ストーリーテキスト/第五回名城番付

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目次

第五回名城番付[]

名城番付 西軍初級の段

一人、文の山の前で厳しい表情を浮かべる殿。
返事と対応を如何にこなすか困り果てていた時、
見慣れぬ城娘が所領を訪れた……。

前半
――所領。

殿
…………。

やくも
……いつになく殿さんが難しい顔してるがや。

千狐
しかも目の前の……紙の束の山?
殿、これは?

殿
…………。

柳川城
え? 各々差出人が異なるけれど内容は全て一緒の文?
……というと?

殿
…………。

千狐
し、城娘の皆さまが一斉に『自分の地元に遊びに来てくれ』と言い出した?

やくも
なんちゅー状況だに……。

柳川城
あぁ、各地の城娘の方々と交流を持った際、
確かに『次は遊びに来て』と、皆様口々に仰られておりましたね……。

千狐
とはいえ我々も忙しい身……。
なかなか全ては回れませんわ……。

やくも
つまり、返事を後伸ばしにしてたら積もり積もって……ってことかや。

殿
…………。

柳川城
確かに、今の有様ではどなたか一人を選んで遊びに行ったとしても、
選ばれなかった方との後々の仲に響きかねませんね……。

やくも
しかも移動は千狐の転移術でいいとしても……、
向かう先が多すぎるけん、時間にも限度があるがや……。

千狐
というか、さすがの千狐でも短時間の内に転移を頻繁に繰り返しすぎれば
あっという間に力が枯渇して、しばらく動けなくなりますわ……。

柳川城
困りましたね……お返事は手分けして出すとしても、
どうしたら丸く収まりそうでしょうか。

やくも
う~~~~~~~ん…………。

???
――ごめんください。突然の来訪失礼いたします。

殿
…………?

新発田城
お初にお目にかかります。
私、新発田城と申します城娘でして。

新発田城
突然のご訪問、さぞ驚かれたことと思いますが、
以後お見知り置きいただけましたら幸いにございます。

殿
…………。

柳川城
まぁ、ご丁寧に……。
こちらこそよろしくお願いいたします。

新発田城
主となられるお方に関しましては、
春日山城様より、事前に詳細伺っております。

新発田城
主の力になれることなら、全力を尽くして参る所存でございます。
どうぞ、何でもお申し付けくださいませ。

やくも
へー、春日山城のとこの城娘さんなんやね。

新発田城
えぇ。今度こそ、最後までご一緒したいと思っております……。

やくも
(……むむ? 何かある城娘さんなんかや?)

柳川城
いずれにせよ、力を貸していただける方が増えるのは、
とてもありがたいことですね、殿……。

殿
…………。

新発田城
……ところで、先程から気になっていたのですけれど、
主の目の前にある文の山はいったい?

殿
…………。

殿
…………。

殿
…………。

新発田城
なるほど……痺れを切らした大人数の城娘の方々から一斉に、
遊びに来てほしい、という文が来てしまったと……。

千狐
ええ、今どうしたらいいかとても困っておりまして……。

新発田城
うーん……。

新発田城
……そうだ。主たちの意向で決めてしまえば角が立つ、というのでしたら、
いっそのこと皆さんで決め合えば良いのではないでしょうか?

殿
…………?

新発田城
好きであればあるほど語りたいというのは、
地元愛もまた同じ。

新発田城
此度は存分に語っていただき、内容を城娘の皆様たちの間でも共有、
最も興味を惹かれた方のものに投票しあうのです。

柳川城
最終的に一番に選ばれた方の地元に向かうのであれば、
ある意味で皆で決めたようなもの、角も立ちにくい、ということでしょうか?

やくも
でも、選ばれなかった人が可哀想だに……。

新発田城
ですから、いっそ包み隠さず発端も含めて説明してしまいましょう。
考えた末の催事であると周知すれば、一応皆様も納得してはくれるかと思います。

新発田城
もしかしたら、もっと良い考えを提供してくださる方もいるかもしれません。
場合によっては次からはご提供いただいた案に従えばよいのではないでしょうか?

柳川城
実際にどうしたら良いか困っているわけですしね……。

殿
…………!

千狐
……そうですね、とにかく実際にやってみましょうか。

やくも
美味しい食べ物の話もえっぱい聞けそうやし、今から楽しみがや!

柳川城
……ですが、全員分のお話を聞いたり、
周知をさせるとなると結構な手間では?

新発田城
……それは仕方ありません。
そもそも皆さまへのご対応が上手くいかなかった結果が今の状況ですし。

柳川城
まぁ、確かに……。

新発田城
もちろん、まとめ役や各所への手配は提案者である私が請け負いましょう。

新発田城
実は私、看板を作るのが得意でして。
ですから何かお役に立てるかと存じます。

殿
…………!

新発田城
えぇ、精一杯頑張らせていただく所存にございます!

千狐
では、今より城娘の皆さまの目録を作りましょう。
それを許に、文や看板などで周知いたしましょうか。

柳川城
私も手伝います。
人手は多い方が良いでしょう。

やくも
さぁ、忙しくなるだに!

――こうして、投票催事の幕が上がった。

――十日後。

――周防国。

百地丹波城
さて……ずいぶんと多くの国を見てきましたけれど、
ひとまず、伊賀国と特徴を食い合いそうな国はなさそうですわね。

百地丹波城
これなら心置きなく、伊賀国の売りを最大限に主張しても大丈夫そうですわ。

百地丹波城
……あら?

岩国城
お弁当ー! お弁当ー!
周防国の名産が詰まった、これぞ周防国弁当の決定版ですよー!

岩国城
あっ! そこ行くお方!
いかがですかー?

杵築城
えっ? あれ? 岩国城さん……?

岩国城
杵築城ちゃん!?
道理で美味しそうなサンドイッチの匂いがすると思った!

杵築城
あ、相変わらずですね……。

百地丹波城
(まぁ、お二人も城娘がこの場にいらっしゃるなんて……)

百地丹波城
(うふふ、丁度良いですわ。
 次の投票でお二人が何を主張するつもりか、こっそり影から探らせていただきましょう)

岩国城
久しぶりだねー、どうしてここに?

杵築城
私、いかに地元の魅力をお伝えするかと
考え込んでいたんですが……。

杵築城
飫肥城ちゃんに、また一人で内にこもって、と怒られ、
どうせなら他の国を見て楽しみながら勉強しなさいと言われてしまいまして……。

岩国城
あぁ~、でも他のものを見るのは大事だよぉ。

岩国城
気分転換にもなるしねー。

岩国城
……でも杵築城ちゃん!
今回の投票、負けないんだからね!

杵築城
勿論、例え旧知の城娘が相手でも手は抜きませんよ。
望むところです!

岩国城
とまぁ、それはそれとしてお弁当食べてってよぉ。

杵築城
はぁ、どうしてまた?

岩国城
私、考えたんだ。
殿に地元の魅力を伝えるなら食しかない、って……!

岩国城
そう思って周防国の色んなお店で名産品を食べ比べて、
一番美味しかったのを集めてお弁当として作ってもらったんだけど……。

岩国城
果たして本当に一番美味しいのかな、実は何か見落としがあったりしないかな、って思って。
だから試食を色んな人にお願いしてるんだ……!

杵築城
なるほど……食にこだわった結果ということですね。

岩国城
ということで! どうぞ!!

杵築城
分かりました。
そういう経緯なら、いただきましょう。

岩国城
…………。(じー)

杵築城
もぐもぐ…………。

岩国城
…………。(じー)

杵築城
もぐもぐ、うん、美味しいです……。

岩国城
…………。(ぐぅ~)

杵築城
あの、そんなにじっと見つめられると食べづらいです……。

岩国城
ごめんね、なんか美味しそうにご飯食べてるところ見てたら、
凄くお腹が空いてきちゃって……。

杵築城
あ、でしたら代わりといっては何ですが、
私も今回試作の豊後サンドイッチをお弁当代わりに持ってきておりまして……。

杵築城
良かったら、交換ということにしましょうか。

岩国城
いいのぉ!?
わぁい! ありがと~!!

