ストーリーテキスト/虚空の童に好手あり

ページ名:ストーリーテキスト/虚空の童に好手あり

目次

虚空の童に好手あり[]

虚空の童に好手あり -序-

天童の地を守護する城娘の叡智を狙い、
兜らが出羽国へと侵攻を開始する――。
至急現地へと向かい兜の悪事を阻止せよ。

前半
人生を一局の将棋に喩える者がいる。

ならば我らは将棋の駒で、

歩き立つ大地は盤なのでしょう。

――そこで、ふと疑問が生じる。

それらを指し動かすのは誰なのか、と――。

或る者は言った。

それは『神』と呼ばれる存在であると。

だからこそ、将棋を指すことは神を体験するに等しいのだと。

なんという愚かしくも可愛げのある論理の飛躍――。

けれど、頭を離れない着想であることは確かだ。

人生は将棋――

――将棋は人生。

ならば『天童』の城娘である私は、
人生の数手先を読まねばならない。

否――数十手先、数百手先の未来を
当然のように読めなくてはいけないのだ。

故に、此度の危機を私は誰よりも先に読んでいた。

そう――己に襲い来るであろう悪の定跡を知覚していたのです。

本来ならば、こちらも正義の定跡を以て抗すればよかったのでしょうが――

――それでは、停滞した此世に変化は起こり得ない。

そう思ったからこそ、私はこの窮地を利用し、

神授の一手を放たんと心を決したのです。

時間はそう、多く残されていない……。

そう思い、私はすぐに二つの文をしたため――彼女たちに送ったのです。

出羽国・某所。

片倉小十郎
――フゥゥゥ。
天童城……漸ク覚悟ガ出来たヨウですね。

天童城
…………。

片倉小十郎
無言にて応ズルも、気迫は充分ト……。

片倉小十郎
最上八楯が盟主デアル天童氏に縁深き城娘――。
貴方様ノ叡智ヲ我ラ兜ノ戦術ニ利用させてもらいますヨ。

天童城
…………。

天童城
……貴方、将棋を指したことはおありかしら?

片倉小十郎
……ハ?

天童城
将棋ですよ。将棋。ご存じありませんか?

片倉小十郎
将棋……エエ、知識トシテは勿論ありますトモ。

片倉小十郎
ですが生憎、此ノ器ですカラね。
相応ノ将棋盤ガ存在シナイのですよ。

天童城
そう。それは残念……。

天童城
ならば、貴方には理解できないのでしょうね。

天童城
棋士には、それぞれ駒に対する心象があるということを。

片倉小十郎
心象……?

天童城
私にとって――盤は虚空。

天童城
駒は、遍く生命の幼子たち。

天童城
あるときは狐や狼、あるいは草花や樹木であり、そして人でもある。

天童城
そうした幼き魂らの幸福たる景の創出こそが我が将棋の原動――。

片倉小十郎
……無駄ですヨ、天童城。然様に無意味な言を吐キ、
時を稼イダトコロで援軍の到来ナド望メヤしないのですカラ。

天童城
言われずとも、そんなことは私が一番理解しています。

天童城
貴方たちは持ち得る最大限の周到さを以て
この地を制圧したのですからね……。

片倉小十郎
ソレは皮肉……と捉えた方がヨロシイのでしょうか?

片倉小十郎
貴方は己ガ叡智を利カセ、
我らの侵攻を先読みしていたフシがある……。

片倉小十郎
其ノ証拠に……この地の民は我らガ攻め込むヨリ前に
他地へと逃れ、死傷者は皆無という結果を成シた……。

天童城
ですが、私は貴方たち兜に追い詰められています。
……故に貴方の解釈には矛盾が生じるのでは?

片倉小十郎
普通ニ考えれば、確かにソウかもしれませんネ……。

片倉小十郎
ですが、貴方の気色を見レバ、コノ状況が
自ら選び抜いた最善手であることなどスグに分かるというモノ。

片倉小十郎
何故ナラ貴方は、我等ノ狙いが此ノ地の人間や物ではナク、

片倉小十郎
天童城という城娘そのモノであるというコトを
疾うに理解シテいたのですからね……。

天童城
ふふ……なるほど。
片倉小十郎の名を冠するだけのことはある。
……実に、見事な読みにございますね。

天童城
やはり、貴方も将棋を指された方がいい……。
きっと類い稀な棋客になることでしょう。

片倉小十郎
フフ……貴方ノお墨付きを頂戴してしまっては、
臨まぬホウが失礼になるトイウもの……。

片倉小十郎
イイでしょう……ならばこの地と、貴方の叡智を利用シ、
私もヒトツ、将棋というものを指してみることにしましょうカ。

片倉小十郎
殿一行を相手取ッタ……生死を賭けた将棋を、ネ。

天童城
こうして――私は片倉小十郎の名を冠する
巨大兜によって城娘としての魂を掌握される。

天童城
間もなく――天童の魂は暴走し、
自我は正常に保てなくなるだろう――。

天童城
ああ――空に浮かびし我が心象……。

天童城
貴方たちの笑顔を――暫しの間、
失ってシマウことは悲しいけれど――。

天童城
でも、これで――善い――――。

天童城
これで――『神』を騙る何某と――繋がることが――できるはずだから――。

――数日後・所領。

やくも
ふっふっふ……隠れても無駄だにぃ。
其処にいるのはバレバレがや~!

若松城
わわっ!? もう見つかっちまったのかよぉ!?

ツバサ
やくもちゃんと隠れんぼしてると、すぐに見つかっちゃうねー。

やくも
へっへ~んだにぃ!
所領内にいる限りうちからは逃れられんだにぃ~!

やくも
――っと! 言ってる傍から狐耳を発見だに! 
千狐、其処に居るのは分かってるがや!

???
――のわっ!?

???
いきなりわらわの尻尾を掴むとはどういう了見じゃ!? 
せっかく訪ねてきた客人に対して無礼じゃろう!

やくも
だに!? 何だか千狐が
いつもより大きくて黒くなっちょー気がするがや……!?

若松城
お、おい、やくも!
そいつ、どっからどう見ても千狐じゃねーぞっ!!

ツバサ
うん! 狐っぽいけど、千狐ちゃんじゃないね!

???
まったく、誰と勘違いしておるのじゃ……。

山形城
わらわの名は山形城。城娘のひとりじゃぞ!

やくも
や、山形城……?

ツバサ
き、聞いたことあるよ!
確かすっごい酒好きの城娘なんだよね!

山形城
『酒』じゃなくて、『鮭』じゃ!!

山形城
よく間違われるのじゃが、
大事なことじゃからゆめゆめ間違わぬように――。

山形城
っと、そんなことより殿はおるか?
少しばかり頼みたいことがあるのじゃが。

ツバサ
殿に頼み事……?

若松城
ってことは、もしかして兜絡みか?

山形城
ほう、分かるか?
さすが歴戦の勇士の従者じゃな。

山形城
ならば話は早い。すぐに殿の許へ連れて行ってくれぬか?

やくも
そういうことならうちに任せてほしいがや!

やくも
みんなも隠れんぼは終わりにして、
殿さんとこに山形城をつれていくがや~!

ツバサ
は~いっ!!

若松城
了解だぜー!

――半刻後。

殿
…………。

山形城
――と、いうわけで。

山形城
先刻も話したように出羽国において、天童城という名の
城娘が守護する地が兜に侵攻されているらしいのじゃ。

山形城
ほれこの通り、ヤツから救援を要請する手紙が来ている。

山形城
文の内容から察するに敵の戦力はかなりのものらしく、
さすがにわらわだけでは心許ないのでな……。

山形城
天童城の言葉通り、殿に協力を依頼する運びとなったのじゃ。

殿
…………。

柳川城
……本当ですね。
殿と協力し、我らが天童の地をお助けください、と書いてあります。

ツバサ
ねーねー? もしかして
殿と天童城さんは、顔見知りなのー?

殿
…………。

殿
…………?

やくも
会ったことは無い……かや。

若松城
じゃあどうして天童城はこんな文を書いたんだ?

山形城
ぬしの威名は我らが住まう東北の地にも轟いておる。
その点を踏まえれば何ら不思議なことはないじゃろう。

柳川城
……あ、あの。
天童城さんとはどのような方なのでしょうか?

山形城
そうじゃなぁ……。

山形城
一言でいえば将棋好きの城娘じゃ。

山形城
それも、病的と言えるほどにな。

山形城
だが、それゆえに将棋によって培われた
彼奴の戦略・戦術の眼は恐るべきものじゃ。

山形城
故に、兜らは天童城の叡智を狙い、
彼の地に侵攻したとみて間違いないじゃろう。

若松城
なるほどな……城娘の力を悪用して、
日の本に更なる混乱を生み出そうって魂胆か。

柳川城
ならば、急ぎ救出に向かわねばなりませんね!

やくも
だにぃ! それじゃあ千狐!
さっそく時空転移術で東北に――

やくも
――って、あれ?
千狐はどこにいるがや?

やくも
千狐ぉ!! 千狐~~!

……。

千狐
…………。

やくも
なぁんだ、そげなとこにいたがや。

やくも
ったく、殿さんたちが大事な話をしてるのに、
いったい今まで何処にいたがや?

千狐
かくれんぼ……。

やくも
へ?

千狐
隠れんぼが終わってたのなら、どーして千狐に教えてくれないのよぉ!

若松城
…………あ。

千狐
誰も声をかけてくれないから、
千狐はひとりでずぅっと草むらの中に……うぅぅ。

やくも
す、すっかり忘れてたがや……。

千狐
もぉ~! やくものばか! おたんこなすなのぉ~!

柳川城
せ、千狐さん……落ち着いてください……!

柳川城
今は山形城さんの要請を受け、
すぐにでも出羽国へと向かわねばいけないのですから……!

千狐
……そ、そうですね……。
一応、話の肝要は耳にしましたので、理解はしています。

柳川城
それでは、殿。
準備ができ次第、すぐに出立しましょう!

殿
…………。

殿
…………!

――出羽国・某所。

千狐
殿、転移術は無事成功ですわ!
どうやらこの地が天童城さんのいる地点のようですね。

山形城
おお、すごいのぉ。
神娘の転移術とはこれほどのものであったか。

山形城
千狐よ。わらわとぬしは、見た目に近しいものがあるし、
この山形城にも、転移術が使えたりはしないのかのぉ?

千狐
そ、それは……。

千狐
ちょっと難しいと思いますが……う~ん。

千狐
神娘と城娘の霊気は性質が異なりますから、
我々の使える術が山形城さんにも使えるかどうかは……。

山形城
そうかぁ。残念じゃのぉ。

山形城
ならばこの悲しい気持ちを歌にして詠むとするか――

やくも
――ちょ、ちょっと待つがや山形城!
今はそんな悠長なこと言ってる場合じゃないと思うだに。

千狐
そ、そうですよ! 聞けばどうやらこの地には
山形城さんのお仲間が先行しているそうではないですか。

千狐
ならば一刻も早く、その方と合流した
ほうがいいのではないでしょうか?

山形城
そう焦る必要などないわ、千狐。
彼奴ならばそのうちふらっと現れるじゃろうて。

柳川城
(山形城さんの、あの悠然とした様子……)

柳川城
(……きっと、先行しているお仲間は、
信頼の置けるとびきり有能な方なのでしょうね)

???
――きゃぁぁぁぁあああ!!

殿
…………!?

柳川城
い、今の声は……!?

山形城
絹を裂くような乙女の悲鳴、というやつじゃな。

千狐
もしかして天童城さんのものでしょうか?

やくも
どっちにせよ、すぐに確認しにいくだに!

殿
…………!

兜軍団
城娘……倒ス……。
……城娘……倒ス……。

鶴ヶ岡城
くっ、ぅぅ……ど、どうしよう……。
このままじゃ……やられ、ちゃう……。

鶴ヶ岡城
ああ……山形城さん……現地で合流しようって約束したのに。
……いったい、いつになったら来てくれるのでしょうか……?

