ストーリーテキスト/盛夏の島へめんそーれ！

盛夏の島へめんそーれ！[]

盛夏の島へめんそーれ！ -序-

夏の陽射しが照り付ける頃、
浦添城は殿一行をとある場所に招待する。
しかし、彼の地には迷惑な先客がおり……。

前半
――とある海岸にて。 浦添城 皆、かふーしやたんどー！ 琉球御城 うん！　わったーにまかちょーけっ！ 今帰仁城 わたしたちは先に琉球に帰って、 こくおー様たちのお出迎えの準備をしてきますね。 中城城 こくおーたちを招いて、ドンチャンドンチャンのお祭り騒ぎ――。 中城城 くぅーっ、楽しみさー♪ 首里城 やっさー。スイも楽しみさー。 琉球御城 でもスイねーねは、お祭りというより、 お祭りの屋台が楽しみなんじゃないのー？ 首里城 うぐっ！　そっ、そんなことないよ～。 浦添城 じ～～～……………………。 浦添城 ……さては図星だなー、ちゅりじょーちゃん。 首里城 ふぇえ～……。 浦添城 あっはは。何も隠すことなんてないさー。 屋台の料理も、踊りも、全部含めてのお祭りさー。 浦添城 楽しみにすること自体、何も悪い事じゃないよー。 中城城 そうそう。わんも屋台のチャンプルーとかサーターアンダギー、でーじ楽しみさー。 中城城 しかもそれが、こくおーたちが一緒なら尚更さー♪ 今帰仁城 そうですね。だからこそ、皆の思い出に残るような、 素晴らしいお祭りを企画しましょー！ 首里城 よーし、スイがんばるよー。 琉球御城 わんもちばりんどー！ 琉球御城 ――それじゃー浦添城ちゃん。わったーはもう行くね！ お見送りかふーしやたさー！ 浦添城 うん！　みんなー、あとはゆたしくさー！ 一人海岸に残った浦添城は、故郷へと出立した琉球の城娘たちの船が 地平線の彼方へと消え去るまで、激励の言葉と共に、ずっと手を振り続けた。 ――すると、その様子をじっと見つめる何やら怪しい影が……。 古桃形兜 ……オイ、今ノ聞イタカ？ 桃形兜 ハイ、シッカリト。 桃形兜 アイツラ、琉球デ祭リヲヤルラシイッスネ。 古桃形兜 ソウダ！　ソレニアノ励ミ様……コリャア絶対、 本土デモオ目ニカカレナイ、何カ凄イ祭リヲヤルニ決マッテル！ 桃形兜 琉球ハ異国情緒溢レル、チョット変ワッタ土地ッスカラネ。 ドンナ祭リニナルノカ、正直見当モツカナイッスヨ。 古桃形兜 ダロウ？　ダカラコソ、アイツラダケガ祭リヲ楽シムナンザ気ニ入ラネェ……。 古桃形兜 ナラ、ブチ壊スツイデニ、俺ラガ琉球ノ祭リヲ楽シメバイインダ！ 桃形兜 ……ドウイウ事ッスカ？ 古桃形兜 ツマリダ！　琉球ノ城娘共ガ祭リノ準備ヲスルダロウ？ 古桃形兜 全部整ッタトコロデ俺達ガ祭リヲブチ壊シ、 ソシテ城娘ノ為ノ祭リヲ、俺達ノ為ノ祭リニ変エテヤルンダヨッ！ 桃形兜 アァ～、名案ッスネ！ 桃形兜 ソウイエバ琉球ニ根城ヲ構エル仲間モイタハズッスカラ、 アイツラニモ協力サセレバ、ヨリ本格的ナ祭リガ楽シメソウッスヨネ！ 古桃形兜 応トモ！　ソレニ今ノ俺達ハ、夏季休暇真ッ最中。 古桃形兜 サンサント照リツケル真夏ノ太陽、透明度ノ高イ琉球ノ海、 ソレニ加エテ琉球ノ祭リニ郷土料理ト来レバ―― 桃形兜 今マデデ最ッ高ノ夏休ミニナルッテコトッスネ、先輩ッ！！ 古桃形兜 ――マサニソノ通リ！！　ヨーッシ、コウシチャイラレネェ……ッ！ 古桃形兜 野郎ドモ！　早速琉球ヘト出発ダァァァッ！！ 兜軍団 オォォォォォォウッッッ！！ ――それから数日後の所領。 聚楽第 ……ふふ。お殿様とのお話は……相変わらず楽しい、です。 聚楽第 私の暑中お見舞いも……気に入ってくださったようで、良かった……です。 殿 …………！ 浦添城 はいたーいっ！　こくおー、みんな、久しぶりさー！ 柳川城 あっ、浦添城さん。お久しぶりです。 お元気そうで何よりです。 千狐 お久しぶりです。浦添城さんも、殿に暑中お見舞いを届けに？ 浦添城 うーん……当たらずとも遠からず、かなぁ？ やくも ん？　なんだがや？ 勿体ぶらずに説明するだにー！ 浦添城 ふっふっふー。実はね――、 浦添城 みんなを琉球に招待しに来たのさー！ 聚楽第 …………！ 柳川城 えっ！？　琉球に……ですか？ 浦添城 そう。実は今年、わんの地元でお祭りをやることに決めたのさー。 浦添城 ほら。ここ最近も戦続きで、みーんな疲れてるでしょ？ 浦添城 せっかくの夏だし、みんなの疲れを癒してあげられないかなーと思って、 じゃあ、こくおーたちを呼んで、おもてなしをしようって決めたのさー。 浦添城 琉球の海はでーじ綺麗だし、琉球の料理も、お祭りも、 きっとみんな気に入ってくれるはずだから、来てくれると嬉しいさー！ 千狐 ふわぁ……とっても素敵です！ やくも だに！　海で遊んで、夜はお祭りを楽しむ――、 やくも これ以上ないくらいの名案やね！ 聚楽第 ……………………。 千狐 （あ、あれ……？） やくも （聚楽第、やけに静かだに……） 千狐 （聚楽第さんは、あまりこういったお話にご興味がないのでは？） 柳川城 （それかもしくは……暑いところが苦手で、あまり行きたくないとか……？） やくも （ええっ！　そ、そうなんかや！？） 聚楽第 …………ち、違いますよ。 やくも うわぁっ！　聞こえてただにぃッ！？ 聚楽第 あ、あの……その……、 聚楽第 に、苦手とか、そういうことではなく……。（もじもじ） 柳川城 ……？　そういうことではなく？ 聚楽第 え、えっと……うぅ……、 聚楽第 うっ、浦添城……さん……っ！ 浦添城 んー？　なーにー？ 聚楽第 あっ、あの……、 聚楽第 わ、私も……琉球に行っても、よろしい……でしょうか？ 浦添城 もっちろんさー！　みーんなを招待したいから、わんは今日ここに来たのさー！ 浦添城 もしかして、琉球に興味持ってくれたのー？ 聚楽第 …………。（こくり） 浦添城 あはは、にふぇーでーびる。嬉しい限りさー。 柳川城 良かった……。てっきり怒ってらっしゃるのかと……。 やくも はぁ～、心臓が止まりかけただに……。 千狐 でもこれで、聚楽第さんも同行することが決定しましたわね。 千狐 殿は、琉球の旅行――如何でしょうか？ 殿 …………。 殿 …………！ 浦添城 にふぇーでーびる、こくおーっ！ 浦添城 じゃあ、当日の詳細が決まったら、また連絡するさー。 琉球の城娘たちの用意が、もう少しかかりそうだからね。 浦添城 その時までに、みーんな水着をちゃんと用意しておいてほしいさー！ ――さらに、それから数日後。 琉球の海岸にて――。 千狐 転移完了ですわ！ やくも うわあぁ……っ！　こんな綺麗な海、初めて見ただに！ 柳川城 そうですね。真っ白な砂浜に、 空の色と同化したどこまでも広がる青い海――。 柳川城 感動ものです……っ！ やくも あっ、そうそう！　忘れちゃいかんがや！ やくも 真田丸、富山城！　一緒に来てくれてだんだんね！ 真田丸 いえいえ。これも全ては、御屋形様や皆様を守るためですから。 真田丸 それに、斯様な素晴らしき場所にお供させていただき、 こちらこそかたじけのうございます！ 富山城 ねー♪　ボクもこーんなにきれいな海に来れて嬉しいよーっ。 富山城 お礼に、みんなの健康はボクがキッチリ管理してあげるから、 安心して遊んでいいからねー。 富山城 聚楽第ちゃんも、もし体調悪くなったら言うんだよぉ？ 真田丸 溺れかけた際は、拙者が助けに行きます故、ご安心くだされっ！ 聚楽第 は、はい……っ。 富山城 うん、いい返事だー！ 柳川城 （ふふっ、微笑ましいですね……） やくも ……ん？　向こうから誰かが駆け寄って来るだに。 千狐 あっ！　あの人は、もしかして――。 浦添城 みーんなー！　よく来たさーっ！ 柳川城 浦添城さん！　こんにちは！ 浦添城 えへへ。こくおー、みんな、めんそーれー！　琉球へよーこそーっ！ 浦添城 今か今かって、ずーっと待ってたさー。 柳川城 浦添城さんも水着に着替えてたんですね。 浦添城 当然さー。みんなに琉球の海を堪能してもらいたいからね。 地元城娘のわんも着替えて、気合いを入れてみたのさー。 浦添城 ――でも、柳川城ちゃんたちは、着替えなくていいのー？ 柳川城 わっ……私は大丈夫です！ 殿と皆さんの荷物番をしますので。 千狐 わ、私も……水着を持ってなくて……。 やくも うちも持っとらんけど、気にしないで海に飛び込むだにー♪ 浦添城 うーん……。 浦添城 でもまぁ、水着持ってなくても気にしなくていいさー♪ 浦添城 泳ぐことだけが、海の楽しみじゃないわけ。 浦添城 浅瀬に足を浸かるだけでも、浜辺でやる鞠叩きでも、 いーっぱい色んな楽しみ方があるから。 浦添城 わんが全力で、みんなをおもてなししてあげるさー。 真田丸 かたじけのうございます、浦添城殿！ 富山城 良かったねぇ。柳川城ちゃん、千狐ちゃん。 柳川城 で、でも……皆さんの荷物とか……。 浦添城 そこは何も気にしなくていいさー。 浦添城 今日ここは、こくおーたちの為に貸し切りにしたわけ。 だから、誰かに盗られる心配もないよー。 富山城 そうそう。それにもし気になるんなら、ボクが見ててあげるから。 富山城 ボクは元々泳ぐことより、 みんなの体調を見守るために付いてきてるんだ。 富山城 だったら、ボクが荷物番もしながら、 浜辺で見守ってる方がいいだろう？ 富山城 だから柳川城ちゃんも千狐ちゃんも、 遠慮しないで楽しんでいいからね。 柳川城 あっ、ありがとうございます。富山城さん！ 浦添城 うんうん。 浦添城 よーしっ、じゃあそろそろ海で遊ぶさー。 浦添城 あっ、沖の方に入りすぎると クラゲに刺されるから、あまり行き過ぎないようにねー。 真田丸 承知っ！ 真田丸 では早速、琉球の海を満喫いたしましょう！ 富山城 おーっ♪ 聚楽第 ぉ、おーう……！ ――こうして、皆は思い思いに海を楽しんだ。 ある者は浅瀬を歩き、ある者は岸まで遊泳し、 ある者は木陰ではしゃぎ過ぎた者の看病をし、 またある者は浜辺で活き活きと体を動かして遊んだ。 初めての琉球の海にはしゃぐ乙女たちの喧騒が、 異国情緒あふれる神秘的な海岸に響き渡る。 しかし……、 ――ドォォンッ！！ 殿 ……！ 千狐 い、今の轟音は……！？ やくも 浜辺の向こうの方から聞こえてきたけど、 一体何があったんだがや？ 浦添城 あの方角……まさかっ！？ 柳川城 ……っ！　皆さん、あれをっ！！ 古桃形兜 ハァ～、吹ッ飛バスノッテ気分イイゼ～。 桃形兜 本当ッスネ、先輩。 ヤッパコウ、『スカッ！』ットシマスヨネ！ やくも あーっ！　兜さんだにーっ！ 桃形兜 ゲェッ！　シ、城娘！　ナ、ナンデココニ！？ 柳川城 それはこちらの台詞です！ 今の轟音はあなたたちの仕業ですね！ 古桃形兜 オ、俺達ァ、別ニ何モヤッテネーゼ？ 浦添城 嘘を吐いても無駄さー！ おまえたちの悪事は、ぜーんぶお見通しだよ！ 浦添城 さっきの音がした場所、 あれは村の方からだっていうことも分かってるさー！ 浦添城 しかもあの村は、こくおーたちを招待するために、 お祭りの準備を手伝ってくれてた村――、 浦添城 おまえたち、お祭りを滅茶苦茶にするつもりだね！ 桃形兜 アノ村ガソンナ場所ダッタナンテ……、 桃形兜 サッスガ先輩！　ソレヲ知ッテテ襲ッタンデスネッ！ 古桃形兜 ゲッヘッヘ……バレチマッタナラショウガネェナアッ！ 古桃形兜 アア、ソウダ！　オマエラノ祭リガ気ニ食ワネェカラ、 ブチ壊シテヤッタノサ！　文句アルカッ！？ 古桃形兜 （マァ、ソンナ事情ガアッタナンテ本当ハ知ラナカッタガナ。 　ヒヒヒ……） 浦添城 …………絶対、 浦添城 絶対、許さないさーっ！！ 柳川城 あぁっ！　浦添城さん、待ってください！ 柳川城 殿、浦添城さんと共に、兜たちを迎え撃ちましょう！
後半
兜軍団 ――グアァァァァァッッッ！！ 浦添城 わったーの琉球で悪さすると、こうなるさー！ 浦添城 さぁ。観念したら、とっとと出て行くさー！ 古桃形兜 クッソォ……ヤッテクレタナ、城娘ェェェ……ッ！！ 古桃形兜 オマエラ！　手ヲ貸セーッ！ 兜軍団 ウオォォォォォォ……ッ！！ やくも だにぃっ！？　殿さん見るがや！ やくも 村の方から、兜さんがわんさと向かってくるだに！ 千狐 そんな！　まだ村で暴れてた兜がいただなんて！ 千狐 それに海の底からも、兜が浮上してきています！ 柳川城 応援を呼んで、陣形を整えるつもりなのでしょう。 柳川城 こちらも、より一層気を引き締めないといけません！ 古桃形兜 ――ハッ、コウナッチマッタ以上仕方ネェ！ 古桃形兜 ヤケクソダ！　思ウ存分暴レ回ッテヤルァ！ 桃形兜 アル意味、コノ状況モ祭リッポイデスシ、イインジャナインスカ？ 古桃形兜 祭リ……？　祭リ……祭リ……、 古桃形兜 ――ソウダッ！　城娘相手ニ喧嘩祭リ、ッテイウノハドウダ？ 桃形兜 アッ、ソレイイッスネ！　タダ暴レ回ルノモ飽キマシタシ、 丁度目ノ前ニ城娘共モイマスシ、面白ソウッス！！ 古桃形兜 ヨーシ、野郎共！ 憂サ晴ラシニ、喧嘩祭リヲ始メンゾーッ！ 兜軍団 オォォォォォォウッッッ！！

