ストーリーテキスト/華燭の典と偽りの花嫁

ページ名:ストーリーテキスト/華燭の典と偽りの花嫁

目次

華燭の典と偽りの花嫁[]

華燭の典と偽りの花嫁 -序-

平穏な時が流れる所領に思いがけなく異国の
城娘が姿を現す。そして、彼女の持ち込んだ
とある品が、思わぬ事態を招くことに……。

前半
一目惚れではなかった。

劇的な過程を経て、恋に落ちたのでは、断じてない。

一歩一歩ゆっくりと、深く、暗闇の奥底へと歩くように。

執着という粘ついた感情の渦へと彼は填まっていっただけだ。

ああ。愚かで幼稚なヘンリー。

自分では甘く、美しい恋をしていたつもりでも、

その行動すべてが、私を苛み続けた。

そう。

私に逃げ場など、ありはしなかった。

彼はどこまでも追いかけてくる。

だって……。

彼は私を愛してしまったから。

……くだらない。

ひとりよがりな王の夢に、私の人生が壊されていくなんて、

どうしたって、許すことはできないわ。

ノーサンバランド伯家との縁組も、
フランスへ発つことも、きっと邪魔されるに決まっている。

ならば……。

ならば私は、自分が生きるために、彼を――――。

――所領。

ひとりの神娘が、領内にある離家の屋根を
じっと見つめ、その柳眉をひそめていた。

やくも
むぅ……。

やくも
あげに鴉がえっぱいとまってるなんて、珍しいだに。

やくも
今日は出羽の城娘さんが殿に会いに来るってのに、
これじゃあ、格好がつかんがや……。

やくも
それとも、もしかして……。
なにか悪いことが起きる前触れなんじゃ――、

???
どすこーい☆

やくも
――だにぃっ!?

やくも
こらぁっ、いきなり
浴びせ倒しをしかけるなんて危ないがや~っ!!

やくも
……って、あれ?

???
ふふ、お久しぶりですね、やくもさん。

やくも
おおっ!!

やくも
…………あんた、誰がや!?

???
誰って……。

???
もう、冗談きついですよぉ、オロチさ~ん。

やくも
誰がオロチがや~!
うちの名前はやくもだにぃ!

やくも
……って、その名前間違えに、
えっぱいの葡萄は……もしや。

やくも
あんたシノン城がや?

シノン城
わぁ、ようやく思い出してくれたのですね!

シノン城
そうです、私こそがロワール最古の城娘――シノン城ですッ!

シノン城
どやぁ♪

やくも
はぇ~。
ここんところ故郷に戻ってたって聞いてたけど、

やくも
今日はどうしてまた、そげにめかし込んで所領にきたがや?

シノン城
えへへ、実は皆さんにお見せしたいものがありまして、
遠路はるばるどんぶらこー、というわけなのです♪

やくも
見せたいもの……?

シノン城
ええ。その品とは――、

――所領・屋内。

殿
…………!

シノン城
ふふ、その様子ですと、
どうやらお気に召したようですねぇ♪

千狐
はい。こんなにも見事な白布は、
滅多にお目にかかれませんもの。

柳川城
これほどのものとなると、さぞ値が張ったかと思いますが、

柳川城
いったい、どこで手に入れたのでしょうか?

シノン城
ふっふーん。実はですね、ヤガナワ城さん――、

柳川城
――惜しいッ!!

シノン城
え……?

やくも
シノン城……。
やがなわ、じゃなくて柳川城だに。

シノン城
おっとっと、久方ぶりのうっかり手裏剣ですねぇ♪

シノン城
そうですそうです、ヤナガワ城さん――でしたね!

シノン城
どうか後生ですからゆるしてつかーさい! たのもーっ♪

柳川城
(な、なんだか以前にも増して、日の本の言葉が雑になってるような……)

シノン城
とと、なんだか話が逸れちゃいましたね。

シノン城
えっとですね、実はこの白布は、
同郷のアンボワーズちゃんからもらったものなのです!

やくも
アンボワーズ……って、
たしか、シノン城のお姉ちゃん的城娘だったがや?

シノン城
ぶっぶーですよ、ヤシロさん!

シノン城
お姉ちゃん的城娘は私の方ですー。

やくも
お姉ちゃん的城娘だかなんだか知らんけど、
うちを神社みたいに言わんでほしいだに……。

千狐
まぁまぁ……。

千狐
それにしても、斯様に上等な白布をお譲りするなんて、
アンボワーズ城さんは、さぞ太っ腹な城娘なのですね。

シノン城
ん?

シノン城
いえいえ、アンボワーズちゃんはそこまで太ってないですよぉ?

柳川城
あ、いや……太っ腹とはそういう意味ではなくてですね……。

シノン城
んー?

シノン城
まあ、とにもかくにもですね、これはアンボワーズちゃんが
友人のために衣装を作った時の余りでして。

シノン城
ですから、タダでいただいたものなのです。

やくも
ほへぇ。
こげな布で作る服ってのは、さぞかし豪勢なもんなんやろうねぇ。

シノン城
ですねぇ~。
なにせ花嫁衣装でしたからぁ。

殿
――ッ!?

柳川城
花嫁……、

千狐
……衣装!?

シノン城
ウィッ☆

シノン城
なので、せっかく良い材料が手に入ったわけですし、
同郷のアンボワーズちゃんに倣ってぇ――、

シノン城
この白布を使い、日頃お世話になってる
日の本の城娘さん用に花嫁衣装を作ってみませんか?

シノン城
……まぁ、白無垢というものを見てみたいという、
私のワガママもちょっとだけ含まれているのですがぁ、

シノン城
どうでしょう?

やくも
だにぃ! 何だか面白そうやけん、うちは賛成がやー♪

千狐
ええ、千狐も賛成ですわ。

千狐
城娘の皆さんには何かとお世話になってますし、
こういう時でもないとお返しなんてできませんもの。

殿
…………。

柳川城
(……ということは、もしかして……わ、私が……)

柳川城
(ああ……どうしよう……まだ、心の準備が……)

やくも
あれ?

やくも
でもこれ、よく見たら布がそんなに長くないけん、
花嫁衣装を作るにしても上背のある城娘には無理だに。

柳川城
…………え?

千狐
あら、確かにそうね。
……鬼ヶ城さんのような城娘は言わずもがな、

千狐
柳川城さんくらいの背丈でも、少々難しいかもしれないわ。

柳川城
…………。

柳川城
(……うぅ)

柳川城
(ですよね……なんとなく、そんな気はしていました……)

やくも
けど、どうしたらいいがや?
大宝寺城や若松城らは遠征で出払ってる状況やし、

やくも
そもそも、精神的に幼い城娘たちに着せるとなると、
それはそれで花嫁衣装の有難味が少なくなるような気がするだに。

シノン城
ふ~む。どうしたもんかいのぉ。

シノン城
――って、あれ?

シノン城
この足音……。

シノン城
どうやら、誰かがこちらに向かって来てるようですね。

千狐
――はっ!?
そういえば今日は……、

やくも
そうだに! 出羽から城娘が来ることになってたんだに!

秋田城
やあ久しぶりだね、殿。
良い子にして待ってたかい?

秋田城
……ってぇ、何だか見ない顔がいるね。

秋田城
そちらは異国の城娘さんかい?

殿
…………。

殿
…………!

千狐
ええ、そうですね!
秋田城さんなら、ぴったりだと思いますわ。

秋田城
……?

――数日後。

やくも
ということで、花嫁衣装の完成だに~!

シノン城
わ~パチパチパチ~♪

シノン城
それにしても、まさかこれほど立派なものが、
出来上がるなんて、驚きモモノキですねぇ。

やくも
だに。うちも、こげん立派な白無垢は初めて見るかもしれんがや!

シノン城
ふふ、これも制作に協力してくれた、
キタノオショーさんのおかげですねぇ。

北ノ庄城
だーれが北の和尚だッ!

北ノ庄城
ったく、私の名前は北ノ庄城だって言ってんだろ。
いい加減覚えろってんだ。

シノン城
あちゃあ……。
方角はちゃんと合ってたのですがぁ、惜しかったですねー。

秋田城
な、なぁ。
盛り上がってるところ悪いんだが、本当に私が着るのか、これ。

シノン城
モチのロンです、アキタキ城さん♪

秋田城
……キは余計だってば。

秋田城
ハァ……。

やくも
だに? なんだか元気ないけん、どうしたがや?

秋田城
溜め息のひとつもでるさ。

秋田城
安請け合いしたのは、
ちょっと試着するぐらいのものだと考えていたからであって、

秋田城
まさか大勢の城娘を所領に呼んで、
衣装完成披露会をやることになるなんて思ってもみなかったよ。

シノン城
しかも、新郎役は主様がやりますしね♪

秋田城
……やれやれ。
殿のことは可愛い孫くらいに思っていたのだが、

秋田城
フリとはいえ、結婚の儀にも似たことをやるはめになるとは。

北ノ庄城
なるほどな……。

北ノ庄城
まぁ、どうしても無理だってんなら、
今から中止することもできるが、どうする?

秋田城
あ、いや……。
そこまでする必要はないよ。

秋田城
今日まで、ここにいる者だけでなく、
多くの城娘たちが頑張ってくれているんだからね。

秋田城
ただ……。

秋田城
(私のようなお婆ちゃんが相手で、殿はいやじゃないのかな?)

やくも
……ん?

秋田城
――と。
ここまできて怖じ気付くなんて、私らしくないね。

秋田城
よーしっ、過程はどうあれやると決めたんだ。
協力してくれた皆のためにも、最後まで頑張るとするかね。

シノン城
あの……色々と無理を言ってしまって、
ごめんなさい、秋田城さん。

秋田城
……ふふ。
いいんだよ、シノン。

秋田城
せっかく日の本の白無垢に興味を持ってくれたんだ。
私が着ているところ、見たいんだろう?

シノン城
はい!

秋田城
それじゃあ、衣装に関してはここまでにして、
次は披露会の会場の様子でも見に行くとしようか。

やくも
了解だにー♪

――翌日。

殿
…………。

柳川城
ふふ、そうですね、殿。
いよいよ数日後には秋田城さんの花嫁姿のお披露目です。

千狐
領内の皆さんも、来たる催事に向けて張り切っているようですし、
千狐たちも、もっともっとお手伝いしないといけませんね。

北ノ庄城
ま、急に決まった催事ではあるが、これで少しでも、
戦で疲弊した皆の心を癒やすことができればいいんだが――。

シノン城
てーへんだぁ! てーへんだぁ!

殿
…………!?

シノン城
主様、まずいです! 火事場の大泥棒です!

千狐
ちょ、ちょっと落ち着いてください、シノン城さん!
何があったのか、ちゃんと教えていただけますか?

シノン城
はぁ……はぁ……。

シノン城
そ、それが……。

シノン城
完成したばかりの花嫁衣装が、なくなってしまってるのです!

柳川城
――なっ!

北ノ庄城
なんだと!?

やくも
――殿さ~~~~~~んっ!!
たた、大変だにぃぃぃぃぃ~~~!

千狐
やくも、ちょっと後にして!
今はそれどころじゃないのよ、花嫁衣装が無くなって――、

やくも
秋田城が行方不明になっただにーっ!!

殿
…………!?

柳川城
そんな……。

柳川城
秋田城さんまでもが、行方知れずだなんて……。

北ノ庄城
理由はわからねぇが、とにかく衣装のことは置いといて、
まずは秋田城の霊気を探るんだ、千狐!

千狐
は、はい!

千狐
むむむ……。

千狐
――ッ!!

