヶ城
逃げるだぁ……?

鬼ヶ城
寝ぼけたこといってんじゃねぇぞ、やくも! 

鬼ヶ城
あん時よりも俺様はずっと強くなってんだ!
今回はしっかりと叩きのめしてやるぜ!

鬼ヶ城
っしゃあぁぁっ!! 
この一撃で、ぶっ潰れろぉーー!!


――ンガァッ!?

やくも
おぉぉ! 
見事に顔面に直撃だに!?


イッ、デェナ…………イキナリ何スンダ?
オマエハ後デ喰ッテヤルカラ、邪魔スルンジャネェド。

鬼ヶ城
おいおい……冗談きついぜ。
俺様の一撃をくらっても、平気な顔してるなんてよ……。

千狐
皆さん、注意してください! 
妖怪は兜とは異なる存在です!
通常の攻撃は、威力が半減すると考えてください!

柳川城
そんな……では、有効な攻撃方法はないのでしょうか?

千狐
いえ、法術や鈴、杖といった特殊な攻撃ならば有効なはずです!
加えて、歌舞による癒やしの力も、
妖怪への攻撃手段になると聞いた事がありますわ!

大宝寺城
よーし、それじゃあ妖怪は私にまかせてよ!
私の法術で、何とかしてみせるんだから!


ゴチャゴチャ煩イ奴ラダデ……!
オメェラハ、黙ッテオデニ喰ワレテレバイインダドォ――ッ!!

古桃形兜
(ヨシ、意図シタ流レデハナイガ、妖怪ノ目標ハ殿タチヘト向イタ!!)

古桃形兜
全軍、妖怪ト共ニ殿タチヲ討ツゾ!
仮初メノ奉仕活動デ溜メ込ンダ鬱憤ヲブツケテヤレ!

兜軍団
ウォォォォオオオオオ――――!!

千狐
殿、兜と妖怪が向かってきます!
すぐに出陣の準備をしてください!

後半

――グババッ……!?
ガ、ァガァ……ソ、ンナ……コンナ、ヤツ……ラニ……………………。

鬼ヶ城
ふぃ~。何とか倒すことができたみてぇだな!

鬼ヶ城
……にしても、とんでもなく丈夫なヤツだったな。
金棒打っ叩いてる手が痺れちまったぜ。

柳川城
大宝寺城さんの法術がなければ、
こちらがやられていたかもしれませんね……。

柳川城
本当に、ありがとうございます。
大宝寺城さんの力のおかげで、何とか殿を守ることができました。

大宝寺城
えへへ、みんなの役に立てたみたいでよかったよぉ。

千狐
――待ってください皆さん!
安心するのはまだ早いですわ!

大宝寺城
……え? 
どういうこと?

柳川城
――っ!?

柳川城
そ、そんな…………向こうから見える、あの姿は……!?


……人間……喰ウ……腹……減ッタ……。

解き放たれた妖怪 -後-

再び姿を現した妖怪と共に攻め込んでくる兜。
妖怪は法術や歌舞を得意とする城娘に任し、
卓越なる采配を以て、兜たちを討ち果たせ!

前半

……人間……喰ウ……腹……減ッタ……。

やくも
そ、そんな……さっき倒したのとは別に、
また妖怪が出てきただに――!?

突撃式突トッパイ兜
何ヲ驚イテイル?
封ジラレテイタ鬼ガアレダケトハ、誰モ言ッテイナイゾ!

鬼ヶ城
ったく、面倒くせぇ……。
どうせならまとめてかかって来いってんだよ!

やくも
……ど、どうするだに? 
またあんな危険な妖怪と戦うがや!?

鬼ヶ城
んな慌てるこたぁねえよ、やくも!

鬼ヶ城
さっきの戦いで妖怪との戦い方はもう十分にわかってんだ。
大宝寺城の法術で、ばびゅっとやっつけてもらおうぜ!

大宝寺城
うん、大宝寺城にお任せだよ、やくもちゃん!

大宝寺城
勝利の法螺貝は後で一緒に吹こうね!


……人間……喰ウ……腹……減ッタ……。

鬼軍団
……人間……喰ウ……腹……減ッタ……。
……人間……喰ウ……腹……減ッタ……。
……人間……喰ウ……腹……減ッタ……。

大宝寺城
なんか増えてるぅーーーーっ!?

大宝寺城
はわっ、はわわわわっ!?
どどっ、どどど、どうしよう鬼ヶ城ちゃん!?

鬼ヶ城
お、おお、落ち着けぇっ!! 
落ち着くんだ、大宝寺城!

