ストーリーテキスト/第44話_夢幻業火_~山城~

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第44話 夢幻業火 ~山城~[]

ついに山城国は本能寺へと辿り着いた殿一行。
先の戦よりも遙かに強化された織田信長の名を
冠する巨大兜を倒し、畿内遠征に終止符を打て!

前半
???

ヤァヤァ……久方振りですなぁ、柴田殿ぉ。
拙者、首ヲなが~くシテ貴方様をお待ちシテおりましたぞぉ~!

柴田勝家
猿……貴様、ドウシテ斯様な場所にいる?

桃形兜
――マ、マサカッ!? 

兜軍団
勝家様ト共ニ、信長様ト殿一行ノ戦ニ
後詰トシテ乗リ込モウッテ考エナンジャ!?

兜軍団
ソウダヨ! ソウ二決マッテル!

柴田勝家
ハッハッハ! 貴様のコトはいけ好かぬが、ナルホド。
我が武勇を頼りにしていたとは、見所のあるヤツだ!

柴田勝家
ウムッ!! ナラバ共に往くとしようデハないか!
我らが主、信長様ノ窮地をお救いせんが――

???
――おっと、何を勝手ニ盛り上がってンのか知りませんがァ、
……コッカラ先には行かせませんぜェ、柴田殿ォ?

柴田勝家
ナ――ッ!?

柴田勝家
ワシに刃を向けるとは……貴様ぁ! 気デモ狂ったか!?

???
狂う? 狂うデスって?

???
クク……クハッ、アハハハハハハ――ッ!!

???
こいつぁイイ! とっくに狂い始めテル此世にオイテ、今まさに
変則ノ行を取らんとしてるアンタが拙者ヲ狂兜扱いとはァッ!

???
イイですかィ、柴田殿ォ?

???
此世にオイテの本来のアンタは――柴田勝家は、
越中デ上杉景勝と戦ってナクちゃいけねェはずだァ。

柴田勝家
貴様……ワシが『柴田勝家』の名を冠する限り、
主を助ケントすることを許さぬト、そう言いたいのか!?

???
拙者がどうこうじゃねェんだよ、柴田殿……。
此世がアンタをそう規定しちまってるッテ話。

???
そう……アンタの名は本能寺にとっちゃ無粋に過ぎるのさ。

柴田勝家
……貴様ァ…………!

???
それに、これは信長様の意志でもあるんですぜ?

???
柴田ァ、お前さんは邪魔してくれるな……ってネ。

柴田勝家
戯れるなァ! もう貴様の妄言には騙されぬぞ!

柴田勝家
嘗てのワシは、政治的手腕において遅れをとったが、
いま――此世においては、力こそが全てなのだッ!!

柴田勝家
皮肉にも近江ガ地にて相見えたのダ……猿よ!
賤ヶ岳での怨嗟――今コソ晴らさせてもらうぞッ!

???
ハァ……やれやれ。自分ノ意思なのカ、
虚魂ノ煽動なのか分かったもんじゃねぇ。

???
ま、いい……アンタのその単純さはアル意味じゃ美徳だ。

???
ってことで、かかってきな……柴田殿。
格の違いってヤツを教エテあげますぜ。

柴田勝家
ぐッ……どこまでも人ヲ虚仮にしおってェッ!!

柴田勝家
貴様ヲ圧倒的なまでに破壊し、ワシは……、
必ずや信長様のモトへと辿り着いてみせる!

柴田勝家
いくぞぉぉぉぉおお! 秀吉ィィィイイイイッ!!

――数刻後・山城国。

殿
…………。

千狐
殿、今度こそ転移術成功ですわ!

ツバサ
さすがにこの人数での連続転移は疲れたけど、
何とか無事に山城に辿り着けてよかったよ~!

柳川城
…………。

やくも
ここが、本能寺……なんやね?

三崎城
それにしても、何だかやけに暑いですねぇ……。

飯盛山城
――って! ちょっとコレどういうことですか!?
見渡す限りの彼方此方に火の手があがってますよ!!

多聞山城
この炎は……まさかっ!?

