ストーリーテキスト/絢爛晶と導かれし城娘3

ページ名:ストーリーテキスト/絢爛晶と導かれし城娘3

目次

絢爛晶と導かれし城娘3[]

序幕[]

――所領。

柳川城
……お茶が入りましたよ。殿、一杯いかがですか?

殿
…………!

やくも
あっ、うちも一杯もらうだにー♪

千狐
千狐も頂くのー!

年末から正月にかけて続いた宴も、ようやく終わりを迎え……。

殿一行は久方ぶりに所領へと帰還し……長閑な一時を味わっていた。

しかし――

???
あのぉ~……。

殿
…………?

???
ごめんくださーい……。殿はいらっしゃいますかー?

柳川城
あら……来客のようですね……?

???
あ、いらっしゃいました。……はぁ、ようやく到着です。

引田城
お久しぶりです、皆さん。私……引田城、です……。

殿
…………?

千狐
引田城、さん……ですか?

引田城
あ、戸惑われるのも無理はありません。
というより……この変化には、私自身もかなり戸惑ってまして……。

引田城
『地気の乱れ』とお伝えすれば分かるはず、
と大宰府さんは仰っていましたが……。

殿
…………!

やくも
…………なっ!?

やくも
ち、ち、地気の乱れ……!?

やくも
――ってなんやったっけ、千狐?

千狐
コンッ! 何がどうなったら、あの一件を忘れられるのっ!?

千狐
たくさんの城娘に助力をお願いした、大事件だったの!
やくもお手製の兜人形だって、未だに一部は行方不明のままでしょ?

やくも
あ、ああー! あのことだに!?
わ、忘れてたわけじゃないがや。
ちょっと頭の隅っこに追いやられとっただけで……。

柳川城
地気の乱れによって生じた、力の吹き溜まり。
もし放置すれば、さらなる事態に発展する可能性がある……という話でしたね。

引田城
はい。私の身に起きた変化も、
その影響によるもの……と大宰府さんから伺いましたが……。

柳川城
ええ、間違いありません。
引田城さんが漂わせるその力には……覚えがあります。
これまでも、一部の城娘の身に度々起こっていた事態なのです。

殿
…………。

引田城
あ、そうだ……。
一応、大宰府さんからお手紙を預かっています。
参考になるかは分かりませんが……どうぞ。

やくも
おお、どれどれ――?

大宰府
ぴえん……通り越してぱおん。
を通り越して、もはや――

千狐
……ん?

千狐
これだけ……ですか?
なんだか、半ばで途切れてしまっているような……?

引田城
あ、いえ……お手紙はこれで全部です。

引田城
大宰府さん、相当落胆されている様子で……。
『妾の行く先々で問題が起こりよる』と呟いて、
筆を進める元気も失っている様子でした……。

やくも
あー……。

柳川城
思い返すと、大宰府さん……。
休養のために東海地方へと向かったのでしたね。

やくも
美味いものでも紹介してもらうかの、とか顔を綻ばせとったがや……。

引田城
私も、大宰府さんと似たような境遇でして……。
讃岐うどんの普及に加え、
東海地方の郷土料理『きしめん』を堪能するべく、足を運んだところでした。

引田城
偶然出くわした大宰府さんと共に、
しばらく観光を楽しんでいたのですが……このような事態になってしまって。

柳川城
そういえば、引田城さんはうどんをこよなく愛していたのですね。
以前もひと騒動――いえ、美味しいうどんを打っていただいて……。

引田城
わぁ……讃岐国自慢のうどんのこと、
覚えてくださってたのですね! 嬉しいです……♪

引田城
……あ! もちろんこの騒動が収まったら、
特製のうどんを振る舞って差し上げますからね♪
楽しみにしていてください!

やくも
(何が『もちろん』なのかよう分からんのやけど……)

引田城
……と、すみません。話を戻しましょう。

引田城
大宰府さんのお話しによれば、乱れが生じているのは二箇所。
私が遭遇した東海地方……それから、東北地方にも。

引田城
やはり、力の吹き溜まりがどう作用するかは分からず、
放置はできない状況にある……と。

千狐
な、東北地方にまで……!?

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
そうですね……すぐさま現地へ向かい、乱れを鎮めなければ。

千狐
以前と同じく、力の吹き溜まりを城娘の力に換え……演舞。
それを各地で繰り返し、平静な状態を取り戻す……ということですね。

やくも
やっぱりうちらだけじゃ、とても手が足りんだに。
各地の城娘から手を借りんと……!

殿
…………!

引田城
ありがとうございます、皆さん……!
それでは準備が整い次第、すぐに出立いたしましょう!

尾張にて名城は勇む -壱-

地気を鎮めるべく東海地方へと発った殿たち。
辿り着いたのは飛騨国の秘湯。そこで一行は、温泉を
こよなく愛する城娘たちに助力を求める。

前半

――飛騨国、某所。

アラゴネーゼ城
うおぉ~♪ 見てみて、ブダ城ちゃん!
あちこちからもくもく湯気が上ってるよ!

ブダ城
あ……はい、そうですね。素敵な景色です……。

伊予松山城
…………。

伊予松山城
(なにかしら……この違和感は……?)

伊予松山城
(言葉で言い表せない……悪寒。
 でも、以前に感じたことがあるような――)

アラゴネーゼ城
今日は案内してくれてありがとね、伊予松山城ちゃん!

アラゴネーゼ城
私ね、ずーっと前から思ってたんだ。
一度でいいから、日の本の温泉に浸かってみたいって♪

アラゴネーゼ城
そしたら……びっくり!
ブダ城ちゃんが、すでに日の本を経験済みだったなんて!

アラゴネーゼ城
で、思い切ってお願いしてみたら、
一緒に日の本に行って、温泉巡りをしようってことになったんだよね♪

ブダ城
ふふ……わたくしも、
日の本への再訪を心待ちにしていましたから。

ブダ城
温泉巡りの過程で、伊予松山城さんともお知り合いになれましたし。
わたくしとしても実りのある旅となりました♪

伊予松山城
ふふ、私も同じ気持ちよ。遠い異国の同好の士と、
温泉を楽しめるなんて……思いもよらぬ幸いだったわ♪

アラゴネーゼ城
こっちに来ることがあったら、絶対声掛けてね♪
お返しに、私の国を案内したげるから!
温泉はもちろん、名所っていう名所を隅々までね!

伊予松山城
異国の温泉も、いつか味わってみたいものね。
足を運んだ折には、必ず声を掛けるわ♪

伊予松山城
――さて、目的地はそろそろね。
飛騨国有数の秘湯は、もう目前よ……!

アラゴネーゼ城
長い道のりだったね……やっと到着かぁ~……!

ブダ城
…………。

アラゴネーゼ城
……ん、どうしたのブダ城ちゃん? なにか心配ごと?

ブダ城
……え? あ……いや、なんでも……。

アラゴネーゼ城
……ははーん。

アラゴネーゼ城
……もしかしてブダ城ちゃん、まだ恥ずかしいんだ?
裸になって温泉に入るの。

アラゴネーゼ城
相変わらずブダ城ちゃんは照れ屋さんだねー。
どうしても踏ん切りが付かないなら、私が手伝うけど?
この前みたく、すぽーんって私がひん剥いてさ♪

ブダ城
い、いえ結構です!
今回は自分のタイミングで脱ぎますから!
わたくしも、日の本の流儀に則って温泉を楽しみたいですし……!

アラゴネーゼ城
ふーん、そぉ?
ま、無理そうだったらいつでも私に頼ってくれていいからね?

ブダ城
…………。

ブダ城
も、もしもの時にはお願いするかも……しれません……。

???
――待ってー! 止まってください、そこの方~!

伊予松山城
――ん? この声は、どこかで聞き覚えがあるような……?

引田城
はぁ、はぁ……やっと、追いついた……。

伊予松山城
――っ! 貴方は……引田城?
以前と随分装いは違うけれど……引田城、よね?

引田城
申し訳ありません……細かい説明は、後回しにさせてください。

引田城
間もなく殿たちがこちらに到着します!
それまでの間に、演舞の準備を整えなければなりません!