盛夏の島へめんそーれ！ -破-

喧嘩祭りと称し、殿一行へ特攻を仕掛ける兜軍団。
そんな傍若無人な悪行に業を煮やした城娘たちは、
喧嘩祭りを閉幕せんと、再び迎え撃つのだった。

前半
古桃形兜 ヨーシ、野郎共！ 憂サ晴ラシニ、喧嘩祭リヲ始メンゾーッ！ 兜軍団 オォォォォォォウッッッ！！ 柳川城 け、喧嘩祭り！？ 浦添城 ふざけるんじゃないさー！ 浦添城 大体、誰がそんな事決めたのさー！ 兜軍団 今、俺達ガ決メタンダ！ やくも 勝手に決めるんじゃないがや！ 古桃形兜 ウルセェェェーーーッ！ 俺達ガ決メタ事ニ文句言ウナ！！ 古桃形兜 ヤルト言ッタラ、ヤルンダヨォォォッ！！ やくも むっ、無茶苦茶だにっ！ 古桃形兜 行クゼ野郎共！　コノママ城娘共ニ特攻ダァッ！！ 兜軍団 ウオオオオォォォォォォ――ッッッ！！ やくも うわぁっ！？　兜さんたちが、こっちに向かってくるだに！ 千狐 村からも海からも、先程とは比べ物にならない数の兜が攻めてきます！ 真田丸 ええいっ！　琉球の地を踏みにじり、あまつさえ 罪のない村人に危害を加えるとは言語道断ッ！ 真田丸 真田丸、流石に堪忍袋の緒が切れました！！ 富山城 ホントだよ。せっかく浦添城ちゃんが招いてくれたのに、 とんだ邪魔が入っちゃあ……ちょーっとボクも許せないなぁ。 富山城 今すぐ村に向かいたいところだけど、 まずはあいつらにお仕置きしないとね！ 浦添城 真田丸ちゃん、富山城ちゃん―― 浦添城 に、にふぇーでーびるさー……っ。 富山城 お礼を言うのは後だよぉ、浦添城ちゃん。 富山城 まずはあいつらにお帰り願わないとね～。 富山城 よーし、ふんどし締め直すよ！ 真田丸 拙者もふんどし、もとい水着の紐を締め直しまする！ 真田丸 ――さあ、御屋形様！ 海からの伏兵にも注意しつつ、あの狼藉者共を成敗しましょう！ 真田丸 そして、彼奴等の言う喧嘩祭りとやらを、 早急に閉幕させましょうぞ！！
後半
真田丸 これで、終わりだぁっ！ 富山城 とりゃーっ！ 兜軍団 ギャアアァァァ――ッ！！ 浦添城 さあさ、兜さんたち！ もう諦めて観念するさー。 古桃形兜 …………クッ、クククク。 古桃形兜 誰ガ何時、『モウ仲間ハイナイ』ト言ッタ！！ 浦添城 えっ――！？ 海老形兜 ギシャアァァッ！！ 千狐 ……っ！　まだ海中に兜が潜んでいたなんて！ 千狐 危ない！　浦添城さん！ 海老形兜 喰ラエェェェェ――ッッ！！ 浦添城 ――あぎじゃびよいっ！！ 柳川城 しまった！　浦添城さんが瘴気に！ やくも かっ、兜さん！　不意打ちなんて卑怯だに！ 古桃形兜 ハァーッハッハッハッハッハッハァッ！！ 古桃形兜 卑怯ダッテェ？　ソレハ俺ラニトッチャア、最上級ノ褒メ言葉ダゼェェェッ！ 桃形兜 ヤリマシタネ、先輩！城娘ノ一体ヲ手玉ニ取リマシタヨ！ 浦添城 うぅっ……ぐぬぬぅっ……！ 浦添城 か、体がぁ……思うように、動かないさーっ！ 真田丸 くぅ……っ！　拙者がついていながら……ッ！ 富山城 ど、どうしよう……。このままじゃ浦添城ちゃんが！ 絶体絶命の危機にさらされ、 再び城娘たちの間に緊張が走ったその時――、 聚楽第 んぅ……やっと少し楽に……んん？ 木陰で倒れていた城娘が、 寝惚け眼を擦りながら、ゆっくりと体を起こした。 聚楽第 い、一体……何事でしょう……？