信貴山城
ええ、間違いありません。あれは、ただの炎ではなく……、
信長の名を冠する巨大兜の霊気が顕現したものでしょう。

久慈城
そ、そんなことが……起こりえるのでしょうか?

雑賀城
ヤツの内包する力の強大さを考えれば不可解なことではない。

丹波横山城
現実世界への干渉を可能にするほどの霊気と業……。

龍王山城
そして、それすらも上回るほどの黒き執念が
眼前の炎を具現させているのじゃろうな……。

???
――思えば此の世は……常の住処にあらず。

殿
…………!?

織田信長
草葉に置く白露……水に宿る月より、猶あやし。

多聞山城
これは……幸若舞の演目が一つ、敦盛……!?

丹波横山城
生前の信長が、好んだとされていますが……。

雑賀城
まさかボクらを出迎えるのが、巨大兜による舞とは……皮肉なものだ。

三崎城
ですが、戦国大名であれば、多かれ少なかれ誰であろうと……、
斯様な儀式や、それに近しき己を律する術をもっていたとされます。

飯盛山城
歌を詠む城娘だからでしょうか……。
あの巨大兜が行わんとしていることが、私には理解できます。

飯盛山城
あれは、霊妙なる神気……そして、凄絶なる鬼気とを、
異形なる器に同居させんがための謡に他ならない……。

織田信長
金谷に花を詠じ……栄華は先立ちて無常の風に誘はるる……。

織田信長
南楼の月を弄ぶ輩も……月に先だちて有為の雲に隠れり……。

久慈城
殿……ご準備を。
既にここは死地に変じてございます。

久慈城
あの謡の終わりが……恐らくは、
ヤツの戦準備が結ばれた合図となりましょう。

織田信長
……人間五十年。

織田信長
下天の内をくらぶれば……夢幻のごとくなり……。

織田信長
ひとたび生を享け……滅せぬ者のあるべきか……。

織田信長
滅せぬ者の…………あるべき、か…………。

信貴山城
……謡が、止んだ。

龍王山城
ヤツの霊気が、これまで遭遇した
どの巨大兜よりも強力なものとなっておる……。

龍王山城
……ついに、始まるのだな。

織田信長
殿よ……。

殿
…………。

織田信長
……人の世の五十年など、下天の一昼夜に過ぎぬ…………。

織田信長
故に……今日という日を、今というこの一瞬を、苛烈に生きぬくは必定……。

織田信長
先の光秀の暴挙も……彼奴自身の命が選択の果てなれば、

織田信長
……此の闘争も、連綿たる刹那を一義とする我が信条の結実なり。

殿
…………。

殿
…………!

織田信長
ああ、そうだ……。

織田信長
……燃やせ。

織田信長
我らを囲む、夢幻の業火よりも猶熱く、
己が生命を燃やし、予を討ち取ってみせよ!

千狐
織田信長の名を冠する巨大兜が、武器を執りましたわ!

柳川城
ここで決着をつけましょう!
殿、我々城娘に聡明なる御下知を――っ!!

後半
多聞山城

さぁ、姉様!今こそ我らが武勇を示す時ですわ!

信貴山城
はいはい。天罰天罰ぅ。

飯盛山城
もぉ、最後くらい真面目にやってくださいよぉ~!

丹波横山城
こら、貴方も油断してる場合じゃありませんよ!

久慈城
そうですよ! ここが踏ん張り時なんですからぁ!

織田信長
――――ッ!?

雑賀城
今度こそ……逃がしはしないぞ、信長っ!!

三崎城
雑賀城さん、私も援護しますよっ!

織田信長
ぐッ…………ッ!!

龍王山城
長きに渡ったこの戦にも……そろそろ幕を引くとしようか。

龍王山城
わらわの焔と共に、ぬしの一撃を見舞ってやれ、柳川城!

柳川城
はい! この一撃に全霊力を込めます――っ!!

織田信長
が――ッ、は……ぁぁ……!!

殿
…………!!