やくも
な、なにか分かったがや?

千狐
ええ。

千狐
秋田城さんが今現在いる場所は、出羽……。

千狐
間違いない……ここは彼女の故郷だわ。

千狐
……ただ…………。

北ノ庄城
ただ、なんだ?

千狐
秋田城さんのいる場所に、
邪気を感じます……。

千狐
恐らくこれは……兜……。

千狐
それも、かなりの数ですわ!

柳川城
となると、故郷に侵攻してきた兜たちにいち早く気づき、
昨夜のうちに急いで帰郷した――ということでしょうか?

北ノ庄城
ったく、水くせーやつだ!
私らに一声掛けりゃいいもんを!

シノン城
みずくせー?

シノン城
いえいえ! 秋田城さんはとってもイイ匂いがしましたよ!

やくも
だぁっ、そういう意味じゃないがやー!

千狐
もう、そんなことより早く秋田城さんの許に行くのが先よ、やくも!

殿
……!

柳川城
はいっ! すぐに準備に取りかかります!

――出羽国。

千狐
殿、転移術は無事に成功ですわ!

やくも
本当に、ここに秋田城がいるんかや?

北ノ庄城
間違いねぇ……兜たちの邪気が邪魔して、
正確な位置はわからねぇが、たしかにアイツの霊気を感じる。

シノン城
――ああっ!
主様、向こうの方に兜たちがいますよ!


御目出度……御目出度……。

兜軍団
……秋田城ガ……御目出度ダ……。

兜軍団
宿リシ禍……孕ミシ邪……今コソ我ラノ糧トセン……。

柳川城
くっ……なんて数なのでしょうか。
これでは秋田城さんの姿を見つけることは困難かと。

シノン城
ならば――、

シノン城
我らが道を切り開くのみです!

シノン城
主様、指揮は任せましたよ!

後半
兜軍団

城娘……異国ノ城娘ダ……。

兜軍団
……我ラノ邪魔ヲスルナラバ……容赦ハセヌ……。

兜軍団
囲メ……囲メ……鏖殺スルノダ……。

シノン城
むぅっ……倒しても倒してもキリがないですね。

柳川城
ですが、先ほどよりも幾分かは戦力を削いだはずです!

柳川城
これなら――、

やくも
――だにっ! 見るがや!
兜さんの群の中心に秋田城がいるだに!

千狐
本当だわ!

北ノ庄城
――っ!?

北ノ庄城
おいおい、冗談だろ……。

北ノ庄城
……なんだってアイツ、こんなところで、私が作った白無垢を……。

秋田城
……………………。

華燭の典と偽りの花嫁 -破-

行方不明だった秋田城を故郷の出羽にて発見した
殿一行は、白無垢姿で立ち尽くす彼女を救うため、
再び兜軍団との苛烈な戦いに打って出るのだった。

前半
秋田城

……………………。

殿
…………!

北ノ庄城
ああ、わかってる。
明らかに秋田城の様子がおかしい……。

北ノ庄城
だが、それ以上に妙なのは、
アイツ自身の霊気は清浄なままって点だ。

北ノ庄城
千狐……これはいったいどういうことなんだ?

千狐
確証はありませんが……。

千狐
あの白無垢自体に、
何か細工をされてしまったのではないでしょうか?

北ノ庄城
なん、だと……!?

千狐
覚えていませんか?

千狐
以前、やくもが作った武具が兜に利用され、

千狐
その所為で、城娘自体が異常状態にされてしまうという事件があったことを……。

シノン城
シノン、それ全く覚えてません!

柳川城
え、えっと……あの事件はたしか、私たちがシノンさんと
出逢う以前のことですから……知らなくて当然かと……。

シノン城
――なんと!?

北ノ庄城
……で、その時の状況と、
今の秋田城の状態とが似てるって言いたいのか、千狐?

千狐
はい……。

千狐
だって、秋田城さん自身ではなく、
あの白無垢から邪なる気の流動を確かに感じますから……。

柳川城
ということは前と同様、兜の瘴気によって、
あの白無垢は城娘に災いをもたらすものとなってしまった……ということですね。

シノン城
ショーキ?

シノン城
というと、巷で有名な――あのショーキですか!?

やくも
有名な……って、どういうことがや?

シノン城
だって、それはもう一時期は肉体を操ったり記憶を改竄したりと、
色々な面で城娘を苦しめまくった日の本の超絶神秘と聞いていますし!

シノン城
なのに、私が日の本に来てから、
兜たちがショーキ戦法を使ったところを見たことがないんですよぉ!

北ノ庄城
だからって、鼻息荒くしてる場合かよ!

シノン城
は、鼻息を荒くだなんて……。

シノン城
えへへー。

北ノ庄城
褒めてねぇーよ!

柳川城
いずれにせよ、
秋田城さんの肉体が無事であることは不幸中の幸いです!

柳川城
瘴気の影響から解放するためにも、
秋田城さんをとりまく兜たちをこのまま一掃しましょう!

シノン城
ウィッ☆

シノン城
それでは、再びの突撃です!

シノン城
主様、準備はいいですか……?

シノン城
はっけよーい、のこったーッ!!

後半
シノン城

てやぁ――ッ!!

兜軍団
ギャァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!


クッ……異国ノ城娘……侮リ、難シ……。

シノン城
さぁ、お縄をちょうだいちょうだいしたらどうですか、兜ども!

シノン城
もう、お前たちは完全に包囲されてるぞ!

柳川城
い、いや……まだ兜たちの数の方が、我々よりもずっと多いのですが……。

北ノ庄城
それよりも、答えやがれ、兜!
どうしてこんな卑怯な真似をしやがる!

やくも
そうだに! せっかくの衣装が、
あんたらの瘴気のせいで台無しがやー!


ナ……何ヲ、言ッテイル……。

千狐
……え?


我々ハ……何モシテイナイ……。


アノ白無垢ハ……最初カラ、禍々シキ……チカラヲ……宿シテイタ……。


ダカラコソ……ソノ邪気ヲ……糧ニシタ、ダケノコト……。

殿
…………。


アア……ソウイウ、コトカ……。


クックック……仲間ガ孕ンデイタ邪気ニスラ気ヅカヌトハ……。


…………何ト愚カナ…………ヤツラ…………カ……。


………………………………。

シノン城
そんな……。

シノン城
兜の言っていることが本当なら、秋田城さんはいったい……。

秋田城
――フフフ。

殿
…………!?

秋田城
フハハハハハハハハハッ!!

秋田城
この娘ヲ助けにキタノダロウガ……その願いが叶うコトはない……。

秋田城
ナゼなら……。

秋田城
貴様ラは全員……ここで死ぬのダからな!

華燭の典と偽りの花嫁 -急-

連戦に勝利する殿一行だったが、喜びも束の間。
兜たちの魔の手から救わんとしていた秋田城が、
突如として殿たちの前に敵として立ちはだかる。

前半
秋田城

貴様ラは全員……ここで死ぬのダからな!

殿
…………!?

北ノ庄城
――ボサッとしてんな、殿!
んなとこにいたら、的にされんぞ!!

秋田城
ほう……今のを防ぐトハ……、

秋田城
なかなかにヤるではないか、城娘。

北ノ庄城
っせぇ!
テメーも城娘だろうが!

秋田城
ワタシが……?

秋田城
アア……そうであったな。

秋田城
シカシ……ククク。
この城娘という存在は実ニ面白い。

秋田城
ワタシが生きていた時代ニハ、
存在していなかった兵器――と、形容すべきか。

秋田城
それが……フフ、見ろ。我が意のままニ動くのダ。

秋田城
こんなに愉快なコトはない……。

秋田城
嘗ては……女であることを呪ったワタシだが…………。

秋田城
今ならば、全てを雪ぐコトモ容易かろう!

北ノ庄城
くっ……なに言ってんのか解らねぇが、
とんでもないことになってきやがったな……。

柳川城
ええ……こうしている間にも、秋田城さんを
中心として禍々しい気が此地に拡大しています!

千狐
いいえ、それだけではありません、柳川城さん!
周囲の兜たちまでもが強化されているようですわ!

やくも
い、いったい何がどうなってるがや!

やくも
秋田城、目を覚ますだにー!

秋田城
目を覚ます、カ……。

秋田城
ああ、ソウとも! こうして目覚めたカラこそ、

秋田城
ワタシは己が意思でもって、
貴様らを殺すことガできるのダ!!

秋田城
然らば――征けぃッ、兜タチよ!
我が憎悪に抱かれ、眼前ノ敵を屠るのだッ!


――御意ッ!!

兜軍団
御意ィィイイイイイイイイイッ!!

殿
…………!

シノン城
はい……どうやら、もう言葉だけでは、
彼女の身に起きた災いを振り払うことはできないようですね。

北ノ庄城
ちっ……こうなったら腹をくくるしかねぇ。

北ノ庄城
いけるか、柳川城?

柳川城
はいっ、いつでも!

北ノ庄城
なら、こっちも出陣だ!

北ノ庄城
兜どもをぶちのめして、秋田城から白無垢を引っ剥がすぞ!

後半
秋田城

ソンナ……ばか、な……。
……ワタシが……敗れる、ナンテ……。

秋田城
だが……ククク……まだ、終わりデハナイ……。

秋田城
……この憎しみは……ドコまでも、広ガリ続けるの……だか、ら……。

秋田城
………………………………。

柳川城
秋田城さん!!

シノン城
……。

シノン城
……よかった。
どうやら気を失っただけのようですね。

北ノ庄城
なら、すぐにその白無垢を脱がすんだ!
このままだと、またいつおかしくなっても不思議じゃねぇ。

千狐
けど、脱がすと言っても……。

やくも
この白無垢、えらく脱がしづらいだに!!

北ノ庄城
私に文句言うなって!
大体はそういうもんなんだよ、日の本の礼装ってのは!

北ノ庄城
――ああッ、もうどけ!

北ノ庄城
秋田城は私がひとりで脱がすッ!

殿
…………。

北ノ庄城
馬鹿野郎!
殿はあっち向いてろってんだ!

殿
…………。

殿
…………。

――半刻後・所領。

秋田城
…………。

秋田城
……あ、れ。
ここは……?

シノン城
よかった、気がついたのですね!

秋田城
……気がついた?

秋田城
――うっ。
いたたた……。

秋田城
おかしい……どうして、こんなにも身体のあちこちが痛むんだ?

北ノ庄城
……そうか。オマエ、何にも覚えてないんだな。

秋田城
覚えて、ない……?
北ノ庄城、どういうことなんだい?

そうして、殿たちが秋田城にこれまでの経緯を話すと――。

秋田城
そうか……。

秋田城
まさか、私の身にそんなことが起きていたとはね……。

柳川城
……秋田城さん。
昨夜、いったい貴方の身に何があったのですか?

秋田城
……昨夜、か。

秋田城
実は……来たる披露会のためにと、
花嫁衣装の確認をしにひとりで蔵の中に入ったのだ。

やくも
衣装の確認?

秋田城
……あ、ああ。

秋田城
本当に人前に見せるに足る姿なのかと不安になって、
……だから、ハチにも意見をもらおうと思って……ね。

シノン城
もう、言ってくれればお付き合いしましたのに。

シノン城
こういうのを水虫クサーいと言うのですよね、北ノ庄城さん?

北ノ庄城
言いたいことは何となく分かるが、今は黙ってろ、シノン。

シノン城
……しゅん。

柳川城
ということは……秋田城さんは所領内で、
単身で衣装を身に纏ったというのですね。

秋田城
うん、まぁ、ハチの手伝いもあったけれどね。

秋田城
……そして。

秋田城
そう……そうだ。
あの白無垢を着た時に、妙な思念が私の心身に流れ込んできたんだ。

千狐
……思念?

