ストーリーテキスト/茶馬古道の麗しき工本

ページ名:ストーリーテキスト/茶馬古道の麗しき工本

目次

茶馬古道の麗しき工本[]

茶馬古道の麗しき工本 -序-

――邯鄲の枕に再び邪なる気が満ち始める。
異事を察知した邯鄲と岩櫃城は、遠き地に存する
麗江古城なる城娘に助けを求めることに……。

前半
あるところに、賢くすばやい者とのろまな者がいた。

前者はたづなを握る〈人〉となり、

後者は〈人〉に寄り添う〈馬〉となった。

やがて、両者は豊かな大地から旅立った。

伴侶を求めし希望の旅である。

〈人〉となった者は良き心と才を持っていた。

故に求めし大抵は手に入れることができた。

だが、良き伴侶にだけは終ぞ巡り会うことがなく、

結局〈人〉は、あの夜空にまで愛しき者を探しにいくことになるのであった――。

岩櫃城
――と。だいたいこんなもんですかね?

邯鄲
おおーっ! すごいです、岩櫃城さん!

邯鄲
まさか、こんなにも早く『トンパ文字』の基礎を
習得してしまうとは思いませんでした!

岩櫃城
思いませんでしたって……。

岩櫃城
何とか今日までに覚えてほしいって
お願いしてきたのは邯鄲ちゃんでしょう?

邯鄲
それはそうなのですが、いやはや……。

邯鄲
岩櫃城さんの文字に対する適性は想像以上でした。

岩櫃城
ふっふーんっ! だてに殿に何百通も恋文を送ってませんからね!

岩櫃城
……って、それよりも邯鄲ちゃん。
本当に私が『この手紙』を書いちゃっていいんだね?

邯鄲
はい!

邯鄲
むしろ岩櫃城さんにこそ書いていただきたいのです。

邯鄲
日の本の城娘がしたためた文なればこそ、
麗ちゃんも重い腰をあげてくれるでしょうからね。

岩櫃城
……そういうことなら、

岩櫃城
よぉし、岩櫃城――気合い入れて書いちゃいますよぉー!!

――数日後。

柳川城
ん~~~~っ。

柳川城
今日も良い日柄ですねぇ……。
これならば洗濯物もさぞ乾くことでしょう。

柳川城
さて、殿がお目覚めになる前に朝餉の仕度をしなくては――

柳川城
――っ!?

柳川城
(なに……この霊気は……)

柳川城
(敵ではない……けれど、城娘にしては、あまりにも強大な――)

???
ほう。秘していた我の気を捉えるとは、
お前……なかなかにやるようだな。

柳川城
え……!?

???
動くな……。

柳川城
…………っ。

???
ふむ……驚愕すれど悲鳴はあげぬか。
胆力も十二分に備えているところを見るに主の質も窺えよう。

???
邯鄲のやつめが呼びつけた時はどうしたものかと思ったが、

???
思っていた以上に愉しめそうだな……。

柳川城
あ、あなたは……いったい?

邯鄲
あ~っ!! もう来てたんだね、麗ちゃーんっ!!

???
麗ちゃんとはまた面妖な呼称を……。

???
相変わらずだな、邯鄲よ。

邯鄲
えへへ、麗ちゃんこそ以前と変わりなく偉そうですねー。

???
それはお前がそう感じるだけのこと……。

???
我はただ貞淑に振る舞っているだけだ。

柳川城
あ、あの……。

邯鄲
……ん?

邯鄲
あっ、ごめんなさい柳川城さん!
紹介が遅れてしまいましたね。

邯鄲
こちらは――

???
よせ、名乗りくらい自分でできる。

邯鄲
むぅ……。

麗江古城
我の名は麗江古城。
邯鄲と同じく海の向こうで生まれた城娘なり。

柳川城
……い、異国の城娘さん……ですか?

麗江古城
然り……。

麗江古城
そして我は邯鄲からの要請を受け、急ぎ此の地に来たのだが、

柳川城
…………。

麗江古城
その様子ではどうやら、話は通っていないようだな。

邯鄲
ごめんなさい……。今回の件はその性質上、
なるべく少人数で内密に事を進めたかったのです。

柳川城
……ど、どういうことなのでしょうか?

邯鄲
ここは人通りが多すぎます。とりあえず所領内の神社に
殿たちを集めていただけますか? 詳しい話はそこで……!

柳川城
わ、わかりました!

――半刻後。

柳川城
ええっ!? 邯鄲さんの枕に、再び不穏な気が満ち始めている……ですか!?

邯鄲
はい……。

やくも
邯鄲の枕って……確か前にアレを使った千狐や城娘さんたちが、
みんなして起きなくなっちゃったってやつがや?

邯鄲
そうです。その枕にございます……。

柳川城
でもそれは、邯鄲さんの枕が兜たちの瘴気に
晒されてしまったことで生じた異事だったはず……。

やくも
そうだに! あの時に夢世界で殿さんたちが
邪気と戦ったことで解決したんじゃなかったがや?

邯鄲
表面的にはそう見えていたかもしれません……。

邯鄲
ですが、あの時……古河城さんが使用した枕にだけ、
巨大兜の姿を持った異形が現れたのを覚えていますか?

柳川城
……はい。
確か『呂布』の名を冠する巨大兜と形容したはずですが。

邯鄲
そうです……。
そして我々はあの異形と戦い、撃退に成功しました。

邯鄲
けど、覚えていませんか? 

邯鄲
我々はヤツを完全には滅ぼすことができず……、
結果として邪気は夢世界の深層へと己の残滓を沈ませていったのです。

邯鄲
だからこそ私は千狐さんに頼んで所領内の最も清浄な地である、
この社に枕を納め、あの後もつぶさに経過を見守ってきました。

やくも
けど結局は、邪気の活性化は防げなかったってことがや……?

千狐
そうね……けど、もともとの目算においても、
切掛さえあればいつ邪気が増幅してもおかしくはなかったの。

千狐
ただ、これほど早い時点だとは思いもしなかったわ……。

殿
…………。

邯鄲
分かっています。
事態の発端は総て私の過失に因りますから……。

邯鄲
私と麗ちゃんとで此度の異事への対処を施そうと思ったのです。

???
――って、ちょっと待ってくださいよー!!

殿
…………?

岩櫃城
もう、麗さんへの手紙まで書かせておいて、
私だけのけ者にするなんてひどいですよぉ!

千狐
い、岩櫃城さん!?

やくも
どーしてあんたがここに?

岩櫃城
へ?

岩櫃城
もぉ、邯鄲ちゃんってば本当に何も話してなかったのですね!

邯鄲
ご、ごめんなさい……。

邯鄲
ですが、これも岩櫃城さんのことを思えばこそです。
……今から向かう夢世界はとっても危険な場所なのですよ?

岩櫃城
だったら尚のこと私が行かなくちゃダメじゃん!

岩櫃城
それに、見たところ……、

岩櫃城
殿もいく気満々って感じですもんね?

殿
…………。

殿
…………!

邯鄲
……え?

邯鄲
て、手伝うって……いけません!
殿をまた危険な目に遭わせるわけには――。

富山城
邯鄲、そうやってひとりで背負い込もうと
する癖はまだ直ってないようだね。

邯鄲
――富山城ちゃん!?

邯鄲
どうして、ここに……?

富山城
どうしてもなにも、キミの様子が近頃おかしかったからね。

富山城
だいたい、こんな朝早くからキミが起きている時点で、
不審に思わない方がおかしいってものさ。

邯鄲
うぅぅ……心配されてるのか貶されてるのか分からないよぉ……。

富山城
少なくとも、ここにいる皆はキミを気に掛けている。

富山城
そうだろう、柳川城ちゃん?

柳川城
はい、私にもお手伝いさせてください!

殿
…………!

邯鄲
皆さん……。

邯鄲
ありがとうございます!

麗江古城
ふん……どうでもいいが、さっさと夢世界へ遷移したらどうだ?

麗江古城
グズグズするだけ対処も難しくなるのだからな。

邯鄲
そ、そうでしたね……!

邯鄲
それでは、実際に夢世界へと潜入する顔触れを決めましょう。

やくも
……え? みんなして行くんじゃないがや?

邯鄲
そうできれば、一番いいのですが……。

邯鄲
今回の作戦は潜入人数が多すぎても少なすぎても危険にございます……。

邯鄲
今から向かう夢世界は、既に元となった
古河城さんのものとは全くの別物となっていますから、

邯鄲
強靭な精神力を保てない者にとっては、
そこに立つだけで精神に異常を来す可能性があります。

やくも
そ、そげん恐ろしい場所なら、
今回はうち……大人しくしといた方がええかもしれんね。

邯鄲
それに私も、外部から夢世界の状況の維持と
調整をしなくてはなりませんから同行することはできませんし、

邯鄲
補助をしていただくためにも、千狐さんと
富山城ちゃんにも此処に残っていただきたいと思っています。

富山城
そういうことなら仕方ないね……。

千狐
はい、千狐も可能な限り邯鄲さんをお支えしますわ!

殿
…………。

麗江古城
ということだ。我と同行する者は
これで決まったわけだが心の準備はいいか?

殿
…………!

柳川城
はい、頑張ります!

岩櫃城
えへへ、殿と一緒ならばどんなところでも付き従いますよ!

殿
…………。

麗江古城
では、遷移するとしよう。

麗江古城
邯鄲……しくじるなよ?