織田信長
み、見事……なり…………。

織田信長
……これが、予が望みし武……。

織田信長
…………それが、予の夢想せし形にて……。

織田信長
……………………孕みし邪悪を屠る、か……。

殿
…………!

織田信長
ああ……とどめを、さすが……いい……。

織田信長
貴様には……その資格が……そして、責任が……ある……。

織田信長
……己が意志で……未来を……在るべき世界を……掴んでみせ、よ……。

殿
…………。

殿
…………!

そして構えられた一刀が、鋭き呼気と共に振り下ろされる。

――が。

???
生憎ですが……貴方たちに信長様は殺させませんよ……。

龍王山城
――なっ!? 
背後からの銃撃じゃと!?

柳川城
殿、伏せてください――!

殿
…………!?

遠来する三連の銃弾――。

それは、殿ではなく、ましてや城娘でもなく……、

織田信長の名を冠する巨大兜の身体を鮮烈なまでに穿ったのであった。

織田信長
……桔梗紋の刻まれし……弾丸…………そうか、これ……は……。

???
ええ……ソウですよ、信長様……。
貴方ヲ討ち取っタのは、この私……。

明智光秀
惟任日向守コト――明智”十兵衛”光秀にて候。

丹波横山城
な……っ!?

多聞山城
そんな……どうして貴方がここに!?

飯盛山城
こ、こんなの……おかしいですよ!
だって、光秀は丹波で……私たちが倒したはずじゃ……。

明智光秀
ええ、ソウですとも。私は貴方たちに倒されタ……。

明智光秀
然様ナル事実があったからこそ、コウシテ誰にも気づかれることなく、
私は死者トシテ此世に規定サレ……本能寺に潜むコトがデキた。

明智光秀
而シテ……我が愛しき主を此の手で……フフフ。

織田信長
……光秀。

織田信長
やはり、貴様……なのか……。

織田信長
此世においても……貴様こそが、予を……。

明智光秀
……ええ。貴方ヲ殺すのは、イツであろうと……、
如何ナ世であろうと……コノ私でなくてはイケないのです。

明智光秀
だからこそ、数多ノ城娘にも……殿にも……ソシテ『あの御方』にも……、

明智光秀
貴方様ノ魂ヲ……渡シハ、しない……。

織田信長
フッ………………まったく、貴様という……やつ、は…………。

織田信長
……………………是非も………………無し…………。

織田信長
…………………………………………………………。

明智光秀
…………。

明智光秀
……実に、長い旅路でありました、信長様…………。

明智光秀
貴方様ノ魂に触れるため……私がどれほどの刻を廻ッテきたか……。

そう呟きながら、明智光秀の名を冠する巨大兜は、
己が主の器を抱きかかえ、殿たちに対して背を向ける。

丹波横山城
待ちなさい、光秀……!
いったい何処に行くというのです!

明智光秀
……何処ニ、行く…………?

明智光秀
ソレはまた、難解な問いですね……。

明智光秀
我等ガ魂は何処カラ来て、何処へ向かうのカ……。

明智光秀
ソレを知らんとすればこそ、私は此ノ地、此ノ刻にて……。

明智光秀
我が愛しき主と共に……心魂ヲ焼かれんと欲したのですよ……。

信貴山城
…………。

明智光秀
――さぁ、信長様……参りましょう……。

明智光秀
これからは、ずっと……この光秀が貴方を―――。

織田信長
…………………………………………………………。

歩み行くは、夢幻の業火――。

果たして、二体の異形は焔の顎門に飲み込まれていった。

千狐
織田信長の名を冠する巨大兜の霊気……消滅。

信貴山城
同時に、明智光秀の名を冠する巨大兜も…………ね。

三崎城
い、いったい……何が、どうなっているのでしょうか?

やくも
とにかく、悩むのは後にするだに!
こっちまで火の手が回ってきちょーけん、はやー逃げんと全滅だに!

ツバサ
千狐お姉ちゃん――っ!

千狐
ええ。すぐにでもこの地から脱出するわよ!

千狐
コンッ! 秘技・時空転移術なのぉ――っ!!

