ストーリーテキスト/異界門の絶望と希望2

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異界門の絶望と希望２ -序-

異界門が開かれ、二つの世界が繋がれる。
『超高校級』の才能を有する生徒たちが再び
此世へと招かれ、城娘との邂逅を果たす……！

前半
？？？ ねぇ……。 ？？？ 聞こえる……？ ―――― ？？？ ねぇ、大丈夫？ ……分からない。 俺は……どうしてここにいるんだ……？ ……何が起きたんだ？ まず、それを思い出さないと……。 ―――― ……『私立希望ヶ峰学園』 そこは、俺にとっては単なる学校という枠を超えた、 もっと特別な存在だった。 希望ヶ峰学園は一等地に巨大な敷地を誇る、 政府公認の超特権的な学園で……、 全国からあらゆる分野の超一流高校生を集め、 将来を担う『希望』に育て上げる事を目的としている。 『この学園を卒業できれば、人生において成功したも同然』 まさに『希望の学園』の通称通りって訳だ。 そんな、憧れの学園に入学を果たした……その日の出来事だ。 気がついたら俺は、教室の中にいた。 訳も分からず閉じ込められて……、 クラスメイトたちで言い争いになってたんだ。 そこに……あいつが現れた。 名前は確か――ウサミって言ってたか。 そいつは突然『修学旅行をやる』なんて言い出した。 次の瞬間、気づいたら俺たちは、 南国の島の浜辺にいて―― その直後……俺は、意識を失ったんだ。 ―――― ？？？ ねぇ、どうかな？ そろそろ落ち着いてきた？ ？？？ えっと……いきなりこんな事になっちゃって、 混乱する気持ちも分かるんだけどさ……。 ？？？ でも、まずは自己紹介くらいはしておかない？ 狛枝凪斗 ……よろしく、ボクは狛枝凪斗だよ。 日向創 ……日向創だ。 日向創 ……で、いったい何が起こったんだ？ いつの間にか、意識を失っていたようなんだが……。 狛枝凪斗 それがね……とんでもない事件が起きてしまったんだよ。 日向創 とんでもない……事件？ 狛枝凪斗 うん……言葉で伝えるのは少し難しいんだけど―― 狛枝凪斗 日向クンが意識を失った直後……ボクたちの前に、 巨大な黒い穴――のようなものが現れたんだ。 狛枝凪斗 それは見る見るうちに近づいて、全てを飲み込んだ。 日向創 全て？ 狛枝凪斗 ああ……全てだ。 ボクも、クラスメイトたちも、島も。 見える限りが暗闇に閉ざされた。 狛枝凪斗 その直後、意識が途切れて今に至る……、 というわけさ。 日向創 ……他のクラスメイトたちは？ 狛枝凪斗 さぁね。 目覚めた時にはもう、ボクとキミしか居なかったよ。 先に起きて、どこかへ散らばったんじゃないかな。 狛枝凪斗 まぁ、もしかしたら、 ここにはそもそも、ボクとキミしか居ない……。 なんてこともありえない話じゃないけどね。 日向創 考えたくないな。 狛枝凪斗 はは、ひどいなぁ日向クン。 一応ボク、キミが目覚めるのを待っていたんだよ？ 一人にしてしまうのは危険だと思ってね。 狛枝凪斗 少しは感謝くらいしてくれてもいいのに。 日向創 それはどうも。 日向創 ……とにかく、今は情報が欲しいな。 他のみんなもどこかに居るとしたら、早く見つけた方が―― 千狐 （ひょこっ） 狛枝凪斗 ん、あれは……？ 千狐 …………コンッ！ 千狐 （さっ！） 日向創 うわっ！　なんだ今のは！？ 狛枝凪斗 日向クンも見たよね？　可愛い狐がいたよ！ 狛枝凪斗 これは大きな発見だ！ 案外、ここはボクたちが居た世界と そう変わらないのかもしれないね！ 日向創 いや、待てよ狛枝……。 今のあれは『可愛い狐』って言って良いのか？ 狛枝凪斗 ……え？ 可愛かったと思うけど、 日向クンの好みとは違った？ 日向創 いや、そっちじゃなくて！ 今の子、耳と尻尾は狐そのものだったけど、 他は普通の女の子だっただろ！？ 狛枝凪斗 うーん……確かにあの耳と尻尾、 アクセサリーにはとても見えなかったよね。 謎は深まるばかりだ。 狛枝凪斗 あ……そうだ。 謎と言えば、他にもあったことを思い出したよ。 ……日向クンは気づいた？ 日向創 何の話だ？ 狛枝凪斗 気温や湿度……この場所の気候についてさ。 狛枝凪斗 この島に来た時は温暖な……、 正に、南の島と呼ぶに相応しい気候だった。 狛枝凪斗 でも……例の『黒い穴』に飲み込まれ、 目を覚ましてからは―― 日向創 ――確かに、気温はだいぶ下がったな。 時間帯の変化なんかじゃ、説明がつかないほどに……。 狛枝凪斗 だよね？　それで、 キミが寝ている間に考えてみたんだ。 もしこれに説明を付けるなら……ってね。 狛枝凪斗 そして……さっきの狐耳少女との遭遇は、 ボクの仮説を裏付けるものだった。 狛枝凪斗 ……漫画やアニメなんかではよくある展開だよね？ 日向創 …………。 日向創 まさか、狛枝……お前はこう言いたいのか？ 日向創 ……俺たちがまったく知らない世界に 飛ばされてしまった、とか―― ？？？ ピンポンピンポーン！　大正解っ！ 日向創 うおぉっ！　今度はなんだっ！？ モノクマ オマエラ、どうもお久しぶり！ 初めましての方は初めまして！ 希望ヶ峰学園が誇る平和の象徴、モノクマだよ！ モノクマ やっと戻ってくれたよ。 ボク、皆さんに会いたくて会いたくて……ずっと震えてました！ モノクマ そのために、 バイブレーション機能の搭載も検討されたそうです！ 満場一致で却下されましたけど！ 日向創 モノクマ……？ 誰に向かって話してるんだ、こいつ？ 狛枝凪斗 なかなか癖の強い人――いや、クマみたいだね……。 モノクマ キミたちに向かって話してるに決まってるじゃないか！ 他に誰が居るっていうんだい！ モノクマ ……とにかく安心してよ！ キミたちのことはボクが守ってあげるから！ モノクマ なにせ生徒を幸せに導くことだけが、 ボクの生きがいなんだから！ 日向創 （胡散臭いな……） モノクマ とりあえず、ボクに着いてきて！ ちゃんと言う通りにしてくれれば、 異界を巡る楽しい楽しい修学旅行が幕を開けて―― 立花山城 ――そうはさせないわ！ 柳川城 はぁぁぁぁああっ！！ モノクマ うわ、うわわわわわっ！！？ 日向創 今のは……！？ 狛枝凪斗 弓矢……に見えたね。 立花山城 お手柄だったわね……千狐。 柳川城 確か……モノクマ、と言いましたか。 まさかあの者がまた、この世界に現れていたとは……！ 殿 …………！ モノクマ えぇ、もう気づかれちゃったの……？ 嫌いなんだよなぁ、あいつら。 急に大きくなるし……ボクのこと目の敵にしてるし。 モノクマ ボクは無害なクマだって、何度も何度も言ってるのにさー。 やくも その言葉を信じる程、うちらはお人好しじゃないがや！ 観念してお縄をちょーだいするだに！
合戦中
モノクマ ほんとにひどいよね……殿も城娘も。 ボクは無力で無害な可愛いクマだって、 何度も何度も言ってるのにさー。 モノクマ ……ということで、 この想いをメロディーに乗せて伝えることにしました！ モノクマ それじゃ聞いてください……『Do♪Kuma！Kuma！』！！ 桃形兜 ワアアアアァァァァアアア！！ やくも あのクマ……もう何でもありになっとるがや……。 立花山城 ……とはいえ、おふざけと笑い飛ばすわけにはいかないわ。 あの楽器の音色が、敵軍に影響を及ぼしているみたいよ。 柳川城 可能ならばモノクマから先に退けて、 戦を優位に進めたいところですね……！ モノクマ ぐぬぬぬ……どうしてじゃまするのさー！ 新人アイドル・モノクマのサクセスストーリーが、 幕を開けようとしてたのにー！ 柳川城 これ以上、戯れに付き合うつもりはありません。 抗うのはやめて……降伏してください。 モノクマ そ、そうはいかないもんねー！ 世界中のファンたちが、 ボクのステージを待ってるんだから！ モノクマ ということで、今回のライブはお開き！ 次回をお楽しみにー！　それではさよならー！ 柳川城 あ、こらっ！？　待ちなさいっ！ 立花山城 もう姿が見えなくなってしまった……なんて逃げ足なの。 柳川城 ですが……これで、 千狐さんの予感が決定的なものとなりましたね。 千狐 はい……先刻から感じられた、気の乱れ。 それはやはり、異界門の発生を示していたのですね。 殿 …………！ 立花山城 ええ……まずは、あの少年たちから事情を聞きましょう。
後半
柳川城 初めまして……異界の方。 私は柳川城と申します。 立花山城 ……立花山城よ。 柳川城 そして……こちらは殿。 私たちがお仕えしている主君です。 殿 …………！ 千狐 千狐は千狐って言うの！ 聖なる力を宿した『神娘』の一人として、 殿たちと一緒に戦っているの！ やくも うちはやくも！　鍛冶の腕では誰にも負けんがや♪ あんたらも作ってほしいもんがあったら、 じゃんじゃかうちに依頼するだに！ 日向創 ……日向創だ。 狛枝凪斗 狛枝凪斗だよ。助けてくれてどうもありがとう。 日向創 ……で、色々聞きたいことはあるんだが、 さっき大きくなってたのは……？ 柳川城 はい、私たちは『城娘』と呼ばれる存在で……。 御城にまつわる願いを力に換えて、 『巨大化』することができるんです。 日向創 なるほど――なんて、 すぐに納得することはできそうにないな……。 ……ちょっと現実離れしすぎてる。 狛枝凪斗 はは……そうだね。 なんにしても、ボクらの知る世界じゃないってことは、 間違いないようだ……驚きだね。 日向創 さっきから思ってたけど、 言葉の割りには落ち着いてるよな、お前。 狛枝凪斗 まぁ、すでに数え切れないくらい驚いてるからね。 何が起こってもおかしくはない、とは思ってるよ。 日向創 確かに、色々起こり過ぎて麻痺しつつあるかもな。 一つ山を越えたし、 しばらくは落ち着けそうだが―― ？？？ きゃ～～～～！？ たちゅけてくだちゃいぃ、誰かぁ～～！ 狛枝凪斗 ……ははっ、言ってる傍から次の問題が起きたみたいだね？ 日向創 ……みたいだな。 殿 …………。 柳川城 ……そうですね、すぐに向かいましょう。 先程のお二人のように、 危険に晒されているのかもしれません！

