ストーリーテキスト/聖なる天使の贈り物

聖なる天使の贈り物[]

聖なる天使の贈り物 -前-

――サンタンジェロ城からの招待状。
師走にしばれる所領内に、突如として舞い込んだ
手紙を頼りに、殿たちは宴に参加せんと出立する。

前半
千狐 うぅぅ……今日はまたいちだんと寒いわね……。 やくも 年の瀬が近づいちょる証拠やけん、 そろそろコタツの準備を進めんといかんだに。 柳川城 ふふ、そうですね。所領内のみなさんも、 まだかまだかと待ち望んでいるみたいですから―― 柳川城 って、あれ？ 殿 …………。 やくも 殿さん、なんか難しい顔して手紙を読んどるだに。 柳川城 もしかしてまた助けを求める城娘からでは――！？ 殿 …………。 殿 …………！ 千狐 ……え？ サンタンジェロ城さんからの招待状？ やくも 招待ってことは、 やくも もしかして宴がや！？ 殿 …………。 柳川城 どうやら、場所はサンタンジェロ城さんの故郷のようですね。 やくも ってことは海の向こうに行くってことがや！？ 殿 …………？ 千狐 はい、この手紙を媒とすれば転移は可能かと思います。 やくも それじゃあ、さっそく準備してサンタンジェロ城んとこに行くがや～♪ 殿 …………。 殿 …………！ ――半刻後。 千狐 殿、転移術は成功ですわ。 どうやらここがサンタンジェロ城さんの故郷のようです。 やくも うぶるるる……っ！ やくも もしかしたら温かい場所かと思っちょったけど、 日の本とぜんぜん変わらないだにぃ……。 柳川城 手紙によれば、待ち合わせ場所は このあたりなのですが、誰もいませんね。 殿 …………。 殿 …………！？ サンタンジェロ城 ブォン ナターレ、公爵様。 ようこそお越しくださいました。 千狐 さ、サンタンジェロ城さん……！？ やくも なんかいつもと恰好が違うがや！？ サンタンジェロ城 ふふ、今日という聖なる日をお祝いするために、 すこしだけ頑張ってオシャレをしてみました。 サンタンジェロ城 ……えっと、その。 サンタンジェロ城 いかがでしょうか、公爵様……？ 殿 …………。 殿 ………………。 サンタンジェロ城 …………。 殿 ……………………！ サンタンジェロ城 ありがとうございます、公爵様。 喜んでいただけたようで何よりです。 サンタンジェロ城 （えへへ、公爵様にかわいいって言ってもらえるだなんて、夢のようです……♪） ？？？ あらあら、あのサンタンジェロが そんなにデレデレしちゃうなんて意外ね。 ？？？ うんうん、サンちゃんにもようやく春が来たってことだねー。 ？？？ まぁ、いまめっさ冬だけど。 やくも な、なんかよくわからんけど、怪しいヤツらが出てきただにぃ～！？ ？？？ だれが怪しいヤツらよ！ まったく失礼しちゃうわね。 カゼルタ宮殿 私はカゼルタ宮殿。 サンタンジェロの友人よ。 カゼルタ宮殿 でもってこっちが―― カステル・デル・モンテ カステル・デル・モンテだよ～☆ カステル・デル・モンテ 略すなら、モンテちゃんでー。 カステル・デル・モンテ カステル呼びだと、個性ぶっ壊れちゃうもんでー。 千狐 ……は、はぁ。 柳川城 何だか賑やかなお友達たちのようですね。 サンタンジェロ城 ええ。お二人ともいつもびっくりするくらい元気でして。 サンタンジェロ城 実は今回のバンケットの準備も手伝っていただいたのです。 カステル・デル・モンテ そうそう！　わたしが料理担当でー。 カゼルタ宮殿 そして、このカゼルタ様が―― カステル・デル・モンテ 雪ダルマの大量生産を担当したんだよねぇ。 カゼルタ宮殿 まぁね♪ カゼルタ宮殿 って、なに印象操作してんのよ！ カゼルタ宮殿 雪ダルマは三人で用意したんじゃない！ カゼルタ宮殿 いい？　私はディーバ、歌姫なの！ カゼルタ宮殿 サンタンジェロがひらいたバンケットに 美しい歌声で華を添えてあげようってわけ。 カステル・デル・モンテ 自分で美しいとかいっちゃう、この自信であるー。 カゼルタ宮殿 いいじゃない。事実なんですもの。 サンタンジェロ城 もう、二人とも公爵様たちそっちのけで お話ししてばかりでは失礼ですよぉ～。 カステル・デル・モンテ オットー、こいつはうっかりデルモンテー☆ カゼルタ宮殿 あんた、この前もそれ言ってたけど、流行らせたいわけ？ カステル・デル・モンテ まぁ、時代が許すなら～。 サンタンジェロ城 お～ふ～た～り～と～も～！ カステル・デル・モンテ わわわっ、ごめんごめん。 真面目にやるから怒らないで～。 カゼルタ宮殿 （滅多にないけど、怒るとシャレにならないからね……） サンタンジェロ城 コホン……。 サンタンジェロ城 それでは改めまして、バンケットの始まりといたしましょう。 サンタンジェロ城 公爵様、今宵は心行くまで楽しんでいってくださいね？ 殿 …………。 殿 …………！？ 柳川城 と、殿？　どうかしたのですか？ 千狐 ――っ！？ 千狐 まずいですわ！　周囲に兜の気を感じます！ カゼルタ宮殿 なんですって！？ カステル・デル・モンテ あ～～～～～っ！！　 みんな、向こうの方に何かいるよ！ 突撃式トッパイ形兜 ヘッ、ナーニガ、バンケットダ！ 浮カレテイル城娘タチヲ血祭リニアゲテヤレ！ やくも ひぃぃ……！ 本当に兜さんがいるだにぃ！！ 桃形兜 ――ン？　何ダ、コノ白イ球体ハ？ 桃形兜 アッ、コレ知ッテルヨ！　雪達磨！！ 桃形兜 カワイイネー。 突撃式トッパイ形兜 ケッ、日和ッテルンジャネェヨ、桃形！ 突撃式トッパイ形兜 コンナモンハナ、コウスンダヨ！（雪達磨ボコー） サンタンジェロ城 …………あ。 カステル・デル・モンテ あれ、カゼルタちゃんが作ったやつじゃない？ カゼルタ宮殿 …………。 カゼルタ宮殿 …………やってくれるわね。 カゼルタ宮殿 これ以上ないくらいの宣戦布告じゃないの！ 千狐 ――っ！？ カゼルタ宮殿 私の雪ダルマを壊したこと、あの世で後悔するといいわ。 突撃式トッパイ形兜 グヘヘヘ、後悔スンノハ貴様ラノ方ダ！ 突撃式トッパイ形兜 聖ナル夜モ戦イニ駆リ出サレル オレ達ノ憎悪ヲブツケテヤルゼ！ 柳川城 皆さん、兜たちが一斉に侵攻を開始したようです！ サンタンジェロ城 あぁ……聖なる夜だというのに……どうしてこのようなことに……。 カゼルタ宮殿 落ち込むのはわかるけど、 気持ちを強く持ちなさいサンタンジェロ！ カゼルタ宮殿 あんたが、アイツのために作った雪ダルマだけは、 何としても死守しなくちゃダメなんだから！ カステル・デル・モンテ だね！　わたしたちのは別にいいけど、 サンちゃんのは特別な想いがつまってるんだもん！ サンタンジェロ城 カゼルタちゃん……モンテちゃん……。 サンタンジェロ城 はい！　みんなで力をあわせて、兜たちを追い払いましょう！ カステル・デル・モンテ ってことで、カゼルタちゃんよろしくー！ カゼルタ宮殿 ええ、よくってよ♪ カゼルタ宮殿 さぁ、ディーヴァの歌声と共に、 全軍ッ、華麗に出陣なさい！
後半
カゼルタ宮殿 卑しき兜たちよ、ロココの海に溺れるといいわ！ 桃形兜 ヒィィィィィェェェッ！？ 桃形兜 コ、コノママジャ、ヤラレチャウヨ！ 桃形兜 撤退ッ！　撤退シローッ！！ カステル・デル・モンテ　 わるいけど――逃がさないよぉ！ 桃形兜 ギャアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ！！ 千狐 ……す、すごい。 やくも あれだけの数の兜さんたちをボッコボコにしちょーがや！ 柳川城 さすがはサンタンジェロ城さんのご友人ですね！ 殿 …………。 殿 …………！？ 柳川城 え？　サンタンジェロ城さん？ 千狐 あ、あれ？　おかしいですわ。 さきほどまで近くにいたというのに……。 やくも あーっ！　殿さん、彼処を見るがや！ サンタンジェロ城 …………。 突撃式トッパイ形兜 …………。 サンタンジェロ城 お願いします……もうこれ以上、罪を重ねないでください。 突撃式トッパイ形兜 ――ット、 ソレ以上コッチニ来ルンジャネェ！ 突撃式トッパイ形兜 コイツガドウナッテモイイノカ？ サンタンジェロ城 あ、ぅぅ……。 カゼルタ宮殿 なんて卑怯なヤツなの！ サンタンジェロの作った雪ダルマを盾にするなんて……。 カステル・デル・モンテ　 けど、既にあの兜は袋の鼠……。 遅かれ早かれやられる運命だよ！ 突撃式トッパイ形兜 ――ッチ。 逃ゲ場ハネェッテコトカ。 突撃式トッパイ形兜 ダッタラ、コンナ雪達磨……コウシテヤル！ サンタンジェロ城 ――――ッ！？