秋田城
ああ。

秋田城
名状しがたいほどの悪意……いや、憎悪といった方が正しいか。

秋田城
幾度もの悲しみや苦しみを経て培われた、
夜闇のごとき黒々とした負の感情が流れてきて、

北ノ庄城
そうして、あんな風に乗っ取られた――というわけか。

柳川城
……となると、やはりもともとあの白無垢に、
邪気が宿っていたということなのでしょうか?

北ノ庄城
これまでの経緯からすれば、そうとしか考えられないが……、

北ノ庄城
だが、おかしいぜ。そんな危険な代物だってんなら、
服を仕立てた私や最初に見た千狐だって気づいたはずだ。

柳川城
……たしかに。

柳川城
ということは、身に纏うことで、
初めて発動する呪い――のようなものなのでしょうか?

秋田城
正確ではないのかもしれないが、理屈で言えばそうなるのだろう。

北ノ庄城
……ということは、端から白布には、
そうした邪念が潜んでいたってことで間違いねぇってことだな。

やくも
となれば……今回の異事は……。

シノン城
――それを持ち込んだ私の所為、ということですね。

シノン城
申し訳ありません、秋田城さん。
……まさかこんなことになるとは思ってもいなくて。

秋田城
い、いいんだ。頭を下げたりなどしないでおくれ。

秋田城
この通り、私は無事なんだからね。

シノン城
秋田城さん……。

北ノ庄城
……それよりも、気にするべきは白布の出所さ。

北ノ庄城
たしかシノン、オマエ言ったよな。

北ノ庄城
あの白布はアンボワーズって城娘が、オマエに譲ったものだって。

シノン城
はい……。

やくも
じゃあ、そのアンボワーズって城娘が悪いヤツなんかや?

シノン城
まさか、彼女に限ってそんなことは――、

シノン城
(…………ッ! も、もしかして……!)

秋田城
シノン……?

シノン城
え……。

秋田城
……え?

シノン城
えらいこっちゃでーっ!!

北ノ庄城
お、おい! 急に叫ぶなんて、いったいどうしちまったんだよ?

シノン城
どうしたもこうしたもないのです!

シノン城
アンボワーズちゃんは、私にこの布を譲る際、

シノン城
ロンドン塔さんの花嫁衣装を作った時の余り――と言っていました。

柳川城
ロンドン塔さん?

シノン城
はい、イングランドと呼ばれる地の城娘さんです!

シノン城
……ですが、大事なのはそこではありません。

シノン城
いま重要なのは、彼女も、
この白無垢と同じ布で仕立てられた
花嫁衣装を着ているということです!

北ノ庄城
……おいおい。

北ノ庄城
ってことは……!

シノン城
はいっ!
ロンドン塔さんの身にも危険なことが起きているかもしれません!

殿
…………!

秋田城
うん、このままにはしておけないよ!
すぐにその、ロンドン塔なる城娘がいる地へ向かうんだ!

――同時刻・異国。

???
フフフ……どうやら、彼女も気がついたようね……。

???
……いいわ。

???
未だ中世を色濃く引きずる此地で……。

???
……ひとりの城娘が裁かれるところを……アナタに見せてあげる……。

???
フフ……ウフフフフ……。

???
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ――――――――。

華燭の典と偽りの花嫁 -絶壱-

――シノン城が日の本へと出向く数日前のこと。
彼女は妹分のシャンボール城と笑顔を交わしながら、
同郷の城娘たちの到来を、美しい海辺で待っていた。

前半
――シノン城が所領を訪れる前のこと。

日の本より遠く離れた異国。

シャンボール城
ねえねえ、シノンお姉ちゃん。

シノン城
なーにぃ、シャンボール?

シャンボール城
えっとぉ、えっとねぇ……。

シャンボール城
シノンお姉ちゃん、大好きぃ♪

シノン城
あらあら。今日はいつにも増して甘えん坊さんですねぇ。

シノン城
こんなふうに抱きついているところを見られたら、
他の城娘たちに笑われちゃうぞ~?

シャンボール城
うぅぅ……。

シャンボール城
でも、お姉ちゃんと一緒がいいんだもん。

シャンボール城
それとも、わたしのこと……きらい?

シノン城
まさか。

シノン城
シャンボールのこと、シノンは世界で一番愛してますよぉ♪

シャンボール城
えへへ。

シャンボール城
じゃあね、じゃあね……。

シャンボール城
私はシノンお姉ちゃんのこと、宇宙でいちばん好き~♪

シノン城
わあっ、ついに大気圏突破しちゃいましたねー☆

シノン城
それじゃあシノンはぁ――、

???
はーい、そこまでですよ、シノンお姉様。

シノン城
むっ? 何やつじゃ!?

シャンボール城
名をなのれー!

シュノンソー城
もう、二人して日の本のニンジャさんみたいに構えないでください。

シャンボール城
あっ、シュノンソーお姉ちゃんだ~!

シノン城
貴方も、無事についたようで何よりでーす。

シノン城
……それにしても、予定よりもずいぶんと遅かったね?

シュノンソー城
ごめんなさい、シノンお姉様。
少々、準備に時間がかかってしまって……。

シノン城
ん? 準備……?

シュノンソー城
ええ。それはもう、素敵な素敵な準備なのです。

シュノンソー城
そうですよね、アンボワーズお姉様?

アンボワーズ城
ふふ、その通りですとも!
シノン姉様を驚かすために、張り切ってきたのですからね。

シノン城
――ッ!?

シャンボール城
すっごーい!
アンボワーズお姉ちゃん、お姫様みたーい♪

アンボワーズ城
うふふ、ありがとね、シャンボール。

アンボワーズ城
で、シノン姉様のご感想は?

シノン城
ニャんッと驚くマメゴローッ!!

アンボワーズ城
は……え?

シノン城
おっと、ごめんなさい!

シノン城
あまりの綺麗さに、ついついうっかり、
日の本の感嘆詞が飛び出してしまいました!

シノン城
……って、それよりも、そのドレスはいったい!?

アンボワーズ城
いえね。だいぶ前に、アンジェちゃんからいただいた
上質な天然繊維を倉庫にしまったままであることを思い出しまして。

アンボワーズ城
ふと、久しぶりにお洋服作りに熱中でもしてみるか――と思い立ったというわけです。

シャンボール城
そっかぁ。
アンボワーズお姉ちゃんは、お洋服作りが得意な城娘だもんね。

アンボワーズ城
ノンノン。

アンボワーズ城
お洋服作りが、ではなく、お洋服作りも、ですわよ、シャンボール。

シュノンソー城
ええ、アンボワーズお姉様は、万能の城娘ですからね。

シュノンソー城
とはいえ、まさかこれほどのドレスを
いとも容易く作ってしまうとは……相変わらずの多才ぶりですね。

アンボワーズ城
あら、それを言うなら貴方のお菓子作りだって、
天才と賞するに足るものだわ。

シノン城
ふむぅー。

シノン城
けど、やっぱりおかしいなぁ。

アンボワーズ城
……え?

シノン城
だって、アンボワーズちゃんは気まぐれに、
何かを作る――ということはしない娘だから、

シノン城
天然繊維のことも、ふいに、とか、
ふと、といった調子で思い出すなんて、
らしくないなー、と思っちゃって。

アンボワーズ城
…………。

アンボワーズ城
うふふ、やはりシノン姉様にはかないませんわね。

アンボワーズ城
ええ、そうですわ。
思い出した契機も、そして服作りに至った理由も、ちゃんと存在します。

アンボワーズ城
皆さんは、ロンドン塔――という城娘を御存知ですか?

シャンボール城
うん! たしかイングランドの城娘だよね?

アンボワーズ城
正解ですわ、シャンボール。

アンボワーズ城
実は、彼女のために花嫁衣装を作る必要ができたので、
そのついでに私自身のドレスも新調したということですの。

シュノンソー城
そうだったのですね……。
私はてっきりアンボワーズお姉様の気まぐれなのだとばかり思って、

シュノンソー城
……って、ちょっと待ってください!

シュノンソー城
は、花嫁衣装?

アンボワーズ城
あら、知らないの、シュノンソー?
花嫁衣装というのはね、

シュノンソー城
い、いえ! そうではなくてですね!

アンボワーズ城
うふふ、冗談よ。

アンボワーズ城
まあ、どうして花嫁衣装を作ることになったのかは、
ロンドン塔の事情や個人情報の漏洩に繋がりそうだから、
詳しくは言えないんだけど、

アンボワーズ城
いま大事なのは、私ことアンボワーズが、
英国風に言うならとってもブライダルな気分になっちゃってるってことよ。

シャンボール城
ぶらいだるー?

シャンボール城
あ、花嫁さんのことだね♪

アンボワーズ城
またまた大正解。

アンボワーズ城
おりこーさんね、シャンボール。

シャンボール城
えへへ~♪

シノン城
で、そのブライダルモードなアンボワーズちゃんが、
今日こうして私たちを集めた訳だけど、

シノン城
つまりは何がしたいのかな?

シノン城
シノンお姉ちゃんは、そこのところがとっても気になりまーす。

アンボワーズ城
ふふ、いいでしょう。いいでしょう。
そんな姉様の好奇心を満たすため――、

アンボワーズ城
アン・ドゥ・トロワ――ッ♪

シノン城
――ふにゃ!?

シュノンソー城
シノンお姉様!?

シャンボール城
シノンお姉ちゃん!?

アンボワーズ城
うふふ、いかがですか、シノン姉様?

シノン城
……な。

シノン城
なな……。

シノン城
なんじゃこりゃ~~~~~~~っ!!

アンボワーズ城
うふふ、それこそが、アンボワーズ特製の、

アンボワーズ城
シノン姉様用アルティメットバトルコスチュームでーす!

シノン城
おおっ! これが噂のー!?

アンボワーズ城
……あ、いや。
姉様、そこはちゃんとツッコんでくれないと。

シノン城
え?

シャンボール城
すごいすごーいっ!
シノンお姉ちゃん、すっごくきれーい♪

アンボワーズ城
そうでしょう、そうでしょう。
なにせこの私が三日も費やすほどの力作ですから。

アンボワーズ城
日頃お世話になってる姉様への、
感謝の気持ちをふんだんに込めましたの。

シノン城
もう、わざわざここまでしなくてもいいのに……。

シノン城
けど、ものす~~~~~~~っごく嬉しい!

シノン城
メルシー、アンボワーズちゃん♪

シノン城
昔から、ほんとうに優しい娘だねぇ。

シノン城
いいこいいこ~。

アンボワーズ城
あ……ぅ。
き、気安く頭を撫でないでください、姉様。

シノン城
もう、恥ずかしがっちゃって~。

シュノンソー城
ふふ、さすがのアンボワーズお姉様も、
シノンお姉様の前では幼子同然ですね。

シュノンソー城
けれど、シノンお姉様の花嫁姿……ですか。

シャンボール城
……あれ、どうしたのシュノンソーお姉ちゃん?

シャンボール城
なんだか悲しそうだよ?

シュノンソー城
だって……。

シュノンソー城
考えてみてください、シャンボールちゃん!

シャンボール城
んー?

シュノンソー城
もし、シノンお姉様が誰かと結婚するとなったら、
今みたいにこうして楽しくお喋りする機会も減るでしょうし、

シュノンソー城
何より……我々は妹として甘えることが
できなくなるかもしれないのですよ?