――同時刻・近江国。

柴田勝家
そんナ………………。

柴田勝家
……そんナ……バカ、な……。

柴田勝家
信長様の、霊気ガ……消エタ……。

柴田勝家
完全に、此世カラ……消エテしまわれた…………。

柴田勝家
……ぁぁ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――ッ!!

秀吉
……いやァ、せっかく近江マデ来たというのに、
まったくの徒労ニ終わりマシたなァ、柴田殿ぉ?

柴田勝家
許サヌ……許サヌぞぉぉぉおおッ!!

柴田勝家
秀吉! 貴様サエいなければァァ!!
貴様サエいなければァァあぁああああ!!

秀吉
ハハハハッ! そう、そうですヨ、柴田殿ォ!
拙者さえイナケレバ、アンタは英雄となれタはずだ!

秀吉
ダガぁ……このままじゃアンタは勝てなァい……。
どうやったってこの秀吉には勝てないんだなぁコレがァ!

秀吉
今日トイウ日をもって、我らが主君――信長様は消え、
拙者という木偶は、鬼柴田であるアンタさえも圧倒した。

秀吉
ならばもう、名乗るべきですよねぇ……?

秀吉
貴方からもらった『柴』の字でもなく、

秀吉
賜った『平』でもなければ『藤原』でもない……。

豊臣秀吉
ここから生まれる新たな乱世を統制せんがために、敢えて――、
そう、敢えて俺は『豊臣秀吉』と名乗らせてもらうとしましょうかぁ!

柴田勝家
…………其ノ名……其ノ業……其ノ魂……。

柴田勝家
必ずやワシが……滅ぼしてクレようぞ……。

豊臣秀吉
……ええ。お待ちしてますぜ、柴田殿ぉ。

柴田勝家
……………………。

ぎらつく眼光による睨め付けが終わりを迎えると共に、
柴田勝家の名を冠する巨大兜は、その巨躯を闇夜に消していった。

そして、残された異形は新たな詞を世に紡ぐ――。

豊臣秀吉
さぁ、今より興るは真の乱世……。

豊臣秀吉
信長様……貴方のいない戦国時代を、此処からやり直すとしましょうか。

――半刻後・所領。

殿
…………。

柳川城
何とか、全員無事に本能寺から脱出することができましたね。

三崎城
ですが……私たちは、本当に織田信長を倒したのでしょうか?

雑賀城
それについては、間違いないと思う……。

雑賀城
千狐の感じとった霊気の消滅や、
あの本能寺の炎の作用からして、

雑賀城
ヤツの魂が無事である可能性は万に一つもないだろう。

丹波横山城
……ただ、明智光秀の名を冠する巨大兜の復活を目の当たりにした今、
そうした断定はあまり意味を持たなくなってきてるというのも事実……。

飯盛山城
やっぱり、そこ……ですよね。

久慈城
どうして、倒したはずの巨大兜が……すぐに蘇ったのでしょうか?

多聞山城
……簡単な話ですわ。

久慈城
え……?

多聞山城
そもそも我々は、明智光秀の名を冠する巨大兜を倒してはいなかった。

多聞山城
そう考えれば、全ての辻褄が合いますわ。

多聞山城
そうでしょう、姉様?

信貴山城
……ほぇ?

多聞山城
…………。

信貴山城
はいはい。わかりましたよ。全てとは言わずとも、
貴方は大体の事柄を察したようですからね……。

信貴山城
ええ、そうですとも。多聞山城の考えている通り、
私たちは、あの明智光秀の名を冠する巨大兜を倒してはいない。

信貴山城
覚えていますか、私があの時に放った爆弾を……?

三崎城
煙がもくもくもく~って、出て来て……。

飯盛山城
……目が開けてられないくらいで、咳もコンコン出て、

久慈城
巨大兜すらも見えないくらいの異常状態になりました……。

信貴山城
そう……あの時、我々の視界からは暫時、
明智光秀の名を冠する巨大兜は完全に消えた。

信貴山城
……そこを見計らって、
予め用意してあった空の器と、巨大兜の本体がすり替わった。

信貴山城
……簡単に言えばこんな感じですね。

千狐
空の器と、本体が……。

やくも
……入れ替わった?