邯鄲
それは麗ちゃんも、ですよ。

邯鄲
危険だと感じたらすぐに脱出してくださいね?

麗江古城
ふっ……何を言うかと思えば。

麗江古城
心配などいらぬっ、すべて我に任せておけ!
お前の友として万全なる働きをしてやろう!

邯鄲
……うん!

邯鄲
ではみなさん、急いで寝る準備をしてください!
睡眠状態に入った後、私の力で皆さんを夢世界へと飛ばします!

柳川城
(や、やっぱり今回も寝なくてはいけないのですね……)

――数刻後・夢世界。

麗江古城
…………。

岩櫃城
ごめんなさ~~~いっ! 
岩櫃城、ただいま到着ですぅ……!!

麗江古城
遅い――!
これだけ待たせるとはどういう了見だ!

柳川城
ほ、本当に申し訳ありません……。

岩櫃城
でも、こればっかりはしょうがないですよぉ……。
柳川城さんに至っては先ほど起きたばかりなのですからぁ。

麗江古城
…………。

麗江古城
そうか。ならば仕方ないな。

岩櫃城
……あ、あれ?

麗江古城
どうしたのだ?

岩櫃城
いや、麗さんって傲岸不遜な雰囲気だしてますから、
もっとメチャクチャに怒るものだと……。

麗江古城
ふっ……何の冗談だ、それは?

麗江古城
理不尽に怒気を奔騰させるなど無能たる
上官でもあるまいし我がやるわけなかろう。

麗江古城
それよりも――。

言って、麗江古城は中空へと視線を移す。

麗江古城
邯鄲、聞こえるか?

邯鄲
『はい……! しっかりと麗ちゃんたちの存在を捉えてますよぉー!』

殿
――っ!?

岩櫃城
頭上から……こ、声が……!

柳川城
これは……邯鄲さんのものですね?

麗江古城
さすがは夢にまつわる城娘……といったところか。

麗江古城
よし、準備は整ったな。邯鄲よ。
我等が進むべき方角を示せ。

麗江古城
ここからの先導はすべてお前に委ねるのだからな。

邯鄲
『はいっ! それではさっそく東に向かって歩を進めてください!』

殿
…………!

麗江古城
うむ、くれぐれも油断するでないぞ、殿?

――四半刻後。

殿
…………。

邯鄲
『殿、そこです! そのあたりに深層部へ進む為の〈解〉があるようです』

柳川城
解と言われましても……見渡す限り、
変わったものがあるようには見えませんが?

岩櫃城
あっ、もしかして……!

岩櫃城
心の眼で見ろってやつですか!?

麗江古城
阿呆……そのように曖昧な作法で捉えられるものではないわ。

麗江古城
解は邯鄲のように夢の調律者のみが捉えられるもの……。
我等が視認することはできぬ。

麗江古城
それよりも我らが気にすべきは
解の周囲に揺蕩う邪気を祓うことにあろう。

岩櫃城
周囲に揺蕩う邪気って……、

柳川城
もしかして――!

殿
――っ!?

兜軍団
侵入者ヲ発見セリ……即刻排除スル……。
……侵入者ヲ発見セリ……即刻排除スル……。
…………侵入者ヲ発見セリ……即刻排除スル……。

岩櫃城
か、兜……!? どうして夢世界に兜がいるんですか!?

麗江古城
否……あれは兜にあって兜にあらず。

麗江古城
此処に在する邪気が我らの抱える想念に応じて、
恐れに近き姿形を為してみせているだけのこと……。

麗江古城
柳川、岩櫃……敵の姿形に惑わされることはない。
己が力をただ振るえばいいのだ――往くぞ!!

柳川城
はいっ!

岩櫃城
了解! 殿、指揮はお任せしましたよ!!

後半
麗江古城

掃討完了……。

麗江古城
ふむ、思った以上に脆弱な輩だったな。

柳川城
すごい……あれだけの数の兜をあっさりと相手取るなんて。

岩櫃城
けど……。

岩櫃城
思ったほど強い城娘――とは感じませんでしたね。

柳川城
え……?

麗江古城
ほう、面白いことを言う……。

麗江古城
して、その真意は如何なものか。

麗江古城
応えようによっては顔面に一打浴びせることもやぶさかではないぞ?

岩櫃城
惚けたって無駄ですよ。

岩櫃城
だって貴方の拳には、どこか違和感がありましたもの。

岩櫃城
正直に言ってください。何気に調子わるいんじゃないですか?

麗江古城
ふっ……。

麗江古城
……ふふふ。

麗江古城
岩櫃……お前とは手紙のやりとりを
数回おこなっただけの仲ではあるが……、

麗江古城
どうやら我はお前の真価を見誤っていたようだ。

麗江古城
天険の山城にして……音に聞く上田、
大坂ら名城の原型とも賞された岩櫃城――。

麗江古城
任務に支障なくば隠し通すつもりでいたが、
其の慧眼の前では礼を失するに価しよう。

麗江古城
……実を言えば、この夢世界に侵入した時から、
我の力は平時の数分の一にまで下っているのだ。

殿
――ッ!?

柳川城
どうして、そのようなことが?

麗江古城
それは――

邯鄲
『――それは、今現在みなさんがいる場所の邪気が影響しているのです』

柳川城
邯鄲さん……!?

邯鄲
『そも現状の夢世界は、歪に増加した邪気に充ち満ちる魔境――』

邯鄲
『普通なら我ら城娘が入ることすら適わぬほどの空間となっているのですが、』

邯鄲
『そうした邪気の影響を一身に受けているのが、そこにいる麗ちゃんなのです』

岩櫃城
まるで避雷針みたいですね……。

邯鄲
『言い得て妙ですね……。ですが、そうした役割は
世界に名高き麗ちゃんだからこそ果たせる役割なのです』

邯鄲
『とはいえ、今の麗ちゃんの消耗は想像以上です……。
何とかして力を十全なるものに近づけたいところですが』

麗江古城
心配は無用ぞ……。

麗江古城
見たところ、当座の空間は我の内奥に左右しているようだ。
気色も我が故郷に近きものになっているのがその証拠……。

麗江古城
ならば我に縁深き代物も、ほれこのように――。

岩櫃城
そ、それは!?

麗江古城
『麗江駝鈴』……我が故郷においては馬につける鈴として知られている。

麗江古城
ふっ……ご丁寧に我に縁深きトンパ文字まで
記されているとは夢世界ながらに芸が細かいな。

邯鄲
『麗ちゃんの故郷では、馬と文字が大きな存在となっていますからね』

麗江古城
ああ。言語の知識は未知への扉……此度の要請に
応じたのもトンパ文字を使用しての手紙を日の本の城娘――。

麗江古城
そう、岩櫃城から送られてきたからこその応対であるからな。

岩櫃城
邯鄲ちゃんから話は聞いてたけど、やっぱり本当だったんだ……。

麗江古城
我の名だけに興味を持つのではなく、
我の文化に関心を示した者は珍しいからな。

麗江古城
邯鄲からの入れ知恵だとはいえトンパ文字にて
手紙を送られては我の心も揺れ動くというもの。

麗江古城
……とはいえ、馬を以て駆け付けられなかったのは残念だがな。

柳川城
邯鄲さんが仰っていましたが、麗江古城さんは馬もお好きなのですね?

麗江古城
好き嫌いの次元ではない。

麗江古城
人と馬とが共存する家こそが我にとっての理想の家庭像なのだ。

麗江古城
勿論、馬の肉も口にはしないし、
馬の皮で作った衣類を身につけることもせぬ……。

麗江古城
いいか? 我の前で馬を蔑ろにしてみろ?

麗江古城
ただではおかぬからな。

柳川城
は、はい……。
肝に銘じておきます。

邯鄲
『って、話が逸れてますよ、麗ちゃん!』

邯鄲
『その麗江駝鈴は、結局のところ使えそうなのですか?』

麗江古城
ああ。実物までとは言わぬが、
邪気に対抗するための力をそれぞれに備えているようだ。

岩櫃城
では、それを多く集めることができれば――。

麗江古城
うむ。我の力を元の状態に近づけることができよう。

麗江古城
まぁ……必須とは言えぬが、これより深き階層へと移動した際、
どのような輩が現れるか分からぬ。ある程度の収集を勧めるぞ。

殿
…………。

邯鄲
『もう、素直に集めるの手伝って――って言えばいいのに』

麗江古城
し、仕方なかろう……! 異国の地……それも出会った
ばかりの城娘たちへの願い出なのだ。我とて遠慮ぐらいする。

岩櫃城
ふふ、なーんか常に強者感だしてる麗さんですけど、

岩櫃城
意外と可愛いところあるじゃないですか~このこのぉ。

麗江古城
可愛い……?

麗江古城
我が可愛い、か……。

麗江古城
ふふ、美しいと形容されることは多いが、
そのように言われたのは初めてだ……。

岩櫃城
あ、あれ?
皮肉のつもりで言ったのですが……。

麗江古城
…………。(うっとり)

岩櫃城
まぁ、いいでしょう! 殿のお力となってくださるのならば、
麗江駝鈴を収集しつつ深部へと向かうことにしましょうか!

殿
…………!

柳川城
それでは、殿。
邯鄲さんの導きのもと深部へと向かいましょう!

茶馬古道の麗しき工本 -破-

邯鄲の枕に生じた異事を解決せんがため、
夢世界へと乗り込んだ殿たち。だが、深部へと
遷移した先で一行は思いも寄らぬものを目にする。

前半
殿

…………。

邯鄲
『どうやら無事に階層の遷移ができたようですね!』

麗江古城
ふむ…………其の証左か、
感じる不快さが明らかに増したな。

柳川城
何が出てくるか分かりません。
気を引き締めていかねば――

柳川城
――って、あれ?