盛夏の島へめんそーれ！ -急-

一瞬の隙を突かれ、浦添城は兜の手に落ちてしまう。
危機に陥った殿一行の許に聚楽第が駆け付け、
城娘たちは反撃の狼煙を上げるのだった。

前半
聚楽第 い、一体……何事でしょう……？ 古桃形兜 ハッハッハッハッハー！ 古桃形兜 瘴気ヲ喰ラワセチマエバ、コッチノモンダー！ 浦添城 ぐぬぬ……ふんぬぅぅぅ……っ！ 浦添城 うぅぅ……思う通りに動けないさー！ 誰かー！　早く助けてほしいさー！！ 聚楽第 あれは……浦添城さんに……兜？ 聚楽第 …………まさか！ 聚楽第 みっ、皆さん……っ！ 柳川城 ――あれっ、聚楽第さん！？　もう熱中症は大丈夫なんですか？ 聚楽第 はい、お陰様で。 木陰で涼んでいたら、だいぶ楽になりました。 聚楽第 ――して、私が倒れている間に……何が？ 千狐 実は、かくかくしかじか……という次第で。 聚楽第 ……………………。 聚楽第 なるほど、そのようなことが……。 古桃形兜 ゴッチャゴチャ、ゴチャゴチャ……何時マデ話シテヤガンダッ！ 浦添城 うっ、うわぁぁぁ……っ！ 真田丸 浦添城殿っ！！ 古桃形兜 コノ琉球ノ城娘ハ、今ヤ俺達ノ傀儡モ同然ダ。 古桃形兜 祭リヲ滅茶苦茶ニスルツイデニ、 コイツヲボロ雑巾ミタイニシテヤルゼェッ！！ 浦添城 うぐぐぅぅ……わっ、わんの体に何するさー！ 浦添城 ――んぅううう、うっ……うわあああっ！！ 真田丸 まずい！　浦添城殿の弓矢が、御屋形様にッ！ 真田丸 御屋形様ぁぁぁ――っ！ 殿 ……！ 聚楽第 ……させません！ 真田丸 ……っ！？ 富山城 す、凄い……。 浦添城ちゃんの矢を、一瞬で全部撃ち落とした……っ！？ 古桃形兜 シカモ、アンナ玩具ミタイナ水弓デ……！？ 聚楽第 私は、楽を聚むる第にして、 弓聖の称号を冠する城娘――。 聚楽第 この手に持つものがなんであれ、弓の形をしているならば、 こちらに放たれた矢を射抜き、落とすことも容易い……です。 やくも 前に聚楽第の贋物が現れた時に似たようなことをしてたけど、 本物はもっとすごいだに……。 古桃形兜 ソンナ、馬鹿ナッ！！　冗談ダロォ、オイッ！？ 聚楽第 冗談ではなく、私は……本気です。 聚楽第 浦添城さんを……今すぐ解放しなさい。 聚楽第 ……もし、この通告を看過するのであれば、 聚楽第 渚の弓聖の力……お見せして差し上げます！ 古桃形兜 上等ダァァァ！　ヤッテミロヨ、コラァァァッ！！ 浦添城 う、うわぁぁぁっ！　も、もうやめてほしいさー！ 浦添城 みんなー！　わんの力じゃどうにもならないから、頑張って避けてーっ！！ 千狐 ……争いは避けられぬようですね。 真田丸 浦添城殿には申し訳ないですが、 ここまで来れば、強硬手段を取るしかありませぬ！ 富山城 本当に、仕方のない連中だなぁ。 柳川城 殿、浦添城さんの弓の射程に気を付けて戦いましょう！ 聚楽第 ……でも、大丈夫です。 聚楽第 お殿様は……私たちが、お守りいたしますから。
後半
柳川城 浦添城さん、大丈夫ですか？ 浦添城 あいやー、でーじなとん……。 皆のお陰で助かったさー。 真田丸 なんの！　当然のことをしたまでです！ 真田丸 ……さて、と。 兜軍団 ――ッ！！ 真田丸 まだ抵抗を続ける気ですか？ 富山城 もうこれ以上、暴れまわる力もないだろう？ 富山城 大人しく身を引いた方が、懸命だと思うけどなぁ。 聚楽第 …………。 兜軍団 ……チッ、チッキショウ！　覚エテヤガレ、コンチクショウメッ！！ やくも 覚えてるだにー！ やくも ……にしても、逃げ足はやたらと速いだに。 もうあんなに遠くまで行っちゃったがや。 千狐 それに、なんというか……コテコテの捨て台詞だったわね。 千狐 ですが、何はともあれ、 これでようやく平和が戻りましたね、皆さん。 千狐 浦添城さんも、ご無事で何よりです。 浦添城 う、うぅ……。 柳川城 ど、どうしたんですか？　もしかして、どこか痛みます？ 浦添城 ち、違うさー……そうじゃなくて……。 浦添城 あの、みんな……迷惑かけてごめんね。 浦添城 楽しんでもらおうと思った矢先に、出鼻挫かれてしまったさー……。 柳川城 いえいえ、そんなことはないですよ。 浦添城さんは何も悪くありませんから、謝らないでください。 真田丸 そうですよ。元はと言えば、あの兜たちの責任。 寧ろ迷惑を被ったのは浦添城殿の方です。 富山城 うんうん。だから落ち込まなくていいよ。 富山城 いるんだよねぇ、たまーに。 夏休みだからってはしゃいで、 周りのことも考えずに迷惑をかけるお調子者さんが……。 富山城 あの兜たちもそういった類の輩だったし、 結構きつめにお仕置きしたから、もう大丈夫だよ。 聚楽第 それに……夏休みは楽しい出来事や、思いがけない事件に遭遇する。 聚楽第 ――そのような行事だと、聞き及んでいます。 聚楽第 で、ですから、その……、 聚楽第 あ、あまり……気を落とさないで、ください……。 浦添城 み、みんなぁ……。 千狐 では早速、兜に荒らされた村へと向かいましょう。 やくも 復興作業も、うちらが手伝ってあげるだに！ 殿 ……！ 浦添城 本当に、にふぇーでーびるさー……っ。 浦添城 よーっし、気を取り直して村の様子を見に行くさー！ 浦添城 それが終わったら、もう一度みんなに、琉球の海を満喫してもらうさー！ 柳川城 ふふっ、浦添城さんの元気が戻ってよかったです。 柳川城 ……ですが、あの兜たちは祭りに執着していたはず。 柳川城 恐らく、お祭り当日も現れるでしょう。油断はできません。 浦添城 ……うん。認めたくないけど、きっとそうだと思う。 浦添城 でも、もう同じ過ちは繰り返さないよ。 浦添城 それに何度来ようとも、 みんなが一緒ならきっと大丈夫さー！

