ストーリーテキスト/第68話_怨嗟の鳴動_~但馬~

ページ名:ストーリーテキスト/第68話_怨嗟の鳴動_~但馬~

第68話 怨嗟の鳴動 ~但馬~[]

但馬国に迫る危機を知り、転移を果たした
殿たち。身を潜めながら兜の気配を注意深く
探る中、一行は何者かの気配を察知するが……。

前半

――但馬国、某所。

壱岐……そして対馬の兜を討ち、
所領に帰還した殿一行。

しかし、直後……。
ある城娘から救援を求める報せを受け、
息をつく間もなく所領を発ったのだった――

殿
…………。

千狐
周囲に満ちる……霊気。
……間違いありません。手紙にあった通り、
ほど近い場所に兜が潜んでいると見て、間違いないかと。

赤穂城
……ありがとな、みんな。
禄に面識も無い、
あっちからの願いを聞き入れてくれて……。

赤穂城
あっちが住んでる播磨国と……お隣の但馬国。
城娘たちで力を合わせて、何とか守りぬいてきたんだけど……。

赤穂城
ここ最近……急に力を強めてきやがって……。
捌き切ることが難しくなっちまったんだ。

赤穂城
情けない話だが……これ以上、
皆を危険に晒すわけにもいかないからな。
そこで殿さんたちに、助けを求める手紙を送ったってわけだ……。

柳川城
……無理もありません。
私たちも現地の城娘に力を借りながら、
どうにか乗り越えている状況です……。

柳川城
ですから、そこに危機が迫っているというなら、
私たちに躊躇う理由はありません。此度も、
赤穂城さんのためにこの力を振るわせていただきます。

殿
…………。

赤穂城
ありがとなぁ……この礼は、
忠義をもって代えさせてもらうからさ、
今後はいつでもあっちに頼ってくれ。

殿
…………!

やくも
それで……。
兜の本陣がどこにあるかは、
もう掴めてるんだに?

赤穂城
ああ……そこについても難儀しててな……。

赤穂城
本当なら、
こっちから殴り込みを掛けてやりたいとこだけどよ、
向こうもそう簡単に尻尾を掴ませてくれねぇ。

赤穂城
ここ数日は、息を潜めながら相手の出方を伺ってる状態だよ……。
太鼓も叩けねぇし、蕎麦を啜ることもできねぇ……忌々しいぜ。

やくも
…………ほぅ。

やくも
……蕎麦?

千狐
やくも、そこはあまり重要じゃないと思うんだけど――

がさがさ……がさ……。

殿
…………!

柳川城
……皆さん、お静かに。
何者かの気配が、こちらへ近づいているようです。

赤穂城
まさか……兜か?

柳川城
分かりません……ですが、
どうやら向こうは、私たちの姿を捉えていない様子。

柳川城
ここは息を殺して、様子を伺いましょう……。

赤穂城
…………。(ごくり)

がさ……がさ……がさがさ……。

がさ、がさがさ――がさっ!

赤穂城
――はっ、あれは……!

椿尾上城
…………。

椿尾上城
――む。ここは……。

やくも
…………。

やくも
あれは……いったい、誰だに?

――――

椿尾上城
改めて……私の名は、椿尾上城。
筒井順慶様を守護する役目のために建てられた御城だ。

椿尾上城
まさか、噂に聞く殿の一行と、
ここで遭遇するとはな……これも一つの定めか。

椿尾上城
結果、私の勘が当たっていたことの証左にもなったわけだが……。

柳川城
勘……ですか?

椿尾上城
ああ。前触れもなく……妙な胸騒ぎを感じたのだ。
今までに味わったことのない、悪寒……。
根拠は無かったが、凶兆を示していると即座に理解した。

椿尾上城
そこで私は、周辺の城娘に守護を任せ、
自身の感覚を信じるがまま、歩みを進めることにしたのだ。

千狐
そうだったのですね……それで、この但馬国まで……。

椿尾上城
うむ……残念ながら、
今のところそれらしい手がかりは掴めていないが……。

赤穂城
いーや、残念なことなんて一つもないぜ、椿尾上城!
あっちらは心強い同志を得たんだ、それだけでも充分過ぎるぜ!

椿尾上城
心強い……同志?

赤穂城
ああ、そうさ! 人手が増えりゃ、
打てる策にも幅が生まれる!