飯盛山城
な、何でそんなことがわかるのですか?

柳川城
敵と、内通していたから……。

柳川城
……そうですよね、信貴山城さん?

信貴山城
…………。

信貴山城
…………さぁ、どうでしょう?

多聞山城
姉様! この期に及んでまだそのような態度を取るのですか!?

多聞山城
すり替わったとされる明智光秀が、
我々や信長にすら知覚されずに済んだのは、

多聞山城
姉様が持つ、毘沙門天の加護の力を使ったからなのでしょう!?

信貴山城
……仮にそうだとして、何だというのです?

信貴山城
私があの巨大兜と画策し、丹波での茶番を演じて見せた……。

信貴山城
その事実は、如何な言葉を尽くそうと変わりはしない。そうでしょう?

多聞山城
……開き直りの潔さは認めましょう。

多聞山城
ですが、今回ばかりは我々の信頼を
裏切ったことに他なりませんよ、姉様。

信貴山城
…………。

多聞山城
…………。

ツバサ
ケンカはだめだよぉ~!

多聞山城
ツ、ツバサ……っ!?

ツバサ
ツバサね、殿たちが遠征に出発した後、ずっとしぎーちゃんと一緒にいたよ!

ツバサ
でもね、皆を裏切るために兜の仲間になってたなんて、そんなことないもん!

久慈城
……じゃ、じゃあどうして巨大兜とあのようなことを。

ツバサ
えっと、えっとぉ……。

ツバサ
そうだ! ツバサ、思い出したよぉ! 

ツバサ
確かね、しぎーちゃんは取引をしたんだよ!

信貴山城
……ツバサ、やめなさい。

ツバサ
何で? しぎーちゃんは悪くないってちゃんと説明しなきゃ!

信貴山城
そんなこと、いいから……。

ツバサ
よくないよ! しぎーちゃんが悪く言われるの、ツバサいやだもん!

ツバサ
あのね、殿! しぎーちゃんはね、あの光秀って巨大兜に、
本能寺の戦では殿たちには手を出さないように――って!

ツバサ
それでもって、信長にも協力をしないでぇって!
そういう約束をしたの、ツバサはちゃんと聞いてたもん!

信貴山城
…………。

龍王山城
ほぉ……。

龍王山城
なるほどなるほど、そういうことじゃったか、信貴山城。

信貴山城
……な、何ですか、その笑みは?

龍王山城
ぬっふっふ。ぬしも可愛いところがあるではないか……。
まさか憎まれ役を買ってまで我々を助けようとしたとはな。

飯盛山城
……ど、どういうことですか?

龍王山城
わらわの推測まじりではあるが、つまり信貴山城はだな――

龍王山城
ツバサと共に畿内における兜の拠点つぶしをしていた折に遭遇したであろう
明智光秀の名を冠する巨大兜に対し、あることを提案したのじゃ。

龍王山城
――殿が織田信長の名を冠する巨大兜を討つ間、邪魔をしてくれるな、と。

三崎城
……確かに。よく考えてみれば、丹波にてわざわざひとりで戦うよりも、
本能寺で、信長と共に私たちを迎え討っていた方が勝算はずっとあったはず。

久慈城
じゃあ、本当に信貴山城さんは……我々のために?

信貴山城
…………。

龍王山城
そして……本能寺における光秀の言動から察するに、
彼奴は主である信長を自らの手で屠らんと望んでいた。

龍王山城
その野望を果たさんがために、丹波での器のすり替えと
霊気隠匿の助力を信貴山城に頼んだのじゃろう……。

龍王山城
違うか、信貴山城よ?

信貴山城
…………。(ぷい)

ツバサ
うん、そうだよー! さっすがりゅーおーちゃん! 名推理~!

信貴山城
こ、こらツバサ! どうして貴方は口を閉じていられないのですか!