異界門の絶望と希望２ -破-

叫び声を聞き、現場へと駆けつけた殿一行。
そこに横たわっていたのは人語を解する、
ウサギ……のような不思議な生物だった……。

前半
日向創 声が聞こえてきたのは……この辺りか。 狛枝凪斗 聞き覚えのある声だったけど……誰だろうね？ 日向創 さぁな。 クラスメイトか、知り合いに会えると助かるんだが―― ？？？ ううぅ……。 や～ら～れ～た～……でちゅ。 殿 …………！？ 柳川城 ――退いてください、殿！　私の後ろへ！ 立花山城 これは……ウサギかしら？ なぜか、ボロボロに傷ついてるみたいだけど……。 日向創 なぁ、狛枝。 このぬいぐるみ……どこかで……？ 狛枝凪斗 ああ……ボクも見覚えがあるよ。 修学旅行だとか、ボクたちの引率の先生だとか突然言い出した… ウサギのヌイグルミだね…。 狛枝凪斗 見た目は少し違うような気もするけど……間違いない。 日向創 もしかして……。 俺たちをこの異界に連れてきたのって、 こいつの仕業なんじゃないか……？ 狛枝凪斗 ボクも同じことを考えていたよ。 さっき襲いかかってきた白黒の奴によく似てるしね。 『モノクマ』とか言ってたっけ。 やくも もしかして、 また襲いかかってきたりするんだに？ 争い事はもう勘弁がや……。 柳川城 となると……やはり、捕らえておくべきでしょうか？ 柳川城 可愛らしいウサギさんに手荒な真似をするのは、 少々気が咎めますが……。 立花山城 （……可愛らしい？） 千狐 （……可愛らしい？） 殿 …………。 ？？？ ……ま、待ってくだちゃい。 あちしは悪いウサギじゃないでちゅ……。 やくも 喋ったがや！？ ？？？ あちしはモノクマの仲間じゃないでちゅ。 むしろ全くの逆……さっきも、 突然やってきたモノクマに襲われたところでちゅ。 ？？？ 『負けた憂さ晴らしだー』とか言って……。 殿 …………。 立花山城 私たちに負けた後、八つ当たりを食らったみたいね……。 ？？？ 大事なマジカルステッキを奪われて、 妙チクリンなピンクと白のツートンカラーにされた上に、 オムツまで履かされたでちゅ……。 モノミ おまけに名前まで変えられて……。 『モノミ』なんて名前、あちしは嫌でちゅ。 モノミ うう、ううぅ……。 柳川城 ……なんだか、急に可哀想に思えてきました。 大丈夫ですよ、モノミさん……私たちは貴方の味方ですから……。 （なでなでなで） モノミ ……ありがとでちゅ。 うぅ……優しさが傷ついた身体に染みるでちゅ……。 モノミ ……恥ずかしながら、モノクマには惨敗してしまったでちゅ。 でも……生徒の無事だけは、どうにか守り抜いたでちゅ。 あちしはミナサンの先生でちゅから……。 狛枝凪斗 生徒の無事……？ 日向創 それって……俺たちのクラスメイトなんじゃないか？ ？？？ うん……。 それは多分、私のことだと……思うよ？ やくも うぉわっ！　どっから出てきたがや！？ ？？？ ああ、えーっと……まずは自己紹介だよね。 七海千秋 七海千秋です。『超高校級のゲーマー』でーす。 趣味はゲームでーす。オールジャンルでいけまーす。 殿 …………。 七海千秋 まだちゃんと理解できてないけど、 どっかの世界に飛ばされちゃったんだよね、私たち？ 七海千秋 で……戦いっぽいのが、 あちこちで起きたりとかしてる世界観……みたいな。 七海千秋 身体を動かすのは自信ないけど……、 後方支援くらいならなんとか手伝えそうかな。 シミュレーションゲームなら、そこそこ経験はあるし。 殿 …………。 殿 …………？ やくも 千狐……うち、あの子が何をゆーとるか、 全然分からんかったんやけど……？ 千狐 安心して……千狐もさっぱりだったの。 狛枝凪斗 あはは……七海さんの言葉は、 こっちの世界の人たちには、 馴染みの無いものだったみたいだね……。 狛枝凪斗 ざっくり説明すると、彼女はゲームの達人なんだ。 僕らの世界では『超高校級のゲーマー』なんて呼ばれてる。 狛枝凪斗 ゲームっていうのは、どう説明すれば良いか……。 直訳すると……遊戯っていう意味なんだけど。 将棋とか蹴鞠……って言ったら伝わるかな？ 千狐 コンッ！　将棋に蹴鞠、どっちもよく知ってるの！ 七海千秋 へぇ……。 アナログゲームはこっちにもあるんだ。 面白いね。 やくも それから、 ちょーこーこーきゅー……ってのは、なんのことだに？ 前にどこかで聞いたような気がするんやけど……？ 狛枝凪斗 ボクたちの世界では、突出した才能を持った高校生は、 そう呼ばれることがあるんだよ。 狛枝凪斗 その『超高校級』の才能を持った生徒たちだけが、 入学を認められる学校……それが『私立　希望ヶ峰学園』。 どうだい、素晴らしいだろう？ やくも おお、希望ヶ峰学園っ！！　そっちは知っとるがや！ 柳川城 モノクマが姿を現した時点で、 察してはいましたが……やはり、そうだったのですね。 狛枝凪斗 ……そうか、 学園のことはもう知っていたんだね。 話が早くて助かるよ。 千狐 ……では、狛枝さんや日向さんも、 突出した才能を持っている……ということですか？ 立花山城 ふぅん……一見すると、 そこまで特別な力を持っているようには見えないけど……？ 狛枝凪斗 あはは、そう感じてしまうのも無理はないね。 狛枝凪斗 なにせボクが持つ才能は『幸運』……。 能力とは無関係に全国の生徒から、 無作為に選ばれた一人……それだけの存在なんだ。 やくも ほぇ～……ということはつまり、 すっごくすっごく運が良い……だけだに？ 狛枝凪斗 ……ってことになるね……あはは。 立花山城 それじゃ……そっちの日向くんって言ったかしら。 貴方はどんな才能を持っているの？ 狛枝凪斗 ああ……そういえば 日向クンの才能をまだ聞いてなかったね。 日向創 確かに、まだ名前くらいしか教えてなかったな。 それじゃ、改めて伝えておこうか。 日向創 ええと……俺の才能、は……。 日向創 ……俺は……俺、は……？ 七海千秋 …………。 七海千秋 ……どうしたの、日向くん？ 日向創 なぜだろう……上手く思い出せないんだ。 覚えていなくちゃいけないことのはずなのに……。 七海千秋 …………。 柳川城 ――そうです。 モノミさんなら、何かご存知なのではありませんか？ 立花山城 そうね……一応、先生を名乗っていたし―― モノクマ ――おら、おらおらぁ！ お兄ちゃんの遊び相手になるんだよぉっ！ モノミ や、やめてくだちゃいぃ～……。 あんたなんかお兄ちゃんじゃないでちゅ……。 モノミ それに、水に入ったら沈んでしまいまちゅよぉ……。 モノクマ それなら大丈夫！ お兄ちゃんが浮き輪を貸してあげるよ！ モノクマ モ……モノミにだけ……特別なんだからねっ。 モノミ ぜ、全然嬉しくないんでちゅけど……。 モノクマ そうと決まれば……ほら！ お兄ちゃんと一緒に海水浴に出発するよー！ モノミ あーーーーーーれぇーーーーー……。 殿 …………。 立花山城 ……どうするの。殿？ 柳川城 あのやり取りを見るに……モノクマの仲間ではないようです。 それに……重要な情報を持っている可能性も考えられます。 柳川城 あと、すっごく可愛らしいですし……。（ぼそり） 殿 …………。 柳川城 ですから……殿。 モノミさんのことを、助けてさしあげては……？ 殿 …………！ 柳川城 ……っ！　ありがとうございます！ それでは、すぐにモノクマの後を追いましょう！
合戦中
モノクマ ふふーんだ！ リゾート気分のボクを止めることは、 誰にもできないもんね！ モノクマ ヒトデだって山ほど用意してるんだ……。 ぬるぬるだぞ……星形だぞ……！ 立花山城 ……よく分からないけど、やる気は充分みたいね。 柳川城 あの浮き輪……。 水際からの侵攻を目論んでいるようです。 敵の動きには、注意を払いましょう……！ モノクマ この……このぉっ！ ボクのっ、修学旅行はっ、誰にも邪魔はっ――あれ？ モノクマ …………。 モノクマ む～……何度も何度もボクの邪魔をして！ ボクはただ、オマエラを絶望の底に突き落としたいだけなのに……！ 柳川城 いや、だからこうして相手をしているのですが……。 モノクマ こうなったら奥の手だ……。 後悔したって知らないもんね……覚えてろー！ 殿 …………。 立花山城 退却していったわね。 ……といっても、すぐにまた戻ってきそうだけど。 やくも うぅ……ヒトデまみれになっちゃったがや。 ぬるぬるで、気持ち悪いけど……、 ちょっと癖になりそうな、妙な感じだにぃ……。 千狐 やくも……？ 柳川城 モノミさんはどこでしょう。 まさか、沈んでたりはしていないですよね……？
後半
モノミ はぁ、はぁ……。 ありがとうございまちゅ……助かりまちたぁ。 柳川城 無事で良かったです……モノミさん。 モノミ 先程の戦い、見ていまちた。 ミナサン……すっごく強いんでちゅね。 モノミ あの……もしよろしければ、 あちしたちも連れていってほしいんでちゅけど……。 殿 …………！ 柳川城 もちろんです。私たちが力になりますよ！ 異界から転移したばかりで、頼れるものもないでしょうし……、 ここは、皆で力を合わせて乗り切りましょう！ モノミ ありがとうでちゅ……。 それじゃ申し訳ないけど、よろしくお願いするでちゅ。 柳川城 はい、よろしくお願いするでちゅ！ 柳川城 ――あ。 殿 …………。 日向創 この調子で、 クラスメイトと合流できると嬉しいんだけどな。 狛枝凪斗 うーん、どうだろう。 良くも悪くも個性的な人が集まってるからね。 大方、今もどこかで問題を起こしてたり―― ？？？ きゃああぁぁぁあああああっ！？ ちょっと誰か、助けなさいよぉぉぉおおお！！ 殿 …………！ 狛枝凪斗 ――ほらね？ 日向創 ほらね、じゃないだろ！ 日向創 今の声、ただ事じゃない様子だった……すぐに向かうぞ！ 立て続けにすまないが……力を貸してくれ、殿！