盛夏の島へめんそーれ！ -絶壱-

――浦添城が所領へ訪れる前のこと。
彼女は同郷の城娘たちを浜辺に呼び出し、
何やら相談事を持ちかけようとしていたのだった。

前半
――話は遡ること十数日前。 何やら浦添城は、仲の良い同郷の城娘たちをとある浜辺に集めていた――。 中城城 はいたーい！ 琉球御城 あっ！　中城城ちゃん、なっきー！　ちゅーうがなびら！ 今帰仁城 こんにちはー。もう皆さんお揃いだったんですねぇ。 首里城 うん。スイたちもね、少し前に着いたのー。 浦添城 悪いねぇみんな。こんなところに呼び出して。 中城城 いいよいいよ、気にしないで。 中城城 ねぇねぇ、浦添城ちゃん。 そういえば、わったーを集めた理由ってなにー？ 浦添城 うん、実はね――。 首里城 ――えっ、こくおーたちを元気付けたい？ 浦添城 そうそう。 浦添城 ほら、最近は戦続きで、みーんな疲れ切ってるでしょー？ 浦添城 だから、みんなを元気付けるためにどうすればいいのか、 スイちゃんや中城城ちゃんたちに相談したかったのさー。 首里城 なるほどー、そういうことかー。 琉球御城 確かにみんな、疲れ切った顔してたねぇ。 この前、所領に顔出しに行ったとき、みーんなどんよりしてたし……。 今帰仁城 日々の疲れと共に、季節の移り替わりで、体調を崩してしまったのかもしれませんねぇ。 中城城 あぁ～、暑いのに慣れてないと体ぐったりしちゃうさー。 中城城 わったーは暑いのに慣れてるけど、 所領のみんなは結構きついかもしれないねー。 浦添城 だからよー。 浦添城 ……ということで、琉球城娘たちによる、 こくおーたちを元気付ける会の作戦会議を始めるさー！ ――こうして、一同は浦添城の呼びかけに応え、各々意見を出し合っていった。 しかし――。 今帰仁城 琉球の美味しい料理を振舞うのはどうでしょうか？ 首里城 うーん、それもいいかもしれないけど、 暑い時にガッツリ料理を食べたら、余計に体調崩しそうじゃないかなー？ 中城城 こういう時こそ、エイサー踊るのが一番さー！ 琉球御城 琉球舞踊で楽しませるのも良いと思うよー！ 中城城 ……エイサーの方が楽しいさー。 琉球御城 むぅ……っ！　琉球舞踊も楽しいもん！ 首里城 喧嘩は駄目だよぉ、二人ともー。 首里城 ……やっぱり、海で泳ぐのが一番なんじゃないかなぁ？ 首里城 気が塞いだ時には海でぜーんぶ洗い流しちゃえばいいと思うよー。 今帰仁城 なるほどぉ！　海も良いですねぇ。 今帰仁城 ただ、殿たちはここらの浜辺には何度か来たことがあるようですし、 所領からあまり近いところでは目新しさがない気が……。 首里城 そ、そっかぁ……うぅ、どうしよう……。 浦添城 うーん……なかなか意見が固まらないなぁ。 首里城 ちなみに浦添城ちゃんは、どんなこと思いついたのー？ 浦添城 わんは琉球流の宴会とかどうかなぁとは思ったのさー。 浦添城 でもそれって、今帰仁城ちゃんが言う料理とか、 琉球御城ちゃんの琉球舞踊とかと似たようなものだし、 浦添城 あぁ～！　もう……どうしたらいいのさ～……っ！ 琉球御城 …………。 琉球御城 じゃあ、こうなったら……、 中城城 チャンクルーで決めるさー！ 今帰仁城 えぇっ！？　チャンクルー……ですか？ 中城城 意見がこじれるくらいなら、 遊びで勝った人の意見を採用する方が一番早いさー。 浦添城 チャンクルー……って、なんだっけ？ 首里城 あれー？　浦添城ちゃん忘れちゃった？ 首里城 ほら。貝殻を手のひらとか、 手の甲に乗せて、それを地面に落とすんだよー。 首里城 表を向いてる貝殻の枚数が、一番多い人が勝ちーって遊び！ 浦添城 あぁーっ！　そんな遊びあったねぇ。懐かしいさー！ 今帰仁城 なるほどぉ。チャンクルーなら、直ぐに勝負はつきそうですね。 今帰仁城 それにここは浜辺。貝殻なら足元にいーっぱいありますよぉ♪ 浦添城 よーしよし。早速準備するさー！ 浦添城 この五枚の貝殻を使って、ちゅりじょーちゃんが言った通り、 表を向いてる貝殻が一番多い人の意見を採用する――それでいいね？ 琉球御城 問題ないさー！ 首里城 チャンクルーするの久しぶりー。 今帰仁城 一番を決めるためではありますが、 こうしてみんなと遊べるってなるとワクワクしますねぇ♪ 中城城 たまにはこういうのも悪くないさー！ 浦添城 じゃあまずは、わんから始めるさー！ 勝っても負けても、恨みっこなしだからね！ 浦添城 いっくよー！　せーのーっ！
後半
琉球御城 あれ～……？ 中城城 ん～……。 今帰仁城 な、なかなか勝負がつかないものですね……。 浦添城 うぅ……意見もまとまらないどころか、 勝負もつかないなんて……、 浦添城 これは本格的に困ったことになってきたさー……。 首里城 はぁ～……。こくおーたちも『うちなーんちゅ』だったらいいのになぁ……。 首里城 そうすれば、みんなが言ったこと全部できそうなのに……。 浦添城 …………っ！ 浦添城 それだ……それだよ、ちゅりじょーちゃん！ 首里城 ……んぅ？ 浦添城 いっそのこと、所領で琉球流のおもてなしをするんじゃなくて、 こくおーたちを琉球に招待して、おもてなしすればいいんだ！ 浦添城 さっきちゅりじょーちゃんが言ったみたいに、 誰か一人の意見を採用するんじゃなくて、 みんなが言ったことぜーんぶ、琉球でやればいいんだよ！ 首里城 あぁっ、なーるほどーっ！ 琉球御城 こくおーたちに琉球の海を楽しんでもらって、 中城城 夜にお祭りを開いて踊ったり、 今帰仁城 屋台で琉球の料理を堪能していただく――そういうことですね！ 浦添城 大当たりさー！ 首里城 すごーい！　完璧だよ浦添城ちゃん！ 浦添城 いやいや、ちゅりじょーちゃんのおかげで、 こうしてまとまったのさー。 浦添城 それに、みんなが良い案を出してくれたから、 こくおーたちに素晴らしいおもてなしができそうだよー！ 今帰仁城 せっかくお祭りをやるのなら、 琉球の魅力が詰まった屋台料理を出さないとですね。 中城城 エイサーも、うちなーんちゅの力を借りて、最高の出来のを見せてあげるさー！ 琉球御城 わんの琉球舞踊も負けてられないねー！ 首里城 こくおーたちがゆっくりできるような海も、スイいっぱい知ってるよー。 浦添城 うんうん！　じゃあ意見もまとまったことだし、 次はおもてなしの細かい部分も決めていこー！ ――こうして、琉球の城娘たちは、殿たちをもてなすべく、 時が経つのも忘れて、談議に花を咲かせるのだった。