シャンボール城
えええええええええええええええええええええええええええええ!?

シュノンソー城
しかも……最近のシノンお姉様は
特に日の本の文化を気に入っているようですし、

シュノンソー城
あちらの方と結婚などしようものなら…………――――。

後半
シャンボール城

うわ~~~~~~~~~~~~~~んっ!!

シャンボール城
やだやだやだ~~~~~~~~っ!

シャンボール城
シノンお姉ちゃん、お嫁さんになっちゃやだよぉ~!!

シノン城
――んにゃ!?

アンボワーズ城
あらあら。大胆ね、シャンボール。
シノン姉様に抱き付いて、そのまま押し倒すなんて。

シャンボール城
だって……だってぇ……。

シャンボール城
お姉ちゃんを誰かにとられるなんて、わたし……やだよぉ……。

シノン城
……。

シノン城
だいじょうぶだよ、シャンボール。

シャンボール城
……ふぇ?

シノン城
ほらこの通り、お姉ちゃんは、
いつものシノンに戻りましたとさー。

アンボワーズ城
あ……もう、脱いでしまうのですね、姉様。

シノン城
ごめんね、アンボワーズ。

シノン城
でもこういう服は、無闇に着るべきではないと思うから。

シノン城
それに、シャンボールちゃんを不安にさせたくないしね。

シュノンソー城
ええ。良き判断かと、シノンお姉様。

シュノンソー城
それに、結婚前に花嫁衣装を着ると、
婚期が遅れる――とも言いますしね。

シャンボール城
え!?

シャンボール城
じゃあ、やっぱりシノンお姉ちゃん、もう一回着て!

シャンボール城
ううんっ、いっつも着てれば、ずっと結婚できなくなっていいかも!

シノン城
わぁ、孤高の独身貴族ってやつですねー!

アンボワーズ城
もう、バカなこと言わないの、シャンボール。

アンボワーズ城
だいたいシノン姉様が毎日花嫁姿だったら、
それこそ求婚する者が後を絶たないはずだわ。

シャンボール城
むぅ……。

シノン城
でも、本当にありがとね、アンボワーズ。

シノン城
このドレスはシノンが結婚する時になったら、ぜったいに着るから。

アンボワーズ城
ええ。
その言葉だけで充分ですわ。

アンボワーズ城
……まぁ、私もシャンボールと同じで、
そんな瞬間なんてこなければいいと、思ってますし……。

シノン城
え?

アンボワーズ城
ううん、なんでもないわ、姉様。

アンボワーズ城
――っと、忘れるところだった。
あのね、実は渡したいものは他にもあるの。

シュノンソー城
……ドレス以外にも、ですか?

アンボワーズ城
ええ。

アンボワーズ城
こちらですわ。

シャンボール城
……これって、布……だよね?

アンボワーズ城
そ。ロンドン塔の花嫁衣装を作った時の余りでね、
処分するのもなんだから、誰かにあげようと思って。

シノン城
なるほどー。

シノン城
…………。

シノン城
――ッ!?

シノン城
そうだ! もしよかったら、それ、お姉ちゃんがもらってもいいかな?

アンボワーズ城
構わないですけど、何に使うのですか?

シャンボール城
あー、わかったー!

シャンボール城
お風呂上がりにからだをふきふきするのに使うんだね?

シュノンソー城
いえいえ、もしかしたらベッドシーツかもしれませんよ?

シノン城
ノン、ノン♪

シノン城
実はこの後、日の本に行こうと思ってたから、
主様たちへのお土産に――ってね。

シュノンソー城
なるほど、確かにそれはいい考えかもしれませんね。

アンボワーズ城
ええ。それに、何となくシノン姉様なら、
そう言うんじゃないかって思ってましたもの。

シャンボール城
それじゃあ、わたしもシノンお姉ちゃんについていくー!

シャンボール城
……って、あれ?

シャンボール城
…………。

シノン城
どうしたの、シャンボール?

シャンボール城
向こうの方……少し離れたところに……わるいのが、いる……。

シノン城
悪いの?

シュノンソー城
……ええ。間違いありません、兜の気配です。

シュノンソー城
どうやら、ロワールへ向かってきているようですね。

アンボワーズ城
とはいえ、数はそう多くないわ……。

アンボワーズ城
これなら、私たち三人だけでも容易に対処可能ね。

シノン城
三人?

シノン城
アンボワーズちゃん、もしかして算数、苦手になっちゃった?

アンボワーズ城
もう、ヘンなことを仰らないで、姉様。

アンボワーズ城
私とシュノンソー、そしてシャンボールの三人で――という意味ですわ。

シノン城
え、でも……。

アンボワーズ城
お気になさらずに、ですわ。

アンボワーズ城
姉様は、ここのところずっとロワールの守護に努めていましたもの。

シュノンソー城
ですから、ここは私たちに任せて日の本に行ってください。

シャンボール城
そっか……そうだよね。

シャンボール城
うん……そういうことなら、今回はわたしも我慢する!

シャンボール城
だから、楽しんできて、シノンお姉ちゃん!

シノン城
みんな……。

シュノンソー城
そんな顔をなさらないで、シノンお姉様。
もしものことがあればすぐに報せますから。

シュノンソー城
……ね?

シノン城
わかったよ、シュノンソーちゃん。

シノン城
それに……。

シノン城
アンボワーズちゃんが三人で――って言うなら、

シノン城
きっと、それこそが迎え討つに相応しい数なんだよね。

アンボワーズ城
ええ。その通りですわ、姉様。

アンボワーズ城
それでは、よき旅を。
日の本の皆さんにもよろしくお伝えください。

シノン城
ウィ♪

シノン城
それじゃあ、みんな。
少しだけお別れだけど、ちゃんと帰ってくるから待っててね。

こうして、シノン城は美しい純白の布を携え、
殿たちがいる日の本へと向かうのだった――。

華燭の典と偽りの花嫁 -離-

秋田城に災難を招いた奇妙なる白無垢。それと同じ
材料によって仕立てられた衣を纏う城娘にも何かが
起きているのではと思い、殿一行は異国へと旅立つ。

前半
???

……。

???
…………。

――喩えるなら、あの頃のワタシは一匹の雌鹿だった。

対する狩人は一国の王。

彼が得意なのは狩猟だけではない。

馬上槍を始めとした運動競技においては万能と称するに足る才を見せ、

リュートやヴァージナルで曲を弾けば、紡がれる詞と音が人々を魅了する。

無論――教養においても抜かりはない。

古典を学び、フランス語、スペイン語、さらにはラテン語にまで通じ、

最高の人文学者とも呼ばれた、あのエラスムスとも文を交わすまでに至り、

ルター批判の論文を書けば、教皇から『信仰の擁護者』とさえ賞されたほどだ。

一方で、ワタシは何だ?

家格は所詮、成り上がり貴族のそれだ。

数代前までは平民でさえあった。

曾祖父が絹繊物商としてロンドンで財を成し、

祖父が薔薇戦争の最中にロンドン市長を務め、

その時点でようやくサーの称号を得るに至る。

そして、続く父の代でナイトに列せられ、

次に駐仏大使を経ることで、何とか伯爵となったブーリン家。

けれど、その伯爵という位を授かった時にさえ、
あの男――ヘンリー八世の影がちらついていた。

そうさ。

獲物を完全に狩るため、まずはその親から籠絡しただけのこと。

端から、この愛憎の茶番劇において、ワタシに勝ち目などないのだ。

その胸奥に灯った情愛が燃え続く限り、彼はどこまでもワタシを追い続ける。

宮廷から遠く離れたヒーヴァー城に逃げたとて、彼の熱意は消え去りやしない。

ああ……。

あああああああああああああああああああああああああああああああああ!

紛れ込んでしまったこの世界は、万死一生の狩場じゃないか!

ならば……。

ならばもう、やれることはひとつだけ。

覚悟を決めろ。

彼の手が届くかどうかの距離で、生きるために逃げ続けるのだ。

逃げて――。

逃げて、逃げて……。

逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて、
逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて、
逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて、

逃げたその果てで――宿すであろう児を男として此世に刻むことができれば…………。

???
ワタシの勝利……だった、はず……なのに…………。

――翌日。

秋田城
……で、シノン。
ここがロンドン塔の故郷で間違いないのかい?

シノン城
ウィッ☆

シノン城
私の記憶を媒としての転移術だったので少々不安だったのですが、

シノン城
そこはさすがのメンコさん!
ドンピンで現地到着ですぅ♪

千狐
もう、シノン城さんったら。
それを言うならどんぴしゃりですよ――、

千狐
って、千狐は玩具じゃないのーっ!!

シノン城
……え?

シノン城
おっとととー、これまたうっかり侍でござんす!

シノン城
そうです! センコさんの転移術で、
無事にイングランドの地を踏みしめるに至ったわけですね!

北ノ庄城
おいおい、んなことよか向こうを見ろって!
さっそく大変なことになってるぞ!!

兜軍団
――――――――――――――。

やくも
だにぃっ!? 兜さんが、えっぱいいるがや!!

殿
…………!

柳川城
やはり、思ったとおりの惨状になっていますね、殿。

秋田城
しかし、これだけ大量の兜たちの姿があるということは、
先日の私と同様のことがロンドン塔にも起きているという証左に他ならない。

秋田城
すぐにでも行動を開始しないと大変なことに――、


城娘……発見セリ……城娘……発見セリ……。

兜軍団
……処刑ノ邪魔ヲ……サセル訳ニハイカナイ……。

兜軍団
即刻……排除セヨ……即刻……排除セヨ……。

北ノ庄城
クソッ……ヤツら、妙に殺気立ってやがるな。
もう見つかっちまうとは、ついてないぜ……!

シノン城
ですが、あれほどの軍勢が占拠する地ならば、
どうあっても戦は避けられなかったでしょう……。

シノン城
ということで、主様――!

シノン城
まずは眼前の敵たちをチギッテハナゲーしちゃいましょう!

殿
…………!

秋田城
うん、指揮は任せたよ、殿!

秋田城
君の叡智で、私たちを勝利に導いてくれ!

後半
秋田城

悪いけど、少し手荒にいかせてもらうよ!

兜軍団
ギャアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

やくも
さっすが秋田城だにぃ!
これで先陣の兜さんたちは一通りやっつけたがや!

秋田城
殿、進むなら今しかない!
このまま一気にロンドン塔を見つけ出してしまおう!

殿
…………!?

シノン城
ど、どうしたのですか主様?

殿
…………!

シノン城
……え? 前?

シノン城
――ッ!?

???
……………………。

千狐
…………。

殿
……?

千狐
あ、いえ……たしかに、殿の仰るように、
あの方からは城娘に似た霊気を感じるのですが……。

千狐
(……何かが……おかしい…………本当に彼女は、城娘なのでしょうか?)

秋田城
ということは、彼女がロンドン塔……なのかい?

シノン城
えっと、私も久しぶりにお会いするので、
ちょっと自信が無いのですが……。

シノン城
カラスたちと背後の幽霊さんを携える姿からして、
ロンドン塔さん以外には考えられません!

北ノ庄城
よし……見たところ花嫁衣装は着てねぇみたいだし、
惚けてる素振りもない。あれならこっちの話も通じるだろう。

北ノ庄城
おーいっ!! ロンドン塔! 私たちは日の本の城娘だ!

秋田城
君の身を案じて遠路を渡ってきたゆえ、今より助勢する!
だからどうか、そのまま大人しく待っていてくれ――ッ!

