ストーリーテキスト/絢爛晶と導かれし城娘4

ページ名:ストーリーテキスト/絢爛晶と導かれし城娘4

目次

絢爛晶と導かれし城娘4[]

序幕[]

――所領。
特段、用という用も無く、
のどかな時を満喫していた……ある日のこと。

千狐
お茶が入りましたよ、皆さん。

やくも
はひぃ……。
千狐は暑さでおかしくなってしまったがや……?

やくも
こーんな暑い日に熱々のお茶を飲むなんて、
どーかしてるとしか思えんだにぃ……。

千狐
コン……でも、勿体ないの。
せっかく美味しいお茶を頂いたのに……。

???
――ええ、可哀そうです。
せっかく煎れていただけたのに飲まれないなんて。

殿
…………?

魚津城
では、こちらのお茶は、
私が頂いてもよろしいでしょうか……?

千狐
……ぜひどうぞなのっ♪
きっとご満足いただけると思います!

こぽこぽこぽ……。

魚津城
ずずー……。

魚津城
……はふぅ。美味しい。

柳川城
やくもさんはああ言っていましたが、
暑い日にこうしたものを口にするのも、また一興……ですよね。

立花山城
まぁ……確かにね。

殿
…………。

立花山城
で……そろそろ聞いても良いのかしら?

立花山城
そこの貴方が、どこのどちら様なのか……。

魚津城
ずずず~……。

魚津城
……はふぅ。

魚津城
……あらぁ? 私のことです?

やくも
そうに決まっとるだに!
あんたの名は確か、魚津城……だったがや?

千狐
あ、あまりに自然だったので、
普通にお茶を注いでしまっていたの……!

柳川城
それで……魚津城さんはどのようなご用でこちらまで?

魚津城
はい……それがですねぇ、
話すと少し長くなってしまうのですが――

(がらがらーっ)

松倉城
殿……殿は居るかっ!?

魚津城
――あ、松倉城様。いらっしゃいませ♪

松倉城
いらっしゃいませってお前……なぜここに居るのだ。
途中ではぐれてしまったから、姿を探していたのだぞ?

魚津城
あらぁ……そうでしたっけ?
私はまっすぐこちらを目指してきたのですけどぉ……。

殿
…………。

殿
…………?

柳川城
今……松倉城さんとおっしゃいましたか……?
ですがその姿は……?

千狐
はい……以前お会いした時から、
随分と変わられたような――はっ!

やくも
まさかこれは……あれだに?
『ちきのみだれ』っちゅうやつだに!?

立花山城
ちきの……みだれ?

殿
…………!

柳川城
ええ……そうとしか考えられません。

松倉城
……同様の事態に、遭遇したことがあるのじゃな?

魚津城
それなら、事態を収める方法もご存知だったり……?

柳川城
はい……得体は知れず、
根本的な解決には至っていませんが、
対処の術は心得ています。

松倉城
……そうか。
やはりお前たちを頼る判断は、
正しかったようじゃな……!

立花山城
……ち、ちょっと。話が見えないのだけど――

千狐
千狐の転移術で、すぐにでも現地に向かわなければ――!

立花山城
――ねぇってば!
私にも事情を聞かせなさいって!
いい加減にしないと拗ねるわよ!

殿
…………!

柳川城
すみません、急を要する問題だったので……。
では……私から説明を――

やくも
は~……まったく。
立花山城は世話の掛かる子だに。

立花山城
そ、そんなの……仕方ないじゃない。
貴方たちと違って、初めてのことなんだから……。

やくも
ま~、そうかもしれんけど……。

柳川城
やくもさん……ここぞとばかりに……。

千狐
立花山城さんが教えを乞うことなんて、
滅多にありませんからね……。

やくも
――やったら、
誠意っちゅうもんを見せてほしいもんだに!

やくも
うちも鬼やないだに!
立花山城の態度次第では、
考えてやらんこともないんやけど――

立花山城
(……むか)

立花山城
そうね……私が悪かったわ。
こういう時は誠意というものを見せなきゃ――ねっ!

(むにぃっ!)

やくも
ぃ、いぎっ!?

立花山城
お願い……やくも。
無知で愚かなこの立花山城に、
貴方様の知識を分けてくれないかしら……?

やくも
い、いぎぎぎぎぎぎ……!?

やくも
お、教へる! 教へるだに!
やから、ほっへは掴まんでほひぃがや……!

柳川城
い、痛そう……。

殿
…………。

――――

やくも
うひぃ……まぁだヒリヒリしとるがや。

千狐
良い薬になるといいの……。

柳川城
――ということなのです。
お分かりいただけましたでしょうか……?

魚津城
地気の乱れ……それにより生じた、力の吹き溜まり。

松倉城
妾たち城娘の姿に作用する程の、強大な力。
それは……白にも黒にも染まり得る。

立花山城
……納得したわ。
確かに、放置するのはあまりに危険過ぎる……。

柳川城
では、過去に生じた際と同様に、
各地を巡りつつ、乱れを鎮めていきましょう。

殿
…………!

千狐
――コンっ! 承知しました!
すぐに出立の準備を!

担いし赤を絶やさずに -壱-

日の本上陸を果たしたイタリアのとある城娘は、
観光を満喫していた最中に、違和感を察知する。
更には、彼女の身体を得体の知れない光が包み――

前半

――関東某所の海辺。

ここでは今……、
日の本観光に訪れたアラゴネーゼ城が、
現地の城娘の歓待を受けていた――

三崎城
いかがですか、アラゴネーゼ城さん。
日の本の海の感想は?

アラゴネーゼ城
最っ高だよ、三崎城ちゃん♪

アラゴネーゼ城
私もずーっと海の傍で生きてきたけど、
ここは故郷とは全然違う!
もっともっと日の本のことが知りたくなってきちゃった♪

三崎城
お見せしたいものは、これだけではないですよ?
関東には海以外にも名所が沢山あります!

三崎城
観光を済ませた後には、
三崎のマグロを存分に使ったお料理を振る舞って――

アラゴネーゼ城
――ん?

アラゴネーゼ城
(この辺りの空気……なんだかピリついてる?
 なんだろう、この感覚……)

アラゴネーゼ城
(嫌な感じじゃない……けど、良いものとも断定できない)

アラゴネーゼ城
(他の城娘たちにも、知らせた方が良いかな。
 それとも、お殿さまに――)

三崎城
――ネーゼ城さん、アラゴネーゼ城さんっ!

アラゴネーゼ城
……ん? どうしたの、三崎城ちゃん?

三崎城
……光っ!
アラゴネーゼ城さんの身体……光を発していますよ!?

アラゴネーゼ城
……お? ――おおおっ!?

三崎城
きゃっ、眩しっ……!

アラゴネーゼ城
力が、どんどん強まってる……!?
なんなの、これは――!

アラゴネーゼ城
わあああぁぁぁぁああっ!?

――――

アラゴネーゼ城
…………あれ?

三崎城
アラゴネーゼ城さん、その格好は……!?

アラゴネーゼ城
格好だけじゃない……。
身体の内から感じられる力も、大きく変わってる。
まるで生まれ変わったみたいな……?

アラゴネーゼ城
これは、いったい――?

柳川城
――アラゴネーゼ城さん、三崎城さんっ!

殿
…………!

三崎城
――殿! それに柳川城さんたちもっ!?

千狐
以前会った時とは、様子が違います……。
アラゴネーゼ城さんも松倉城さんと同じく、
乱れの影響を受けた……ということでしょうか。

立花山城
心強い味方を得た……とも受け取れるかもね。

松倉城
――うむ! 事情を説明し、助力を願うことにしよう!

合戦中

松倉城
城娘同士で演舞を行い、
此地に溜まった力を使い果たす……。
それで良いのじゃな、殿よ?

殿
…………!

松倉城
……承知した。お前が相手なら加減は要るまい。
新たに得たこの力、存分に振るわせてもらう!

松倉城
……はぁ、はぁ。
これで此地の乱れは……鎮められたな?

柳川城
……大丈夫ですか、松倉城さん?

松倉城
この程度で音を上げるわけにはいかん。
これも力を持つ者の務めじゃからな。

後半

三崎城
各地で起きている、
地気の乱れを鎮めるために……演舞を、ですか。

アラゴネーゼ城
……これは、
日の本観光を楽しんでる場合じゃなさそうだね。

柳川城
申し訳ありませんが……力を貸していただけますか?

アラゴネーゼ城
もっちろん♪
お殿さまや日の本のためだもん!
頼まれなくたってやるつもりだよ♪

殿
…………!

アラゴネーゼ城
あ……その代わり、さ……。
一つ、お願いしても……いいかな?

殿
…………?

アラゴネーゼ城
もし……全部元通りになって、
その後、お殿さまに余裕があったら……パーティーしたいの。

殿
…………!

アラゴネーゼ城
今日、日の本まで来たのはね、
お殿さまと一緒に思い出を作りたかったからなんだ。
だから……。

殿
…………。

殿
…………!

アラゴネーゼ城
――ほんとっ!? いいの?

殿
…………!

アラゴネーゼ城
やったやった! お殿さまとパーティーだぁ~♪

三崎城
良かったですね、アラゴネーゼ城さん。
私も乱れの解消に向けて、協力させていただきますよ!

アラゴネーゼ城
え、力を貸してくれるの……三崎城ちゃん?

三崎城
もちろんです!
この危機は関東全土に及ぶもの……。
座視していては、三崎城の名が泣いてしまいます!

三崎城
……それに、アラゴネーゼ城さんにはまだ、
三崎のマグロを堪能いただけていません!