柳川城
どうしたのですか、岩櫃城さん?

岩櫃城
いや……駝鈴が落ちてないかなって思ってあちこち見てたのですが、

岩櫃城
さっきから地面に奇妙な紙片が落ちまくってないですか?

麗江古城
確かに。これはいったい……?

柳川城
手記――でしょうか?
見たところ文字が書いてあるようですが。

麗江古城
どれ、貸してみよ。
我にかかれば如何な言語であろうと読んでみせ――

麗江古城
――っ!?

岩櫃城
なんですか? 衝撃的な内容が書いてある感じですか!?

麗江古城
『拝啓、愛しき殿へ……』

岩櫃城
……!?

麗江古城
『たとえ振り返ってくれなくても、私は恋しい貴方を待ちましょう』

柳川城
こ、これは……殿に宛てて書いた誰かの恋文、なのでしょうか?

麗江古城
『ええ、待ちますとも……私の黒髪に霜がおりるまで……白髪になるまでも……』

邯鄲
『これでもかってくらい先人の和歌をパクってる感じですね……』

岩櫃城
ね、ねぇ……もうここらで読むのやめない?

麗江古城
何を言う。この階層を突破する鍵になるやもしれんのだぞ?

麗江古城
他にも無数に落ちているのだ、手当たり次第に読むべきだろう。

岩櫃城
いやいや、これ以上は無意味ですって!
ほ、ほら! 麗さん、さっさと前にすすみましょーよぉ!

麗江古城
『殿、異国の城娘より教わった言葉に、私の想いをこめます……』

麗江古城
『あい、らぶ、ゆー(はぁと)』

麗江古城
『貴方だけの岩櫃城より』

殿
…………。

柳川城
…………。

麗江古城
…………。

岩櫃城
ひどいですーっ!! なんで急に黙るんですかぁ~っ!

岩櫃城
っていうか、どーして私の過去の恋文がここに落ちまくってるのよぉっ!

邯鄲
『恐らくですが、この階層には
岩櫃城さんの想念が色濃く反映されているようですね』

邯鄲
『これは先の戦によって散じた霊気が影響してるのかもしれませんが……』

邯鄲
『いずれにせよ、夢世界を統べる存在が岩櫃城さんの
想念を利用しようとしていることは間違いありません!』

岩櫃城
よ、良く分かりませんが……。
つまりは私の内奥が見透かされちゃってるってことですか!?

殿
…………。

殿
…………!?

岩櫃城
って、殿も手紙を拾い上げちゃダメですってばー!!
これは私がボツにした手紙ばっかりなんですから!

殿
…………?

岩櫃城
そ、そりゃあ元々は読んでいただきたかったものですけど……。

岩櫃城
でも、こんな形で見られるのはいやなのですー!!

柳川城
(よ、よかった……私の想念が反映されなくて……)

麗江古城
――っ!?

麗江古城
おい、岩櫃、柳川!
そのようなものに気を取られている場合ではないぞ!

岩櫃城
そのようなものって何ですか!
これでも一通一通真心を込めて――

岩櫃城
――って、あ、あれ?

柳川城
向こうから何かが近づいてきます!

麗江古城
あれは…………。


殿……大好キ……。

兜軍団
……殿……愛シテル……。

兜軍団
…………殿……私ダケヲ見テ……。

殿
…………!?

岩櫃城
なっ、なななっ!?

岩櫃城
何で私の恋文を抱えて兜たちが向かって来てるんですかーっ!?

麗江古城
夢世界に道理など求めてどうする!
無軌道にお前の内奥を反映させているだけのことだ。

岩櫃城
冷静に言われたって、こっちはそれどころじゃないんですよぉ!!

岩櫃城
あーもぉ~~~っ!! 信じられない……っ!! 

岩櫃城
兜たち、覚悟しなさいよ! 
絶対にゆるさないんだからー!!

柳川城
あ、待ってください岩櫃城さん!
ひとりでは危険です……っ!!

麗江古城
激情に駆られよって……。

麗江古城
我らも行くぞ――っ!
殿、お前もすぐに準備をするのだ!

後半
岩櫃城

ハァ……ハァ……よ、ようやく……全部の恋文を奪い返せました……。

柳川城
な、何だか……いつの間にか戦う目的が変わってるような……?

麗江古城
ふふ、面白き城娘よ。

麗江古城
岩櫃……自棄めいた猪突ではあったが、
お前の激情、しかと我が目に焼き付けたぞ。

岩櫃城
う、嬉しくないですよ、そんなこと言われても!

麗江古城
はっはっは、照れるな照れるな!

麗江古城
想いを糧とし己が力とせん――。
簡単なようでその実、希有なる武の一形態よ。

岩櫃城
あうっ、いた――痛いですってば!
そんなに強く背中を叩かないでくださいって!

麗江古城
おっと悪い。収集した駝鈴の所為か、
徐々に我も力を取り戻しつつあるようだ。

殿
…………。

???
――フフフ。
随分ト夢世界ヲ楽しんデいるようだナ……城娘タチよ……。

殿
……っ!?

柳川城
あ、貴方は……!!

呂布
久シイな……城娘ヨ……。
……再び我ノ前に立つとは面白キ巡り合ワセヨ……。

茶馬古道の麗しき工本 -急-

夢世界に巣くう邪気が織り成した異形――呂布が、
ついに其の姿を現した。前に対峙した時よりも強大
になった呂布に挑むため、全霊を以て出陣せよ!

前半
呂布

久シイな……城娘ヨ……。
……再び我ノ前に立つとは面白キ巡り合ワセヨ……。

岩櫃城
きょ、巨大兜……!?

岩櫃城
あれが、皆さんが言っていた呂布の名を冠する巨大兜ですか?

麗江古城
の、ようだな。

麗江古城
しかし其の虚魂すら紛いであるならば、アレは数多の伝承の寄せ集めにすぎぬ。

麗江古城
人中の呂布、馬中の赤兎――とも賞された英傑の似姿ではあるが、

麗江古城
あれでは美しさの欠片もありはせぬ……。

麗江古城
存在自体が元より合一であっては、我が理想には程遠い事象ゆえ……な。

呂布
フッ……愚弄にも価セヌ目算よな……。

呂布
邯鄲ヨ……今の我を覗イテイルノデアロウ? 応エヨ……。

邯鄲
『まさか夢世界の邪気に名を覚えられているとは思いませんでした……』

邯鄲
『私に言の葉を差し出した意は何ですか? 今度は貴方が応える番ですよ!』

呂布
我ハ……。

呂布
我ハ……汝に感謝シテイルノだ……。

邯鄲
『感謝……?』

呂布
然リ……。

呂布
我が生ジし起点は偏に偶然タル行――。

呂布
併シ……邯鄲の内奥ニ存シタ、
呂布トイウ威名ガ我を此処まで強大ニシタ……。

呂布
此刻ニオイテ……我が冠スる『呂布』とイウ名コそが力の源泉……。

呂布
ナレバコソ……我はタダ虚でアる己の命運に抗うノミ……。

呂布
ソウ……この世界スラモ凌駕し――

邯鄲
『――現実世界へと降り立つと……そういう魂胆ですね』

呂布
是……。

麗江古城
ふっ……何とも分かりやすい原動よな。

麗江古城
要は邪気の異常増大が、其の央に座する存在に付随した
名の業によって、意志すら固定化せしめたということだろう?

麗江古城
ならば、生ぬるい対処では意味がない。

麗江古城
……殿よ。
ヤツを徹底的に破砕するぞ。

殿
…………!

麗江古城
ああ。ヤツが呂布としての己を確立すれば、
それこそ手に負えぬ存在となろう……。

麗江古城
夢世界で生まれた怪異が現実を侵食するとなれば、
それこそ兜や妖怪らの比ではないほどの滅びを招く。

麗江古城
岩櫃、柳川……。
お前たちも相応の覚悟で此の戦いに挑むのだ。

柳川城
はい……っ!!

岩櫃城
言われなくても、先の恥辱を雪ぐためですもの!
手加減なんて一切しませんよ!

呂布
……フフ……其ノ覇気や良し……。

呂布
小細工は要ラヌ……互いに純粋ナル、力比べとイコウデハないか……。

呂布
ククク……駆けヨ赤兎馬!
我ガ意ニ応じ――世界ニ叛逆の一撃を喰らわセン!!

後半
麗江古城

――捉えたっ!!
一蹴破砕! 我が武威に屈せよ!

呂布
グ、……ァっ!!

岩櫃城
や、やった……!?

柳川城
いえ――っ!!
何か様子が変です!

殿
…………!?

呂布
フフ……麗江古城ヨ……。

呂布
万全デナイ貴様の力では我を倒すには及ばぬ!

麗江古城
な、に……?

呂布
ゼぁああアアアアアアアアアアアアアア――ッ!!

麗江古城
くっ……ぅぅ……っ!?

柳川城
麗江古城さん!?

麗江古城
我に構うな!
それよりもヤツを……呂布を殿に近づけさせるな!!

岩櫃城
分かっていますとも! それだけはこの岩櫃城が――

呂布
――甘イワッ!!
然様ナ未熟さデ我を退けられるトデモ思うテかッ!!

岩櫃城
きゃぁぁあ――っ!?