異界門の絶望と希望２ -急-

再び叫び声を聞きつけ、発生源へと向かった一行。
そこには鳥の姿をした巨大な化け物と、
追い回される『超高校級』の生徒の姿が……。

前半
日向創 声が聞こえたのは……こっちの方か？ ？？？ あっちいけって言ってんでしょ、 こんの鳥頭ー！ 殿 …………！？ ？？？ ―――― 西園寺日寄子 餌にするならモノクマにしろってばー！ あっちの方に山ほどいるから、 一匹くらい持って返っても怒られないって！ 西園寺日寄子 ――っていうか、わたしを食べたりなんかしたら、 日本舞踊界にとって、多大な損失になるんだからね！ 分かってんのか、こらー！ 罪木蜜柑 さ、西園寺さんっ、あまり刺激しちゃだめですよぉ！ 小泉真昼 でもこのままじゃ追いつかれちゃう……どうにかしなきゃ！ 西園寺日寄子 こらー、罪木ぃー！ ボサッと突っ立ってないで助けなさいよぉー！ 罪木蜜柑 そうは言われましても、戦うなんて私にはできないですぅ！ け、怪我の手当てなら、得意なんですけど…。 西園寺日寄子 ざっけんなー！ こんな化け物から一発でももらったら、 手当てなんてする間もなくオダブツだろうがー！ 罪木蜜柑 ご、ごめんなさぁい！ そういうことが言いたかったわけではないんですぅ！ 小泉真昼 ど、どうしよう……。 カメラのフラッシュで目眩ましにならないかな？ 小泉真昼 （パシャッ、パシャッ） 小泉真昼 …………。 小泉真昼 日寄子ちゃん、逃げてぇーーー！　 西園寺日寄子 諦めないでよ、小泉おねぇ！？ このままだとほんとに食べられちゃうってぇぇええええ！！ ？？？ ―――― 殿 …………。 千狐 ……彼女たちも、 日向さんのお友達なのでしょうか？ 日向創 ああ、間違いない……。 狛枝凪斗 あっちで猛然と走っているのは、 『超高校級の日本舞踊家』の西園寺日寄子さんだね。 やくも ほー、舞踊……踊りの達人さんだに……？ モノミ あのぉ……のんびりしてて良いんでちょうか？ 立花山城 ……そうね。 あの着物姿の子、このままだと餌にされちゃうわよ？ 西園寺日寄子 うわぁぁぁぁぁあああん！！ 誰か助けてぇぇぇぇえええええ！！ 殿 …………。 柳川城 ……すぐに動き出したいところですが、 周囲には他にも敵の姿が見えます。 七海千秋 ……守りが手薄になって、 怪我人がいっぱい出ちゃったら本末転倒だもんね。 七海千秋 見切り発車は禁物……両軍の戦力を比較して、 適切な戦略を練るべき……だと思うよ。 日向創 おお……頼りになるな、七海。 七海千秋 ふふ……シミュレーションゲームでは常識ですぞ。 やくも げ、げーむ……？ 狛枝凪斗 確かに、その通りだ。 あれらの侵攻を食い止めながらあの子を救出するのには、 難儀しそうだ……頭数が欲しいね。 モノミ こんな時……。 あちしのマジカルステッキがあれば、 全て一掃できるんでちゅけど……。 ？？？ ――いいえ。 その必要はありませんよ、モノミさん。 殿 …………？ ？？？ お困りのようですね、お殿様？ ？？？ それでしたら、私にお任せください。 不届き者たちが生徒やお殿様に触れないよう、 私が守り抜いてみせますから♪ 日向創 …………！？ 柳川城 あ、貴方は……？ ？？？ ふふ……嫌ですね、皆さん。 私のことを忘れてしまったんですか？ ？？？ ですが……無理はないかもしれません。 私、皆さんとお別れしてから、 少し雰囲気が変わりましたから。 ？？？ それでも、私が目指す未来に変わりはありません。 生徒たちを守り、世の希望として送り出す。 そのために、私という城娘は存在しているのですから……。 やくも ……だにっ。 あんたはまさか……まさか――！？ 千狐 ――希望ヶ峰学園さん、ですか……！？ ？？？ そうですよ、千狐さん。 またお会いできて嬉しいです♪ 日向創 き、希望ヶ峰学園……！？ お前もあの子たちと同じ……『城娘』だっていうのか……？ 狛枝凪斗 彼女らが御城にまつわる願いを起源にしているように、 学園にまつわる願いが、彼女を形作っている……って捉えれば良いのかな？ 七海千秋 希望ヶ峰学園……『さん』？ んー……『ちゃん』の方が良いかな……？ モノミ 生徒たちを守ると言っていまちたが……信じても良いのでちゅか？ ？？？ ええ、もちろんです！ 私はそのために馳せ参じたのですから。 ？？？ ……と。再会を喜んでいる場合ではありませんでしたね。 生徒たちを保護するために、動かなければ……！
合戦中
千狐 逃げ回っていたあの女の子は、 どこに行ってしまったのでしょうか……？ 七海千秋 ……待って。 確かにあの子のことも心配だけど、 その前に目の前の相手をどうにかしなきゃ。 千狐 あ、あの大きな鳥……千狐たちの方を、 じーっと見つめているような気がするのですが……？ 立花山城 次の標的として、私たちに狙いをつけたみたいね。 ぐずぐずしてると餌にされてしまうわ。 やくも う、うちは食べても美味しくないがや！？ 千狐の方が、味も舌触りも絶対良いだにー！ 千狐 ――コンッ！？　そんなことないの！ いっつもつまみ食いばかりしてるやくもの方が、 美味しいに決まってるのー！ [絶望]希望ヶ峰学園 ふふっ、相変わらず賑やかな人たちですね。 これから戦が始まるというのに。 [絶望]希望ヶ峰学園 さて……私はお殿様のお傍に控え、 侵攻する敵の対処に尽力しましょう。 ご心配には及びません……全て私が食い止めてみせます。 殿 …………！ 千狐 はぁ、はぁ……危なかったです……。 本当に餌にされてしまうところだったの……！ やくも はひぃ、はひぃ……。 くちばしが、髪の毛先をかすめてったがや……！ 立花山城 ……さて。敵を退けたことだし、 お次はもう一つの問題について、話さなくちゃね。 柳川城 ……はい。 『希望ヶ峰学園』を名乗ったあの城娘の、 正体を確かめなければ……。 [絶望]希望ヶ峰学園 そんなに怖い顔をしないでください、お二人とも。 [絶望]希望ヶ峰学園 ご挨拶ならちゃんといたします。 私、お殿様と会うのを心待ちにしていたのですから♪ 殿 …………。
後半
？？？ ……改めまして、希望ヶ峰学園です。 よろしくお願いしますね、皆さん♪ やくも にしても、随分様子が変わっただに……。 とても同じ城娘とは思えんがや。 ？？？ 髪色と服装を、少しいじっただけですよ♪ 似合っていると評判なんです。 立花山城 （……ふぅん） 立花山城 ……どうなの？　柳川城、殿？ 私はかつての『希望ヶ峰学園』とやらを知らないのだけど……。 彼女のことは、信用しても良いのかしら。 柳川城 そう、ですね……。 柳川城 あまりに雰囲気が変わっていたので驚きましたが、 信用しても良い……かもしれません。 先の戦いでも、力を貸してくださいましたから……。 立花山城 ……貴方は？ 殿 …………。 殿 …………！ 立花山城 ふ……愚問だったわね。 貴方ならそう答えると思っていたわ。 千狐 またお会いできて嬉しいの、希望ヶ峰学園さん！ やくも 千狐の奴、希望ヶ峰学園が消えちゃった時には、 涙を流して悲しんでたんだにー！ ？？？ ……まぁ、そうだったんですか？ 千狐 ――コンッ！　それは言わない約束なのー！ 七海千秋 …………。 七海千秋 ふーん……なるほどね。 私たちの世界とは色々違ってるんだ。 ルールとか設定とか……難易度とか。 狛枝凪斗 願いが形を得て、希望ヶ峰学園が『城娘』として顕現する……。 七海さんの言葉を借りるなら、 それがこの世界の『ルール』ってことだね。 日向創 …………。 日向創 （希望ヶ峰学園……あの学園が顕現した城娘……） モノミ 大丈夫でちゅか……日向くん？ ？？？ ……ふふ。 私の顔に何か付いていますか？ 日向創 ……いや、なんでもない。 予想外の連続で、パニックになってしまっただけだ。 気にしないでくれ……。 立花山城 （……まぁ、しばらくは警戒を続けましょう。 　それに、問題はまだ残っているし――） 小泉真昼 ――ちょっと、そこのアンタ！ 殿 …………？ 小泉真昼 いったい何が狙いなのよ！ アタシたちを助けて、どうするつもり？ ま、どうせくだらないことを考えてるんでしょうけど！ 殿 …………。 小泉真昼 なに黙ってんのよ？ なんとか言いなさいよ！　この子たちの主なんでしょ！ 小泉真昼 それとも自分は後ろに隠れてるだけ？ お飾りの殿様ってわけ？　ダッサイ男ね！ 殿 …………！？（ぐさっ） 殿 …………。（しょぼん） 立花山城 ……ふふっ。言われ放題じゃない、貴方。 柳川城 ……ぁ、大丈夫ですよ、殿。 私たちはそんなこと思ってませんから。 ……ですよね、立花山城さん？ 立花山城 ……ふふ、どうでしょうね？ 柳川城 立花山城さんっ！ 立花山城 どうせ貴方のことだし、 『しょんぼりしてる殿も、ちょっと可愛いです……』 とか思ってるんじゃないの？ 殿 …………？ 柳川城 お、思ってませんよ！？ これっぽっちも思ってませんから！ 柳川城 ……とにかく！ あの子はきっと怖がっているだけです。 ちゃんと事情を話せば、分かってくれると思いますから……！ ――――そして。 小泉真昼 ここはアタシたちが生まれ育ってきた世界とは 全く別の世界……だなんて、そんな……。 罪木蜜柑 それから、えっと……。 兜さんっていう悪者から、 世界を守るために戦う『城娘』……。 罪木蜜柑 私たちを守ってくれた柳川城さんや、 立花山城たちも、城娘さん……なんですよね？ 小泉真昼 それじゃ……純粋な善意で、 アタシたちを助けてくれた……ってこと？ 狛枝凪斗 ああ、そう思ってもらって大丈夫みたいだよ。 ボクと日向クンもこの通り、手厚く守ってもらってるからね。 狛枝凪斗 だから……いい加減、 警戒を解いてくれないかな、…小泉さん？ 小泉真昼 ……分かったよ。 小泉真昼 ……助けてくれてありがとう。 アンタたちが居なかったら……アタシたち、 きっと大変なことになってたと思う。 小泉真昼 それから……最初は言い過ぎちゃった。 ……ごめん。 殿 …………！ 罪木蜜柑 改めまして…、罪木蜜柑と申しますぅ。 恐れ多いのですが『超高校級の保健委員』なんて 呼んでくれる人もいて…、 罪木蜜柑 怪我や病気の治療なら、 力になれると思いますので……優しくしてください。 罪木蜜柑 た、助けてくれてありがとうございました。 これから何卒、よろしくお願いしますぅ……。 小泉真昼 ちょっと……どうして地面に跪いてるの、蜜柑ちゃん？ 罪木蜜柑 ぁう……すみませぇん！ 土下座くらいはしておこうかと思ったんですけど、 見苦しいだけですよね……余計なお世話ですよね……！ 殿 …………。 立花山城 個性的な子ばっかりね……貴方の言っていた通り。 狛枝凪斗 はは……返す言葉も無いよ……。 日向創 これで一件落着――と言いたいところだが、 一人、足りないよな？ 殿 …………！ 七海千秋 うん……西園寺さんの姿が見えないね……。 やくも でっかい鳥に追っかけられとった子だに！ 千狐 逃げ回っているうちに、 迷子になってしまったのかもしれません……。 一度、探しにいってみましょうか。