引田城
……此地の乱れを鎮めるために、どうか……お力添えを!

後半

千狐
――コンッ! 此地の乱れは無事、鎮められました!

柳川城
皆さんのお陰で、何事もなく乗り切ることができました。
力を貸していただき、ありがとうございます。

伊予松山城
過去の経験が役立ったわね。
地気の乱れと演舞による対処は、以前にも遭遇したことがあったから。

ブダ城
それに、皆さんの顔色を見れば、状況の深刻さは明らかでしたもの……。
王様のために力を注ぐことに、否やはありませんわ。
……ね、アラゴネーゼ城さん?

アラゴネーゼ城
…………。

アラゴネーゼ城
……おとの……さま?

殿
…………?

アラゴネーゼ城
わー、やっぱりだ!
やっぱり貴方がお殿さまだったんだ♪

アラゴネーゼ城
私、アラゴネーゼ城!
イタリアのイスキア島に建ってる御城でね、
ずーっと前から民のことを見守ってきたの!

アラゴネーゼ城
えへへ、嬉しいなぁ~!
私ね、今回の旅行でお殿さまに絶対会うんだーって決めてたんだよ♪

殿
…………!

アラゴネーゼ城
……そうだ、良いこと思いついた!
お殿さまも浸かってこうよ、温泉♪

アラゴネーゼ城
いっぱい運動したんだし、ゆっくり身体を休めないとね!
しかも今なら、私のサービス付きだよ♪
背中を流してあげたりとか……他にもいっぱい!

アラゴネーゼ城
そうすれば、お殿さまともっと仲良くなれると思うんだ。
……ね、いいでしょ?

柳川城
(お、温泉……! 背中……さーびす!?)

ブダ城
(……つまり、一糸まとわぬ姿で王様と……!?)

ブダ城
(恐れていたことが遂に起こってしまいました……!
 ど、どうしましょう……どうすれば――)

殿
…………。

殿
…………!

アラゴネーゼ城
……え、今は急いでる?
すぐに次の場所に行かなきゃダメ……?

殿
…………。

アラゴネーゼ城
えぇ~、そっかぁ。残念だけど、仕方ないね……。

アラゴネーゼ城
分かった……一緒に温泉に入るのは今度にする……。

柳川城
(ほっ……)

殿
…………!

千狐
承知しました。
早速、次なる地へと出立いたしましょう……!
それでは――

千狐
――コンッ! 秘技・時空転移術なのぉ――っ!

――――

アラゴネーゼ城
ふふふっ♪
やったやった、お殿さまとお喋りしちゃった~!
帰ったらヌオちゃんに自慢しよーっと♪

伊予松山城
ひとまず、周辺の見回りを優先した方が良さそうね。
温泉は事態が落ち着いた後にしましょう……。

アラゴネーゼ城
そうだねっ!
お殿さまたちにかっこ悪いところは見せられないもん!
――ねっ、ブダ城ちゃん?

ブダ城
(ぶつぶつ、ぶつぶつ……)

ブダ城
――ですが、以前基肄城さんが仰っていました。
『ブダっちはわがままボディ』と……。

アラゴネーゼ城
ブダ城ちゃん? おーい、ブダ城ちゃーん……?

ブダ城
意味は未だによく分かりません。
が……恐らく、こういうことが言いたかったのでしょう。

ブダ城
恥じることなく脱ぎ、胸を張れ――と。

ブダ城
……基肄城さん。貴方の言葉、信じますよ。

ブダ城
王様が裸体を晒すというのならこのブダ城。
……もはや退くわけにはまいりません!

ブダ城
わたくしも皆様と同じように、全てを脱ぎ去り……、
一糸まとわぬ姿で、温泉へと臨みましょう!

ブダ城
――いざゆかん、決戦の地へと!

伊予松山城
…………。

アラゴネーゼ城
ブ、ブダ城ちゃん……。

アラゴネーゼ城
お殿さま……もう帰っちゃったけど……。

ブダ城
…………。

ブダ城
…………え。

奥羽にて赤瓦を纏う -壱-

奥羽へと転移した一行が遭遇したのはなんと、
薩摩国の城娘と会津若松城。火と油のような間柄
の彼女らと演舞をこなすことはできるのか……?

前半

――奥羽地方、某所。

地気の乱れを鎮めるべく、千狐の転移により出立した一行。

程なくして城娘の姿を見つけ、幸運を喜ぶ殿たち。
だが、助力を求める過程で問題が生じることとなる――

千狐
――という経緯なのですが、如何でしょう……か……?

鹿児島城
地気の乱れ……。
それが作用して、会津若松城をこうも変貌させた……と?

人吉城
そして、此地を守るために……。

佐賀城
会津若松城と力を合わせろ……だって?

千狐
は、はい。その通りです……。

会津若松城
…………。

やくも
(これは正に……針のむしろ、というやつだにぃ……)

鹿児島城
それは、
わたくしたちと会津若松城さんの仲を知った上で、
仰っているのですか……殿どん?

柳川城
…………。

殿
…………。

人吉城
どうにかならないだろうか……殿。

人吉城
もちろん、其方のために働きたい、という想いはある。
力を尽くし……此地に生じた乱れを鎮める。そこに疑問は無い。

人吉城
……だが、この会津若松城と手を組むというのは、どうにも……。

佐賀城
悪いな……殿。どうしたってアタシらは、
御城が背負う願いと切り離すことはできないんだ。

佐賀城
それに、会津若松城の奴だって良い気はしないだろうしよ……。

殿
…………。

柳川城
…………。

柳川城
貴方も同じ考えですか? ……鹿児島城さん?

鹿児島城
……わたくしは――

鹿児島城
わたくしは……会津若松城。
貴方の考えが知りたいですわ。……貴方はどうお考えですの?

会津若松城
…………。

会津若松城
……どうだっていい。

会津若松城
私の考えなど……どうだっていいのです。

会津若松城
……私がどんな道を歩んできて、何を思うかなど。
貴方が旧知の友なのか、宿敵なのかなど。
今は……些末なこと。

会津若松城
此地を守るためには、貴方たちの力が必要なんです。
それだけが何よりの事実。

鹿児島城
…………。

会津若松城
ですから……私には、これだけしか言えません。

会津若松城
どうか……どうか、此地を守るために、力を貸してほしい。

会津若松城
……お願いです。お願い……します……。

会津若松城
此地にもしものことがあったら……、
私は、顔向けができないのです。かつての城主、氏郷様に……!

鹿児島城
(かつての、城主……)

鹿児島城
(そうですか……やはり、貴方も……)

鹿児島城
…………。

鹿児島城
……人吉城、佐賀城。
わたくしは、彼女に力を貸そうと思います。

会津若松城
…………!

人吉城
…………。

佐賀城
……鹿児島城。

鹿児島城
わたくしたちと彼女は仇同士の間柄……。
力を貸さない理由など、幾らでも思いつきます。

鹿児島城
それでもなお……いえ、
だからこそ彼女は……わたくしたちに頭を下げた。
そうする以外に、手立てがなかったのですわ。

鹿児島城
そんな彼女の気持ちを……。
わたくし、痛いほど理解できてしまったのですわ。

佐賀城
…………。

鹿児島城
だって……。
もしも彼女とわたくしの立場が逆だったら、
間違いなく、わたくしも同じことをしたでしょうから。

人吉城
…………。

鹿児島城
考えて、考えて……。
結局、頭を下げる以外無いのだと理解したでしょうから……。

人吉城
(先の説明によれば……地気の乱れは、偶発的な災いのようなもの)

佐賀城
(つまり、アタシの友や民が害を被る可能性だって、充分にあり得る……)

鹿児島城
……無論、無理強いするつもりはありません。
お二人がどうするかは……各々で判断してくださいな。

佐賀城
…………。

佐賀城
……考える時間は要らねぇぜ、鹿児島城。もう答えは出たからな。

人吉城
……同じくだ。私も其方らと共に、力を貸すことにしよう。

佐賀城
ああ……もし、ここで会津若松城に背を向ければ、
アタシたちは、城娘として大切なものを失っちまうだろうからな。

殿
…………。

会津若松城
鹿児島城……人吉城、佐賀城……!