柳川城
そんな……岩櫃城さんまで!?

殿
…………。

呂布
フフフ……ソウ、身構えるコトはない……。

呂布
此処で……汝ラとの決着をツケル気は……毛頭無い……。

麗江古城
なん、だと……?

呂布
邪気の影響にヨリ、力を解放デキヌ
貴様を倒シタとて我の野望は叶わぬ……。

呂布
其も……此の階層デハ我も本来の力を出せヌのだ……。
……真の勝敗は深部にて付けるが……妥当デアロウ。

呂布
暫シノ刻を汝らニ与えん……ソレマデに力を取り戻セ……麗江古城。

呂布
汝らの如キ真に強キ城娘を打倒した暁コソが……、
……我が外世界に打って出る〈解〉となろう……フフ、フハハハハハハッ!!

岩櫃城
巨大兜が、退いて……いく……。

柳川城
何とか……助かった、ようですね……。

麗江古城
くそ……我に土を付けるとは……。

麗江古城
この借りは必ず返すぞ……!

殿
…………!

柳川城
はい! 次に相見える時は必ずや勝利を掴み取ってみせます!

岩櫃城
ええ、先ほどは油断したところを衝かれただけですもの。
今度こそは絶対に負けたりしません――っ!

麗江古城
…………。

麗江古城
(岩櫃……)

麗江古城
(ここまでの戦を通して分かったが、此奴は実に良き闘気を備えている)

麗江古城
(だが一方で……どうにも違和を覚えてならぬ)

麗江古城
(何かが彼女の真なる力を堰き止めているような、そんな微細な違和……)

麗江古城
(……其処を夢世界に付け入られる可能性は低くない……注意せねばな)

岩櫃城
……ん? どうしたのですか?
さっきから嘗め回すように見てるみたいですけど?

麗江古城
いや……なに。

麗江古城
お前のことが気になる……ただそれだけだ。

岩櫃城
え? それって、もしかして――

岩櫃城
――私に惚れちゃいましたか?

麗江古城
かもしれぬな。

岩櫃城
なんですと!?

岩櫃城
冗談で言ったのに、まさかの急展開!?

麗江古城
ふふ……お前の内奥に存する枷を外すことができれば、
今よりもなお武人として輝くことができるだろう……。

麗江古城
その為には、より深く……我はお前を知る必要がある。(さわさわり)

岩櫃城
……なっ、何してるんですか!?

岩櫃城
私に触れていいのは殿だけです!
いくら麗さんと言えどもそう易々とは触らせてあげませんからね!

麗江古城
互いに城娘だというのに、何を恥ずかしがることがある?

岩櫃城
羞恥の問題じゃなくて、快不快の問題なんですー!

麗江古城
やれやれ。まだ精神的には幼き城娘のようだな。

麗江古城
して、邯鄲よ――。

邯鄲
『はい、何ですか?』

麗江古城
次の階層へと移る準備はできているか?

邯鄲
『はい。先の戦闘によって其の地点での邪気は薄れていますからね』

邯鄲
『ですが、どうかお気を付けて……此処からが本番といってもいいのですから』

麗江古城
心得ている……。

麗江古城
さぁ、殿。柳川、岩櫃……先へ進もうか。

殿
…………!

柳川城
それでは引き続き麗江駝鈴を収集しつつ、深部へと向かいましょう!

茶馬古道の麗しき工本 -絶壱-

――邪気を討ち祓うため夢世界へと潜入した殿たち。
激しき戦に身を投じる者がいる一方で其れを見守る
者たちの戦もまた、此世には存在していたのだった。

前半
――殿たちが夢世界での戦を繰り広げている一方で。

所領・神社。

邯鄲
んんぅ…………。

富山城
だいじょうぶ、邯鄲?
顔色が悪いみたいだけど……。

邯鄲
た、たいしたことないよ!

邯鄲
まだまだこんなところでヘコたれてらんないもん!

富山城
…………邯鄲。

富山城
キミしか夢世界の維持をできないのは分かるけれど、
ボクのことも少しは頼ってくれていいんだからね……?

邯鄲
富山城ちゃん……。

富山城
前回の時とは状況が違うんだ。

富山城
今のキミにはボクがいる……。

富山城
友達を頼るのも強さのひとつだよ?

邯鄲
ありがと……。

邯鄲
ホントのことを言えば、
今すぐにでも眠っちゃいたいくらい疲れてるんだけど、

邯鄲
でも、私が夢世界の制御を疎かにすれば、
それだけ内部にいる殿たちが危険になるの。

邯鄲
……だから、何としても諦めるわけにはいかないんだよ。

富山城
…………。

富山城
分かったよ。キミの覚悟も、意志の強さも……。

富山城
だからこそ、ボクもできる限りのことをするつもりさ。

富山城
してほしいことがあれば遠慮なく何でも言ってくれ。

邯鄲
――えっ!? 何でも!?

富山城
う……。
そう念押しされるとちょっと怖いけど。

富山城
でも空を飛べとか、そういう無茶じゃなければ応えてみせるよ。

邯鄲
じゃあね……、

邯鄲
とりあえず額の汗を拭ってくれるかなー?

富山城
なんだ、そんなことか。

富山城
ほら、これでいいかい?(ふきふき)

邯鄲
んふ~。この手拭い、すっごく富山城ちゃんの匂いがするー。

邯鄲
――って!
これフンドシじゃないですか!!

富山城
ん? それがどうかしたの?

邯鄲
もぉ~! そういう使い方はしないでくださいって前に言ったじゃないですかー!

富山城
なっ――このフンドシは速乾性抜群なんだぞ!
普通の手拭いよりもずぅっと機能的じゃないか!

邯鄲
それは、そうかもしれませんが……うぅぅ。

邯鄲
富山城ちゃんの、そういう強い拘りがあるところって、
なんて言うか麗ちゃんに通じるものがあるよね……。

富山城
麗ちゃんって……。

富山城
ああ、麗江古城のことか。

富山城
そういえば気になってたんだけど、
キミや麗江古城は、どうして岩櫃城と面識があったの?

邯鄲
ああ、そっか。
そのあたりのことってちゃんと話してなかったね。

邯鄲
あれはそうだな……。
富山城ちゃんからお揃いのフンドシをもらった後のことで――

――数ヶ月前。

邯鄲
ん~。もうたべられにゃいよぉ……。

???
もし、そこのベタな寝言を言っている城娘さん!

邯鄲
……んぁ?

邯鄲
ふぁ~ぁ、誰ですかー?
邯鄲はいま、寝起きなんでちょ~っとだけ機嫌悪いですよー?

???
なるほど、たしかに夜から朝にかけての快眠ならば礼をも失しましょう。

???
ですが、晴天たる日中の惰眠となれば罪悪感は不思議と湧きませんとも!

???
して、貴方が……お噂に名高き邯鄲さんで間違いないですね?

邯鄲
そーだけどぉ……。

邯鄲
貴方はどこの誰でしょうかぁ?

岩櫃城
我が名は岩櫃城!
今日はちょっと邯鄲さんの――、

岩櫃城
というより邯鄲さんが保持する異能に興味があり、
こうして訪ねた次第にございます……!

邯鄲
あー、なるなるー。

邯鄲
つまりは私の枕をご所望ということですねー。

岩櫃城
――っ!? なぜそれを?

邯鄲
いや……話の流れからして分かりそうなものですが。

邯鄲
それに、私の枕を欲しがる人が最近わりと多いんですよねー。

邯鄲
皆さん色々と抱えてらっしゃるようで、
夜になっても寝られないらしくて……、

邯鄲
これも戦国乱世が生んだ現代病の一つですねー。

岩櫃城
ち、ちがいます! 私はちゃんと夜もバッチリ眠れる城娘です!

岩櫃城
むしろ熟睡しすぎてほとんど夢を見ることがなくて……、

岩櫃城
だから困ってるのー!

邯鄲
……んへ?
熟睡しているならいーじゃないですか。

岩櫃城
それは、そうですけど……。

岩櫃城
でも! 私、夢が見たいんです!

邯鄲
またまたー、うら若き乙女みたいなこと言っちゃってー。

岩櫃城
乙女ですって! しかもけっこー若いですし!

岩櫃城
って、そうじゃなくて!

岩櫃城
夢です夢! 私、殿とのあまーい夢がみたいのです!

邯鄲
……あぁ。
そういうことでしたかぁ。

邯鄲
いいですね、そういうまっすぐな感情。

邯鄲
ですが、申し訳ありません。実は諸事情によって日の本においては
私の枕を誰かに貸し出すことは余程の事が無い限り禁じているのです。

邯鄲
そういうわけですから、今日のところはお引き取りを。

邯鄲
……くふぁ~。私も……また、眠り直し……ますのでぇ……。

邯鄲
…………くーすぴぃ………………むにゃむにゃ……。

岩櫃城
あ、ちょっと……!!

岩櫃城
うぅぅ……私にとっては余程のコトだというのにぃぃ……っ!!

岩櫃城
こうなったら、私の熱意を示さんがため、
ちょっとばかし荒々しくいきますよ!!

邯鄲
――ふぇ?

岩櫃城
てやーっ! 邯鄲さん、覚悟ぉ!!

邯鄲
ちょ、ちょっと……!!
初対面の城娘を相手に何をする気ですかーっ!!