龍王山城
はっはっは! ツバサが隣にいる限り、
此度のことについては隠し事はできぬようじゃのぉ、信貴山城。

信貴山城
……はぁ。
まあ、いいでしょう。

信貴山城
ただ、私が兜と結託した事実は変わりません……。
……罪を罰してほしいなどとは死んでも口にしませんが、

信貴山城
厚顔を以て殿の御側にいようなどとは思いませんので、
とりあえず、今日のところはこれで失礼します…………。

多聞山城
あ、姉様……! 待ってください! 
まだ話しは終わってませんよ――っ!

殿
…………。

柳川城
信貴山城さんたち……行ってしまいましたね。

龍王山城
許してやってくれ、殿……。信貴山城のやつ、
珍しく善意から協力をしようとしてくれたようじゃが、

龍王山城
如何せん、やり方がやり方だったからじゃろうな。
……彼奴なりに後ろめたさを感じているのじゃろう。

雑賀城
珍しいな。キミが信貴山城の肩を持つなんてね。

雑賀城
……てっきり忌み嫌っているもんだと思ってたが?

龍王山城
嫌っているからこそ、彼奴のことはある程度理解しておるのじゃ。

龍王山城
それに、此度の畿内遠征は、もともと信貴山城ら姉妹の立てた計画じゃ。
肝要たる部分においての功を考慮すれば、下手に責めるわけにもいくまい。

丹波横山城
……ああ見えて、信貴山城さんは責任感が強いですからね。

龍王山城
ふん……。じゃが不器用に過ぎる。もう少しわらわたちを
信頼してくれれば、異なるやりようもあったというのに。

殿
…………。

殿
…………!

飯盛山城
そうですね! いろいろありましたが、何とか皆さん無事に
畿内における兜討伐を完了させることができたわけです!

雑賀城
まだまだ後処理は多く残っているだろうが、
ボクらの故郷から兜を一掃できたことには変わりない。

丹波横山城
となれば、今は互いの健闘を祝すべき……といったところでしょうか?

久慈城
じぇっ! ここまでものすご~く長い間たたかってきた気がしますし、
今日くらいは皆さんいっしょに勝利の余韻に浸っちゃうべきかとっ!

三崎城
それじゃあ、いよいよマグロ大宴会の開始ですね、殿!

龍王山城
これこれ、遠征中に何度もマグロ料理をふるまってもらったゆえ、
今日ばかりは勘弁してほしいのじゃぁ~!

三崎城
え~! じゃあ、他に何を食べたいというのですかぁ?

丹波横山城
でしたら、我らの郷土料理をそれぞれ振る舞うというのはどうでしょうか?

雑賀城
……え? それって、ボクもやらなきゃいけないのか?

龍王山城
なんじゃ、雑賀?
ぬし、さては料理なぞしたことがないとでも?

雑賀城
……そんなわけあるか。料理なんてバカでもできる。

龍王山城
ほぉ、ならば腕前をみせてもらいたいものよなぁ?

雑賀城
……ふん。そんな安い挑発に誰がのるか。

龍王山城
なんじゃとぉ……!?

飯盛山城
ああもう、ケンカしないでくださいよぉ~!

ツバサ
そうそう、せっかくお祝いなんだから仲良くしないとー!

やくも
だにぃ! あのものすっごい巨大兜さんを倒したんやから、
え~っぱいお祝いするがやぁ~♪

千狐
もう、やくもったら……はしゃぎすぎちゃダメだからね?

柳川城
…………。

殿
…………?

柳川城
あ、す、すみません、殿……未だ先の戦いでの高揚が
解け切れておらず険しき表情をしてしまっていたようです。

柳川城
……とはいえ、我々は、
あの織田信長の名を冠する巨大兜を倒したのです。

柳川城
きっとこれで、日の本を取り巻く事態は好転すると思います。

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
はい! 皆さんと共に今日の勝利を祝いましょう!

龍王山城
うむ! それでは宴に興じるとしようではないか、殿よ♪

こうして長き戦いを経た殿たちは、各々の険相を笑みに変え、
今日という日を迎えられたことを朗らかに祝い合うのだった――。

――四半刻後。

多聞山城
姉様――! 待ってください姉様っ!!
お願いですから私の話を聞いてください!