鹿児島城
ことは急を要するのでしたね……。
此地に満ちた力を全て振るい……ぶつけ合う。
それで良いのですね?

会津若松城
……え、ええ! 私の用意は出来ています!
さぁ、すぐに始めましょう!

後半

会津若松城
はぁ、はぁ……如何ですか、千狐さん。
地気の乱れは……鎮められたでしょうか……?

千狐
ええ……ひとまず、此地については安心して良さそうです……。
皆さん、本当にお疲れ様なの……!

会津若松城
はぁ……良かった……。

佐賀城
どうやら、難は乗り越えたようだぜ……人吉城。

人吉城
そうか。ふ……ようやく身体が温まってきたところだったのだがな。

鹿児島城
ありがとうございました……二人とも。

やくも
あの~、ふと思いついた疑問なんやけど……。

やくも
そもそも……。
会津若松城と不仲な鹿児島城たちが、
どうしてこんなところに居たんだに?

佐賀城
あ、いや……それはだな……。

鹿児島城
此地……奥羽に、心惹かれるものがあったためですわ。

鹿児島城
わたくしと縁深き、あの合戦が起こった地の空気を……、
直接、肌で感じてみたいと思ったんですの。

鹿児島城
でも……理解しました。わたくし、本当はきっと――

鹿児島城
――いえ、なんでもありませんわ。

殿
…………。

鹿児島城
殿どん……此地の乱れは、わたくしたちにお任せください。

鹿児島城
周辺にはまだ、
事情を把握できていない城娘も居るはずですの。
殿どんはそちらへと向かってくださいな。

殿
…………!

会津若松城
…………。

会津若松城
鹿児島城……わ、私は……。

鹿児島城
……分かっています。貴方も、
奥羽の城娘たちの様子が気になるのでしょう?

鹿児島城
先も申し上げた通り、此地は心配要りません。
わたくしたちに任せてすぐに発ちなさい。

会津若松城
……は、はい。ありがとうございます……。

鹿児島城
恩を感じる必要はありませんわ。
わたくしたちは、城娘として成すべきこと成しただけ。

鹿児島城
……立場が逆であれば、きっと貴方も同じことを言ったはずですわ。

会津若松城
鹿児島城……。

会津若松城
……承知しました。
地気の乱れを鎮めたら、すぐに此地へ戻ります。
それまでの間……任せましたよ。

鹿児島城
ええ、任されましたわ。

会津若松城
……殿。奥羽地方の地気を鎮める、この旅路……。
しばし、私も同行させていただいてもよろしいでしょうか。

会津若松城
奥羽には多くの城娘たちが居ります。
皆の安否を確認するまではこの会津若松城、
足を止めるわけにはいかないのです……!

殿
…………!

千狐
コンッ! 千狐も同じ想いなの! 

やくも
だに! 全速前進で向かうがやぁ~!

二幕[]

奥羽や東海に生じた地気の乱れ。
それを鎮めるべく始まった一行の旅路。

現地の城娘と共に演舞をこなし、
危なげなく進むその様は順調そのもの――

――に見えたのだが、しかし……。

引田城
…………。

引田城
……はぁ。

柳川城
……どうしたのですか、引田城さん?

柳川城
疲れが溜まっているのなら、遠慮なく仰ってくださいね?
急を要する事態ではありますが、休息は必要でしょうし……。

引田城
……あ、いえ。そういうわけじゃないんです……!

引田城
ただ、その……。難しいものだな……と思いまして……。

柳川城
難しい……ですか?

引田城
私……昔からあまり運に恵まれなくて……。
城主が不幸な目に遭うことが多かったんです。

引田城
そのせいで……何かと後ろ向きな考えに陥ったり、
ことあるごとに理由をつけては引きこもってばかりいました。
……うどんが絡まない限りは。

柳川城
(うどん……)

引田城
でも、今回は違います。

引田城
地気の乱れや、
それによって溢れた力が結晶化した……絢爛晶。
これらの後押しのお陰で、私も大きな力を得ました。

引田城
後ろ向きな私とはこれでお別れ。と思った――のです、けど……。

柳川城
あまり上手くいかない……ですか?

引田城
……はい。やっぱり、どうしても考えちゃうんです。
こんなことが起こったら、とか。上手くいかないかも、とか……。

引田城
どれだけ凄い力を手にしたって、勇気が無くちゃダメなんです。

引田城
殿や、柳川城さんみたいに……、
果敢に立ち向かえなきゃ、宝の持ち腐れなんですよ……。

柳川城
…………。

柳川城
ふふ……そうでしょうか?
私はそんな風には、全く思いませんが……?

引田城
で、でも……!

柳川城
なぜなら、私は今の話で一つ……。
引田城さんの良いところを見つけてしまったからです。

引田城
え……?

柳川城
引田城さんが仰った、ご自身の『後ろ向き』という特徴。
それは、言い換えると……目前の危険や、不安を察知する力に長けている……、
と受け取ることはできませんか?

引田城
た、長けている……。

柳川城
それは時に、状況を打破する鍵になることでしょう。
誰もが持っている力ではありません。
『後ろ向き』だから見えるものがあるんです。

引田城
そ、そうでしょうか……?

柳川城
ええ。今もきっと……引田城さんの視界には、
私に捉えられないものが見えているのだと思いますよ。そして――

柳川城
(――もっと言うと、ここだけの話……。
 やくもさんは私よりも更に、見えていなかったりします)

やくも
…………?

引田城
(あ、あー……。
 それは分かる……かもしれません)

柳川城
でもやくもさんは……その代わりに、
もの造りにおいては唯一無二と言える程の力を持っています。
その力でいつも、城娘や殿を支えている……。

引田城
…………。

柳川城
もし、引田城さんに足りないところがあるのなら、
他人と比べる前に、周囲の誰かを頼ってみてください。

柳川城
引田城さんの足りないところは……私が補います。
ですから、私の不手際に引田城さんが気づくことがあったら、
力を貸していただけると嬉しいです。

柳川城
……お願いできますか?

引田城
…………!

引田城
は、はい……分かりました!
それなら……私にも、できるような気がします……!

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
――えっ? なんですか、殿?

殿
…………!

柳川城
み、『見つけた』? 何の話でしょう……?

千狐
柳川城さんの良いところなの!

やくも
だにっ! 柳川城の言葉にうちは、
じ~んと胸を打たれてしまったがや!

やくも
(ちょこっと聞き取れなかったとこがあったのが、
 気になるんやけど……まー、些細なことだに!)

柳川城
え……っ! もしかして、
皆さん聞いていらっしゃったのですか……!?

柳川城
は、恥ずかしい……。
振り返ってみると、凄く偉そうなことを言ってしまったような……!

引田城
そんなことありませんよ、柳川城さん! とっても良いお話でした!
もっと沢山の人に聞かせてあげたかったくらいです!

やくも
同意だに!
でっかい紙に全部書き起こして、
所領中に配り歩きたいがや!

殿
…………!!

柳川城
わ、分かりました!
もうそんなに褒めてくださらなくていいですから!

柳川城
ですからお願いです!
もうこれ以上、私を辱めないでくださいぃ~!

尾張にて名城は勇む -弐-

徳川御三家の居城たる城娘の集う茶会にて、
突如起こった異変。前触れ無く高まる自身の
力に戸惑う名古屋城だが、果たして……。

前半

東海地方――某所。

此地には今……、
徳川御三家の御城として知られる城娘が集い、
久方ぶりの再会を喜び合っていた。

しかし……突然響き渡った悲鳴が、
そんな和やかな雰囲気を一掃してしまう……!

名古屋城
きゃあああぁぁぁぁぁっ!!?

和歌山城
ななななんだぁっ!?
雷鳴か! 雷雲かっ!? 落雷かっ!!?

水戸城
いえ、違うようですわ。その証拠に……ほら。
名古屋城のあの姿を御覧ください……。

和歌山城
む……?

――――

名古屋城
こ、これは……?

名古屋城
私の装いが、突然……いったいどういうことです……!?