異界門の絶望と希望２ -絶壱-

逃げ回り姿を消した少女を追う殿一行。
ようやく彼女を見つけるが、そこには剣呑な空気
を漂わせる新たな生徒たちの姿が……。

前半
西園寺日寄子 うわぁぁぁぁあああああん！ だーれーかー！　助けてよぉぉぉおおお！ 立花山城 ……あっちに居るみたいね。 モノミ 探しやすくて助かるでちゅ……。 ―――― 西園寺日寄子 ぐすっ……ぇぐっ……うぅ……！ 辺古山ペコ 泥だらけじゃないか……。 確かお前の名は、西園寺――だったか？ ソニア・ネヴァーマインド どうしてこんなことに……。 誘拐犯にでも追われていたのでしょうか？ 澪田唯吹 ただ事じゃねー感じっすね。 大事件の香りがするっす！　香りまくりっす！ 辺古山ペコ 頼む……話してくれないか、西園寺。 今の私たちは、何より情報が欲しいんだ。 ソニア・ネヴァーマインド ……そうですわね。 西園寺さんを襲うような輩がいるなら、尚更です。 西園寺日寄子 ううぅ、うぅ……ぐしゅっ……。 西園寺日寄子 あいつらが、あいつらがぁ……！ わたしのことをぉ……！ 澪田唯吹 ……『あいつら』？ ってのは、誰のことっすか？ 千狐 ――声の主はこちらです、皆さん！ ソニア・ネヴァーマインド …………っ！？ 千狐 間違いありません！ 千狐は耳も結構良いってことを、 ここであぴーるするの！ 日向創 あんなに大きい声を出してたら、 誰でも聞こえると思うんだが……。 辺古山ペコ ……なるほど。 奴らのことか。 辺古山ペコ 澪田、ソニア。 ……覚悟は良いな？ 澪田唯吹 ――え、えぇっ！？ 覚悟って何のことっすか！？ ソニア・ネヴァーマインド ……良いでしょう、わたくしが許可します！ 澪田さん、辺古山さん、やっておしまいっ！ ―――― 辺古山ペコ …………。 殿 …………。 罪木蜜柑 ぅゆ……なんだか空気が重たいですぅ……。 小泉真昼 殿や城娘ちゃんたちのこと、警戒してるみたいだね……。 柳川城 ……気を引き締めてください、皆さん。 立花山城 ……『超高校級』って言ってたかしら。 特別な才能を備えている、というだけのことはあるわね。 柳川城 ……特に、竹刀を構えたあの少女。 彼女は武の心得があるようです。 ？？？ ……仰る通りです。 彼女……辺古山ペコさんは『超高校級の剣道家』です。 一瞬でも隙を見せれば、無事では済まないでしょう。 モノミ えっ、えぇえっ！？ 話し合いでどうにかならないんでちゅか！？ 日向創 俺たちから説得してみたら、どうにかならないか？ 顔くらいは覚えているはずだし……。 立花山城 仮にそれが成功したとても、あまり状況に大差はないわね。 柳川城 ……そうですね。陣営が分かれてしまえば、 私たちの手で生徒たちを守ることが、 叶わなくなってしまいますから。 狛枝凪斗 ……どの道、言葉が届くまでの間は、 彼女たちの攻めに耐えなければならない……、 ということだね。 柳川城 周囲にはモノクマの手先も居ます。 それらに応じながら繰り返し、 こちらに戦意が無いことを伝えるしかありません……！ 立花山城 準備は良いわね……殿？
合戦中
ソニア・ネヴァーマインド 『やっておしまい』と勢いよく言った手前、 恐縮なのですが……間違いないのですか、辺古山さん？ ソニア・ネヴァーマインド あちらの可愛らしいお嬢さんたちが、 わたくしたちに危害を加えようとしているだなんて……。 辺古山ペコ 予想だにしない出来事が、すでに幾度も重なっている。 今は最悪の事態を想定するべきだ。 辺古山ペコ 一つ断言できるのは……、 あの娘たちが相当な手練れであるということだ。 足運びや息遣いからして、只者ではない。 辺古山ペコ 数の上では圧倒的に不利……となれば、 ここは彼女らに守られた主へと斬り込み、短期決戦に持ち込むか―― [絶望]希望ヶ峰学園 ……やはり、衝突は避けられないようですね。 立花山城 迫り来る敵と……そこに混ざった生徒たち。 それら全てを退けねばならないとはね……。 柳川城 困難な戦となりそうですね……。 気をつけて参りましょう、殿。 ソニア・ネヴァーマインド 辺古山さん、澪田さんっ……！ 辺古山ペコ く……体力が、もう……！ 柳川城 生徒たちは全員無事のようですね。 ……安心しました。 狛枝凪斗 まさか、本当にやってのけてしまうなんてね。 殿にも城娘たちにも、驚かされるばかりだよ。 狛枝凪斗 もしかしたらキミたちも、 何か特別な才能を持っているのかもしれないね？ ふふ、ふふふ……。 立花山城 鎮圧には成功したけど……本番はここからね。 信用してもらえるかしら……。
後半
立花山城 だから……何度も言ってるじゃない。 私たちは敵じゃないんだってば。 柳川城 ……まだ、信用してもらうことはできませんか？ 澪田唯吹 ど、どうするっすか……ペコっち、ソニアっち……？ 辺古山ペコ ……確かにここまで、 私たちに害をなすような素振りは見られなかった。 だが、しかし……。 ソニア・ネヴァーマインド わたくしたちだって、信じられるものなら信じたいですわ。 ……ですが、西園寺さんの件はどう説明をつけるのです？ 澪田唯吹 ――あ、そーだったっす！ 日寄子ちゃんが泣きながら言ってたっすよ！？ 『あいつらが』って、何度も何度も！ 澪田唯吹 っすよね、日寄子ちゃん！ 西園寺日寄子 うぅ、ぅ……あいつらが、あいつらがぁ……。 西園寺日寄子 あいつらが――助けてくれたの。 辺古山ペコ ……え？ 澪田唯吹 そーっすか！　助けてくれたんっすね♪ 親切な人に出会えた唯吹たちはラッキーっす！ 澪田唯吹 ――じゃないっすー！ そういうことだったら、もっと早く言うっすー！ お陰で、切った張ったの勘違いバトルが発生しちゃったっす！ 殿 …………。 立花山城 はぁ……。 どうせこんなオチだろうとは思ってたけど。 