ロンドン塔(?)
…………あら。

ロンドン塔(?)
フフフ、ようやく来たのね。

ロンドン塔(?)
けれど、
アンボワーズの言っていたシノンなる城娘が、どれほどのものかと思えば、

ロンドン塔(?)
見たところあまり賢そうには見えないわね。

シノン城
……え?

ロンドン塔(?)
フフ、ジャンヌダルクに縁深き城娘……シノン。

ロンドン塔(?)
いや、それ以上に面白いのは城娘という存在そのもの。

ロンドン塔(?)
そのような珍妙な存在たちが世を跋扈するなんて、まるで絵本のそれだわ。

ロンドン塔(?)
……まあおかげで、ワタシはこの姿を得るに至り、

ロンドン塔(?)
同時に『この娘』を処刑することができるんだけどね♪

シノン城
な、何を言ってるのですか、ロンドン塔さん?

シノン城
処刑って……いったい、誰を……。

ロンドン塔(?)
誰って……。

ロンドン塔(?)
アナタたちの眼にも映っているでしょう?
この憐れなる城娘の姿が――。

???
――う、ぅぅ……ッ。

殿
…………!?

千狐
そ、そんな…………!

やくも
……ロンドン塔がふたりいるだに!?

ロンドン塔(?)
――さぁ、兜たち。
かつてクロムウェルが設計した、あの断頭台を持ってくるのよ。

兜軍団
ウイィィィィィイイイッ!!

秋田城
――ッ!?

秋田城
お、おいおい……。
アレはいったい何の冗談だい?

秋田城
どうしてロンドン塔がロンドン塔の首を刎ねようとしてるんだ!?

華燭の典と偽りの花嫁 -結-

ようやくロンドン塔の許へと辿り着いた殿一行。
しかし、そこで目にしたのは、凄惨な処刑台と、
全く同じ容貌を備えたふたりの城娘の姿だった。

前半
秋田城

お、おいおい……。
アレはいったい何の冗談だい?

秋田城
どうしてロンドン塔がロンドン塔の首を刎ねようとしてるんだ!?

???
は……う、ぅぅ…………。

ロンドン塔(?)
アハハハハ、なんて間抜けな恰好かしら、ロンドン塔!

ロンドン塔(?)
……それに日の本から来たアナタたちも運が良いわ。

ロンドン塔(?)
だって――、

ロンドン塔(?)
これより始まる素敵なショーを、
特等席で見ることができるんですものぉ♪

北ノ庄城
ま、待ちやがれ! なにが素敵なショーだッ!
さっきから訳の分からないことばかり言いやがって!

北ノ庄城
だいたい、どうして同じ顔した城娘がふたりもいるんだ!
んなのおかしいじゃねぇか!!

シノン城
――あれ?
でも日の本には違う名前なのに、
そっくりな顔の城娘さんってけっこう多いですよね?

北ノ庄城
……あ、いや。
そりゃあまあ確かにそういった類のヤツらもいるにはいるが、

北ノ庄城
――けど、あのふたりはあまりにも似すぎている……。
少なくとも私の眼には同一人物にしか見えねぇ!!

柳川城
もしかして、また九尾の仕業なのでしょうか……?

千狐
いや……あの方からは、九尾の妖力は感じませんわ。

千狐
それよりも不思議なのは、
城娘と似たような霊気を発しながらも、

千狐
その実、空虚な――そう、
今にも消えてしまいそうなほどの儚さを、彼女が宿している点。

千狐
まるで霊的な何かが、そのまま形を成したような……。

ロンドン塔(?)
へぇ、驚いたわ。
そちらのフォックスちゃんは、なかなかの慧眼をお持ちのようね。

ロンドン塔(?)
ええ。そうよ。

ロンドン塔の幽霊
ワタシは幽霊――ロンドン塔に棲み着く亡霊に他ならないわ。

シノン城
なんですと――!?

北ノ庄城
ということは、棲み着いていた幽霊自身が、
本体そっくりの姿に化けたってことなのか?

秋田城
だが、喩えそうだとして――あれほどの精度で、
城娘そっくりの姿形と霊気を備えるなど世理を超越しすぎている。

秋田城
こんなこと……本来はありえるはずが、ないのに……。

ロンドン塔の幽霊
あら、己が眼を疑うというの?

ロンドン塔の幽霊
でも――実際にワタシはこうして顕現してしまった。

ロンドン塔の幽霊
そしてロンドン塔と同じ姿を持ち、同じ力を持つに至ったの。

ロンドン塔の幽霊
それはもう揺るぎようのない事実――。

ロンドン塔の幽霊
而して成し得た奇跡は世理となって、ついには常事となる。

ロンドン塔の幽霊
故に――アナタたちはもう疑うことを許されない。
此地においては既に、ワタシは真実なのだから……。

シノン城
たとえそれが本当だとして――、

シノン城
ならばどうしてロンドン塔さんと共に歩んできた幽霊さんが、
主でもある彼女を断頭台にかけようとしているのですか!?

ロンドン塔の幽霊
もう、いやだわ、シノン。

ロンドン塔の幽霊
やっぱり貴方っておバカな城娘なのね。

ロンドン塔の幽霊
いい?

ロンドン塔の幽霊
此刻で先んじるのは――過程や理由なんかじゃなくて、
既に形成されてしまった圧倒的なまでの結果そのものなの。

ロンドン塔の幽霊
ワタシは今こうしてロンドン塔を断頭台にかけている。

ロンドン塔の幽霊
となれば――ワタシの裡には、それ相応の殺意があって、
コトを成すために充分なほどの残虐さを持ち併せてるってことじゃない。

シノン城
それじゃあ……まさか……。

ロンドン塔の幽霊
ええ、そうよ。

ロンドン塔の幽霊
ワタシはこの娘を絶対に処刑する。

ロンドン塔の幽霊
あっさりとザックリと見事なまでに斬首して、
二度と再生できないようにしてやるのよ。

ロンドン塔の幽霊
そうして我が似姿が此世から消えてしまえば――、
ワタシは宿した仮初めの命を真にすることができる。

秋田城
なんてバカげたことを――ッ!
幽霊である君が本物に成り代わろうとでも言うのか!?

ロンドン塔の幽霊
そうだとしたら――何だっていうのかしらぁ?

殿
…………。

ロンドン塔
みなさん……逃げて、ください……。

ロンドン塔
……今の彼女は……暴走しているのです……。

ロンドン塔
このままでは、貴方たちにまで……迷惑をかけてしまう……。

ロンドン塔
……だから、今すぐここから――

ロンドン塔の幽霊
――はぁ?
アナタ、何を言っているのかしら?

ロンドン塔の幽霊
暴走している――ですってぇ?

ロンドン塔の幽霊
ふざけたことを言わないで!
愚かにもそのトリガーを引いたのはアナタ自身じゃない、ロンドン塔!

ロンドン塔
ええ……その通りだわ……。

ロンドン塔
……けれど、私以外の人を巻き込んではダメよ……ジェーン。

ロンドン塔の幽霊
黙れぇッ! ワタシをジェーンと呼ぶな!

ロンドン塔
――ひっ……く、ぁ……ッ!

ロンドン塔の幽霊
ええ……たしかにアナタにとって、
ワタシは亡霊の一欠片なのかもしれないわ。

ロンドン塔の幽霊
けれど、アナタが花嫁衣装なんかを纏うから、

ロンドン塔の幽霊
アナタが幸せそうな顔なんか浮かべるから、

ロンドン塔の幽霊
だから『ワタシ』の意識だけが目を醒ましてしまったんじゃないの!!

ロンドン塔
……わたしの意識だけ?

ロンドン塔
まさか……それじゃあ、あなたは……己が名を口にできるというの?

ロンドン塔の幽霊
当然じゃない。
そうでなくては、どうしてワタシが顕現できるものですか!

ロンドン塔の幽霊
ワタシはアナタが宿す亡霊たちのひとりにして、
ジェーンを超えてなお個としての産声をあげたもののひとり。

ロンドン塔の幽霊
我が名は――アン。

ロンドン塔の幽霊
ふふ、そうよ!

ロンドン塔の幽霊
この憎しみに名をつけるならば、それこそが相応しい!

ロンドン塔の幽霊
ワタシは己が憎悪をアン・ブーリンと名付けてやるわ!!

シノン城
……アン・ブーリン……ですって!?

秋田城
知っているのかい、シノン!?

シノン城
はい……。

シノン城
アン・ブーリンとは、
イングランドの王様であったヘンリー八世の二番目の王妃の名です。

やくも
王妃……!?

やくも
ってことは、えらく高貴な人やけん、そげん人が
何で処刑なんて物騒なことをしようとしちょるがや!?

アン
フフ、そんな反応になるのも当然だわ。

アン
だって、今のアナタたちの国ではワタシの名も悲業もそうは知られていないでしょうもの。

アン
だから、アナタたちにワタシの悲業を刻んであげる。

アン
ワタシはね、夫であったヘンリーによって処刑されたのよ。

殿
――!?

アン
そして、その舞台となった場所こそが、このロンドン塔なの。

柳川城
では……貴方はその恨みを晴らすためにこんなことを?

アン
……ばか言わないで。

アン
ヘンリーや、それに嬉々として加担したクロムウェルを恨めども、
どうして建物自体を恨めようかしら?

アン
まあ、そのクロムウェル自身だって、
結局はワタシが死んだ後で呆気なく処刑されていたのだけれど……フフフ。

アン
いずれにせよ、ワタシは処刑された歴史に因って、
ロンドン塔の名を持つ城娘へ意趣返しをするのではないわ。

アン
真実はもっとシンプル……難しく考えるから人生は入り組んでしまうの。

アン
ワタシは、ヘンリーを憎んでいる。

アン
そして、ヘンリーという残虐さを許容したこの世界を憎悪している。

アン
これは当然の憎しみよね。

アン
だって女であるという――ただそれだけのことで、
ワタシはワタシの人生を歩めなかったのよ?

アン
そんなくだらない世界……受け入れられるわけがない。

アン
だから……今度はワタシが蹂躙してやるの。

アン
ホルバインが描いたような――エゴによってのみ肥大した
醜悪極まりない残虐王をも遙かに凌駕する惨酷さを以て!

アン
今度は、このワタシが世界を断罪する!

アン
万象の生殺与奪を握る悦楽に淫し、

アン
気の向くまま路傍の花々をむしるが如く、躊躇なく首をはねてやるのよ!!

アン
でも――そのためには、ワタシと同じ姿の者がいてはいけない。

アン
だってワタシは無二の存在だもの♪

アン
いつか必ずこの城娘はワタシの縛鎖となる。

アン
だから殺す。

ロンドン塔
…………。

アン
ねぇ、いまどんな気分かしら?

アン
アナタのなかで死んでいった者の怨嗟が、

アン
アナタの似姿を纏ったうえでアナタを処刑する。

アン
フフフ、これって最高にエスプリの効いた結末じゃない♪

アン
――異国の騎士様も、そう思うでしょう?

殿
…………。

秋田城
わかってるよ、殿。
すでに彼女の凶行は理屈の上に立っていない。

秋田城
先行する憎悪が、己が衝動に後付けをしているにすぎないんだ。

シノン城
なればこそ――此地に辿り着いた私たちが止めなくてはいけないのですね。

アン
……あら、残念。
そう。貴方たちもワタシという存在を許容しないというわけね。

アン
なら、止めてみせなさい。

アン
だってこれは素敵で優雅なショーだもの。
ある程度の余興もハプニングも大歓迎。

アン
――ねぇ、見えるでしょう、異国の騎士様?
ワタシが処された時と同じように、処刑人には剣を持たせてあるわ。

アン
対するワタシの手には三つのメイズ・オブ・オナー。

アン
これを食し終えたその時こそが、死刑執行の機とする。

アン
――さぁ、刻は動き出したわ。
はやく、ワタシのところにいらっしゃい、異国の来賓方♪

後半
シノン城

ジャンヌ様のように――ッ!!
勇敢に突撃です!!