杵築城
ふふ、私もサンドイッチには自慢の特産品を挟んできましたよ。

岩国城
ぱく…………。

岩国城
…………。

岩国城
これは海の香り……! まろやかながらもこってりとした味わい、
パンが甘く柔らかく潮の味を包み込み、口の中で渾然一体となる……!

杵築城
あ、牡蠣の油漬けですね。
本当は取れたてを焼いて食べるのが美味しいんですが……、

杵築城
今回は日持ちさせるために、一度焼いてから油に漬けました。

岩国城
今度は……甘辛く煮つけた椎茸と、
混ぜられてるものの硬い歯ごたえが楽しい……!

杵築城
椎茸の甘辛煮と一緒にちりめんを混ぜ込んでみました。
ご飯のお供にもなりますが、パンと一緒に食べても美味しいでしょう?

岩国城
あぁ……甘く爽やかなみかんにほろ苦い抹茶の風味……!
幸せってこういう味なのかもしれない……!

杵築城
みかんの実を挟み、杵築茶を抹茶にしたものを振ってみました。
皮の砂糖漬けも混ぜ込んだおかげなのか、意外と合うんですよ。

百地丹波城
(うっ……)

百地丹波城
(人が美味しそうにご飯を食べている姿を見ていると、
 確かにお腹が空きますわ……)

岩国城
はぁ~……ご馳走様でした……。

杵築城
はい、お粗末様でした。

岩国城
凄いよ杵築城ちゃん……!
このサンドイッチ、絶対人気出るよ……!

杵築城
本当ですか?
ふふ、心強い太鼓判です。

杵築城
私も、先程いただいたお弁当、大変美味しくいただけましたよ。

岩国城
わぁ、本当!?

百地丹波城
(あぁ、仲良く食事をしている子たちを見ていると
 微笑ましくて癒されますね……)

百地丹波城
(縁のつながりを大事にすることにも結び付きますし、
 『食』を魅力の一つとしてあげてみるのもアリかもしれませんわね)

百地丹波城
(同じ釜の飯を食うという言葉もありますし……)

百地丹波城
(…………ん?)


ザッ!

兜軍団
ザザザッ!!

岩国城
えぇっ!? か、兜が攻め込んで来たぁ!?

杵築城
本当に、どこに行っても迷惑ですね!

杵築城
岩国城さん、迎え撃ちましょう!

岩国城
もちろん!

岩国城
……あっ、でも、私、変身が七分しかもたないんだよ。

杵築城
そ、そういえばそうでしたね……!
私一人であの大軍を請け負うとなると……。

兜軍団
焼尽ニ帰シメヨ……。
灰燼ニ帰シメヨ……。
焦土ニ帰シメヨ……。

杵築城
……いえ、泣き言を言っている場合ではありませんね。
わかりました! いざとなったら私が一人でなんとかしてみせます!

岩国城
うぅ、き、杵築城ちゃあん……。

百地丹波城
――そこまで、ですわ。

岩国城
えっ?

杵築城
誰ですか!

百地丹波城
義を見てせざるは勇無きなり……。
いくら城娘とはいえ、一人で兜の大軍に立ち向かうのは無謀。

百地丹波城
伊賀国が城娘の百地丹波城、助太刀いたしますわ!

杵築城
城娘の方でしたか……!
ありがとうございます、助かります!

百地丹波城
あ、それと岩国城さん?

岩国城
な、何……?

百地丹波城
事前に砕いて参りました。
口に含み、戻しながらお食べなさい。

岩国城
あ、ありがとう……。(ぱく)

岩国城
……んん! 硬い!
でもほんのり甘い風味だぁ!

岩国城
これだったら、ゆっくり食べながら戦えるよぉ~!

杵築城
喉に詰まらせないように気を付けてくださいね……。

岩国城
大丈夫大丈夫!
三原城ちゃんに厳しく言われたから、ちゃんと水筒も持ってきてるし!

岩国城
よーし! 行っくぞー!!

後半
百地丹波城

ふぅ、片付いたようですわね。

岩国城
もごもごもごー、もっごごー!

杵築城
……何て?

百地丹波城
いえいえ、礼には及びませんわ。

杵築城
何言ってるのかわかったんですか……?

百地丹波城
なんとなくですけれどね。

岩国城
ごっくん……ふあぁー、美味しかったぁ……。
振られてた青のりも香ばしくて、お茶うけに最適だね!

岩国城
おかげで何とか戦えたよぉ、ありがと~。
あれ、何て食べ物だったの?

百地丹波城
伊賀忍者御用達の食べ物、かたやきですわ。
硬いので木づちや刀の柄などで割って口に含み、ゆっくりと柔らかくしてから食べるのです。

杵築城
伊賀忍者……ということは、
百地丹波城さんもそうなのですね。

杵築城
道理でいきなり現れたと思いました……。

百地丹波城
うふふ、御免あそばせ。
驚かしてしまったかしら。

岩国城
百地丹波城さんは何でここに来たの?

岩国城
さては、忍者らしく偵察に……とか?

百地丹波城
あら、ご名答ですわ。

百地丹波城
やはり忍者と言ったら、ですものね?

杵築城
そうか、百地丹波城さんも城娘である以上、
今回の投票催事は……。

百地丹波城
えぇ。存分にやらせていただくつもりですわ。

岩国城
よ~し、だったら、公平を期すためにも
杵築城ちゃんと、百地丹波城さんの地元にもこれから行こう。決めた。

杵築城
え? い、今から?

百地丹波城
思い立ったが吉日というものですわね。
私は歓迎いたしますわよ?

岩国城
わ~い!

岩国城
…………。(じー)

杵築城
え? ええ、ダメとは言いませんが……。

岩国城
わ~い!!
これでもっと美味しいものがたくさん食べられるね!

杵築城
……そんな気はしてました。

百地丹波城
うふふ♪

――はしゃぐ岩国城と、微笑まし気に見守る百地丹波城。

杵築城は少々の波乱を予感しつつも、
自然と肩の力が抜けていることに気付き、笑うのだった。

名城番付 東軍初級の段

催事の司会を務めてくれた新発田城の話を聞く
殿一行。話を聞いていたやくもは、とある言葉から
ある城娘の顔をぼんやり思い浮かべ……。

前半
新発田城

ふぅ、後は返事を待つばかりとなりましたね。

千狐
えぇ。

千狐
本当に、助かりましたわ。
ありがとうございます。

新発田城
いえいえ。
お役に立てたなら何よりです。

やくも
……あ、新発田城は東の組なんやね。

やくも
良かったら新発田城の話が聞きたいだにぃ~。

新発田城
え? 私は構いませんが、
さすがにそれはずるになってしまうのではないでしょうか……?

新発田城
皆様は文で主張なさっておられるのに、
私だけ直接、しかも新参者の身でありながら、などというのは……。

殿
…………。

柳川城
えぇ、私も殿と同じ意見です。
新発田城さんは催事のまとめ役をなさっておられるのですから、構わないと思います。

柳川城
どうしても文にまとめる時間もないでしょうし、
今ここでお話しして済ませてしまっても良いかと。

新発田城
そうですか……。

新発田城
でしたら、お言葉に甘えさせていただきますね。

殿
…………。

新発田城
私は越後国は蒲原郡にある御城です。
蒲原は、昔は『神原』とも記載されていたそうですよ。

新発田城
ご存知、越後は米どころでもありますが、
お米やお酒以外にも、地元では最近流行り始めている水飴なんかがあります。

新発田城
自然にも恵まれていて、春は大峰山に咲き誇る山桜、夏は藤塚浜で遊べますし、
燃えるように色づく紅葉や、一面雪に覆われた銀世界と、四季折々の風景を楽しめますよ。

殿
…………!