七海千秋 むにゃ……ん？ もう終わった？ ―――― 辺古山ペコ ……すまない。 危うく傷つけてしまうところだった。 もっと早く、殿たちの言葉を信じられれば良かったのだが……。 澪田唯吹 ……日寄子ちゃんには反省してほしいっす。 西園寺日寄子 ――はぁ！？　なんでよ！ わたしは無我夢中で逃げ回ってただけなんだってば！ あのでっかい鳥の化け物から！ ソニア・ネヴァーマインド 女の子が急に大きくなるだなんて、 不思議な世界もあったものですね。 あっと驚くタメゴロー、というやつですわ。 ソニア・ネヴァーマインド ……改めまして、ソニア・ネヴァーマインドと申します。 『超高校級の王女』などと呼ぶ方もいますが、 この肩書はお気になさらず。 ソニア・ネヴァーマインド ……苦しゅうない、面をあげい！ 殿 …………。 澪田唯吹 澪田唯吹でーす！『超高校級の軽音楽部』なんて呼ばれてたり！ よく分かんないっすけど、 助けてくれて感謝っす！ 辺古山ペコ 辺古山ペコ……『超高校級の剣道家』だ。 世話を掛けるが、よろしく頼む。 日向創 誤解も解けたし、 ひとまずこれで一件落着……か。 狛枝凪斗 はぐれていたクラスメイトたちも、徐々に揃ってきたね。 殿 …………！ ？？？ ふふ……ふふふふ……。 ？？？ 事は順調に進んでいるようですね……お殿様？ 殿 …………！ ？？？ ふふっ……素晴らしいこと、この上ないです。 貴方たちを信じた私の判断は 間違っていなかったようですね……♪ ？？？ 本当に順調です……順調すぎて、順調すぎて―― ？？？ ――絶望してしまいそうです。 七海千秋 ――っ！？ 七海千秋 日向くん、モノミっ！！ どんっ！ モノミ なななっ、なんでちゅか～～っ！？ 日向創 うわっ……七海っ！？ ？？？ じっとしていてくださいね、皆さん。 もし当たったら、痛いじゃ済みませんから♪ 殿 …………！？ 柳川城 ――希望ヶ峰学園さんから放たれたものが、 生徒たちを囲うように……！？ 辺古山ペコ ――こ、これは……バリケードか！？ 澪田唯吹 み、身動きがとれないっす！ どういうカラクリっすか～～！？ 小泉真昼 こ、今度は何が起きるのっ！？ ソニア・ネヴァーマインド 今度こそ、本格的に誘拐されてしまいそうですわ……。 西園寺日寄子 今だ、罪木！！　全てを蹴散らせ！ 罪木蜜柑 ふぇえっ！？　無茶言わないでくださいぃ～！ 日向創 ――み、みんなっ！ 何をするんだ……希望ヶ峰学園っ！ 千狐 ――日向さん、こちらへっ！ 七海千秋 だめだよ日向くん。 キミまで巻き込まれちゃう……。 だから、今は堪えて……！ 日向創 く、くそ……！ ？？？ あら、何人か逃しましたか？ まぁ、良いでしょう……大した影響はありません。 千狐 皆さん、退いてください！ 危険ですっ！ ？？？ ああ……ようやく揃ったのですね。 私が守るべき才能が……♪ ？？？ 手伝ってくださったこと、 心より感謝いたします……お殿様♪ これで私も、自分の役目を全うすることができそうです♪ 千狐 千狐たちを騙していたのですか、希望ヶ峰学園さんっ！？ 柳川城 いえ……。 今や彼女が『希望ヶ峰学園』かどうかも怪しいです……！ ？？？ いえいえ、私は嘘なんか言ってませんよ？ 希望ヶ峰学園が城娘として顕現を果たした姿。 それが私です。 やくも だったら、どうしてそんなことをするがや！ 生徒たちを離すだにー！ ？？？ ……『だったら、どうしてそんなことを』？ あはっ♪　絶望的な単細胞ですね、貴方たち。 ？？？ 私が希望ヶ峰学園だったら、 希望に溢れた城娘じゃなきゃいけない。 そういうことかしら？ 殿 …………。 ？？？ 貴方たちが愚かなお人好しで……助かりました。 [絶望]希望ヶ峰学園 もう少し頭を使えば、気づけたかもしれないのに。 希望ヶ峰学園という場所と深い縁を持つ『絶望』に。 [絶望]希望ヶ峰学園 私に絶望を教えてくれた……あの子の存在に♪ [絶望]希望ヶ峰学園 ふふ、ふふふふっ……♪ 殿 …………。 [絶望]希望ヶ峰学園 なんていうか……絶望的に腹立たしいですよね。 [絶望]希望ヶ峰学園 希望に溢れた感じとか、 貴方たちの勝利で、全てが解決してる感じとか。 まるで『誰もが希望を望んでいる』って勘違いしてる感じとか。 [絶望]希望ヶ峰学園 見てるだけで胸の奥が、 こう……ムカムカムカムカしてくるんですよ。 殿 …………。 立花山城 ……貴方の目的はなんなの？ [絶望]希望ヶ峰学園 希望に憧れる単細胞どもが絶望することなら、なんでも。 [絶望]希望ヶ峰学園 さて……この子たちは貰っていきます。 私の力があれば、御することは難しくないでしょう。 日向創 ――ま、待てっ！ [絶望]希望ヶ峰学園 ……ええ、待っていますとも。 逃げたりはしませんから、 しっかりと準備を整えた上でお越しください♪ [絶望]希望ヶ峰学園 私を絶望させてくれるような、 最高の結末を期待していますよ♪ [絶望]希望ヶ峰学園 ふふ、ふふふふ……♪ 殿 …………。 モノミ 行ってしまったでちゅ……。 やくも つ、つまり……どういうことだに？ やくも あいつは本当に希望ヶ峰学園なんだに？ ……だったら、どうしてそんなことをするがや！？ 誰か説明してほしいがやー！ 千狐 千狐もちんぷんかんぷんなの……。 立花山城 ……希望ヶ峰学園の願いが、 貴方たちが知るものとは『別の形』で顕現を果たした、 というところかしら……おそらく。 七海千秋 きっとあの子は、この世界に絶望を振りまくつもりなんだ。 ……放っておいたら、大変なことになっちゃう。 日向創 それに……クラスのみんなを助けないと……！ 柳川城 彼女の企みを見過ごすわけにはいきません。 準備を万全に整えた上で、 彼女の後を追いましょう……殿！ 殿 …………！