兜軍団
ギャアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

北ノ庄城
やるじゃねぇか、シノン!
いまので敵陣にでっかい穴が空いたぞ!

殿
…………!

柳川城
はいっ! アン・ブーリンの手には未だ、
メイズ・オブ・オナーなる菓子が残っています!

秋田城
ならばまだ間に合うということだね……。

秋田城
よし、ロンドン塔は目の前だッ!
このまま余勢を駆って突き進むよ!

アン
――まぁまぁまぁ! な~んて激しさかしら♪

アン
このままだと、ワタシが食べ終えるまでに辿り着いちゃいそうね。

ロンドン塔
う、ぅぅ……日の本の皆さんが……私のために、あれほどまでの奮起を……。

ロンドン塔
これなら……あるいは――。

アン
あら、さっきまでの消沈ぶりが嘘みたいね、ロンドン塔。
……もしかして希望の光でも見えてしまったのかしら?

アン
けど、ざ~んねん♪

アン
やっぱり今すぐアナタの首を刎ねちゃいましょう!

やくも
だにぃ――ッ!
約束を破る気がやぁ!?

アン
ごめんなさいねぇ、いまのワタシは残酷なうえに気まぐれなの♪

アン
それではぁ――、

アン
マルガレーテ総督やクロード妃のように華やかに、
そしてヘンリーが降らせた金貨の雨が如く盛大に、

アン
今より、死刑執行でーす♪

殿
…………!?

アン
アハハ、そんな顔をしないでぇ。

アン
とっておきの特等席――正真正銘の眼前で!
城娘の首が断たれるところを見られるのよぉ?

アン
ここは万雷の拍手でもって喜ぶべきじゃなぁい♪

???
――と、

???
こんな大ピンチに颯爽と現れちゃうからこそ、
私は万能だなんて呼ばれちゃうのでしょうねぇ。

アン
な――ッ! 
断頭台にかけたロンドン塔の姿が……ないですってッ!?

アン
誰よッ!!
ワタシの邪魔をする愚か者は!

???
ふふっ。誰――と問われて応じぬは、
私が備える宮廷礼儀に反しましょう。

アンボワーズ城
我が名はアンボワーズ。
ロワールの城娘にして万能と謳われし奇跡がひとつですわ。

アンボワーズ城
ようやく会えたわね、アン・ブーリン。

華燭の典と偽りの花嫁 -絶弐-

ロンドン塔の窮地に颯爽と現れたひとりの城娘。
その名はアンボワーズ城。彼女の到来によって、
活路を見出した殿一行は再び戦いに打って出る。

前半
アンボワーズ城

ようやく会えたわね、アン・ブーリン。

アン
アンボワーズ……。

アン
そうか。
あの人に縁深きアナタだもの。

アン
ワタシの邪気を感じ取って、
対処しにきたということね。

アンボワーズ城
ふふ。
まあそう考えてくださって構いませんわ。

アンボワーズ城
それよりも――っと、

アンボワーズ城
はい、ロンドン塔。
これでもう動けるでしょう?

ロンドン塔
は、はい……。
危ないところを、ありがとうございます。

アンボワーズ城
ノン、ノン。

アンボワーズ城
今回の異事は殆ど私の所為みたいなものだから、
頭を下げる必要なんてないわ、ロンドン塔。

アンボワーズ城
……って、あれ?

シノン城
アンボワーズちゃ~~~ん!
ど、どうしてここにいるの!?

シノン城
たしかロワールに攻め込んできた
兜たちの相手をしていたはずじゃ……。

アンボワーズ城
ええ、そうですわ、シノン姉様。

アンボワーズ城
――で、その対処が終わりましたので、
こうして我々は姉様の許に駆け付けたのですわ♪

シノン城
我々?

シノン城
ということは……!

シャンボール城
――おね~ちゃ~んっ!
シャンボールも助けにきたよぉ~!

シュノンソー城
同じくシュノンソーも、馳せ参じました。

シノン城
シャンボール! シュノンソー!

シノン城
……ん? ちょっと待ってください!
その後ろにいるのは、もしかして……。

ユッセ城
ふぁ~あ。

ユッセ城
なんだかよくわからないけどぉ……つれてこられたのぉ……。

ユッセ城
でもぉ……シノねぇたまのためなら……ちょっとだけ、がんばるよぉ……。

ユッセ城
……むにゃむにゃ…………。

シノン城
すごーいっ!! ユッセちゃんまでいるなんて!

シノン城
お姉ちゃん、感謝感激アマテラス~♪

シャンボール城
あまてらす~♪

兜軍団
ヒィ……ッ!!
コレホドノ数ノ城娘ガ来ルナンテ聞イテナイゾ!

桃形兜
アン様……コ、コノママデハ敗北必至……スグニ逃ゲタ方ガイイノデハ!?

アン
逃ゲル?

アン
……このワタシに、また逃げ続けろっていうの!?

桃形兜
ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

千狐
……そ、そんな。

柳川城
仲間の首を……。

やくも
……なんの迷いもなくはね飛ばしたがや。

アン
許せない……。

アン
せっかく良い気分だったのに――。

アン
どうしてワタシの邪魔ばかりするの?

アン
ワタシはこの世界を憎む権利があるのよ?

アン
ワタシには、この世界が許した残虐さを発揮する資格があるのよ?

アンボワーズ城
ええ、たしかにそうかもしれないわね。

アンボワーズ城
けれど、貴方の権能の起源をヘンリーへの憎悪に求めるというのなら、

アンボワーズ城
そこに紛れてしまった偽を暴いてみせることで
貴方の暴威を収めることも可能なのではないかしら?

アン
……何が言いたい、アンボワーズ。

アンボワーズ城
とうに――心の奥底では気づいているのではなくて?

アンボワーズ城
貴方はある一瞬においてはヘンリーを愛していたのよ。

アン
……フ。

アン
フ、フフフ……アハハハハハハッ!!

アン
何を口走るかと思えば、
言うに事欠いてワタシがあの男を愛していたですって?

アン
勘違いも甚だしいわ!

アン
いい? ワタシの人生において、
あの愚劣極まりない王は邪魔者でしかなかった!

アン
ワタシにとって――いえ、お父様の野望にとっては、
そこそこの高位貴族に嫁げればそれで良かった……。

アン
だから、パーシーとの……、

アン
――ノーサンバランド伯家との縁組は、
ワタシにとって考え得る最高の良縁だったのよ!

アン
なのに……。

アンボワーズ城
……ヘンリーがそれを潰した、と?

アン
そうよ。

アン
……当時のイングランド宮廷なんて、フランスに比べれば
粗野で垢抜けない、洗練とは程遠い場所だったわ……。

アン
だから、
ワタシが留学によって培ったフランス仕込みの所作技能すべてが
ヘンリーの劣等感を慰撫するにはちょうどよかったのよ。

アンボワーズ城
そしてキャサリンが男児を産めなかったことも重なって、
貴方への情愛はなおいっそう勢いを増していった……。

アン
ええ、ええっ! 繰り返される流産死産が、
結果としてヘンリーの情愛の矛先を決定づけたのよ!

アンボワーズ城
ならば、素直に受け入れればよかったじゃない。

アン
そんなの……できるわけないわ。

アン
ワタシの姉妹は――メアリはね、かつて王の愛人となり、
子供まで産んだというのに塵屑同然に呆気なく捨てられたのよ?

アン
そんな卑近の悪夢を見ていながら、
どうしてワタシが心を許せようか!

アンボワーズ城
それでも、貴方にだって情はあったはず。

アンボワーズ城
酷たる悪評は多かれ、ヘンリーは誰しもが認めた
美丈夫の才人にして、紛う事なき一国の王よ?

アンボワーズ城
その傑人がひとりの女性へのラブレターを無数に送り、

アンボワーズ城
他国との戦争すら引き起こしかねない言動をとりながら、

アンボワーズ城
更には宗教改革をしてまでもなお、貴方を求め続けた。

アンボワーズ城
……それでも貴方は情けを契機とした愛を、
ヘンリーへ微塵も抱かなかったと断言できる?

アン
――できるわ。

アンボワーズ城
……ッ!?

アン
その瞠目すら、今のワタシにとっては侮辱と同義……。

アン
ワタシの歴史に、あんな男を愛した瞬間なんて絶対にない!

アン
アンボワーズ、貴方が言っているのは、
ヘンリーが夢想した男性特有の優しさだわ。

アン
女は――少なくともワタシは男ほど情に脆くはない。

アン
子犬が主に付き従い、心のままに愛してくれるからって、

アン
ワタシは微笑のままに、その顔面を踏み抜くことができる。

アン
彼の児を孕んだからって何だというの?

アン
何度抱かれようが、幾度耳元で愛を囁かれようが、
ワタシは嫌悪と不快さによって生じた吐き気を必死に飲み込んで、
ただひたすらに我慢してだだけ。

アン
だからこそ、ヘンリーを十年にも渡って振り回すことができた。

アン
だからこそ、ワタシは並び立つ妃の意識を出し抜いて此世に顕現した。

アンボワーズ城
そう……。
じゃあ、どうしても認めないというのね、アン?

アン
くどいぞ、城娘!

ロンドン塔
……アンボワーズさん。
もう言葉だけでは収めることはできません。

ロンドン塔
いまの彼女の憎悪を散じさせるには、
相応の善なる意志をぶつけるしかないのでしょう。

北ノ庄城
ようは、一発ぶん殴って目を醒まさせろってことだろ?

北ノ庄城
古今東西、聞き分けのないガキへの対処なんざ同じものだ。

秋田城
そ、そのように単純化させるのはどうかと思うが…………。

秋田城
けれど、あながち間違いと言い切れないのも確かだ。

秋田城
アン……。
わずかとはいえ、私は自国において君の思念を身に受けた。

秋田城
だからこそ烏滸がましくも、
その苦しみも、憎しみも、ある程度理解していると口にする。

秋田城
……そして、そう理解した上で、私は弓を引き――、

秋田城
君を鎮めてみせるよ。

殿
…………。

アン
……なによ。

アン
どうして、そんな眼でワタシを見るのよ……。

アン
どうしてワタシの心を踏みにじろうとするのよ……。

アン
……いやだ。

アン
もう誰かに人生を左右されるなんてまっぴらだわ。

殿
…………!?

アン
消えろ……!

アン
誰も彼も、みんな消えてしまえ! 

アン
死ねっ! 死ねぇえっ! 死ねぇえええええええ!!

後半
シャンボール城

いっくよぉ~!

シャンボール城
え~~~いっ!!

兜軍団
ギャアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

シュノンソー城
ユッセちゃん、私たちも魔法で援護しますよ!

ユッセ城
……んぅ。
ぼぬにゅ~い~。

シノン城
ふふ、このような激戦地においてもボニュれちゃう、その胆力!

シノン城
さすがはユッセちゃんですねぇ♪

アンボワーズ城
もうっ、姉様……。
こんなときまでユッセを甘やかさないでください。

アンボワーズ城
ユッセ! ここで頑張らないと、
この前貴方にあげたアンボワーズ特製枕、

アンボワーズ城
ビリビリに引き裂くわよ♪

ユッセ城
ええ~……それは困るのぉ……。

ユッセ城
ふぁ~あ……兜たちぃ……さっさと消えてよねぇ……。

兜軍団
ギャアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

柳川城
す、すごい……あれだけの兜を、一瞬で……。

北ノ庄城
ああ、ふざけたヤツらだが、
ロワールの城娘たちってのは化物揃いだぜ!