やくも
おぉ~、なかなかのんびりできそうで良さそうなところがやぁ。

やくも
特に水飴について詳しく聞きたい……もとい、味わいたいだに。

千狐
絶対反応すると思ったわ……。

新発田城
残念ながら水飴はまだ流通しているわけではなく、
現在開発している……と馴染みのお店の方が仰ってました。

新発田城
実は試作品をいくつか食べさせてもらっただけなんです。
でも、もしかしたら近い将来気軽に食べられるかもしれませんね。

やくも
それはそれで将来の楽しみができたからいい話がや。

新発田城
あと、私園芸が趣味でして。
御城の周りによく色とりどりのアヤメを植えているんです。

新発田城
今は品種改良に夢中なんですが……、
いずれ虹色の花を咲かせてみせるのが夢ですね。

柳川城
まぁ。咲いた時はぜひ見せてください。

新発田城
えぇ、もちろんです。

やくも
……あれ? そういえば最近知り合った城娘さんの中に
なんかアヤメだか何だかに関係する城娘さんがいた気がするだに。

やくも
確か……――。

――加賀国。

菖蒲城
……は、はっくしゅん!

佐久間金沢城
あら、風邪? 大丈夫?

菖蒲城
あう、だ、大丈夫です……。
ちょっと鼻がむずむずしただけで……。

佐久間金沢城
さっきの手合わせで汗かいたし、
一応着替えたとはいえ冷えちゃったかな?

菖蒲城
仮に風邪の引き始めだったとしても、
後で菖蒲湯に入れば元気復活しますので、大丈夫ですよ!

佐久間金沢城
そう? ならいっか!

菖蒲城
先程もちもちした美味しいちまきもいただきましたし、
栄養だってばっちりですよ! 風邪を引く道理はありません!

佐久間金沢城
甘いものは偉大だもんねー!

菖蒲城
……けれど、柏餅は全国に知れ渡るほど偉大じゃなかったのですね。

佐久間金沢城
ああ、端午の節句に食べるのって、
菖蒲城ちゃんのとこだと柏餅なの、さっき初めて知ったわ。

菖蒲城
どうやら、柏餅の美味しさを知らしめなければならないようです……。

佐久間金沢城
おおう、菖蒲城ちゃんが燃えている……。

菖蒲城
お師匠様にも、此度の催事を機として全国を見てきなさいと言われたのですが、
遥々加賀国まで来て良かったです……。

菖蒲城
お招きいただき、本当にありがとうございます。
とても勉強になりました……!

佐久間金沢城
(手合わせしてた時くらい本気の目だわ……。
 柏餅って魔性の食べ物なのかな……?)

佐久間金沢城
い、いやいや。こちらこそ来てくれてありがとうね。

佐久間金沢城
今は尾山御坊ちゃんはライブの練習してるし、
代わりに投票催事の残りの準備してたんだけど終わっちゃったしねぇ。

菖蒲城
えぇっ、もう準備し終わったんですね……早い……。

佐久間金沢城
ふふっ、ちゃちゃっとノリで用意したからね♪

佐久間金沢城
暇だから誰か手合わせしたり遊んでくれる人いないかなぁ、って
探してたら、新発田城ちゃんが菖蒲城ちゃんのこと教えてくれてねー。

佐久間金沢城
まさか二人が友達同士だったなんてね。知らなかったわ。

菖蒲城
ふふふ、実は私と新発田城ちゃん。
菖蒲合わせならぬ、名が合った仲なのです。

菖蒲城
アヤメと菖蒲は似ているけれど別物。
同じように、私たちも似ているけれど、別の城娘。

菖蒲城
何となく気が合って、
長い付き合いをしているのです。

佐久間金沢城
あー、確かに二人とも普段大人しいのに戦う時は勇ましいし、
基本的にはしっかり者だし、分かる気がするー!

菖蒲城
そんなに褒められると照れちゃいます……。
私は新発田城ちゃんみたいにしっかりはしてませんし……。

佐久間金沢城
いやいや、菖蒲城ちゃんも一人で武蔵から加賀まで来たことといい、
毎日きちんと修行を欠かさないようにしてることといい、凄くしっかりしてるよ?

菖蒲城
そうですか?
……えへへ。

佐久間金沢城
よぉし、わざわざ加賀国まで来てくれたんだし、
今日は何か加賀の美味しいものを奢ってあげちゃおうかな!

佐久間金沢城
何か食べたいものある? 海産物がいいとか、
がっつりお肉がいいとか、甘いモノがいいとか……。

菖蒲城
はわ……迷います……。

???
――もし、そこのいかにも地元愛に溢れてるんですよって主張が激しい貴方。

佐久間金沢城
へっ? 私?

長谷堂城
ええ、貴方です貴方。

長谷堂城
私、敬愛する主のために鮭の寒風干しを買いに来たんですが、
どこのお店で売ってるのが一番美味しいのか教えてください。

佐久間金沢城
おぉ、鮭の寒風干しに目をつけるとはなかなかお目が高いね!

佐久間金沢城
いよっ、美人さん!
このサクカナちゃんがご案内してさしあげましょ~!

長谷堂城
距離の詰め方がチャラい、やり直せ。

佐久間金沢城
むむ、なかなか注文の厳しい娘さんだね……。

佐久間金沢城
それに、正直なこと言っちゃうけど……。
鮭の寒風干しは加賀よりも越後とかの方が有名だったりするよ?

長谷堂城
確かに……!

長谷堂城
……って、私が言ってそちらに買いにいったらどうするつもりだったんですか、貴方。

佐久間金沢城
ん? まー、仕方ないかな?
やっぱね、餅は餅屋って言うし。

佐久間金沢城
それに、鮭以外にも加賀には魅力がたくさんあるからね!
問題ない、問題ない!

長谷堂城
……何でしょうね。
貴方見てるとどこぞの誰かを思い出します。

佐久間金沢城
え? そうなの?
お姉さんの恋人とか?

長谷堂城
やかましい、あがすけ。

菖蒲城
(あれ? 今の言葉、大宝寺城ちゃんが前に
 法螺貝を吹きすぎて叱られた時に言われたって教えてくれたような……?)

菖蒲城
おねーさん、もしかして出羽国の出身ですか?

長谷堂城
……ええ、そうですよ。

菖蒲城
わぁ、やっぱり!
友達がこの前少し地元の言葉を教えてくれたので、分かったんですよ!

長谷堂城
そうなんですねぇ……。

長谷堂城
(その友達……何でよりによってそんな言葉を?)

佐久間金沢城
ねぇねぇ、あがすけ、ってどういう意味?

菖蒲城
え? えっと……。

長谷堂城
お調子者、目立ちたがり、格好つけ、不良……そんなところですかね。

佐久間金沢城
えぇぇぇっ!? ふ、普通に悪口だった! ひどい!

長谷堂城
まぁまぁ、その程度で済んで良かったじゃないですか。

佐久間金沢城
言った当の本人でしょ!?
……って待って、もっとひどいこと言うつもりがあったってこと!?

長谷堂城
さぁ?

長谷堂城
…………ん?


ザッ!

兜軍団
ザザザッ!!

菖蒲城
兜だ……!
おねーさん、逃げてください!

佐久間金沢城
ここは戦場になるわ!
さっきの言い合いは水に流しといてあげるから! さぁ、早く!

長谷堂城
……逃げるって言っても、
貴方たち二人だけで戦うつもりなんですか?

佐久間金沢城
人手のことなら心配しないで……、
私には、鍛え上げて来た技がある!

菖蒲城
わ、わぁ!?

佐久間金沢城
少しは維持できる時間も長くなったし、
分身体の強さも上がったわよ!

長谷堂城
(……あれ、放っておいたら短時間で勝手にぶっ倒れそうなくらい霊力の燃費悪い技ですねぇ)

長谷堂城
本気で逃げようかとも思ったけど、仕方ないか。

菖蒲城
私も、後に続きます!

長谷堂城
変身、っと。

長谷堂城
……後ろからこっそり援護してあげますかね。

佐久間金沢城
行くわよ!
鬼玄蕃の槍、その身に幾度も刻め!

後半
佐久間金沢城

ぜー……ぜー…………。

菖蒲城
だ、大丈夫ですか?