三崎城
宴の席には、
自慢のマグロを並べて皆でお祝いを!
この場に居る皆さんとお約束いたします♪

アラゴネーゼ城
三崎城ちゃん……!

アラゴネーゼ城
よぉし……そうと決まったら、
休んでる暇はないね……早速、動き始めなきゃ!

アラゴネーゼ城
それじゃ私はここで!
また後でね、みんなっ!

アラゴネーゼ城
(だだだだだだだ……)

三崎城
ああ、アラゴネーゼ城さん!?
待ってくださいよぉ~~!

立花山城
……私たちも彼女を見習わなくちゃね。

やくも
だにっ! すぐに次の乱れを鎮めに行くがやー!

夕顔の華めきに焦がれ -壱-

町の茶屋で和菓子を堪能するは、異国イタリアより
訪れた城娘。しかし彼女は、重要な役目を帯びて
いたはず。果たしてそれを思い出せるのか……?

前半

――関東某所の、とある町。

アラゴネーゼ城
もぐもぐ……もぐもぐもぐ……♪

アラゴネーゼ城
――お団子におまんじゅう、それから熱~いお茶!
どれも最高の味だよ! これが噂の和菓子なんだね♪

元和江戸城
じゃんじゃん食べなよ~。
ここはあたしの奢りでいいからさ♪

アラゴネーゼ城
ぃやったぁ~! それじゃ遠慮なく♪
もぐもぐもぐもぐ――

江戸氏館
ふふ、良い食べっぷりだね。惚れ惚れしちゃうよ。

江戸氏館
……それにしても、珍しいこともあったものだね。
時間に厳しい江戸城ちゃんと寛永ちゃんが遅刻なんて。

江戸氏館
待ち合わせはこの茶屋で間違いないよね、元和ちゃん?

元和江戸城
まぁ……良いんじゃないですか、こんな日があっても。

元和江戸城
そもそも、二人は真面目過ぎるんですよ。
あたしは日頃から言ってるんですけどね。

江戸氏館
そりゃ、元和ちゃんから見たらそうだろうけどねぇ……。

江戸氏館
……ところで、アラゴネーゼ城ちゃんはどうして日の本まで?
遥々海の向こうからだなんて、大変だったでしょ。

アラゴネーゼ城
もぐもぐ……んふ、それがね。もぐもぐ――♪

元和江戸城
何か用事でもあったの? 殿に会うため……とか?

アラゴネーゼ城
――んぐっ!?

アラゴネーゼ城
ん、んんんっ!? けほ、けほけほっ!

元和江戸城
ちょ、アラゴネーゼ城ちゃんっ!?
ほら――これこれっ! お茶飲んでっ!

アラゴネーゼ城
……っ! ごく、ごくごくごく……!

アラゴネーゼ城
――ぷはぁ。舌やけどしたぁ……。

アラゴネーゼ城
――じゃなくて、思い出した!
私、大事なお役目の最中だったんだ!

江戸氏館
大事なお役目……?

アラゴネーゼ城
細かい話はあとあとっ!
二人とも、ちょっと力を貸してくれない?
もうすぐここにも、お殿さまが来るはずだからっ!

合戦中

アラゴネーゼ城
えっと……お殿さまや城娘たちと演舞をして、
此地に溜まった力を使い果たしちゃえば良いんだよね……?

アラゴネーゼ城
ぅわ……なんか緊張してきたよ。
私に上手くやれるのかな……。

アラゴネーゼ城
……だめだめ、悩むのは後回し!
お殿さまたちのために、私にできることをやらなきゃっ!

アラゴネーゼ城
ふぃ~、良い汗かいた~♪

アラゴネーゼ城
パーティーも楽しみだけど、温泉にも浸かりたいなぁ。
もちろん、お殿さまと一緒に!
この一件が片付いたら、誘ってみよーっと♪

後半

柳川城
アラゴネーゼ城さんに、元和江戸城さんと江戸氏館さんまで。
力を貸していただき、本当にありがとうございます。

殿
…………!

アラゴネーゼ城
……お安いご用だよ、これくらい!

アラゴネーゼ城
……ほらほら!
私のことは良いから、
お殿さまは早く次の場所に向かって!

松倉城
お前の方は大丈夫なのか、アラゴネーゼ城?

アラゴネーゼ城
うんっ! 私の方は心配なーし!
それに心強い仲間が、二人も増えたからね♪

元和江戸城
それってあたしたちのこと……に決まってますよね。

元和江戸城
……どうします、江戸氏館様?
なんか、凄い揉め事に巻き込まれそうですけど……。

江戸氏館
まー、やるしかないだろうね……仕方ないよ。

元和江戸城
――えぇっ、そんなぁ!?
どうにかしてくださいよぉ……。
あたしと二人で、ぐうたらお茶会同盟を組んだ仲でしょ?

江戸氏館
そんな同盟を組んでいたとは、知らなかった……。
だけど、一つ助言をしてあげる。

江戸氏館
現時点で、既に御屋形様たちが事態を把握してる。
なら江戸城ちゃんや寛永ちゃんたちは……どうかな?

江戸氏館
あの子たちがこれに気づいていないとは、
ちょっと考えづらいでしょ?

元和江戸城
……二人の遅刻は、その影響だと?

江戸氏館
そのとーり。
……なら、この件を手伝わなかった場合に、
あたしたちが迎える結末は?

元和江戸城
…………。

元和江戸城
……江戸城母さんのお説教。
その後、千代田城様にしごかれることになるかも。

江戸氏館
おまけに寛永ちゃんは、
失望に満ちたため息を漏らすことだろうね。

元和江戸城
…………。

元和江戸城
い、胃が痛いぃ……。

江戸氏館
……なんてことになるくらいなら、
こっちから進んで力を貸す方が、ずっと有意義だと思わない?

元和江戸城
それは、確かに……。

江戸氏館
(……ふぅ。説得はうまくいきそうだね)

江戸氏館
なんだかんだでチョロいんだよなー、元和ちゃんって。
まぁ、そういうとこも含めて可愛いんだけど。

元和江戸城
……心の声が漏れてますよ、江戸氏館様。

江戸氏館
……あ、気にしないで。
元和ちゃんのチョロさを、しみじみと噛み締めてただけだから。

元和江戸城
噛み締めなくていいですから、そんなもの!

江戸氏館
とーにーかーく。
ここは苦労を買って出るのが、
一番お得ってこと……伝わったでしょ?

元和江戸城
…………。

元和江戸城
……あたしと同じ怠け者かと思っていたら、
意外と打算的なところもあるんですね、江戸氏館様。

江戸氏館
まぁ……こう見えて、
経験を積んでるからね、色々と。

江戸氏館
……というよりこの場合、
あたしたちに選択の余地はないんだけど。

元和江戸城
……え? それはどういう――?

アラゴネーゼ城
――ってことで、此地の乱れは解決!
次の場所へしゅっぱ~つ!
準備はいいかな? 元和ちゃん、江戸氏館ちゃん!

元和江戸城
あっ、待ってアラゴネーゼ城ちゃん!
自分で歩ける、歩けるからぁ~~!

江戸氏館
それじゃ、御屋形様~。また後でね~。

殿
…………。

二幕[]

松倉城
対処は順調に進められている……が、
乱れはまだ、各地に残っているようじゃな。

柳川城
長い戦いになりそうですね。
力を使い果たさないよう、気をつけなければ……。

殿
…………。

松倉城
――む?
そういえば、魚津城の姿が見えぬな?
どこへ行ったのじゃ?

立花山城
彼女には、一旦別行動をとってもらうことにしたわ。
より多くの城娘に、状況を把握してもらうためにね。

やくも
事態を知らせるなら、
手分けしてやった方が効率が良いだに♪

松倉城
……む、そうか。
ならば良いのだが……。

千狐
…………。

千狐
……寂しい、ですか?

松倉城
――さ、寂しいわけがあるか!?
急に何を言い出すんじゃ、お前は!

千狐
――コ、コンッ! ごめんなさいなの!
松倉城さんの横顔が少しだけ、そんな風に見えたので……!

松倉城
む、むしろ逆じゃ……四六時中一緒に居るのでな、
離れ離れになってせいせいしておる程……。

立花山城
……魚津城との付き合いは長いの?

松倉城
……奴とは、築城された時期が近くてな。
生まれた頃より妾は主城として、奴は支城としての役目を帯びていた。

柳川城
あのように仲が良かったのは、そのためだったのですね。

松倉城
……まぁ、家族のようなものじゃからな。
せめて人前では支城らしく振る舞え、と言っておるのじゃが。

松倉城
二人きりになると、更にひどくてな。
自らの役目などすっかり忘れて、
妾のことを妹か何かのように扱う始末――

魚津城
――そんなこと言ってぇ。
松倉城ちゃんだって似たようなものじゃないですか。

魚津城
三日に一度くらいは、
私を抱き枕にしないと寝られなかったり……。
山のふもとで何かある度、私を呼びつけたり。

魚津城
まったくもぅ……。
主城としての誇りはどこに行ってしまったのやら。

松倉城
それは言い過ぎじゃ。
抱き枕にするのは、せいぜい五日。
……いや、四日に一度――ん?

松倉城
――う、魚津城っ! なぜここに居る!?
お前、別行動をとっていたはずでは……!

魚津城
お殿さまに報告をするために戻ってきたんですよぉ。

魚津城
そしたら……松倉城ちゃんが、
聞き捨てならないことを言っていたので……。
お返しをしてあげようかと。

立花山城
ふぅん……三日に一度は抱き枕に、ねぇ……。

松倉城
――っ、いや違う!
先の言葉には、悪意に基づく誇張が含まれておって、
事実とは大きく異なり、じゃな……!