異界門の絶望と希望２ -離-

生徒たちを連れ去り、姿を消した希望ヶ峰学園。
その後を追って辿り着いたのは……見覚えの無い
建物が立ち並ぶ、賑やかな島だった……。

前半
柳川城 ……希望ヶ峰学園さんの居所は、 こちらで間違いないのですね、モノミさん？ モノミ はいっ！　ビンビン感じるでちゅ！ 学園さんや、モノクマの気配も！ 七海千秋 ……お？ 島が見えてきたけど、あれのことかな。 やくも 島って……。 あんなところに島なんてあったがや？ 七海千秋 待ってる、とは言っていたけど……。 まさか海の先に居るとはね。 柳川城 異界門を通じて、 島ごと転移してきたということでしょうか……？ 立花山城 此度の一件にも、 彼女が関わっていることは間違いないと思うけど、 途轍も無い規模ね……。 殿 …………。 千狐 九尾……！ ―――― 日向創 これは……遊園地か……？ やくも お、おぉ……おおぉ……！？ やくも い、いったい……なんなんだに……！？ この楽しい感じは……賑やかではっぴーな感じは！？ やくも この風景を見ているだけで、 自然と心が……沸き立ってしまうがや……！ 千狐 ……あ、ちょっとやくも？ どこへ行くの……待ちなさい！ あんまり離れると危険なの！ やくも よー分からんけど、大丈夫だに！ うちの直感がそう言っとるがや！ やくも こんなに明るくて楽しそうな場所が、 危ない訳なんて―― やくも ぎゃーーーーーー！？ 殿 …………。 柳川城 まぁ……そうなりますよね。 立花山城 言ってるそばから……もう。 一度くらい痛い目を見なきゃ分からないのかしら……？ 千狐 もう数え切れないほど、 見ているはずなのですが……ごめんなさいなの。 ―――― やくも ううぅ……ばたんきゅーだに……。 千狐 どうしてしまったのかしら、やくも……？ 日向創 ここに足を踏み入れた途端に……。 まさか、辺りに毒でも漂っているのか――ぅぐっ！？ （――どさっ） 殿 …………！？ 七海千秋 ……日向くん？ モノミ ど、どうちたのでちゅか？ ……日向くんも具合が悪くなっちゃったでちゅか？ 立花山城 これは、まさか……瘴気！？ 千狐 いえ、兜が扱う瘴気とは違いますが、 何者かの悪しき念が周囲に漂っているみたいなの……！ 柳川城 希望ヶ峰学園さんが発していた力に、 近いものを感じます……！ 立花山城 あの城娘……。 『絶望』って言葉をやたらと強調してたわよね。 それが彼に、良からぬ影響を与えているのかしら。 千狐 気をしっかり持ってください……日向さん！ 日向創 ここは……どこだ……？ 暗くて……静かで……寂しくて……。 日向創 ……いったい、なんなんだよ。 いきなり訳の分からない事に巻き込まれて、 自分が何者なのかも、未だに分からない。 日向創 意味わかんねーよ……。 こんな俺が頑張ったところで、 何が待っているって言うんだよ……。 ？？？ ――くん……日向くん。 日向創 …………？ 誰だ……この声は……？ 七海千秋 しっかりしろ、日向創！ 日向創 ――七海。 七海千秋 日向くんなら大丈夫。 絶望なんかに負けたりしないよ。 七海千秋 ほら、『やればなんとかなる』ってやつだよ。 日向創 どうしてそんなことが言えるんだよ。 どうして…俺のことを信じられるんだよ！？ 七海千秋 信じてるんじゃなくて……知ってるんだよ。 七海千秋 日向くんならできる……乗り越えられる。 どんな未来だって、創っていける。 七海千秋 だから……ほら、立ち上がって……！ 日向創 う、うぅ……。 モノミ ――日向くんが意識を取り戻したでちゅ！！ 七海千秋 日向くんのことは私に任せて、 殿くんたちは進んで。 この『絶望』を断つために……！ 立花山城 それじゃ……参りましょうか、殿。 殿 …………！ やくも い、『行きましょうか』って……、 あそこのあれと戦うつもりだに、殿さん？ ？？？ ―――― 柳川城 お……おっきい……。 千狐 なのぉ……。 ？？？ ――――
合戦中
やくも …………。 殿 …………。 立花山城 いや……いつまで驚いてるのよ。 やくも でっかい……何度見てもでっかいがや。 希望ヶ峰学園とかに負けんくらい、手強そうなんやけど……。 七海千秋 同感だけど、迷ってる余裕は無さそうだね。 柳川城 ……敵が進軍を始めました。 聡明な下知をお願いします、殿！ 立花山城 ……この辺りの敵は、 これで全て片付けたわね。 柳川城 ……進みましょう。 希望ヶ峰学園さんの『絶望』による侵食を、 食い止めなければ！ 殿 …………！
後半
――殿一行が歩みを進めている最中。 時を同じくして―― ？？？ おい……奴らが来たようじゃぞ。 [絶望]希望ヶ峰学園 ……あら。 思っていたよりも早かったですね。 [絶望]希望ヶ峰学園 ……こちらもちょうど、準備が整ったところ。 私の可愛い生徒たちも、 お殿様たちと遊ぶのを心待ちにしているようです。 [絶望]希望ヶ峰学園 きっと素敵な時間になることでしょう。 楽しみですね……九尾さん？ 九尾 そうじゃのう……くふふ。

