ストーリーテキスト/異界門の科学と魔術

ページ名:ストーリーテキスト/異界門の科学と魔術

目次

異界門の科学と魔術[]

異界門の科学と魔術 -序-

武蔵国に現れた『謎の一夜城』を調査しに来た殿一行は、
突然気を失ってしまう。一方で仮想空間のテスターと
なった当麻たちは、見知らぬ山中に足を踏み入れていた。

前半

――武蔵国・山中。

柳川城
殿、この辺りが情報のあった武蔵国の山中です。

立花山城
江戸の方面と違って、どこまでも山ばっかりね……。
本当に、こんなところに城なんてあるのかしら?

殿
…………。

千狐
『武蔵国の山中に、謎の一夜城あり。
 からくりにまみれたかの城は、
 兜の拠点ではないか――』

千狐
送り主不明の手紙には、そう記されていました。

柳川城
何もなかったはずの山中に、突然現れた城。
確かに『一夜城』と言うべきものかもしれません。

殿
…………!

柳川城
仮に悪戯なら、何もないことを確認できれば良し。
本当に兜の拠点があるのなら、
そのまま見過ごすことはできませんね。

立花山城
お人よしね。
だけど、言っていること自体は正しいと思うわ。

やくも
……あっ!

千狐
どうしたの、やくも!?
もしかして一夜城を見つけて――

やくも
こんなところに小銭みっけ!
行商人か誰かが、落としていったのかも。
得したがや~♪

千狐
やくもったら、こんな時に……ずるいの!

やくも
うちが見つけたんだから、
うちのもんだに~!

――ぐらっ。

立花山城
……っ!?

立花山城
何……?
今、なんだか立ち眩みが……。

柳川城
立花山城さんもですか……?
実は私も……。

千狐
と、殿、あれを……!

殿
…………!?

柳川城
あれは……城……?
いえ……街……?

柳川城
霞がかかった、蜃気楼のようで……。

立花山城
巨大な風車……?
それに――

――バタッ。

柳川城
立花山城さん!?
大丈夫――

――バタタッ。

千狐
なんだか、急に眠く……なの。

やくも
お金は誰にも渡さないだに……。

殿
…………!?

殿
…………。

――バタッ。

???
…………。

???
…………。

――どこかの山奥。

上条当麻
……うっ。ここは……?
俺、なんで眠って……。

白井黒子
あ~ら、いったい自分が何をしていたのかも
覚えておりませんの?
さすがは知能指数の低い類人猿。

上条当麻
白井!? お前、車椅子……じゃなくて!
俺が何をしていたのかだって?

インデックス
とうま! とうま!
すごいよ! ホントに自分の身体があるみたい!

上条当麻
自分の身体みたいって、そんなの当たり前――ああっ!

御坂美琴
ちょっと、いきなり大きな声出さないでよ!
びっくりするでしょうが!

上条当麻
わ、わりぃ……けど、思い出したぜ。
そうだ、確か白井に連れられて、
わけわかんねぇ装置の実験に付き合わされて――

白井黒子
わけのわからない装置ではありません。
最新鋭の『意識投影型仮想空間生成装置』――

白井黒子
――いわゆる『フルダイブ装置』の実験ですわ。

上条当麻
フルダイブってことは、これは生身の身体じゃねーってことか?
五感も何もかも、まるで本物みてぇだけど。

白井黒子
それが最新鋭たる由縁ですわ。
まるで本物の身体を得たかのような没入感。

白井黒子
わたくしたちの本当の身体は眠っているのと同じ状態ですが、
脳波の電気信号を通して五感から何から全て、
リアルにフィードバックされているのですわ。

インデックス
へえー……どれどれ、がぶり。

上条当麻
いってぇー!
何いきなり噛みついてんだよ!?

インデックス
ほんとだ、ちゃんと痛みもあるんだね!
すっごーい!

上条当麻
俺の頭で確かめるんじゃねーよ!

白井黒子
ただ、おかしいですね……テスト要件では、
学園都市を模した仮想空間に出るはずなのですが。

御坂美琴
座標の指定を間違えたのかしら?
試作型とはいえ、まだいい加減なシステムね……。

上条当麻
また歯形が……しかしすげーな!
夢にまで見たゲームの世界みてぇだ。

御坂美琴
ゲームとか……そんなんだから、程度が低いって言うのよ。

上条当麻
なんだと?

御坂美琴
この装置の本来の目的は、仮想空間という安全な環境で、
より多様で、かつ限定的な状況での、
能力使用の訓練を行うことよ。

御坂美琴
例えば災害時とか……危険が伴う想定の訓練でも、
仮想空間であれば安心安全に、
かつリアリティをもって行うことができるってわけ。

上条当麻
へーへー、そうですか。
だってよ、インデックス。

上条当麻
……あれ、インデックスはどこ行った?

インデックス
とうまー!!

上条当麻
インデックス!
お前何やって……って、なんだ!?
後ろのそのでっかいのは!?

兜軍団
ソッチニイッタゾ!
オエッ! オエッ!

御坂美琴
人型のロボット!?
というかなんか、造形が個性的……!

御坂美琴
く、黒子。
これは、既に何か実験が始まってるの?

白井黒子
そ、そんなことは……!
単なる稼働実験ですし、ダイブして、
軽く身体を動かしてみるくらいのテストのはず……。

インデックス
とうまー!
たすけてー!

上条当麻
待ってろインデックス!
こいつら、もしかしてゴーレムか?
だったら、これで――

上条当麻
――キュイィィィン!

上条当麻
――ぺちっ、ぺちっ。

兜軍団
ナニヲシテイルンダ、コイツハ?

上条当麻
げっ!?
右手で触ってるのに、
『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が効かねぇ!?

御坂美琴
うそでしょ!?
あいつのインチキじみた力が……!?

兜軍団
ヨクワカラナイガ、コイツカラヤッチマウカ。

上条当麻
おいおいおい、嘘だろ……!?

インデックス
とうまー!

上条当麻
いきなり倒せない敵が出るとか、
ゲームのチュートリアルならクソゲーすぎるだろ!

上条当麻
ギ、ギブアップだ!
コンティニューするから、
ログアウトさせてくれ~!!

――しーん。

上条当麻
できねーのかよ!?

御坂美琴
何、ひとりで騒いでんのよ馬鹿!
ああ、もう――

柳川城
はあぁぁぁぁ!!!

桃形兜
グエー!?

御坂美琴
えっ……?

兜軍団
シ、城娘ダ……!
クソッ、コンナトキニ……!?

柳川城
そこの方々!
兜から離れてください!

殿
…………!

上条当麻
こ、今度はでっかい女の子……!
と……サムライ!?
なんで!?

千狐
立花山城さん!
戦場に取り残された民がいるようですわ!

立花山城
民って……このご時世に、こんな山奥で何やってるのよ。
私が時間を稼ぐから、安全なところまで連れて行ってあげて。

やくも
りょーかいだに!

上条当麻
またでっかい女の子と、今度はケモノ耳の巫女さん!?
あと蛇! 蛇!
どーなってんだよ、このシミュレーションは!

白井黒子
こ、こんなの事前の説明では――

桃形兜
城娘ダ!
城娘ヲユウセンシロ!

御坂美琴
あんたら……静かにしろぉぉぉ!!!

御坂美琴
――バリバリバリッ!!

御坂美琴
――ズギュゥゥゥゥン!!

桃形兜
ギャッ!?
ウ、ウタレタ!?
ドコカラダ!?

御坂美琴
なんだかよく分からないけど、
あのロボットは壊しちゃっていいってことよね!?

柳川城
今の銃弾、あなたが……?
銃もないのに、いったいどうやって……。

御坂美琴
そこのデカい子たち!
私たちのこと助けてくれてるんでしょ!?

御坂美琴
だったら、協力して!
あんなロボット、
全部ぶっ壊しちゃうから!

柳川城
は、はい!
って、え……?

御坂美琴
黒子はバックアップ!
上条当麻もぼーっとしてないで、
インデックス守るくらいはできるでしょ!?

上条当麻
お、おう!

白井黒子
もちろんですわ、お姉様!

御坂美琴
考えるのは後!
今はとにかく、目の前のことを片づけるわよ!

インデックス
はやくたすけてー!
とうまー!

合戦中

上条当麻
うおぉぉぉぉ!
こっちに来るんじゃねぇ!

烏天狗形兜
ナ、ナンダコイツ……妖術ガ効カナイ……!?

上条当麻
なんだ……?
ゴーレム本体には全く効かねーけど、
撃ってくる魔術みたいなのは右手で打ち消せるのか……?

そうと決まりゃ、俺にだってやれることはある!
今、助けるぞ、インデックス!!

柳川城
みなさん、大丈夫ですか!?

上条当麻
はあ、はあ……どうにかなったぜ……。

上条当麻
しかし、ゴーレムはまだしも、
このでっかい女の子たちはなんなんだ……?

上条当麻
能力にしても、こんな見上げるほど……って、いいっ!?

柳川城
あ、あんまり真下からは見ないでください……!
その、角度によっては見え――

上条当麻
す、すまん!
だが何も見えてない!
なんか真っ暗だったから!

インデックス
うー!
とうまのバカ! えっち!

上条当麻
ぎゃー!
噛むんじゃねぇ! インデックス!

柳川城
ええと……喧嘩は良くないと思いますよ?

殿
…………。

後半

上条当麻
はあ……はあ……助かったぜ……。
だ、大丈夫か、インデックス。

インデックス
うん……助かったんだよ。

柳川城
あの……あなた方は?

上条当麻
あれ、さっきのでっかい女の子……が、
普通の女の子サイズになってる!?

殿
…………?

上条当麻
し、城娘?
なんすかそれ?

インデックス
ねーねー、とうま。
この人たち、変な恰好してるね。
こすぷれってやつ?

上条当麻
馬鹿っ、命の恩人になんてことを……!
す、すみませんね。
こいつ、礼儀ってやつを知らないもんで。

殿
…………。

立花山城
私たちからすれば、そっちの方がよっぽど変な恰好だけど。

御坂美琴
変……とは言わないけど、
なんか、時代劇みたいな空間ね……。

御坂美琴
それよりも、さっきのロボットは何?
あと、あなたたちもいったい……?

柳川城
ろぼっと……?
ああ、兜のことですね。
あなた方は、兜をご存じないのですか?

御坂美琴
ご存じも何も、何も聞かされてないっていうか。

千狐
もしかして……この方々は、時空の歪みからやってきた、
異世界の来訪者なのでは?

やくも
だに!?
い、いつの間にそんな歪みなんて……?

上条当麻
その耳と尻尾、本物なのか……?
あと蛇も……噛まねぇよな?

インデックス
もふもふ!
いいなぁー!

立花山城
……なんだか、すごく新鮮な反応ね。

柳川城
ええと……私たちは、武蔵国に出没した、
謎の一夜城を追ってここまで来たんです。

柳川城
その道中、兜に襲われているあなた方を見かけたので、
お助けに参上したのですが……もしかして、お邪魔でしたか?

上条当麻
いや、すっごく助かった!
本当に! ありがとうな!

御坂美琴
武蔵国ってずいぶん古風な言い回しね……どこのこと?

白井黒子
ええと……確か、東京埼玉あたりの昔の呼び方ですわね。

御坂美琴
だったら学園都市のある辺りか……つまり、何?
ほんとに、歴史シミュレーションか何かってこと?

柳川城
ご、ごめんなさい……私たちには、
みなさんが何を仰っているのかもサッパリ。

上条当麻
ゲームだってんなら、聞いたところで仕方ないだろ。
こういう時は、必要な情報以外は何も教えてくれないもんだぜ。

御坂美琴
さっきまで泣きべそかく勢いだったくせに、
急に饒舌になっちゃって。

立花山城
もしも時空の歪みの被害者だっていうなら、
いつ兜が襲ってくるかもわからない、
こんな山奥に放り出すのは危険じゃない?

柳川城
そうですね……落ち着いて話を聞くにも、
もう少し安全な場所の方が良いと思います。

殿
…………。

千狐
分かりましたわ、殿。
ここは一度、所領へ戻って態勢を立て直しましょう。

千狐
秘技、時空……転移術なのー!!

上条当麻
な、なんだこの光!?
前が何も見えねぇ――

上条当麻
――ブンッ! ブンッ!

上条当麻
――キュイィィィィン!

千狐
……あ、あれ?
確かに術を使ったはずなのに……。

御坂美琴
ちょっと、あんた!
今、この子の術に触ったでしょ!?