水戸城
それに、名古屋城さんの全身から溢れる……この力。
本来、名古屋城さんが有するものとは異なるものです……。

名古屋城
もしかしたらこれは……先日、
大宰府さんから伺った、あの変事が関わっているのかも……。

水戸城
すぐにでも動き出さなければなりませんわね。
まずは周辺の調査――いえ、
それよりも名古屋城さんの身を案じるべきか。それとも――

和歌山城
――待て、待て待て。落ち着くのだ、きみたち。

名古屋城
和歌山城さん……。

和歌山城
重要なのは、最初の一歩だ。
出だしで方向を誤れば、取り返しがつかなくなるぞ。

和歌山城
つまり……我々がまず使うべきは身体でなく、頭なのだ。

水戸城
確かに……そうですわね。すみません。
突然の出来事に冷静さを欠いてしまいましたわ。

和歌山城
焦ることはない……ここに会しているのは、いずれも名のある城娘たち。
冷静さを失わずに思考を巡らせれば……必ずや、答えに近づけるだろう。

和歌山城
まずは落ち着いて、話し合いを――お、おぉ?

名古屋城
どうかされましたか……和歌山城さん?

和歌山城
お、おい……二人とも!! あれを見ろっ!
あれはいったい、どういうことなんだ……!?

水戸城
あれ……と言われましても。私の目には、
遠くの空に雲が浮かんでいるだけにしか見えませんが……。

和歌山城
そう、雲! あの雲について言っているっ!
あれは雷雲だ……そうだろう?

名古屋城
雷雲……? 確かに言われて見ると、
他の雲よりも黒ずんでいるような気もしますが……?

水戸城
とはいえ、雲が浮かんでいるのは遥か遠く。
名古屋城さんの身に起きた異変よりは、よっぽど安全かと……。

和歌山城
そ、そうか? ん~……そうかもしれない。
だが、むぅ……落ち着かん。
あの雲の先行きが気になって仕方ない。

水戸城
はぁ……。
『冷静さを失わずに思考を巡らせれば』……、
なんてどの口が言ったのかしら。

名古屋城
雷が絡むと、途端に無力化されちゃいますからね。
普段は頼れる方なんですけど……。

和歌山城
な、何を言うか! 私は決して臆病なわけではないぞ!
誰よりも正しく、雷の危険性を理解しているだけのこと!

水戸城
――しぃっ、静かに。今、近くで不穏な物音がしましたわ……。

和歌山城
ら、落雷じゃないよな……?

――――

千狐
――コンッ! 転移成功なのっ!

殿
…………!

柳川城
此地でも、地気の乱れが生じているのですよね……?

引田城
…………。

引田城
それだけではありません……。

柳川城
……え?

引田城
間違いありません。すぐ近くに、
私と同じく地気の影響を受けた城娘が居ます……!

殿
…………!

やくも
すぐにそっちに向かうだに!
引田城、案内をお願いするがやっ!

後半

和歌山城
ふぅ……これで良かったのか?

水戸城
驚きましたわね。貴方のことだからてっきり、
空の雲に気を取られてしまうかと……。

和歌山城
城娘としての力を振るう、演舞……これが幸いしたのだ。

和歌山城
演舞の最中は、自らの力に意識を割かなければならない。
それこそ、頭を使う余裕もないほどだ。

和歌山城
しかし、お陰様で演舞の最中はあの雲のことを忘れられた!
頭を使う前に身体を動かすべきだった、ということだな♪

水戸城
さっきと正反対のことを言ってるじゃありませんか……。

千狐
……名古屋城さん、和歌山城さん、そして水戸城さん。
力を貸してくださり、ありがとうございました。

殿
…………!

和歌山城
しかし、まだ油断はできないのだろう?

水戸城
ええ……。先程のお話によれば、
乱れは東海の各地で起きているのですよね?

引田城
その通りです……まだまだ各地で演舞を行う必要があります……!

名古屋城
…………。

名古屋城
(この感覚は……)

千狐
ん……どうかされましたか、名古屋城さん?

名古屋城
殿、皆さん……一つお願いなのですが……。
ここから先の案内を、私に任せてはもらえませんか?

殿
…………?

名古屋城
はい……近隣にて不穏な気配を感じました。
恐らく、件の乱れが関わっているものかと……!

やくも
おお! 早速次の乱れを発見だに♪ すぐに出立するがや!

和歌山城
では、私と水戸城は此地に残り、平穏の維持に務めることとしよう。

水戸城
そうですね……後のことは頼みましたよ、名古屋城さん。

名古屋城
はい……お任せください!

名古屋城
(乱れによって力を手にしたのも……一つの定め。
 必ずや、殿のお役に立ってみせますよ……!)

奥羽にて赤瓦を纏う -弐-

遠路を越えて奥羽地方に辿り着いた松坂城は、
心血注いで書き上げた自作の小説を、白石城に
満を持して披露する。彼女が抱いた感想とは……?

前半

白石城
…………。

白石城
ふむ、ふむふむ……。

松坂城
……で、どうですか? 白石城さん?

松坂城
此度の作品は、我ながら珠玉の出来栄えです。
ほらほら、遠慮なく感想を聞かせてください! どうぞどうぞ♪

白石城
…………。

白石城
……まず、内容のお話しをする前にお聞きしたいのですが……。

白石城
登場人物がやたらと男性ばかりなのは、いったい……?

松坂城
ふふっ、それはもちろん市場調査の賜物です!
流石は白石城さん、良いところに目をつけますね!

白石城
…………。

白石城
で、では。なんというか、
男性同士の――らしき描写が見られるのは……?

松坂城
ええ! もちろん、市場調査の賜物です!

白石城
なんというか……。
非常に、個人的な趣向に偏っているような気がしますが……。

松坂城
いえいえ、そんなことは決して!

松坂城
濃ゆーい恋愛は、物語における最高の香辛料!
手加減無しの、心と心のぶつかりあい……。これを前にすると、
読者は自然と期待を煽られ、先行きに思いを巡らせてしまうのです……!

白石城
(もはやどこから突っ込めばいいのか……)

白石城
伊勢国から遥々と、
何を目的にここまで来たかと思いましたが……はぁ。

白石城
……ん?

白石城
ちょっと待ってください、松坂城さん。
今あちらで何かが……光ったような気がしたのですが……?

白石城
(以前、千狐さんが転移術を行使した時の光に似ていたような……?)

松坂城
お待ちくださいっ! 逃げようったってそうはいきませんよ!

松坂城
確かに、今の白石城さんには少しばかり……私の作品は刺激が強いかもしれません。

松坂城
ですが、それはあくまで『今』に限ったお話!
嫌よ嫌よと言いながらも、
読んでいるうちにハマってしまう城娘も居るとか居ないとかで……!

松坂城
とにかく、最後まで読み切るまで逃しませんから!

白石城
お、落ち着いてください!
別に逃げるわけじゃありませんから!
後回しにするだけです!

白石城
とにかく今は、あの光の出どころを探らなければ!
……松坂城さんも付いてきてください。さぁ!

後半

白石城
なるほど……地気の乱れ、ですか。

白石城
……驚きましたね。奥羽の地にて、
そのような事態が起こっていたとは……。

千狐
ですが、此地の乱れは鎮められました。
お二人の助力に、感謝いたします……。

殿
…………!

白石城
故郷の民や、伊達家の城娘たちのことが気になります。
一度、様子を伺いに行くべきでしょう……。

白石城
これはどうやら……。
本を読みふけっている余裕はしばらくなさそうですよ、松坂城さん。

松坂城
…………。

白石城
松坂城さん……?

松坂城
ふふ……ふふふ……。

松坂城
(殿のお手伝いという名目で、奥羽地方全体を行脚。
 良いですね……良い風が吹いてきましたよ……♪)

松坂城
(……この機に乗じて、奥羽地方の各地に私が書き下ろした小説を――!)

白石城
――松坂城さん。

松坂城
――えっ? ……は、はい?

白石城
今は奥羽全体の危機……城娘たちの結束は不可欠です。
優先順位を誤ってはなりませんよ。

白石城
でないと……私、怒っちゃいますからね?