聖なる天使の贈り物 -後-

殿の為にと宴を準備してきた城娘たちを嘲笑う様に
兜の大軍が押し寄せてくる。そして、終に自作の雪
ダルマを壊されてしまったサンタンジェロ城は……。

前半
突撃式トッパイ形兜 ダッタラ、コンナ雪達磨……コウシテヤル！ サンタンジェロ城 ――――ッ！？ 兜の容赦無い殴打が無垢なる雪ダルマへと向かう。 刹那――サンタンジェロ城の想いは砕かれ、 後に残ったのは歪な雪の累積だけとなった。 サンタンジェロ城 そ、そんな……。 カステル・デル・モンテ ……ひどすぎる。 カゼルタ宮殿 サンタンジェロが、あんなに時間をかけて準備したっていうのに……。 突撃式トッパイ形兜 ケヘヘヘッ！　クリスマス ナンゾニ浮カレテルカラコウナルノサッ！ 突撃式トッパイ形兜 ソレニ、コンナコトデ哀シンデル場合ジャナイト思ウガナァ？ 柳川城 ……え？ 千狐 殿っ！　後方から兜たちの大軍が押し寄せてきています！ やくも 後陣がいたってことがや！？ カステル・デル・モンテ むぅ……無策で攻めて来たって訳じゃないってことだね。 カゼルタ宮殿 このままじゃまずいわ、サンタンジェロ！ 一端、後ろに下がりなさい。 サンタンジェロ城 …………。 カゼルタ宮殿 って、聞いてるのサンタンジェロ！？ カゼルタ宮殿 そんなところで放心してる場合じゃないわよ！ サンタンジェロ城 …………。 突撃式トッパイ形兜 ケハハハハッ！　怖クテ声モ出ネェヨウダナ！ 突撃式トッパイ形兜 安心シナ、サンタンジェロ城！　 オマエモ、アノ雪達磨ノヨウニ打ッ壊シテヤルカラヨ！！ サンタンジェロ城 あの、雪ダルマのように……？ サンタンジェロ城 …………うぅ。 サンタンジェロ城 …………許さない。 サンタンジェロ城 貴方のことだけは、絶対に許しません！ サンタンジェロ城 はぁぁ――ッ！！ 突撃式トッパイ形兜 ――ナ、ニィッ！？ カゼルタ宮殿 あちゃぁ……。 サンタンジェロのやつ、とうとうキレちゃったようね。 カステル・デル・モンテ でも、おかげで先鋒としては申し分なしだよ！ カステル・デル・モンテ みんなっ！　このままサンちゃんに続けーっ！ 柳川城 はいっ！　一気に突破口を開いてみせましょう！ 柳川城 殿、どうか我らに聡明なる下知を！
後半
サンタンジェロ城 祈りを束ね、今こそ光とならん！ サンタンジェロ城 せやぁぁあああああああッ！！ 突撃式トッパイ形兜 グアァァアアアアアアアアアアアッ！！ 古桃形兜 ナ、ナナッ、ナンテ強サダ……！ 即時散開ッ！　予定地点マデ撤退ダッ！！ やくも やったがや！　兜さんたちがみーんな逃げてくだに！ 千狐 ふぅ……これで、ようやく落ち着けそうね。 柳川城 ……いや、待ってください！ 何か様子がおかしいです！ 殿 …………！？ サンタンジェロ城 逃がしませんよ、兜たち！　 サンタンジェロ城 二度と此地へ侵攻する気を起こさぬよう、 徹底的に圧倒的に懲らしめてやります！ カゼルタ宮殿 ちょ、ちょっと！　サンタンジェロ！ ひとりで何処いく気よ！　無理な追撃はやめなさい！ カステル・デル・モンテ ……だめだ。わたしたちの声が聞こえてないみたい。 カステル・デル・モンテ よーし、こうなったら身体で止めに行くよ、カゼルタちゃん！ カゼルタ宮殿 仕方ないわね……。 カゼルタ宮殿 従者（ローザ）！　あんたたちも手伝いなさい！ カステル・デル・モンテ あ、そのふよふよ浮いてるやつって、そんな名前だったんだ！ カゼルタ宮殿 うるさいわね！　ばかなこと言ってないでさっさと行くわよ！ カステル・デル・モンテ はーいっ！ 柳川城 わ、私もお手伝いします！ ――四半刻後。 サンタンジェロ城 ハァ……ハァ……。 サンタンジェロ城 ご、ごめんなさい……。 どうやら、我を忘れていたようで……。 カステル・デル・モンテ ま、まぁ……これぐらいの被害ですんでよかった……のかな？ カゼルタ宮殿 そうね……。 前にサンタンジェロがキレた時は、こんなもんじゃなかったし……。 