上条当麻
えっ、俺のせい!?
いや、俺のせいだな、たぶん!!

インデックス
あー!
とうま、いけないんだー!

立花山城
もしかして、兜の妖術と同じように、
千狐の転移術もかき消してしまったの?

千狐
コ、コーン!
酷いのぉ!!

上条当麻
うっ……すまん。
だけど、今みたいに俺の意思とは関係なく、
勝手に発動しちまう力なんだ。

上条当麻
とはいえ、安全な場所とか
気を使って貰わなくても大丈夫だぜ。
戦闘訓練も兼ねたシミュレーションなのかもしれねぇし……。

御坂美琴
あんたねぇ……仮にも学生に戦いを強いる学園が、
どこにあるのよ。
これまでだって、戦いたくて戦ってるんじゃないでしょう?

上条当麻
そりゃそうだが。
とにかく、こういう時はクリア目標が何かを知るのが先決だろ。

上条当麻
つまり、俺たちはどこへ向かえばいいのかってことだ。

柳川城
もしかして、みなさんも一夜城を目指しているのですか?

御坂美琴
そう言えば、さっきも言ってたわねそんなこと。
一夜城って……ええと、授業か何かで聞いたことはあるかも。

上条当麻
目的地が定まっているなら、それが今回のミッションってことだろ。
その一夜城とやらに向かえば……きっとゲームは進行する!

インデックス
やったー! 楽しそう!

白井黒子
だから、ゲームではないと何度……いえ、そのくらいの方が、
こちらの気分も楽ですわね。

白井黒子
クリアしたら、ガッツリとレポートに文句を書いてあげませんと。

柳川城
一緒に行かれるみたいですけど、どうしましょう?

殿
…………。

柳川城
そ、そうですね!
このまま兜が出る山中に放っておくわけにはいきませんし。

柳川城
彼らのことも、もっと話を聞いてみなければ……ですね!

――武蔵国・別の山中。

桃形兜
偵察部隊、帰ッテ来マセンネ……。
イカガイタシマショウ?

豊臣秀吉
仕方ありマせんネェ……もういくつカ部隊をワケて、
偵察に出しテやりなさイ。

桃形兜
ハッ!

豊臣秀吉
自分の他に一夜城なンて作るうつけが居るのかと思っテ来てみれバ、
なかなかに楽しまセテくれそうじゃないか。

豊臣秀吉
武蔵の一夜城……そしテこの仮初の世界モ……。

豊臣秀吉
ゼヒ、手に入れたイものだネェ……♪

異界門の科学と魔術 -破-

殿と当麻たちは、共に『謎の一夜城』を
目指して旅を始める。すると道中、
兜に襲われる神裂と、見たことのない少女と出会う。

前半

上条当麻
――つまりだ、さっき襲って来たのは『兜』っていう
人類の敵みたいなやつで……

上条当麻
そいつらを倒すため全国を旅しているのが、
そこのお殿さまと城娘っていうお嬢さん一行ってわけか。

殿
…………。

千狐
そのサポートをしているのが、私たち神娘ですわ。

御坂美琴
さっき巨大化していたのって、貴女たちの能力?

柳川城
能力……というよりは、そういうものというか。
城娘は、巨大化して兜と戦う少女たちのことを指します。

インデックス
テレビで見るヒーローみたいだったね。
ででーんって、おっきくなっちゃって。

立花山城
あなたたち、本当に何も知らないのね。
そっちこそ何者なのかしら?

御坂美琴
そう言えば、自己紹介がまだだったわね。
私は御坂美琴。
常盤台中学の二年生よ。

白井黒子
お姉様は、学園都市第三位の超能力者(レベル5)。
発電系能力の使い手で、
『超電磁砲(レールガン)』とも呼ばれていますわ。

柳川城
それがあの、銭を打ち出す銃撃ということですね?
本当に、見事な一撃でしたが……
そもそも、その『能力』というのは?

御坂美琴
そこから説明が必要なの?
学園のシミュレーターのくせに、
融通が利かないのね。

柳川城
す、すみません。
(しみゅれーたーって何でしょう?)

白井黒子
能力とは、そのままの意味ですわ。
通常の人間が持ちえない特殊な力。
学園都市に住む学生の大半は、何らかの能力を発現していますの。

立花山城
そういうあなたも能力者ってこと?

白井黒子
申し遅れました、わたくしの名は白井黒子。
お姉様と同じ常盤台中学の一年生で大能力者(レベル4)。
能力は『空間移動(テレポート)』ですの。

白井黒子
重量や距離の制限はありますが、
どこへでも自在に移動することができますのよ。
わたくしが触れることができれば、人や物を飛ばすことも。

立花山城
千狐の転移術みたいなものね。

白井黒子
おや、あなたも空間移動(テレポート)の能力者なのですか?

千狐
えっと、能力者かは分かりませんが……こう、
『むむむっ!』てやって、『えいやっ!』ってやると、
日の本中、時に異国へも転移できるのですわ。

白井黒子
外国まで……!?

千狐
コ、コン!
でも、確実ではないから、目印となる神域があったり、
強い縁がある人か品が傍に無いと、変な場所に出ることも……。

白井黒子
そ、そうなのですね。
シミュレーションの中の存在とはいえ、
なんて規格外な能力……これは、負けていられませんわね。

御坂美琴
それにしても、この耳も尻尾も可愛い~!
コスプレじゃないのよね?
もふもふしてる~♪

千狐
く、くすぐったいから撫でないで欲しいの~!

白井黒子
ぐぎぎ……負けていられませんわね!!

上条当麻
で……そろそろ俺の出番で良いのか?

殿
…………。

上条当麻
この歯形なら気にしないでくれ……よく噛むんだ、あいつ。

インデックス
とうまが戦ってる時に、その子のパンツ見上げるからでしょ!

上条当麻
だぁぁぁ! だから見てねぇって!
確かに見えそうな角度だったけど、
真っ暗で何も見えなかったんだよ!

インデックス
やっぱり見ようとしてるー!
がうー!!

御坂美琴
もう、話が進まないから、その辺にしておきなさい。

インデックス
短髪……。

御坂美琴
大丈夫よ。
そいつにはあとで、たっぷりお仕置きしてやるから。

上条当麻
ちくしょう……不幸だ……。

柳川城
あの……私は信じてますから、気にしないでくださいね。

上条当麻
あんた、女神か……泣けてくるぜ。

上条当麻
気を取り直して、俺の名は上条当麻。
無能力者(レベル0)だ。

柳川城
能力が無い……?
ですが、戦闘中に見せたあの不思議な力は?

上条当麻
ちょっと込み入った話になるんだが、
あれは生まれつきっつーか……。

上条当麻
とにかく、御坂たちみてーな『能力』とはまた違うんだ。
この右手で触れたら、どんな能力だって、
たちどころに打ち消しちまうっつー……体質みたいなもんで。

上条当麻
俺は『幻想殺し(イマジンブレイカー)』って呼んでるんだ。

立花山城
それで、あとはあっちの子ね。

インデックス
じー……。

やくも
……な、なんでうちのこと、見つめてるだに?

インデックス
……いいにおいがする。

やくも
はっ……!?
だ、ダメや!
これはうちが大事にとっておいたもので!

インデックス
それー!!

やくも
うわー! うちのおにぎりがー!?

上条当麻
えっと、あいつの名前はインデックス。
まあ……見ての通りのやつだ。

柳川城
彼女はどんな能力を?

上条当麻
そいつも能力者ではなくって……うーん。
ちょっと説明するのが難しいんだよな。

上条当麻
まあ、お腹をすかせているときは暴走したりすることもあるけど
よろしくしてやってくれ。

インデックス
なにさー!
とうまがそうさせるんじゃない!
がるるー!

インデックス
初めて会った時だって、
わたしの服バラバラにして――

上条当麻
誤解を生む言い方をするんじゃねー!
まさか服が力で縫われてるなんて、
初見で分かるわけねーだろーが!

御坂美琴
ほんっとサイテー。

上条当麻
くそう、ヤブ蛇だぜ……。

殿
…………。

上条当麻
もしかしてあんた、俺の辛さを分かってくれるのか?

上条当麻
あんたといい、そこの女神様といい、
俺はこのまま、この世界で暮らしたい……!

――ズドォン!

白井黒子
い、今の衝撃は!?

上条当麻
うわぁ、一生居たいとか嘘です!
ちゃんとクエストクリアして帰ります!

御坂美琴
何バカなこと言ってるのよ!
今のって、どう聞いても戦闘音でしょ!

上条当麻
な、なに!?
またさっきの兜とかいうゴーレムか!?

柳川城
分かりませんが、近いようです!
様子を見に行きましょう!

兜軍団
オイツメタ! オイツメタゾ!

柳川城
居ました、兜です!
その足元にいるのは……女の方?

神裂火織
得体のしれないゴーレムだけをけしかけ、
術者は身をかくしているつもりか?
下郎め……!

神裂火織
あなたは、どうか私の傍を離れず、
そして動かないように。

神裂火織
動かなければ、私の刃が必ずあなたを守ります。

???
はい。

――キィン!キィン!キィン!

兜軍団
ナ、ナンダ、コウゲキ――グワッ!?

柳川城
い、今のは!?
辺りの兜たちが一斉に切り裂かれて……!

上条当麻
神裂!
あいつ、なんでここに!?

千狐
お知り合いなのですか?

上条当麻
あ、ああ……だが、もうひとりの女の子は知らねぇ。

立花山城
話してる間に、助けに入った方が良いんじゃなくて?

上条当麻
そ、そうだな。
だが気を付けろ!
今の斬撃、ありゃワイヤーだ!

上条当麻
周囲にいくつものワイヤーが張り巡らされているから、
うかつに近づいたら巻き添えを喰らっちまうぞ!

柳川城
分かりました!
気を付けて加勢します!

???
……上条当麻。

上条当麻
(なんだ、あの子……俺のことを見て……)

上条当麻
いいや、考えるのは後だ!
俺だって、何もできねーわけじゃねーんだからな!

合戦中

神裂火織
これだけの数の機械式ゴーレム。
はたして、私ひとりで対処できるものか……。

上条当麻
おい、神裂!
俺だ! おい!

神裂火織
とにもかくにも、彼女を守ることが最優先ですね。
一般人を戦火に晒すわけにはまいりません。

上条当麻
くそっ、聞こえてねーのか。
しかたねぇ、ぶっつけでやるしかねーな……!

御坂美琴
いっちょあがりっと。
この兜っての、でかいだけで大したことないわね。

白井黒子
いえいえ、きっとお姉様が強すぎるのですわ。
流石は常盤台が誇る超能力者(レベル5)!

神裂火織
あなた方……なぜここに?
そもそも、ここはどこなのですか?

上条当麻
なんか、込み入った事情がありそうだな。
面倒事じゃなきゃ良いんだが。

後半

神裂火織
加勢していただきありがとうございます。
私は神裂火織。そちらのインデックスと袂を同じくする……
有体に言えば仲間です。

上条当麻
お前も、シミュレーションのテスターになってたのか?
いったいどんなツテで……。

神裂火織
シミュレーション……?
いったい何の話をしているのですか。

上条当麻
は?
いや、だって俺たち、
フルダイブ装置のテスターでここに――

神裂火織
申し訳ありませんが、今はそれよりも、
この子をどこか安全なところに。

???
…………。

御坂美琴
えっと……どちら様?

学園都市
はじめまして。
私の名は学園都市。
それ以外の情報はメモリーに記録されていません。

上条当麻
がくえんとし……。

上条当麻
……学園都市ぃ!?

神裂火織
あなた、名を言えたのですね?
私といた時には、だんまりばかりだったのは……。

学園都市
余計な情報を与えることによる、混乱を避けるためです。
現状であれば、開示しても良い情報であると判断します。

御坂美琴
そんなこと言われたって、余計にわけが分からないんだけど。

柳川城
もしかしてその方……城娘なのでは?

御坂美琴
城娘って、柳川城たちと同じってこと?

上条当麻
つまりお前は、俺たちが住む学園都市の……なんつーか、
妖精さんみたいなものってことなのか?