アン
そ、そんな……ワタシの兵隊たちが……。

秋田城
観念するんだ、アン。

秋田城
これ以上、君と争う気はない。

秋田城
だからどうか……私たちの声に耳を傾けてくれ。

アン
いや……。

アン
……いやよ。

アン
こっちにこないでぇぇぇえええええええええええええええええええええ!!

秋田城
――く、ぁッ!!

千狐
秋田城さん!!

秋田城
大丈夫、だ……この程度、彼女の心の痛みに比べれば……。

アン
ひ……ッ! やめてよ……こないでよぉ……ッ!!

秋田城
怖がらなくていいんだ、アン。

秋田城
憎んだままでも、いいんだ。

秋田城
それ以上の優しさをもって、手を差し伸べる者が此世にはいる。

秋田城
そのことだけは、間違いなく私が保証しよう。

アン
う、ぅぅ……。

秋田城
……さぁ、ロンドン塔。
あとは君自身で決着をつけるんだ。

ロンドン塔
……はい。

アン
…………ッ!

ロンドン塔
アン……。

アン
やめろ……そんな眼で、ワタシを見るなと言ってるのよぉ……!

アン
ワタシはアナタの裡になんか戻らない……。

アン
ワタシの憎悪は、まだ何も成し遂げてはいないのよ……。

アン
絶対に……戻ってなんか……戻ってなんかやるものか……!

ロンドン塔
ええ、わかっていますよ。

ロンドン塔
だからこそ、続きを――。

ロンドン塔
処刑の続きを以て、貴方は私を殺せばいい。

アン
――え?

秋田城
ロンドン塔……!?
な、何をする気だ!

シノン城
自分から処刑台に再び上るなんて……そんなのダメですよぉッ!

ロンドン塔
止めないで、シノンさん。

ロンドン塔
これで、いいのです。

ロンドン塔
彼女が――アンが望むのなら、私はそれを叶えてあげたい。

アン
……どうして。

アン
どうして、そんなにまでワタシの我が儘に応えようとするの?

アン
そうよ……最初から、ずっとおかしかった。

アン
本当なら、貴方はワタシの拘束など解いて、
この悪意を鎮めることができたのに……。

アン
どうしてなのよ!

ロンドン塔
それは――。

ロンドン塔
貴方は私にとっては、我が子のようなものだから。

アン
――ッ!?

ロンドン塔
子を愛さぬ親が、何処にいましょう。

ロンドン塔
それに……私も貴方のように、
多くの為政者によって運命を弄くられたのですよ?

ロンドン塔
当然……貴方が抱える苦しみを解せぬわけがない。

ロンドン塔
だから……せめて城娘として受肉したからには、
子も同然の貴方たちの願いを、可能な限り受け入れたいの。

アン
ロンドン塔……。

アン
…………。

子を愛さぬ親がいるだろうか。

アン
…………。

アン
いるわ。

アン
いたのよ、ロンドン塔。

アン
いや、愛はそこにあったのかもしれない。

アン
けれど、それを自覚することも。

アン
ましてや与える余裕も、

アン
あの時のワタシにはなかった。

アン
産褥の床で憔悴しきっていたワタシは、
ただハズレの児をひいてしまった――と、

アン
そう思い、絶望していただけだったんだもの。

ロンドン塔
…………。

アン
ワタシは……死にたくなかった。

アン
もっと生きていたかった。

アン
そんなふうに、自分のことだけで精一杯だったから……。

アン
あの児を……エリザベスを満足に愛してはやれなかったの……。

ロンドン塔
…………仕方ない、と。
あえて私は言葉を口にしましょう。

ロンドン塔
だって――。

ロンドン塔
世界は貴方を魔女と罵ったもの。

ロンドン塔
王を誘惑し、王妃を追い落とし、
身の程もわきまえぬ悪女と誹った。

ロンドン塔
事情を知っている者すら、
表立って貴方をかばうことはしなかった。

ロンドン塔
スペインやヴァチカンにとっても、
目障りとされた個人が、どうして他者に愛を向けられましょうか。

アン
……。

ロンドン塔
それでも、アン。

ロンドン塔
貴方は間違いなく、身を灼くほどの愛を、
あの王からたしかに受けた瞬間があったわ。

アン
……。

アン
……そうよ。

アン
ヘンリーはワタシを愛した。

アン
それでも、男児を産めないワタシを彼は憎んだのよ。

アン
だって、ワタシを愛してしまった己を憎みたくはなかったから。

アン
まったく……あれこそがホルバインが描いた残忍さだ。

アン
なんて――つまらない男。

アン
生まれついての野卑ってものはどうしようもないわ。

アン
あれだけの恋をしておきながら、
ヘンリーの心には愛の欠片はひとつも残っていなかった。

ロンドン塔
そして……愛が強かった分、憎しみも強くなる。

ロンドン塔
とても陳腐な……ありふれた論理。

ロンドン塔
けれど、それは有用であり効果的であるからこそ陳腐となりえた汎用さ。

ロンドン塔
ゆえにその論理を貴方にあてはめれば……、

ロンドン塔
貴方にも、ヘンリーへの愛があったという歴史が導き出せるわ、アン。

アン
――ッ!?

ロンドン塔
いまの貴方は彼を憎んでいる。

ロンドン塔
それは、愛がたしかに在ったという証。

アン
そんなの詭弁だわ。

ロンドン塔
そうかもしれません……。

ロンドン塔
けれど、貴方に愛があったから、

ロンドン塔
そして、ヘンリーにも愛があったから。

ロンドン塔
エリザベスはグッド・クイーン・ベスと賞されるほどの運命の女王となり、
先王を遙かに凌駕して、イングランドを真の意味での強国に押し上げた。

ロンドン塔
……貴方は知らないでしょう。

ロンドン塔
ふたりの愛が、世界の歴史に燦然と輝くほどの名君を産んだのよ。

アン
…………。

アン
……ハァ。

アン
ズルいわ、ロンドン塔。

アン
そこまで、アン・ブーリンの歴史を美化されてしまった今、
ワタシに残された手段は――ワタシ自身を否定する以外にはなくなってしまった。

アン
それだけは、絶対にいや……。

アン
世界すべてを否定しても、ワタシはワタシ自身を否定したくはないもの。

ロンドン塔
なら、私の許へ戻ってきてくれる?

アン
今さら問うなんて、それこそ卑怯よ。

アン
……そうしなくてはいけない境地に、貴方が追い込んだくせに。

ロンドン塔
……うん。それも、ちゃんと解ってます。

アン
でも……まぁ……。

アン
これは完全な承服ではないけれど……、
しばらくの間は、タワー・グリーンで大人しくしてあげてもいいわ。

ロンドン塔
……アン。

アン
けれど、ワタシはもう
名も無き幽霊――ジェーン・ドウズ (Jane Does) ではない。

アン
アン・ブーリン(Anne Boleyn)。

アン
それが、アナタに棲み着く幽霊のひとりが持ち得た名よ。

ロンドン塔
ええ……その名の意味を、私はどうしようもないほどに識っているわ。

ロンドン塔
それに私だけではなく、ここにいる皆が、貴方の名を刻んだはずです。

アン
…………。

アン
……でも、勘違いしないでよね!

アン
もしまた腹立たしいことがあったら、
貴方を断頭台にかけてやるんだから。

ロンドン塔
ええ。思いを隠されるくらいなら、
そっちの方がずっと清々しいわ。

アン
ふん……言ってなさい、ロンドン塔。

殿
――ッ!?

やくも
アンの姿が消えていくだに!?

北ノ庄城
どうやら、これにて一件落着……みたいだな。

柳川城
ええ。そのようですね。

ロンドン塔
――う、ぅぅ。

シノン城
だ、大丈夫ですか、ロンドン塔さん!?

ロンドン塔
は、はい。
少しふらついてしまっただけで……。

ロンドン塔
それよりもごめんなさい。
私たちのせいで……皆さんに、迷惑をかけてしまいました……。

シュノンソー城
お気になさらずに。
ロワールの城娘は、この程度の戦いで傷つきはしませんもの。

シャンボール城
うんうん!
こうみえてもシャンボールは強いんだから~♪

シャンボール城
……って、あれ?

ユッセ城
…………ぼにゅ~。

アンボワーズ城
やれやれ、すっかりおねむのようね。

ユッセ城
だってぇ……話が長すぎるんだもぉん……ふわ~ぁ。

ユッセ城
……ねぇ。それよりもさぁ……。

ユッセ城
どうしてロンドン塔ちゃん……またお着替えしてるのぉ?

ロンドン塔
……え?

ロンドン塔
あ……あれ?

アンボワーズ城
ふふ、色々と決着がついたので、
万能たる早技で私がさらりと瞬着させちゃいました♪

北ノ庄城
お、おいおい……。
へたに着せたら、また妙なことが起きやしないか?

秋田城
いや、その心配はないよ、北ノ庄城。

秋田城
同じ城娘ならば感じ取れるはずさ。ロンドン塔の霊気が、
出逢った時とは比べものにならないほどに澄み切っているのをね。

シュノンソー城
……ええ。きっとアンも、
ロンドン塔さんがその姿でいることを許してくれたのでしょう。

シャンボール城
というよりむしろ、もっとも~っと、
たくさんの人に見てもらいたくなっちゃったんじゃないのかな?

北ノ庄城
……なるほどな。

北ノ庄城
んじゃあ、いっそのこと、
秋田城ん時にやれなかった披露会を、
ここでやっちまうってのはどうだ?

ロンドン塔
……え?

シノン城
わぁ、それすごく良い考えだと思いますぅ!

秋田城
ま、待ってくれ……。
そうなるともしかして私も、なのか?

北ノ庄城
ったりめぇーだろ?
西洋の城娘ばっかりに花を持たせるのは口惜しいからな。

やくも
……とか言って、
自分の作った白無垢を見せびらかしたいだけなんじゃないがや?

北ノ庄城
う、うっせぇ!
そういうんじゃねーし!

アンボワーズ城
うふふ、照れなくてもいいですわ、北ノ庄城さん。

アンボワーズ城
だって私も、自作の衣装を見せびらかしたい気持ち、解りますもの♪

シノン城
のわっ!?
アンボワーズちゃん、いつのまにそんなものを!?

柳川城
……そう言ってるシノン城さんも花嫁衣装になってますが!?

シノン城
オーラララッ!?

シノン城
もうっ、アンボワーズちゃんったら、また勝手にこんなことして~!

アンボワーズ城
まあまあ、いいじゃないですかぁ~。
姉妹揃っての結婚式というのもアリですわ♪

殿
…………。

殿
…………。

秋田城
そうだね、殿。
こうして装いを変えるだけでも、城娘には多くの事柄が作用するんだ。

秋田城
意味は、その時々で変わってくるけれど、

秋田城
それでも今のロンドン塔にとっては、
あの姿を見てもらうことが肯定的な意味合いを持つに至ったわけさ。

北ノ庄城
だな。

北ノ庄城
でもって、盛大に仲間同士で祝えば、
アンのヤツも当分は癇癪起こさずに済むだろうよ。

アン
――ちょっと、ひとを癇癪玉みたいに言わないでくれる?

北ノ庄城
げぇ――ッ!?
こ、声が! アンの声がしたぞ!? 