鬼ヶ城
――って、俺様の足に縋りつくなって!
これじゃ俺様の武器が振れねぇだろうがぁ!

大宝寺城
だってぇ……あんな数の鬼が出るなんて聞いてないよぉ!

突撃式突トッパイ兜
ハッハッハッ! 
新タナ鬼ノ出現ニ敵ハ混乱シテイルヨウダ!
全軍、コノママ一気ニ突撃スルゾォ――――!!

兜軍団
御意ィ! 突撃開始ィィィィ――――!!

大宝寺城
うわーーーん! 
兜まで攻めてきたよぉぉ!!

千狐
皆さん、落ち着いてください!

千狐
しっかりと慌てずに対処すれば、
我々の今の力でも、十分に妖怪に対抗できるはずですわ!

殿
…………!

柳川城
はい!
殿の指揮のもと、冷静に事に当たります!

柳川城
――それでは私が先陣を切ります! 
鬼ヶ城さんたちも、後からついてきてください!

鬼ヶ城
…………柳川城のやつ。

鬼ヶ城
……ほんとはてめぇも怖ぇくせに、無茶しやがって!

鬼ヶ城
よっしゃ、大宝寺城! 
俺様と柳川城で兜どもを相手する!
お前はしっかり妖怪どもに法術をぶち込んでやれ!

大宝寺城
うん……わかったよ! 
殿を守るためだもんね!

大宝寺城
それじゃ、気合い入れていくよ…………。

大宝寺城
山よ、私に力を貸して!
皆を守れる、とびっきりの力を――!!

後半

……人間……喰ウ……腹……減ッタ……。
……人間……喰ウ……腹……減ッタ……。

鬼ヶ城
はぁ、はぁ……くっそ、これじゃキリがないぜ……。
いったいどんだけ現れやがるんだ……?

柳川城
無限に、というわけではないようですが、
このままでは少し分が悪いですね……。

大宝寺城
でも、ここで諦めたら殿が妖怪に食べられちゃうよ……。

大宝寺城
鬼ヶ城ちゃん、柳川城ちゃん! 
私たちで何とか食い止めなきゃ!

鬼ヶ城
言われなくてもそのつもりだぜ!

鬼ヶ城
――っしゃぁ! 
鬼ヶ城の底力、見せてやるぜぇっ!!

殿
…………!

鬼ヶ城
お、おい……なんで止めるんだよ、殿?

柳川城
あれを見てください、鬼ヶ城さん!

鬼ヶ城
あぁん……?

突撃式突トッパイ兜
――妖怪タチヨ! 
ここハ一度我々ト共ニ退クノダ!

突撃式突トッパイ兜
無茶ヲシテ再ビ封ジラレテハ意味ガナイゾ!


グヌヌ……封ジラレルノハ、困ルド……。


ナラバ付イテコイ! 
我々ニ付イテコイ!

兜軍団
兜ハ……オマエタチノ味方……人間ハ、敵ダ……!


兜カ……未ダヨクワカラン奴ラダガ、人間ヨリカハマシダデ……。


オデタチ、一緒ニイグ……兜ト一緒ニ、イグゥ……ッ!

千狐
…………。

千狐
兜と、妖怪たちが……揃って退避していくわ……。

やくも
い、一応勝ったってことで……ええんかや?

柳川城
当面の危機が去ったことには変わりないと思います……。

柳川城
ですが、あの様子では、妖怪と兜は、
共に人間を襲うという点で利害が一致してしまったのではないでしょうか?

千狐
……そうかも、しれませんね……。

殿
…………。

千狐
殿……妖怪とは、太古よりこの日の本に存在していた異形の名です……。

千狐
かつての人々は、先のような妖怪の存在を当然のものとして信じていました。

千狐
闇が闇として世に侍り、神秘や霊妙が確たるものであった古の頃より……、
人も、鬼も、物怪も、明白な関係など無くとも、同じ時空を共有していたのです。

千狐
しかし、妖怪の猛威が人との間にあった境界を破壊する程になったことで
終には封じられ、そして何時しか、その存在が人々の記憶から抜け落ちた……。

千狐
そうした歴史の延長に、千狐たちは立っているのです。

やくも
な、なるほどやね……。

やくも
(くぅぅ……話が長いうえに何言ってるか全然わからんだに……!)