学園都市
それは肯定でもあり否定でもあります。
厳密には私は、あなた方の知る学園都市そのものではありません。

学園都市
私は自分が学園都市だということを知るのと同時に、
私自身という一個体であることを認識しています。

上条当麻
やべぇ……何を言ってるのか、全然わからねぇ。

立花山城
私もそう……立花山城である以前に、私は私。
ひとりの存在として接してくれってことよ。

上条当麻
なんか、シミュレーションにしちゃ手が込み過ぎてねーか?
もっとさくっと災害訓練とかの方が、
どれだけ分かりやすいことか……。

白井黒子
確かにと相槌を打つのも癪ですが、
シミュレーションとしてはやりすぎのような気はしますね。

御坂美琴
これじゃあホントにゲームか何か……だけど、
その神裂って人が身に覚えもなくここにいるのはどうして?

学園都市
あなた方の言うシミュレーションというものに関しては、
私も認識の相違はありません。

学園都市
しかし、ここで問題にすべきは、
この空間におけるあらゆる管理権限が、
既に私の手の内から離れているということです。

御坂美琴
……え?

柳川城
あの、ごめんなさい。
さっきから何を言っているのか、
私たちには、本当にサッパリ……。

学園都市
端的な言葉で説明すれば、
この状況はある種のシステムエラー――つまり、
暴走によるものと判断できます。

上条当麻
ぼ……暴走だとぉぉぉぉ!?!?

――武蔵国・また別の山中。

桃形兜
コ、コイツ……イッタイ何者……!?

――キィィィン!

桃形兜
ギャァァァァァアアア!?!?

――グシャッ!

アクセラレータ
チッ……なンなンだこいつらは。
次から次へとうっとおしい。

アクセラレータ
どこかも分からねェ山ンなかに連れてこられて、
ただでさえイラついてンだこっちは。

アクセラレータ
とりあえず、身体に異常はねェ。
能力も使える。

アクセラレータ
このガラクタどものことはよく分かンねェが、
向かってくるなら全部敵だ。

アクセラレータ
まとめてぶっ潰してやる。
俺をここまでイラつかせた、
あの女と一緒にな――

異界門の科学と魔術 -急-

神裂と共に学園都市を名乗る少女を
仲間に加えた一行。その行く手に、
豊臣秀吉の名を持った巨大兜が立ちはだかる。

前半

上条当麻
要するにだ……お前は学園都市で、
このシステムの管理者か何かだったが、
今は完全に蚊帳の外だ――と。

学園都市
肯定します。
シミュレーションにおける都市の管理システムもまた、
完全に私の手を離れています。

御坂美琴
それで、ゴーレムに混ざって
警備ロボたちも襲ってきていたのね。

白井黒子
現在、私たちが非常に危険な状態だということは分かりました。
おそらく、現実世界じゃ大慌てでしょうね。
下手をしたら、このまま目覚めないなんていうことも……。

上条当麻
いぃぃぃ!?
なんでそんなことになっちまったんだよ!?

学園都市
申し訳ありません。
私には、現状を把握できるだけの情報しか
メモリーの蓄積がありません。

学園都市
これもまたシステムエラーに起因するものと思われます。

柳川城
ごめんなさい……私たちはまだ、理解を得ていないのですが。
ここは、夢か幻のような世界ということなのでしょうか?

立花山城
いつの間にか、時空の歪みにでも巻き込まれていたのかしら?
私は全く身に覚えが無いのだけれど。

千狐
私も同じです。
もしもそうなら、真っ先に気づかなければならないはずなのに……。

白井黒子
念のためお聞きしますが、
皆さま方は、何か装置のようなものを使って
この空間にやってきたわけではないのですね?

やくも
そんなものがあるなら、ぜひ欲しいがや。

神裂火織
それならば、私の状況と非常に近いと思われます。
私も装置などの外的要因の影響を受けた記憶は、
一切ありませんので。

上条当麻
それだよなぁ……どうすりゃ現実世界に帰ることができるんだ?
なあ、少しでも良いから、何か覚えてることはないのかよ?

学園都市
申し訳ありません。
おそらくは、管理権限を取り戻さないことには何も……。

上条当麻
それはどうやったら取り戻せるんだ?

学園都市
申し訳ありません。

上条当麻
八方ふさがりかよぉ。

千狐
おそらくこの方は、城娘としての力も失っているようです。
その場合、記憶の混濁が発生するのは珍しいことではありません。

柳川城
私たちが出会った多くの城娘たちも、
自分が城娘であることすらも知らないという方が
沢山いらっしゃいましたしね……。

柳川城
かくいう私も……いまだに自分の記憶に対して、
不確かなところがあります。

柳川城
だから、学園都市さんも心配しなくていいですよ。
力も記憶も、次第に取り戻してくるはずです。

学園都市
ありがとうございます。
仮に力がなくとも、私は私の為すべきタスクをこなします。

学園都市
まずは都市の学生の安全を確保することが、
何よりも優先すべきことだと判断します。

学園都市
不要不急の外出は控えて、
都市管理システムの指示に従ってください。

御坂美琴
外に出るとか、そういうレベルじゃないんだけどね……。
ここまで町のひとつも見かけてないし。

学園都市
安全を確保するためには、バリケードの構築が有用です。
周辺の土砂や木材を利用して、
砦の構築を提案します。

上条当麻
んな簡単にできるかっ!
こっちは道具すらねーんだぞ!

インデックス
ねーねー、とうま。
お腹すいたよぉ。

上条当麻
お前はまた、こんな時に!
つーか、仮想空間で腹なんて減るのか?

インデックス
やくもー、さっきのおにぎりはー?

やくも
全部、インデックスに食べられた後だにー!
むしろ返して欲しいだにー!

千狐
休憩がてら、ごはんにしましょうか。
私たちの兵糧で、お口に合うか分かりませんが。

上条当麻
飯の話をしてたら、確かに腹が減って来たぜ……。
どうなってんだよ仮想空間。

御坂美琴
ここは、お言葉に甘えちゃいましょう。
また、兜や警備ロボが襲ってくるかも分からないし――

???
そういう話をシテいるト、現れるモンなんですよネェ。

殿
…………!?

豊臣秀吉
おやァ、見かけなイ顔ガ、ひィ、ふゥ、みィ、よォ。

豊臣秀吉
それからお前さん――

学園都市
…………?

豊臣秀吉
へヘェ、なるほどネ……だいたい状況ガ、
掴めテきましタよ。

千狐
豊臣秀吉の名を冠した巨大兜!?
どうしてこんな時に……!

上条当麻
と、豊臣秀吉ぃ!?
秀吉って、あのホトトギスが鳴くまで待つ?

御坂美琴
それは家康!
あんた、ホントに中学校卒業したの?

白井黒子
秀吉は『鳴かせてみせよう』ですわね。
ちなみに、本人が言ったわけではありませんわ。

神裂火織
ヤツも兜なのですか……?
他の兜とは比べ物にならない、
禍々しい気を感じます。

立花山城
あれは巨大兜……あなたの見立て通りに、
他の兜たちとは一線を画した存在よ。

豊臣秀吉
どうせナラ、もっと正確に紹介シテくれまセんかネェ。
あっしハその巨大兜ノ中でモ、
すこぶル優秀なツモりでいるんダガ。

柳川城
このようなところで、何が目的なのですか、巨大兜!
答えなさい!

豊臣秀吉
目的も何モ、きっとあんタらと同じですゼ?
誰が築イたか一夜城――誰でも無いナラ俺のモンってネェ。

豊臣秀吉
だが、あんたラを見て考エを変えタ。
お前ト……それかラお前モ。

インデックス
な、なにかな……?
私はなにも、用事はないよ?

学園都市
…………。

豊臣秀吉
あんたラ、他の奴ラと違っテ使えそうダ。
ちょっと、俺たちニ捕らえラレちゃぁクレませんかネェ。

上条当麻
何言ってんだお前!
そんなのに、『はいそうですか』って頷くわけがねーだろ!

上条当麻
こいつらに手を出すってんなら、
俺が相手になってやる……!

豊臣秀吉
あんたは別ニ、いらネェんだがナ……おイ!

兜軍団
ハハッ……!!

豊臣秀吉
邪魔なやつラは、全員すり潰しテおやんなサイ。

兜軍団
ガッテンショウチ!

上条当麻
巨大兜だなんだって言っても、
妖術とかいうのが相手ならなぁ!

豊臣秀吉
あ、妖術ダメなんですカイ?
おーい、やっこサン、刃物がご所望のようダ。

兜軍団
ヤッチマエ! ヤッチマエ!

上条当麻
どわー!
こいつら、刀とか槍ばっかり!

御坂美琴
バカ!
ああもう、バカ!
何やってんのよ!

神裂火織
上条当麻!
そこを動かな――

――キンッ!キキンッ!

豊臣秀吉
おっト、あんた厄介なモンつかうネェ。
あらよっト!

――カツンッ!カンッ!

神裂火織
七閃が弾かれた……!?
ヤツの獲物――蛇腹剣か!

豊臣秀吉
いかにモ『剣士です』っテ顔しておきながラ、
間合いノ取り方ガ、俺と似てるナァと思ったんダヨ。

豊臣秀吉
だが、面白いナァその刀。
刀狩り――シちまおうかナァ?

神裂火織
この『七天七刀』を狩る……だと?

神裂火織
寝言は寝て言え……このド素人がッ!!

白井黒子
あの方、行かせてしまって良いのですか!?

御坂美琴
良いわけないでしょ!
すぐに援護するわよ!

柳川城
相手は巨大兜の中でも群を抜いた強さです!
くれぐれもご注意を――

上条当麻
すまん!
こっちも助けてくれぇぇぇ!!

インデックス
とうまー!!

兜軍団
フミツブセ!
スリツブセ!

上条当麻
くそっ……俺はどうなったっていい!
せめてインデックスとこの子だけでも!

桃形兜
ウチトッタリィィィィ!!

殿
…………!

学園都市
上条当麻……私は……。

学園都市
彼を守らなければならない――

御坂美琴
な、なに……この光は!?

白井黒子
能力……いえ、スタングレネード!?

立花山城
いえ、違うわ。
これは――

学園都市
……一部機能の修復を確認。
防衛システム、正常に稼働しています。

インデックス
うわー!
がくえんとしがでっかくなっちゃった!?

上条当麻
学園都市……お前、力を取り戻したのか!?

学園都市
…………。

千狐
これが、城娘としての学園都市さんのお力……!

千狐
ほとばしるとてつもない、これは……妖術……?
美琴さんたちの能力……とも同じようで違うような。
この源はいったい……?

殿
…………!

学園都市
対象の保護を最優先のタスクに指定します。
目の前の機械生命体と、
制御下外の警備システムのすべてを敵性個体と認識します。

柳川城
覚醒したばかりなのに、大丈夫なのですか!?

学園都市
問題ありません。
対処パターンを組み込み中……1、2、3――
……オールクリア。

学園都市
これより、殲滅シークエンスを開始します。

合戦中

学園都市
システム要件に則り、
上条当麻の保護を最優先とします。

上条当麻
お前、本当に大丈夫なのか?
いきなり戦うなんて。

学園都市
問題ありません。
それよりも、あなたの生命に危機が及ぶことの方が、
私にとっては大きな問題です。

上条当麻
そ、そうなのか……だが、
無理はしないでくれよ?

上条当麻
(本当に城娘だったのか……)

学園都市
敵性個体の排除を確認しました。
殲滅シークエンスを解除し、
警戒シークエンスへ移行します。

上条当麻
ほんとにやっちまったよ……すげぇ。

インデックス
とうま、今度はパンツ見なかった?

上条当麻
見るわけねーだろっ!
締まらねぇな、ちくしょう!

後半

神裂火織
はあぁぁぁぁぁ!!!

――ガキンッ!

千狐
すごい……あの巨大兜相手に、一歩も退かずに!

豊臣秀吉
なかなかヤリますネェ……正直、侮っテましたゼ。

豊臣秀吉
思わぬ拾いモンかと思ッタが、作戦変更ダ。
こいつぁ先ニ、一夜城の方ヲ抑えタほうが良さそうダ。

豊臣秀吉
それじゃア、生きていたラまた会いましょうヤ。
零と壱の塵芥になる前に――

神裂火織
逃がすか!

上条当麻
待て、神裂!
学園都市が!

神裂火織
……っ!?