鶴ヶ岡城
……さすがに、私ひとりだけじゃ……も、もう……無理、ですよぉ……。

山形城
――まったく、ぬしはすぐにそうやって弱音を吐きよる。
たくさん修行して強くなったというのは嘘じゃったのか?

鶴ヶ岡城
――や、山形城さん!?

鶴ヶ岡城
もう! 誰のせいでこんな
窮地に追い込まれてると思ってるのですか!

鶴ヶ岡城
お願いですから助けてくださいよぉ……!

山形城
やれやれ。しょうがないやつじゃの。


新タナ城娘ヲ発見……。

兜軍団
……山形城……山形城……。

兜軍団
…………倒ス……倒ス…………!

山形城
なんじゃ、雑魚ばかりではないか。
この程度ならば、わらわが手を下すまでもない。

山形城
千狐、此処は任せた!
ぬしの不思議な術でぱぱっとやっつけてやれ!

千狐
コンッ! ボッコボコにしてやるのぉー!

千狐
――って、え! ええええっ!?
どど、ど、どうして千狐なのですか!?

山形城
ん? わらわと同じ狐の姿を備える者なのじゃから、
相応の霊気もまた、備えておるのじゃろう?

千狐
どういう理屈でそのようなことを言ってるのかは分かりませんが、
千狐は戦うための術は身につけていませんので無理ですわ!

山形城
なんじゃ、そうならそうと早う言えばいいものを。

山形城
ならば殿! 柳川城! 此処は任せたのじゃ!
ぬしらがどれほどの力を持っておるか見定めさせてもらうぞ!

殿
…………!

柳川城
それでは参りましょう、殿!
鶴ヶ岡城さんを助けるため、いざ出陣です!

後半
鶴ヶ岡城

危ないところを助けていただき、ありがとうございます。
……本当に、もうダメかと思いました……。

殿
…………。

殿
…………!

山形城
何が、もうダメかと思った――じゃ!
あの程度の雑兵で苦戦してどうする?

鶴ヶ岡城
だ、だって……。
私は歌舞を得意とする城娘ですから、さすがに独りだけでは――

鶴ヶ岡城
――って、あれ?

山形城
ん? どうしたのじゃ?

鶴ヶ岡城
いや、あの……将棋の駒が、落ちているのですが、これは……?

山形城
…………む。

千狐
微かにですが、不思議な力を感じますね……。

山形城
なるほど、天童の『将棋の駒』か。

山形城
この地にとって、将棋は切っても切れぬものゆえ、
蔵などに仕舞われていても何ら不思議なことはないじゃろう。

山形城
何かに使えるかもしれぬ。
千狐、やくも。可能な限り集めておくのじゃ。

やくも
了解だにぃ~!

千狐
分かりましたわ!

柳川城
とはいえ、先ほどの兜の動き、
何だか妙でしたね……。

山形城
やはり、ぬしも感じたか、柳川城。

柳川城
はい……こちらの動きを予め読んでいたかのような陣形に、
無駄のない迅速な撤退は、普段の兜らしからぬ戦法でした。

千狐
確かに……背後に有能な軍師の存在を感じさせる戦ぶりでしたね。

山形城
…………となると、まずいな。

山形城
もしかすると……既に天童城の叡智は、
兜らによって悪用されているのかもしれぬ。

???
――フゥゥゥ……。
流石ハ最上義光と縁深キ城娘。実に見事な読みにゴザイますね……。

鶴ヶ岡城
お、前は――っ!?

虚空の童に好手あり -破-

片倉小十郎の名を冠する巨大兜の出現と共に、
ついに殿たちは天童城の姿を目にする。急ぎ
兜たちを討伐し、囚われた天童城を救出せよ。

前半
鶴ヶ岡城

お、前は――っ!?

片倉小十郎
フゥゥゥ…………。
鶴ヶ岡城に山形城……ソシテ殿と柳川城、ですカ。

片倉小十郎
成ル程、確カニ『彼女』の読み通りのようですネ。

やくも
あの巨大兜さんは……!?

柳川城
片倉小十郎の名を冠する巨大兜!?

千狐
いえ、それだけでは無いようです!
……ヤツの傍らにもう一人いるようですわ!

天童城
…………。

鶴ヶ岡城
――て、天童城さん!?

柳川城
やはり、あの方がそうなのですね!?

殿
…………。

殿
…………!!

山形城
無駄じゃ……いくら声をかけても、
今の天童城には届きはせぬ……。

山形城
あの曖昧な様子からして、
既に彼奴の心身は異常な状態にあるのじゃからな。

片倉小十郎
ホウ……同胞である城娘ノ斯様な様を目にシテも、
悠然たる心ヲ乱さぬとは……流石ですネ、山形城。

片倉小十郎
ですが、コレナラバどうでしょう……?

片倉小十郎
今、私の傍らに佇む此ノ天童城は、
我々が攻め入った際、さしたる抵抗を見せはしなかった――。

片倉小十郎
ソウ……まるで、我らの掌中に堕ちるコトを望むが如くに……ネ。

山形城
ふっ……然様な言の葉で、
わらわの動揺を誘うとは片腹痛いわ。

山形城
ぬしが目にした天童城の行動は、
我等城娘に対する裏切りでもなければ、
非力さからくる安い諦念でもない。

山形城
天童城自身が読み取った未来において、
そうすることが最善だと判断したからこそ、
其奴は抵抗をしなかっただけのことじゃ。

片倉小十郎
ソレハ異な事を……。

片倉小十郎
ナラバこの天童城は、自ら斯様なる状況ヲ望んだと……?

山形城
然りじゃ。

山形城
天童城の読みは、将棋という枠組みすらも越える異能――。
それは時に己が辿るべき未来すらも読むとまで言われておる。

山形城
そうした力を持った天童城が、
自ら兜の掌中に収まることを決めたのじゃ。

山形城
何か考えあってのことであることは間違いない。

山形城
故に、わらわの心が揺れることなど有り得ぬ。

片倉小十郎
フフ……随分と信頼がお厚いようですね。

片倉小十郎
トはいえ、天童城に何か深キ策があろうト、我ら兜にヨル瘴気デ
根底カラ思考を変化させてシマえば意味ヲ成さなくなるのデハ?

山形城
ククク……それは起こり得ぬことじゃな。

山形城
何故なら瘴気による全支配の愚を犯せば、
天童城の卓越なる戦略眼は十全に機能はしない。

山形城
とすれば、城娘としての魂を少しばかり暴走させ、
曖昧な状態にさせる程度が貴様らの限界よな。

片倉小十郎
フフ……。

片倉小十郎
フフフフ……やはり貴方は素晴らしイ、山形城!
ソレでこそ最上家とノ縁深キ城娘にございます!

片倉小十郎
義光サマも今の貴方ヲ見たならば、サゾお喜びになるデしょうね。

山形城
口を慎め……兜風情が我が城主を
語るなど烏滸がましいにも程があるわ。

片倉小十郎
フフ……コレハ失敬。

片倉小十郎
ですが、妙デスね……最上にとって天童は味方というより敵方、
という印象が私には強く残っているのですが……ソレデモ助けると?

山形城
少し前までは存在すらしていなかったくせに、
印象が強く残っているとは不思議な物言いをしよる。

山形城
大方、片倉小十郎の虚魂から記憶を読み取ったのじゃろうが、
先の言からすれば、その精度もたかがしれる。

山形城
いいか、兜よ。
最上にとって天童とは、欠けてはならぬ名じゃ。

山形城
争いの記憶は強くあれど、そもそも天童八楯とは、
伊達家に対抗し、最上一門の利益を守るために結ばれた盟約じゃ。

片倉小十郎
というならば、ナルホド……確かに、我等と対峙するには
十分過ぎるホドの理由となりましょうな……フフフ。

山形城
フン……だいたい、天童が絡もうが絡むまいが、
貴様のように出羽を侵す輩は即座に滅ぼすと決めている。

山形城
幕府が消え、多くの人間たちが死に、
貴様ら兜によって此世の理が乱された今も尚――。

山形城
かつての羽州探題であった最上の誇りは消えておらぬ。

山形城
故に、わらわは最上が城娘の筆頭として、
出羽の秩序を乱す全ての悪と戦うまでじゃ!

片倉小十郎
……単純。

片倉小十郎
貴方にシテは実に単純な理由ダ。

片倉小十郎
ダガしかし、ソレ故に貴方は気高く、美しイ……。

片倉小十郎
イイでしょう……ならば天童城が読んだとされる
今この時ニおいては、私も駒の一つとシテ動くマデです。

片倉小十郎
サァ、天童城よ――!!
我らにトッテの最善手を示すノです!

天童城
ようやく……将棋が……指せる……。

天童城
そう……あの方が、私の相手なのですね…………ふふふ。

天童城
それでは……初手、3六歩で……お願いします。


天童城カラノ指示ガ出タゾ!

兜軍団
急ゲ! 此ノ地ヲ盤ニ見立テ動クノダ!

兜軍団
出陣! 出陣!!

やくも
殿さん! 兜さんたちが動き始めただに!

天童城
……さぁ、お相手は……どのように受けるのでしょうか……。

天童城
実に……楽しみです……ふふふ…………。

鶴ヶ岡城
て、天童城さん……これから戦だっていうのに、
あんなに無邪気に笑ってるなんて……。

山形城
今の彼奴にとっては、眼前の戦場にて生じる
すべてが、盤上の遊戯と同義なのじゃ……。

山形城
だが、臆面もなく自らの将棋を練る姿は、
芸に臨むわらわにも感ずるものがある……。

山形城
なれば、彼奴との対局――存分に興じるとしようぞ!

山形城
山形城……今こそ変身じゃ!

殿
…………!

山形城
さぁ、対局開始じゃ!
殿も遅れずについて来るがよい――!!

後半
山形城

ククク……どうした?
もう終わりか、兜たちよ?


――グ、ゥゥ……。

兜軍団
何テ、強サダ……。

兜軍団
アレガ……奥州ノ狐、カ……。

鶴ヶ岡城
さすがは山形城さん!
偉そうにしてるだけあって、やはりお強いですね!

山形城
偉そうに――じゃなくて実際偉いのじゃ。ククク。

柳川城
あれだけの戦をして、まだまだ余裕があるとは……。

柳川城
これ以上無く心強い味方ですね、殿。

殿
…………!

千狐
殿、今なら天童城さんを助けられるはずです!

千狐
このまま一気に攻め込みましょう!

山形城
いや――待つのじゃ、千狐!
いま軽率に動けば、ヤツらの思うつぼじゃぞ!

千狐
……え?

天童城
少し圧されてるようですが……これくらいは予想通りです……。

天童城
それでは此処で、5九飛打…………お願いします……。

山形城
――殿、来るぞ!!
あれこそが、ヤツらにとっての好手じゃ!

殿
…………!?

伊達政宗
フッ……まさか、この俺が城娘ノ指示に従って戦をするコトになろうとはな……。

虚空の童に好手あり -急-

突如として戦場へと姿を現した伊達政宗の
名を冠する巨大兜。挟撃の形を取ることで、
すべては敵の思惑通りかと思われたが――。

前半
伊達政宗

フッ……まさか、この俺が城娘ノ指示に従って戦をするコトになろうとはな……。

伊達政宗
ダガ……確かに良き戦術ダ。

伊達政宗
此ノ機、此ノ地形においてノ挟撃とアラば、
殿を討ち取るのハ、これ以上無いホドに容易い。

山形城
……やはり、潜んでおったか梵天丸。

千狐
そんな……伊達政宗の名を冠する兜ですって!?

柳川城
まさか、二体の巨大兜が同じ戦場に現れるなんて……。

片倉小十郎
フゥゥゥ……何と素晴ラシキ局面でしょうカ――!
こうも天童城ノ読み通りにナルとは思いませんデシた。

鶴ヶ岡城
そんな……有り得ません……。

鶴ヶ岡城
常に気を張っていたというのに……あれほどの強大な
力の接近をどうして感じ取れなかったの…………?