秋田城
ど、どうやら、ロンドン塔の後ろにいる幽霊が喋ってるみたいだね。

ロンドン塔
びっくりさせてしまってごめんなさい……。
どうやら私の裡に戻った彼女の意識が、
ジェーンの霊体の大部分を制御してるみたいです。

アン
――ふふ。そう嫌そうな顔をしないでよね、ロンドン塔。

アン
――どうせ披露会を経てしまえば、ワタシの意識はジェーンの中に溶けていくのだから。

アン
――けれど、ただ参加するだけじゃダメよ。

アン
――ワタシを満足させるために、
アナタは披露会でもっとも華やかに、
そして優雅に振る舞うの。わかった?

ロンドン塔
そ、それは……私に対する意地悪ですか?

アン
――ばか、違うわよ。

アン
――ワタシはアン・ブーリン。

アン
――妃として、誰よりも盛大な祝を受けたいと思うのは当然じゃない。

殿
…………。

――こうして後日、ロンドン塔を含めた四人の花嫁は、
多国にわたる衆目の中で、盛大な歓声に包まれることとなるのだった。

そして、宴が終わり。

城娘たちは、それぞれの日常へと戻っていく。

――異国・海岸。

アンボワーズ城
いやはや。
それにしても豪勢な披露会でしたね、姉様。

シノン城
はい。主様たちも楽しんでくれていましたし、
秋田城さんの白無垢も本当に綺麗でした♪

シノン城
……けど、アンボワーズちゃん。

アンボワーズ城
ん……?

シノン城
今回の件は、少しやりすぎだよ。

アンボワーズ城
……えっと、

アンボワーズ城
やりすぎ――とは、いったいどういうことでしょうか、姉様?

シノン城
私が、気づいてないとでも思ってたの?

シノン城
アンボワーズちゃんは、ロンドン塔さんの身に起こることも、
日の本で起こることも、全て予想していたのでしょう?

アンボワーズ城
……全て、って……。

アンボワーズ城
どうして、そう思うのですか?

シノン城
私、ついこの前も言ったよね。

シノン城
アンボワーズちゃんは、
気まぐれに何かをする――ということはしない娘だって。

シノン城
それに……。

シノン城
貴方から受け取った白布を、
主様たちへのお土産にすると言った時にも、

シノン城
アンボワーズちゃんは――、

シノン城
「『何となく』シノン姉様なら、
そう言うんじゃないかって思ってましたもの。」

シノン城
――って、そう答えたから。

シノン城
さすがの私でも、気づいちゃうよ。

アンボワーズ城
…………。

アンボワーズ城
……はぁ。さすがは姉様。

アンボワーズ城
見事な推理ですわ♪

シノン城
アンボワーズちゃん。
私、けっこう怒ってるんだよ?

シノン城
……ねえ。
どうしてあんなことをしようと思ったの?

シノン城
勿論、大事には至らないことを
確信した上での決断であることは解ってるけど、

シノン城
それでも、やっぱり腑に落ちないよ。

アンボワーズ城
……そう思うのも無理はないですわ。

アンボワーズ城
此度の言動の根源――。

アンボワーズ城
それはアンの幼少期に因るものですから。

アンボワーズ城
彼女も――あの戦場で言っていたでしょう?

アンボワーズ城
アンの父親には野心があった、と。

アンボワーズ城
それは娘に、貴婦人としての十全な教育を授けることで、
いつの日か王妃付き女官にあげ、高位貴族に嫁がせたいという願い。

アンボワーズ城
そして、彼はそのためにうってつけの学校を見つけたのです。

アンボワーズ城
それがブルゴーニュ提督マルガレーテ・フォン・エスターライヒの宮廷だった。

アンボワーズ城
当代のブルゴーニュは優れた教育機関的性格の宮廷として名が高まり、
ヨーロッパ中の貴族の子女が集まっていましたからね。

アンボワーズ城
而して――アンの単身留学はすぐに決まった。

アンボワーズ城
けれどその一年後、スペインとイングランドの関係悪化と、
ヘンリー八世の妹がルイ十二世の後添えに決まったことにより、
アンは王妃に仕えるべくフランスへ移るよう命じられることとなる。

アンボワーズ城
しかし、ルイ十二世は結婚後わずか数ヶ月で病に没し、
元王妃は早々にイングランドに帰ってしまったのです。

アンボワーズ城
――けれどアンだけは、
そのまま新王の妃クロード付き女官としてフランスに留まった。

アンボワーズ城
既にフランス語が堪能だった彼女が、
クロード妃に重宝されるのは然もありなん。

アンボワーズ城
そうしてアンは、イングランドの娘でありながら、
我らフランスの華麗な諸々を会得するに至るのですわ。

シノン城
ちょ、ちょっと待って、アンボワーズちゃん!
長々と話してくれたけど、それと今回の一件と何の関係が――、

アンボワーズ城
――姉様。
当時のフランス王は誰でしたか?

シノン城
……あ。

シノン城
そっか……。
遊び好きのフランソワちゃんか。

シノン城
戦場を駆け回るついでみたいに、
綺麗な女の子たちをも追っかけ回してたから、よく覚えてる。

シノン城
まあ、それ以上に覚えてるのは、
フランスに素敵な文化の花を持ち込んでくれたことだけどね。

アンボワーズ城
ええ、そうです。歴代の王のうちアンリ四世と
人気を二分するほどの派手な君主・フランソワ一世ですわ。

アンボワーズ城
そしてフランソワは即位まもなくミラノへ遠征し、
そこで触れた先進的なイタリア文化の虜となる。

アンボワーズ城
果たして彼は――絵画や彫刻、書籍や贅沢品を収集し、
更には大勢の芸術家を自国へと招いて庇護したのですわ。

シノン城
……ということは、もしかして…………。

アンボワーズ城
ええ、
そのひとりが、レオナルド。

アンボワーズ城
わたしの万能たる所以――アンボワーズに縁深きレオナルド・ダ・ヴィンチですわ。

シノン城
ということは、レオナルドとアンは出逢ったことがあったの!?

アンボワーズ城
ふふ、そこは姉様の想像にお任せしますわ。

アンボワーズ城
けれど、私がこうして今回のような行動に
出たということは、何かしらの縁があったという証。

アンボワーズ城
そうした諸々が作用して、いつしか私はロンドン塔のことを案じるようになり、

アンボワーズ城
そして彼女に棲み着く亡霊たちの鬱屈したエネルギーを発散させるためにと
今回の話を持ちかけ――同時に彼女もまた、それに同意したのです。

シノン城
……なるほど。

シノン城
けど、ちょっとまってアンボワーズちゃん。

アンボワーズ城
……?

シノン城
私――やっぱり気になっちゃうな。

アンボワーズ城
え……?

シノン城
ロンドン塔さんともあろう城娘が、
どうしてそのように他者を巻き込む可能性を是認したのか。

シノン城
……考えられるとすれば、そこには彼女個人には収まらない、
もっと大局的な何かが関係してしまっているような気がするんだけどぉ……。

アンボワーズ城
ああ……姉様。

アンボワーズ城
やっぱり、シノン姉様は素晴らしいですわ♪

アンボワーズ城
そうです……此度の異事は、
実を言えば今後のためでもあったのですわ。

アンボワーズ城
端的に言ってあれは――、
此世におけるゴーストが外的要因によって実態を持つに至るという、
まさにその容易さ自体の計測に他ならない。

シノン城
……計測?

アンボワーズ城
ええ。そも、ロンドン塔さんの背後には、
どうしてあのような特異な存在がいるのでしょうか?

アンボワーズ城
漫然と疑問に思えど、
誰もそれ以上に真剣な思考を巡らそうとはしない。

シノン城
……な、何が、言いたいの、アンボワーズちゃん?

アンボワーズ城
シノン姉様……これは、
万能たる我が業が紡ぎ出した戯言のひとつですが――。

――もはや此世と隠世の境は消えかかっているのでは?

シノン城
…………。

シノン城
なるほど……その言葉で、
ようやくアンボワーズちゃんの真意が解ったような気がする。

アンボワーズ城
…………ふふ。

シノン城
でもね――大義があるとはいえ、何の相談もなく、
日の本の皆さんを巻き込んだのは許されないことだよ。

アンボワーズ城
わかっています。

アンボワーズ城
だから、姉様に此度の媒を託した。

アンボワーズ城
……これがどういう意味か、わかりますか?

シノン城
私ならば気がつく。

シノン城
私ならば貴方を容赦無く罰すると――そう思ったから?

アンボワーズ城
ウィッ♪

シノン城
…………。

アンボワーズ城
…………。

シノン城
ふーむ。

シノン城
解りました……。そういうことなら――、

シノン城
しばらくの間は私と一緒に反省のぶつかり稽古ですね!

アンボワーズ城
……いや、それはさすがに姉様とでも、ちょっとイヤかも…………。

シノン城
その忌避も含めての罰ということなんですけどぉ?

アンボワーズ城
う……。
姉様、たまーにすごく残酷ですよね。

シノン城
ふふ。

シノン城
――まあ、いまのは半分くらい冗談として、

アンボワーズ城
(半分は本気なんだ……)

シノン城
此度の異事において、悪点以上に善点が多かったのは私も認めます。

アンボワーズ城
というと――そのひとつは、
私やロンドン塔の言動が結果として、
アンの裡に在った愛を示したこと……なのでしょうか?

シノン城
ウィ☆

シノン城
私は心の奥底においては、アンボワーズちゃんほど、
歴史を肯定できる城娘ではないからだろうけど……。

シノン城
アン・ブーリンの悲劇に光を見いだせたことは、
これからの人生においては目映いほどの希望になった気がするの。

アンボワーズ城
そんな、少し大袈裟すぎるのではありませんか、姉様?

シノン城
ううん。

シノン城
私にとっては、やっぱりまだ愛というものは、
知識の裡での幻影でしかないから。

シノン城
――愛があるからこそ憎しみがある。

シノン城
――憎しみがあるからこそ愛がある。

シノン城
そうしたシンプルな原理の大切さを、
改めて思い出せたのは大事だと思う。

シノン城
だから――、

シノン城
オモサゲナガンス!

アンボワーズ城
もう、姉様ったら。
また珍妙な日の本言葉を使って……。

アンボワーズ城
――ここで私は微笑む。

アンボワーズ城
愛を与えてくれる姉様のために、

アンボワーズ城
けれど『私だけ』に注がれることのない、
分散された感情を得るために、

アンボワーズ城
私は微笑んだ。

アンボワーズ城
――でもね、シノン姉様。

アンボワーズ城
本当は、もっと簡単な真理があることを、
あの時も――そしてこの時も、私は終ぞ貴方には言えませんでした。

アンボワーズ城
それは、逆説的な思考によって見えてくる残酷な真実。

アンボワーズ城
ヘンリーは、アンを塵屑同然に処刑した。

アンボワーズ城
それは愛憎の反転が招いた惨たらしい結果。

アンボワーズ城
――反転。

アンボワーズ城
愛を覆すのが憎しみならば、憎しみを覆すのもまた愛でしかない。

アンボワーズ城
そう。

アンボワーズ城
アンはいつかどこかの刹那に、ヘンリーを愛してしまった。

アンボワーズ城
だからこそ、ヘンリーはアンに失望したのだ。

アンボワーズ城
狩人の標的であった美しい雌鹿は、

アンボワーズ城
その俊敏さゆえに、

アンボワーズ城
その奔放さゆえに、

アンボワーズ城
どこまでも輝かしい魅力を振りまけたのよ。

アンボワーズ城
けれど、いつしか狩りは終わってしまった。

手中に収まった愛ほど、無価値なものはないのだから――。



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