千狐
どこで兜たちが妖怪に関する知識を得たのかはわかりませんが、
明確な目的を持って、あの岩の封印を解いたことは間違いありません。

鬼ヶ城
てことは、兜と妖怪が手を組むという見立ては、
あながち間違っちゃいないってことか……。

大宝寺城
……ただでさえ厄介な兜に、妖怪の力が加わる可能性があるなんて……。

大宝寺城
これじゃ兜に金棒だよぉ……。

鬼ヶ城
……大宝寺城。

鬼ヶ城
なーに、しけた面してんだよ!

大宝寺城
――いったぁっ!?

大宝寺城
な、なんで背中を叩くのさぁ……?

鬼ヶ城
へへ。ちょっと強くやりすぎちまったかな?
でもよ、おかげで悲しい気持ちは吹き飛んだだろ?

鬼ヶ城
それによ、大宝寺城。
敵がどんだけ増えようが、俺様たちがやることは一つだけだ。

大宝寺城
……やることは、一つだけ?

鬼ヶ城
そうさ。

鬼ヶ城
城娘は殿を守る……それこそが使命であり、有様ってもんだ。

鬼ヶ城
だからよ、落ち込んでる暇があるなら
強くなるために努力した方が何倍もいいと思うぜ!

大宝寺城
…………鬼ヶ城ちゃん。

大宝寺城
うん! 
そうだね!

大宝寺城
私、もっともっと強くなれるように努力するよ!

大宝寺城
たっくさん山で修行して、法術だけじゃなく、
いつか皆を癒やせる歌舞だって扱えるようになってみせるんだから!

鬼ヶ城
おう、その意気だ、大宝寺城!
お前ならきっとできるはずだぜ!

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
はい! 
私も、殿のためにもっと精進していきます!

やくも
殿さーん! 
うちもな、今以上に頑張って、
皆の役に立つ武器や道具をえっぱい作るだにぃ!

殿
…………!

千狐
わかりましたわ、殿。
それでは、所領へと戻り、今後の対策を練りましょう!

――数刻後・某山奥。

人魚形兜
…………。


…………。

人魚形兜
デハ、貴様ラ鬼ハ……、
我々ニ協力シテクレルトイウ認識デイイノダナ?


アア……オデタチノ悲願成就ノ為ダデ、協力シテヤルド……。

人魚形兜
ソレハ有リ難イ……。
……此方トシテモ封印ヲ解イタ甲斐ガアッタトイウモノ。


ケンドナ……。

人魚形兜
……?


……オメェラ兜ハ好カン。


オデタチハ、仲間ノ封印ヲ解ク為ニ、オメェラ兜ノ戦力ヲ借リル。


ソノ対価トシテ与エル、オデタチノ妖力デ、
オメェラ兜ハ数ヲ増ヤスナリ何ナリスルガイイサ……。

人魚形兜
馴レ合イハ不要……トイウコトカ。


アア……。

人魚形兜
ヨカロウ。其ノ方ガ、我々モ動キヤスイ。


利ハ一致シタド……ソイジャ、オデタチハ飯、喰ッテグル。


――ット、コイヅハ返スド。
ヤッパリ兜ハ不味イ。腹ノ足シニナランモンハ好カン……。


ハ、ハヒィ……ヤット解放シテモラエタァ……。


グスッ……喰ワレナクテ良カッタヨォ……。

人魚形兜
…………。


アノ……本当ニアンナ妖怪ナンカト手ヲ組ムノデスカ?

人魚形兜
……何ガ言イタイ?


僕ラダケデモ、殿グライ殺セマス……。

人魚形兜
ソウ言ッテ、ドレダケノ時ガ経ッタ?


……ソ、ソレハ……。

人魚形兜
奴ラ……殿ト配下ノ城娘ラハ、着実ニチカラヲツケテキテイル。

人魚形兜
コノママデハ、我々ヲ凌駕スル日モ、ソウ遠クハナイダロウ。


デスガ、妖怪ハ何ダカ好キニナレマセン……。


……生臭イシ。意地汚イシ……人間ト一緒ダ。

人魚形兜
ソウ言イウナ、桃形。

人魚形兜
何モ未来永劫ノ朋友トイウ訳デハナイノダ。

人魚形兜
アア、ソウサ……用ガ済メバ、
人間同様、妖怪モ滅ボスノダカラナ。


…………。(ゴクリ)

人魚形兜
サァ、コレカラ忙シクナルゾ。
我々兜モ更ナルチカラヲ手ニシ、殿ヲ討チ果タスベク動クノダ!


御意ッ! 御意ィ――ッ!!

こうしてこの日、人知れぬ山奥で、
兜と妖怪の奇妙な同盟関係が、密やかに成立したのであった――――。



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[花嫁衣装]春日山城

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[花嫁衣装]新田金山城

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