片倉小十郎
単純な理屈ですヨ……。

片倉小十郎
天童城にトッテ、此ノ地は将棋盤同然。

片倉小十郎
ソノ絶対的認識が、暴走状態にある彼女の異能と
作用し合うコトで、この地の理ヲ少しバカリねじ曲げた……。

片倉小十郎
故に、盤外に手駒トシテ用意されていた若君ノ存在は希薄化し、
盤上に居る貴方タチには認識出来ナイものとナッテいたのですよ。

やくも
………………。

やくも
…………はぇ?

千狐
(い、いけない……やくもが理解を放棄してる……!?)

千狐
つ、つまりは……すごく簡単に言うと、
天童城さんがおかしな状態にある限り、
この盤上においては不可思議なことが起こり得るということよ、やくも!

やくも
…………。

やくも
な、なるほどがや!
なんとなく雰囲気だけは分かっただにぃ!

山形城
まったく……何が存在の希薄化、じゃ……。

山形城
将棋を元にしておるなら遊戯の規定くらい守れ。
手駒は常に相手に示さねば不公平ではないか!

片倉小十郎
フゥゥゥ……ソノことに関シテは
天童城に文句をお投ゲください。

片倉小十郎
ですガ、その声が届くコトは無いと……貴方は既ニ理解しているハズ……。

片倉小十郎
ナニせ彼女は正常にあらズ……其ノ茫漠たる意識の中で、
我らには知覚するコトの出来ぬ遊戯に耽ッテイルのですから……フフフ。

山形城
その挑発めいた言の葉も作戦のうちだとすれば、
ぬしもなかなかの策士じゃな、小十郎……。

片倉小十郎
宿る魂ガ私めニ与えタ聡明さにゴザいます。
存分に発揮セネバ失礼にもアタりましょう……。

伊達政宗
――小十郎。あまり山形城と言を交わすナ!
時間ヲ稼がれているのガ分からぬのカ!?

伊達政宗
ヤツは我が伯父――義光が叡智すらモ内包する城娘ダ!
下手に小細工をサレテハ敵わぬ。一気に勝負をつけるゾ!

山形城
ククク。もう遅いわ。梵天丸――。

片倉小十郎
――――ッ!?

山形城
鶴ヶ岡城――っ! 
わらわの一撃に合わせ、ぬしの力を解放しろ!

鶴ヶ岡城
お任せください! 
今こそ、修行の成果を御覧に入れます!

片倉小十郎
なっ……にぃ――!?

天童城
え……? な、何ですか、この駒の動きは……!?

天童城
急に……角が、盤外へと……吹き飛ばされた……!?

伊達政宗
――大丈夫カ、小十郎ッ!?

片倉小十郎
え、エエ……何とか、致命傷は避ケテいますとも……。

片倉小十郎
ですが……この立ち位置ハ……少々マズイですね……。
……コレデハ、挟撃することは……でき、ナイ……。

山形城
殿! 此奴はわらわと鶴ヶ岡城が相手をする!
ぬしらは其の地にて、梵天丸を撃破するのじゃ!

殿
…………!

天童城
……まぁ、いいでしょう…………。

天童城
無理攻めを…………強引に押し通すほどの相手……。

天童城
ならば……私も攻めの将棋を指すまで……です……。

天童城
それでは、気を取り直して…………新たなる一手を――


――ザザッ! 

兜軍団
ザザザッ!!

柳川城
山形城さんたちが作りだしてくれた勝機――。
みすみす逃す手はありません!

柳川城
殿、我らも急ぎ出陣しましょう!
伊達政宗の名を冠する巨大兜を打ち倒すのです!

後半
伊達政宗

――グッ、ぅぁ…………や、ヤハリ……、
俺ひとりでは……荷が、重いカ…………!

天童城
……ふふ。

天童城
なるほど、なるほど……。

天童城
まさか此程までの棋客とは思いませんでした……。

天童城
ですが、当初より……初戦は力量を探るのが目的でしたからね……。

天童城
ということで……ひとまず、このあたりで休憩しましょうか……。

天童城
忘れぬうちに……棋譜も、作らねばいけませんからね……ふふふ。


天童城ガ……帰ッテイッテシマッタゾ!?

兜軍団
……ボ、ボクタチモ付イテイカナキャ!

片倉小十郎
フゥゥゥ……やはり、こうなってシマイましたか……。

片倉小十郎
若君……当初ノ予定通り、撤退と参りましょう……。

伊達政宗
口惜シイが……今はそうするより他に無い……カ。

伊達政宗
だが、次コソは天童城の読み通り、我ラが勝利を掴んでみせル……。

伊達政宗
覚悟シテおけ……山形城……ソシテ、殿よ……。

殿
…………。

山形城
予め逃走経路も確保していたとはな……。
天童城の筋書き通りとはいえ、こうも完璧とは恐れ入る。

鶴ヶ岡城
感心してる場合ですか!
私たち、天童城さんを助けることができなかったんですよ!?

山形城
そのように声を荒げなくても分かっておるわ。

柳川城
それにしても……あの様子からして、天童城さんを
正常な状態に戻すのには難儀しそうですね……。

山形城
そのことに関しては、そこまで案ずる必要はあるまい。

山形城
ほれ、千狐。アレがあったじゃろう。アレが。

千狐
アレ……?

千狐
あっ――はい! そうでしたね!

やくも
……ん?

やくも
そ、それは――っ!?

山形城
そうじゃ、先刻拾った『将棋の駒』じゃ。

山形城
この駒は天童城にとって縁深きものであり、
正常なる気を内包する逸品じゃ。

鶴ヶ岡城
ならば、これをできるだけたくさん集めることで、
天童城さんの正気を取り戻すことが可能だと!?

山形城
確実……とは言えぬが、救出の可能性を
上げるのに、これ以上のものはないじゃろう。

柳川城
では、我々が目下やるべきことは決まりましたね、殿。

殿
…………。

殿
…………!

千狐
はい! それでは殿。再戦に備え、
『将棋の駒』の収集と兜迎撃の準備を進めるとしましょう!

……。

山形城
…………。

山形城
………………。

山形城
(さて……これからどうなるかのぉ……)

山形城
(天童城がわらわに送った文の中には、
実は殿に見せていない箇所があるのじゃが……)

山形城
(恐ろしいことに、その部分に記載されていた内容と、
これまでの展開がすべて寸分の狂いなく一致しておる……)

山形城
(だからこそ、迷いなくわらわと鶴ヶ岡城は
挟撃の阻止に成功できたわけじゃが……)

山形城
(本当に、最後までぬしの読み通りに
この戦は終われるのじゃろうか……?)

山形城
…………。

千狐
あ、あの……山形城さん?
急に黙り込んでしまって、どうされたのですか?

山形城
……ん? ああ、すまんすまん。

山形城
いやな……わらわ、もう一度考えてみたのじゃ。

山形城
此処に来た時も言ったと思うが、やはりわらわがちょっと頑張れば
千狐の扱う転移術が使えるんじゃないのかのぉ……と。

千狐
もぉ……ですから無理だとお伝えしているではないですかぁ。

山形城
まぁまぁ。そう言わずに、ちょこっとだけやり方の指南をじゃな――。

――こうして、殿一行は来たる戦いに備え準備を進めていくのであった。

虚空の童に好手あり -絶壱-

――重苦しいため息をつく千狐。
その姿を認めた山形城と鶴ヶ岡城は、
彼女の悩みを訊こうと近寄るのだが……。

前半
夜――巨大兜との戦いに備える殿陣営。

その中にひとり、悩ましげなため息をつく神娘がいた。

千狐
はぁぁ……。

千狐
今日はまさか、巨大兜が二体同時に現れるなんて思わなかった……。

千狐
山形城さんたちが危険を顧みずに
強襲を仕掛けたから挟撃を防げましたが、

千狐
もしあのお二人がいなかったらと思うと……。

千狐
…………。

千狐
本来なら……千狐が殿の参謀として
神娘に相応しき知恵をもって助力をせねばいけないというのに。

千狐
結局……何も、できなかった……。

千狐
……そもそも。いつから千狐は
こんなにも役に立たなくなってしまったの?

千狐
…………。

千狐
ううん……そんなの、わかりきってる……。

千狐
殿が多くの城娘たちと出会い、
聡明な方々を仲間に引き入れ出してからだわ……。

千狐
…………。

千狐
……はぁ。

山形城
――ん? あれは……?

鶴ヶ岡城
あの、どうしたのですか山形城さん?

山形城
ほれ、彼処を見てみぃ……千狐がひとり、
膝を抱えて座っとるのじゃが、どうかしたのかのぅ?

鶴ヶ岡城
山形城さんがしつこく転移術を教えろーって
言うから、疲れちゃったんじゃないですか?

山形城
むぅ……それは悪いことをした……。
軽い気持ちで言っただけなのじゃが。

鶴ヶ岡城
山形城さんはタダでさえ強者感がムンムンしてますからね。
かくいう私も一緒にいると気後れしちゃいますし……。

山形城
ぬし、前々から思ってたのじゃが、
意外とずばっと本音を言うのぉ。

鶴ヶ岡城
え? そう、ですかね?

山形城
無自覚なのが、また何とも言えぬ味よな。

山形城
まぁ、いい。今は共に戦いに備える仲間じゃ。
千狐を元気づけるのもわらわたちの役目のひとつじゃろう。

山形城
ということで、さっそく声掛けしてやるとしよう。

鶴ヶ岡城
ふふ。山形城さんって、見た目の怖さに反して、
そういうとこ、すごーく優しいですよね。

山形城
いいから、黙ってついてこぬか。

鶴ヶ岡城
はーい。

千狐
……はぁ。

山形城
――どうしたのじゃ、千狐? 
こんなところで独りでいると兜にさらわれるぞ?

鶴ヶ岡城
それに、もう夜も遅いですから、
あまり風にあたると身体に障りますよ?

千狐
……や、山形城さん!?
それに鶴ヶ岡城さんまで……!

鶴ヶ岡城
ふ~むふむ……遠目にも思いましたが、
やはり、浮かない顔をしていますねぇ?

千狐
そ、そう見えますか……?

山形城
うむ。というより、尻尾も耳もだだ下がりゆえ、
誰が見ても落ち込んでるのはバレバレじゃと思うぞ。

千狐
うぅぅ……お、お恥ずかしい……。

山形城
のう。何か悩みがあるのならば、わらわに話してみぬか?

山形城
鶴ヶ岡城の方が話しやすいということであれば、
此奴でもぜんぜん構わぬぞ……?

鶴ヶ岡城
はい! 悩み相談から恋愛相談はもとより、
学力向上、家内安全、安産祈願と何でもござれですよ?

山形城
どこの御守り群じゃ、ぬしは……。

鶴ヶ岡城
じょ、冗談ですから怖い顔しないでくださいよぉ……。

千狐
(お二人とも、気を使ってくれているのですね……)

千狐
で、ですが……千狐は神娘……そう簡単に甘えるわけには……。

山形城
わらわたちは狐の姿を備える者同士――。
今この時にあっては城娘も神娘も関係ないじゃろう?

山形城
ほれ、誰にも言わぬから話してみせい。

千狐
……で、では…………――――。

山形城
…………。

山形城
…………なるほど、参謀役として
今よりも、もっと殿の役に立ちたいとな。

山形城
確かに、殿の仲間たちには
それなりに賢しき城娘が多いようじゃからのぉ。

山形城
自らの非力さが浮き彫りになってしまうのも無理からぬことじゃ。

鶴ヶ岡城
ちょ、ちょっと山形城さん。非力とか言ったらダメですよ。
もっと他に、適当な言い方があるのでは……?

千狐
いえ、山形城さんの仰る通りですわ。

千狐
……だから、聡明なお二人に教えていただきたいのです。

千狐
どうしたら、戦における知識を深めることができるのかを……!