魚津城
ふふふ……慌てる松倉城ちゃんも可愛いですぅ♪

柳川城
…………。

柳川城
(気の置けない間柄の主従……ですか。
 たとえば私もあんな風に、殿をからかってみたり……)

柳川城
(ちらっ)

殿
…………。

殿
…………?

柳川城
あ、いえ! 何でもありません!
次の場所へと向かいましょう、さぁっ!

担いし赤を絶やさずに -弐-

甲斐国、某所。関東全域を襲った地気の乱れは此地
にも生じていた。だが、一条小山城が目の当たり
にしたのはそれに勝るとも劣らぬ事態だった……?

前半

――甲斐国、某所。

仲睦まじき姉妹の城娘が治める此地にも今、
件の乱れが生じていた――

甲府城
お洗濯はこれでおしまい……っと!

鎌倉城
……うむ。ご苦労だったな、甲府城。

甲府城
なんてことないよ、こんなの!
鎌倉城ちゃんが手伝ってくれたお陰で、あっという間だったもん♪

甲府城
なんかごめんね。
お客さんとして来てもらったのに、
家事とか色々手伝わせちゃって……。

甲府城
お姉ちゃんや僕の立場を考えたら、
もっともっと手厚くおもてなししなきゃいけないのに……。

鎌倉城
気にすることはない。私が好きでやっているのだからな。

鎌倉城
お前のような、
未来ある城娘たちから頼ってもらえる……。
それは私にとって非常に光栄なことなのだよ。

鎌倉城
だから……甲府城。
困ったことがあればいつでも私を頼れ。
家事に限らず、どんなことでもだ。

甲府城
鎌倉城ちゃん……!

甲府城
それじゃ一つ……お願いしても良いかな?

鎌倉城
おお、早速か。
良いぞ。気兼ねなく言ってくれ。

甲府城
あのね……前から思ってたんだけどね……。

甲府城
鎌倉城ちゃんに僕のこと、
ぎゅーってしてほしいの……ダメかな?

鎌倉城
ぎ、ぎゅー……!?

甲府城
……鎌倉城ちゃん、すごく頼り甲斐があって、
お母さんみたいだなーって。
だから、甘えんぼしたくなっちゃって……。

甲府城
ダメ……かな?

鎌倉城
(な、なぜ……そんないじらしい表情を浮かべるのだ……!
 そんな顔をされたら……そんな顔をされたら……!)

鎌倉城
…………。

鎌倉城
む……無論、甘やかしてばかりは禁物だ。
とはいえ、厳しくするばかりではままならないこともまた、事実。

甲府城
――ということは!

鎌倉城
……抱擁程度なら応じよう。
甲府城の気が済むまで……な。

甲府城
やったぁ♪ 鎌倉城ちゃん大好き~♪(ぎゅうぅ)

鎌倉城
仕方のない奴だ……。
これが終わったら家事の続きするのだぞ?

甲府城
は~い♪

鎌倉城
…………。

鎌倉城
(……か、可愛い)

一条小山城
…………。

一条小山城
……こ、この状況は。

一条小山城
ワシの大事な妹の心が、
奪われようとしてるだよ……!

殿
…………。

一条小山城
…………。

一条小山城
――ぅおわっ、殿!?
いつからここに居たずらっ!

立花山城
……なんだか、他人事とは思えない状況ね。

柳川城
一条小山城さん……このまま放置しておくのはまずいですよ。

一条小山城
お、おぬしらまで……!

松倉城
いや……何をぼさっと眺めておるのじゃ、お前たち。
地気の乱れは、此地にも起きておるのじゃろう?

柳川城
そ、そうでしたね……。
鎌倉城さんたちにも声を掛けて、
助力を願わなければ……!

殿
…………!

合戦中

松倉城
……鎌倉城たちの助力も取り付けた。
後は力を尽くすのみだな……頼むぞ、殿!

柳川城
流石は鎌倉城さん……。
演舞の中で多くの学びを得ることができました。
力を貸してくれたこと、感謝いたします……!

後半

甲府城
はふぅ……疲れた。
後で温泉に浸かりたいよぉ……。

一条小山城
ワシも……甲府城の前だからと、
ちょっと張り切りすぎてしまっただよ……。

鎌倉城
ああ。二人とも……本当によく頑張ってくれた。

鎌倉城
……そうだ、今日の夕餉はほうとうにしようか。
お前たちの好物で、此度の労をねぎらおうじゃないか。

一条小山城
おお、ほうとう!?
やったずら! 鎌倉城、大好きずらー!

甲府城
やったやった! ほうとうだ~♪

一条小山城
――はっ!

一条小山城
あ、危ない危ない。
鎌倉城の包容力にやられてしまうとこだったずら……!

殿
…………。

鎌倉城
殿たちもどうだ?
急ぎの旅路と言っても、飲まず食わずでは辛いだろう。
ここは一つ、皆で夕餉を――

やくも
(ぐうぅぅ~~~~……)

鎌倉城
ふ……言うまでもないようだな。

鎌倉城
重要な役目を帯びるお前たちにとっては、
休息も大事な役目だろう。
次の地へと発つ前に、ここで英気を養っていくと良い。

柳川城
確かに、鎌倉城さんの仰る通りかもしれませんね。

立花山城
それでは……お言葉に甘えて、
少しの間休ませてもらいましょうか……殿?

殿
…………!

夕顔の華めきに焦がれ -弐-

関東七名城の一角、唐沢山城。妖魔すらも恐れ慄く
力を有する彼女だが、決して万能ではない。中でも
今回直面した事態は、一際難解なものであった……。

前半

――関東某所。
ここには今、関東七名城に連なる城娘の一部が集っていた。

しかし、ここに広がるのは緊張を孕んだ沈黙。
互いが顔を見合わせたまま、気まずい時間が流れていく……。

唐沢山城
…………。

佐竹城
…………。

忍城
…………。

菖蒲城
ぁぅう……。

唐沢山城
な、なぁ……菖蒲城。そろそろ、儂とも話を……。

菖蒲城
(びくっ)

菖蒲城
(ざざ……)

菖蒲城
(ずざざざざ……)

菖蒲城
こ、光栄です……唐沢山城様。
七名城の一角である貴方様とお話しさせていただけるなんて。

唐沢山城
という言葉の割に、
凄まじい勢いで退いているのだが……。

忍城
菖蒲城は、唐沢山城の何がそんなに恐ろしいのです?

菖蒲城
え……ええと、それは……。

菖蒲城
それは……うぅ。

唐沢山城
……安心しろ、菖蒲城。
全ては儂とお主が仲を深めるため。
臆すること無く、正直に答えてくれ。

菖蒲城
……は、はい。わかりました……。

菖蒲城
まず……鋭い目つき。それから力強い声。
他には戦場における佇まい。あとは刀を振るう時の掛け声。
それから――

唐沢山城
……思っていたよりも多かったな。

菖蒲城
ごご……ごめんなさい!

菖蒲城
尊敬はしています! お噂もかねがね!
それでも、怖いものは怖いんです……本当に申し訳ありません……!

唐沢山城
…………。

唐沢山城
……忍城、佐竹城。
やはり儂はここで退散した方が――

佐竹城
諦めたらそれまでですよ、唐沢山城ちゃん。
こういうのは、一度慣れればガラッと変わるものなんですから。

唐沢山城
……とは言ってもな。

佐竹城
……まずは認識を改めましょう。

佐竹城
確かに……菖蒲城ちゃんの言う通り、
一見すると荒々しく見えますが、それは表面的なものに過ぎません!
唐沢山城ちゃんの力は常に、仲間を守るために使われるのです。

佐竹城
彼女とは長い付き合いになりますが、
わたしのようなか弱い城娘にも、ずっと良くしてくれています。
彼女の優しさについてはわたしが保証しますよ。

唐沢山城
佐竹城……!

佐竹城
ですから……唐沢山城ちゃんのことは、
ちょっと大きいワンちゃんだとでも思っておけばいいんです♪

唐沢山城
…………。

唐沢山城
……佐竹城?

菖蒲城
わ、ワンちゃん……ですか?

佐竹城
優れた剣技を有する唐沢山城ちゃんには、前線がぴったり。

佐竹城
……ゆえに戦場においては、
わたしが支援と策を担うことが多々あります。

佐竹城
わたしの提案を迷いなく実行に移し、
戦果を次々と挙げる様は……正に忠犬!
お分かりですか、菖蒲城ちゃん!

菖蒲城
な、なるほど……!

唐沢山城
(ふ、複雑な気持ちだ。一概に否定できんだけに……!)

佐竹城
ということで!
菖蒲城ちゃんも試しに色々と命じてみましょう♪
遊びを通じて信頼関係を養うんです!

唐沢山城
…………!?

菖蒲城
そんな……。
唐沢山城様に命令だなんて、恐れ多いです。

佐竹城
大丈夫、大丈夫♪
その程度で怒ったりなんかしませんから。
わたしと唐沢山城ちゃんを信じてみてください♪

唐沢山城
(……お、おい佐竹城。どういうことだ……!?)

佐竹城
(菖蒲城ちゃんとお近づきになるための策、その一です!
 ここはわたしの言う通りにしてみてください、ねっ♪)

唐沢山城
むぅ……。

唐沢山城
(……確かに、佐竹城に頼る他ないことも事実。
 ここは信じてみることにしよう……)

菖蒲城
……ごくり。

菖蒲城
で、ではまず……お、お手を。

唐沢山城
……ほい。

菖蒲城
次は……おかわり。

唐沢山城
……こっちじゃな。

佐竹城
その調子です♪
とっても面白――お上手ですよ、菖蒲城ちゃん!