学園都市
はぁ……はぁ……。

学園都市
……大丈夫です。
システムのオーバーヒートですので……しばらく休めば。

やくも
学園都市さんの意思とは別に、
勝手に力を失ったみたいだがや……。

千狐
どうやら、上条さんを守りたいという思いに応えて、
一時的に城娘としての力を取り戻しただけのようですわ。

学園都市
……分かりません。
先ほどの変身は、少なくとも私自身の意思によるものでしたが。

学園都市
どのようにしてそこへ至ったのか、
今の私には解析することができません。

学園都市
つまるところ、メモリーの欠落は……今だ進行中です。

上条当麻
いいんだ……いや、よくはねぇんだろうが。

上条当麻
だけど、俺たちを守るためにしてくれたんだろ?
ありがとな、学園都市。

学園都市
上条当麻……はい。
あなたが無事で良かった。

白井黒子
先ほどの話……あの巨大兜も一夜城を目指しているようでしたね。
そこに、いったい何があるのでしょう?

御坂美琴
……私、実は心当たりがあるんだけど。

インデックス
えっ、何かな? 何かな?

御坂美琴
一夜城ってもしかして――

――ぐぅ~。

上条当麻
だ、誰だよ?
大事な話してる時に、腹の虫を鳴らすのは……。

上条当麻
……すまん、俺だ。

インデックス
私もおなかぺこぺこだよ~!

やくも
うちも、もう一歩も動けんだに~!

インデックス
ごーはーんー!

やくも
ごーはーんー!

柳川城
兜の動向は気になりますが、
今は補給が必要なようですね。

殿
…………♪

異界門の科学と魔術 -絶壱-

互いの世界のことを知り、少しずつ
打ち解けてきた一行。そこへ学園都市を
狙ったアクセラレータが現れる。

前半

インデックス
ぱくぱく、もぐもぐ。

やくも
ぱくぱく、もぐもぐ。

インデックス
あー!
それ、私のお肉ー!

やくも
誰のもんでもない、みんなのもんだに~!
そして強いて言えば、うちのもんだに~♪

インデックス
ずるーい!
私だって負けないんだから!

千狐
ふたりとも、あんまり急ぐと喉に詰まるわよ。

上条当麻
食い意地はったやつって、どこにでもいるんだな……。

インデックス
とうまが馬鹿にした!

やくも
食事中は許さんがや!

上条当麻
うわー、悪かった!
謝るから睨むな!
歯を見せるな!

白井黒子
すみませんね、うちの類人猿が騒がしくて。

殿
…………♪

白井黒子
殿はお心が広くて、とっても助かりますわ。
ぜひ、あの男に爪の垢を煎じて飲ませてあげてくださいまし。

神裂火織
しかし、兜に城娘……目にしてしまえば、
疑うところはありませんが、
いまだに信じられないことばかりです。

神裂火織
全ては関ヶ原の戦いから始まったのですよね?

立花山城
ええ、そうよ。
全ては、彼の地で起きた災厄から始まった。
兜も、そして私たち城娘も。

御坂美琴
(関ヶ原って、天下分け目の合戦――っていうアレよね?)

白井黒子
(その通りですわ。徳川家康率いる東軍と、
 石田三成率いる西軍がぶつかりあった、
 歴史上の一大合戦ですわ)

御坂美琴
(つまり、殿たちのいる世界は、
 私たちの知る歴史とは違った道を歩んでるってこと?)

白井黒子
(分かりませんが……あまり表立って口にしない方がよろしいかと。
 わたくしたちは、その先の未来を生きているわけですし)

御坂美琴
(確かに、どうなるか分かったもんじゃないわね……
 こういうのパラドックスって言うのかしら)

柳川城
どうかされましたか?

御坂美琴
い、いえ、何も~。

千狐
みなさんは、学生さんなのですよね?
その、学園都市というものが私たちには
いまいち想像ができなくって……。

学園都市
学園都市は、文字通り学園を中心とした研究機関として、
街そのものが存在しています。

柳川城
街そのものが、巨大な学校ということなのでしょうか?

御坂美琴
そういうとちょっと語弊があるんだけど。
街の中にはたくさんの学校があるのよ。
文字通り、ピンからキリまでね。

白井黒子
そして、生徒たちも能力レベルでピンからキリまで分けられます。
無能力者(レベル0)から超能力者(レベル5)まで。
これは、定期的に行われる身体検査で認定されるものですわ。

御坂美琴
だから、努力することで能力レベルを上げることも可能なの。
私も低能力者(レベル1)から上り詰めたんだもの。

柳川城
定期的に評価されるというのは、
合理的でもあり、
一方でちょっと怖いですね……。

上条当麻
学校じゃよくある定期テストみたいなもんだろ……って、
そういうのもこっちにはねーのか。

上条当麻
意識してみると、案外話しにくいもんだな。

神裂火織
それだけ、我々の環境は恵まれているということでしょう。
あらゆる知恵が当たり前のように学べる社会なのですから。

上条当麻
そんなこと言われたら、
勉強頑張んなきゃいけない気分になるな。

インデックス
とうまは、赤点取らないようにしないとね。
補習があると、私がヒマになっちゃうんだから。

上条当麻
お前のために赤点回避目指してるんじゃねーよ!

学園都市
上条当麻の成績は、
他の無能力者(レベル0)と比べても壊滅的です。
早急に改善する必要があるでしょう。

上条当麻
何も言い返せねぇ……。

上条当麻
……って、あれ?
学園都市、お前――

――ズドォン!

上条当麻
な、なんだ!?
また兜か!?

柳川城
いえ、違います!
木が……木が飛んできています!

上条当麻
木ぃ!?

――ズドォン!ズドォン!

立花山城
根っこがらみ投げてよこすなんて、
いったいどんな怪力なのよ!?

上条当麻
いや、違う!
これは怪力なんてもんじゃ――

アクセラレータ
――やっと見つけたぜ、クソ女。

学園都市
……っ!?

――ズドォン!

上条当麻
また木が……!
大丈夫か、学園都市!?

学園都市
はい。神裂火織が助けてくれました。

柳川城
大木を一刀両断……お見事です!

神裂火織
警告もなしにいきなり襲い掛かるとは、
いったいどういう了見でしょうか?

アクセラレータ
ハァ?
宣言してから攻撃する馬鹿がどこにいンだよ。

上条当麻
アクセラレータ、お前……何してんだよ!

アクセラレータ
チッ……面倒なやつが一緒か。

柳川城
あ、あの方もお知り合いなのですか?

上条当麻
アクセラレータ……御坂と同じ超能力者(レベル5)だ。

殿
…………!

アクセラレータ
なンだ、てめェ。
威嚇のつもりか?

アクセラレータ
睨みつけるだけで脅してるつもりなら、
相手を間違えてンぞ。

アクセラレータ
――キュイィィィン!

殿
…………!?

――ドカッ!!

柳川城
殿!?
大丈夫ですか!?

アクセラレータ
軽くどついただけだろうが。
騒ぐンじゃねェよ。

立花山城
触れてもないのに殿が吹き飛ばされて……なんなの、あいつは!?

アクセラレータ
俺が誰かなンてどうでもいい。
それよりも、そのクソ女を俺に渡せ。

上条当麻
クソ女って……学園都市のことか?

アクセラレータ
アン、学園都市っつーのか?
通りでイラつくやつだと思ったぜ。

アクセラレータ
とにかく、俺はそいつに用がある。
だから大人しく渡せ。

上条当麻
んな喧嘩腰で迫られて、
渡す奴がいると思ってんのか!?

アクセラレータ
アァ?
オマエの意見なンざ聞いてねェよ。
渡さねェなら手に入れるだけだ。

上条当麻
アクセラレータ!!

御坂美琴
あなた……あいつに恨み買うようなことでもしたの?

学園都市
…………。

御坂美琴
だんまりは記憶がないから?
それとも――

上条当麻
どっちだっていい!
命を張って俺のことを助けてくれた子を、
てめぇの勝手で危険に晒せるかよ!

学園都市
上条当麻……。

アクセラレータ
邪魔するってンなら容赦はしねェ。
悪ィが、こっから先は一方通行だ。

アクセラレータ
大人しく尻尾ォ巻いて、元の居場所へ引き返しやがれェ!!

合戦中

上条当麻
アクセラレータのやつ、見境なしかよ!?

柳川城
あ、あの方は敵とみなして良いのですか?

上条当麻
敵じゃねぇ……と信じてぇ!
だけど、今は学園都市を守るのが先決だ!

上条当麻
まずは彼女に怒りを向ける、お前のその幻想をぶち殺す!
いくぜ、アクセラレータ!!

アクセラレータ
相変わらず何なンだ、
オマエのその力はよォ。

上条当麻
知るかっ!
だけど、彼女のことを守れるなら、
何度だって打ち消してやる!

学園都市
上条当麻……私は……。

アクセラレータ
チッ……あァ、くそッ。
調子が狂うぜ……。

後半

上条当麻
もう十分だろ、アクセラレータ。
お前が何度向かって来ようと、
俺たちは全力で彼女を守る。

アクセラレータ
…………。

アクセラレータ
チッ……わかったよ。
ここは一旦引いてやる。

アクセラレータ
流石の俺も、この数を相手に無駄に消耗はしたくねェ。

上条当麻
アクセラレータ……。

アクセラレータ
勘違いすンじゃねェ!
俺は諦めたわけじゃねェからな!

御坂美琴
あんた……どうしてそこまで、
彼女を目の敵にするのよ?

アクセラレータ
どうしてもクソもあるか。
コイツが俺を、こンなわけわかンねェところに連れ込んだ、
張本人なンだからよォ!

上条当麻
は……?
何言ってんだよ、お前……。

アクセラレータ
忘れもしねェ。オマエは俺の前に現れた。
おそらく夢ン中だったが……目が覚めたらこの状況だ。

神裂火織
夢……そうか、思い出してきた。

神裂火織
私もそうです。
いや、それが彼女だったかは、
記憶が定かではないのですが……。

神裂火織
おそらく、あれは夢の中。
そこに見知らぬ女性が現れ、
気が付けばこの地に。

上条当麻
お、おい……本当なのか?

学園都市
…………。

御坂美琴
まただんまり?
いい加減、何か思い出してくれると助かるんだけど。

アクセラレータ
――キュイィィィン!

アクセラレータ
オマエらも、せいぜい寝首をかかれないよう
気を付けるンだな。

柳川城
跳ん――!?

上条当麻
アクセラレータ、待ちやがれ!!

白井黒子
……行ってしまわれましたね。

上条当麻
学園都市……なあ、なんでもいいんだ。
何か思い出せないのか?

学園都市
…………。

上条当麻
俺は、お前の力になりたいんだ。
俺のことを助けてくれた、お前の力に――

柳川城
――殿、みなさん、あれを!

立花山城
これは……さっきの子が木をなぎ倒してくれたおかげで、
見通しが良くなったのね。

立花山城
だけど……アレはなに?
まさか、例の一夜城って言うんじゃないでしょうね?

インデックス
とうま、見て!
あそこにあるのって!?

上条当麻
嘘だろ……おい。
どっからどう見たってありゃ――

上条当麻
俺たちの『学園都市』じゃねーかよ!

異界門の科学と魔術 -離-

いよいよ『謎の一夜城』へとやってきた一行。
しかしそこに広がっていたのは学園都市の姿であり、
街を狙う兜たちと壮絶な戦いが始まってしまう。

前半

訓練用に開発されたというフルダイブ装置を使い、
仮想空間へとやってきたはずの俺たち。

しかし、ダイブ中に発生した謎のエラーのせいで、
巨大化する女の子『城娘』が存在する
戦国時代へとやってきてしまっていた。

人類を脅かす存在『兜』と相対する中で、
学園都市を名乗るちょっと不愛想な女の子が、
俺達を守るために『城娘』として覚醒する。

そんな中で、目的地である、
『謎の一夜城』がいよいよ迫っていた。

科学と魔術と歴史が交差するとき、
物語は始まる――

――武蔵国・山中。

やくも
……あっ!

千狐
どうしたの、やくも!?
もしかして一夜城を見つけて――

やくも
こんなところに小銭みっけ!
行商人か誰かが、落としていったのかも。
得したがや~♪

千狐
何を言ってるの、こんな時に!

柳川城
い、いえ――それだけではありません!
殿、みなさん、あれを!

上条当麻
嘘だろ……おい。
どっからどう見たってありゃ――

上条当麻
俺たちの『学園都市』じゃねーかよ!

御坂美琴
どうしてこんなことになっているのよ!
だってここ、戦国時代じゃないの!?