鶴ヶ岡城
聡明だなんて、そんなぁ……えへへ♪

山形城
これ、ぬしはそうやってすぐに図に乗る……。
修行を終えたとはいえ、わらわからすればまだまだ半人前じゃ。

鶴ヶ岡城
しゅん…………。

山形城
ああもう、ぬしまで気落ちしてどうするのじゃ!?

山形城
ったく、仕方ないのぉ。
こうなればひとつ、わらわが教示してやるとしよう。

山形城
ほれ、鶴ヶ岡城。
何か良い感じの小枝を寄越せ。

鶴ヶ岡城
え? 小枝? 何でですか?

山形城
いいから、ツベコベ言わずに早うせい!

鶴ヶ岡城
は、はひぃ――!!

鶴ヶ岡城
ええ~っと……ええ~っとぉ……あっ!
こ、こんな感じのでいいですか?

山形城
うむ。なかなかの小枝じゃ!

山形城
ではぁ、これを地面に押し当て、
こうして……こうやって……こうじゃ!

千狐
――――こ、これはっ!?

鶴ヶ岡城
おぉぉ、前衛的な絵ですね!
お豆腐にぎざぎざの切れ目を入れて、
山形城さんの心の闇か何かを表現してるのでしょうか?

山形城
馬鹿者! 何でここにきて豆腐なぞ描くのじゃ!

山形城
だいたい、わらわだったら鮭を描くに決まって――

山形城
――って、ああもう。そうじゃなくてだな。
見て分からぬか、千狐よ?

山形城
ほれ、線引きした地面に
この地で集めた将棋駒をこう並べれば――

鶴ヶ岡城
――ああ! なるほど、将棋盤の絵でしたか!

千狐
ですが、これでいったい何をするのですか?

山形城
何をって……将棋に決まっておるじゃろう?

千狐
……え?

山形城
今日、天童城が戦において無類の叡智を見せたように、
盤上の遊戯とは多かれ少なかれ戦に通ずる部分がある。

山形城
わらわはそこまで精通しておらぬが、
戦を想定しての将棋とあれば、
今のぬしの望む智を強化することもできるじゃろう。

鶴ヶ岡城
ということは、これが殿で、こっち側が兜軍ですね。

山形城
うむ! そして、千狐よ――。

山形城
ぬしが殿になった気持ちで、この将棋を指すのじゃ!

千狐
――ええ!? せ、千狐が殿……ですか!?

山形城
然りじゃ! そして、敵方にはわらわと鶴ヶ岡城が
兜らに操られてしまったと仮定するのじゃ――っ!

鶴ヶ岡城
な、なんですってぇぇ――!?

鶴ヶ岡城
あ、あの……!
兜に操られてしまったら、その、あの……私、どうなっちゃうんですか!?

山形城
ええい、想像力のたくましいやつめ!
そこらへんは適当に考えておけ!

鶴ヶ岡城
うぅぅ……あんまり酷いことや、痛いことは……されたくないのですがぁ……。

鶴ヶ岡城
…………むむむ。(思考中)

鶴ヶ岡城
………………ああ、やっぱり私……、
そういう縄で縛られちゃうのですねぇ……うぅぅ……。

山形城
……。
(いったい何を想像しておるのやら……)

山形城
いずれにせよ、これは真剣勝負じゃ千狐!
この乱世、順を追って強くなったやつなど皆無なり!

山形城
有名な武将も、いきなり死地に放り込まれ、
そして生き抜き、果てで比類無き智勇を身につけたのじゃ。

山形城
なれば、ぬしもわらわとの生死を賭けた将棋を指してみせよ!

千狐
生死を賭けたって……あ、あの……。

千狐
千狐が負けたらどうなってしまうのですか?

山形城
そうじゃな……。

山形城
わらわの召使いとなれ。

千狐
ええっ!?

千狐
ですが、千狐は殿の神娘なのですよ……?

山形城
じゃから、負けた場合は殿からぬしを貰い受けるということじゃ。

鶴ヶ岡城
あのぉ、いくらなんでも賭けるものが大きすぎるんじゃ……。

山形城
そんなのはこちらも同じじゃ。

山形城
わらわが負けたら鶴ヶ岡城を持って行かれるのじゃからな。

鶴ヶ岡城
ああ、確かにそれは代償が大きい――

鶴ヶ岡城
――って、えええ!?

鶴ヶ岡城
私って山形城さんの召使いだったのですか!?

山形城
違ったか?

鶴ヶ岡城
違いますよぉ!!

山形城
…………。

鶴ヶ岡城
何ですかその『今の今までわらわを騙しておったのじゃな……』みたいな顔はぁ!?

山形城
さて、ではそろそろ勝負といこうか、千狐♪

鶴ヶ岡城
って、勝手に話が進んでるぅぅ――!?

山形城
千狐、ぬしが先手じゃ!
心して挑むがよいぞ!

千狐
……は、はい。

千狐
(何だか強引に話が進んでしまってますが……)

千狐
(こうなったら、イチかバチかやってみるしかないの……)

千狐
千狐、一世一代の大博打なのーっ!!

後半
千狐

コン!これで王手なのーっ!!

山形城
なん、じゃと……!?

鶴ヶ岡城
山形城さーーーーーん!!
これ、完全に詰んじゃってますよ!!

鶴ヶ岡城
ていうか、どうやったらこんな負け方できるんですかぁ!?
全駒ですよ、全駒! 王将以外全部取られちゃってるじゃないですか!!

山形城
いやぁ、まいったまいった……。

鶴ヶ岡城
あのぉ……。

鶴ヶ岡城
もしかして、わざと負けました?

山形城
はて、何のことかのぉ?

鶴ヶ岡城
あ~っ! その怪しげな微笑みぃぃ~!
私が千狐さんの召使いになっちゃうのが見たくてわざと負けましたねー!?

山形城
これこれ、人聞きの悪いことを言うでない。

山形城
少しの手心を加えはしたが、千狐は身命を賭した勝負において、
己が限界を超え、新たな智勇を獲得したからこそわらわに勝てたのじゃ。

山形城
少しは相手の成長を褒めぬか。

鶴ヶ岡城
た、確かに……。
何だかそのような雰囲気は私も感じておりました……。

鶴ヶ岡城
千狐さん――!!

千狐
は、はい……?

鶴ヶ岡城
先ほどの勝負……お見事でした!

鶴ヶ岡城
あの偉そうな山形城さんを打ち破るなんて、
胸がすぅっとしま――じゃなかった……私、感動しました!

千狐
……そ、そんな。

千狐
無我夢中でしたから、よく覚えてないですが……。

千狐
でも、何かが、こう……啓けたような気もします……。

山形城
うむ。知らず決めつけていた己の限界など、
存外容易く越えられるものよ。

山形城
それが、己が身を守らんためか……はたまた
誰かのために力を振り絞るかで、成長の度合も変わる。

山形城
ぬしは殿のために自らの成長を願った……。

山形城
そういう者は強くなる。
……まぁ、わらわの経験則じゃが、精進せよ千狐。

千狐
は、はい……!

千狐
ありがとうございます、山形城さん!

千狐
……それで、召使いの件ですが――

鶴ヶ岡城
――え!?

鶴ヶ岡城
(ど、どうしよう……千狐さん、やっぱり忘れてなかったんだ……!?)

鶴ヶ岡城
(うぅぅ……このままじゃ、私……千狐さんの召使いとして何をさせられるか……)

鶴ヶ岡城
(……あ、でも。千狐さんはお優しい方ですし、意外と悪くないのかも……なんて)

千狐
――さすがに、城娘の方を召し抱えるのは恐れ多いので、

千狐
山形城さん!

山形城
な、何じゃ……?

千狐
もう一局、お相手いただけますか?

山形城
……わらわと、将棋が指したいと?

千狐
はい!

山形城
ふふっ、いいじゃろう、いいじゃろう!

山形城
ぬしが望みとあらば
一局と言わずいくらでも指してやろうぞ。

千狐
それでは場所を移しましょうか。
さすがに室外では風邪をひいてしまいますからね…………――――。

鶴ヶ岡城
…………。

鶴ヶ岡城
…………え? あ、あれ……?
私……もしかして置いてけぼりですか!?

鶴ヶ岡城
ちょ……ちょっと待ってくださいよぉ~!
二人だけで楽しむなんてずるいですぅ!

鶴ヶ岡城
私も一緒にぃ……三人で仲良くやりましょうよぉ~!!

――そうしてこの夜、千狐と山形城、そして鶴ヶ岡城を含めた三者は、
空が白むまで代わる代わる将棋を差し合い、実りある時を共に過ごしたのだった。

虚空の童に好手あり -離-

新たなる策を引っ提げて再び殿一行の
前に姿を現した兜軍団。暴走状態に
ある天童城を救うため、いざ出陣せよ!

前半
天童城

将棋を――指していた――。

天童城
――今がイツで――ここがドコかは分からないけれど――。

天童城
私は――たしかに将棋を指していた――。

天童城
正常ならざる意識の中で――それだけははっきりと覚えている――。

山形城
―――――。

柳川城
―――――。

鶴ヶ岡城
―――――。

天童城
あぁ――意識が――砂粒のように――散り落ちていく――。

天童城
兜との接触に因って――己が業の制御が困難になっている――。

天童城
――城娘としての魂が――暴走している証拠――。

天童城
だけど――こうした感覚は初めてじゃない――。

天童城
――そう、これは――。

天童城
対局中に時として陥る――陶酔の――。

殿
―――――。

天童城
殿…………。

天童城
……助けに……たすけ、に――来てくれたのですね……。

天童城
これも……『読み』通り……です…………。

天童城
…………分かって、いました……。

天童城
……それでも――嬉、しい…………。

天童城
同時に――申し訳なさが、胸を穿つ――。

天童城
他の城娘と同じ様に――数多通過した歴と同じ様に――。

天童城
私も――繰り返された定跡を辿れば――どんなに楽だったろうか――。

天童城
ここには――苦しみしか、ない――。

天童城
――ただ――ひたすらに――苦しみが――満ちていく――。

天童城
無意味と――誹られるであろう――己が行為が――恥ずかしい――。

天童城
それでも――こうするべきだと――。

天童城
――こうすることができるのは――私だけなのだと――。

天童城
そう思うからこそ――私は、己が最善手を――此度の奇手へと転じた――。

天童城
――遠き未来で――好手、へと変わる――ことを――信じて――――。


―――――。

伊達政宗
―――――。

片倉小十郎
―――――。

天童城
兜――――。

天童城
…………我らが敵――此世の悪――。

天童城
此世――――。

天童城
――――――盤。

天童城
ならば我らは駒で――。

天童城
――指し動かすのは誰なのか。

天童城
突き――止める――。

天童城
私にしか選べない――新手を以て――。

天童城
――此世を――塗り替える――――。

???
将棋なんぞで運命を変えられると、本当に思っているのか?

天童城
あなたこそ……。

天童城
未だ……王将を取っただけで……『将棋』が終わるなどと――

天童城
――本気で思ってるのですか?

桃形兜
…………。

桃形兜
ネ、ネェ……アノ天童城トカイウ城娘……。

兜軍団
空ニ向カッテ……ズット独言ヲ吐イテルヨ……。

兜軍団
……不気味ダ……誰ト会話シテルンダロウ……。

伊達政宗
オイ、小十郎……。

片倉小十郎
ドウシマシタカ、若君?

伊達政宗
奴ハ――天童城は大丈夫なのカ?

片倉小十郎
フフ……コレはコレは……。
まさか城娘ノ体調を気遣ってイルのですか?

伊達政宗
馬鹿ヲ言え。

伊達政宗
此度の戦は、天童城ノ能力を頼りトシテ始まった……。
廃人と化すのナラバ、あと数日保ってモラワネバ困るというだけのこと。

片倉小十郎
フゥゥゥ……なるほどなるほど……。
そういうコトでしたら御心配には及びませヌ。

片倉小十郎
たしかに、暴走スル城娘ヲ長期にわたり放置スルのは、
心身に対して多大ナル損傷を与エルことにナリマスガ、

片倉小十郎
それコソが私ノ狙いにございます。

伊達政宗
……どういうコトだ?