長谷堂城
あれだけ啖呵切っておいてそのザマですか。
なっさけねーなー。

佐久間金沢城
で、でも……この前よりもずっと長くもったし……。

佐久間金沢城
…………。

佐久間金沢城
って、わぁ!? 姿が変わってる!?
あ、貴女まさか城娘だったの!?

長谷堂城
あ、そういう今更感溢れる台詞結構です。

菖蒲城
なるほど、おねーさんのおかげでサクカナさんは
いつもより長く技が使えたんですね!

菖蒲城
ありがとうございます!

長谷堂城
……あー、いーえ。

長谷堂城
ちなみに私、長谷堂城という城娘です。
以後よしなに。

菖蒲城
はい、よろしくお願いいたします。
私は菖蒲城です!

佐久間金沢城
ん? 長谷堂城……って。

佐久間金沢城
貴方、もしかして『はせっち』?

長谷堂城
何で知ってる。

佐久間金沢城
え、墨俣城ちゃんから聞いたことがあるから……。
口は悪いけどなんとなくほっとけない大好きな友達なんだよって。

長谷堂城
チッ、あの偽乳娘。今度会ったら詰め物引きちぎってやろうか。
(そうだったんですね。でしたらそう呼んでいただいて構いませんよ)

佐久間金沢城
うわぁ、本音が漏れてる。

長谷堂城
……ところでまさか貴方、豊臣の城娘ですか?

佐久間金沢城
え、私は佐久間金沢城だけど……。
鬼玄蕃って呼ばれたこともある、佐久間盛政の城娘よ。

佐久間金沢城
ちなみに、サクカナって呼んでね!

長谷堂城
うわぁ。

佐久間金沢城
何その顔ー!

長谷堂城
いや、覚えてもらおうとする必死さに
若干のドン引……もとい、敬意を感じまして。

佐久間金沢城
途中まで明らかに違うこと言おうとしてたよね!?

長谷堂城
気のせいですよ気のせい。
最近耳掃除してないからでは?

長谷堂城
(しかし、柴田勝家に仕えていた将の城娘ですか。
 ある意味お仲間と言えなくはない……んですかね)

長谷堂城
(でも一時期豊臣に仕えてたんですし、やっぱりなしですね、なし)

菖蒲城
……あの、長谷堂城さんも、もしかして豊臣の城娘さんたちが苦手なんですか?

長谷堂城
苦手以前ですね。
此世から抹消してやりたいくらいです。

佐久間金沢城
ま、抹消……。

菖蒲城
私……実は豊臣の城娘さんたちにはちょっと気後れしちゃってて、
あまり上手く接することができなかったりするんです……。

菖蒲城
かつては仇敵とはいえ今は仲間。
忍城様にもそう言われましたし、なんとか慣れるようにしたいんですが……。

長谷堂城
(あー……忍城って確か……北条系の城娘?)

菖蒲城
だから……ちょっと似てるお仲間さんがいるって分かって、ほっとしました。

長谷堂城
……口は悪いけど?

佐久間金沢城
自分で言っちゃうんだ……。

菖蒲城
あの……もしご迷惑でなかったら、
長谷堂城さんの地元にも行かせていただいていいですか?

菖蒲城
できたら、これを機に仲良くさせてほしいなって思いまして……。

長谷堂城
…………。

長谷堂城
仲良くなれるのかは知りませんが、
来る分にはご自由にどうぞ。

長谷堂城
阻む権限は私にはありませんしね。

菖蒲城
わぁ、ありがとうございます!

佐久間金沢城
あっ! アタシもアタシも!
一緒にいきたーい!

長谷堂城
道中と地元で無駄に暴れないんだったらな。

佐久間金沢城
暴れないったら!
というか、アタシを何だと思ってるの!?

長谷堂城
え? ところ構わず分身しまくって勝手に毎回疲れ切ってる
自分の力の限界も分かってない青臭い脳筋娘さんなんだろうなと。

佐久間金沢城
ひどい言われようだけど反論できないのが悔しい……。

菖蒲城
もし、時間があったらお二人にもぜひ私の地元に来てほしいです。
お手製柏餅をご馳走しますから……。

佐久間金沢城
本当!? わあ、行く行く!

長谷堂城
……今すぐに、というわけにはいきませんが、
山形城様へのお歳暮の準備が終わったら構いませんよ。

菖蒲城
えぇ、お待ちしてますね!

長谷堂城
(……しかし、二人とも、投票催事のことはすっかりと忘れてそうですね)

長谷堂城
(まぁ、私も催事にそこまで興味はないですし、
 二人が頭抱えて後悔する姿を見る羽目にならなきゃいいです)

長谷堂城
(……なーむー)

名城番付 海外初級の段

日程進みゆく投票催事の最中、新発田城は物珍しげに
異国から届いた文を眺めていた。殿一行は要望に応え
海の向こうとの縁ができた時の話を語り始めた……。

前半
新発田城

……それにしても、異国の文は多種多様な見た目ですねぇ。

新発田城
文自体の色や形から、使用されている言語まで……。

柳川城
そうですね……。
改めて見ると、本当に多くの国の城娘の方々と交流を持ったのだな、と思います。

千狐
……ですが、その分異国でも兜の脅威が広がっているということでもありますし、
素直に喜べることばかりではないのも事実ですわ。

殿
…………。

やくも
せやね。殿さんの言う通り、味方が増えたってことでもあるだに。

やくも
千狐、そげに心配せんでも大丈夫がや~。

千狐
でも、今後何があるか分からないのだし心構えは必要じゃないかしら……。

柳川城
えぇ……。千狐さんが仰るように、
何が起きてもいいように、心を準備しておくことは大事かと思います。

柳川城
けれど、物事の悲観的な側面ばかり見ていては気も滅入りましょう。
時折楽観視も混ぜていけば、きっと心も疲れませんよ。

新発田城
なるほど……メリハリが大事だということですか。

千狐
……そうですね。
仲間が増えたのは事実ですものね。

やくも
千狐はいっつも心配ばっかしてるだにぃ。
もっとうちみたいにゆる~っと力抜いてた方がいいがやぁ~。

千狐
……誰のせいで心配ばっかりしてると思ってるのかしら?

新発田城
……どうして主が皆との約束を今まで果たせていなかったのか、ようやくわかりました。
日の本だけでなく、外つ国まで飛び回っていれば、暇がないのも道理です。

新発田城
それでも、山ほどの文が届くくらい慕われている……。
私も、人望の厚い主にお仕えできて幸せですよ。

殿
…………。

新発田城
でも、いったいどうやって異国の城娘の方々との縁ができたのでしょう?

柳川城
ふふ、いずれも長いお話となるのですが……――。

――異国。

邯鄲
すぅ……すぅ…………。

スピシュ城
すや……すや…………。

オレンジ城
…………。

スピシュ城
んぅ…………。

スピシュ城
…………。

スピシュ城
はっ!?

オレンジ城
ハッハッハ! やっと目覚めたか。

スピシュ城
はわわっ、わ、わたし……!?

オレンジ城
大丈夫か? 行き倒れではなさそうだが……。

スピシュ城
ち、違います!

スピシュ城
……あ、でもこの人はそうなのかも?

スピシュ城
と、とにかく……おーい! 起きてくださーい!(ぺちぺち)

邯鄲
んん~…………。

邯鄲
……ほよ?

オレンジ城
起きたな、ねぼすけめ。

邯鄲
…………むむ?

邯鄲
おかしいですねぇ。
私、小船の上で寝てたはずが、なぜ森に?

スピシュ城
あ……それには理由がありまして……。

スピシュ城
私、実はペンフレンドに会いに来たんですが、
船に乗ってこの島に来る途中で、浜辺から離れ行く小船を見つけまして……。

スピシュ城
よく見たら貴方が小船の上で気持ちよさそうに寝てたので、
さては流されかけてるのかと思って、慌てて小船を岸に戻したのです。

オレンジ城
……なら浜辺で寝てるのが筋なんじゃないのか?