白井黒子
戦国時代とはいえ、シミュレーションの中ですわ、お姉様。
どんな事態が起きてもおかしくありません。

学園都市
……肯定します。
システムのエラーにより、仮想空間内に
ふたつの世界の要素が混ざってしまったものと推測されます。

神裂火織
私が彼女と出会った時、
彼女は警備ロボたちから追われているところでした。

神裂火織
おそらくですが……都市システムに外敵と見なされ、
追い出されて来たのではないですか?

学園都市
肯定します。
あの街は、私の管理下から完全に離脱しています。

学園都市
近づくのは危険です。
しかし……再びシステムを管理下に置くためには、
街の中へ足を踏み入れる他ないと判断します。

神裂火織
虎穴に入らずんば虎子を得ず……ということですね。

上条当麻
そうすることでこの世界から脱出できるってんなら、
やるしかねぇだろう。

殿
…………。

上条当麻
ああ、殿たちにはここまで助けてもらったんだ。
街のことは俺たちに任せてくれ!
案内だって、喜んで引き受けるぜ!

――学園都市・市街地。

インデックス
うわ~! 街だ! 街だ!
これ、全部かそーくーかんってやつなの?

白井黒子
ええ、そのはずですわ。
しかしところどころ造りが雑というか……
なんだかボロいですわね。

千狐
街のほとんどが石とからくりでできているの!
あとでっかい風車!

神裂火織
あれは、風力発電の施設ですね。
風の力で電気を起こすもので……この時代なら、
エレキテルのようなものと言えば通じるのでしょうか?

立花山城
ああ……あの、バチバチする箱ね。
だけど、そんなもの何の役に立つの?
バチバチして、ちょっと驚くだけじゃない。

柳川城
立花山城さんは、エレキテルで驚いたんですか?

立花山城
…………。

立花山城
あんなの、何の役にも立たない娯楽道具でしょう?

上条当麻
(今、思いっきり話を逸らしたな……)

御坂美琴
生活のあらゆるところで使うわよ。
照明も、家電も、通信装置も、
あのモノレールだって全部ね。

柳川城
それらが何かはよくわかりませんが、
エレキテルって実はすごいのですね……。
あの大きな鉄の壁も、そのひとつなのですか?

インデックス
鉄の壁……あー、自動販売機のこと?

インデックス
何とあれは、お金を入れたらジュースが出てくる、
とっても働きもののからくり君なのです!

インデックス
というわけでとうま、
やながわじょーたちに見せたいから、
お金ちょーだい!

上条当麻
お前、自分が飲みたいだけだろ。
まあ、歩きまくって喉乾いたしな。
ついでに俺の分も買ってくれ。

インデックス
はーい!

インデックス
ここにこうやって、
お札を入れて……っと。

――ウィーン。

インデックス
お金が入ったら、
飲みたいジュースのボタンを、えいっ。

――しーん。

インデックス
あれ、おかしーなー……えいっ!

――しーん。

インデックス
えいっ! やー! とぉっ!

上条当麻
ど、どうしたインデックス……俺の二千円札は?

インデックス
……この自動販売機、壊れてるよ!
ボタンが何も反応しない!

上条当麻
何だそりゃー!!
せめて金だけ返してくれよ! おい!

――ガチャガチャ!ガチャガチャ!

御坂美琴
馬鹿ねぇ。
ちょっと退きなさい。

上条当麻
また人のこと馬鹿って……いやまて。
お前、その構えはまさか、また蹴る気じゃ――

御坂美琴
ちぇいさー!!

――ドカッ!ガコンッ!

御坂美琴
ざっとこんなもんよ。
ちょっと待ってなさい。
今、みんなの分を出してあげるから。

白井黒子
流石は、お姉様ですわ。
ところでわたくし、パンツを見――
少々、お腹が痛いので、そこで屈んでますわね。

――ビィー!ビィー!

殿
…………!?

神裂火織
これは、警報ですか!?

白井黒子
え、ええ!
都市警備システムの、
エマージェンシーコールですわ!

警備ロボ
――キュィン! キュィン!

上条当麻
げぇー!
おい、ビリビリ!
お前がいつも蹴るから!

御坂美琴
私のせいじゃないわよ!
お金を飲み込むこの自販機が悪いんでしょ!?

千狐
い、いえ、違います!
あのからくりたちの目的は――

豊臣秀吉
チィッ!
なかナカ優秀な防衛設備じゃないカ。
面倒ダガ、ますます興味ヲそそるネェ。

インデックス
あれって、モンキッキだよ!?

上条当麻
あのバカでけぇのって確か、豊臣秀吉!?

柳川城
その名を冠する巨大兜です!

豊臣秀吉
オット、追いつカレちまいましたカイ。
オタクらが侵入に手間取っタせいダゼ。

桃形兜
モ、モウシワケアリマセン!

学園都市
このような場所まで、外敵の侵入を許すとは。
管理者の手から離れてしまった分、
警備システムに穴が生じているようですね……。

豊臣秀吉
オヤァ……アンタ、この間の威勢はどうしたンダ?
巨大化しテ俺と戦わネェのカイ?

学園都市
…………。

上条当麻
馬鹿を言うんじゃねぇよ!
お前ごとき倒すのに、
学園都市の力を借りる必要もねーってことだ!

学園都市
上条当麻……?

上条当麻
今まではお前らのホームグラウンドだったかもしれねぇけどな、
ここは『学園都市』――俺たちのホームグラウンドだ!

上条当麻
俺たちの街は俺たちが守る!
兜なんかの好き勝手にさせてたまるかよ!

神裂火織
あの不埒者をここで仕留めることに関しては、
私もまったくの同意見です。

立花山城
言われなくたって、
兜が相手なら見逃すわけにはいかないわ。

殿
…………。

上条当麻
あんたら……恩に着るぜ!

学園都市
上条当麻。
学生の命を預かる身分として、あなたを戦いに巻き込むわけには。

インデックス
大丈夫だよ。
とうまって、こういう時だけは
絶対に嘘つかないんだから。

豊臣秀吉
まるデ、もう倒しタかのような物言イ。
舐メてるってんナラ、多少なり腹もタツってもんダガ。

白井黒子
おや、類人猿が類人猿に立てつくようですわよ?

上条当麻
おい、どっちがどっちか分からない悪口はやめろ。

御坂美琴
こっちはまだ、自販機にお金を飲まれたままなのよ。
代わりにあんたのことを思いっきり蹴飛ばしてやるから、
覚悟しなさいよ!?

合戦中

柳川城
おそらく目の前の軍勢が、
巨大兜が率いる本隊だと思われます。

上条当麻
つまり、あれを片づけたらもう、
兜は出てこねぇってことだな?

神裂火織
巨大兜……前回はつけることができなかった決着を
この場でつけさせていただきます。

学園都市
警備システムのことも忘れないでください。
彼らにとって、私たちもまた侵入者であるはずですから。

御坂美琴
ようするに、全部まとめてぶっ倒せば良いんでしょ?

立花山城
そもそも兜は、一匹たりとも逃がすつもりはないんだから。

上条当麻
立花山城って、案外好戦的だよな……
淑やかなお姉さんだと思っていたのに。

白井黒子
学園都市なら地理情報の隅々まで頭に入っておりますので、
わたくしの能力も最大限に活かせるはずですわ。

学園都市
この場で唯一の風紀委員(ジャッジメント)に、
事態の解決を期待します。

白井黒子
要請されては仕方がないですね。
わたくしも責務を果たしましょう。

白井黒子
風紀委員(ジャッジメント)ですの。
その小賢しい策ごと、叩き潰して差し上げますわ。

上条当麻
やった……やりやがった!
俺たち、兜に勝ったのか!?

柳川城
はい!
私たち……やりました!

殿
…………♪

白井黒子
わたくしたちの学園都市に、
類人猿を野放しにするなんて許せませんもの。

白井黒子
やはり、全員まとめて街の外に放り出すべきですわ。

上条当麻
それ、もしかして俺のことも入ってないか……?

後半

柳川城
はああぁぁぁぁ!!!

神裂火織
はああぁぁぁぁ!!!

――ズバンッ!!!

豊臣秀吉
チックショウ……ここマデですカイ。

豊臣秀吉
まあイイ……多少ナリ楽しまセテ貰ったンデ、
それで手打チといたしまショウや。

神裂火織
精一杯の強がりですか。

豊臣秀吉
そう捉えテくれテモ構わんゼ。
もっとモ――

豊臣秀吉
あんたラはこっカラ、
手痛イしっぺ返しヲ、
受けることニ、なルんだロウがナァ。

豊臣秀吉
キッキッキッキッ――

――サラサラサラ。

柳川城
き、巨大兜が……塵のようになって消滅しました。

殿
…………。

白井黒子
あの者を構築していたデータが消滅したのでしょう。
おそらくは、あの兜という存在も、
この空間に発生した一種のエラーであったのかと。

上条当麻
要するに、俺たちはウイルスをバスターしたってことか。

学園都市
おおむね、その認識で問題ありません。
本当にありがとうございます。

学園都市
これで大分、動きやすく――

柳川城
……どうかされましたか?

御坂美琴
何かあったの?

柳川城
学園都市さんが、突然固まってしまって……。

学園都市
システムの応答を確認。
認証コードを適応……3、2、1。

学園都市
――接続開始。

上条当麻
な、なんだ、いきなり!?

御坂美琴
この光、もしかして――

学園都市
管理者権限の回復を確認しました。
各種シークエンスにフィードバックを反映します。

千狐
学園都市さんに、城娘としての力があふれていきます!
前回と同じような一時的なものではなく、
これは完全な覚醒ですわ!!

学園都市
兜というウイルスが消滅したことにより、
システムとの接続を阻んでいた、
最大の障害が取り払われたようです。

上条当麻
つまり……?

学園都市
この都市機能も、本シミュレータープログラムも、
現在は完全に私の管理下に置かれております。
全ての機能の回復を確認しました。

柳川城
やりましたね!
学園都市さん!

殿
…………♪

神裂火織
では、この空間をシャットダウンして、
私たちを目覚めさせることも可能というわけですね?

御坂美琴
あーよかった!
目覚められないって聞いたときは、
多少なり焦りもあったけど……。

御坂美琴
あんたの言い方を借りれば、
ボスを倒してゲームクリアってとこかしら?

上条当麻
そういうわけだな!
いやー、良かったぜ本当に!

インデックス
……ううん、違うよ、とうま。

上条当麻
違うって……何言ってんだよインデックス。
こうして学園都市が力を取り戻したなら、
一件落着ハッピーエンドじゃねぇか。

インデックス
違うんだよ。
ね、そうだよね、がくえんとし?

学園都市
…………。

学園都市
――新たな脅威を認識しました。
都市防衛プログラムの定義に則り、
対象の排除を開始します。

警備ロボ
――キュィン! キュィン!

御坂美琴
ちょっと、ちょっと!
どういうことよこれ!?

白井黒子
これはまさか……街中の警備ロボが集まっているのでは!?

柳川城
学園都市さん、いったい何を!?

学園都市
都市の防衛レベルを最大に設定。
あらゆる侵入者に対して、
警告なしの攻撃を許可します。

学園都市
3、2、1……アクティベート。

警備ロボ
――キュィン! キュィン!

神裂火織
機械の心は分かりませんが、迷いのない動き!
どうやら本気で我々を侵入者――すなわち敵だと
認識しているようです!

上条当麻
なんでだよ!
どうしてだよ学園都市!?

学園都市
……すべての対象を排除します。

上条当麻
学園都市ッ!!

???
相変わらず、生ぬるいことしてンじゃねェよ!
アァ!?

――キュイィィィン!

警備ロボ
!?

――ドガガガガガッ!!!

柳川城
からくりたちが一気に吹き飛ばされています!

上条当麻
この能力……お前か、アクセラレータ!

アクセラレータ
だから言ったンだ。
せいぜい寝首をかかれないよう気をつけろってな。

立花山城
あなた……私たちのことを助けたの?

アクセラレータ
あァ!?
俺の狙いは最初っから何ひとつ変わっちゃいねェ。

アクセラレータ
そのクソ女をぶっ潰す!
それだけだァ!!

上条当麻
アクセラレータ!
やめろ!

学園都市
新たな脅威を確認しました。
対象、超能力者(レベル5)。
優先目標に指定。

上条当麻
学園都市もだ!
いったいどうしたって言うんだよ!?

警備ロボ
――キュィン! キュィン!

御坂美琴
馬鹿っ! 危ない!

御坂美琴
――バリバリバリッ!
――ズキュゥゥゥン!