松坂城
…………。

松坂城
……はい。承知しました……。

尾張にて名城は勇む -参-

引田城、名古屋城と共に東海地方を進む殿たち。
城娘の気配を頼りに進んでいると、一行の耳に
どこか懐かしい歌声が流れ込んでくる……。

前半

やくも
乱れが起きてるのは……こっちで合っとるんだに? 千狐?

千狐
ええ……間違いないわ。
足を進めるごとに、嫌な感じが強まっていってる……!

殿
…………。

引田城
……それだけではありません。
どうやら……先客がいらっしゃるようです。

柳川城
先客……ですか?

名古屋城
ええ、城娘の気を感じます。
どこか覚えのあるような――

???
――うんうんっ! 良いですよ、その調子♪
ここから更にテンポアップです!

???
はい、リーダー!
――けほ、けほっ……。

???
だ、大丈夫ですか?
一回腰を下ろした方が良いのでは……?

???
いえ、問題ありません……いつものことですから。
それよりも、演舞の続きを……!

千狐
声が聞こえるの……!

やくも
こっちこっち、こっちだに!

大坂城
ここで一瞬溜めて、ターンしながら……ジャンプ!

彦根城
は、はいっ!

大坂城
そこから、着地と同時にとびっきりの――決めポーズ♪

彦根城
(ぽ、ぽーず? えっと、ええと――)

彦根城
にゃ、にゃぁ~……。

殿
…………。

彦根城
――にゃ?

彦根城
と、殿……!?

名古屋城
彦根城さんに、大坂城さん……!?

彦根城
…………。

柳川城
どうしてお二人が……揃ってこちらに?

彦根城
(見られた……渾身の決めぽーずを、殿に見られた……!)

引田城
彦根城さん……大丈夫ですか?

彦根城
――はっ。

彦根城
あ、はい。それがですね。
先日、大宰府さんからお手紙を頂きまして……。

大坂城
そうそう。
近畿で生じていた地気の乱れが、
場所を変えてまた生じてる……ってね。

彦根城
前の騒動を直接肌で知ってる私たちなら、
充分な働きが見込める、と考えたのでしょう……。

大坂城
多少の苦難に見舞われながらも、
ここまで辿り付き……ここでパフォーマンス、
いわゆる演舞を行ってた、というわけなんです!

やくも
ほぇ~……駆り出されてたのは、うちらだけやなかったんやね。

大坂城
でも良かったぁ……。
わたくしたち二人だけで乱れを鎮められるか、
ちょっぴり不安でしたけど……殿が居るなら安心ですね!

彦根城
ええ。その上引田城さん、名古屋城さん……、
柳川城さんの力まで借りられるのですから。けほ、けほっ……。

殿
…………!

引田城
そ、そうですね。
すぐに演舞を始めましょう……此地の乱れを鎮めるために!

後半

大坂城
いえーい! みんな、ありがとー♪

名古屋城
……ふぅ。これで此地は一段落……ひとまず安心ですね。

大坂城
なんて言いながら、
全然安心できなーいって顔してますよ、名古屋城ちゃん?
眉間にシワが寄っちゃってます。

名古屋城
ぅぐ……それは……。

彦根城
無理もありません……生まれ育った国の危機なのですから。

大坂城
本当はすぐにでも飛び出して、次の地に向かいたいんですよね?

彦根城
でしたら、躊躇う必要はありません。
此地は私たちに任せて……すぐに出立してください。

引田城
大坂城さん、彦根城さん……。

名古屋城
ありがとうございます……。

名古屋城
では、お言葉に甘えて……引き続き、
此地の守りを任せても良いですか……大坂城さん、彦根城さん?

大坂城
りょーかいしました♪ 東海地方を回るなら、
土地勘のある名古屋城さんが適役ですからね♪

彦根城
ええ……下手に動き回れば、
迷子になってしまうなんてこともあり得ます。
……先程の大坂城さんのように。

大坂城
あぁっ!? ちょっと、
それは言わない約束でしょ彦根城ちゃんっ!

奥羽にて赤瓦を纏う -参-

白石城を伴い、会津若松城の御城付近まで辿り
着いた一行。そこで馴染み深い城娘と再会するが、
その隣には、意外な城娘の姿があった……。

前半

会津若松城
あら……? ここは、私の御城の傍……ですね?

白石城
地気を探りながら進んでいるうちに、
こんなところまで来てしまったのですね。

殿
…………。

柳川城
そうですね。城娘と合流して、
現状について伺えれば良いのですが……。

???
ぬ……誰じゃ? そこに居るのは……?

殿
…………!

千代城
聞き覚えのある声じゃが、もしや……?

白石城
…………っ!

白石城
……千代城さん。

白石城
無事だったんですね……千代城さんっ!

千代城
わざわざここまで……。
そうか、心配を掛けてしまったな……白石城。

白石城
当たり前じゃないですか!
乱れが生じていることを知らされて以来……ずっと。
貴方の身を案じていたんですから……!

白石城
でも、本当に良かった……ご無事で……!

千代城
うむ。おぬしと再会できたこと……わらわも嬉しく思うぞ。

千代城
しかし、じゃな……。
わらわの方は、無事と言って良いのかどうか……。

白石城
えっ……もしや、どこかにお怪我でも?
だ、大丈夫なのですか、千代城さんっ!?

???
ん……何だ? 誰かが私の名を読んでいるようだが……?

仙台城
来客でもあったのか、千代城……?

殿
…………。

白石城
…………え?

――――

柳川城
ええと、一端整理すると……そちらの貴方は――?

仙台城
……仙台城だ。

殿
…………。

会津若松城
そして貴方が……?

千代城
……千代城じゃ。

やくも
せんだいじょうと、せんだいじょう……。

千狐
こ……これは、どういうことなの……?

仙台城
混乱するのは無理もないこと。
私たちも未だ、頭が追いついていない状況なのだ。

殿
…………。

殿
…………?

千代城
……うむ。
わらわと仙台城は本来……ひと繋がりの過去と未来。
本来ならば、こうして肩を並べることなど有り得ぬはず。

仙台城
まるで……鏡に映した自身と向き合っているような心地、というべきか。

千代城
それを引き起こす要因があるとすれば……、
思い当たるところは、一つしかない。

会津若松城
…………。

会津若松城
地気の乱れによるもの……ということですか。

柳川城
善にも悪にも染まらぬ力……。
放置すれば、何が起こるか検討もつかない。

柳川城
地気の乱れによって生じた力について、大宰府さんはそう語っていましたね。

殿
…………。

仙台城
とはいえ……それほど深刻になる事態でもない。
存外、大きな問題は生じずにやれているのだ。

千代城
背負う業も、記憶も……共有できるものが殆ど。
馬が合わない方がおかしいというものじゃ。

千代城
どの道、このまま経過を観察する以外にとるべき対処も思いつかんしのう。
生き別れの姉と再会したとでも思って、仲良く過ごしとる。

仙台城
なんにせよ、目下の急場は地気の乱れじゃ。これを放置して、
今以上の異変を引き起こすわけにはいくまい……殿?

殿
…………。

殿
…………!

千代城
うむ……良い返事じゃ。
では、おぬしらの話の通り……演舞を始めることにしようではないか!

後半

白石城
大丈夫ですか……千代城さん?

千代城
うむ……見ての通り、力を振るっても問題はないようじゃ。
今のところは、何の害も生じてはおらぬな。

仙台城
今のところは、
人手が増えたとでも思っておけば良さそうだな。
殿に迷惑を掛けることにはなるまい。

千代城
しかし、これまで起きなかったことであるのも、また事実。
此の身の変化には、注意を払う必要がありそうじゃな。

仙台城
加えて……この事象が私たちにのみ起きたとは、とても思えぬ……。

千代城
もしかすると……地気の影響を受けて、
わらわたちと似た境遇に置かれている城娘が、他にも居るのかもしれんな。

殿
…………。

会津若松城
ええ……引き続き、
奥羽を巡りながら地気の乱れを鎮めていきましょう。

やくも
ところで……二人とも。呼び方はどうするつもりなんだに?

仙台城
む……呼び方?