菖蒲城
確かに、ちょっと可愛く見えてきました……。

唐沢山城
……佐竹城め。
面白がっていることを隠さなくなってきよったな。

忍城
ですが、思いの外上手くいっているようです……。

佐竹城
次はなんの芸をやってもらいましょうか。ん~――あっ!

佐竹城
そうです! 大事なものが一つ抜けてしました。
ワンちゃんの芸といえば、あれです! 『ちん――

千狐
――コンッ! 転移成功なのっ!

やくも
この風景、見覚えがあるような……。
前にも来たことがあるだに?

殿
…………!

柳川城
……承知しました。
付近の城娘たちに助力を仰いでみましょう……!

――――

佐竹城
……今のは、お殿様たちの声?

忍城
……切迫している様子でした。
向かってみましょう、皆さん!

菖蒲城
はいっ! 忍城様!

唐沢山城
(な……なぜだろう。
 佐竹城の言葉が遮られて、ひどく安心している儂が居る……)

唐沢山城
……いや。
それよりも、殿たちと合流するのだったな。
急いで向かわなければ……!

合戦中

松倉城
……関東七名城の城娘や、
菖蒲城と刀を交える機会がやってくるとはな。
気を抜くなよ……殿。

松倉城
張り詰めた空気……演舞といえど、
一瞬の緩みも許されぬ戦いじゃったな。

殿
…………!

後半

唐沢山城
……言われた通りにしたが、これで良かったのか?

忍城
……はい。無事に乗り切れたようですね。

佐竹城
突然のことに驚いてしまいましたが、
事なきを得たようですね。
おまけに、もう一つの問題も解決しましたし♪

唐沢山城
……もう一つの問題も? それはどういう――?

菖蒲城
――唐沢山城様~!

菖蒲城
先程はありがとうございました!
此地の乱れを鎮めるため、力を貸していただき!

唐沢山城
――いや、気にすることはない。
儂にとっても良い鍛錬になったし……。

菖蒲城
それから……唐沢山城様の力、凄いです!

菖蒲城
邪を払う力を宿した刀……!
あれが唐沢山城様の権能なのですね。
すごいです、かっこいいです♪

唐沢山城
おお、そうか……喜んでもらえたようで儂も嬉しいぞ。

菖蒲城
ところで……唐沢山城様?
先の演舞での動きについて、
ご教示いただきたいのですが……よろしいでしょうか?

唐沢山城
剣技の話か! それなら任せろ。
儂が知る限りのことを教えてやるぞ♪

菖蒲城
ありがとうございますっ♪

――――

忍城
……演舞という形で刀を交えたことで、
唐沢山城さんへの尊敬を強めた……と。

佐竹城
……臆病なところはあるものの、
剣技に対して真摯に向き合い続けてきた子ですからね。

忍城
……菖蒲城から師匠として尊敬されていた私としては、
少しだけ妬けてしまう展開ですね。

殿
…………。

立花山城
悪かったわね……邪魔してしまったみたいで。

佐竹城
いえいえ、むしろお礼を言いたいくらいですよ♪

殿
…………?

忍城
いえ、先のことは私たちにお任せください。
乱れの察知から解消まで、私たちで対処してみせます。

柳川城
……何かあったら、いつでも頼ってくださいね。
しばらくは私たちも関東に居りますから。

忍城
ふふ、ご心配なく。
ここには頼れる仲間たちが居ますから。

殿
…………!

担いし赤を絶やさずに -参-

北条五色備の赤は、燃えたぎる情熱の色。
誰よりも笑顔と元気を絶やさずにいた彼女だが、
今日ばかりは彼女の表情にも影が差していた……。

前半

玉縄城
演舞……ですか?

殿
…………!

川越城
なるほど……玉縄城から溢れるこの力も、
地気の乱れによるものだったのね。

鉢形城
一方で……放置すれば何が起きるか想像もつかない。
一刻も早く鎮める必要がある……と。

伊豆下田城
知りませんでした。
そんなことが起きていたなんて……。

玉縄城
…………。

小田原城
……玉縄城。
お願いできますね?

玉縄城
あ、えーと……あはは。
困っちゃうなぁ……。

玉縄城
あたしより、小田原城様が指揮を執った方が、
良いんじゃないかな~、なんて思うんですけど……?

小田原城
意外ですね……貴方なら、
二つ返事で応えてくれると思ったのですが。

玉縄城
それは……目の前に小田原城様がいらっしゃるからです。
確実な手があるなら、そちらを選ぶべきだと――

小田原城
恐れて……いるのですか?

玉縄城
…………。

玉縄城
……それは、怖いですよ。
自分の中から、こんなに強い力が溢れてくるなんて。

玉縄城
上手く扱えるかどうか、分かりませんし、
もしも……あたしのせいで事態が悪化したら……。

伊豆下田城
(玉縄城……)

小田原城
…………。

小田原城
それでも私は……この場を貴方に任せるのが、
一番適切だと確信しています。

玉縄城
…………。

小田原城
地気の乱れが玉縄城の身に作用したこと、
それが貴方にさらなる力を授けたこと……。
これらはきっと、偶然ではありません。

小田原城
……北条五色備が一、赤き情熱の玉縄城。

小田原城
笑顔を絶やさず、
戦場で誰よりも強い輝きを放つ貴方に、
北条の城娘たちは皆、励まされてきました。

小田原城
此度の演舞においても、それは同じ。
貴方はただただ、貴方らしく舞えば良いのです。

小田原城
誰より熱く、誰より眩しい。
そんな玉縄城を……私は信じていますよ。

玉縄城
…………。

玉縄城
ふぅ……まいっちゃいますね。

玉縄城
『信じる』なんて……そんなこと言われたら、
燃えてきちゃうじゃないですか。

小田原城
玉縄城……!

玉縄城
小田原城様にそこまで言わせた以上、
恥をかかせることは許されませんよね……!

玉縄城
殿より仰せつかった演舞の任……。
最後の最後まで務めてみせましょう!

殿
…………!

川越城
……決心はついたみたいね、玉縄城?

玉縄城
……待たせちゃってごめんね、二人とも。

鉢形城
心配は要らぬぞ、玉縄城。
腑抜けたところを見せるようなら、
私が尻をひっぱたいてやるからな。

伊豆下田城
……本当に世話の焼ける子なんだから、貴方は。

小田原城
私は有事に備え、演舞を見守る役目を務めましょう。
それでは……頼みましたよ、玉縄城。

玉縄城
……はいっ、頼まれました!
北条五色備が一……玉縄城!
情熱の赤をまとい……舞いますっ!

合戦中

玉縄城
できるかどうかじゃない……やるんだ!
小田原城様が信じてくれたんだもん!

柳川城
玉縄城さんも決意を固めたようですね……。

立花山城
……ええ、そうみたいね。
それじゃ、殿……演舞を開始しましょう。

玉縄城
はぁ……やり切ったぁ。
もぉくたくただよ……しばらく休ませてぇ……。

柳川城
思った以上に過酷でしたが、どうにかなったようです。
玉縄城さんには大きな借りを作ってしまいましたね……。

後半

玉縄城
はぁ……やり切ったぁ。
もぉくたくただよ……しばらく休ませてぇ……。

小田原城
見事でしたよ、玉縄城。
貴方のような従者を持てたことを、誇りに思います。

玉縄城
そんなの、こちらの台詞ですよぉ……。
小田原城様にお仕えできるなんて、あたしは本当に幸せ者です。

松倉城
感謝するぞ、小田原城……そして、
玉縄城、鉢形城、川越城。

松倉城
お前たちの助力で、此地の乱れは無事に鎮められた。

殿
…………!

小田原城
はい……此方は私たちにお任せを。

小田原城
再び乱れを感じることがあれば、
周辺の城娘たちと連携しつつ解決へと導きましょう。

殿
…………!

やくも
よろしく頼むだに……。
それじゃ殿さん、次の乱れを鎮めるために出立するがや!

夕顔の華めきに焦がれ -参-

江戸の中心にして天下の府城だった江戸城。
関東各地から集められた城娘が彼女の留守を守って
いたが、そこには気まずい沈黙が満ちていた。

前半

――江戸の中心……江戸城。

天下の府城として知られる此地だが、
どういうわけか主である城娘の姿はなく、
その代わりに――

箕輪城
…………。

八王子城
…………。

足利氏館
…………。

足利氏館
…………うふふ。

箕輪城
……なにか?

足利氏館
……いいえ、なんでも。

足利氏館
……箕輪城ちゃんの方こそ、大丈夫?
なんだかイライラしてない……?

箕輪城
……い、イライラ?
いや、そんなことは決してありませんが……。

箕輪城
(ただ――)

八王子城
(会話が――)

足利氏館
(――続かないのよねぇ)

箕輪城
……江戸城さんは、
なぜ私たちを招待したのでしょうか。
それほど深い親交を持たない、私たちのような城娘を。

足利氏館
そうねぇ……江戸城ちゃんのことだから、
何か考えがあると思うのだけど。

八王子城
……その江戸城さんも、到着が遅れています。
何か問題があったと見るべきなのか、それとも――

???
――誰か! 誰かいらっしゃいませんか!

八王子城
――っ!?

佐倉城
お願いです……どうか、私に力を……!

八王子城
貴方は、佐倉城さん――ですか?
その姿と、力はいったい……?