赤穂城
となれば、こっちから打って出ることもできるだろ?
近くに兜が潜んでるのは分かってるんだから!

殿
…………。

赤穂城
な、殿さん? いいだろ? だったら命じてくれ!

赤穂城
あっち、もう我慢の限界なんだよ!
皆を苦しめる兜どもを成敗してやりたいんだ!

殿
…………。

殿
…………!

赤穂城
よぉ~~~っし! 承知した!

赤穂城
戦の前線は、この赤穂城に任せろ!
それじゃ、いっくぜえぇっ!

後半

赤穂城
よっしゃあ! 勝利勝利、大勝利だ~!

赤穂城
そんじゃ太鼓を叩いて勝利を祝うか!
ついでに米もたんまり炊こう!
卵をかけて食うと美味いんだ♪

やくも
だにぃ~! 祝いの宴を開くがや~♪

椿尾上城
…………。

椿尾上城
周囲に満ちていた兜の霊気は、全て滅した。
……それで間違いないんだな、千狐?

千狐
え……は、はい。そのはずです。
逃げたか、討たれたか……いずれにしても、
兜の気は感じられなくなっています。

赤穂城
ん……どうした?
まだ気がかりが晴れねぇって顔をしてるな。椿尾上城?

椿尾上城
……分からない。分からないのだ。

椿尾上城
得体のしれない不安と恐怖で、胸が締め付けられるようだ。
近い将来、良からぬことが起きる……そんな気がしてならない。

赤穂城
お、おいおい……顔が真っ青じゃねぇか。
ほら、あっちの身体に掴まんな?
支えてやるから……。

椿尾上城
す、すまない……。

殿
…………。

殿
…………?

千狐
……はい。
椿尾上城さんの懸念、
思い過ごしとはとても思えません。

柳川城
周囲を探れば、その正体も掴めるはず。
此地を拠点に、注意深く……進んでまいりましょう。

赤穂城
だな、太鼓も宴も後回しだ。
同志が苦しんでるってのに浮かれちゃいられねぇ……。

椿尾上城
苦労を掛けるが……何卒、よろしく頼む……。

――――

赤穂城
――む。なんか雲行きが怪しくなってきたな。
あっちが住んでる播磨国の辺りまで来ちまったみたいだが……。
何か感じるかい、椿尾上城?

椿尾上城
…………。

椿尾上城
あ、ああ……間違いない。
確実に近づいている。

椿尾上城
近くはないが……遥か遠く、というわけでもない。
今この時も、私たちを覗き見ている者の気配を――

???
グガ……グギギ、グウウゥ……。

殿
…………。

殿
…………!?

石田三成
グギ……グギギ、グギイイィィィィ!!

赤穂城
おいおい、何だいあのでっかいのは!?
あれが件の巨大兜ってやつかい!

柳川城
それに、あの姿は……!?
討伐を果たしたはず。なのに……!

やくも
だに……摂津国にて戦った時、確かに……!

石田三成
ガ、アァ……アァァ……!
グガアアァァァァアアァアアアア!!

響き渡る叫びに込められた……怨嗟の念。

再び相まみえることとなった、石田三成の魂。
縁浅からぬ、総大将の面影。
使命と決意……それと同時に生まれる憐憫の情。

入り混じる感情を抱えたまま……殿はしばし、
巨大兜を見据え、立ち尽くしていた。

石田三成
フウウウウウゥゥゥゥゥゥ……!

千狐
――コンッ!?
いけません、巨大兜の砲口がこちらにっ!!

椿尾上城
く……!
私たちがたどり着くのを待ち伏せていたのか!

殿
…………!!

柳川城
なりません、殿を置いて逃げるなど!
いくら貴方のご下知と言えど、それだけは聞けません!

石田三成
グガアアァァァァァァァァッ!!!

柳川城
(もう猶予がない……!
 ならば、此の身を盾にしてでも殿を――)

――ドオオオオオォォォォォンッ!!

――放たれた巨大兜の砲撃は、
寸分の違いも無く殿を捉えていた。

誰もの脳裏に『死』がよぎった。その時――

???
――させないっ!!

殿
…………!!