後半
邯鄲

もぉ、いきなり乱暴するなんてヒドいです。
……寝起きは機嫌悪いって言いましたよね、私。

岩櫃城
うぅぅ……ごめんなさいぃ……。

岩櫃城
でも、でもぉ…………。

岩櫃城
私、夢が……殿との甘々な夢が見たいんですぅ!!

邯鄲
そ、そう言われましても……。

邯鄲
……それに私が言うのも何ですけど、

邯鄲
夢というものは甘くなればなるほど、現実の苦味が増すだけですよ?

岩櫃城
――う。

邯鄲
だったら、現実世界で意中の方に少しでも想いを伝え、

邯鄲
醒めながらにして甘やかなる夢を見るべきではないでしょうか?

岩櫃城
……か、邯鄲ちゃんっ。

岩櫃城
うわ~んっ! 私が……私が間違ってたよぉ……!!

邯鄲
んひぁっ!? ちょ、ちょっと……!
そんなふうに強く抱きつかないでくださいよぉ~っ!!

邯鄲
んんんっ……寝起きだから、霊気の維持が――。

邯鄲
くっ、ふぅぅ……お願いですから、もうやめてくださいよぉ……っ!!

岩櫃城
ご、ごめんね……っ!
まさか大破するとは思わなくて。

邯鄲
まったくもう……すぐにワーッてなっちゃうの、直した方がいいですよ?

岩櫃城
……そう、だよね。

岩櫃城
こんな感じだから、殿も段々と相手してくれなくなっちゃうんだよね。

岩櫃城
…………恋文だって、最近はぜんぜん返してくれないし……。

岩櫃城
……そりゃあ戦や所領のことでお忙しいのは分かりますが……。

岩櫃城
ぐすっ……でも……やっぱり寂しいよぉ……。

邯鄲
恋文……?

邯鄲
岩櫃城さんは、お手紙をよく書くのですか?

岩櫃城
うん……自慢じゃないけど、恋文のことなら城娘でも指折りかと……。

邯鄲
ならば、小細工などせずに、

邯鄲
文の鍛錬をして殿の心をぎゅっと掴んでみてはどうでしょうか?

岩櫃城
……え?

邯鄲
ふふ、こう見えて私も手記にかけては一家言ある身でして。

邯鄲
それに岩櫃城さんからすれば異国の城娘ですからね。
日の本とは異なる文法や成句を教えることもできるはずでしょう。

岩櫃城
ほ、本当に!?

邯鄲
ええ。こうして出会えたのも何かの縁ですからね。

邯鄲
海の向こうの恋文の書き方、特別に教えてあげちゃいますよぉー。

岩櫃城
わぁ……ありがとう、邯鄲ちゃん!

岩櫃城
よーし、待っててね殿!
私、もっともっとすっごい恋文を書いて見せますからーっ!!

――現在・所領内神社。

邯鄲
……ということがあってですねぇ、

邯鄲
お手紙の技術を教え教わる仲となりまして、

邯鄲
此度の異事に際しては、海の向こうへ送る文を岩櫃城さんに
したためてもらったことから麗ちゃんとの面識も生まれたのですよー。

富山城
うーむ。ボクの知らないところで、そんなことがあったとは……。

富山城
それにしても、まさかキミが眠る以外にも
それなりの特技があるとは知らなかったよ。

邯鄲
あー、今のちょっとひどくないですかー?

富山城
あはは、いつも寝てばかりのキミが悪いんだぞ。

富山城
……でも、そうか。

富山城
日の本に来たばかりのキミは色々な点で危なっかしかったけど、
そんなふうにして交友関係を広めていたとはね……。

富山城
ふふ、こんなに嬉しいことはないよ。

邯鄲
何だか子の成長を見守る母親みたいな眼差しですねー。

富山城
実際それに近い感慨さ。

富山城
ほら、覚えてるかい?

富山城
キミをおぶって所領に来たあの日をさ。

邯鄲
……覚えてますとも。

邯鄲
ああー。あの時のことを思い出したら
またおんぶされながら寝たくなってきちゃったなー。

富山城
はは、どういう願望なんだか。

富山城
けど、そうだな……。

富山城
此度の異事が解決したら、そういうのもありかもしれないね。

富山城
何せ、こっから数日はお互いに眠れない日が続くんだから……。

邯鄲
……へ?

富山城
……ん?

邯鄲
あの、数日って……どういうことですか?

富山城
いや、だってそうだろ?

富山城
今回はキミの意識と夢世界とが繋がった状態で、
遠征が継続されている状況にあるんだ……。

富山城
それを考えれば、世理の観点から言って、
前回は双方の時間の流れに違いがあったけど、

富山城
今回の討伐作戦においては、彼方と同じようにこっちの世界でも、
一週間近くの時間がかかることくらいは容易に想像がつくはずだ。

邯鄲
……。

邯鄲
…………。

邯鄲
………………あ。

富山城
お、おい! ちょっと待ってくれ!
もしかしてキミ……。

邯鄲
すっかり忘れてましたぁ――っ!!!!

富山城
……ハァ。前言撤回だ。
やっぱりキミ、昔とちっとも変わってないや。

邯鄲
ふぇ~~~~~~~~~~~~~~~んっ!
そんなふうに言わないでよぉ、富山城ちゃ~んっ!

富山城
な、泣くなって! そんなことしたら余計に体力が無くなるぞ!

邯鄲
どうしよ、どうしよ~っ!!
私、ただでさえ睡眠を必要とする城娘なのにぃぃ!!

邯鄲
一週間も不眠不休なんて絶対に無理ですよぉ!!

富山城
……邯鄲。

富山城
大丈夫だ、なにも問題はない!

邯鄲
え?

富山城
見て……これは勉学に勤しむ城娘――所領内で言えば、
古河城あたりに密やかに分けてあげてる薬なんだけど、

富山城
これを飲めば、たちどころに眠気が吹っ飛ぶ優れ物なんだ!

邯鄲
…………。

邯鄲
ね、ねぇ……そんな薬、私に使ったりなんかしないよね?

富山城
いいや、これもキミや殿の為だ……。

富山城
いざとなれば何回でも使うからね!

邯鄲
ひぃ……っ!?

邯鄲
うぅぅ………殿ぉ~っ、麗ちゃ~んっ!!
早く戻ってきて~~~~~~~~~っ!!

――このままでは薬漬けにされてしまう。

初めて己が身の危機を察した邯鄲は、おもたい目蓋を
涙で濡らしながら夢世界の維持に努めるのだった――。

茶馬古道の麗しき工本 -離-

夢世界の更なる深みへと到達した殿と岩櫃城――。
柳川城や麗江古城たちとはぐれてしまった二人は、
不安を胸に抱えつつ、尚も深部へと進んでいく……。

前半
夢世界への探索を開始してから短くない時が経過していた――。

岩櫃城
ふぅ……。

岩櫃城
殿、何とか無事に最深部へと到達できたようですね。

殿
どうやらそのようだな。

岩櫃城
……それにしても柳川城さんたちのことが気になりますね。

岩櫃城
お二人も、無事にこちらに辿り着けていればいいのですが。

殿
……ああ。

殿
だが、そんなことは正直なところ些末なことでしかない。

岩櫃城
……え?

殿
だってそうだろう?

殿
俺にはお前がいる。他に何が必要だというのだ?

岩櫃城
殿……。

岩櫃城
(それほどまでに私のことを信頼してくれているなんて……!)

岩櫃城
はい! この岩櫃城が、身命を賭して必ずや殿をお守りいたします!

殿
……ふふ。

殿
だが、改めて考えれば不思議な話だ。

殿
お前は、何故それほどまでに俺に尽くす?

岩櫃城
えっと……。

岩櫃城
だ、だって……それは……、

岩櫃城
私が殿を……そ、その……、

岩櫃城
愛しているからです!

殿
そうか……。

殿
…………。

殿
実にくだらない感情だ。

岩櫃城
……え?

殿
それは、お前自身が抱えている
業が生み出した偽りの情にすぎない。

殿
悲哀に染まりし過去の喪失を俺で補おうとは……。

殿
城娘とは何と愚かな生き物だろうか。

岩櫃城
と、殿……?

岩櫃城
ぐすっ……どうして……そのようなことを、仰るのですか?

殿
身の程を知れと言っているのだよ。

殿
お前は誰にも求められはしない――。

岩櫃城
――っ!?

――何故だ!?どうして勝頼さまの御姿が見えぬ!?

岩櫃城
昌幸様の怒気が声ににじんでいる。

岩櫃城
なんで、こんな時に〈あの時〉のことを思い出してしまうのだろう……。

――岩櫃への撤退を進言したというのに……何故……何故ぇっ!!

岩櫃城
怒りが嘆きに転じている。

岩櫃城
致し方ない感情の変遷だ。

岩櫃城
だって勝頼さまは、私の許へは来てくれなかったのだから。

岩櫃城
織田、そして徳川が形成した連合軍による甲州征伐で窮地に陥った勝頼さま。

岩櫃城
必ず守ってみせると、誓ったのに……。

岩櫃城
それでも……あの人は、来てくれなかった……。

殿
そうさ……。

殿
お前は選ばれなかった城娘。

殿
だから俺の気を惹こうとする。

殿
卑しい……なんて卑しい思考だろうね、岩櫃城。

岩櫃城
ちが……私は、そのような理由で――

???
――惑わされるな、岩櫃!!

岩櫃城
……え?

麗江古城
遅れてすまない! 深部へ移行するにあたって
はぐれてしまったお前を探すのに少々手間取った。

殿(?)
チィッ、後もう一押しだったというのに!