やくも
だに。せんだいじょうと、せんだいじょう……。
片っぽを呼ぶたび返事が二つ返ってくるなんて、ややこしすぎるがや。

千代城
……そうじゃのう。確かにややこしい。

白石城
ふふ、それならぴったりの呼び方があるではありませんか。

白石城
……ねぇ、千代ちゃん?

千代城
やめい――と言いたいところじゃが、
呼び方に工夫が必要なことは明らか……。

千代城
むぅ……よもや、この渾名を受け入れねばならぬ時が来るとはな……。

白石城
…………。

白石城
……千代ちゃん。

千代城
……なんじゃ。

やくも
千代ちゃん、千代ちゃん!

柳川城
千代ちゃん……さん。

千狐
千代ちゃん……なの!

会津若松城
千代ちゃん!

殿
…………。

千代城
ええい、うるさいうるさい!
ここぞとばかりに呼ぶでないわ、ばかもの!

尾張にて名城は勇む -肆-

地気の乱れを察知し、東海地方の某所へと
向かった城娘たち。しかし助力を頼める仲間の姿が
見つからず、引田城は途方に暮れてしまう……。

前半

――東海地方、某所。

名古屋城
――和歌山城さん、水戸城さんっ?
いらっしゃらないのですかっ? お二人ともっ!

名古屋城
…………。(きょろきょろ)

引田城
お二人がまだ此地に残っていれば、
再び助力を求めようと思ったのですが……。
当てが外れましたね。

名古屋城
はい……すでに別の場所へ移ってしまったようですね……。

引田城
それにしても……。
一度は地気を鎮めた場所で、
再び乱れが生じるなんて……。

引田城
…………。

引田城
あの……名古屋城さん。
これってもしかして、結構不味い状況じゃないです?

名古屋城
……そう、かもしれません。
私たち二人だけでは、乱れを鎮めるには心もとないです……。

引田城
ど、どど……どうしましょうっ……。
助けを求めるべきでしょうか、それなら一度二手に分かれて――

名古屋城
……ふふ。そう悲観することはありませんよ、引田城さん。
此地には、信頼できる城娘が沢山居りますから。

名古屋城
私や貴方が乱れに気づき、それを鎮めるべく動いているのなら……。
同じように、力を尽くしている者が居るはず。

引田城
私たちと、同じように……?

名古屋城
……ですから、大丈夫。
誰かがきっと駆けつけてくれるはずです。
そう遠くないうちに、必ず――

???
――然りっ! その通りだぜ、名古屋城!

引田城
……っ!!

名古屋城
あ、貴方は……!

勝幡城
悪いな、名古屋城。到着が遅れちまった。
別のところでも乱れが起こってたもんでな。

名古屋城
勝幡城さん!
ということは此度の変事についても……?

勝幡城
ああ、事情は把握してる!
織田家の城娘たちも直に到着するはずさ!

勝幡城
兎にも角にも、今は演舞だ!
そっちも準備できてるな?

名古屋城
話が早くて助かります……それでは、よろしくお願いします!

後半

千狐
――コンッ! 此地の乱れは鎮められました!
皆さん、本当にありがとうございます!

殿
…………!

名古屋城
ありがとうございます、皆さん。
本当に助かりました……!

勝幡城
良いってことよ。こういう時は持ちつ持たれつだろう?

名古屋城
で、ですが……。

勝幡城
嬉しく思うよ……さっきの言葉。
『誰かがきっと駆けつけてくれる』……さっき、そう言ってくれたよな。

名古屋城
勝幡城さん……。

勝幡城
後輩に頼られるってのは案外、嬉しいもんなんだ。
今後もこんな風に……頼られるような存在でありたいね。

勝幡城
アタシから言えることはそんだけさ。
……ほら、行きな。先を急ぐんだろ?

名古屋城
……は、はいっ!

名古屋城
重ね重ね……ありがとうございました!
この件が落ち着いたら、改めてご挨拶に伺いますのでっ!

名古屋城
では……失礼します!

――――

勝幡城
…………。

勝幡城
生き生きしちゃって、まぁ……。
あんなのを見せられたら、
こっちまで熱くなってきちまうじゃないか。

勝幡城
……なんて、ぼやっとしてる場合じゃなかったね。
アタシらも次の場所に向かわねえと。

勝幡城
さ、名古屋城と祝杯を交わすのを楽しみにしつつ……、
もうひと頑張りしようかね。

奥羽にて赤瓦を纏う -肆-

不来方城と盛岡城……本来出会うはずの無かった、
城娘の邂逅。不来方城のある言葉に過剰な反応を
見せる盛岡城だが、果たしてその真意とは……。

前半

盛岡城
…………。

白河小峰城
…………。

不来方城
…………。

不来方城
い、いいのか?
……本当に手加減しないぞ?

盛岡城
ええ、構いませんわ。ひと思いにやってください。

不来方城
……分かった。それじゃ遠慮なく。
いくぜ……せーのっ!

(ぐにぃぃっ)

盛岡城
――いぃっ!? いだっ、いだだだだだっ!?
痛い痛い痛いっ、痛いですぅっ!!

不来方城
だから言ったじゃねぇか、夢なんかじゃないぞーって。
俺の言いたいこと、これで分かってくれたか?

盛岡城
分かりましたっ!
分かりましたからもう離してくださいっ、お願いです!
でないと、ほっぺが千切れちゃいますぅぅ!

不来方城
はいはい、分かったよ……。

白河小峰城
それにしても、驚きましたね。恐らくは……今、
奥羽で起きているという乱れの影響なのでしょうが……。

不来方城
でもよ、いつまでも思い悩んではいられないぜ。
事態の解決に向けて、すぐにでも動き出さねぇと!

盛岡城
……そ、そうですわね。仰る通りです。
事が大きくなる前に、動き出さなければ。

不来方城
そういうことだ! だって、俺たちはヒーローなんだからよ!

盛岡城
――っ!?

盛岡城
い、いたたた……急に胃に痛みが……。

不来方城
な、なんだ? なんか悪いもんでも食ったか?

盛岡城
ち、違います……貴方が急にヒーローとか言い出すから……!

不来方城
……俺がヒーローって言い出すから?
どういうことだ?

盛岡城
いわゆる……黒歴史というものですわ。

盛岡城
私……もう終わりにしたんです、そういうの。
記憶からも消そうと決めて、ようやく忘れかけてたのに……。

不来方城
記憶から消す? なんでそんなことするんだよ?
かっこいいじゃねぇか、ヒーロー!

盛岡城
いえ、その気持ちは分かるんです。
貴方のヒーローへの憧れは、痛いほどに……。

盛岡城
ですが……だからこそ今の私には、
古傷をえぐるような威力があってですね……。

白河小峰城
(ど、泥沼化するばかりですね、このままだと……)

白河小峰城
――ん?

白河小峰城
今、あちらで何か……光ったような……?

千狐
――コンッ!!
転移成功です! 到着なのっ!

やくも
今度の乱れはどこだに?
……こっち? それともあっちがや?

不来方城
……お、今の声は千狐じゃねぇか?

白河小峰城
はい、そのようですね。やくもさんの声も聞こえました。

不来方城
――ってことはやっぱり、
殿たちが動くような問題が起こったに違いねぇ!

不来方城
すぐに合流だ……行こうぜ!
盛岡城、白河小峰城!

後半

会津若松城
ありがとうございました……ご助力、感謝いたします!

殿
…………!

不来方城
いやっ、礼を言いたいのはこっちの方だぜ!
お前たちに会えなきゃ、
乱れの鎮め方も分からなかっただろからな!

不来方城
それに、お前たちから詳しい事情を聞けた!
俺たちと似たような境遇の城娘が居るって聞いて、
少しだけ安心したぜ。

白河小峰城
千代城さんと、仙台城さん……、
あちらでも急を要する事態にはないようですし、
私たちもひとまずは、乱れの対処に力を注ぐべきですね。

不来方城
だな! 奥羽の平和は必ず守りぬくぜ、正義のヒーローとしてな!

不来方城
……と。引き止めちまって悪かったな。
殿たちはすぐに出立してくれ!
俺らはもう心配要らないからさ!

