ストーリーテキスト/第63話_梟雄、逝く_~備中~

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第63話 梟雄、逝く ~備中~[]

毒霧を振りまきながら逃走を続ける巨大兜を
追って備中国へと入った一行は、ようやくその
背中を捉えることに成功するが果たして――

前半

岡山城
……さぁ、追い詰めましたよ。
逃避行もここまでです。

宇喜多直家
…………。

岡山城
直家……。

岡山城
どうして貴方は、このようなことを……。

宇喜多直家
お前もか、コノ期に及ンデ対話を試みるトハ。

宇喜多直家
何故……吾輩の心奥を探ロウとする。
知ッテ斬るか、知らずに斬ルカ。
そこにどんな違イがアル?

岡山城
そんなに……おかしなことでしょうか。
貴方のことを知りたいと願うのは。

岡山城
私のかつての主を前にして、何の感慨も覚えない……。
私にしてみれば、そちらの方がおかしな話です。

岡山城
私と貴方……どちらが勝ったとしても、
負けた者の想いが潰えないように、
言葉を交わしたいと願うのは……自然なことだと思うのです。

岡山城
逆にお尋ねしますが、貴方の魂に刻まれた記憶は……、
私という城娘に、何も感じてはくれないのですか?

宇喜多直家
…………。

宇喜多直家
確かに、否定はデキナイ……。

宇喜多直家
アア……感ジルとも。岡山城、
貴様以上に吾輩の心ヲ揺サブル御城が、
どれほど居るダロウか。ソレは間違いナイ。

岡山城
直家……。

宇喜多直家
ああ、痛イ……痛イなぁ。ケフッ、ギハハハハ……。
空虚なコノ胸が、痛ミを訴えている。

宇喜多直家
アレほどまでに愛シタ御城を、
この手デ葬ラネバならぬとは! 何と悲シイ、何と虚シイことか!

宇喜多直家
シカシ……同時にコレほどの刺激は、
戦以外デ味わうことはデキナイ。そうは思わぬか?

殿
…………。

宇喜多直家
ダカラこそ戦は素晴らしい。敗者が失イ、勝者が得ル。
……至極明快なこの理に、誰もが従ウしかない。

宇喜多直家
勝てば……吾輩は只勝てば、
ドンナ場所にでも行ケル。どんなものにでもなれるノダ。

岡山城
……直家。

宇喜多直家
……貴様の言イ分は欺瞞ダヨ、岡山城。

宇喜多直家
戦いとは、どこまでも陰惨なものでアルベキなのだ。
汚ク、醜イものであるホド、輝きを増ス……。

宇喜多直家
ダカラ吾輩は勝利に手を伸バス……アラユル策を尽くす。

宇喜多直家
不様、卑怯となじられようが構ワヌ。
ソレコソが吾輩の正道。

殿
…………。

岡山城
…………。

柳川城
……岡山城さん。

岡山城
ええ……分かっています。
斬らねばなりません。斬るしかありません。

岡山城
むしろ今……此の時、此の場に居られたことを喜びましょう。
この手で、直家の首を取ることができるのですから。

殿
…………!

岡山城
承知しました、殿。
それでは、岡山城……参ります!

後半

宇喜多直家
ケフッ、ギハハ……ギハハハハ……。
負ケタ、負けた……完敗ダ。

岡山城
…………。

宇喜多直家
ああ……最低の気分ダ。
悔イを挙げればキリがない。
貴様らへの恨みも数え切レヌ……。

宇喜多直家
シカシ、勝者は貴様ダ。勝者は強ク、正シイ。
その事実は揺るがナイ……。

宇喜多直家
ならば……敗者タル吾輩は、
この胸に満チル負の感情も……、
浮かんでは消える呪詛の言葉モ……。

宇喜多直家
全テヲ抱えて、逝こうではナイカ……黄泉ノ国、へと……。

宇喜多直家
ギハハ、ハハハ……ハ……。

宇喜多直家
…………。

千狐
…………。

千狐
霊気の消失を確認しました……。

やくも
それじゃ……勝ったってことでいいんだに……?

美作一ノ瀬城
勝利、か……。
なんとも、苦しい戦だったな。

鳥取城
振りまかれた毒は、程なく晴れるでしょう。
ですが、この被害はあまりに……。

柳川城
…………。

殿
…………。

殿
…………?