スピシュ城
いえ、何度もぺちぺちして起こそうとしたのですが、
一向に起きなかったので、てっきり御病気かと焦ってしまい……。

スピシュ城
無我夢中で担いで人気のあるところに連れて行こうとして、
森の途中で貴方が寝てるだけだと気がついたんです。

スピシュ城
そしたら、『あぁ、良かった』って思えて、
つい気が抜けてうとうとと……。

オレンジ城
あぁ、今日はいい天気だものな……。
風も爽やかだし、昼寝日和ではあるだろう。

邯鄲
……ほー、なるほど。
とりあえず私が何で小船から森に移動してたのかはわかりました。

邯鄲
ひとまずは助けられたみたいですし、感謝しますです。
しぇいしぇ~い♪

スピシュ城
プロスィーム♪

邯鄲
……でもまだおかしいですねぇ。

邯鄲
近くの海に遊びに行ったら小船を見つけまして。
ゆらゆらしてて気持ちよさそうなので乗り込んで寝たはずですが……。

邯鄲
ここ、どうみても私の地元ではなさそうなのです。

スピシュ城
……ということは、私が見つけた時って。

オレンジ城
とっくに流された後。
更に言えば、もう一度流されようとしていたところ、だったわけだな。

邯鄲
……あいやぁ。

邯鄲
うぅ、また富山城ちゃんに呆れられちゃいますねぇ……。

スピシュ城
……ん? 富山城ってことは……城娘さんですか?

邯鄲
あ、そうですよぉ。
私、邯鄲って言います。

スピシュ城
私はスピシュ城ですー。

オレンジ城
おや? スピシュ城というと、もしかして娘が言ってた
『今日遊びに来るはずのお友達』とはキミか?

スピシュ城
はわっ!? お母さまでしたか!

オレンジ城
アタシはオレンジ城、安平古堡の母親だ。
うちの娘と仲良くしてくれて感謝するぞ。

スピシュ城
いえ、こちらこそ!

邯鄲
ほー、人は見た目によりませんねぇ……。

オレンジ城
ハッハッハ! よく言われるよ!
とても三児の母親には見えないとな!

邯鄲
おおう、娘って一人じゃなかったのですね……。

オレンジ城
最近は忙しくてあまり娘たちにも構ってやれないものでな。
良かったら二人とも娘たちの友達になってやってくれ。

スピシュ城
もちろんです! お友達が増えるのは大歓迎ですよぉ!

邯鄲
ええ、ぜひ友達になって昼寝の良さをじっくり……。

邯鄲
……ん? この気配は――。


ザッ!

兜軍団
ザザザッ!!

スピシュ城
あぁっ! 兜です!

邯鄲
まったく、どこにでも出てくる奴らですねぇ。

オレンジ城
ふん、性懲りもなく此地に再び攻め入ってくるとはな!
返り討ちにしてくれよう!

オレンジ城
会ったばかりで済まないが、
二人とも、力を貸してくれ!

スピシュ城
当然のことです! 兜は共通の敵ですから!

オレンジ城
さぁ、此場に新たに生まれたトリコロールを見せてやろう!

後半
スピシュ城

全くもう!本当に兜は迷惑です!

オレンジ城
だが、久々に兜の大軍を見た気がするな。
最近はそれほど来ていなかったのだが……。

スピシュ城
……ということは、また兜が何かを企んでいる可能性があるってことですか?

オレンジ城
あくまでも推測だがな。

スピシュ城
むむ……でしたら、一大事に発展しかねませんね。
邯鄲さんはどう思っておられますか?

邯鄲
…………すやぁ。

スピシュ城
もう寝てる!?

オレンジ城
こらこら、起きろ。(ぺちぺち)

邯鄲
はっ! いけないいけない、ついうとうとしてしまいました。

オレンジ城
結構しっかり寝てた気もするが……。

邯鄲
ええと、兜の話でしたっけ?

スピシュ城
はい。もしかしたら他の地域でも同じことが
起きてる可能性もあるかもしれませんし……。

邯鄲
んー、だとしても多分大丈夫だと思いますよ。

オレンジ城
ほう? 何か根拠が?

邯鄲
今見てた夢が証拠です!

オレンジ城
……んん?

邯鄲
私は邯鄲。人の世の儚き栄枯盛衰を語る逸話を根幹に持ち、
夢という業を持った城娘です。

邯鄲
だからこそ、今寝てたときに一瞬見た夢でなんとなくですが察しました。

スピシュ城
あんな短時間で夢まで見てたんですね……。

邯鄲
それが私の業でもありますから。

邯鄲
そして、業が見せた私の夢では、みんな笑ってました。
たくさんの困難をやり遂げた、そんな顔をしてましたよ。

邯鄲
だから、兜が何を企んでいようとそう悪いことにはきっとならないのです。

スピシュ城
そ……そうなんですね……?

オレンジ城
栄枯盛衰、ね。

オレンジ城
だがそれは城娘も同じ。
たとえ信憑性のある夢を見たからといって胡座をかけば、すぐに衰えゆくだろう。

邯鄲
もちろんもちろん。

邯鄲
夢で見た光景に縋らず、精一杯もがく必要があるのは変わらないのですよ。

スピシュ城
……あれ? じゃあ夢には何の意味があるのでしょう?

邯鄲
夢はあくまでも夢……。
私が見る夢は過ぎた過去、今起きていること、可能性のある未来、なのです。

邯鄲
未来の夢が見られたということは、可能性があるということ。
全くないよりはずっと楽観視できるでしょう?

スピシュ城
確かに、『絶対お小遣いが足りない』よりは
『お小遣いが足りるかもしれない』の方がワクワクします!

オレンジ城
ふむ、可能性の話はいつだって人の心をときめかせるものだな!

邯鄲
そうですよ。
ときめかずして、希望を持たずして何が生ですか。

邯鄲
結局のところ、命というものはみんな此世に遊びに来てるものですから。
好きに生きて、命を輝かせるために皆もがくものです。

オレンジ城
ふふ、いいことを言うね。
アタシが先駆者を目指しているのも、自分が輝くためであるとも言えるしな。

スピシュ城
ほぇ~……何だか深いです……。

オレンジ城
……ま、ひとまず兜の脅威が去ったんだ。
うちに来て休憩していくといい。

邯鄲
はぁい。お言葉に甘えますぅ。

スピシュ城
そ、そうでした!
いよいよ安平古堡ちゃんに会えるのですね……!

オレンジ城
ふふっ、うちの子も朝からそんな顔していたぞ。

オレンジ城
……そうだ、もし迷惑でないなら安平古堡をアンタの国に遊びに連れてってやってくれ。
なかなか異国を見せてやれる機会なんてないからな。

スピシュ城
わぁ、いいんですか!?

スピシュ城
あ、というか……せっかくですし、お母様も来ませんか?

オレンジ城
ん? いいのか?
子供たちだけの方が楽しいかと思ったが……。

スピシュ城
だって、先駆者を目指しているんですよね?
だったら、お母様も初めてうちに来た城娘の一人にならないと!

オレンジ城
おや、参ったな。
そう言われてしまうと先駆者魂が疼いてしまうぞ!

邯鄲
なんなら皆さんまとめてうちにも招待しますよ~。
どちらにせよスピシュ城さんの地元に行く途中で通るでしょうし、ちょうどいいです。

スピシュ城
えへへ、急に世界旅行になってしまいました!
楽しみです!

――すっかり打ち解けた二人を見て邯鄲は微笑む。

たとえ生が一瞬の夢でも、思う存分に輝いて生きた生は『正』。
誰に曲げられる謂れのない光が生まれたのを、邯鄲は慈しむ眼差しで見守っていくのだった。

名城番付 決戦初級の段

いよいよ決戦投票を控え、集まった票の集計を行う
新発田城たち。果たして誰が一位に輝くかと
話し合っていると、突然何者かが飛び込んできた。

前半
新発田城

……ええと、こっちは西軍、あっちは東軍、と。

千狐
ずいぶんたっぷりと票が集まりましたね。

新発田城
というのも、一部の城娘様方のご協力により、
各々の地元でも発表できるようになったみたいです。

新発田城
なので、内々で……という話だったのですが、
各地元の方々からの票も受け入れることになりまして……。

やくも
じゃあ投票札が山になってる理由って、城娘さんたちのだけじゃなくて
地元の人々のもあるからってことがや!?