盛岡城
ううぅ……黒歴史、黒歴史がぁ……。

やくも
し、心配した方が良さそうなのが、一人居るんやけど……。

殿
…………。

三幕[]

引田城
はぁ、はぁ……はぁ……。

殿
…………。

柳川城
引田城さん……一度、休息をとりませんか?

やくも
だに……これ以上は、
怪我とかするかも分からんし……。

引田城
いえ、大丈夫……です。
少し力を使い過ぎてしまっただけ、なので……。

引田城
次の地に到着するまでには、回復します……から……。

千狐
ですが……。

引田城
えへへ、私……今、凄く楽しいんです……。

引田城
皆さんと演舞を行って、乱れを鎮めて。
……笑顔がちょっとずつ増えていく。

引田城
本当に……素敵です。

引田城
もう少し……まだもう少し頑張れるって気持ちが、
自然と湧いてくるんです。

柳川城
…………。

引田城
柳川城さんのお陰です。
貴方が、私のことを信じてくれたから……。

柳川城
引田城さん……。

殿
…………。

柳川城
分かりました……でしたら、
無理に止めたりはいたしません。

柳川城
ですが……無理は厳禁です。
もし、力を使い果たしてしまうようなことになったら、
すぐ……私たちを頼ってください。約束ですよ?

引田城
分かり、ました……。

引田城
その代わり……柳川城さんも約束しましょう?

引田城
もしも柳川城さんに、何かあったら……すぐ、私を頼ってください。

柳川城
…………!

柳川城
……ええ、もちろんです。約束しますよ。

殿
…………。

尾張にて名城は勇む -伍-

ここでも生じた、過去と未来の邂逅。
『お姉ちゃんが二人?』と金鯱城が戸惑う中、
演舞を成し遂げることは叶うのか――?

前半

殿
…………。

柳川城
さて……地気の乱れを追いながら、
再び此地に戻ってきたわけですが――

???
ちーがーうー!

???
名古屋城じゃなくて、那古野城だって言ってるだろ?

???
違くない~! お姉ちゃんはお姉ちゃん!
ボクが見間違えるわけないもん!

???
いや……確かにそうなんだけど。
わたしもよく分かってなくて……、
んー、なんて言ったらいいかな。

殿
…………。

殿
…………?

名古屋城
はい……確かに聞こえました。
ですが、今の声は――

那古野城
……おや?

金鯱城
……ん?

名古屋城
――……っ! 貴方は……!

那古野城
……名古屋城。
意外と早く会えたのは、不幸中の幸い……というべきかな。

名古屋城
貴方は、那古野城……。

名古屋城
……出会うはずのない城娘たちの邂逅。
これが私の身にも起こるとは……。

金鯱城
……あれぇ?

金鯱城
お姉ちゃんが……二人?
あれ……あれれ? これはどういうこと……?

那古野城
ふ……そうだな。分からないことだらけだ。

那古野城
だが……彼らがここに駆けつけたということは、
何か、解消すべき問題が生じているんだろう。

金鯱城
そ、そうだね! なんだか慌ててるっぽいし!
ボクたちにできることがあるなら、お手伝いしなきゃっ!

那古野城
そういうことだ。力を貸すよ……名古屋城。

那古野城
話したいことは山程あるけど……、
今はそんなことをしている場合じゃないようだからね。

名古屋城
は、はいっ! ありがとうございます……!
それでは演舞の用意を――!

後半

千狐
地気の乱れは鎮められました!
ありがとうございます……那古野城さん、金鯱城さん! 

金鯱城
あははっ、やっぱり! 思った通りだ~♪

金鯱城
直接手合わせして、改めて分かったよ!
どっちもボクの知ってるお姉ちゃんだ!

名古屋城
金鯱……。

金鯱城
最初はびっくりしちゃったけど……悪いことじゃないよね、これって!
だって、二人とも大好きなお姉ちゃんなんだもん♪

那古野城
ふふ……真理だね。

那古野城
戸惑いはあるけど、憂う理由は何もない。
むしろ……こうした形で邂逅を果たしたことには、
何か意味があるんじゃないかな。

名古屋城
意味……ですか。

那古野城
ああ……だから、きっと悪いことにはならないさ。

那古野城
たとえば――妹のお守りをするのが楽になったり、とかね。

名古屋城
…………!

那古野城
わたしは金鯱城と共にここに残り、
鎮めた地気を見守ることにしよう。
だからキミは、次の地へ向かうといい。

名古屋城
私たちの話はその後……ですね。

那古野城
……ああ。この子と二人で、キミの帰りを待ってるよ。

金鯱城
ボクも待ってる!
早く帰ってきてね、お姉ちゃん♪

奥羽にて赤瓦を纏う -伍-

口をへの字に曲げて、そっぽを向く黒川城。
そんな彼女と心を通わせるべく苦心する鶴ヶ城と
二本松城。二人の思いは成就するのか……?

前半

黒川城
…………。(むすー)

鶴ヶ城
ねぇ……お願いだから、
あたしの話……聞いてくれないかな?
ちょっとでいいからさ。

黒川城
…………。(ぷいっ)

二本松城
今は喧嘩してる場合じゃないんだってば、黒川城ちゃん。
仲良くしようよ……ね?

黒川城
いーえ、結構です!
私のことは放っておいてください!

黒川城
ここまでのお話で……此地の異変が、
私たちを引き合わせたことは理解しました。
そして貴方……鶴ヶ城さんが、私と起源を同じくする城娘であることも。

鶴ヶ城
……だったら!

黒川城
でも……鶴ヶ城さん。貴方は蒲生氏の御城でしょう?
あの豊臣秀吉の家臣である……蒲生氏の!

黒川城
私、黒川城は蘆名氏の御城……。
貴方と仲良くする理由なんて、これっぽっちもないんです!

鶴ヶ城
…………はぁ。

鶴ヶ城
まったく……変なところで若松ちゃんと似てるんだから。
真面目じゃなくて意地っ張りじゃない、これじゃ……。

黒川城
なんですって!? 聞こえましたよ!

鶴ヶ城
まぁまぁ……。
とりあえず、お茶でも飲んで落ち着きましょ。
話して分かることもあるはずだし……。

黒川城
結構です! そんなもの――

黒川城
(――っ、この香り……!)

黒川城
(このお茶……どこのものなのかな。
 ポメロイさんに贈ったら、喜んでくれるかも――)

黒川城
――はっ!?

黒川城
あ、危ない危ない。
一瞬、心がグラついてしまいました……。

黒川城
まったく、油断ならない……。
やりますね、鶴ヶ城さん……!

鶴ヶ城
…………こ、この子。

鶴ヶ城
思ってたよりも、ちょろい……!

黒川城
――ちょろいっ!?
今、ちょろいって言いましたね貴方っ!

二本松城
つ、鶴ヶ城様!
その言葉は心の内に留めておかないと!

鶴ヶ城
ご、ごめん……! びっくりしちゃって、つい。
あまりにもちょろかったから……!

黒川城
ま……また言いましたね、ちょろいって!

――――

殿
…………。

千狐
…………。

やくも
なんか、すっごい言い争っとるんやけど……。

柳川城
ですね……。

会津若松城
黒川城……。
地気の乱れの影響が……ここにも生じていたのですね。

会津若松城
……とりあえず、協力をお願いしてみましょう。

会津若松城
先の話を聞く限り、私にも敵意を向けるでしょうが……、
此地の乱れを鎮めるため、
と伝えれば、考えてはくれると思います……。

殿
…………!

後半

鶴ヶ城
……ふぅ。ひとまず、なんとかなった……みたいだね?

黒川城
…………。

会津若松城
黒川城……。

黒川城
……行ってください。

会津若松城
…………!

黒川城
貴方にも、鶴ヶ城さんにも……言いたいことは色々あります。

黒川城
でも……私と貴方は城娘です。背負う歴史に違いはあっても……。
此地や、ここに住まう民のために尽力したい。
その思いに違いは無いはずですよね。

黒川城
だから……先に行ってください。
乱れを鎮めるために……。

二本松城
あたしからもお願いします!
此地は任せて、会津若松城様は次に行ってください!

鶴ヶ城
黒川城ちゃんのことも安心して!
ちっちゃい若松ちゃんだと思えば、可愛いもんだよ!