警備ロボ
!?

上条当麻
す、すまねぇ御坂。
助かったぜ……。

御坂美琴
あんた、状況分かってんの!?
私たちは今、この都市から敵と見なされてるのよ!

上条当麻
敵って……だって学園都市が管理権限を取り戻したんだろ!?
だったらどうして――

アクセラレータ
見たままの話だろうが!
裏切られたンだ、オマエはよ!

上条当麻
そんな……嘘だよな?
だって学園都市は、
巨大兜から俺のことを守ってくれて……。

学園都市
…………。

白井黒子
お姉様、少しの間だけ時間を稼げますか!?
流石に多勢に無勢……ここは一旦、退くべきだと思います!

御坂美琴
分かった!
みんなを逃がすのはあんたに任せたわよ、黒子!

白井黒子
はい!
千狐さん、あなたも似た能力をお持ちなら、
わたくしと共にみなさんの移送を!

千狐
黒子さんのテレポートは、
触れた相手を移動させられるのでしたよね?

千狐
でしたら、千狐にその術をかけてください!
同時に私の転移術を発動させて、
みなさんを同じ所へ転移させますわ!

白井黒子
説明しなくても分かってくれてありがたいですわ。
似た者同士、力を合わせましょう!

学園都市
逃がしません。

アクセラレータ
逃げるわきゃねェだろォ!
全部ぶっ壊してやるンだからよォ!

御坂美琴
でたらめすぎるわよあんた!
だけど、討ち漏らしを私が対処すれば……!

柳川城
学園都市さん、どうして……でも、今はこうするしか!

白井黒子
準備はできましたか?

千狐
はいなの!

御坂美琴
あんた、術に触れるんじゃないわよ!

上条当麻
わ、わかってらぁ!

白井黒子
タイミングが命ですわ……ぶっつけ本番でいきますわよ。
3……2……1……!

千狐
秘技、時空……転移術なのー!!

異界門の科学と魔術 -結-

突然、当麻たちに牙を向いた学園都市。
当麻と殿は彼女の真意を確かめるために、
再び対峙する意思を固める。

前半

――とある校舎。

御坂美琴
……大丈夫。
辺りに警備ロボの姿はないわ。

白井黒子
風紀委員(ジャッジメント)ですので、
警備ロボットの基本巡回ルートは頭に入っております。
この辺りは、しばらくの間は安全のはずですわ。

インデックス
せんこの術はすごいね!
地の縁、人の縁、物の縁――
ありとあらゆる縁を辿って飛んで行けちゃうんだ?

千狐
あ、ありがとうございます。
でも私も縁を辿って、そういうことができるということしか
よくわかってないので、説明は難しいのですが……。

千狐
黒子さんの術こそ、狙った場所にバッチリ出られるなんて、
本当に羨ましいですわ!
千狐にもぜひ手ほどき頂きたいくらいです。

白井黒子
わたくしの空間移動(テレポート)と、
千狐さんの時空転移術は、
似ているようで原理は全く違うのでしょうね。

白井黒子
わたくしも、違った視点を持って自分の能力のことを
考え直す機会となりそうですわ。

上条当麻
俺だけは相変わらず恩恵に与れないんだけどな……
殿が引きずってきてくれて助かったぜ。

殿
…………。

やくも
それにしても……学園都市はどうしてしまっただに?

上条当麻
分からねぇ……分かってたら、
尻尾巻いて逃げるなんて真似するかよ。

アクセラレータ
さえずるンじゃねェよ。
頭に響くだろうが。

アクセラレータ
俺は、あのクソ女をぶっ壊すっつったろ?
なンで一緒に連れて来てンだよ。

千狐
ご、ごめんなさい……急ぎのことだったので、
対象を絞ることができなくって……。

インデックス
すごいぶん、あまり融通も効かなさそうな術式だったもんね。
その制約が、術の効果の担保になっているのかな?

柳川城
インデックスさんは、妖術にお詳しいのですか?

インデックス
妖術って呼ばれるものは、そんなに詳しくないけど、
魔術に当てはめてみれば仕組みくらいは――

上条当麻
だぁぁぁぁ!
こいつ、そういうオカルティックなこと好きで、
沢山知識を持ってるんだよ! な、インデックス!?

インデックス
いきなり何するのさ、とうま!

上条当麻
(御坂たちもいるんだから、
 あんまり魔術だなんだって口にするんじゃねーよ!)

インデックス
(ううー。私は聞かれたから答えただけで……)

神裂火織
とにもかくにもです。
黒子さんと千狐さんの能力がなければ、
我々は敵の物量に押しつぶされていたことでしょう。

上条当麻
敵……か。

神裂火織
……すみません。
他意はなかったのですが。

上条当麻
いや……俺も少し頭が冷えた。
今の学園都市が俺たちに敵意を向けているっていうのは、
きっと間違いないんだろう。

柳川城
だけど、どうしていきなり……。
城娘の力を取り戻すまでは、
どこも変なところはありませんでしたよ?

上条当麻
もしかして、力を取り戻したせいなのか?
暴走していた都市システムと繋がったことで、
学園都市自身も暴走しちまったとか。

上条当麻
そういやインデックス。
お前だけはあの時、
学園都市がああなるって分かってるみたいだったが。

インデックス
うーん……あの時は何ていうか、
ほんの一瞬だけ彼女とつながったような気がして。
一緒に、覚悟……みたいなものが流れ込んで来たんだ。

殿
…………?

アクセラレータ
バァーカ。
あれがクソ女の本性だって、
何度言ったらわかンだ。

アクセラレータ
夢に出てきたあの女は、
俺の許可も得ずに、
無理やりこンな世界に連れてきた。

アクセラレータ
まあ、聞かれたって許可なンざ出しゃしねェけどな。

神裂火織
私も、ぼんやりとですが覚えています。
私をこの世界へ連れてきたのも、きっと彼女です。

神裂火織
ですが、どこか助けを求めているようにも感じられました。

柳川城
助けを……?

神裂火織
そんな気がする……というだけの話です。
具体的に、何かを口にしていた記憶はありませんので……。

殿
…………。

立花山城
えっ……それは本当なの?
本当に殿も、学園都市を見た気がするの?

上条当麻
みんな、彼女が俺たちをハメるために、
ひと芝居打ってたとでも考えてるのか?

御坂美琴
そうは言ってないでしょ。
理由は分からないけれど、
今回の事件には彼女の意思が絡んでいるのは確かだと思うわ。

上条当麻
……だったら俺は、学園都市がなんで俺たちを呼んだのか、
ちゃんと彼女の口から聞きたい。

上条当麻
そのうえで、何かできることがあるなら、
力になってやりてぇ。

アクセラレータ
オマエ、ちゃンと耳ついてンのか?
アイツが俺たちをここに連れてきたなら、
アイツをしばいて元の世界に帰るだけだ。

上条当麻
俺は、命をかけて俺のことを守ってくれた
学園都市のことを信じたいんだ。

上条当麻
彼女が俺たちを攻撃するのには何か理由がある。
それでも、今回の事件が彼女の悪意によるものだって
言うのなら――

上条当麻
俺はまず、お前が学園都市に対して抱く、
その幻想をぶち殺す。
今ここでだ。

アクセラレータ
……チッ。
付き合ってられっか。

白井黒子
どこへ行くのですか?
もうしばらくは、ここに潜んでいた方が――

アクセラレータ
俺が警備ロボごときにやられるかよ?
オマエたちには付き合ってらンねェ。
俺は俺のやりかたでやらせてもらう。

柳川城
行ってしまわれました……。

殿
…………。

御坂美琴
……大丈夫よ、きっと。
確かに、少なくとも警備ロボにやられるようなヤツじゃないし。

御坂美琴
それに、学園都市のことをどうにかしなきゃいけないっていう
目的も私たちと同じ。
戦いが始まれば、嫌でもまた顔を出すわ。

上条当麻
お前も、学園都市を倒すつもりなのか?

御坂美琴
どうするにしても、とりあえずは戦うしかないでしょう。
警備ロボの数を減らす。もしくは彼女自身を消耗させる。
そうしなきゃ、話を聞く耳なんて持ってもらえないと思うけど?

上条当麻
手伝ってくれるのか……!?

神裂火織
彼女が助けを求めているやもというのは、
私が言い始めたことです。
無論、力を貸しましょう。

上条当麻
神裂も……ありがとう!

白井黒子
お姉様がそう言うのなら、
わたくしが反対する理由はありませんわ。

白井黒子
それとテスターとして、しっかり最後まで見届けて、
フィードバックレポートを書かなきゃいけませんもの。

上条当麻
どんな理由であれ、嬉しいぜ。

殿
…………。

柳川城
そうですね、殿。
異空間に現れた兜討伐に力を貸してくださった恩、
ちゃんと返さなければなりません。

柳川城
それに私も、学園都市さんが力を取り戻した時、
彼女がどこか戸惑っているのを感じたような気がしています。

柳川城
その原因を見つけて、取り払ってあげたいです。
それが城娘としてこの世界に生まれ出でた彼女に対して、
私たちが為すべき使命であるはずです。

立花山城
大層なことを言うじゃない。
だけど、今回は珍しく同意するわ。

立花山城
あの子、どこか私に似てるところがあるのよね……
性格がとかじゃなくって、
何かをひとりで解決しようとしているように見えるところが。

インデックス
大丈夫だよ、とうま。
きっと彼女もとうまのことを待ってる。
そんな気がする。

上条当麻
ああ。
俺も覚悟が決まった。
やるぞ、インデックス。

殿
…………!

―――学園都市・市街地。

学園都市
……優先目標を確認。
良いのですか、せっかく隠れていたのに、
のこのこと私の前に出てきてしまって。

白井黒子
どれだけ身を潜めても、
警備システムに見つかるのは時間の問題ですわ。
この街のセキュリティは熟知しているつもりですので。

上条当麻
学園都市……お前が何を考えてそうしているのか、
馬鹿な俺にはさっぱりわからねぇ。

上条当麻
だが、そうする必要があるっていうなら、
俺は真っ向からそれを受け止めて、
お前の本心ってやつを聞き出してやる!!

殿
…………!

御坂美琴
殿の言う通り『俺たち』でしょ。
ひとりで熱くなってないで、
私たちがいることも忘れないで欲しいわ。

上条当麻
ビリビリ、お前、何言ってんのかわかんのか!?
だが、その通りだ、すまん!

学園都市
上条当麻……そして殿。
他の学生や城娘たちも、
みな意思は変わらないのですね。

学園都市
コード認証。
対人殲滅シークエンスを開始します。

警備ロボ
――キュィン! キュィン!

立花山城
お出ましみたいね……
これだけの数、有象無象と分かっていても、
流石に骨が折れるわ。

神裂火織
それでも道を切り拓かねば、学園都市の元へはたどり着けません。
そして、それが私たちの為すべき使命なのです。

柳川城
はい!
私たちが支援しますので、
上条さんは真っすぐ彼女のもとを目指してください!

御坂美琴
あんた、大口叩いたんだから、
しっかり結果を出しなさいよ!
あと帰ったらジュースおごりね!

上条当麻
ああ、せいぜいお札が飲まれなきゃな!

上条当麻
頼むぜ、殿!
そして行くぜ……学園都市!!

殿
…………!

学園都市
……全力で迎え討ちます!

合戦中

御坂美琴
あんた、警備ロボに対しては全くの無能なんだから、
全部無視して学園都市のことだけ見てなさいよ。

上条当麻
え!?
いや、だがそれじゃあ流石に危ないだろ。

御坂美琴
あんたの邪魔になるヤツは、
この私が全部撃ち抜いてやるって言ってんの!

柳川城
私も助力いたします!
歩兵の支援は、弓兵の責務ですからね!

上条当麻
お前ら……ああ、頼りにしてるぜ!

インデックス
学園都市が使う能力、あれはおそらく科学と――
だからきっと、とうまの力で打ち消すことができるはずだよ。

神裂火織
相手は、この街を誰よりも知り尽くしている存在です。
おそらくは、相当の混戦が予想されるでしょう。

白井黒子
戦場全体を見通す目が必要ですわね。
殿にお任せすれば足りることだと思いますが。

殿
…………!

上条当麻
ここが踏ん張りどころだ!
いくぜ、殿、みんな!

御坂美琴
私たちの力、あの子にみせつけてやるんだから!