片倉小十郎
天童城ノ『読み』の力というのは、元来、正常ナル意識下に
おいては明日ノ天気ヲ予想スル程度のモノでしかありません。

片倉小十郎
ですが、其れヲ未来予知ジみた次元での異能と成スには、
より深く盤上ヘト意識ヲ埋没させナケればイケないのです。

片倉小十郎
彼女の言にヨれば、将棋において大切な要素ノ
ひとつは、虚空に浮カブ心象との対話――。

片倉小十郎
盤上ヘト全神経、全意識、全感覚を捧げるコトで、
ようやく完全ともイえる『読み』を発揮スルのです……。

片倉小十郎
ダカラこそ――コノままでいいのですよ、若君。

伊達政宗
フン……。
小難シイ話は好かぬ。

伊達政宗
要ハ、あの城娘ノ裡が壊れれば壊れるホド、
我等にとって有益な言ガ引き出されるというコトだナ?

片倉小十郎
エエ……その通りで御座いマス。

伊達政宗
因果なモノだな……。

桃形兜
――ホ、報告ニゴザイマス、小十郎様!

片倉小十郎
何デスカ、桃形?

桃形兜
ソ、ソレガ……。

兜軍団
天童城ガ、次ナル『読ミ』ヲ口走ッテオリマス――!!

兜軍団
ソレモ……殿一行トノ戦ニオケル言ニテ候!!

片倉小十郎
分かりマシた……スグに私も向かいましょう。

片倉小十郎
若君……再戦の刻ガ近ヅいてオリます……。

片倉小十郎
今コソ、王将ヲ取るご準備を――。

伊達政宗
……アア。

――翌日・殿陣営。

殿
…………。

やくも
と、殿さ~んっ!!
大変だにぃ! 兜さんたちが攻めて来たがやぁ!!

千狐
何ですって――!?

柳川城
思っていたよりも早いですね……。
少なくとも、あと数日は仕掛けてこないと踏んでいたのですが。

鶴ヶ岡城
でも、だからといって準備をしていなかったわけではありません!

鶴ヶ岡城
ご覧ください! この将棋駒の数を!

鶴ヶ岡城
……って、あれ?
どうしたのですか山形城さん。

山形城
…………。

山形城
(驚くべきことじゃ……。兜再来の時点すら、
天童城がわらわに送った手紙の通りとはな……)

山形城
(となると……まさか、その編成も――)

鶴ヶ岡城
やーまーがーたーじょーさーんっ!!

山形城
――のわっ!? な、なんじゃ急に!?
将棋駒を頬に押し付けるでないわ!

鶴ヶ岡城
はぁ、よかった……ようやく反応してくれましたね!
立ったまま寝落ちしてるのかと思いましたよ。

山形城
そんな器用な真似などできるか!

山形城
まったく、人がせっかく真面目に考え事をしていれば……。

鶴ヶ岡城
考え事……?

山形城
あ……いや、何でもないのじゃ。

山形城
それよりも戦の準備は本当にできているのか?

鶴ヶ岡城
ええ、私も柳川城さんも、いつでも出陣できますよ!

柳川城
万事、ぬかりはありません!

山形城
よし……ならば、行くとしよう。
殿、ぬしも遅れるでないぞ?

殿
…………!

――半刻後。

兜軍団
進軍セヨ……進軍セヨ……ッ!!
進軍セヨ……進軍セヨ……ッ!!
進軍セヨ……進軍セヨ……ッ!!

鶴ヶ岡城
兜たちめ……やはり先の戦よりも
戦力を増大させてきたようですね!

千狐
明らかに量も質も前回とは比べものにならない……。
……此度の戦で、勝負を決するつもりのようですね。

山形城
少々、苦しい戦になりそうじゃのぉ……。

柳川城
ですが、この勝負に勝たなくては天童城さんを助けることは――

柳川城
――っ!?

やくも
ど、どうしたがや、柳川城!?

柳川城
……そんな……どうして、あそこに……彼女が……?

千狐
……え?

殿
…………!?

天童城
…………ふふ。

山形城
(やはり、そうか……天童城……ぬしは――)

鶴ヶ岡城
山形城さん! た、大変です! 天童城さんが!
天童城さんが、城娘の姿で戦場に立ってますよ!

山形城
言われずとも分かっておる……。

山形城
それよりも憂慮すべきは、巨大兜の姿がないことじゃ!

山形城
天童城がこの戦場に立っているということは、
既に、ここら一帯はヤツの認識する盤上と同義……。

山形城
ゆえに、いつ何処から盤外の巨大兜が攻め入ってくるかは、
盤上の我らには知覚することができないということじゃ!

鶴ヶ岡城
で、では……我々のうち誰かが一度戦場を離れるというのは?

山形城
それこそ……相手の思う壺じゃ。

山形城
既に周辺には雑兵たちが配置されておるはず……。
兵力を分散などしようものなら、すぐに討ち取られてしまうぞ。

柳川城
……確かに。これまでの天童城さんの読みの精度を考えれば、
我々がこの状況で取れる行動は全て把握されているでしょう。

鶴ヶ岡城
ならば……取れる作戦は一つしかありませんね。

やくも
……な、何だに?

鶴ヶ岡城
張り巡らされた策すべてを撃砕するような、
圧倒的な武威によって勝負を一気に決め――、

鶴ヶ岡城
それでもって天童城さんを救出し、正気を取り戻させる作戦です!

やくも
……んな滅茶苦茶な!
無策って言ってるようなもんだにぃ!!

山形城
だがこの状況下では、複雑に考えて下策を取るより、
開き直って力のみによって正面を突っ切る方がましじゃ。

山形城
(それに……然様なる戦こそが、
天童城の当初の筋書きに符合する……)

山形城
(信じるぞ、天童城……ぬしの読みと、その覚悟をな……!)

殿
…………。

天童城
それでは……始めると……しましょうか……。

天童城
天童が新たなる一手……ここに、示させていただきます……。

後半
天童城

すごい……。

天童城
…………すごいです……。

天童城
これほどまでに……熱くなれる将棋が……かつて在ったでしょうか……?

天童城
でも……まだ、足りない…………。

天童城
……もっと…………。

天童城
…………もっと、攻め込んでください…………。

天童城
もっと私を……追い込んでください…………。

天童城
…………さすれば…………私は、かつてない閃きを…………。

天童城
かつてない……神授の如き、一手を…………一手、をぉ……!

柳川城
いいえ、この勝負は……。
これにて投了ですよ、天童城さん!

桃形兜
――ギャァァアアアアッ!?

鶴ヶ岡城
今のが最後の一体だったようですね!
さすが柳川城さん……お見事です!

天童城
おぉ……あれほどの堅陣を……破壊したと、いうのですか……。

天童城
素晴らしい……なんという、好手でしょう…………!

天童城
けれど…………まだ大丈夫……大丈夫です、とも……。

天童城
手はある…………最後の最後まで……受けて、みせる……。

天童城
……怯えることは……ありません……。

天童城
私にとって…………盤は虚空…………。

天童城
駒は…………遍く生命の幼子たち…………。

天童城
……あぁ、ここにはすべてがある……すべて、が輝き、調和している……。

天童城
感動の過多に因る……錯覚などではない……。

天童城
もうすこしで……繋がる……。

天童城
今こそ……私は…………繋が、れ、るぅ……ぅ……ぁ、ぁ……ぁぁ……。

やくも
駄目だにぃ! 天童城のやつ、明らかにおかしいがや!

千狐
そんなこと、言われなくても分かってるわよ!

柳川城
だからこそ、この『将棋の駒』の力で正常に戻すのです!

山形城
今じゃ、殿……天童城へと肉迫し――

鶴ヶ岡城
――将棋駒を掲げてくださいっ!!

殿
…………!

虚空の童に好手あり -結-

天童城を救わんと将棋駒を掲げる殿。
だが、その間に忍び寄っていた巨大兜二体に、
ついに恐れていた挟撃の形を取られてしまう……。

前半
山形城

今じゃ、殿……天童城へと肉迫し――

鶴ヶ岡城
――将棋駒を掲げてくださいっ!!

殿
…………!

天童城
――っ!?

天童城
…………。

天童城
…………。

天童城
ふふ……うふふふふ……。

殿
…………。

殿
…………!?

天童城
…………ええ、そうです……貴方の言う、とおり……、

天童城
……この……流れを……。

天童城
駒の流れを……断ち切れば……血さえ流れましょう……。

天童城
え……?
将棋とは――戦争そのもの……?

天童城
なるほど……そう思うのも……無理からぬ、こと……。

天童城
うふっ……うふふふふ…………あはははははは……。

柳川城
そ、そんな……天童城さんが元に戻らないだなんて……!!

やくも
将棋駒の数が、足りなかったんかや!?

山形城
(ば、馬鹿な……天童城の読みが、外れた……じゃと!?)

山形城
(彼奴の文の内容では、この時点で正気を取り戻す予定じゃった……)

山形城
(やはり、暴走した己が魂の在り様は……、
予想を遙かに超えた危険さを含んでいたというわけか!)

鶴ヶ岡城
天童城さん! お願いです! 兜に与するなんて
おかしいですよ! 正気を取り戻してください!

天童城
ふふふ……しょうき…………わたしは、しょうき……。

天童城
わたしは将棋によって管理され、将棋によって慰められ、
将棋によって正義を成し、将棋によって息をするのです。

天童城
ならば、あなたは……あなたは、何者なのですか……?

やくも
…………。

鶴ヶ岡城
…………だ、だめです山形城さん!!
何だかさっきよりも症状が悪化しちゃってます!

千狐
このままでは、天童城さんが壊れてしまう……。
城娘として二度と再起できなくなってしまいますわ!

天童城
――あは、あははははは……っ!
そう……そこに、いる貴方ですとも…………!

天童城
貴方が……貴方が、此世を夢想したのですね……!

天童城
ようやく……ようやく捉えた……!

天童城
いまこそ…………追い詰めて……みせます……!!

天童城
いま、こそぉ……いまこそぉ……我が、新手をぉ……!!

柳川城
天童城さんが、手を掲げた……?
いったい、何を――!?

山形城
まずい……殿!
盤外から……巨大兜が、来るぞ――!!

片倉小十郎
――フゥゥゥ……天童城よ。
貴方ノ『読み』がマタしても的中しましたネ。

伊達政宗
己が捨て駒とナリ、我等が挟撃を成就させるトハ……。
フフフ……城娘ながら、ナントも面白き策を思いつくモノだ。

鶴ヶ岡城
天童城さんが捨て駒……ですって!?

山形城
……やられた。天童城を正気に戻さんと行動することも、
そして、それに失敗することも、策のうちに含まれていたとは。

伊達政宗
今さら気ヅイタところで、時既に遅し――。

伊達政宗
分かっているハズだ……天童城の内奥は今や壊れ尽くし、
二度と城娘とシテの正気ヲ取り戻すコトはないだろう……。

伊達政宗
ダガ、嘆くコトはない……。

伊達政宗
貴様ラの命運も、此処で尽キルのだからナ。

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
殿……。

柳川城
そう、ですね……!

柳川城
斯様なところで諦めるわけにはいきません!

鶴ヶ岡城
ええ、天童城さんが元に戻らないなんて、
あんな巨大兜なんかに分かるものですか!

山形城
ならば、我ら城娘が持てる
すべての力を以てこの状況を打破するぞ!

山形城
鶴ヶ岡城! 今こそ歌舞の力を最大解放せよ!
ぬしの支援なくば、勝利を掴むことはできぬじゃろう!

鶴ヶ岡城
――お任せくださいっ!!
今こそ、修行の成果をみせつけてやります!

山形城
柳川城! ぬしとわらわでそれぞれに
巨大兜を一体ずつ相手にするのじゃ!