柳川城
あ、本当ですね。地元で馴染みの方が私に入れてくださってます。
ちょっと照れてしまいますが……。

殿
…………。

やくも
そうだ、殿さんは誰に入れるだに?

殿
…………。

殿
…………。

殿
…………。

やくも
そげに本気で悩まなくても……、
聞いたうちが悪かったけん、ゆっくり考えるがや……。

柳川城
(私、とは即答してもらえませんでしたね……)

新発田城
ですが、最初は身内でやっていたはずの催事が
ずいぶんと大事になってしまいました……。

千狐
皆さんの地元への愛がそれだけ深いということですね。

やくも
そうだに!
好きなもんに夢中になることはえーことがや!

柳川城
しかし……皆さま揃いも揃って、
兜の襲撃があったことについて触れているのが気になりますね……。

新発田城
えぇ……。幸いどなたも撃退できたと仰っていますが、
あまりに多数の地域で戦闘が勃発しているとなると……。

千狐
用心が必要、ということでしょうね……。

???
――ごめんくださーい!

千狐
あら? どちら様でしょうか……。

岸和田城
初めましてぇ!
うち、岸和田城いう城娘や!

岸和田城
遠路はるばるやってきたでぇ!
以後よろしゅーに♪

柳川城
まぁ、新しい城娘の方ですね?
よろしくお願いいたします。

岸和田城
お初やけど、指月伏見城さんからお話伺っとったら
はやる気持ちを抑えきれんくなってもうて!

岸和田城
ちょっとばかしお行儀悪いのは重々承知しとるさかい、
堪忍してなー!

殿
…………。

千狐
いえいえ。
むしろわざわざご挨拶に来てくださり感謝しますわ。

やくも
…………。

タコ
……プ?

やくも
色艶も良く、丸々太ってて美味しそうなタコやね……。

やくも
さてはお土産だに?
嬉しいがや、タコ料理は好物がやぁ~!

岸和田城
あかーーーーーーーーーーーーーんっ!!

岸和田城
うちのタコ太郎はお土産でも食い物でもあらへんわ!
大事な相棒やさかい、食わせはせんでぇっ!!

岸和田城
ほれ見ぃ! タコ太郎も怒っとるわ!

タコ太郎
プププー!!(にゅるぺちん)

やくも
うわぁ、触手がぬるぬるするだにぃ……。
この通り謝るけん、許してほしいがや……。

千狐
自業自得ね……。

岸和田城
……まぁ謝ってくれたし、タコ太郎もええって言うとるから許すわ。
うちら、そないに器はちっさくないしな。

岸和田城
そんなことより! うち、今回は投票催事の件で
殿さんのところに来たんや!

新発田城
あの、投票催事は基本的に文で受け付けております。
参加者の多さや、投票者様の手間の削減などが理由でして……。

新発田城
ですから、ご来訪いただき恐縮ですが、
足を運ばずとも参加できますよ。

岸和田城
んなことはうちかて把握しとる!
現にあんたの手元にもうちが送った文は届いてるはずやで!

岸和田城
でもな、ちゃうねん!
うちの地元への愛は文字なんかに収めきれん!

岸和田城
せやから、話を直接聞いてもらわんと真の魅力は伝えきれんのや!
さっ、早速聞いてぇな、殿さ~ん!(ぐいぐい)

殿
…………。

新発田城
ちょ、ちょっとちょっと!
いきなり馴れ馴れしくしては主もお困りになります!

新発田城
そもそも話を聞ききれないからこそ今の形式を取っているんです。
あまり勝手なことをされてしまっては……。

岸和田城
ええやん♪
うちが勝手に語りたいだけやもん!

岸和田城
それに、今更殿さんたちにうちの地元の話をしたところで、
一番決定戦には影響あらへんやろ?

岸和田城
だってもう内々の話やなく、全国を巻き込んだ催事になっとるんやから!

新発田城
う、た、確かにそうですが……。

柳川城
……新発田城さん。ずっと集計と仕分け作業が続いてお疲れでしょうし、
お茶でも飲みながら伺うことにしましょうか。

柳川城
根を詰めたとしても、肝心の集計や仕分けを間違えてしまえば
手間になりますし、適度な休憩は必要かと。

殿
…………。

新発田城
そうですね……。
でしたら、休憩しつつ伺うことにします。

岸和田城
よっしゃー! おおきに!

やくも
それで、岸和田城はどこ出身がや?

岸和田城
うちな、和泉国は岸和田の城娘やで! まんま名前通りやな!
もともとは岸和田治氏っていう楠木正成公の部下だった人が
うちの御城の建ってる土地を切り開いたっちゅーんやけどぉ、

岸和田城
めーっちゃええところなんやでぇ~! 美味いもんもぎょーさんあるし、
ごより豆やじゃこごうこ、ガザミにアナゴ、言い尽くしきれんくらい
名産の美味いもんが溢れとる素晴らしき土地柄でもあるんやぁ!

岸和田城
ほんでなほんでな? ありがた~い修験者の役小角さんが、牛滝山っちゅー
紅葉でえろう有名な場所にお寺も建てたりしとるし、他にもいろんな神社や
お祭りもあるし賑やかで、あっせや! 昔話や伝説も語って聞かせたろか!

殿
…………!?

千狐
(情報量がすごくて反応する暇がないわ……)

新発田城
ちょ、ちょっとちょっとちょっとぉ! お待ちくださいぃ!

岸和田城
ん? なんや? 今ええとこやのに。

新発田城
話の勢いが凄すぎますし、
なんだか話がとっちらかってて分かりません!

新発田城
せめてゆっくり喋ってほしいというか、
話題ひとつごとに一度止まっていただきたいですよ……。

岸和田城
いやいや、こういうのは一度止まったらあかん!
勢いっちゅーのが大事なんや!

新発田城
いくら勢いが大事と言えども限度がありますよ!
人に気持ちや思い、考えを伝えることを軽視してはいけません!

新発田城
確かに勢いをつけて弾ませれば舌も回りましょう……。
けれど、それでは本当に大事なことを振り落としてしまいます!

新発田城
大事なことを落としてしまえば、話したことが無駄になるだけ!
込められた思いだったり、気持ちだったりでさえも……!

岸和田城
……あんたの言うことはわかるで?

岸和田城
でもな、うちかていつも切った張ったで生きてきたんや。
多少の取りこぼしがあったとしても、でっかい機だけは絶対に落とさへん。

岸和田城
なりふり構わずやることはやる! 細かいことに気ぃ取られてしもうたら
でっかいもんは逃げていってしまうもんや!

岸和田城
そう……逃がしたタコは大きいって言うやろ!

新発田城
……タコじゃなくて魚ですよ。
ことわざ、間違ってます。

岸和田城
ちゃうわ! そこは『なんでやねん』やろぉ~!
ボケなんやからツッコんでくれへんと!

新発田城
……今、真面目な話をしてたんじゃないんですか?

柳川城
お、落ち着いてください……!

やくも
……とりあえず、岸和田城の地元には
美味しいもんがあることだけはわかっただに。

千狐
やくも、余計なクビの突っ込み方しない。

タコ太郎
ププププー!
プップププー!!

岸和田城
……ん? どうしたんやタコ太郎。
急に騒ぎよって……。

岸和田城
ふんふん……。

岸和田城
何やて!?
兜が襲来しとるってタコ組織網経由で連絡が入った!?

殿
…………!?

柳川城
兜が襲来……!?

千狐
……その前に、タコ組織網って何でしょう。

岸和田城
うちのタコ太郎はただのタコやない。
とある法師の霊力を分けてもろてる特別なタコなんや。

岸和田城
せやから、仲間のタコとだけ霊力を使うて連絡が取れるんやけど、
兜が複数の地域に向かっとると言われたらしいんや!

千狐
な、なるほど……?

岸和田城
とにかく、兜たちを倒しに行かんと! はよ行こうや!