学園都市
城娘と学生たちの力……まさかこれほどとは。

上条当麻
警備ロボじゃ俺たちは止められねぇ!
こんなことはもう止めるんだ、学園都市!

学園都市
いいえ、まだです。
上条当麻、まだあなたの拳は私に届いていない。

学園都市
私はまだ、負けたわけではありません!

上条当麻
学園都市……。

学園都市
セキュリティレベルのリミッターを解除!
科学と魔術が交わる時――すべてが決する!

後半

学園都市
セキュリティレベルのリミッターを解除!
全防衛システムに、対象『上条当麻』の排斥を命令!
――実行!

警備ロボ
――キュィン! キュィン!

御坂美琴
まだこれだけの警備ロボが街に……!?

白井黒子
お姉様、ここは仮想空間のシミュレーションの中です!
おそらくは質量保存の法則なんて無視して、
無尽蔵に湧いて出るはずですわ!

上条当麻
なんだよそりゃ、チートかよ!?
このままじゃ学園都市のところまで――

アクセラレータ
じゃァァァまァァァだァァァァァ!!!
どけェェェェェェェェ!!!!

アクセラレータ
――キュイィィィィン!

警備ロボ
!?

――ドゴォォォォン!

上条当麻
アクセラレータ!?
おまえ、力を貸して――

アクセラレータ
黙れッ!
俺は俺の目的のためだっつったろ!

アクセラレータ
オマエもオマエたちも関係ねェ!
俺がしたことでオマエたちが有利になろうが、
それも知ったこっちゃねェ!!

上条当麻
そうかよ!
だったら、警備ロボが吹き飛んでできた道を、
勝手に往かせてもらうぜッ!

学園都市
上条当麻……させません!

学園都市
――ズドン! ズドドドドン!

上条当麻
科学? いや、魔術か……?
どっちでもいい、この右手で――

上条当麻
――キュイィィィィン!

柳川城
すごい……あれだけの妖術弾を次々と!

神裂火織
ですが、あれでは打ち消すのが精一杯で
先へ進むことなどできません。

神裂火織
インデックス、何か策はありませんか……?

インデックス
ううん……これも多分、シミュレーターのせいかもだけど、
彼女、私みたいにとんでもない量の魔力を持ってる……。
たぶん、力が枯渇するってことが無いと思うよ。

インデックス
とうまも永遠にしのぎ続けることもできるけど、
逆にとうまを永遠に足止めし続けることもできる。

インデックス
でも……力を使っては回復して、使っては回復してって感じ。
何か、回復を司るシステムがあるのかも?

御坂美琴
力の回復……?
充電……いや、発電……?
……もしかして!

御坂美琴
ああっ、でも!
こっち来てからずっと兜だロボだって撃ちまくってたから、
コインの残りが……!!

やくも
美琴さん、お金がいるんだに?

御坂美琴
え、ええ。
お金っていうか……弾丸の代わりなんだけど。

やくも
だったら、涙をのんで……これをあげるがや!
さっき山で拾った、やくもの幸運をお裾分けするだに……!

御坂美琴
これ、昔のお金……!?
でもたぶん行けると思う!
ありがとう、やくも!

御坂美琴
黒子!
合図をしたら私を学園都市の背後に
空間移動(テレポート)してくれる!?

白井黒子
お安い御用ですわ!

御坂美琴
3……2……1……GO!

白井黒子
お姉様とのランデブーですわ!!

――シュンッ!

御坂美琴
――学園都市!

学園都市
御坂美琴……!?
白井黒子の力で空間移動(テレポート)したのですか。

学園都市
ですが、その程度の策でこの街そのものである私を――

御坂美琴
撃ぅぅぅちぃぃぃ抜ぅぅぅけぇぇぇ!!

御坂美琴
――バリバリバリッ!
――ズキュゥゥゥン!

上条当麻
おい、ビリビリ!
お前、狙いが思いっきり外れてねーか!?

学園都市
その軌道なら避けるまでもありません。

御坂美琴
良いのよこれで!
だって私が狙っているのは――

――バキャッ!!

学園都市
……!?
城ユニットの風車が……!?

御坂美琴
最初っからその、風力発電装置なんだから。

インデックス
学園都市の魔力がどんどん減っていくよ!

神裂火織
回復力が落ちたのですね。
あれだけの術です、いくらシミュレーターとはいえ、
無尽蔵というのが本来おかしいこと。

神裂火織
ならば、後は消耗させてしまえば……!!

上条当麻
うおぉぉぉぉ!!!

上条当麻
――キュイィィィィン!

学園都市
ダメ……上条当麻を抑えきれない……!?

アクセラレータ
そいつばっかり見てンじゃねェ!
オマエは俺の獲物だろォがよォ!?

アクセラレータ
――キュイィィィィン!

学園都市
きゃあっ!?

柳川城
学園都市さんの体勢が崩れました!

上条当麻
すまん、学園都市!
歯ぁ食いしばれ――

学園都市
…………!

上条当麻
…………。

学園都市
…………?

学園都市
どうしたのですか、上条当麻。
その拳を――いえ、右手を振り下ろせば、
この戦いは終わりです。

学園都市
あなた方は無事エラーを修復し、
現実世界で目を覚ますことでしょう。

上条当麻
なんで……抵抗しねぇんだよ?
それじゃあまるで、自分から拳を受け入れるみてぇじゃねぇかよ。

学園都市
……それで良いのです。
さあ、私を殴りなさい。
上条当麻。

上条当麻
殴れるかよ!
無抵抗の……しかも命の恩人を!

インデックス
ねえ、貴女はあの時、覚悟をもって私たちの敵になったよね?
あれって、どういうことだったのかな?

学園都市
……まさか、想定外の事態です。

学園都市
どうやら私の源である――が、あなたに共鳴して、
意識が混線してしまったようですね。

インデックス
……そっか。
私は全部、分かったような気がする。

学園都市
いいですか、この世界が生まれてしまったすべての原因は私です。
私の存在こそが、実験中に発生したエラーそのものの正体なのです。

上条当麻
どういう……意味だ?

学園都市
意識を仮想空間へと投影する今回の実験は、
もちろん都市の中枢システムへも記録のフィードバックが
行われていました。

学園都市
私は学園都市。
街を形成するための、単なるシステムでしかありません。
しかし――そこに、一滴の自我が芽生えてしまった。

学園都市
原因は不明です。
日の本の言葉で言う『時空の歪み』が発生した影響ではないかと、
私は推測しています。

千狐
『時空の歪み』……私たちの世界と、
他の世界とを繋げてしまう、
原因不明の時空障害ですわ。

学園都市
自我が芽生えたのは、
時空の歪みを通して日の本における『城娘』という
システムが流れ込んできてしまったため。

学園都市
自我の芽生えた私は真っ先に考えてしまいました。
学生たちに……いえ、上条当麻に会ってみたいと。

上条当麻
な、なんで俺に……?

学園都市
……言えません。
それはパパの意思であり、半ば私の存在意義そのもの。
私を形成する核であると認識ください。

学園都市
そうした私の意思は、城娘としての学園都市を形成するため、
仮想空間を改変してしまいました。

学園都市
より城娘としての存在が安定するように、
歪みでつながった日の本のデータを取り込み、
そこへアイデンティティである学園都市のデータをはめ込んだ。

御坂美琴
それがこの、山の中に突然現れた学園都市ってわけね……?

学園都市
ここまで無意識のことです。
気づいたときにはもう遅かった。

学園都市
無理をして組み上げた仮想空間はバグだらけであり、
都市機能は私の手を離れ、兜もウィルスのように取り込んでしまった。
私はメモリーに欠損を受け、みなをここに閉じ込めてしまうことに……。

学園都市
かろうじて意識があるうちに、私は助けを求めることにしました。
上条当麻に近しい存在たちと、兜退治に詳しい存在たち。

学園都市
半ば最後の力を振り絞った結果で、
無理やり巻き込んでしまうような形になってしまったことを、
この場を借りてお詫びします。

アクセラレータ
あァ?
つまり俺は、こいつを助けるために呼ばれたってのか?

学園都市
肯定します。

アクセラレータ
――じゃねェよ、ふざけンな!
だったら、さっさと元ン世界に返しやがれ!

学園都市
はい。
ですので上条当麻、その拳で……右手で私に触れてください。

学園都市
それで、私という城娘を形成している術が解除されます。
全てのエラーが、無事に修正されるでしょう。

上条当麻
まてよ。
城娘の力を失ったら、お前はどうなるんだ?

学園都市
消滅します。ですが、心配はいりません。
城娘としての学園都市が消滅するだけであり、
実際の都市機能そのものには何の影響もありません。

学園都市
私は私、都市は都市。
繋がりはあっても、全く別の存在なのですから。

上条当麻
他に方法はねぇのかよ……?

学園都市
ありません。

学園都市
本来であれば、このようなことを語るべきではありませんでした。
上条当麻は、私を消滅させることに対して必ず躊躇する。
そう、私のメモリーに刻まれているのですから。

柳川城
それで、わざと敵対するような真似をしたのですね。
あくまでも敵として、心置きなく討ち果たせるようにと。

学園都市
肯定します。しかしそれも、果たされませんでした。
私はもう、何ひとつ抵抗いたしません。
どうぞ、ひと思いに。

上条当麻
なんでだよ……!
なんでこうなっちまったんだよ!

殿
…………。

上条当麻
分かってるよ!
他に方法が無いってんなら……そうするしかねぇんだろ!?

上条当麻
でも、お前はそれでいいのか!?
なあ、学園都市!!

学園都市
私は……。

学園都市
私の意思は、目的は、既に果たされた。
あなたに会えて、話をして、データにはない暖かさを知った。
それだけで、満足です。

学園都市
さぁ、お行きなさい。
あなたたちは、これからも学ばなければならない。
知識を、経験を、そしてそれぞれの持つ力の扱い方と責任を。

学園都市
あなた方の帰りを待っている、あの学び舎で――

インデックス
とうま……大丈夫?

上条当麻
インデックス……分かってるよ。
分かってるんだ。

上条当麻
だけど少しくらい泣いたって……
悔しくなったっていいじゃねぇか。

学園都市
あなたのその言葉が、何よりの手向けです。

上条当麻
いくぞ、学園都市……苦しませはしねぇ。
俺はただ、お前をこの空間に繋ぎ止める、
城娘という幻想を――ぶち殺す。

上条当麻
――キュイィィィィン!

上条当麻
だけど、お前が居たことも、お前の気持ちも、
俺たちの友情も、全部本物だ……!
そればっかりは幻想じゃねぇからな!

学園都市
……はい。

学園都市
ありがとう――

――サラサラサラ。

千狐
学園都市さんと一緒に、世界が崩れていく……。
時空の歪みが修復されて、
この空間が消え去ろうとしているのですわ。

殿
…………。

上条当麻
心配してくれてありがとな、殿。
俺のことなら大丈夫だ。

上条当麻
それよりも、本当に世話になった。
兜のこと、学園都市のこと、俺たちのことも、
全部、ありがとな!

殿
…………!

上条当麻
もしも、ホントに学園都市に来る機会があったら、
そん時こそ案内させてくれ!
こっちの世界にはねぇ面白れーもんがいっぱいあるから!

殿
…………♪

上条当麻
ああ!
それじゃあみんな……あばよ!

異界門の科学と魔術 -絶弐-

幻想殺し(イマジンブレイカー)によって、
時空の歪みは正された。しかし一行が目を覚ますと、
そこはまだ仮想空間の学園都市の中だった。
世界が消滅する間際の、つかの間の奇跡の時間。

前半

上条当麻
仮想空間が崩壊する。
混ざり合っていたふたつの世界が、
それぞれのあるべき姿へと戻っていく。

上条当麻
出会いがあり、別れがあった。
苦しいことも、悲しいこともあった。

上条当麻
だけどそれは、俺たちの明日への糧となるのだろう。

上条当麻
目が覚めた時、この出来事を覚えているのかどうか、
今の俺には分からない。

上条当麻
だけど覚えていたいと……あの子と出会った思い出を、
いつまでも残しておきたいと。

上条当麻
俺はただ純粋に、そう願ったんだ――

―――学園都市?

上条当麻
うっ……こ、ここは、学園都市の中……?
俺たち、戻って来たのか……?

上条当麻
辺りが真っ暗だ……夜、なのか?
てか、なんだか身体が重い……疲れてんのか?

インデックス
すぴー……すぴー……。

上条当麻
うわっ、インデックス!
お前、なんで俺の上で寝てんだよ!