盛夏の島へめんそーれ！ -離-

――とうとう迎えた琉球夏祭り。
浦添城の案内で、殿一行は祭りを満喫するのだが、
不意に、会場内に乙女の悲鳴が響き渡る……。

前半
海辺での戦いから一夜明け――ついに夏祭り当日を迎えた。 殿 …………！ 千狐 うわぁ、凄い盛り上がりですね！ やくも 旅籠屋で見た琉球舞踊も凄かったけど、 お祭りのエイサーも大迫力だに！ 浦添城 こくおーが来るって言ったら、 村の人たちでーじ張り切ってたさー。 浦添城 勿論、わんを含めた琉球の城娘たちも、みーんな頑張ったよー！ 殿 …………！ 柳川城 ……ですが、例の兜たちがまた現れないとも限りません。 柳川城 警戒するに越したことはありませんが、 そうなると、折角のお祭りを楽しめませんね……。 浦添城 それなら大丈夫だよ、柳川城ちゃん！ 浦添城 今日は村の人たちが見回ってくれてるから、 怪しいヤツを見たら、わんに知らせてくれることになってるわけ。 浦添城 もし兜が現れても、わんがたっぴらかすからね！ あんくとぅ、みんなは安心して、お祭りを楽しんでほしいさー。 柳川城 浦添城さん……！ ありがとうございますっ！ やくも わーい！　じゃあ早速、あの屋台に突撃だにー！ 千狐 あっ！　ちょっとやくもー！　待ちなさーい！ 柳川城 ふふっ。やくもさんは相変わらずですね。 柳川城 それでは殿、我々も屋台を回っていきましょうか。 殿 …………！ 柳川城 ――それにしても、様々な屋台があって凄いですね。 お祭りの定番料理や、琉球特有のものまで所狭しと並んでいます。 真田丸 祭りの活気も相まって、この未知の品々は心をくすぐられまする。 富山城 ふふっ、そうだねぇ。いっぱいありすぎて、目移りしちゃうよぉ。 浦添城 屋台の料理はどれもこれも美味さー。 でもわんの一番のお気に入りは、この『うちなーすば』かなぁ。 柳川城 あっ、それ丁度気になってたんです！ 浦添城 なんなら、味見してみるー？ 柳川城 わぁっ！　ありがとうございます！ 富山城 あっ、いいなぁー。ボクも味見していい？ 真田丸 せ、拙者も……！ 浦添城 いいよいいよー♪ 浦添城 ほら、聚楽第ちゃんも遠慮しないでー。 聚楽第 では……いただきます。 聚楽第 （ちゅるっ……ちゅるりっ……もぐもぐ……） 真田丸 ……こっ、これは！ 柳川城 普段所領で食しているそばとは、また一線を画す味です！ 富山城 それに盛りつけされてるお肉も肉厚で、しっかりと味が付いてるー！ 聚楽第 とっても……美味しいです！ 浦添城 よかったぁー♪ 浦添城 はい。こくおーもどうぞー！ 殿 …………。 殿 …………！ 浦添城 えへへ、みんな喜んでくれて嬉しいさー♪ ハーイヤ！　ハーイヤ！ ハーイヤ、イーヤーサーサーッ！ 富山城 へぇ～。エイサーも色々な踊りがあるんだね。 浦添城 エイサーは各地域や団体によって違いがあるのさー。 浦添城 だから手踊りだけの団体もいれば、太鼓担ぐ団体もいたり、 踊り手や地域によって差があるから、それも見どころさー。 真田丸 老若男女問わず、大勢の方が参加しているのも面白いですね。 真田丸 ふふっ。拙者も滾って、自然と体が動いてしまいます。 柳川城 真田丸さんのお気持ちも分かります。 皆さん楽しそうにしているのも、見ていて心が躍りますよね。 聚楽第 たまには……こうして賑やかな場所で過ごすのも、良いものです。 ？？？ ――うわぁぁん！ 柳川城 あれ？　今の声は……？ 真田丸 あっ！　あちらにいるのは、やくも殿と千狐殿です！ 富山城 しかもやくもちゃん、泣きながらこっちに走ってくるけど……どうしたんだろう？ やくも だ、誰かー！　助けてだに―！ 千狐 ちょ、ちょっとやくも！　腕引っ張らないで！ 柳川城 お、お二人ともどうしたんですか！？ 千狐 じ、実は――、 ？？？ カッ！　カカカカッ！！ 柳川城 ……っ！　あれは一体？ やくも な、なんか毛むくじゃらの怖い顔した犬に、 さっきから追いかけられてたんだに！ 浦添城 あれは琉球獅子舞っていうやつさー。 琉球に伝わる名物の一つで、厄払いの縁起物だよー。 浦添城 神娘ちゃんたちもお客さんだって村の人に伝えておいたから、 きっと張り切って盛り上げようとしてくれてるのさー。 やくも あっ、なーんだ。そういうことだったんがや！ 千狐 もう！　だから泣かなくても大丈夫って言ったじゃない。 やくも でも千狐だって、ちょっと怖がってただに。 千狐 こ、怖がってないわよ！ やくもが驚いてたから、千狐もびっくりしただけで……。 柳川城 まあまあ、お二人とも。喧嘩はその辺で……。 富山城 そうそう。せっかくのお祭りなんだから、楽しまないと損だよ？ 真田丸 あっ！　あの獅子舞、こちらに向かってきます！ 聚楽第 ……？ やくも ん？　聚楽第？ そんな怪訝な顔して、どうしたがや？ 聚楽第 ……もしや！ 聚楽第 はぁ……っ！ 突撃式トッパイ形兜 グワァァァッ！！ 千狐 えぇっ！？　し、獅子舞の中から……兜が！ 聚楽第 ……やはり。 浦添城 そ、そんなぁっ！ ちゃんと……会場の警備を厳重にしたはずなのにっ！！ 聚楽第 警備が厳重になったからこそ、 この祭り会場にいてもおかしくはない変装をしたのでしょう。 聚楽第 やくもさんを執拗に追いかけていた様が……少々気にはなってたんです。 聚楽第 もしかしたら、あれは琉球獅子舞に扮した兜では……と。 千狐 なるほど。様子がおかしかったのも、頷ける話です。 柳川城 ということは、もしかしたらこの獅子舞以外にも、 変装をして紛れ込んでいる兜がいるかもしれない――ということでしょうか？ 兜軍団 正シクソノ通リッ！！ 富山城 噂をすれば……だね。 真田丸 やはり紛れ込んでいたか！ 古桃形兜 ココマデ来ルノニ一苦労ダッタゼ。 オ前ラガ邪魔シテクレタオカゲデ、ココノ守リモ厳重ニナッチマッタ。 古桃形兜 ダガ琉球ノ兜共ガ、エイサーヤ琉球獅子舞ニ扮スレバ、 ココニ難ナク侵入出来ルハズッテ助言シテクレテナ。 古桃形兜 訝シンデハイタガ、物ハ試シテミルモンダゼ！　ナンセオ前ラハ、 祭リ会場ニ浮カレテ、俺達ガ変装シテイルコトニ気ヅクノガ遅レタンダカラナ！ 兜軍団 包囲ッ！　包囲セヨッ！！ きゃああああッ！！ な、なんなんだあいつらは！！ やくも まずいだに！ 完全に囲まれたがや！ 千狐 それにこのままでは、祭り会場に来たお客さんたちまで危険です！ 柳川城 やくもさんと千狐さんは、祭り会場に来た方たちを避難させてください！ 我々は兜たちを迎撃します！ 千狐 分かりました。皆さん、くれぐれも気を付けてください！ やくも 殿さん、みんな。油断しちゃダメだに！ 殿 …………！ 浦添城 祭りを滅茶苦茶にするなんて、そんなことわんがさせないさー！ 富山城 本当に卑劣な奴らだね……。 真田丸 おのれ！　祭り会場を混乱に陥れようとは！ 聚楽第 ……無粋な輩です。 浦添城 みんな、悪いけど力を貸してほしいさー！
後半
聚楽第 これで……！ 兜軍団 ギィヤァァァァッ！！ 富山城 ようやく半分片付けたね。 真田丸 数で押し切ろうとも無駄なこと！ 浦添城 次はおまえたちさー！ この間はよくもやってくれたねー！ 古桃形兜 ヒィッ！　オ、オ助ケ―！ 古桃形兜 ……ナーンテナ！　今ダ！　行ケ！！ 兜軍団 ウオオオッ！！ 真田丸 いつの間に背後を！？ 富山城 このままじゃ、また浦添城ちゃんが危ない！ 柳川城 ……っ！　浦添城さん！ 浦添城 二度も過ちは……繰り返さないよ！ 兜軍団 グオォォォッ！？ 古桃形兜 チィッ！！　マサカ全員射抜カレルトハ！ 浦添城 もういい加減諦めるさー。 どれだけ引き連れても、お前たちじゃ勝てないよー！ 古桃形兜 ……フフ、フハハハハハ！ 浦添城 ……何がおかしいさー。 古桃形兜 残念ダッタナ、ソッチハ囮ダ！ 浦添城 なっ――！？