麗江古城
ほう……殿に擬態して心を攻めるとは、
なかなかに悪賢い遣り口ではないか。

麗江古城
だが、その小賢しさは逆効果だったようだな!

殿(?)
……な、に?

岩櫃城
…………許さない。

岩櫃城
私の心だけでなく、私の歴史すら貶めんとするとは!

岩櫃城
覚悟しろ、穢れし邪悪ッ!
貴様を屠り、我が情念の正しきを示してくれる!

殿(?)
バカな……!?
萎えかけていた意気が此程までに燃え返すとは!?

三十二間星形兜
コウナレバ小細工ハ無用!
我等ガ暴威デ貴様ラヲ討チ果タスマデヨ!!

麗江古城
ふふっ、そうさ。端から潔く立ち会えば
まだ一寸の勝ち目も見えただろうに。

麗江古城
さぁ、じきに殿と柳川も此地に辿り着こう。
それまでに勝負を決めるぞ、岩櫃!!

後半
岩櫃城

貴方で最後よ――っ!!

三十二間星形兜
グァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

岩櫃城
ハァ……ハァ……。

麗江古城
よくやったな、岩櫃。

麗江古城
これまでとは見違えるほどの武であった。窮地ではあったが、
お前の心の枷を、幾許か外す良き契機となったようだな。

岩櫃城
ううん……。
私、ぜんぜんダメだった……。

麗江古城
……?

岩櫃城
私、言い返せなかった……。

岩櫃城
偽物の殿に問い詰められた時、私は自分の情愛を
打算の上にしか起てぬものなのかもと疑ってしまった。

麗江古城
……岩櫃。

岩櫃城
でも……こればっかりはどうしようもないじゃん……。

岩櫃城
私は岩櫃城……その名からも、その業からも逃れられない。

岩櫃城
それでも、私は殿が好きなんだもん……。

岩櫃城
ぐすっ……綺麗じゃなくても……うぅぅ……好き、なんだよぉ……。

麗江古城
ふっ……。

麗江古城
そのように泣くほどのことでもあるまい。

岩櫃城
……え?

麗江古城
恋路を歩むに純潔を求めようなど、それこそ自己本位の極みだ。

麗江古城
他者の心を欲した時点で総ては欲望に様変わる。

麗江古城
その上で自他に清廉さを求めるというのなら、

麗江古城
それはもう愛ではなく崇拝だ。

麗江古城
だからな、岩櫃……。

麗江古城
お前の想いは醜さを隠していようと少しも穢れはしない。

麗江古城
少なくとも、我はお前を肯定してやる。

岩櫃城
……麗江古城さん。

麗江古城
…………。

岩櫃城
ありがとう……なにか、前々からあった胸のつかえが
消えたような……そんな心持ちがします……。

麗江古城
ああ。お前の霊気を視ていれば分かる。

麗江古城
ある意味で、先の幻影には感謝せねばならぬな。

柳川城
――岩櫃城さーんっ!! 麗江古城さーんっ!!
お二人とも、ご無事ですか……っ!!

麗江古城
っと、どうやら柳川たちも各々の敵を掃討できたようだな。

麗江古城
では落ち合うとしようか、岩櫃。

岩櫃城
……はいっ!!

殿
…………!

岩櫃城
殿っ!!

殿
…………。

殿
…………!

岩櫃城
ふふ、やっぱり本物の殿は全然ちがいますね!
偽物なんかよりも何倍も凛々しくございますっ!

殿
…………?

麗江古城
首を傾げてやるな、殿。

麗江古城
彼女は彼女なりに大変な苦難を越えて今この再会の刻に立っているのだからな。

邯鄲
『――ゃん! 麗ちゃん! 聞こえますか!? 返事をしてください、麗ちゃん!』

麗江古城
まくしたてるな、邯鄲。
ちゃんと聞こえておる。どうしたのだ?

邯鄲
『よかった、ようやく届いたのですね!』

邯鄲
『先ほどから何度も呼びかけているのに返事がないから心配したのですよ!』

麗江古城
何度も呼びかけていた……だと?

麗江古城
そうか……。既にお前の声が届かぬほどに
我々は深き場所にまで来てしまったということか。

柳川城
それに此処に来るまで多くの駝鈴を収集していますからね。

岩櫃城
後は呂布との勝負をつけるのみ……ということですね!

邯鄲
『はい……』

邯鄲
『次の階層への移動が恐らく最後となるはずです』

邯鄲
『最深部に巣くう邪気は、これまでの比ではないでしょう……』

麗江古城
ということは、邯鄲の助力も此処までということか。

殿
…………。

麗江古城
ああ、我等の準備はできておる。

麗江古城
然らば導いてくれ、邯鄲。
ヤツを――呂布を倒しにいくために!

邯鄲
『はい! それでは皆さん、良き御武運を!』

茶馬古道の麗しき工本 -結-

ついに最深部へと到達した殿たち――。
待ち受ける呂布の名を冠する異形を
討ち果たすため、全霊を以て此に挑め。

前半
――夢世界・最深部。

柳川城
ここが最深部……。

岩櫃城
明らかに今までの階層とは様相が異なりますね……。

麗江古城
揺蕩う邪気も濃い……。
皆、戦に支障はないか?

柳川城
はい、麗江古城さんのおかげで
大きな影響は感じられません。

岩櫃城
それよりも麗さんの方が辛いんじゃ……?

麗江古城
なに、既に夢世界に潜入して幾許かの時が経っているのだ。
ある程度の免疫くらいは身の内に構成できている。

麗江古城
そして此処まで収集してきた駝鈴と掛け合わせることで、
平時と遜色無い力を発揮できるはずだ。

???
……ホウ、それは良き事でアル。

殿
――ッ!?

呂布
待ち侘ビタゾ、城娘タチよ……。

麗江古城
悠然たる待機とは律儀なものだな。

麗江古城
立振舞だけでなく威風すらも呂布を模し始めたか?

呂布
コレモ貴様ヤ邯鄲ノ持ツ心象が作用セシ果よ……。

呂布
故ニ……確と我ガ武を照覧せシメント欲すは条理……。

呂布
さァ、武勇凜然たる者ドモヨ……。
此ノ地、此ノ時空にて……最上ノ武を向け合わンッ!

柳川城
巨大兜の気が……。

岩櫃城
計り知れぬほどに上昇していってます――ッ!?

麗江古城
臆するな岩櫃、柳川!

麗江古城
此の階層に辿り着いた時点でお前たちの武威は、
ヤツに見劣りせぬ格を得ている……。

麗江古城
我ら三傑が力を合わさば必ずや勝利を掴めるであろう!

岩櫃城
ええ、負ける気などさらさらありません――!!

柳川城
いきましょう、皆さん!

柳川城
殿、どうか我らに聡明なる御下知を!!

殿
…………!

呂布
実ニ……実ニ良き覇気ダ……。

呂布
サァ互いの魂ヲ燃やシ……今コソ勝負を決サン!!
征クゾ――城娘タチよッ!!

後半
麗江古城

岩櫃、柳川!ヤツの気が乱れている!

麗江古城
勝負を決するは――――今ぞッ!!

柳川城
はいっ! 持てる霊気――すべて解放します!!

岩櫃城
私も往きます! 今こそ真田が魂……見せつける刻ッ!!

呂布
――グッ、ァアアッ!!

麗江古城
とどめだ、呂布を模倣せし邪気よ……。

麗江古城
我が一蹴に因りて悪しき紛い粉砕せんッ!!

呂布
ガハァッ――まさか、コレホド……とは……ッ!!

呂布
グ……フフ……誠、スバラシキ……武威ダ……。

呂布
叶うナラバ……何時かマタ……斯様なる死闘ノ裡に……我が武ヲ…………。

殿
…………!?

柳川城
巨大兜の姿が消えた……!?

岩櫃城
ということは――!

麗江古城
いや、まだ気を抜くべきではない。

麗江古城
邪気を一掃できたのならば邯鄲からの声が此の地にも届くはず……。

麗江古城
それまでは何が起こるかはわからぬぞ。

岩櫃城
邯鄲ちゃん! こちらの声が聞こえますか!?

…………。

柳川城
邯鄲さん――っ!!

…………。

殿
…………!

麗江古城
…………。

邯鄲
『……えます――聞こえます! 皆さんの声、ちゃんと聞こえますよ!!』

岩櫃城
――っ!?

柳川城
紛うことなき邯鄲さんの声です!

麗江古城
ふふっ、これでようやく大任を果たせたということだな。

殿
…………!

邯鄲
『と、イイ感じの流れなところ申し訳ないですが……』

邯鄲
『一息つくのはもう少し後ですよ皆さん!』

柳川城
……え?

邯鄲
『殿たちは一度経験していると思いますが、
夢世界の維持には膨大な力が柱となっています』

邯鄲
『前回は古河城さんという夢主がいましたが、
既に其処は邪気のみが支えていた空間……』

柳川城
では、ヤツを滅したことで支えが消えたということは……、

麗江古城
間もなく、此の世界は崩壊し――。

邯鄲
『巻き込まれれば皆さんの命も
まとめて夢幻の彼方へと引っ張られちゃうということです!』

岩櫃城
そういうことは前もって言っておいてくださいよーっ!!