異界門の絶望と希望２ -結-

裏で糸を引いていた九尾が遂に姿を現す。周囲を
満たす敵の気によって絶望に苛まれる日向だが、
果たして乗り越えることはできるのか……？

前半
九尾 ……くふ、くふふふ。 ようやく辿り着いたか。 殿 …………！ 千狐 やっぱり貴方の仕業だったのね……九尾。 九尾 ……なんじゃ、驚いてはくれんのか？ 柳川城 ……当然です。これまで遭遇してきた、 異界が関わる問題の多くは、 貴方が裏で糸を引いていたものだったのですから……。 やくも そっちの悪ーい希望ヶ峰学園が現れたのだって、 あんたが働きかけたに決まっとるがや！ [絶望]希望ヶ峰学園 お殿様たちは、全てお見通しのようです。 残念でしたね……九尾さん。 九尾 くふふ、そうじゃな……残念なことこの上ない。 立花山城 ……生徒たちはどこにやったのかしら？ モノミ 誰も傷ついてなければ良いのでちゅが……。 [絶望]希望ヶ峰学園 ふふ、どこを見てらっしゃるのです？ 生徒たちでしたら、ここに居るじゃありませんか。 一人も欠けず、傷つくことなく……。 狛枝凪斗 ふふ……ふふふふ……。 日向創 ……狛枝！ 千狐 他の生徒たちも見えるの！ 柳川城 良かった……無事だったのですね……！ やくも すぐに助けにいくがや！ 七海千秋 ……待って。 七海千秋 近づかない方が良い……と思うよ。 なんだかみんな、様子がおかしい……。 狛枝凪斗 ああ……♪ なんておぞましい、なんて絶望的なんだ……♪ 澪田唯吹 へへ、へへへ……♪ 唯吹の音楽で世界をハッピーにするっす……！ 西園寺日寄子 わたしも、踊りでみんなを幸せにしてみせるよ！ 小泉真昼 ふふ、美しい写真なら任せてね……！ ソニア・ネヴァーマインド 王女として戦争のない平和な国を……！ 殿 …………。 柳川城 ……生徒たちの様子がおかしいです。 先程とはまるで別人のようです……！ 立花山城 虚ろで、陶酔しているような……。 とても正気には見えないわね。 千狐 ……あの子たちに いったい何をしたのですか……？ [絶望]希望ヶ峰学園 ……この子たちには、 私の授業を受けていただきました。 [絶望]希望ヶ峰学園 しばらくは抵抗していましたが、 根は良い子ばかりです。 心を込めて語り掛ければ、必ず伝わると信じていました。 [絶望]希望ヶ峰学園 今では私の教えを疑いなく受け入れ、 忠実に遂行してくださいます。 本当に可愛らしい子たちですよね♪ 九尾 モノクマの奴を使っても良かったのじゃが、 同じ手を繰り返すのも芸がないと思ってのう……。 モノミ 洗脳した……ということでちゅか？ なんて恐ろしいことを……。 日向創 ――くっ！ 日向創 狛枝！　西園寺！　ソニア！　澪田！ 返事をしてくれ！ 七海千秋 日向くん……。 日向創 小泉！　罪木！　辺古山！ 俺の声が聞こえないのか！？ 千狐 退いてください、日向さん！ それ以上は危険です！ 日向創 いや……諦めない。諦めてたまるか！ 日向創 俺の声が届くまで、何度でも……！ ？？？ ……そうです。 貴方はそういう子でしたね……日向くん。 ？？？ 諦めることを知らない、強き意志。 陰ることのない輝き……それが希望。 ？？？ ……そして、 あの『私』が学園の負を司るなら、私は―― 殿 …………？ 七海千秋 この声は……？ やくも 聞き覚えがあるだに……。 九尾 ……来たか。 [絶望]希望ヶ峰学園 貴方は……！ 希望ヶ峰学園 ……申し訳ありません。 少々、遅刻してしまいましたね。 千狐 希望ヶ峰学園さんっ！ 希望ヶ峰学園 殿……彼女のことは、 私に任せていただけますか。 モノミ あちしも一緒に戦うでちゅー！！ 七海千秋 私も力を貸すよ。……安心して。 シミュレーションゲームは得意だから、 足を引っ張ったりはしない……と思うよ。 殿 …………！
合戦中
[絶望]希望ヶ峰学園 ……忌々しい希望ども。 潰しても潰しても、ウジャウジャと蔓延って……！ [絶望]希望ヶ峰学園 ……思い知らせてやる。 絶望に抗うことの無意味さを……。 希望を願うことの虚しさを！ 罪木蜜柑 世界中の病院に、素敵なお薬を届けますぅ……♪ 辺古山ペコ 守るべきものを、守るために……。 七海千秋 これは……言葉が通じる状態じゃなさそうだね。 千狐 生徒たちの様子がおかしいの……。 あれは、彼女が言う『絶望』の力によるものなのでしょうか。 七海千秋 今はとにかく、私たちにできることをやるだけだよ。 希望ヶ峰学園 抗うことにも、願うことにも……意味はあります。 希望ヶ峰学園 そして……貴方と同じ起源を持つ、 この『希望ヶ峰学園』になら……！ 希望ヶ峰学園 ――はあぁぁぁぁあああっ！！ 殿 …………！ やくも この光……。 なんだか、暖かくて……安心するだに。 希望ヶ峰学園 彼女の力による『絶望』を妨げる領域を生成しました！ あの光の中に限られますが、 彼女らのを支配を片時、弱めることができるはずです！ [絶望]希望ヶ峰学園 …………。 希望ヶ峰学園 私と貴方……。 どちらの願いに『未来』が待っているのか、 決着をつけましょう。 [絶望]希望ヶ峰学園 言われるまでもありません。 この場に居る者は……私が根絶やしにしてあげます。 柳川城 希望ヶ峰学園さんが、 絶望の力が広がるのを食い止めてくれています……！ その間に私たちの手で生徒たちを救いましょう！ 七海千秋 大丈夫。諦めなければきっと届くよ。 だからお願い……私のクラスメイトを救うために、一緒に戦って。 ソニア・ネヴァーマインド わたくしたち……いったい……？ 小泉真昼 バリケードに囲まれて、それから……。 狛枝凪斗 ……記憶が曖昧だ。 とても幸せで満ち足りた、 そんな気持ちだったような覚えがあるけど……。 [絶望]希望ヶ峰学園 ……あぁ。周到に重ねた準備が、水の泡に。 絶望的すぎて……頭がとろけちゃいそうです……♪ やくも みんなが正気に戻ったがや！ 洗脳が解けたみたいだに！
後半
[絶望]希望ヶ峰学園 …………。 九尾 ……ふむ。どうやら、 手詰まりのようじゃのう？ [絶望]希望ヶ峰学園 ……そのようですね。 九尾 『希望ヶ峰学園』の在り方を逆手に取れば、 あるいは……と思ったのじゃがな。 結局此度も、彼奴らにしてやられてしまったか。 九尾 さて、吾は再び姿をくらまし……機を窺うとしようかの。 [絶望]希望ヶ峰学園 ……そう。 見捨てられるのね、私は……。 九尾 くふふ……。 勝てぬ戦に命をかけるような、 阿呆にはなれぬのでな。 九尾 ……では。 門が開くことがあれば……また。 [絶望]希望ヶ峰学園 ……ええ。いつか、また。 殿 …………。 希望ヶ峰学園 ……抵抗はしないのですね。 [絶望]希望ヶ峰学園 ええ……どの道、 もうこの身体は保ちそうにないもの。 まもなく力を使い果たし、消え失せることでしょう。 [絶望]希望ヶ峰学園 死ぬほど腹が立ちますけど……まぁ、良いでしょう。 [絶望]希望ヶ峰学園 此度の勝負はただ……私が負けただけ。 絶望が負けたわけでも、希望が勝ったわけでもありませんから。 [絶望]希望ヶ峰学園 願われたことによって生まれるのが、城娘。 そして……私という絶望を願った者が居た。 [絶望]希望ヶ峰学園 そこに変わりがない限り……、 必ず絶望はまた、姿を現すことでしょう。 [絶望]希望ヶ峰学園 ……なーんて。 これくらい言っておけば、 捨てセリフとしては上々でしょうか？ [絶望]希望ヶ峰学園 ……それでは皆さん、サヨウナラ♪ [絶望]希望ヶ峰学園 ふふ、ふふふふ……。 殿 …………。 日向創 消えた……。 辺古山ペコ 嫌な捨てセリフだったな。 まるであの子の目論見が、まだ潰えていないような……。 西園寺日寄子 どーでも良いよ、そんなこと。 事件は解決したんでしょ？ とりあえず罪木、お茶菓子持ってきて―― ？？？ ――ヒィィィイイイイイイ！ ゴメンナサイィィイイイイ！！ 殿 …………！？ 柳川城 今の叫びは……！？ 狛枝凪斗 一難去ってまた一難……というところかな？