佐倉城
……分かりません。
突然、身体が光に包まれて、気づいたらこの姿に……!
はぁ、はぁ……。

足利氏館
あらあら……凄い汗。
じっとしてて、お母さんが拭いてあげる……。

佐倉城
わ、私のことはお構いなく……!
お願いです……どうか、力を貸してください。

佐倉城
分からないことばかりですが、
看過できない事態が起きている……。
それだけは間違いないのです!

箕輪城
……佐倉城さん。

箕輪城
御城としての親交が――、
などと言っている場合ではないようですね。

八王子城
はい……人や都のこれからのために、
身を削るように尽くしている城娘がいるのです。
私たちも立ち上がらなければ。

足利氏館
守らなければならないものがある。
それだけが確かなら、わたくしたちにとっては充分――

千狐
――コンッ! 転移成功なのっ!

殿
…………!

立花山城
ここは……江戸の町ね。
ついてるわ……まずは城娘の姿を探しましょう。

足利氏館
今のは……坊やの声かしら。

佐倉城
……心強い味方が見つかりました。
これで、解決の糸口が掴めれば良いのですが――!

合戦中

佐倉城
……演舞。
力の吹き溜まりを我が物へと換え、
城娘の力として振るう――ですか。

佐倉城
江戸城さんの留守は、守りぬかなければ。
……残った力の全てを、注ぎます!

佐倉城
――ぅぐっ! ち、力が……。

松倉城
佐倉城……無事か?
ほら、こちらに身を預けるが良い。
妾が支えてやる……。

佐倉城
も、申し訳ありません……。

後半

柳川城
皆さん、ありがとうございました。
急な要請にも関わらず、力を貸してくださって……!

立花山城
……佐倉城は無事なの?
力を使い果たして、倒れてしまったようだけど……。

佐倉城
だ、大丈夫です……。
それで……演舞は? 地気の乱れは……?

八王子城
ご安心ください。乱れは鎮められました……。
ひとまず、危急の事態は乗り越えたようです。

佐倉城
そう、ですか。
それは良かっ……た――

佐倉城
(――がくっ)

箕輪城
佐倉城さんっ!

八王子城
……大事はありません。
急激に力を消耗した影響のようです。

足利氏館
少しの間、眠らせてあげましょう。
随分と無理をさせてしまったようですから。

箕輪城
……江戸城さんが私たちを招待した目的が、
理解できたような気がします。

足利氏館
日頃わたくしたちは……自身の御城に詰めて、
周辺の守りに力を注いでいる。
そうすれば自ずと、交友の範囲も縁ある子たちに限られます。

八王子城
それを広げるために、関東各地から城娘を呼び寄せた……。

足利氏館
天下の府城として、
多くの城娘に知られる江戸城ちゃんだからこそ、
気づき、実行に移せた案ね……。

箕輪城
過去の縁にばかり囚われていてはならない、ということですね。

八王子城
ええ……。
確かに私たちは、御城としての縁は深くありません。
ですが、それはあくまで過去の話。

足利氏館
わたくしたち城娘は未来を……、
これからを作っていかなければならないのよね。

箕輪城
それに……先の演舞で気付きましたが、
戦場での連携は、意外と悪くありませんでしたよね?

足利氏館
ふふっ、そうね♪
これから経験を重ねていけば、
もっともっと仲良くなれるんじゃないかしら?

八王子城
……感謝しなければなりませんね。
私たちを集めてくださった江戸城さんに。
そして――

足利氏館
誰よりも懸命に動き、
わたくしたちに大切なものを気づかせてくれた、
佐倉城ちゃんに……ね。

殿
…………。

足利氏館
ええ……ここは任せて、坊やは次の地へ向かって。
江戸城ちゃんの留守はわたくしたちが守るわ♪

殿
…………!

担いし赤を絶やさずに -肆-

上杉と武田……強大な二つの勢力の長が、
甲斐国にて相まみえる。双方譲らぬ言い争いに
発展するがその争点になっているものとは……?

前半

――甲斐国、某所。

躑躅ヶ崎館
…………。

春日山城
…………。

躑躅ヶ崎館
……譲らないな。

春日山城
……譲りませんね。

甲府城
…………。

甲府城
…………あはは。

春日山城
支城たちの慰安として、
旅行先に此地を選び……温泉旅行を提案したのは、この私。

春日山城
一条小山城と甲府城からも、すでに了承をいただいています。
貴方が横から茶々を入れるのは、筋違いというものではありませんか?

躑躅ヶ崎館
茶々も何も無かろう。
儂が首を横に振っているのだから、それまでの話じゃ。

春日山城
……相変わらず頭の固い人です。
久しぶりに顔を合わせたというのに、
まるで成長していませんね。

躑躅ヶ崎館
……覚えておくがいい。
儂が幾ら成長しようと、
お主の侵入を許すことだけはあり得ん。

躑躅ヶ崎館
此地を治めているのは儂ら武田の城娘じゃ。

春日山城
先に温泉旅行を提案し、約束を取り付けたのは私です!

甲府城
(うぅ……針のむしろだよぉ……)

躑躅ヶ崎館
お前になら分かるだろう、甲府城?
此地に上杉の城娘が集う……それがどれほど危険な事態か。

甲府城
(ほ、矛先がこっちに……)

甲府城
う~ん……。
信虎様や信玄様には、お世話になったからなぁ。
武田氏のみんなとも仲良くしてきたし……。

春日山城
……いえ。
聡明な甲府城なら、必ず理解してくれるはずです。

春日山城
私と躑躅ヶ崎館、どちらが正しいか。
立場に左右されることなく、
真の答えへとたどり着いてくれるでしょう。

甲府城
そ、聡明? そんなぁ……えへへ、照れちゃうなぁ。

躑躅ヶ崎館
おい、春日山城……儂の仲間を篭絡するつもりか。

春日山城
いいえ。私はただ、甲府城にお伝えしたかっただけです。
躑躅ヶ崎館に気を遣っているなら、
その必要はありませんよ……と。

春日山城
それとも……あの程度の言葉で揺らぐほど、
貴方がたの信頼とは脆いものなのでしょうか?

躑躅ヶ崎館
なんだと……貴様、儂らの絆を愚弄するというのか!

甲府城
(と、とても僕の手には負えないよぉ……)

甲府城
(武田も上杉も関係なく、
 みんなで湯船に浸かっちゃえば良いと思うんだけど……、
 それじゃダメなのかなぁ?)

甲府城
ど、どうしたら良いかなぁ……お姉ちゃん?

甲府城
……あれ?

甲府城
お姉ちゃんが居ない……?
どこに行っちゃったんだろ――?

一条小山城
――甲府城、こうふじょ~!
それに春日山城と躑躅ヶ崎館も!

殿
…………!

躑躅ヶ崎館
ん……一条小山城?
何やら、慌てている様子だが……?

春日山城
それに、殿たちの声も聞こえたような……?

一条小山城
二人とも、言い争いはそこまでにするずら!

甲府城
どうしたの、お姉ちゃん?
殿たちが居るってことは、もしかして……?

一条小山城
その通りずら!
地気の乱れがまた生じただよ!
すぐに演舞の用意を整えろし!

躑躅ヶ崎館
ち、地気の――

春日山城
――乱れ?

一条小山城
此地に平静を取り戻すため、力を尽くしてほしいずら!
頼むだよ、皆の者!

合戦中

松倉城
ふぅ……どうにか、
協力を取り付けることができたな。

柳川城
躑躅ヶ崎館さんと春日山城さん……。
日頃いがみあっている両者ですが、
城娘としての実力には疑うところはありません。

柳川城
皆さんの助力に応え、
この演舞を成功へと導きましょう。
殿……どうか聡明なご下知を!

柳川城
春日山城さんも、躑躅ヶ崎館さんも……見事な演舞でした。

松倉城
力を合わせて乱れを鎮めて、仲直り。
となれば良いのじゃが……。

立花山城
そう簡単にはいかないでしょうね。
この二人の場合は特に……。

後半

春日山城
ふぅ……良い運動になりました。
では、もう再開してもよろしいのですよね?

躑躅ヶ崎館
うむ。まだ議論に決着がついていなかったからな。
お主と儂のどちらが正しいか、とことん話し合おうではないか。

春日山城
ええ、良いでしょう。
貴方が敗北を認めるまで、付き合ってあげましょう。

躑躅ヶ崎館
望むところだ……後で吠え面をかくが良い。

殿
…………。

松倉城
此奴ら、何事も無かったかのように言い争いを……。

立花山城
殿の前だというのに、この子たちは……まったく。

柳川城
お二人の背負う業を思えば、
否めないところなのかもしれませんが……。

一条小山城
……とはいえ、
話し合いで仲良くなれるとも思えないだよ。

甲府城
…………。

一条小山城
……ん、甲府城? どうしたずら?

甲府城
……待って。躑躅ヶ崎館ちゃん、春日山城ちゃん。
少しだけ、僕の話を聞いてくれないかな?

春日山城
…………?

躑躅ヶ崎館
甲府城……。

甲府城
躑躅ヶ崎館ちゃんの気持ちはね……間違ってないと思うんだ。
上杉の城娘を意識しちゃうのは、仕方ないと思う。

甲府城
でも僕はね、誰かを締め出すようなことはしたくないの。
甲府温泉を愛してくれる子、
みんなに良い思い出を持って帰ってほしいんだ。

春日山城
…………。

甲府城
今の僕たちは……同じ城娘だよね。
まったく同じ方を向いてるってわけじゃないけど、
全然違うってわけでもないと思うの。

甲府城
躑躅ヶ崎館ちゃんだってそうでしょ?
上杉の子たちを敵視してるって言っても、
兜を相手にする時みたいに、憎しみを向けてるわけじゃないよね?