柳川城
……すみません。少々、考え事を。

柳川城
私はこれまで……兜に対してどこか、
哀れみを抱いている部分がありました。

柳川城
討つべき存在として敵視しつつも、誇り高い魂が、
悪しき願望のために利用されているのだ、と……。

柳川城
ですが此度の兜は、あまりに……。

殿
…………。

岡山城
直家の心には……修羅が住んでいたのです。

岡山城
彼は、己の力をよく理解していた。
そして生きるためには勝ち続けるしかない、ということも。
その目的を果たせるなら、時には仁と義を捨てることも厭わず……。

殿
…………。

岡山城
皆様が、これまでどのような兜と出会ってきたかはわかりません。
が、少なくとも直家は、武人ではなかった。
そういうことでしょう。

柳川城
すみません……あの兜の全てを否定するつもりではないのです。
ただ、あのような兜も居るのだと……少々、衝撃を受けてしまって。

千狐
手段を選ばず力の全てを注げば、
ここまでのことができる……ということですね。

やくも
……逆に言うたら、これまで出会ってきた兜さんは、
民の命を奪う以外のことも考えてた……ってことだに?

千狐
そうね……魂の定着の未熟さゆえに、
破壊だけに終始する巨大兜は、これまでも居たけれど……。

千狐
定着が進行し、自我を取り戻している兜ほど、
理知的な行動を取っていました。
誇りや忠義や……生前の後悔など……。

やくも
そう考えてみると、
あの『ニンニン』も異質だった気がするだに……。

美作一ノ瀬城
ニンニン……?

柳川城
服部半蔵の名を冠する巨大兜のことですね。
伊賀国にて、一度遭遇しましたが……。

千狐
兜を千狐たちにけしかけて、退却して……。
資格、試し……などと言っていた覚えがあります。

殿
…………。

柳川城
そうですね。
これまでに相対してきた巨大兜の、言動や行動。
それらから思惑を探れば……今後の手がかりになるかも――

ぐうううぅぅぅぅ~……。

千狐
――コンッ!?
何なの、この音は……!?

鳥取城
ごめんなさい……私のお腹の音です……!

美作一ノ瀬城
まったく、鳥取城は。
殿たちが大事な話をしているというのに……。

鳥取城
私だって、鳴らしたくて鳴らしてるんじゃありませんよぉ……。

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
ふふ、そうですね……。
私もお腹が空いてしまいました。

岡山城
……でしたら、私にお任せください。

岡山城
此度のお礼をせずに、お見送りするわけには参りません。
私の御城にて腹ごしらえはもちろん、
心ゆくまでおもてなしをさせていただきます。

殿
…………!

やくも
やったがや~♪
それじゃ千狐、すぐに転移! 転移だに~!

千狐
ちょ……待ちなさい、やくも。
その前に、戦の後始末をしなきゃ……!

――――

???
直家が逝ったか……。

???
一種、狂気じみた美学。興味深いものではあった……。
奴もまた、違う世、違う時では、
別の役割を得るのだろう。

???
殿の足音が聞こえてくる……徐々に、
着実に、私の首に近づいている……。

???
さて、次は誰を差し向けようか。
力を持たぬ魂では勝利は叶わず……持つ魂は御し難い。

???
殿だけでなく、
兜共の動向にも気を払わねばならない。
思い煩いは増える一方……。

???
……ならば、信じてみるか?
奴と城娘が築いた関係に倣って、
私も巨大兜たちを……。

???
くく、くくく……有り得ない。絵空事と呼ぶにも程遠い。

???
誰もが揃って、直家のように単純であれば、
私も動きやすいのだが……、
ないものねだりをしても、仕方あるまい。

???
いや……待て。
そうか、良い策を思いついたぞ。

???
全ては魂の在り方一つ。
兜も……それに名を付けただけに過ぎない。

???
であれば。この私が手ずから、
在り方を書き換えてしまえば良い。

???
くく……。戦とは陰惨で醜いもの、か。

???
その通りだよ、直家。お前の考えは正しい。

???
奴……殿は心のどこかで信じているのだ。
敵である兜にも、守られるべき尊厳がある、と。

???
付け入る隙は……そこにある。
その甘えた考えが仇となる時が、必ず来るだろう。
遠からずな……。

???
くく、くくくく……。



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