山形城
両者の同時攻撃を許せば、いくら鶴ヶ岡城の力があるとはいえ、
立っていることはできぬ……分かったな!?

柳川城
はい! 巨大兜の各個撃破にて、この窮地を脱しましょう!

殿
…………。

山形城
ああ。後はぬしの采配に全てを委ねる。

鶴ヶ岡城
さぁ、殿! 私たち城娘に御下知を――!!
我らが猛勇にて、一発大逆転とまいりましょう!

後半
山形城

梵天丸、これで終いじゃ――ーっ!!

伊達政宗
――ッ!?

片倉小十郎
おっと――イケマセンね、山形城。
若君をソウ易々とは傷つけさせハしませんヨ!!

山形城
な、に……っ!?

千狐
そんな……山形城さんの一撃が、止められた!?

伊達政宗
デカした、小十郎!
後は……この俺に任セテおけッ!!

千狐
――まずい、あのままでは……っ!
山形城さん! 避けてくださいぃ!!

伊達政宗
もう、遅イッ――天をも喰らう我が剣技、其の身に刻メ!!

山形城
――ぐっ、ぁ……!!

山形城
ハァ……ハァ……く、そぉ…………。

鶴ヶ岡城
山形城さん!
待っててください、いま私の力で傷を癒やし――

兎耳形兜
――ソウハサセルカ!!

鶴ヶ岡城
え――っ!?

兎耳形兜
ゼァァアアッ!!

鶴ヶ岡城
――ぐ、うぅぅっ……そん、な……!
このままじゃ、山形城さんの許へ、たどり、つけない……。

片倉小十郎
フフ……。

片倉小十郎
フハーッハッハッハッハッハッハッハ! 素晴らシイッ! 
何カラ何まで天童城の読み通りデハないですかァッ!!

片倉小十郎
若君! 後は柳川城を残すノミです!
さすレバ貴方様の剣は王将へと届くことでショウ!

伊達政宗
アア……もう、しくじりはセヌ……!
いま此ノ時をもって憎キ殿を討ち取ッテくれようッ!

柳川城
……くっ。

柳川城
(まずい……さすがに、巨大兜二体を相手では、分が悪すぎる……)

殿
…………。

天童城
あぁ、ぁ…………そう、です……。
……もうすこし、で……もう、すこし……で……。

千狐
天童城さん……。

千狐
いい加減に――――してくださいっ!!

怒気を籠めた一喝と共に、
千狐の小さな手が天童城の頬を張った。

天童城
――っ!?

天童城
なぜ……? な、ぜ……頬に、痛み……が……?

千狐
しっかりしなさい、天童の名を持つ城娘!
いつまで遊んでいるおつもりですか!?

天童城
…………あそ、び……?

千狐
だって、そうでしょう? 貴方は……、

千狐
貴方は、将棋を指しているんですもの!

千狐
兜の暴力によって傷を負ったこの地を盤とし――

千狐
――その上で戦う者たちを単なる駒としか見ていない。

千狐
なら、次は誰を動かすのですか……?

千狐
次は誰を、切り捨てるのですか……?

天童城
……それ、は………………。

千狐
我々は遊戯の駒なんかじゃない……!

千狐
貴方にとっての他愛ない一手が……、

千狐
……必死に生きようと足掻いている者たちの命を奪う。

千狐
それを知っても尚、新たな一手を打つというのなら、

千狐
貴方は城娘でも……ましてや神でもない。

千狐
皆を救える力を持ちながら、それでも奪うことを選ぶのなら、

千狐
貴方は外道よ!

天童城
…………。

天童城
……ふふ。ありがとう……ございます……。

天童城
ええ……貴方の言う通りです……神娘さま……。

天童城
だからこそ……いまより、私は……。

天童城
……救うための一手を選ぶのです。

千狐
……え?

天童城
大丈夫……全ては、私の読み通り……。

天童城
貴方の平手打ちも、叱責も……。

天童城
そして、それによって私が正気を取り戻すことも。

天童城
全て……正気を失う前より、読んでおりました。

天童城
故に、私は予め文を送っていたのです……!
山形城さんと、そして、もうひとりの城娘に!!

千狐
天童城さん……その口振りは、もしかして――。

天童城
次こそが、私の最後の一手……。

天童城
――さぁ、盤外より指したるは起死回生の飛車!
今より天童が攻めの一手、とくと照覧あれっ!!

???
まったく、指示が遅すぎるのよ、天童城ちゃん。
すっかり待ちくたびれちゃったじゃない!

鶴ヶ岡城
――あ、貴方は……!?

???
ふっふっふ~♪ 待たせたわね!
さぁ、天童城ちゃんの手紙に書いてあったとおり後詰といくわよ、みんな!


承知――!
 承知――!
   承知――!

伊達政宗
馬鹿ナ……!
あ、アレは……前田金沢城!?

片倉小十郎
背後カラの援軍……だとッ!?
そ、ソンナ……こんなコト、有り得るワケが……!!

柳川城
いったい……何が、起きているのですか……?
どうして、ここに至って援軍が……!

山形城
……そう、か。

山形城
(天童城め……まったく、ぬしというやつは!
わらわに送った文には、偽の情報を載せていたというわけか)

山形城
柳川城! 今は理由などはどうでもいい!
前田金沢城の援軍により
今度は我等が挟撃する形となったのじゃ!

山形城
今こそ最後の力を振り絞り、巨大兜どもをここで討ち果たすのじゃ!

柳川城
は、はい!

殿
…………!

伊達政宗
ナゼ、だ……どうして……コウなるッ!!
俺たちガ……圧倒的に優勢だったハズ、なのに……!

片倉小十郎
若君! 呆然としている場合ではアリませヌッ!
此処は私が引き受ける故、どうかお逃げクダサイ!!

伊達政宗
し、しかシ……ソレデハお前が……ッ!

片倉小十郎
いいカラお急ぎください! 大丈夫……この器ヲ失おうと、
時ガ経テバ、再び貴方様の許へ馳せ参じるコトが出来ましょう!

伊達政宗
クッ……いいか、必ずだぞ、小十郎!
必ず、また……俺の許へ来イ……これは命令ダ!!

片倉小十郎
……エエ。幾度朽ちようとも、必ずや貴方様の許ヘ……!!

前田金沢城
――おらぁあああああっ!
よそ見なんかしてる暇はないぞ!!

片倉小十郎
グ、ぁァッ――!!
……さ、サァ……若君! 今のうちにぃッ!!

伊達政宗
ゆるせ……許セ、小十郎!!

鶴ヶ岡城
――っ!? と、殿! 
巨大兜が一体だけ逃げていっちゃいますよ!?

天童城
気にすることはありません!
ヤツの逃亡も、我が読みのうちに入っています!

天童城
狙うは片倉小十郎の名を冠する巨大兜!
お願いします! 皆さんの力を一点に集中させてください!

山形城
そういうことなら……いくぞ、柳川城!

柳川城
はい! 残る力、すべてをこの一撃に!!

片倉小十郎
グギッ、ァァァァアアアアアアア――!!

片倉小十郎
……が、ハァッ……ア、ぅぅ…………。

片倉小十郎
フ、フゥゥゥ……ヤレ、ヤレ……ですね……。

片倉小十郎
ですが、マァ……いいでしょう……。

片倉小十郎
時ガ経てば……ふた、た………ビ……………。

片倉小十郎
…………………………………………。

殿
…………。

柳川城
何とか、仕留めることができたようですね……。

山形城
とはいえ、あくまで一時的にじゃがな。
武神化も果たしておらぬ巨大兜ゆえ、根源的な討伐とはいえぬ。

山形城
――って、それよりも天童城! 

天童城
は、はい……!

山形城
先ほどの言動ではっきりしたのじゃ! ぬしめ……!
ここまでの流れも、わらわたちの窮地も全て読んでおったなぁ!!

天童城
え、えっとぉ……あのぉ……。

天童城
はい……その通りにございます……。

柳川城
全て、読んでいた……?
あの……どういうことなのでしょうか?

山形城
実はな――。

そこで漸く、山形城は天童城から送られてきた手紙の中に
殿たちには見せていなかった内容があったことを伝えた――。

やくも
えええええええ!? ってことは、今回うちらの
身に起こることはぜーんぶ分かってたってことがや!?

天童城
え、えっと……あくまで諸々の要素を踏まえての予測ですので、
絶対にこうなる、という確証はほとんどありませんでしたが……。

山形城
嘘を言うでない! わらわだけでなく、
後詰めの援軍として前田金沢城にまで文を出していたのなら、

山形城
最後の最後の状況まで見通していたということではないか!

前田金沢城
まぁまぁ、みーんな無事だったんだから、もういいじゃん!

天童城
いえ……今回のことは、全て私に非があります……。

天童城
ですが何も悪意からくる策ではなく、出羽の窮状を
慮っての行動だということをご理解いただきたい……。

天童城
東北の地の城娘らにとって、伊達政宗の名を冠する巨大兜と
片倉小十郎の名を冠する巨大兜が合流したことは、
かねてより危険視されていた事柄でして……。

天童城
何とか分断することができぬかと悩んでいた折、
此度の騒動を利用することで、
巨大兜を挟撃できるのでは――と思うに至ったのです。

前田金沢城
……まぁ、あの二人を真正面から相手取る
よりかは油断させて退治する方が楽だもんね。

天童城
だからといって、殿一行を利用したことに変わりはありません。

天童城
此度の非礼を詫びるためにも……
また、受けた恩義を返すためにも、

天童城
貴方様の家来となることで、僅かながらでも
力になれればと……そう、存じております……。

殿
……。

天童城
…………。

殿
…………。

殿
…………!

天童城
あ、ありがとうございます、殿!
このご恩は、一生忘れません。

山形城
何がありがとうございます、じゃ!

山形城
大方、この流れすらも読んでいたのじゃろう!?

天童城
そ、そんなこと言わないでください、山形城さん。

天童城
読んでいたとしても、その結果がどうなるかは
その時が来るまで本当に私にも分からないのです。

天童城
いまだって、こんなにも胸がドキドキしてるんですから。

山形城
ふん……然様にバカでかい胸では心音なぞ確認しようがないわ!
……まったく、将棋ばかり指していないで少しは運動をせぬか!

天童城
――なっ!?
わ、私が太ってるって言いたいのですか!?

山形城
そう聞こえたか? ふふ、どうやら自覚はあるようじゃな。

天童城
もぉ~! 山形城さん! いくらなんでもひどいですよぉ!
私だって好きで大きくなったわけじゃないんですからねー!

千狐
……ま、まぁまぁ。天童城さんも山形城さんも落ち着いてください。

千狐
激戦の後で高揚しているのは分かりますが、
今は怪我の手当てをしないと……。

山形城
ふむ……まさに、千狐の言うとおりじゃ!
どっかの誰かさんのせいで、わらわは大苦戦だったのじゃからな!

天童城
うぅぅ……それに関しては、本当に申し訳ありません……。

千狐
では、所領に帰還し、急ぎ傷の手当てをしましょう。

前田金沢城
あれ? これってもしかして、私も行っちゃって良い感じ?

柳川城
はい! 前田金沢城さんは、今日の勝利の立役者ですからね!

鶴ヶ岡城
ん~。何だか美味しいところをひとりじめされちゃいましたねぇ……。

山形城
まぁ、仕方ないことじゃな……。
彼奴の武は一騎当千。相応の報いということじゃ。

千狐
それでは、殿。我等の所領へと帰還しましょう。

千狐
何だかんだで……此度の遠征においては殿も、
かなりの手傷を負ってしまいましたからね……。

千狐
あとで、しっかりと千狐に傷の手当てをさせてくださいね?

殿
…………。

殿
…………!

虚空の童に好手あり -絶弐-

天童城を救い出すことに成功した殿一行は、
所領内において束の間の平穏を享受していた。
そんな折、とある城娘の対局が行われるのだが……。

前半
――出羽国における巨大兜との戦から数日後。

この日、所領内の一室では城娘らによる対局が行われていた。

杵築城
…………。(ぱち)

天童城
……なるほど。
面白い手ですね、杵築城さん。

天童城
では……これで、どうでしょうか?