盛夏の島へめんそーれ！ -結-

兜たちの強襲を、からくも退けた殿一行。
しかしそれは、巧妙に張られた罠の一つに過ぎず、
殿たちは、兜たちの本当の狙いを知ることとなる。

前半
古桃形兜 残念ダッタナ、ソッチハ囮ダ！ 浦添城 なっ――！？ 突撃式トッパイ形兜 喰ラエヤァァァッ！！ 聚楽第 きゃあぁぁ……っ！ 真田丸 しまった！　瘴気が聚楽第殿に！！ 富山城 まさか本当の狙いは、聚楽第ちゃんだったの！？ 聚楽第 くっ……わ、私としたことが……！ 古桃形兜 ハーッハッハッハッハ！　油断シタナァ、城娘ェ！ 古桃形兜 弓聖ト謳ワレタ城娘モ、二重ニ張ッタ罠ニハ手モ足モ出マイ！ 古桃形兜 オイオイ、ドウシタァ？　祭リニ浮カレルアマリ、勘ガ鈍ッタカァァァ？ 聚楽第 ……こ、この程度……うぅ……っ！ 古桃形兜 無駄ダ。イクラ貴様ノヨウナ城娘デアッテモ、コノ瘴気ニハ逆ラエマイ！ 古桃形兜 コノ時ノ為ニ、瘴気ヲ強力ニスルベク 丹念ニ練リ上ゲ続ケテキタノダカラナ！ 桃形兜 雨ノ日モ風ノ日モ雪ノ日モ、毎日毎日 密カニ頑張リ続ケテキタ甲斐ガアッタッスネ……クゥゥッ！ 古桃形兜 コレデ弓聖ノ城娘ハ、俺達ノ手ノ内ヨォォォ！ 兜軍団 ハーッハッハッハッハッハッハ！！ 聚楽第 あうっ……くっ、くぅぅ……！ 聚楽第 ……あ、侮ってもらっては……困ります……！ 柳川城 ……っ！　す、凄いです！ あれだけの瘴気を受けても、まだ抑え込もうとする力があるなんて！ 古桃形兜 チッ！　マダ抵抗スルカ、城娘ェッ！ 聚楽第 きゅ、弓聖の名は……伊達、では……ありません！ 古桃形兜 ……ナラバ、コウスルマデダ！ 聚楽第 なっ、何を……！ 聚楽第 くぅっ……うっ、うあぁ……ッ！ 殿 …………！ 真田丸 おのれ！　さらに瘴気を浴びせて、 聚楽第殿の余力を削ごうという腹積もりか！ 富山城 このままだと聚楽第ちゃんの身が持たないよ！ 浦添城 わんは……もう……、 浦添城 怒ったよーっ！！ 浦添城 聚楽第ちゃん！　わんが絶対、助けてあげるさー！
後半
富山城 やぁーっ！ 真田丸 はぁぁぁっ！ 浦添城 いっけぇぇぇっ！ 兜軍団 ――グハァァァァァ！！ 聚楽第 …………はぁ、はぁ。 聚楽第 皆さん、ありがとうございます……。 聚楽第 浦添城さんも、本当に……ありがとうございます。 浦添城 良いってことさー。 海辺ではわんを助けてくれたから、そのお礼だよー。 桃形兜 セッ、先輩ッ！　アノ城娘、逃ゲチャイマシタヨ！ 古桃形兜 チィッ！　オノレェ城娘ェッ！　一度ナラズ、二度マデモ邪魔シヤガッテ！ 富山城 それはこっちの台詞だよ。性懲りもなく現れて、 お祭りまで滅茶苦茶にしてくれちゃってさ……。 富山城 いい加減諦めてくれないかな？ 真田丸 同感です。兜たちのせいで、祭り会場が御覧の有様……。 真田丸 ――貴様ら、責任を取る準備は、できているな？ 兜軍団 ……ッ！ 柳川城 このお祭り会場は浦添城さんや首里城さんたち、 そして琉球に住む皆さんたちの努力の結晶そのもの。 柳川城 これ以上は穢させません！ 浦添城 それに、さっきわんは『怒った』って言ったよ。 浦添城 でも、まだ引き下がろうとしないなら、たっぷりメーゴーサーしてあげるさー！ 古桃形兜 ハッ！　仕置キヲ受ケルノハ俺ラダッテ？ 違ウナ。オ前ラガ俺達ニ仕置キヲサレルンダヨォォォッ！ 兜軍団 コノ祭リ会場ハ我ラノ物。我ラ以外ノ者全テ――死アルノミッ！ 柳川城 いつの間に援軍を！？ 富山城 しかも、さっきとは比べ物にならない数だ……。 真田丸 物量で勝負に出ようなど、どこまでも往生際の悪い！ 聚楽第 私たちのみで対処はできるはずですが……少々手こずりそうですね。 浦添城 うぅ……でも、やってやるさー！ 千狐 はぁ……はぁ……み、皆さんすみません！ お客さんたちの避難、無事に終わりました！ 柳川城 千狐さん、やくもさん！　お二人ともありがとうございます。 やくも それに、助っ人も呼んできただにー！ ？？？ ――おーい！　みーんなーー！ 浦添城 ……っ！？　あの声、もしかして……っ！ 首里城 みんなごめんねー！　お待たせしたさー！