柳川城
どうすればいいんですか! 
前回は邯鄲さんが傍らにいましたが、今は……。

邯鄲
『落ち着いてください! 既に皆さんの存在位置は捉えています!』

邯鄲
『こちらへ皆さんの意識を戻すための起点を麗ちゃんに設定しましたので、』

邯鄲
『後は皆さんがそれぞれ麗ちゃんの身体に
触れてくれさえすれば私が一気に引っ張り上げます!』

麗江古城
……ということだ。

麗江古城
さぁ、どこでもいい! 我の好きなところを触れ!

岩櫃城
言い方ぁッ!?

岩櫃城
って、ツッコんでる場合じゃなかったぁっ!

岩櫃城
それではお手を拝借――っ!!

殿
…………ッ!!

麗江古城
うむ……殿、それに岩櫃よ。
しかと我が両手を握っておくがよい。

麗江古城
して、柳川はどうする?

柳川城
では私は背に――(さわっ)

麗江古城
……んっ。

柳川城
あれ……?

麗江古城
そこは臀部ゆえ、もう少し上で頼む……。

邯鄲
『あーっ! 柳川城さん、またお尻さわったんですかーっ!!』

柳川城
ま、またって何ですか!?
本当にわざとじゃないんですよぅ……!

麗江古城
気にするな。我の脚は長いゆえ、
腰の位置も目算では定まらぬといったところだろう。

柳川城
では、えっと……、

柳川城
ここ、でどうでしょうか?

麗江古城
ふ、ぁっ……。

麗江古城
すまぬ、やっぱり背はやめて肩にしてくれないか?

麗江古城
柳川……お前の触り方はどうもその、巧みすぎる……。

柳川城
変な言い方しないでくださいぃ……っ!!

岩櫃城
いいから早く――柳川城さんっ!!

柳川城
は、はいっ!!

麗江古城
よし――これで全員触れているな!

麗江古城
邯鄲、頼む……っ!!

邯鄲
『お任せください! それでは――――』

――現実世界・所領。

殿
……。

殿
…………。

殿
………………。

殿
……………………!?

千狐
よかった、お目覚めになったのですね!

やくも
これで夢ん中に入っていった全員が目覚めたってわけやね!

殿
…………。

殿
…………?

柳川城
そうです、殿が最後にお目覚めになったのです。

岩櫃城
それにしても、未だに実感が沸かないですね……。
さっきまでのことが本当に夢の中の出来事だったなんて。

麗江古城
だが、その証拠にこの枕に巣くっていた邪気は沈静化した……。

麗江古城
我等の行為は確かに現実世界において作用したのだ。

柳川城
そういうことであれば、頑張った甲斐があったというもの――

柳川城
――って、あれ?
そういえば邯鄲さんと富山城さんは?

麗江古城
ああ……。

麗江古城
あの二人ならば、そこに――

富山城
…………すぅ、すぅ……。

邯鄲
むにゃ……むにゃ……。

岩櫃城
二人して寄り添って爆睡してるじゃないですか!?

麗江古城
致し方なかろう……。
此度の遠征においては我らと邯鄲の意識が繋がっていたために、
時間の流れがどちらの世界においても均等に流れていたのだから。

岩櫃城
と、いうことは…………。

千狐
はい、こちらの世界でも七日が経過していたことになりますわ。

柳川城
で、では……もしかして……、

岩櫃城
二人はその間、ずっと……?

麗江古城
我らのために起き続けていてくれたようだな。

麗江古城
でなくては今ごろ我等は夢世界に侵食され跡形もなくなっていただろう。

岩櫃城
今さらながらに、とんでもない所にいたのですね、私たち……。

殿
…………。

岩櫃城
……ん? ちょっと待ってください。

岩櫃城
七日間も経過してるってことは、その間の私たちの身体って……、

千狐
は、はい……。
野晒しにはならないよう注意はしていましたが、基本的にはずっと此処に……。

岩櫃城
ってことは――、

岩櫃城
はうぅぅっ! あちこちベタベタしてるぅ……っ!!
こんな状態で殿の前に立つなんて無理ですよぉ!!

岩櫃城
お風呂――すぐにお風呂の準備をぉっ!!

やくも
そげに言うと思って、ちゃーんと準備してあるだに!

柳川城
わ、私も入りたいです……っ!!

麗江古城
やれやれ……。
風呂など入らずとも死なぬというのに。

麗江古城
とはいえ、長きに渡る睡眠状態ゆえか、さすがの我も腹が減ったな。

麗江古城
喉の潤いからして、千狐たちが我等に水だけは飲ませてくれていたようだが、

麗江古城
今宵は相応の馳走を期待していいのだろうな?

千狐
はいっ、その点も抜かりはありませんわ。

麗江古城
ふふ、なかなかに良き臣下だ。

麗江古城
殿よ、邯鄲の枕の経過も気になる。
我はしばらく此の地に厄介になるつもりだ。

麗江古城
今回の助力の礼を含め、今宵は色々と語り合おうぞ。

殿
…………。

殿
…………!

こうして邪気を孕みし枕が巻き起こした異事は終わりを迎えた。

が――。

――数日後。

邯鄲
んんー。

麗江古城
どうだ、邯鄲?

邯鄲
そう、ですね……。

邯鄲
とりあえず目立った邪気の存在は感じられないのですが、

邯鄲
……麗ちゃんたちが進んだ深部よりも、
尚深き部分に階層ができているようです。

麗江古城
やはり、そうか……。

麗江古城
呂布の名を備えた邪気は、
想像していた以上の自我を確立させていた。

麗江古城
あれほどまでの存在が二度の打倒のみで
解消されるという方が理屈にあわぬ……。

邯鄲
……ですね。

邯鄲
今のところ現実世界に害を為そうとする力は感じられませんが、

邯鄲
巨大兜という姿を備えてしまった以上、
きっとあの邪気も武神という形態を模する可能性があります。

麗江古城
……やれやれ。厄介なことをしてくれたな。

邯鄲
うぅぅ……本当にごめんなさい……。

邯鄲
だからこそ、最後まで責任を持って私が対処したいのですが……。

麗江古城
構わんさ。

麗江古城
同郷の城娘は何も我だけではないのだ。

麗江古城
いずれ到来する戦に向け〈彼女たち〉にも力を借りればいいだけのこと。

麗江古城
そう……。

麗江古城
我らの友情は、一炊の夢のように儚きものではないのだからな。

――そう言って、麗江古城は幾許かの粗雑さと共に邯鄲の頭を撫でる。

その力強い感触に邯鄲は、照れくささを感じながらも、
眼前の朋友の頼もしさをしっかりと実感するのだった。

茶馬古道の麗しき工本 -絶弐-

夢世界での異事を解決してから数週間後――。
富山城は、今日も今日とて惰眠を貪る邯鄲を
起こそうと悪戦苦闘していたのだが……。

前半
――麗江古城が所領内で生活するようになってから数週間後。

邯鄲
……んん…………むにゃ…………。

邯鄲
……すぅ……すぅ……………。

邯鄲
にゃはは~…………もぉ……富山城ちゃんってばぁ……、
惚れ薬なんかに頼っちゃらめらよぉ……むにゃむにゃ…………。

富山城
…………。

富山城
まったく、どんな夢見てるんだか……。

富山城
ねぇ、邯鄲。いいから目を開けてくれって。
毎朝毎朝、起こす身にもなってくれよぉ!

邯鄲
んんっ……あと数刻だけぇ……。

富山城
ダメだ……この前の一件以来、
余計に寝坊癖がひどくなってる。

富山城
そりゃあ七日間ぶっ通しで霊気を使えば、
こうなるのも無理はないかもしれないけど……、

富山城
いやいや、甘やかしちゃだめだっ!
これじゃあ冬眠のそれになっちゃうよ。

富山城
ほーらーっ、邯鄲! 起きてくれってーっ!

邯鄲
……んぅ……もう、富山城ちゃんは今日も甘えん坊だなぁ……。

邯鄲
わかったからぁ……ほら、遠慮しないで、こっちにおいでぇ……♪

富山城
えっ、ちょっと待――

富山城
――うわぁっっ!?

邯鄲
えへへぇ……富山城ちゃん抱き枕ぁ~♪

富山城
ね、寝惚けてないで……さっさとはなっ……離してってばぁっ!!

邯鄲
……すぴー……ぐぅー……むにゃむにゃにゃ~ん…………。

富山城
ううぅ……拳を武器とするだけあって、とんでもない締めつけだ……っ!?

富山城
だ、誰か……助けて、このままじゃ……絞め殺されるぅ――っ!

岩櫃城
――おや?
どうしたのですか、富山城さん?

富山城
た、助かった……。
実は――――。

岩櫃城
なるほどぉ。
そういうことでしたか。

岩櫃城
ならお任せください! こう見えても真田の城娘!
荒事にはそれなりの自信ありですよーっ!!

岩櫃城
邯鄲ちゃーんっ! かーんたーんちゃーんっ! ほらほらーっ!(ゆっさゆっさ)
早く起きないと殿に寝顔を見られちゃいますよぉ~! いーんですかー?

邯鄲
…………んへぇ……殿ぉ、好きなだけ見ていーよぉ……。

邯鄲
だから……もっと、寝かせてぇ…………むにゅぅ…………。

岩櫃城
そ、そんなバカな……これで起きない、だと!?

富山城
私だったら恥ずかしくて絶対に起きるのに――って顔してないで
何とかしてよーっ!!

岩櫃城
といっても、力技となると、もう殴る蹴る
ってな感じの手段をとるしかないような……。

???
――案ずることはないぞ、岩櫃、富山!

岩櫃城
……っ!?

富山城
き、キミは!?