杵築城
――あっ!?

杵築城
む……こ、これは……!

杵築城
うぅ、負けました……。
本当にお強いですね、天童城さん。

天童城
いえいえ、私などまだまだですよ。

鶴ヶ岡城
……とか言いつつ、杵築城さんに対して、
もう十七連勝もしちゃってますけど……。

山形城
のぅ……少しは手を抜いてやったらどうなのじゃ?

天童城
何を仰るのですか、山形城さん。

天童城
真剣勝負で、との申し出を受けたのですから、
手抜きなどすれば、それこそ失礼にあたります。

鶴ヶ岡城
そ、そういうものなのですか……?

杵築城
はい! 本気の天童城さんだからこそ、対局する価値があるのです!

杵築城
とはいえ、まさかここまで実力に差があるとは思いませんでした……。

柳川城
杵築城さんは所領内において屈指の実力者ですからね。
……見ている私たちも正直かなり驚いてます。

鶴ヶ岡城
となるとぉ……他に天童城さんに太刀打ちできそうな方は――

前田金沢城
――ん? なんで私のこと見つめてるの?
……もしかして、恋しちゃった?

鶴ヶ岡城
ち、違いますって!

鶴ヶ岡城
聞けばどうやら、マエカナさんは将棋に
関してはかなりの腕前をお持ちだとか?

前田金沢城
ああ、うーん。まぁ、確かに私はかなーり強いけどぉ。

前田金沢城
今日のところは遠慮しておくよ。

鶴ヶ岡城
ええ!? な、何故ですか?

前田金沢城
だって、天童城ちゃんと将棋指すと、毎度毎度、
お互い無事ですまないくらい熱くなっちゃうからね。

前田金沢城
所領の一室がぶっ壊れちゃったら、
みんなも困るでしょ……?

鶴ヶ岡城
(や、山形城さん……あの、これって将棋の話ですよね?)

山形城
(あまり詮索するでない……!
彼奴らほどの将棋馬鹿となると我らの常識は通じぬのじゃ!)

鶴ヶ岡城
(なるほど……ならば口をつぐむが吉ですね)

天童城
……ん? 何か言いましたか、鶴ヶ岡城さん?

鶴ヶ岡城
い、いえ何も!

天童城
……?

天童城
まぁ、いいでしょう。では、杵築城さんとの対局も
終わったことですし、今日のところはこれにてお開き――

杵築城
――待ってください、天童城さん!

天童城
ど、どうしたのですか?
急に声を荒げて……?

杵築城
実は……。

杵築城
天童城さんにも匹敵するほどの指し手が、まだこの室内にいるのです!

天童城
――え!?

鶴ヶ岡城
それ、本当ですか!?

前田金沢城
もしかしてぇ、ここにきて実は柳川城ちゃんのことだったりしてぇ?

柳川城
い、いえ……私は嗜む程度ですので……。

山形城
となると……。

前田金沢城
ひょっとして――。

杵築城
はい! その指し手とは――。

殿
…………。

杵築城
そうです! 我らが主――殿にございます!

殿
…………。

殿
…………?

杵築城
もう、惚けないでください、お殿さま!

杵築城
前に何度か私と将棋を指した時に、
物凄い強さを見せてくれたじゃないですか!

千狐
杵築城さん、い、いつのまに殿と将棋を――!?

柳川城
(……いいなぁ)

前田金沢城
って、注目すべきところはそこじゃないでしょ!
杵築城さんを圧倒するということは……。

鶴ヶ岡城
はい! 天童城さんとも
かなりいい勝負ができる……ってことですよね!

山形城
これは面白くなりそうじゃのぉ……ククク。
天童城が負かされるところが見られるかもしれぬというわけじゃ。

天童城
分かりました。では、ご迷惑でなければ、
殿、一局お付き合いいただけますか?

殿
…………。

殿
…………!

山形城
決まりじゃな。

前田金沢城
それじゃあ、殿。ほらほら。こっちに座ってぇ、
ちゃちゃっと戦う準備しちゃおー!

殿
…………!

天童城
――っ!?

天童城
(なに、これ……駒を並べる速度が、尋常ではない……!)

天童城
(それに、この流麗な手付きは…………)

天童城
(なるほど……杵築城さんが推挙するのも頷けます)

天童城
(ならば……私も――)

やくも
――だにっ!? 急に天童城の身体が、光りだしたがや!?

天童城
……ふぅ。殿ほどの御方を相手にするなら、
この姿でなくては失礼かと思いましてね。

杵築城
そんな……変身までするとは……っ!!

山形城
ククク……天童城め、殿を強者と認めたようじゃな。

鶴ヶ岡城
どうやらそのようですね……。
明らかに場の空気が変わりましたもの。

千狐
な、何でしょう……この緊張感は……?

柳川城
まるで、戦場に立っているような心持ちがします……。

前田金沢城
ふふ……いいねぇいいねぇ~。

前田金沢城
こんな対局はなかなかお目にかかれないぞ!

殿
…………。

天童城
…………。

杵築城
……どうやら、両者とも準備ができたようですね。

殿
…………!

天童城
それでは、殿……いざ、尋常に勝負です!

後半
天童城

――さぁ、殿!
私の果敢なる攻め……受けきれますか!?

殿
…………。(ぱち)

天童城
――なっ!?

天童城
ここに来て、このような奇手を選ぶとは――!?

天童城
ならば、これでどうですか!!

殿
…………。(ぱち)

天童城
……そ、そんな……!

天童城
これすらも、受けきるとは――!!

殿
…………。

殿
…………!(ぱち)

天童城
くっ……わ、私の……負けです…………。

前田金沢城
おぉぉ!! 天童城ちゃんが負けを認めたぞ!

山形城
それに天童城のやつ、よくわからんが意味もなく大破しとるぞ!

天童城
す、すみません……あまりにも、殿の指し手がすごすぎて……。

天童城
自分でも驚いています……こんなこと……は、初めてです……。

山形城
いいからさっさと変身を解かぬか。
熱くなりすぎじゃ、馬鹿者!

天童城
もう、そんなに怒らなくたっていいじゃないですかぁ……。

天童城
とはいえ、さすがですね、殿。

天童城
まさか、これほどの将棋を指せる方だとは思いませんでした。

天童城
これも、日頃の戦にて培われた叡智が成せる技なのでしょうね。

殿
…………。

柳川城
お見事です、殿。
……私、感服いたしました。

柳川城
ですから……あ、あの……その……。

柳川城
今度、私にも……将棋をご指南いただけますか?

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
は、はい! ありがとうございます!

柳川城
(やった……これで、殿と二人きりになれる機会が――)

やくも
なら、うちも教えてほしいだにぃ~!
殿さんと一緒に将棋やりたいがやぁ!

柳川城
……え?

千狐
でしたら千狐も!

柳川城
あ、ぅ……。

殿
…………。

殿
…………!!

柳川城
(……と、殿ぉ…………)

前田金沢城
あれ? どうしたの柳川城ちゃん?
何だか元気ないみたいだけど……?

柳川城
い、いえ……なんでも、ないです……。

前田金沢城
……んぅ?
へんな柳川城ちゃん。

山形城
それにしても、何だかやたら腹が減ったのじゃ……。
緊迫した対局は観戦してる側も疲弊するのぉ。

天童城
ならば今日は、日頃のご恩返しもかねて、
私が夕餉をお作りいたしましょうか?

山形城
おっ!? ぬしの手料理ということは、もしや……。

天童城
ええ。もちろん、手打ち蕎麦にございます!

山形城
天童名物の蕎麦かぁ……ふふ、これは楽しみなのじゃ♪

鶴ヶ岡城
それでは、私もお手伝いしますよ、天童城さん!

天童城
ありがとうございます、鶴ヶ岡城さん。

天童城
それでは、殿。腕によりをかけて作りますので、
今日の夕餉、楽しみにしていてくださいね?

殿
…………。

殿
…………!

――数刻後・所領。

山形城
ふぅ、天童城の手打ち蕎麦……まっこと美味だったのじゃ♪

天童城
まさか山形城さんがあんなにもお食べになるとは思いませんでした。
……こんなことなら、もう少し多めに作ればよかったですね。

山形城
なんじゃ、わらわだけが暴食したような言い方をしよって。
量的には前田金沢城の方がすごかったじゃろうが。

前田金沢城
まぁまぁ。そんな細かいことはどーでもいいじゃん。どちらにせよ、
天童城ちゃんの蕎麦が美味しかったことに変わりはないんだからさ。

天童城
ふふ。高名なる城娘ふたりから斯様に
賞されるとは……身に余る光栄ですね。

天童城
それにしても、あのような惨事を経てもなお、こうして緩やかな
時を過ごせているとは……本当に、殿には感謝してもしたりません。

山形城
白々しいことを言いよって……おおかた
今日までのことも全てぬしの読み通りだったのじゃろう?

天童城
で、ですから……結果としてそうなった、というだけで……。
私だって今回の件に関しては一か八かだったのですから。

山形城
ふん。わらわすらも謀ったのじゃ……。
いかに美味い蕎麦を食わせてもらおうが、
当分はぬしの言は簡単には信用せぬぞ。

前田金沢城
あらあら。あの山形城ちゃんともあろう御方が、
こんなにもヘソ曲げちゃうなんてね。

前田金沢城
って、それよりもさ……天童城ちゃん。

天童城
はい、何でしょうか?

前田金沢城
うーん。こういうのを聞くのは野暮なのかもしれないけどさ、

前田金沢城
どうして、今日……わざと殿に負けたの?

天童城
……。

天童城
……やはり、気づいてましたか。

前田金沢城
まぁ、あなたとは何度か対局してるからね。
それぐらいのことは分かって当然でしょう?

山形城
ほれみろ。言ったそばからまたわらわを欺いておるではないか。

天童城
うぅ……山形城さん、言い方に棘がありすぎる気がぁ……。

天童城
それに、わざと負けた……というのは少し語弊があります。

前田金沢城
というと?

天童城
負かされた……いや、ここは負けるべきだと、
……そう思わせるような指し手だったのです。

山形城
……よく分からぬな。
つまり何が言いたいのじゃ?

天童城
大局観……という言葉をご存知ですか?

山形城
まぁ、一般的な知識としてはな。

山形城
物事全体の動きに対する見方……あるいは、
ある局面における優劣の判断。それに形勢の見方。

山形城
字義だけで捉えればそんなところじゃろうか?

天童城
ええ。その通りです。

天童城
棋士同士の戦というものは、真の意味においての
勝敗がつくのに、数十年の時を要する場合があります。

山形城
数十年――!?
それはまことか?

前田金沢城
そうだねぇ……本当にどっちが優れた棋士かを決めるには、何度も対局を重ねて、
その間に生み出した手と、成長度合とを比べなきゃいけない、ってこともあるから。

天童城
もちろん、殿は棋士ではなく武士であることは分かっていますが、

天童城
それでも、人生を一局の将棋として見た場合、
この先も続くであろう殿と私の関係においては、
……あそこで負けるべきだと、そう思ったのです。

山形城
然様なるしたたかさは、主の側からすれば
あまり好ましいものではない気もするがのぉ。

天童城
そう、かもしれません……。

天童城
ですが、多かれ少なかれ、他の皆様も、こういった処世の術は
お使いになられているはず……何も私だけの聡明さではありません。

前田金沢城
ま、そう言われちゃ、外野はなんも言えないけどね。

前田金沢城
でもまぁ、なるほど……大局観、か。

前田金沢城
……ん? あれ?

前田金沢城
ねぇ、天童城ちゃん……私、ちょっと気づいちゃったんだけどさ、

前田金沢城
今回のあなたの一連の動きってのは……、
その大局観ってもんから生じた奇行だったわけ?

天童城
……と、言いますと?