殿
…………!

千狐
えぇ! 支度が整い次第出立と参りましょう!

――越後国。

千狐
殿! 無事転移に成功しましたわ!

やくも
ホントにタコを媒にできたってことは、
岸和田城の言う通り特殊なタコなんやね……。

岸和田城
な、言うた通りやろ?

タコ太郎
ププップー♪

新発田城
え……? こ、此地は……?

柳川城
……新発田城さん?

新発田城
ここ……私の地元です……!

殿
…………!

柳川城
では尚更荒らさせるわけには参りませんね……!

新発田城
許せません……!
大事な催事の最中に、私の地元を狙うなど……!

岸和田城
……向こうや! 来よったでぇ!


郷土ヲ滅ボセ……。

兜軍団
灰燼ニ帰シメヨ……。
焦土ニ帰シメヨ……。
炎海ニ帰シメヨ……。

岸和田城
うへー、物騒なこと言うてんなぁ!

新発田城
滅ぼさせるわけがありません!

新発田城
鯱の棘よりも鋭き我が槍、とくと味わわせて差し上げましょう!

後半
新発田城

此地に手出しなどさせません……!

岸和田城
(ひえぇ、新発田城っちゅー奴なんちゅう戦い方や。
 単身突っ込んでいきよった……)

新発田城
千狐さん、岸和田城さん、
敵はまだ来そうですか?

千狐
安心してください。
此地に攻め込んで来ようとしていた兜たちの気は全て消滅していますわ!

岸和田城
もう大丈夫そうやってタコ太郎も言うとるで!
でも、次のとこに早よ行かんと……!

岸和田城
ん? どうしたんやタコ太郎。
急にそないに慌てて……。

新発田城
どうかしたのですか?

岸和田城
なんやて!?
うちの地元にも兜が向かっとる!?

新発田城
ではすぐにでも!

岸和田城
いや! ええんや!
うちの地元は後回しでええ!

柳川城
え、えぇ? 大丈夫なのですか?

岸和田城
地元にはタコの加護がついとる!
多少任せても問題あらへん!

岸和田城
それよりも、他の地域の方を助けに行こ!
別の場所も襲われとるらしいから!

新発田城
……貴方がそういうのなら!

柳川城
どうやらまだ戦いは続きそうですね……!

殿
…………!

新発田城
ええ主、参りましょう!

名城番付 決戦上級の段

ようやく和泉国へと救援にかけつけることができた
殿一行。岸和田城が言う、此地を守護するタコたちと
共に兜の進軍を止め、殲滅せよ!

前半
――和泉国。

千狐
殿、転移術は無事成功しましたわ!

岸和田城
うぅっ、やっと着いたぁ……。

新発田城
敵は……兜はどこですか!?

タコ太郎
プププー! プッププップー!

岸和田城
主戦場はもうちょい先の方やって言うとる! 行こ!

柳川城
ええ!

新発田城
……ところで岸和田城さん。
貴方からの進言だったとはいえ、此地を最後にして大丈夫だったのですか?

岸和田城
ああ、言うたやろ?
タコの加護があるって。

岸和田城
現にほら、周り見てみ?

千狐
先程から目に入っておりましたが、
これは……兜の残骸ですよね?

やくも
ま、まさかタコが倒したとか言うつもりかや?

岸和田城
せやでー?

殿
…………!?

新発田城
……なるほど、だから後回しでも何とかなると仰ったのですね。

新発田城
でも、万が一があるとは考えなかったのですか?

岸和田城
……うちは弱いもんの味方や!
まず誰よりも先に困っとる人を助けるんがうちの使命やねん!

岸和田城
うちの地元はええねん。タコの守りがついとるさかい。
何があっても絶対にタコたちが守ってくれる!

岸和田城
けどな、守りがない土地に住んどる人はどうする?
誰が助けてくれるんや? 何にすがったらええんや?

岸和田城
本当に危機に陥った時、すがるもんがおらんとえらい心細くなるやろ……。
うちは、そん心をよう知っとる。

柳川城
……つまりは、窮地に陥ったことがある経験から
信条を得たということですか。

岸和田城
せやで。

岸和田城
生きるっちゅーのは毎日、一生が戦や。
時には精神的に参ってまうこともある。

岸和田城
苦しい時、ホッとさせてくれるんは故郷の空気ちゃうんか?
なくなってもーたら、誰かて辛いやろ?

岸和田城
せやから、今回の兜たちは許せへん。
人の拠り所を奪おうなんてこっすいことしよってからに!

新発田城
……お話、よくわかりました。

新発田城
貴方はきっとこれからも誰かを守り続けるのでしょう。
……でも、力の過信は時に身を滅ぼすことになります。

岸和田城
……なんや、うちが自分の力を過信しすぎやっていいたいんか?

新発田城
貴方自身のことだけでなく、
此地を守るタコたちのこともそうです。

岸和田城
心配になってもうたんか?

岸和田城
大丈夫やで。
タコたちは高波からも、一向一揆の軍勢からも守ってくれたことがあるんやから!

岸和田城
全てはタコたちを引き連れたタコ地蔵様のありがた~いご利益で……。

新発田城
……苦しい時の神頼み、という言葉がある通り、
本当に困窮している時には神仏に頼るほかないという気持ちは分かります。

新発田城
けれど、普段から頼りっきりであってしまっては、
いくら懐の深いお地蔵様と言えど愛想をつかしてしまうのではないでしょうか。

岸和田城
えっ……?

新発田城
タコたちは此地の守り神にも等しい存在なのでしょう。
だからこそ、人々を、此地を守ってくださっているかと思います。

新発田城
とは言っても、タコたちの力に胡坐をかいて明後日の方ばかり見ていては、
いずれタコ地蔵様も力を貸してくれなくなってしまうかもしれません。

新発田城
第一、タコたちを操る力を持っているのは貴方なのですか?

岸和田城
うちは……うちは、少しだけやったら一緒に戦ってもらえる。
けど、タコの大群なんてのを使役する力はあらへん……。

岸和田城
そもそも大抵のタコたちは此地の霊気がないと戦えんのや。
ごく一部の強い子だけはそうでもないみたいやけど……。

新発田城
とすれば……貴方の持っている力は『使役』ではなく『感応』。

新発田城
ならば尚更、気安くタコたちに働きかけ呼び出すのではなく、
精一杯を尽くしてから呼びかけるべきではないのですか?

新発田城
それが、タコを頼る、神仏を頼る時の礼儀だと……私は思います。

岸和田城
…………。

新発田城
全てを己以外の誰かに頼り続けていては、いずれ破綻するのは明白。

新発田城
己が本来守るべき地を、作るべき繋がりを軽視すれば、
手酷いしっぺ返しを食らうことになりましょう。

新発田城
……失ってからでは、遅いのですよ。

岸和田城
…………。

岸和田城
(タコ太郎、うち……)

タコ太郎
……ププー。

柳川城
……見えました!
きっとあそこが主戦場です!

千狐
あ、あら? なんだか兜たちが右往左往しているような……?

兜軍団
ヌアアアァァァァァァァァ!

桃形兜
ウワアアアアアアァァァァン!!
ヌルヌルシテ気持チ悪イヨォォォォォォォォオオオ!!

タコ軍団
プッププー!
プッププー!
プッププー!

殿
…………!?

やくも
ひえぇぇ!? 地面を埋め尽くす勢いでタコがいるだに!?

千狐
岸和田城さんの仰る通り、これなら確かに
ある程度は任せられそうですね……。

岸和田城
(あかん……でもこんなとこまで侵攻してきとる……。
 いつもやったらもっと早ように追い返せとるはずやのに……)

烏帽子形兜
オイ、怯ムンジャネェ!

椎形兜
何デ此地、タコダラケナンダヨ!
シカモ邪魔!!

火焔形兜
シュゴッ、シュゴゴゴッンゴッ、焼キ払ウ、シュゴー!!

新発田城
(焼き払う……ですって…………?)