躑躅ヶ崎館
それは、そうじゃが……。

甲府城
…………。

躑躅ヶ崎館
…………。

躑躅ヶ崎館
……分かった。お主の意思を尊重しよう。

甲府城
…………!

躑躅ヶ崎館
慰安という目的から外れない限りは、
こちらから上杉の城娘へ手出しはせん……一時休戦としよう。

躑躅ヶ崎館
ただし、有事に備えて見張りを立てさせてもらう。
何が起きるか分からんからな。
……それで良いか、甲府城?

甲府城
……うん! うんっ!!
大丈夫だよ、躑躅ヶ崎館ちゃん!

甲府城
無理を聞いてもらっちゃって、ごめんね……。
春日山城ちゃんを呼ぶなら、
躑躅ヶ崎館ちゃんにちゃんと話を通しとくべきだったよね。

躑躅ヶ崎館
いや、無理を言っていたのは儂の方じゃ。
冷静さを欠いて、お主を軽んじるようなことを言ってしまった。

春日山城
…………。

春日山城
……随分と優しいことを言うのですね。
躑躅ヶ崎館ともあろう者が。

躑躅ヶ崎館
煽るな……それにこれは、
お主が先に言っていた『成長』とは違うのか?

春日山城
それは……。

甲府城
とにかく、一時休戦ってことで決まったんだよね?
それならすぐにみんなを集めようよ!
武田と上杉の城娘たちで、一緒に温泉を楽しむの♪

躑躅ヶ崎館
うむ、確かに急ぐ必要があるな。
上杉の者共に一番風呂を譲るわけにはいかん。

甲府城
うんうん、だよね!
僕もみんなをおもてなしする準備をしなきゃ――

春日山城
――何を言っているのです?
貴方がたは見張り役という務めがあるでしょう。

春日山城
そもそも、先に甲府城と約束を交わしたのはこの私。
一番風呂は私たち上杉のもの……言うまでもないことでしょう?

甲府城
…………。

甲府城
あ、あれぇ……この空気は……。

躑躅ヶ崎館
言ってくれるな、春日山城……。
よもやお主、忘れてはおらぬよな?
我らの許しが無ければ、温泉を楽しむことはできんという事実を……。

春日山城
私の方から貴方の意向を伺った覚えはありませんが?
勝手に貴方が許しを下しただけでしょう。

躑躅ヶ崎館
言いよる……良い度胸をしているな……。

春日山城
それはこちらの台詞です……!

甲府城
あれ、あれあれぇ……?

松倉城
結局、こうなってしまうのは避けられんのか……。

殿
…………。

立花山城
……そうね。
此地は皆に任せて、
私たちは次の乱れを鎮めに向かいましょう。

一条小山城
そうするといいだよ!
ワシと甲府城も居るし、あっちの二人も、
乱れがあればさっきのように協力してくれるはずずら!

甲府城
今日は助けてくれてありがとね、殿。
今度来る時は、一緒にゆっくり過ごせるといいなぁ。
僕、楽しみにしてるから♪

殿
…………!

夕顔の華めきに焦がれ -肆-

暗い夜道を歩む二人の城娘。辺りの雰囲気から
いつかの肝試しを想起するが、そこに突然
どこからともなく声が聞こえてくる……。

前半

伊予松山城
……はぁ。

丸岡城
……ふみゅ。

伊予松山城
関東へ赴いたついでに、
観光名所でも巡って……と思ったのだけど。

丸岡城
……見事に迷ってしまいましたね。

伊予松山城
……巨大化して、周囲を見回してみましょうか?

丸岡城
いえ、力は温存しておいた方が良いかと。
今は日が暮れて、見通しもよくありませんから……。

伊予松山城
となると……はぁ。今夜はこの辺りで野宿ね。

???
それにしても、雰囲気のある場所ですね。

???
こうして歩みを進めている今も、
何かが出てきそうで……。

伊予松山城
そうね……曰くや噂は知らないけれど、
肝試しには持ってこいの場所よね。

伊予松山城
肝試しでの出来事を思い出すわね……。
皆で温泉に浸かっていたら敵が襲ってきて、
大慌てで対処したのよね。

伊予松山城
確か……貴方も昔、
殿と肝試しを楽しんだんだったかしら、丸岡城さん?

丸岡城
……ふみゅ?

丸岡城
…………。

丸岡城
い、伊予松山城さん?
今……誰とお喋りしていたのです?

伊予松山城
……え? それはもちろん、丸岡城さんだけど。
『雰囲気のある場所ですね』って、貴方が言ったんでしょう?

丸岡城
(ふるふる、ふるふる)

丸岡城
それ……違います。私の声じゃありません……。

伊予松山城
え……。

???
くすくす、くすくす……。

???
……あらあら、情けない声を出して。
何を怖がっているのです? 城娘ともあろう方が……。

伊予松山城
…………。

伊予松山城
丸岡城さん……試しに一度、振り向いてみてくれるかしら?

丸岡城
ず、狡いです、伊予松山城さん……!
私だけに確認させるなんて!

丸岡城
手をつないで、
掛け声に合わせて一緒に振り向きましょう……ね?

伊予松山城
そ、そうね……そうしましょ。
何が起きても離さないわ……最期まで一緒よ。

丸岡城
……縁起でもないことを言わないでください。

伊予松山城
それじゃいくわよ。せぇーのっ――!

――――

丸岡城
……ふみゅ?

伊予松山城
誰も……居ない?

伊予松山城
変ね……聞き違いとはとても思えなかったのだけど――

丸岡城
――ふ、ふみゅ……!
伊予松山城さん……後ろ、後ろ……!

伊予松山城
…………っ!

???
危ないじゃありませんか。
可愛い女の子が二人きりで夜道……なんて。

???
悪いお化けに狙われてしまうかも――しれませんよ?

伊予松山城
――っ!?

丸岡城
…………!!

きゃあああああぁぁぁぁぁ――

――――

多気城
……ふふ。凄い叫び声でしたね……大成功です。

伊予松山城
……後ろから突然だなんて、びっくりするじゃない!
ほんとに出たと思ったんだからね!?

丸岡城
……ふみゅ。驚きましたぁ。

多気城
すみません……ですが、
お二人が肝試しの話をされていたので、
ここは一つ、気を利かせるところかと思いまして。

伊予松山城
ど、どういう気の利かせ方よ……。

丸岡城
それにしても、多気城さんはどうしてこのようなところに?

多気城
――巡回をしていたのです。
菖蒲城さんたちと共に、此地を守るべく……――はっ!

丸岡城
どうしたのですか、多気城さん……?

多気城
……お二人共、静かに。
身を低くして、そちらの茂みに隠れてください。

伊予松山城
茂みに……どういうことよ、突然?

多気城
説明はのちほど……今は危急の事態。
気配を殺すことに集中してください。

伊予松山城
……分かったわ。貴方を信じましょう。

――――

殿
…………。

殿
…………?

立花山城
……この辺りで間違いないのよね、宇都宮城?

宇都宮城
むぅ……おかしいのう。
こちらで乱れがないか、探ってくれているはずなのじゃが。

千狐
コン……これ以上は乱れを放置しておけないの。
多気城さんの助力を得られないのは残念ですが、
すぐに演舞を始めなければ――!

――――

多気城
お二人とも、ご覧ください……殿です。

伊予松山城
そ、そうね……確かに殿のようだけど……。

多気城
皆さんはまだ、
私たちの気配にはまるで気づいていません。
……つまり。

丸岡城
……つまり?

多気城
脅かすには、最高の好機。
先程のお二人のような反応がまた見られる、ということ……!

伊予松山城
(脅かすの……そんなに楽しかったのね……)

丸岡城
それにしても、
なぜ殿は此地に訪れたのでしょう……?

多気城
理由でしたら、
関東七名城の仲間たちから伺っています。
なんでも地気の乱れがどうとか……。

伊予松山城
……地気の乱れ、ですって?

丸岡城
聞き覚えがあります。
近畿にて同様の事象が起きた際には、
城娘総出で応じることになって……。

伊予松山城
私もよく覚えているわ……どうやら、
肝試しごっこを楽しんでいる場合ではないみたいね。

合戦中

立花山城
あちらに見えるのは、城娘……。
伊予松山城と丸岡城かしら?

柳川城
彼女たちが演舞に参加してくれるなら、心強いです。
皆の力を合わせて乱れを鎮めましょう、殿!

立花山城
夜闇に紛れ、
月の光を浴びながら舞う……というのも、
なかなか乙なものね。

立花山城
……なんて、浸っている場合では無かったわね。
此地の城娘たちと合流して、状況を把握しなきゃ

後半

宇都宮城
まったく、多気城め。
急に姿を消しおって……どこに行っていたのだ?

多気城
……申し訳ありません、宇都宮城さん。
巡回の最中に、面白いものを見つけてしまったものですから。

丸岡城
ふみゅ……それって、私たちのことです?

伊予松山城
まぁ、ここから先は心配要らないわ。
私と丸岡城さんが力を貸すもの。

伊予松山城
乱れが完全に鎮められるまで、
此地に留まり……助力させてもらうわ。
よろしくね♪

丸岡城
どうぞよろしく……です。

宇都宮城
むぅ……確かにな。
過去の乱れにも遭遇しているお主らの存在は非常に心強い。
結果、守りはより盤石になったと言える。

宇都宮城
菖蒲城はもちろんのこと、
唐沢山城や佐竹城……他の七名城たちも周辺で動いている。

宇都宮城
よって……殿よ。
此地に関してはもう、心配は無用じゃ。
安心して次の地へ向かうが良い。

殿
…………!

三幕[]

魚津城
はぁ、はぁ……。

殿
…………?