柳川城 （い、いったい……どのような事態だったのでしょうか……） 殿 …………。 サンタンジェロ城 公爵様……。 サンタンジェロ城 申し訳ありません……。 会場を荒らされてしまうだけでなく、 先のような失態をお見せしてしまうとは…………。 カステル・デル・モンテ 仕方ないよぉ、サンちゃんは牢獄的な機能を持つ御城だったんだし、 カステル・デル・モンテ 悪いことした相手には、トコトン追い込みかけなきゃ、それこそ嘘だよー。 カゼルタ宮殿 それに、私たちが傍にいたこともあって、 気が緩んでたってのもあったでしょうしね。 カゼルタ宮殿 普段のサンタンジェロなら、もう少し自制が効くはずだもの。 サンタンジェロ城 本当にごめんなさい……。 サンタンジェロ城 ……せっかく公爵様をお招きしたというのに。 サンタンジェロ城 私……わた、し……ぐすっ……。 殿 …………。 殿 …………！ サンタンジェロ城 ……え？ カステル・デル・モンテ おお～っ！　さっすが王様！　そうだよね！ カステル・デル・モンテ 壊されたのなら、またみんなで準備をすればいいだけじゃん！ サンタンジェロ城 で、でも……。 カゼルタ宮殿 まったく、なに遠慮してんのよ。 カゼルタ宮殿 最後まで手伝うって約束したでしょ？ カゼルタ宮殿 こういう時ぐらい、友達を頼りなさいっての。 サンタンジェロ城 モンテちゃん……カゼルタちゃん……。 柳川城 勿論、私たちもお手伝いしますよ！ やくも だにぃ！　工作は得意やけん、 修理ぐらいならうちがパパッとやるがや♪ 千狐 では、千狐は所領にいる他の城娘たちを呼んできます！ きっと、協力してくださる方々が大勢いるはずですから。 サンタンジェロ城 皆さんまで……。 殿 …………。 殿 …………。 サンタンジェロ城 公爵様……。 サンタンジェロ城 はいっ！　皆さんと一緒なら、きっとより素晴らしいバンケットとなるはずです。 こうして、兜たちの妨害に遭いながらも、 サンタンジェロ城たちは宴のために奔走することとなる。 そして――。 ――亥ノ刻・所領。 サンタンジェロ城 公爵様……。 まだ、起きていらっしゃいますか？ サンタンジェロ城 …………。 サンタンジェロ城 ふふ、よかったです。 サンタンジェロ城 ……えっと、その。 サンタンジェロ城 今日は、本当にありがとうございました。 サンタンジェロ城 おかげで、無事に楽しいバンケットを実施することができました。 サンタンジェロ城 …………。 サンタンジェロ城 は、はい。 兜たちとの戦いの時は、取り乱してしまって申し訳ありませんでした……。 サンタンジェロ城 ですが、どうしてもクリスマスを、 公爵様と一緒に過ごしたかったのです。 サンタンジェロ城 ええ……私の故郷では、この聖なる一日においては、 感謝の意を抱きながら大切な人とゆっくり過ごすのです。 サンタンジェロ城 だから……。 サンタンジェロ城 どうしても、貴方様と一緒に……。 サンタンジェロ城 ……って、わ、私……公爵様になんてことを……！ サンタンジェロ城 い、今のはお忘れください。 サンタンジェロ城 ……え？ サンタンジェロ城 あっ、このお人形ですか？ サンタンジェロ城 えへへ、これは私の大好きな人を模したお人形なのです。 サンタンジェロ城 こればかりは、いくら公爵様の 頼みと言えどもお渡しすることはできません。 サンタンジェロ城 ……ですが。 サンタンジェロ城 今宵はクリスマス……。 サンタンジェロ城 一年を良い子に過ごしてきた公爵様には、 きっと素晴らしいプレゼントが届くはずです。 サンタンジェロ城 …………。 サンタンジェロ城 はい♪ ですから、今日はちゃんとお眠りにならないとダメですからね？ サンタンジェロ城 ……それでは。 サンタンジェロ城 おやすみなさい、公爵様。 貴方様にどうか幸せな夢が訪れんことを――。

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