突撃式トッパイ形兜
オォ、オ前モダンダン喋レルヨウニナッテキタナ。

椎形兜
ソレニ火焔形兜ノ言ウ通リダ!
全部焦土ニシチャエバ侵略モ楽ダロウヨ!!

桃形兜
焼ケバ攻撃ト拠点潰シガ同時ニデキルシ……。
ヨリ効率良ク滅ボセルネ!

烏帽子形兜
ソレニ、拠点ガ潰レテ使エナクナレバ
行キ場ヲ失クシタ人間ドモモ勝手ニソコラ辺デ死ンデクレルダロ!

千狐
つまり、皆様からの文に書いてあったことは……!

柳川城
各地域を同時に焼き払い、
大規模な侵略を目論んでいたということですか……!

新発田城
許せませんっ……焼き払うなど…………!

千狐
(し、新発田城さんの霊力が更に膨れ上がった……?)

突撃式トッパイ形兜
…………ン? 何カ急ニ気配ガ……。

突撃式トッパイ形兜
ゲェッ! 殿ト城娘ダ!!
イツノ間ニ!?

岸和田城
当たり前や! 自分の故郷が襲われとんのに
放っとく阿呆がおるかいな!

椎形兜
……ソノ割ニハ来ルノ遅カッタナァ。

桃形兜
確カニ。
ホントハドウデモイインジャナイ?

柳川城
いきなり何を言いだすのですか!

岸和田城
せや! そないなことあるかいっ!
あんたらが他の地域も襲っとるからやろ!

桃形兜
エー? デモ本当ニ大事ナンダッタラ、
普通ハ真ッ先ニ守リニ来ナイ?

烏帽子形兜
マサカ他所ノ地域デ英雄気取リデ称賛ニ酔ッテ、
自分ノトコハ、ワザトチョット遅レテイケバイイトカ思ッテンジャネ?

椎形兜
ヨリ自分ノアリガタミガ分カルカラカー。
ナルホド、悪ドイ!

岸和田城
うちはそんな狡いことはせぇへんっ!

突撃式トッパイ形兜
後ハ……タコニ任セテオケバイイッテ考エタトカ?

烏帽子形兜
エー!? 自分ガ守ルベキ地ナンジャナイノカヨ。

岸和田城
…………!

岸和田城
うちは……うちはなぁっ…………!

新発田城
――岸和田城さんを悪く言うのは許しませんよ!!

柳川城
し、新発田城さん?

殿
…………!

新発田城
確かに、少しは過信があったかもしれません。
でもそれは信頼の裏返しということでもあるでしょう!

新発田城
岸和田城さんは自分がかつて味わった苦い思いを誰にもさせたくないから!
自分が助けてもらったことが嬉しかったから!

新発田城
だからこそ他の人のために頑張ろうとしている、勇気ある真面目なお人です!!
兜なぞが馬鹿にしていい存在じゃない!!

烏帽子形兜
何怒ッテンダヨ。

椎形兜
モウイイ!
トットト奴ラヲ片付ケルゾ!

兜軍団
焼尽ニ帰シメヨ……。
灰燼ニ帰シメヨ……。
焦土ニ帰シメヨ……。

新発田城
貴方たちの火ごときで燃えてなどやるものですか!!

岸和田城
あんた……。

新発田城
……泣いてる場合ではないですよ。
さ、戦いましょう。岸和田城さん!

岸和田城
……せやな!
涙なんかじゃ戦力の足しにもならんしな!

新発田城
さぁ、全て貫いてやりましょう!

岸和田城
うちらも行くでタコ太郎!
お仕置きしたるんや!!

後半
タコ軍団

プッププー!
プッププー!
プッププー!

岸和田城
よーし! 無事勝利やー!
タコたち、おおきになー!

タコ軍団
プップププー!

柳川城
次々と海へ帰っていきますね……。

千狐
文字通り山ほどのタコが一斉に動くと
なかなか壮観です……。

タコ
ププップー!(ふりふり)

やくも
あはっ、タコが触手振って挨拶してるだにぃ!

やくも
手伝ってくれてだんだんねー!(ふりふり)

殿
…………!

新発田城
…………。

岸和田城
いつまで城娘姿のまんまでおるん?
もう戦いは終わったやろ?

新発田城
あ、そ、そうですね。

柳川城
無理もありません。
苛烈な戦でしたし、すぐ日常の心には戻らないでしょう。

新発田城
ふぅ…………。

新発田城
あ、あぁ、こ、怖かったです……。

岸和田城
へ? さっきあんだけ自分から突っ込んで戦っとったのに?

新発田城
私、火が苦手で……本当は見るのも嫌なんです……。
うぅぅ……怖かった…………。

やくも
つくづく戦ってた時と普段の性格が違いすぎるがや……。

柳川城
あぁ、でもたまにおられますからね。
城娘姿になった時と、普段とで心持ちが変わる方。

岸和田城
…………。

岸和田城
あんた、怖くて仕方ないもんにも立ち向かって、
一緒に戦ってくれたんやな……。

新発田城
自分の恐怖など些末なことですから……。
死地を恐れていては何も守れません。

新発田城
それに……恐怖は動かないことの言い訳にはならない。
自分が動かねば、恐怖は去ってはくれないものです。

岸和田城
……せやね。うちも、今までずっとタコに任しとったけど、
久々にこんな大軍を相手して、ちょっとだけ怖かったわ。

岸和田城
今までタコたちだけでよう戦わせとったな自分は、って。
今回も、結構押し込まれとったし、いずれ限界が来てたかもしれん……。

岸和田城
……失う前に気付けて良かったわ。おおきに。

新発田城
いいえ。私も、差し出がましくお説教してしまって
出すぎた真似でした。

新発田城
でも、手遅れにならなかったようで良かったです。

岸和田城
……最初にあんたを見た時、
なんやえらいおっとりしたおじょーさんやなぁ、って思ってたんや。

岸和田城
でも、いざ戦う時になったら自分の身も顧みず、恐怖を抑えつけ、
人のためを思って、……めちゃくちゃ勇気ある、熱い城娘やん!

岸和田城
そう、まるで……冬の越後みたいに!!

新発田城
は、はぁ。
でも冬の越後は物凄く寒……。

岸和田城
…………。(じー)

新発田城
…………。

新発田城
……な、なんでやねん!

岸和田城
よぉし! うちが求めてた反応や!

新発田城
私だってきちんと学習しておりますから。

岸和田城
ちょっとまだお堅いけど……ようやく仲良くできそうやね。

岸和田城
うち、うるさいかもしれへんけど……、
これからもよろしゅうしてくれると嬉しいわ。

岸和田城
な、新発田城。

新発田城
……私も、最初貴方を見た時、
なんて向こう見ずな城娘さんなんでしょう、と思いました。

新発田城
けれど、信念をしっかり持った方だと分かりましたし、
今は立て板に水の舌も好ましく思えます。

新発田城
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
岸和田城さん。

柳川城
最初に二人がお会いした時、どうなるかとひやひやしてましたが……。
何とか仲良くなれそうでほっとしました……。

殿
…………!

やくも
せやねー、丸く収まって良かっただにぃ。

岸和田城
ありゃー、殿さんたちにも心配されとったん?
恥ずかしいわぁ……。

千狐
まぁまぁ。各地も無事だったようですし、
結果的には全て良し、ですよ。

新発田城
ふふっ、そうですね。

岸和田城
さて、うちは地元の後片付けせんとなー。

新発田城
はっ、私も投票催事の集計に戻りませんと!

岸和田城
したらここでお別れか、ちょっと寂しいけど仕方ない。

岸和田城
みんなまたなー!
今度はうちの地元に遊びに来てやー!

殿
…………!

柳川城
あっ……また約束が溜まっていきそうですね……。

やくも
もう仕方ないから投票催事を定期開催したらどうがや……。

新発田城
司会が必要な時はお呼びくださればいつでも引き受けますよ……。

殿
…………。

千狐
……えぇ、今考えても仕方ないといえば仕方ありませんね。

千狐
ではひとまず所領に戻るといたしましょう!
殿、此度もお疲れ様でした!



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