信貴山城
……む。今日はやけにしつこいですね。
姉好きもそこまでにしないと周りにひかれますよ?

多聞山城
そ、そういうことではありません! どうして貴方は、
そのように殿たちと距離を取ろうとするのですか!?

信貴山城
……そんなの決まってます。

信貴山城
彼処に、私のような存在がいてはいけないからですよ。

信貴山城
…………。

信貴山城
――なんて、どうです?
ちょっとそれっぽい感じでしょう。

信貴山城
それに、思惑通りにツバサは、良きところで
私に関しての弁明をしてくれましたからね。

信貴山城
おかげで今の私の好感度は天井知らずです。

信貴山城
えへへ、しぎーちゃん大勝利ぃ♪

多聞山城
姉様……。

多聞山城
どこからどこまでが本当なのか、今の私には知る由もありませんが……。

多聞山城
此度の一件において、巨大兜と結託してまで
殿を救おうとしたこと……改めて感謝しますわ。

信貴山城
あら、先ほどはあんなに責め立てていたのに、
いったいどういう風の吹き回しですか?

多聞山城
……だってあの場は、誰かが姉様を問い詰めなくては
事態がより悪化しかねないと、そう思ったから……。

信貴山城
とか何とかいって、最初はけっこう感情的でしたよね、貴方。

多聞山城
し、仕方ないでしょう? 
姉様のこと、本当に心配していたんですもの。

信貴山城
やれやれ……いつまでたっても姉離れができないんだから。

信貴山城
……それに、感謝なんてのは私には不要ですよ、多聞山城。

信貴山城
今回のことは、好奇による心情の方が、
己が原動としては遙かに強いですからね。

多聞山城
けれど、それ以上に……。

多聞山城
光秀の取らんとした行動に対して、
姉様は自らを重ねていたという側面もあるのでは?

信貴山城
…………。

信貴山城
そこまで気づいていたとは、さすがは我が妹。

信貴山城
ええ。そうですとも、あの明智光秀を名乗っていた巨大兜は、
此世の理すらも超越せんとして、主殺しという暴挙に出たのですからね。

信貴山城
あれはいわば――此世に対する反逆行為。

信貴山城
偽物であろうと、かつての主君の魂を『あの御方』なる
存在から解放せんと、独り立ち回って見せたのです。

信貴山城
実に、面白き話ではないですか。

多聞山城
……姉様、やはり貴方は――

信貴山城
――ええ。此度の遠征で、私は確信しました。

信貴山城
我々のいるこの世界は、本来ありえるはずのない刻の中にあるのだと。

信貴山城
だってそうでしょう?

信貴山城
私たちの知る、本来あるべき歴史の知識には――。

信貴山城
関ヶ原の大戦の最中に、あんなものは落ちてないのですから。

――同時刻・某所。

今川義元
ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ! 
目障リダッタ信長ガ呆気ナク逝キヨッタワ!

今川義元
コレデ今川ノ天下ハ確実――ッ!
今度コソ余が日ノ本ノ覇者トナルノダ!

???
……ええ。義元様ノ仰せの通りデございます。

???
ですが、どうか油断ナサラヌように。

???
甲斐ノ虎も越後ノ龍も……ジキに目覚めるコトとなりましょう。

???
コチラに関しては、如何なさいますカ?

今川義元
フムゥ、確カニ面倒ナ手合デハアルガ、
然様ニマデ案ズル必要モアルマイテ……。

今川義元
何故ナラバ、此世ノ余ニハ貴様ガイルノダカラナ。

???
…………成程にございマス、義元様。

???
ナレバ、不肖な我が身、我が武勇ニテ、
義元様のご期待に応エテみせましょう。

今川義元
ウムッ! ウムゥッ! 我ラ今川軍ニヨル天下統一ハ此ヨリ始マルノダ!
ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!

不気味な笑い声が冥き天へと響き渡っていく。

それは、新たなる脅威の産声が如く――、

???
……………………。

戦国なる刻に秘された深き業を――、

???
……………………。

――此世に、目覚めさせていくのであった。



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