柳川城
大丈夫ですか、魚津城さん。
息が上がっているようですが……?

魚津城
……いえ、お気遣いなく。
ちょっと疲れてしまっただけなので……。

立花山城
まだ先は長いわ……どこかで休息をとった方が良さそうね。

魚津城
仰る通りですぅ……。
しばらくの間、休んだ方が良さそうですねぇ。

殿
…………。

魚津城
いえ、私のことはお構いなく。
すぐに追いつきますからぁ……。

松倉城
……その必要はない。

魚津城
ま、松倉城様……?

松倉城
妾が背負って歩こう。
そうすれば、身体を休めつつ進むことができる。

魚津城
いえ、松倉城様にそのような手間は。
皆さんの足を引っ張るわけにはいかないので……!

松倉城
やせ我慢をするな、馬鹿者。
口で言っているほど、余裕はないじゃろう。
今にも倒れそうではないか。

魚津城
……っ、気付かれていらっしゃったんですね。

松倉城
長い付き合いじゃ……気付かぬ方がおかしい。

松倉城
放っておけば、
倒れるまで無理をするつもりじゃろう。
妾にとってはそちらの方が迷惑じゃ。

松倉城
ほれ……さっさと乗らんか。

魚津城
うぅ……。

魚津城
(も~……そういうとこですよぉ、松倉城ちゃん)

――――

松倉城
これでよし……さ、進むぞ。

殿
…………!

立花山城
しばらくしたら代わりなさい。私も背負うわ。

柳川城
ええ、皆で代わりばんこに背負えば、
松倉城さんの疲労も軽減できるはずです。

魚津城
皆さん……ご迷惑をお掛けしますぅ。

(ざっ、ざっ、ざっ……)

魚津城
(松倉城ちゃんの背中……落ち着きます。
 おぶってもらうなんて、いつ以来かしら……。)

魚津城
…………。

魚津城
……あら。

魚津城
(眼の前に、松倉城ちゃんの可愛いお耳が……)

魚津城
…………。

魚津城
……ふうぅぅ~~。

松倉城
ひょわあぁぁっ!?
なな、何をするっ! 振り落とされたいのかっ!?

魚津城
すみません……魔が差してしまって。

松倉城
良いから大人しくしていろ……。
ここで無駄に体力を使うわけにはいかぬ。

魚津城
はぁい……分かりましたぁ……。

(ざっ、ざっ、ざっ……)

魚津城
…………。

魚津城
……好き。(ぼそり)

松倉城
――じゃからやめろと言っとるじゃろうが!
というか突然何を囁いとるんじゃ、お前は!?

魚津城
ふふ、すみません……つい出来心で……。

松倉城
本当に置いてってやろうか、此奴め……。

千狐
二人とも仲が良いのですね、本当に……。

柳川城
…………。

柳川城
ふううぅぅ~……。
いえ、もう少し優しくした方が……?
ふうぅぅぅ~――こうでしょうか。

立花山城
…………。

立花山城
(……今のは見なかったことにしておきましょう)

担いし赤を絶やさずに -伍-

小田原城の留守を任せられた城娘たち。その中の
一人、滸我御所は此度の役目を果たすべく
ある強い願いを胸の内に秘めていた……。

前半

館山城
――滸我御所様、滸我御所様はどこですか~!?

滸我御所
私ならここです。
そんなに叫ばなくても聞こえていますよ、館山城ちゃん。

滸我御所
……それで、今日はどんな用事ですか?

館山城
私が滸我御所様としたいことなんて、一つしかありません!

館山城
もっともっと聞かせてください……里見八犬伝の話を!
せっかく出会えたのですから、もっと仲良くしましょうよ!

滸我御所
貴方とはもう、散々お喋りをしたじゃないですか……。
古河城ちゃんの御城で、夜が明けるまで。

館山城
ええ、話しました! 夜を徹して話しましたとも!
ですがそれでも、まだまだ足りないのです!

館山城
滸我御所様はご存知ないのですか!?
里見八犬伝の長大さを!
ここで改めて、私がご説明しましょうか?

滸我御所
不要です……。
存じ上げているに決まっているでしょう。
私を誰だと思っているのですか……。

???
はっはっは……これは面白い。

滸我御所
――っ! その声は……。

前橋城
館山城の前では流石の滸我御所もたじたじ、といったところか。

古河城
あんまりうるさくしないでよね、貴方たち。

古河城
ここは小田原城の御城……ましてや、
今の私たちは大事な役目を与えられてるんだから。

前橋城
……うむ。
地気の乱れとやらの察知と、遭遇した際の対処をな。

滸我御所
そうでした……。
ごめんなさい、古河城ちゃん。

館山城
反省しますぅ……。

前橋城
とはいえ……悪いことばかりではない。

前橋城
予断の許せない状況の中とはいえ、
古河城と組ませてもらえたのは、
小田原城のご配慮だろう……感謝せねばならんだろうな。

古河城
――は、はぁ?
何を言い出すのよ、急に……!

前橋城
む……つれない反応だな? ……そうか。
お前は喜んでくれてはいなかったのか……。
それは残念だ……。

古河城
ちょっと、勝手に納得しないでよ。
別に嬉しくないなんて言ってないんだけど。
私だって、もっと前橋城と――

古河城
――はっ。

前橋城
……『前橋城と』?
さぁ、その続きを聞かせてくれ……ん? ん?

古河城
――し、知らないわよ、ばかっ!
そんなことを考える暇があるなら働きなさい!

前橋城
無論だ。巡回を行うというなら、
私はどこへでもついていくぞ。

古河城
貴方たちも……ほら、行くわよ! 滸我御所、館山城!

滸我御所
あ、待ってくださいよぉ、古河城ちゃんっ!

館山城
わ、私もご一緒します~!

合戦中

古河城
見つけたわ……これが地気の乱れ。
これを城娘の力に換え、演舞という形で使い果たす……。
小田原城によれば、そういう話だったわね?

滸我御所
……あちらの方から、殿たちの気を感じます。
すぐに合流し、演舞の完遂を目指しましょう!

滸我御所
はぁ、はぁ……すみません、古河城ちゃん。
私、少し頑張り過ぎてしまったみたいで……。

古河城
――滸我御所?
ちょっと……どうしたのよ、滸我御所!?

柳川城
――た、大変ですっ!
滸我御所さんが倒れてしまいましたっ!

後半

館山城
滸我御所様、大丈夫ですかっ!?

古河城
――滸我御所っ!

滸我御所
へ、平気です……しばらくすれば、すぐ元に戻るので。

前橋城
おかしいとは思っていたのだ……。
演舞があまりに上手くいきすぎている、とな。

古河城
ばか……倒れるまで力を使い果たすなんて。

滸我御所
これくらい、なんてことありませんよ。

滸我御所
私がここで城娘として存在できるのは、
古河城ちゃんのお陰……ですから、
こうして恩返しをすることが、私の生き甲斐なんです。

滸我御所
以前もお伝えしたのですが……、
もしかして、忘れちゃってました?

古河城
……忘れるわけないじゃない。

古河城
けど、それを言われた時に伝えたはずよ。
私に恩義を感じる必要なんかないわ、って。

古河城
だって、私は貴方に何もしてない。
私が貴方を生み出したわけじゃないんだもの……。

滸我御所
それでも……仕方ありません。
そのような思いが勝手に沸き立ってしまうのですから。
古河城ちゃんは、私の掛け替えのない家族のような存在だ……と。

古河城
…………。

古河城
そんなことを思っていたのね、貴方……。

滸我御所
気にしないでくださいね……。
私が勝手にそう考えているだけですから。

古河城
……ばかね。気にするに決まってるわ。
ここまでされて何も感じないわけが無いじゃない。

古河城
……後は私たちに任せて、気が済むまで休みなさい。

滸我御所
はい……ありがとう……ござ、います……。

前橋城
いつまでも、地べたに横たえておくわけにはいかんな。
ゆっくり休める場所へと連れていかなければ。

前橋城
私たちで支えよう。
助力を頼めるか……古河城、館山城?

館山城
承知しましたっ!

古河城
手伝ってくれてありがとう……二人とも。

殿
…………?

柳川城
ありがとうございました……皆さん。
乱れを鎮めるために、力を尽くしてくださって……。

殿
…………。

古河城
……ええ、この子のことは任せて。
私がちゃんと面倒を見るから。

前橋城
『私たちが』の間違いだぞ、古河城。
滸我御所の看病をするなら私も手伝おう。

館山城
もちろん私も手伝いますよー!

殿
…………!

夕顔の華めきに焦がれ -伍-

力を使い果たした佐倉城は、限界の訪れを悟る。
意識を失い、今にも倒れ伏しそうになったその時、
彼女の身体を抱きとめた者とは……。

前半

佐倉城
はぁ、はぁ……。

佐倉城
新たに得た強き力……それも、
もう幾ばくも残っていません。

佐倉城
ここまで休み無く、夢中で演舞を続けてきましたが、
流石に調子に乗り過ぎてしまいましたか……。

佐倉城
……ああ、ダメです。
もはや立っていることすら難しい。

佐倉城
申し訳ありません、皆さん。
佐倉城は……ここまでのよう、です――

(がしっ!)

佐倉城
(ん……誰でしょう?)

佐倉城
(暖かくて、大きくて……凄く、安心する……)

???
申し訳ありません……帰りが遅れました。

佐倉城
――っ! その声は……!

江戸城
よくぞここまで、持ちこたえてくれましたね……佐倉城。

佐倉城
え、江戸城様……!