前田金沢城
だってふつーに考えたら、今回の一件は
色々とおかしいことが多すぎるでしょ?

前田金沢城
そもそも、何で出羽に巨大兜が攻め込むより前に
私たちに手紙を送って、援軍を求めなかったのさ?

前田金沢城
貴方の『読み』の力があれば、
決して不可能なことじゃなかったわけでしょ?

天童城
……たしかに、それはそうなのですが…………。

山形城
となると、考えられるとすれば――。

山形城
すべては……この先を見越した行動、というわけか?

天童城
……その通りです。

天童城
此度の私の本当の目的は――兜との接触によって異常な状態に陥ることでした。

天童城
もちろん、天童の人々を守ることは大前提ですから、
前もって安全な場所へと避難はさせていましたが……。

天童城
その段階に至って、私は……、
此世の定跡となっている手を使うべきなのか、
疑問に思ってしまったのです。

天童城
窮地に陥った城娘は殿に助けを請い……
……而して助けられ、やがては仲間となる。

天童城
私も、そうすべきであることは分かっていました。

天童城
ですが、停滞しかかる此世においては、
それが最善手かどうか、私は悩みました。

天童城
悩む……というのは、
他にも取れる手がある者が陥る状態です。

天童城
故に、私には他の城娘が真似のできないような
好手が手元にあった、ということ……。

前田金沢城
好手……?

天童城
……はい。

天童城
天童城として生じた私という存在が成せるとっておきの好手――。

天童城
それは、将棋を介して、此世の神と繋がることです。

山形城
……。

山形城
……はぁ?

前田金沢城
ねぇ……頭だいじょうぶ、天童城ちゃん?
やっぱりまだ、おかしいんじゃ……?

天童城
だ、大丈夫ですから、額に手をあてないでください!

天童城
前田金沢城さん……将棋を指すだけでなく、
囲碁すらも打つ貴方ならば感覚的に分かるはずです。

天童城
盤上遊戯において……或る一定の段階にまで技量が到達すると、
指し手の中には、駒にそれぞれの心象を見ることがあるということを。

天童城
そして――勝負師特有の陶酔状態へと至り、
喩えようのない万能感を覚えるまでになる……。

天童城
それが、将棋と深い関わりを持つ私のような業を抱えた城娘ならば、
尋常ならざる程度で、然様なる感覚を体感することができるのです。

前田金沢城
……うーん。ちょっと天童城ちゃんの言い方は
難解だけど、言いたいことは何となく分かるよ。

前田金沢城
要はアレでしょ? 神懸かった状態になる時があるってことだよね?

前田金沢城
盤上にあっては時々、全てを支配できているような一局があるからね。
ああいう時は、確かに自分が神様になったような心持ちがするもんさ。

天童城
ええ。だからこそ、私は己が業と能力を
極限状態の中で最大化させることで、

天童城
歪になった此世の原因を突き止めようとしたのです……。

山形城
ということは……まさか、ぬしは…………。

山形城
神授の一手を放つと称して……あの時、
本当に神との接触を成したとでもいうのか?

天童城
…………。

山形城
今まで見た中で最も雄弁なる沈黙……じゃな。

山形城
それで、此世の神とやらは、どんなヤツじゃった?

天童城
正直なところ、あまり鮮明には覚えていないのですが…………。

天童城
兜たちからは…………『あの御方』……と、
そう呼ばれていることだけは判然としています。

山形城
あの御方――じゃと!?

前田金沢城
な、なに、その反応……? 
もしかして山形城ちゃん、心当たりがあるの?

山形城
うむ……これまでに戦ってきた巨大兜のなかに、
そういった発言をするものたちがいたのじゃ……。

山形城
いや……だからといって、奴らの背後に
そのような強大な存在がいるなどとは……。

天童城
……そう、ですね。

天童城
現段階で断定することは危険に過ぎます……。
口にすることすら不吉な内容であることは間違いありませんからね。

山形城
うむ……もしかしたらぬしの裡における妄想に終わる話かもしれぬゆえ、
このままの内容を他言すれば、十中八九……正気を疑われよう……。

天童城
はい……。それを理解していたからこそ、我が真意だけは
お二人への手紙にも書くことはできなかったのです……。

山形城
懸命な判断じゃな……。然様なる言が書かれていれば、
ぬしが兜に操られているのではないかと疑ってたじゃろう。

前田金沢城
…………んー。

前田金沢城
けど、まぁ。天童城ちゃんが、誰にも報せずに
そんな傾いたことをしてたなんてのは驚きだよ。

前田金沢城
だってそうでしょ? 平時においては、のほほんとした様子で、
子供たちに将棋を教える優しげなお姉ちゃん、って印象だし。

天童城
前田金沢城さんが、そう仰るのも無理はありません……。

天童城
…………此度の身勝手な行動によって、
皆さんからの誹りは覚悟のうえ……です。

前田金沢城
なぁに暗いこと言ってるのさ?
私は傾いてなんぼの城娘っしょ?

前田金沢城
ぶっ飛んだ思考も、突飛な作戦も大好物――ってね。

天童城
で、では……前田金沢城さんは、
まだ私を友と認めてくださるのですか?

前田金沢城
あったりまえでしょ? 

前田金沢城
というより、今回の一件で、逆に私は、
ますます貴方のことが好きになっちゃったんだから♪

山形城
ふん……さすがは前田金沢城といったところか。
常人には理解できぬ感性を備えておるのぉ。

山形城
じゃが対するわらわからすれば、天童城――。
ぬしという城娘がよく分からなくなってきた、というのが本音じゃ。

天童城
……それは私自身も同じ思いです。

天童城
また、同じ過去をやり直すことがあるのならば……、
私が斯様なる行動に出ることは絶対に無いと言い切れます。

天童城
もしかしたら此度の奇行は……。

天童城
私を駒としてしか見ていない何某かの作為なのかも……。

天童城
……そんな、有り得ない考えすら浮かんでしまうのです。

山形城
ふっ。運命論、宿命説を採るのは構わぬが、
あまり度が過ぎると奇人変人のそれじゃ。

山形城
今回のことは、我らの裡にのみしまっておく。
殿には刻が来るまで秘密にしておいた方がいいじゃろう。

天童城
……わかりました。

天童城
ですが、此世の状況を見るに……いずれは
伝えねばならぬ事柄であることは明らかかと……。

山形城
……じゃな。

山形城
此世の理が乱れ始めていることは、
一部の城娘らも気づいているようじゃし……。

山形城
そろそろわらわも、この件に関しては、
腰を上げねばならぬ、といったところかのぉ?

前田金沢城
おっ、ついに羽州の狐さまが動いちゃう感じ……?

前田金沢城
なら、私もちょっとばかし気合い入れてみますかね!
……よい、しょっと!

天童城
……え? ま、前田金沢城さん!?

山形城
のわ――っ!?
急にわらわたちの手をとって、何をするのじゃ!?

前田金沢城
いいからいいから♪ 今日という日は何かの節目!
私たちが集えたのもある種の奇跡ってことでしょ?

前田金沢城
だから、こうやって……こうして……はいっ、どうかな?

山形城
むっ……なぜ、わらわたちが手を重ねなければならぬ?

前田金沢城
えへへ♪ これなら決起集会って感じがするでしょ?

天童城
で、では……。

天童城
えいえいおー、などと言ってみますか?

山形城
やめぬか、恥ずかしい!

山形城
……それに、寝ている者たちの迷惑じゃろう?

前田金沢城
じゃあ、小声でいいからさ……。

前田金沢城
せぇ~の――。

山形城・前田金沢城・天童城
えいえいおー。

と、折り重なった三者の声が、暗き天へと昇る――。

其れを追いかけるようにして天童の城娘は顔を上げ、

密やかに、彼女だけの心象を虚空へと映したのだった。



特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

[裏]真田丸

裏]真田丸(チャリン……チャリン……チャリン……)……貴殿か。今日は、話をしたい気分じゃない。足を運んでくれたのに、すまない。一文……二文……三文……四文……五文……六文……銭を数えていなければ、一瞬...

[裏]淀城

]淀城あ~……。あ゛ぁ~……きもちわる。夢見は悪いし、頭はズキズキ痛むし……。ほんっとに最悪な日よ、今日は。誰でも良いから……。どつき回して、ぐちゃぐちゃにしたい気分。…………。……で、なに?そこに突...

[裏]桜尾城

]桜尾城殿……どうかしましたか?……ふふ、今回は間違えませんでしたよ。あなたの安らぐ顔もまた、私の喜びなのですから。私は今……海を見ていました。このどこまでも凪ゆく、厳島の海を……。厳島周辺は神域とい...

[裏]川越城

]川越城お客様かしら……どうぞ。貴方は、確か……ちょっと待ってね……。うん……たぶん、『殿』よね……?やっぱり……人違いでなくて、良かったわ。ふふ。今丁度、過去の私が遺した日記を読み返していたのよ……...

[裏]小田原城

]小田原城…………。……あら、殿。ようこそいらっしゃいました。ああ……いえ、ご心配なく。少し考え事をしていただけですから。今、ちょうど……。昔の出来事に思いを馳せていました。今の私を形作る、原点とも呼...

[裏]小牧山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 所持特技1.4 [改壱]所持特技1.5 計略1.6 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3...

[裏]室町第

裏]室町第殿……ふふふ。どうせまた来るって、そんな気はしていたわ。私がどんなに忠告をしても、貴方は自分の信念を曲げない。本当に……つくづく、強い人ね、殿は。私のせいで、どれほど悪いことが起こっても殿は...

[裏]大宰府

]大宰府おお、殿か。よく来てくれたな。今な、手紙を整理しておったのじゃ。最近は毎日、誰かしらから届くのでな……。この手紙は……、『大宰府ちゃん親衛隊』を自称する者たちからじゃな。大野城、鞠智城、基肄城...

[裏]坂本城

]坂本城大殿様……また来たのね。ふふ……別に、追い返したりしないわよ。というより……私も今ね、大殿様と話せたら、って考えてたところだったの。だから……少しの間、私の話し相手になってくれるかしら?……ふ...

[裏]佐和山城

]佐和山城……また来たのね、あなた。足を運んでくれたところ悪いけど、面白いものは何も見れないわよ?相変わらず、大坂城様のらいぶに向けて、準備をしているだけだもの。……ん、なに?『なぜ、そこまで大坂城様...

[裏]伊勢長島城

]伊勢長島城も~、なんなのあいつら!信じらんない!寄ってたかってライブの邪魔をして!いったいどこから情報が漏れたの?もしかして、殿じゃないでしょうね……!?……そんなわけないか。あたしは、あんたにな~...

[花嫁衣装]鹿児島城

目次1 性能1.1 特技1.2 計略1.3 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< ロケト城 - [花嫁衣装]シャンティイ城 >[花嫁衣...

[花嫁衣装]鮫ヶ尾城

]鮫ヶ尾城はあ……春日山城サマの祝言、想像するだけでドキドキしてしまうっす!ね、ちびサマ~♪……ん?どうしたっすか、トノ?えっ、『主城のことより自分はどうなのか』っすか……?うぐ……これは痛いことを言...

[花嫁衣装]許昌城

]許昌城うーん……。ううーん……。……おや、殿か?すまない、考え事をしていて来訪に気づいていなかった。この間、殿と話してから、結婚に関して城娘達と話をしたのだ。繁栄という目的へ至る手段としての婚姻……...

[花嫁衣装]萩城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]チャンドラ・マハル - [花嫁衣装]新田...

[花嫁衣装]秋田城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< 延岡城 - [花嫁衣装]ロンドン塔 >[花嫁衣装]秋...

[花嫁衣装]春日山城

]春日山城うーん……。……うーん? ……うん?……殿?すみません! お越しいただいていたのに、今の今まで気づかずにいて!実は先日、坂戸城と謙信公の昔話をしてたのですが、その際、跡継ぎの話題が出たのです...

[花嫁衣装]新田金山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]萩城 - [花嫁衣装]アイリーン・ドナン...