鶴ヶ城
ちょろ――くはないかもしれないけど、
話せば分かってくれると思う!

黒川城
貴方……またちょろいって言いましたね……!

鶴ヶ城
い、言ってない! 言ってないよ!
ギリギリで踏みとどまったもん!

やくも
…………。

やくも
また言い争いが始まっちゃっただに……。

殿
…………。

千狐
そ、そうですね……今のうちに出立いたしましょう……!

終幕[]

――東海地方、某所。

各地の乱れを鎮めた一行は
祝杯をあげるべく……大宰府との合流を果たしていた――

大宰府
…………。(ごくり)

大宰府
……では。

大宰府
……ずずっ。

大宰府
ずる、ずるる……ずるるるるる……。

大宰府
……ちゅるん。

引田城
いかがです、大宰府さん?
私お手製の讃岐うどんのお味は……?

大宰府
うむ、絶品じゃ!

大宰府
まさか、これほどの褒美が待っておったとは……。
乱れを鎮めるために奔走した甲斐があったというものじゃの♪

引田城
ふふ、喜んでもらえて嬉しいです!
お代わりもご用意しますので、遠慮なく仰ってくださいね♪

大宰府
すまんのう……引田城。
そちも疲れているだろうに、こんなもてなしまで……。

引田城
いえいえ、うどん作りは私にとって呼吸のようなものですから♪

引田城
それに私……此度の事態を通して、多くの学びを得ることができました。
ですから、大宰府さんにはお礼をしたいと思っていたんですよ。

大宰府
む……そうか、それは良かった。
つまり、そちと妾はうぃんうぃんの関係だったというわけじゃな♪

[絢爛]引田城
うぃ、うぃんうぃ……?

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
大宰府さん……改めて、
私たちからもお礼を言わせてください。

柳川城
事態の収束に向けて迅速に対処できたのも、
大宰府さんが東海地方へと、先んじて赴いていたお陰です。

千狐
結果……此度もこうして地気の乱れを鎮め、
難を乗り切ることができました!

柳川城
いつものことながら、
大宰府さんのご尽力には、頭が上がりません。
本当に……ありがとうございます。

殿
…………!

やくも
大宰府は観光の最中だったのに、災難だったがや……。

千狐
頂いたお手紙から、無念さがひしひしと伝わってきたの……。

大宰府
む、いや……手紙の件は謝らせてほしい。
愚痴をこぼすような真似をしてしまって、すまなかった。

大宰府
観光への期待が膨らんでいただけに、凹んでしまっての……。

大宰府
思えば……問題が生じる度に骨を折っておるのは、
そちらや城娘たちも同じこと。

大宰府
そんな中で、ぴえんだのメンブレだのと、
妾だけが泣き言を吐くわけにはいかん。

殿
…………。

殿
…………?

大宰府
うむ……そうじゃな。とはいえ、
妾が無理を押して働いていたことも事実……。
今後は妾のズッ友たちにも、より一層働いてもらわねばならんじゃろう。

大宰府
地気の乱れが再発する懸念は未だ拭えんし……、
調査が長びくことを予期して動くべきじゃな。

大宰府
加えて、千代城や那古野城の許で生じた……、
ひと繋がりの過去と未来にあたる城娘との邂逅。

大宰府
地気の乱れが引き起こす事態の幅は、未だに計り知れん……。

大宰府
乱れの原因は見当もつかぬが、
次に調べるとするなら……さて、何処へ向かおうか……。

千狐
異変を感じた際には、遠慮なく声を掛けてくださいね。
此度のように、すぐさま駆けつけますから……!

大宰府
うむ……そちらの協力はやはり不可欠じゃ。
その言葉に甘えさせてもらうことになるじゃろう。

大宰府
今後も苦労は続くじゃろうが……、
支え合いながら乗り越えていこう。シクヨロじゃ、殿。

殿
…………!



特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

[裏]真田丸

裏]真田丸(チャリン……チャリン……チャリン……)……貴殿か。今日は、話をしたい気分じゃない。足を運んでくれたのに、すまない。一文……二文……三文……四文……五文……六文……銭を数えていなければ、一瞬...

[裏]淀城

]淀城あ~……。あ゛ぁ~……きもちわる。夢見は悪いし、頭はズキズキ痛むし……。ほんっとに最悪な日よ、今日は。誰でも良いから……。どつき回して、ぐちゃぐちゃにしたい気分。…………。……で、なに?そこに突...

[裏]桜尾城

]桜尾城殿……どうかしましたか?……ふふ、今回は間違えませんでしたよ。あなたの安らぐ顔もまた、私の喜びなのですから。私は今……海を見ていました。このどこまでも凪ゆく、厳島の海を……。厳島周辺は神域とい...

[裏]川越城

]川越城お客様かしら……どうぞ。貴方は、確か……ちょっと待ってね……。うん……たぶん、『殿』よね……?やっぱり……人違いでなくて、良かったわ。ふふ。今丁度、過去の私が遺した日記を読み返していたのよ……...

[裏]小田原城

]小田原城…………。……あら、殿。ようこそいらっしゃいました。ああ……いえ、ご心配なく。少し考え事をしていただけですから。今、ちょうど……。昔の出来事に思いを馳せていました。今の私を形作る、原点とも呼...

[裏]小牧山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 所持特技1.4 [改壱]所持特技1.5 計略1.6 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3...

[裏]室町第

裏]室町第殿……ふふふ。どうせまた来るって、そんな気はしていたわ。私がどんなに忠告をしても、貴方は自分の信念を曲げない。本当に……つくづく、強い人ね、殿は。私のせいで、どれほど悪いことが起こっても殿は...

[裏]大宰府

]大宰府おお、殿か。よく来てくれたな。今な、手紙を整理しておったのじゃ。最近は毎日、誰かしらから届くのでな……。この手紙は……、『大宰府ちゃん親衛隊』を自称する者たちからじゃな。大野城、鞠智城、基肄城...

[裏]坂本城

]坂本城大殿様……また来たのね。ふふ……別に、追い返したりしないわよ。というより……私も今ね、大殿様と話せたら、って考えてたところだったの。だから……少しの間、私の話し相手になってくれるかしら?……ふ...

[裏]佐和山城

]佐和山城……また来たのね、あなた。足を運んでくれたところ悪いけど、面白いものは何も見れないわよ?相変わらず、大坂城様のらいぶに向けて、準備をしているだけだもの。……ん、なに?『なぜ、そこまで大坂城様...

[裏]伊勢長島城

]伊勢長島城も~、なんなのあいつら!信じらんない!寄ってたかってライブの邪魔をして!いったいどこから情報が漏れたの?もしかして、殿じゃないでしょうね……!?……そんなわけないか。あたしは、あんたにな~...

[花嫁衣装]鹿児島城

目次1 性能1.1 特技1.2 計略1.3 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< ロケト城 - [花嫁衣装]シャンティイ城 >[花嫁衣...

[花嫁衣装]鮫ヶ尾城

]鮫ヶ尾城はあ……春日山城サマの祝言、想像するだけでドキドキしてしまうっす!ね、ちびサマ~♪……ん?どうしたっすか、トノ?えっ、『主城のことより自分はどうなのか』っすか……?うぐ……これは痛いことを言...

[花嫁衣装]許昌城

]許昌城うーん……。ううーん……。……おや、殿か?すまない、考え事をしていて来訪に気づいていなかった。この間、殿と話してから、結婚に関して城娘達と話をしたのだ。繁栄という目的へ至る手段としての婚姻……...

[花嫁衣装]萩城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]チャンドラ・マハル - [花嫁衣装]新田...

[花嫁衣装]秋田城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< 延岡城 - [花嫁衣装]ロンドン塔 >[花嫁衣装]秋...

[花嫁衣装]春日山城

]春日山城うーん……。……うーん? ……うん?……殿?すみません! お越しいただいていたのに、今の今まで気づかずにいて!実は先日、坂戸城と謙信公の昔話をしてたのですが、その際、跡継ぎの話題が出たのです...

[花嫁衣装]新田金山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]萩城 - [花嫁衣装]アイリーン・ドナン...