江戸城
ここから先は私たちに任せて、貴方は休みなさい。
これは私からの命令です……良いですね?

佐倉城
で、ですが……まだ地気の乱れが……!

江戸城
安心なさい。
此度の事態を解決に導くべく、
心強い仲間を連れてきましたから。

佐倉城
心強い、仲間……?

徳川伏見城
……状況は予期してた通りだね。
以前に遭遇した地気の乱れと、同じ。

駿府城
つまり、おぬしらが先に申していたように、
演舞によってこの力を晴らせばよい……ということじゃな?

江戸城
お願いできますね……駿府城さん、徳川伏見城さん?

駿府城
言うまでもない!
関東の平穏のため……そうでなくとも、
掛け替えのない仲間の頼みじゃ! 断ることなどありえん!

徳川伏見城
あたしも同じくだよ!
江戸城ちゃんからの頼みを断ることなんて、
絶対ありえないよ♪

江戸城
感謝します……二人とも。

江戸城
それでは出立いたしましょうか。
演舞……開始です。

合戦中

柳川城
あちらに見えるのは、
江戸城さんに、それから……!

立花山城
……強い力を感じるわ。
それは此地に満ちる力によるものか、
彼女の思いの強さなのか……。

柳川城
いずれにしても、これより始まる演舞は、
過酷なものになりそうですね。
気を引き締めて参りましょう……殿。

佐倉城
……凄い。
此地に生じていた乱れが、
あっという間に……!

立花山城
流石は江戸城……江戸の町はこれで安心ね。

後半

江戸城
……ふぅ。只今戻りましたよ、佐倉城。

佐倉城
江戸城様の演舞……素晴らしいお姿でした。
私のこの目に、しかと焼き付けさせていただきました。

江戸城
全ては、貴方がここまで持ちこたえてくれたお陰です。

江戸城
……此度の件については、
貴方には礼をしなければなりませんね。
何か望みはありますか?

佐倉城
の、望みなんて滅相もない……。
江戸城様からそんな言葉を頂けただけで、
これ以上無い程の誉れです……!

江戸城
ふふ……それでは、
もっともっと褒めて差し上げましょう。

江戸城
今宵は、お礼を兼ねて私がしっかり看病してあげますから、
楽しみにしていてくださいね?

佐倉城
は、はいぃ……。

元和江戸城
……ちょっと母さん?
お楽しみの中のところ失礼しますけど。

元和江戸城
今回は珍しくあたしたちも働いてたってこと、
忘れないでくださいよー……?

江戸氏館
ふぅ……これでゆっくりお茶が楽しめるねー。

江戸城
ええ……二人ともよく頑張ってくれました。
貴方たちの振る舞いに、
寛永江戸城も感銘を受けていたようですよ。

元和江戸城
……え? 寛永ちゃんが?

寛永江戸城
お疲れ様でした、お母様!

寛永江戸城
やっぱりお母様は凄い城娘でした……!
普段の振る舞いはこうした事態に備えて、
真の力を温存していたのですね!

元和江戸城
(なんか盛大に勘違いされてる……!)

殿
…………?

立花山城
此地はもう、安心して良いみたいね……江戸城?

江戸城
はい……殿や皆さんにも、厚くお礼を申し上げます。

江戸城
聞けば、北条の城娘や関東七名城……。
果ては異国の城娘まで、多くの者が力を貸してくれたとのこと。

江戸城
全てが終わった暁には、
全力でおもてなしをしなければなりませんね……。

やくも
……宴?
もてなしっちゅーのは要するに、宴のことがや!?

千狐
こ、こらやくも……がっつかないの。

江戸城
ええ……そうですね。
お祝いと労いを兼ねて、大きな宴会を開くこととしましょう。

江戸城
各地で生じていた乱れも、鎮められつつあります。
それが実現するのは、遠い未来ではないはずです。

殿
…………!

江戸城
ええ……全てが終わったら、必ず。
私たちも楽しみにしていますからね……殿。

終幕[]

――江戸城の御城。

乱れを無事に鎮めた殿一行は、
事態の解決を祝う宴を催していた――

江戸城
えー……。
この度は、足を運んでいただきありがとうございます。
変事が解決に至ったばかりで、お疲れだというのに――

やくも
――うおおおぉぉぉ!!
宴、宴! 宴だにぃ~~~~!!

千狐
こらやくも、まだ江戸城さんがお話ししてる最中なの!

やくも
これ以上の我慢は辛抱ならんがや!
各地を飛び回ってお腹はペコペコ、喉はカラカラ!
うちはもうどうにかなってしまいそうだに!

江戸城
……ふふ。確かに、
他の皆さんも待ちかねているようですし、
堅い挨拶は不要かもしれませんね。

江戸城
今日の宴は立場や地位の隔てなく、
大いに楽しみましょう。

江戸城
――それでは、乾杯!

一同
かんぱーい!!

――――

寛永江戸城
お母様! お喋りしましょう、お喋り♪

元和江戸城
あー、はいはい。
そんな引っ張らなくても大丈夫だから……。

佐倉城
相変わらず元気ですね……あちらのお二人は。

江戸城
貴方の方は如何です?
……演舞の疲れは癒えましたか、佐倉城? 

佐倉城
はい……江戸城様のお陰ですっかり。
色々とお世話を掛けました……。

江戸城
あら、そうですか……それは残念です。

佐倉城
残念……ですか?

江戸城
身体を動かすのに苦労するようなら、
私が食べさせてあげようかと思っていたのです。
ただ、その必要が無くなってしまったので……。

佐倉城
――……っ!?

佐倉城
……か、からかわないでくださいよぉ。

江戸城
ふふ、すみません。
貴方の反応が面白かったものですから。

江戸城
ですが……嘘を言ったわけではありませんよ?
貴方が望むなら、私はいつでもお応えするつもりです。

佐倉城
――……っ!!

江戸城
ふふ、やっぱり面白い反応です。

佐倉城
もぉ~……江戸城様ぁ!

――――

アラゴネーゼ城
もぐ、もぐもぐ……♪

アラゴネーゼ城
美味し~! 手が止まらないよぉ♪
これが三崎城ちゃんオススメのマグロなんだね!

三崎城
好きなだけ食べてくださいね!
皆さんのためにお代わりはいっぱい用意していますから♪

アラゴネーゼ城
わーい♪ あっりがとー!

アラゴネーゼ城
ほら、お殿さまも味わってみて!
私が食べさせてあげるから♪

殿
…………♪

柳川城
(――あぁっ!?)

――――

小田原城
すっかり元気になったようですね、玉縄城。

玉縄城
はい……あの後、しっかりお休みをいただきましたので。

玉縄城
…………。

玉縄城
あの……小田原城様?
此度は色々とご迷惑を掛けてしまって、
申し訳ありませんでした。

小田原城
ご迷惑……あら、何の話でしょう?

玉縄城
萎れちゃったり、
らしくないところを見せちゃって。
どころか、小田原城様に叱咤されちゃったり……。

玉縄城
反省……してます。仮にも、
情熱の赤を担うこのあたしがあんな振る舞いを……。

小田原城
気にすることはありませんよ。
誰にでも浮き沈みはありますから。

小田原城
むしろ私は、先の苦難を乗り越えたことで、
貴方の赤色がより輝きを増したと感じています。

玉縄城
…………。

小田原城
……失望などあり得ません。
私はこれからもずっと、
五色備の赤色に変わらぬ期待を寄せることでしょう。

小田原城
ですから……今後もその力で、私を支えてくださいな。
どうぞ、よろしくお願いしますね。

玉縄城
……小田原城様。

玉縄城
貴方のその言葉が、
あたしにとっては何よりの励みです。
これからも……よろしくお願いします!

――――

魚津城
この度はお疲れ様でしたぁ、松倉城ちゃん。

魚津城
松倉城ちゃんの格好良いところがいっぱい見られて、
私は大満足ですよぉ♪

松倉城
お、おい……何度も言ったじゃろう。
ちゃん付けは二人きりの時だけにしろ、と……。

松倉城
む……なんだこの香りは。
まさかお前、酒を飲んでおるのか……?

魚津城
えへへ……。
頑張ったご褒美に、ぎゅーってしてあげますねぇ♪

松倉城
待て待て、寄りかかってくるな……こらっ!

――――

古河城
…………。

前橋城
一人きりで難しい顔をして……。
しっかり浮いておるな、お前は。
想像通りというか、期待を裏切らないというか。

古河城
うるさいわね……貴方だって人のことは言えないじゃない。

前橋城
ふ……私は望んでここに居るのだ。
お前と二人で宴を楽しみたかったのでな。

古河城
べ、別に、頼んでないけど……。

前橋城
……迷惑か?

古河城
…………。

古河城
迷惑では……ないけど。

古河城
私も、一人よりは……貴方と二人の方が良い。

前橋城
……そうか。それなら良かった。

――――

やくも
マグロ、マグロはどこだにぃぃぃぃいいい!

千狐
落ち着きなさい、やくも!
今、三崎城さんが持ってきてくれるから……!

殿
…………。

立花山城
いつ見ても良いわね……。
笑顔で溢れる宴の席というものは。

柳川城
はい……次にこうした事態が起きたとしても、
きっと乗り越えられる……そう思わせてくれますよね。

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
お、お礼なんて……そんな。
私は殿のために、最善を尽くしたまでで……!

立花山城
――とか言いながら、
にやけるのを抑えきれてないわよ、柳川城。

柳川城
――あれぇっ!?

殿
…………!

こうして、無事に乱れを鎮めることに成功した殿一行は――

この後も徐々に各地から城娘が集い、
賑わいを増していくこの宴を、心から楽しむのだった――



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