盛夏の島へめんそーれ！ -絶弐-

兜たちの更なる援軍を前にして、窮地に陥る殿たち。
が、そんな一行の許へ助勢に駆け付ける者の姿あり。
今こそ彼女たちと力を合わせ、兜軍団を一掃せよ！

前半
首里城 みんなごめんねー！お待たせしたさー！ 浦添城 ちゅ、ちゅりじょーちゃーんっ！　来てくれたのー？ 首里城 うん！　でも来たのは、スイだけじゃないよー。 琉球御城 にーにぃー……じゃなかった！ 琉球御城 こくおー、みんなー！　大丈夫ー？　助けに来たよー！ 富山城 わーい！　スイちゃん姉妹だー♪　それに――。 今帰仁城 みなさーん！　遅れてしまい申し訳ありませーん！ 中城城 ここに来るまで、兜倒すのに苦労したさー。 真田丸 今帰仁城殿！　それに中城城殿まで！ 柳川城 これは……心強い援軍ですね！ 真田丸 皆さんがいれば百人力ですよ！ 富山城 ふふっ。琉球の城娘ちゃんたちと一緒に戦えるなんて嬉しいなぁ♪ 聚楽第 千狐さん、やくもさん……本当にありがとうございます。 聚楽第 お客さんたちの避難だけでなく、 琉球の城娘さんたちを呼んでくださって。 やくも えへへー。気にしなくていいだに。 千狐 私たちはただ、自分たちにできる事をしたまでですわ。 古桃形兜 クソッ！　新手カ！ 桃形兜 ド、ドウスルッスカ先輩！？ 古桃形兜 待テ、落チ着ケ。アイツラハ四体ノ助ッ人。 ダガコッチノ援軍ハ、城娘共ヨリ遥カニ上回ル数ダ。 古桃形兜 イクラ雁首揃エタトコロデ――、 聚楽第 はぁっ！ 古桃形兜 グホォォォッ！？ 桃形兜 セ、センパァァァイッ！！ 聚楽第 ――敗北するのは、あなた方です。 聚楽第 先程は、よくもやってくれましたね……。 古桃形兜 クッ……クッソォォォ……、 古桃形兜 オノレェェェェェェェッッ！！ 兜軍団 イザ、突撃ィィィッッ！！ 千狐 大群が一斉にこちらへ向かってきます！ 柳川城 皆さん！　迎撃準備を！ 真田丸 真田の底力、見せつけて差し上げましょう！ 富山城 ボクも負けてられないね。 浦添城 大丈夫。みんながいれば、どんな敵でもなんくるないさー！ 聚楽第 お殿様。恐らくこれが、最後の戦いになるかと……。 聚楽第 どうか、油断なきよう……。
後半
琉球御城 ねーねー、行くよー！ 首里城 任せてー。うなー！ 兜軍団 クゥゥ……マダマダァァァッ！！ 今帰仁城 中城城ちゃーん、今ですよー！ 中城城 流石さー、なっきー！　たぁーっ！ 兜軍団 ウガァァァッ！　……オ、オノレェェェッッ！ 聚楽第 この一撃で……仕留めます！ 兜軍団 グハァァァァァ……ッッ！！ 古桃形兜 マ、マサカ援軍ガ……全員……ヤ、ヤラレタダトォッ！？ 古桃形兜 チ、チックショオ城娘メェェェ……！　オ前ラ、撤退スルゾ！ 桃形兜 エェッ！？　リュ、琉球ノ夏休ミハドウスルンスカ！？ 古桃形兜 コレ以上ココニ固執シタトコロデ無駄ダ！ セッカクノ夏休ミヲ無為ニ過ゴスワケニハイカネェ。 古桃形兜 癪ニ障ルガ、俺達ハ別ノトコロデ夏ヲ満喫スルトシヨウ。 古桃形兜 城娘共！　今回ハオ前ラノ勝チッテコトニシテヤル！ ダガ次会ッタ時ハ覚悟シロ！　最後ニ笑ウノハ俺達ダ！ 兜軍団 ――撤退ッ！　撤退ナリッ！ 柳川城 なんとか、退けられましたね……。 真田丸 まったく……類を見ないほどにしつこい連中でした。 富山城 でもこれで、もうここに来ることはないはずだよ。 聚楽第 ようやく……夏を満喫できます。 浦添城 …………はぁ。 千狐 ど、どうしたんですか浦添城さん？ やくも もう兜さんたちはいないはずだに。 なんでそこまで浮かない顔するんだがや？ 浦添城 海辺でも邪魔されて、お祭りも滅茶苦茶にされて、ふんだりけったりさー……。 浦添城 わんは、みんなを元気にしたかったのさー……。 戦が続いて疲れてたみんなを癒したかっただけなのに……。 浦添城 余計に疲れさせちゃって、申し訳ないさー……。 富山城 …………。 富山城 まあ、これもひと夏の思い出ってことで良いんじゃない？ 真田丸 はい。海辺での一件でも申し上げましたが、 今回の兜襲来は浦添城殿の責任ではありません。 真田丸 故に、あまり気を落とさないでください。 聚楽第 ……い、色々ありましたが、もうこれで兜たちは来ないはずです。 聚楽第 ですから……これからお祭りを楽しみましょう。 聚楽第 そ、それに……。 浦添城 ……それに？ 聚楽第 今回の一件で、皆さんと仲を深められた……そんな気がします。 聚楽第 その機会をくださった浦添城さんや……、 琉球の城娘の皆さんには、感謝しております。 浦添城 じゅ、聚楽第ちゃん……富山城ちゃん……真田丸ちゃん……。 浦添城 かふーしやたさー！ 中城城 えへへ、みんなでーじ優しいさー。 首里城 ねー。こくおーたちを呼んで正解だったねー。 今帰仁城 ――では、気を取り直してお祭りを楽しんでいただきましょうか。 今帰仁城 と言っても、辺りも御覧の通りですから、 再開まで少し時間がかかるかもしれません……。 琉球御城 うーん……でもこの分だったら、明日にはできそうじゃないかなぁ？ 琉球御城 だから、こくおーたちには今日のお詫びに、 わんと村の人たちの琉球舞踊を旅籠屋で見せてあげるさー。 やくも うわぁー！　あれがもう一回見れるんがや？　楽しみだに！ 千狐 やくも、エイサーと同じくらい気に入ってたわよね。 浦添城 みんなには改めて、明日お祭りをめいっぱい楽しんでもらうさー♪ 浦添城 ……そういえば、お祭りが終わった後どうするー？ 明後日くらいには、みんなもう所領に帰るの？ 浦添城 もし時間があれば、まだまだ紹介しきれなかった 琉球の名所や名物をたっぷり案内して回りたいなーと思ったんだけど……？ 真田丸 海や祭り以外の名物ですか！？　き、気になります！ 富山城 確かに、昨日の旅籠屋の宴会くらいでしかゆっくりしてなかったからね。 もう少し心にゆとりをもって、琉球の夏を満喫したいなぁ♪ 聚楽第 そうですね。それに……来ようと思っても、 なかなか来れる距離ではありませんから……。 聚楽第 時間に猶予があるようでしたら、 で、できれば……もう少しだけでも楽しみたいです。 柳川城 確かに、せっかく琉球に来たのですから、 もう少し羽を伸ばすのもいいかもしれません。 柳川城 ……殿、如何いたしましょうか？ 殿 …………！ 浦添城 こくおー、みんな。でーじ、かふーしやたんどー！ 浦添城 じゃあ今日は、旅籠屋での宴会を楽しんでほしいさー。 わったーは明日のお祭りの準備をするから！ 浦添城 それで、お祭りが終わった次の日は、 琉球の名所や名物をいーっぱい案内してあげるさー！ 明日になれば、きっと改めて縁日を思う存分楽しませてあげられる。 それに、明後日には何を見せて楽しませてあげようか。 浦添城は殿たちを旅籠屋へと導きながら、 琉球のあれこれを脳裏に浮かべてにんまりするのだった。

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