異界門の絶望と希望２ -絶弐-

九尾たちを退けた一行の前に姿を現す新たな
『超高校級』とは……そして、生徒たちは無事に
元の世界へと帰還することはできるのか……？

前半
終里赤音 ……おーし、大体理解したぜ！ つまり、こういうことだな？ 終里赤音 オレとオメー、どっちが強ぇか拳で決める。 勝った方の言うことが正しい……そういうことだろ？ 桃形兜 イエ、全然違ウンデスケド……。 桃形兜 ……デスカラ、 ココハ貴方ガ居タ世界トハ別ノ世界デ、 帰ルタメニハ仲間ト合流ヲ―― 終里赤音 まーまー！ 良いじゃねぇか、細かいことは！ 終里赤音 続きは拳で語り合おうぜ。 そうすりゃ、伝わるもんも伝わるだろ！　な？ 桃形兜 ダメダ……言葉ノ通ジル相手ジャナイ。 カクナル上ハ―― 桃形兜 ――シ、失礼シマス～～～～！！ 終里赤音 ……あん？ んだよ、意気地のねぇ奴だな。 そこそこの戦闘力は持ってるってのに―― 終里赤音 ――お、そうだ！ それなら、オレがオメーの弱虫を直してやるよ！ 終里赤音 オレと殴り合って、オメーは勇気の何たるかを知るんだ！ んで、その後には熱い友情が芽生える！ ……どうだ、名案だろ？ 桃形兜 余計ナオ世話デス～～～～～！！ 終里赤音 おい、待てよこら！ 大人しくオレにぶん殴られろ！ 抵抗するとぶん殴るぞっ！ 殿 …………。 日向創 あいつも、俺たちと同じクラスメイト……だよな。 狛枝凪斗 終里赤音さん……『超高校級の体操部』って呼ばれてるね。 澪田唯吹 直情的というか、 やたらと喧嘩っ早い子っぽいっすね！ 油断してたら唯吹たちも巻き込まれそうっす！ ソニア・ネヴァーマインド かつての私たちのように、 正気を失ってしまったのでしょうか。 あるいは元からあのような方なのか……。 小泉真昼 確かに……話を聞いてもらうまで、 かなり苦労しそうだね……。 そこから先も大変そうだけど。 西園寺日寄子 はぁ……やっと色々解決したと思ったのに。 めんどくさー。 罪木蜜柑 あのぉ……。 もし怪我したら、言ってくださいね。 治療なら、私の得意分野ですから……。
合戦中
終里赤音 ……おっ！　なんだありゃ！ あそこに強そうな奴がわんさか居るじゃねーか！ 終里赤音 よーし、予定変更！ あいつらで腕試ししてやるぜ！ 殿 …………。 やくも 『あいつらで腕試し』って聞こえたんやけど、それって……。 千狐 千狐たちのこと……なの？ 柳川城 あの少女……凄まじい気迫を感じます。 とても普通の人間とは思えないほどの……。 立花山城 殿があんな子の拳を食らったら、 粉々にされちゃうわ……何としてでも食い止めましょう。 殿 …………。（がたがたがたがた） 終里赤音 ……あー、疲れた。 もう一歩も動けねぇや。 終里赤音 にしても、ここには変わった奴がいっぱい居るな。 見たことのない鎧みてーな奴とか、 突然でっかくなる女とか……。 終里赤音 つーか、ここはどこだ？ いや、腹が減ったな……メシの方が先か？ 終里赤音 なぁ、そこのオメー！ どこでメシが食えるか知ってるか？ 殿 …………。 西園寺日寄子 こいつ……散々迷惑掛けた癖に……！ 狛枝凪斗 あはは……まぁ、 ボクらも人のことは言えないよ。 日向クンたちに迷惑を掛けてしまったからね。
後半
――そして。 狛枝凪斗 これで……ボクたちの世界から、 迷い込んだ生徒は全員見つかった、 ってことになるのかな。 澪田唯吹 あっちの方で、 千狐ちゃんや学園ちゃんたちが作戦会議してたっす！ 西園寺日寄子 転移術とか何とか……。 わたしたちを元の世界に帰すために、 頭を悩ませてるっぽいね。 辺古山ペコ 別れの時が近づいている……ということか。 罪木蜜柑 ふゆぅ……ちょっぴり残念です。 怖いこともいっぱいありましたけど、 貴重な経験も同じくらいできましたから……。 小泉真昼 元の世界じゃ、誰かに言っても、 信じてもらえないと思うけどね……。 モノミ …………。 七海千秋 どうしたの、モノミ？ さっきからずっとモジモジしてるけど……？ モノミ あのぅ……えっとぉ……。 ミナサン、あちしの話を聞いてくれまちゅか？ モノミ すっごく言いにくいんでちゅけど……。 多分、ミナサンすっごく怒ると思うんでちゅけど……。 モノミ 実は……元の世界に帰る前に、 一つ、やらなくちゃならないことがあるんでちゅ。 澪田唯吹 やらなくちゃならないこと……っすか？ モノミ 元の世界に戻る際……ミナサンの記憶から、 この世界での出来事を全て、 消し去らなくちゃならないんでちゅ……。 日向創 なっ……！？ 記憶を消す……だって？ モノミ これが残っていると、 今後……色々な不都合が起こってしまうでちゅ。 だから……。 罪木蜜柑 色々な不都合ってなんなんでしょうか……？ モノミ それは、し……プ……ラムの話でちゅ。 ごにょごにょ……。 辺古山ペコ む……なんだって？ よく聞こえなかったのだが……。 モノミ ……ごめんなちゃい。 細かいことは……言えないんでちゅ。 小泉真昼 そんなの納得できるわけないじゃん。 この世界での出会いを、忘れなきゃいけないなんて！ 狛枝凪斗 というか……モノミが 記憶を自由に操作できるっていうのに、 まず驚いちゃうな……。 七海千秋 …………。 七海千秋 ……優しいね、モノミは。 モノミ ……え？ 七海千秋 モノミは、私たちが何を言ったって、 記憶を消すつもりだったんでしょ？ 七海千秋 なのに……モノミはちゃんと教えてくれた。 記憶が消えれば、 私たちには怒ることなんてできないのにね。 モノミ …………。 日向創 ……どうしても、 記憶は消さなきゃならないんだな……モノミ？ モノミ はい。ミナサンのために、 どうちても……なんでちゅ。 ソニア・ネヴァーマインド 納得はできませんが、 受け入れるしかないのですね……。 西園寺日寄子 ちょっと残念。 罪木に関する記憶なら、 ためらいなく放り捨てるんだけどなー。 罪木蜜柑 ご、ごめんなさいぃ……。 私も買い取ってあげたいくらいです……。 ―――― 柳川城 別れの時が、近づいてきているようですね。 希望ヶ峰学園 生徒たちを見送るのは、 これで二度目になりますが……。 希望ヶ峰学園 別れの寂しさには慣れませんね、 いつまで経っても。 柳川城 生徒たちを送り返したら、 貴方はどうなってしまうのですか？ 希望ヶ峰学園さん……。 希望ヶ峰学園 生徒たちがここから去り、異界との繋がりが薄れれば…… 私たちの世界に起源を持つものは、 徐々に薄れ……消えていくことでしょう。 希望ヶ峰学園 島や、遊園地も……そして私も。 やくも えぇ……消えちゃうんだに？ 遊び倒すつもりやったんに……。 千狐 ……やくも？ やくも ――あ、いやっ！？ え～……か、悲しいだに！ もうお別れだなんて、悲しすぎるがや～！ 立花山城 ねぇ……希望ヶ峰学園？ 立花山城 貴方は知っているんじゃないの？ 生徒たちが、どうして記憶を消さなくちゃいけないのか。 立花山城 そして……これからあの子たちを、 どんな運命が待ち受けているのか。 希望ヶ峰学園 …………。 希望ヶ峰学園 いずれにしても、私にできることはただ一つ。 生徒たちを信じ……見守ることだけです。 希望ヶ峰学園 時々で良いので……殿や皆さんも、 この世界から生徒たちを想っていただけると、 私は嬉しく思います。 殿 …………！ 千狐 ……承知しました。 約束します！ 柳川城 私たちも、願い続けましょう。 希望ヶ峰学園と……その生徒の皆さんが、 希望に満ちた未来へとたどり着けるように。 やくも それから、また会えるのも楽しみにしとるがや！ 殿 …………！ 希望ヶ峰学園 たとえ記憶が消えてしまっても、 全てが無かったことになるわけではありません。 柳川城 それは……。 城娘として存在できなくなったとしても、ですか？ 希望ヶ峰学園 ……はい。 目には見えなくとも、頭では分からなくとも、 残るものは必ずあります。 希望ヶ峰学園 一度消え……、 再び顕現を果たせたからこそ、そう思うんです。 殿 …………！ ―――― 日向創 どこを振り返ってみても、 不思議な体験だったな……本当に。 七海千秋 そうだね。 忘れちゃうのは残念だけど、 いよいよ始まるんだよね……修学旅行が。 七海千秋 ……楽しみ？ 日向創 ん？　……ああ、そうだな。 あいつらと一緒なら、楽しめるんじゃないかな。 日向創 南の島なら、 遊ぶ場所には事欠かないだろうしな。 海とか色々……。 …………。 ……うぷぷ。 ほんとにオマエラって、 絶望的にハッピーな脳みそしてるよね。 これからどんな惨劇が起きるかも知らずに、 ワクワクしちゃってさ……。 うぷ、うぷぷぷ……。 日向創 ――ん？ 七海千秋 ……どうしたの、日向くん？ 日向創 …………。 日向創 ……いや、なんでもない。 誰かの声が聞こえたような気がしたんだが、 気のせいだったみたいだ……。 ―――― ――数日後。 柳川城 今頃……学園の生徒さんたちは、 何をしているでしょうか。 やくも 元気でやっとるに決まっとるがや！ 南の島を謳歌してるはず―― やくも ――ん？　なんだに、これは……？ 千狐 どうしたの、やくも？ 立花山城 鉄製の棒……かしら。 見たことのない形だわ。 武器として使うには小振りだし……。 やくも …………。（にやり） やくも それじゃ……この棒は うちが責任を持って預かるがや！ 落とし主が見つかるまで！ 殿 …………。 立花山城 ……落とし主の方には、諦めてもらいましょう。 やくもに拾われたのが運の尽きだったわね。 柳川城 ……それにしても、 なんのために使う品なのでしょうか。 もしかして、あれも異界にまつわるものだったり―― ―――― ？？？ おーーーーーい……！ ？？？ ソニアさーん……。 どこにいらっしゃるんですか～……？ ？？？ ちっくしょう……踏んだり蹴ったりだ。 大事なスパナも落としちまったし、 この森もどこまで続いてるか分かんねーし……。 ？？？ ……いや、まだ諦めるには早い。 こうしてる間にも、 ソニアさんの身に危機が迫ってるかもしんねー！ ？？？ ――ソニアさーん、今行きますからね～！ ――オシマイ。

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