立花山城
…………。

立花山城
…………。

刹那にも満たない程の僅かな時間の中、
彼女が浮かべた微笑み。
初めて見るはずのその表情に、殿は訳も無く……懐かしさを覚えた。



特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

[裏]真田丸

裏]真田丸(チャリン……チャリン……チャリン……)……貴殿か。今日は、話をしたい気分じゃない。足を運んでくれたのに、すまない。一文……二文……三文……四文……五文……六文……銭を数えていなければ、一瞬...

[裏]淀城

]淀城あ~……。あ゛ぁ~……きもちわる。夢見は悪いし、頭はズキズキ痛むし……。ほんっとに最悪な日よ、今日は。誰でも良いから……。どつき回して、ぐちゃぐちゃにしたい気分。…………。……で、なに?そこに突...

[裏]桜尾城

]桜尾城殿……どうかしましたか?……ふふ、今回は間違えませんでしたよ。あなたの安らぐ顔もまた、私の喜びなのですから。私は今……海を見ていました。このどこまでも凪ゆく、厳島の海を……。厳島周辺は神域とい...

[裏]川越城

]川越城お客様かしら……どうぞ。貴方は、確か……ちょっと待ってね……。うん……たぶん、『殿』よね……?やっぱり……人違いでなくて、良かったわ。ふふ。今丁度、過去の私が遺した日記を読み返していたのよ……...

[裏]小田原城

]小田原城…………。……あら、殿。ようこそいらっしゃいました。ああ……いえ、ご心配なく。少し考え事をしていただけですから。今、ちょうど……。昔の出来事に思いを馳せていました。今の私を形作る、原点とも呼...

[裏]小牧山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 所持特技1.4 [改壱]所持特技1.5 計略1.6 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3...

[裏]室町第

裏]室町第殿……ふふふ。どうせまた来るって、そんな気はしていたわ。私がどんなに忠告をしても、貴方は自分の信念を曲げない。本当に……つくづく、強い人ね、殿は。私のせいで、どれほど悪いことが起こっても殿は...

[裏]大宰府

]大宰府おお、殿か。よく来てくれたな。今な、手紙を整理しておったのじゃ。最近は毎日、誰かしらから届くのでな……。この手紙は……、『大宰府ちゃん親衛隊』を自称する者たちからじゃな。大野城、鞠智城、基肄城...

[裏]坂本城

]坂本城大殿様……また来たのね。ふふ……別に、追い返したりしないわよ。というより……私も今ね、大殿様と話せたら、って考えてたところだったの。だから……少しの間、私の話し相手になってくれるかしら?……ふ...

[裏]佐和山城

]佐和山城……また来たのね、あなた。足を運んでくれたところ悪いけど、面白いものは何も見れないわよ?相変わらず、大坂城様のらいぶに向けて、準備をしているだけだもの。……ん、なに?『なぜ、そこまで大坂城様...

[裏]伊勢長島城

]伊勢長島城も~、なんなのあいつら!信じらんない!寄ってたかってライブの邪魔をして!いったいどこから情報が漏れたの?もしかして、殿じゃないでしょうね……!?……そんなわけないか。あたしは、あんたにな~...

[花嫁衣装]鹿児島城

目次1 性能1.1 特技1.2 計略1.3 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< ロケト城 - [花嫁衣装]シャンティイ城 >[花嫁衣...

[花嫁衣装]鮫ヶ尾城

]鮫ヶ尾城はあ……春日山城サマの祝言、想像するだけでドキドキしてしまうっす!ね、ちびサマ~♪……ん?どうしたっすか、トノ?えっ、『主城のことより自分はどうなのか』っすか……?うぐ……これは痛いことを言...

[花嫁衣装]許昌城

]許昌城うーん……。ううーん……。……おや、殿か?すまない、考え事をしていて来訪に気づいていなかった。この間、殿と話してから、結婚に関して城娘達と話をしたのだ。繁栄という目的へ至る手段としての婚姻……...

[花嫁衣装]萩城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]チャンドラ・マハル - [花嫁衣装]新田...

[花嫁衣装]秋田城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< 延岡城 - [花嫁衣装]ロンドン塔 >[花嫁衣装]秋...

[花嫁衣装]春日山城

]春日山城うーん……。……うーん? ……うん?……殿?すみません! お越しいただいていたのに、今の今まで気づかずにいて!実は先日、坂戸城と謙信公の昔話をしてたのですが、その際、跡継ぎの話題が出たのです...

[花嫁衣装]新田金山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]萩城 - [花嫁衣装]アイリーン・ドナン...