麗江古城
邯鄲の眠りならば我が一瞬で打開してくれよう。

岩櫃城
おおっ! さすがは同じ異国の城娘! 

富山城
これは期待できるかも……っ!

麗江古城
ふふ、暫し待っておれ。すぐに準備をしてこよう。

岩櫃城
……へ? 準備?

富山城
いったい何を……?

富山城
…………。

富山城
――って、な、何だこの音は?

岩櫃城
パカラパカラ――って、いやいや、ちょっと待って、これって!?

麗江古城
往けッ、我が愛馬たちよ――!
邯鄲を優しく起こしてやるのだ!

岩櫃城
あわわわわっ!?
室内に馬をつれてくるなんて正気ですかぁ~っ!?

麗江古城
正気も正気――っ!
馬と人との共存こそが最上たる生活の一要素なりっ!

麗江古城
更にここで、我が故郷に伝わる楽器を使って
目覚めの音楽を奏でればさしもの邯鄲も目覚めようぞっ!!

富山城
……ま、待て! さすがにそれはやりすぎじゃ――――。

麗江古城
さぁッ―――――――我の歌を聴けぇぇッ!!

邯鄲
んんんっ!! 何ですかこの濃厚な馬臭と騒音はぁぁ!?

邯鄲
まさか襲撃ですか!? ていうか襲撃なんですねぇぇ!?

邯鄲
殿ぉぉぉっ!! 柳川城さーんっ!! 敵襲ですぅぅっ、助けてくださーいっ!!

後半
邯鄲

……って、な~んだ。
麗ちゃんの愛馬さんたちじゃないですかぁ。おーよしよし。

麗ちゃんの愛馬さんたち
ヒヒーンッ! ヒヒヒヒーンッ!!
   ヒヒーンッ! フヒヒヒーンッ!!
      ヒヒーンッ! ヒヒヒヒーンッ!!

邯鄲
ふぁ~あ。驚いて損しちゃった。
……眠り直し眠り直しっと……。

邯鄲
く~……すぴ~。

富山城
――って、寝るなぁぁっ!!

岩櫃城
これだけの大事が起きたっていうのに、すごい胆力ですね……。

麗江古城
ふむ……邯鄲のやつめ、
日の本に来てからグータラ度が倍加してしまったようだな。

麗江古城
ならば――(ごにょごにょ)

邯鄲
…………んぅ?

邯鄲
――えっ!?
麗江の名物スイーツ『氷粉涼宵』を作ってある!?

邯鄲
わぁ、食べます食べますぅーっ!!
私、あれ大好きなんですよーっ♪

富山城
なっ……!?

岩櫃城
ええっ!? こんなことで起きるんですかぁぁ?

麗江古城
驚くことではない。なにせ此の地では食べられぬものゆえ、
溜まりきった渇望が基因して目覚めを誘発したのだろう。

麗江古城
だが、邯鄲! そのような状態では食わしてはやらぬ!

麗江古城
まずは顔を洗ってこいっ、目やにがひどいぞ!!

邯鄲
あぅ……そういうのは言わないでくださいよぉ。

邯鄲
これでも花も恥じらう城娘なんですか――

邯鄲
――はぅぁっ!? いたたた……。
うぅぅ、柱に頭ぶつけちゃったよぉ……。

富山城
まったく……どうやらまだ目覚めきってないようだね。

富山城
ほら、手をひいてあげるから、ついてきて。

邯鄲
は~い♪

麗江古城
…………。

岩櫃城
行って、しまいましたね……。

麗江古城
うむ。

麗江古城
さて、それでは我も氷粉涼宵の準備をしなくてはな。

岩櫃城
え? もしかして、えっとその……氷粉涼宵
ってお料理、作ってなかったのですか?

麗江古城
当然だろう? 此処にくるまで邯鄲が
寝っぱなしであったことなど知らなかったのだからな。

岩櫃城
それもそうか……。

岩櫃城
なら、私もお手伝いしますよ!

麗江古城
ほう、なかなかに良き心掛けではないか。

岩櫃城
まぁ、乗りかかった船ですから♪

岩櫃城
それに異国の料理を覚えれば殿にも喜んでもらえますし、

岩櫃城
何より、麗さんの故郷のことも知ることができますからね?

麗江古城
ふっ……。

麗江古城
いいだろう。

麗江古城
だがやるからには徹底的にだ!
我は一切妥協などせぬ。覚悟しておけよ?

岩櫃城
ええ、望むところですっ!

向けられた笑みを受け、不意に麗江古城は
トンパ文字で書かれた古き物語を思い出す。

麗江古城
(良き伴侶を求めて、天にまで馬を走らせた賢者の物語――)

麗江古城
(対する我は、夢の中に悪を打倒しに行ったわけなのだが……)

麗江古城
(その実、予期せずして格別たる友を得るに至ったのかもしれぬ)

麗江古城
(彼の物語りは、運命を人為及ばぬ残酷なものと説いてはいたが)

麗江古城
(いやはや――)

麗江古城
(なかなかどうして、星の廻りは悪いものではないようだな)

胸奥に大いなる喜悦の感慨を抱いた麗江古城は、結ばれた縁を
謳うように、我知らず、故郷の歌を口ずさんでしまうのだった。



特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

[裏]真田丸

裏]真田丸(チャリン……チャリン……チャリン……)……貴殿か。今日は、話をしたい気分じゃない。足を運んでくれたのに、すまない。一文……二文……三文……四文……五文……六文……銭を数えていなければ、一瞬...

[裏]淀城

]淀城あ~……。あ゛ぁ~……きもちわる。夢見は悪いし、頭はズキズキ痛むし……。ほんっとに最悪な日よ、今日は。誰でも良いから……。どつき回して、ぐちゃぐちゃにしたい気分。…………。……で、なに?そこに突...

[裏]桜尾城

]桜尾城殿……どうかしましたか?……ふふ、今回は間違えませんでしたよ。あなたの安らぐ顔もまた、私の喜びなのですから。私は今……海を見ていました。このどこまでも凪ゆく、厳島の海を……。厳島周辺は神域とい...

[裏]川越城

]川越城お客様かしら……どうぞ。貴方は、確か……ちょっと待ってね……。うん……たぶん、『殿』よね……?やっぱり……人違いでなくて、良かったわ。ふふ。今丁度、過去の私が遺した日記を読み返していたのよ……...

[裏]小田原城

]小田原城…………。……あら、殿。ようこそいらっしゃいました。ああ……いえ、ご心配なく。少し考え事をしていただけですから。今、ちょうど……。昔の出来事に思いを馳せていました。今の私を形作る、原点とも呼...

[裏]小牧山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 所持特技1.4 [改壱]所持特技1.5 計略1.6 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3...

[裏]室町第

裏]室町第殿……ふふふ。どうせまた来るって、そんな気はしていたわ。私がどんなに忠告をしても、貴方は自分の信念を曲げない。本当に……つくづく、強い人ね、殿は。私のせいで、どれほど悪いことが起こっても殿は...

[裏]大宰府

]大宰府おお、殿か。よく来てくれたな。今な、手紙を整理しておったのじゃ。最近は毎日、誰かしらから届くのでな……。この手紙は……、『大宰府ちゃん親衛隊』を自称する者たちからじゃな。大野城、鞠智城、基肄城...

[裏]坂本城

]坂本城大殿様……また来たのね。ふふ……別に、追い返したりしないわよ。というより……私も今ね、大殿様と話せたら、って考えてたところだったの。だから……少しの間、私の話し相手になってくれるかしら?……ふ...

[裏]佐和山城

]佐和山城……また来たのね、あなた。足を運んでくれたところ悪いけど、面白いものは何も見れないわよ?相変わらず、大坂城様のらいぶに向けて、準備をしているだけだもの。……ん、なに?『なぜ、そこまで大坂城様...

[裏]伊勢長島城

]伊勢長島城も~、なんなのあいつら!信じらんない!寄ってたかってライブの邪魔をして!いったいどこから情報が漏れたの?もしかして、殿じゃないでしょうね……!?……そんなわけないか。あたしは、あんたにな~...

[花嫁衣装]鹿児島城

目次1 性能1.1 特技1.2 計略1.3 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< ロケト城 - [花嫁衣装]シャンティイ城 >[花嫁衣...

[花嫁衣装]鮫ヶ尾城

]鮫ヶ尾城はあ……春日山城サマの祝言、想像するだけでドキドキしてしまうっす!ね、ちびサマ~♪……ん?どうしたっすか、トノ?えっ、『主城のことより自分はどうなのか』っすか……?うぐ……これは痛いことを言...

[花嫁衣装]許昌城

]許昌城うーん……。ううーん……。……おや、殿か?すまない、考え事をしていて来訪に気づいていなかった。この間、殿と話してから、結婚に関して城娘達と話をしたのだ。繁栄という目的へ至る手段としての婚姻……...

[花嫁衣装]萩城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]チャンドラ・マハル - [花嫁衣装]新田...

[花嫁衣装]秋田城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< 延岡城 - [花嫁衣装]ロンドン塔 >[花嫁衣装]秋...

[花嫁衣装]春日山城

]春日山城うーん……。……うーん? ……うん?……殿?すみません! お越しいただいていたのに、今の今まで気づかずにいて!実は先日、坂戸城と謙信公の昔話をしてたのですが、その際、跡継ぎの話題が出たのです...

[花嫁衣装]新田金山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]萩城 - [花嫁衣装]アイリーン・ドナン...