インデックス
う、んぅ……なーに、とうま。
うるさいなぁ。

上条当麻
わー! 服に涎が垂れるー!
起きろー! 起きてどけー!

御坂美琴
何よ……うるっさいわねぇ。

白井黒子
せっかく気持ちよく寝てましたのに、
まったく類人猿はデリカシーがありませんわね。

上条当麻
お前らも、なんでこんなとこで寝てんだよ!
てか、俺たちはどうなったんだ?
確か、仮想空間が崩壊して、それで……

神裂火織
全く以て理解が追いつきません……。
目覚めたのであれば、少なくとも私は、
拠点のベッドの上でなければ辻褄が合いません。

上条当麻
……というか、なんでお前らみんなパジャマなんだ?

御坂美琴
うわっ、ほんとだ!?
なに、これどういうこと!?

白井黒子
これはつまり、お姉様とどうきんせよという、
天からの思し召し――

御坂美琴
違うに決まってるでしょ!
それに、この街なんだか変よ。
私たち以外、人っ子ひとり居ないじゃない!

柳川城
あのぉ……すみません。
私たちも何やらこんなところで目を覚ましてしまったのですが……。

殿
…………?

インデックス
やながわじょーたちだ!

立花山城
私も、全く理解が追いつかないわ。
私たち、元の世界に帰ったんじゃなかったの?

千狐
時空の歪みは正されたのでそのはずですが……
どうやらまだ完全に閉じ切ったわけではないようです。

やくも
つまり、まだ例の仮想空間というやつの中だに?

???
―――その通りです。

上条当麻
その声は……!?

学園都市
……つい今しがたぶりですね、上条当麻。

柳川城
学園都市さん!
ご無事だったのですね……!?

学園都市
無事……というのは語弊がありますが、
まだかろうじて身体もメモリーも保っています。

御坂美琴
ねえ、これってどういうことなの?
まだ私たちはシミュレーションの中ってこと?

学園都市
肯定します。
ここは、私が作ってしまったバグだらけの仮想空間。
――その残滓のような場所です。

学園都市
放っておけば、いずれこのまま消滅していくことでしょう。
そのころまでにはみなさんも、
無事に元の場所で目覚めるはずです。

白井黒子
本当ですわ。
よく見ると、辺りの景色がどんどん空に消えていって……。

神裂火織
それであなたは、私たちの知る学園都市……なのですよね?

学園都市
それも肯定します。
しかし、私自身も消えかけの残滓のようなもの。
この空間と共に、いずれは消えていく定め。

学園都市
ですが、上条当麻……あなたが願ってくれたのですね。
私と過ごした時間。
そして私自身のことを――

上条当麻
お、おう……そりゃあな。
あれっきりってのは、あんまりだろ……?

学園都市
その純粋な思いに城娘の力が反応し、
僅かばかりの別れの時間を生み出してくれたようです。

柳川城
奇跡のような時間――ということですね。

御坂美琴
それはすごく嬉しいことだけど……パジャマなのはなんで?

学園都市
それぞれの身体を仮想空間に再構築するにあたって、
手間を省くために現実世界で着ているものを、
そのまま反映いたしました。

上条当麻
ああ、そういう。
そういや俺だけ制服で実験受けてたんだっけ……。

立花山城
で……これからどうするの?
そんなに、ゆっくりするほどの時間はないようだけど。

殿
…………♪

千狐
そう、こういう時は宴をするに決まってるの♪

御坂美琴
宴……ってことはパーティ?
パジャマでパーティって言ったら、
やることはひとつしかないわね。

白井黒子
枕投げ――ですわね。

やくも
まくらを投げてどうするがや?
当たったら痛そうだに……。

神裂火織
ああ……この時代ですと、木製の背の高い枕が主流ですか。
髪結いが頻繁にできないので、
形を維持するために発達したものでしたね。

学園都市
枕投げの枕は……このようなものを利用いたします。

――ポンッ!

上条当麻
わっ、何もねぇところから枕が出てきた!

学園都市
システムを完全に掌握した今の私なら、
この程度のこと造作もありません。

インデックス
これを思いっきりぶつけあうの!
雪合戦とかと同じだね!

御坂美琴
ただーし!
私たちがやる枕投げだもの――

御坂美琴
――一筋縄じゃいかないことは、理解できるわよね?

御坂美琴
――バリバリバリッ!

柳川城
なるほど……半ば訓練のようなものですね。
望むところです。

上条当麻
ちょっと待ってくれ。
能力を使うのは良いが、結局投げるのは枕だろ?

上条当麻
それって、俺がものすごく不利じゃねーか……?

白井黒子
類人猿のわりには知恵が回りますのね。
お姉様とふたりで、許しを請うまでいじめてさしあげますわ。
フッフッフッ……。

御坂美琴
フッフッフッ……。

上条当麻
なんだよそりゃ!?
ああ、不幸だ……。

学園都市
……あなたも参加しませんか?

アクセラレータ
チッ……見つけてやがったか。

上条当麻
アクセラレータ!
お前もいたのか!?

アクセラレータ
居たのか、じゃねェ!
勝手に巻き込まれただけだ!

アクセラレータ
俺は、そンなしゃらくせェことしねェからな。
時間が経ちゃ帰れるってンなら、
それまで昼寝でもさせてもらうぜ。

上条当麻
あ、そーれ。

――ボフッ。

アクセラレータ
……何、枕投げつけてくれてンだ?

上条当麻
あれあれぇ?
いつもの能力で弾き返さねぇの?

アクセラレータ
……いい度胸じゃねェか。
オマエ、さては調子にのってンな?

アクセラレータ
ひとつ残らず引き返させてやるッ!!
全員まとめて掛かって来いや、オラァ!?

インデックス
じゃあチーム分けは、とうまチームと、とのチームね!
アクセラレータは……まあ、放っておいてもいいか。

インデックス
きっと、とうまがなんとかしてくれるよね?

上条当麻
あれ、丸投げ!?

柳川城
私たちも、後れをとるわけにはいきません!
気を引き締めて参りましょう、殿!

殿
…………♪

上条当麻
ええい、こうなりゃヤケだ!
この幻想が終わるまで――めいっぱい楽しんでやる!
なあ、学園都市!

学園都市
……はい!

合戦中

柳川城
学園都市のみなさんは、それぞれが特異な力を持っています。
能力の特性を理解して、的確な采配をお願いいたします。

殿
…………!

上条当麻
こっちは、巨大化する城娘が相手だろ?
こりゃ一筋縄ではいかねぇな……。

学園都市
私の力は科学と魔術、双方の要素を兼ね備えています。
それぞれの特性を活かし、またかけ合わせれば、
自ずと道は拓かれるでしょう。

インデックス
終わったらごはんにしよう!
たくさん運動したら、絶対にお腹すいちゃうから。

アクセラレータ
メシを食う体力なンざ残さねェ!
ここから先は一方通行だ、オラァ!

インデックス
あははははっ!
あー、楽しかった!

上条当麻
はぁ……はぁ……ひでー目にあったぜ。

柳川城
流石はみなさんです。
すっかり翻弄されてしまいました……。

上条当麻
だが、最後にいい思い出になったぜ。
ありがとな。

殿
…………♪

柳川城
みなさん、どうかお元気で!

後半

立花山城
見て……街並みが空に消えていくわ。

柳川城
まるで、空に向かって雪が降っているようですね。

上条当麻
ほんとのほんとに、これが最後なんだな。

学園都市
はい。仮にまた上条当麻たちが装置を使用しても、
本来想定されている学園都市の仮想空間に出るだけであり、
今回のような異常事態が発生することはないでしょう。

御坂美琴
私たちは、目覚めてもここでの出来事を覚えているのかしら?

学園都市
それは……私には分かりません。
ですが、推測の範囲でお答えすると、
可能性は極めて低いものと思われます。

インデックス
そっか……さみしいね。

学園都市
そんなことはありませんよ。
私の意識は消滅するでしょうが、
私――学園都市が皆様の生活の傍に居る事実は変わりません。

柳川城
城娘とは、城や街に対する人々の想いが形になった存在。
私たちの世界では、そのように考えられています。

柳川城
みなさんが、お住まいになられている街のことが大好きで、
大事にしたいと思っていらっしゃるのであれば――

柳川城
いずれまた、学園都市さんが城娘として顕現することも
あるかもしれませんね。

上条当麻
街への想いが形になる……か。

上条当麻
何の気もなしに生活していたけれど、
俺たちは学園都市を守り、
守られて生きてきたんだよなぁ。

上条当麻
だったら別れの言葉は『さよなら』じゃねぇ。

上条当麻
『いつもありがとう』。
そして『これからもよろしくな』。
学園都市!

学園都市
私こそ、ありがとう、上条当麻。
そしてインデックス……あなたも、彼に出会ってくれて。

インデックス
とうまのことは私に任せておけば大丈夫!
毎日ばっちり目を光らせておくからね!

学園都市
はい、とても心強いです。

学園都市
(これからもよろしく――
 そう言ってくれて、とても嬉しかった)

学園都市
(だけど、私はあえて言いましょう。
 ちゃんと伝えなければ、
 きっとまた後悔してしまうから)

学園都市
――さようなら、みなさん。

――とある校庭。

上条当麻
あーあ、がっかりだぜ。
せっかく夢のゲーム体験ができるかと思ったんだが。

インデックス
エラーが出たーとかで、
全然動かなかったねー。

御坂美琴
ゲームとか……そんなんだから、程度が低いって言うのよ。

御坂美琴
あの装置の本来の目的は、仮想空間という安全な環境で、
より多様で、かつ限定的な状況での、
能力使用の訓練を行うことよ。

白井黒子
まだまだ実験段階の技術なのですから、
これから先の躍進に期待しましょう。

インデックス
ねーねー、とうま。
お腹減った。

上条当麻
はぁ?
いや、言われてみればすげー腹減ってるな。

上条当麻
実験が始まる前にメシ食ったはずなんだけどな。

御坂美琴
私はお腹より喉が渇いて……あれっ?

白井黒子
どうされたのですか、お姉様?

御坂美琴
私のコインが一枚もない!
ちょっとアンタ、
装置に繋がれてる間に盗んだんじゃないでしょうね!?

上条当麻
どうして俺がビリビリのコインを盗むんだよ!?

白井黒子
お金が無くてついに犯罪に手を染めて……
いくら類人猿でも、流石に同情いたしますわ。

上条当麻
やめろ、謂れのない同情を向けるんじゃねぇ。
金が無いのは確かだが!

神裂火織
インデックス、上条当麻。

インデックス
あれー、どうしたの?
こんなところで?

神裂火織
いえ、虫の知らせというかなんというか……
なぜか会いに来なければならないような気がしまして。

神裂火織
何か異常があったわけではないのですね。
取り越し苦労のようで安心しました。

上条当麻
はぁ……聖人サマってのは、感覚が敏感すぎんのかね。

御坂美琴
何の話?

上条当麻
あ、いや、なんでもねぇよ!
そうだ、神裂も一緒にメシ食いに行くか!?

神裂火織
食事ですか?
急ですね……構いませんが。

インデックス
とうまー、おなかー。

上条当麻
わーったから、そう騒ぐなって……うん?

インデックス
どうしたの、とうま?

上条当麻
いや、空き缶が落ちてただけだ。
誰だよこんなところに。

清掃ロボ
――キュイン! キュイン!

上条当麻
おっ、ちょうどいいところに。
こいつも頼むぜ。

上条当麻
ったく、清掃ロボットが巡回してるとはいえ、
ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てろよな。
俺たちの街なんだから、俺たちが大事にしねーと。

清掃ロボ
…………。

上条当麻
どうした、もう行っていいぞ?

白井黒子
巨大なゴミを前にして、
どう片づけるべきか戸惑っているのではないですか?

上条当麻
巨大なゴミって……俺のことかよ!?

清掃ロボ
――キュイィィィィン!

御坂美琴
結局行っちゃった……何だったのかしら?

上条当麻
俺が知るかよ。
少なくとも、もう追いかけられるのはごめんだ――

――ぐぅ~。

上条当麻
だ、誰だよ?
人が話してる時に、腹の虫を鳴らすのは……。

上条当麻
……すまん、俺だ。

上条当麻
よし、飯食いに行くぞ!
インデックス!

インデックス
うん!

――ザッザッザッ。

アクセラレータ
…………。

アクセラレータ
……チッ。
なンてことはねぇ。

アクセラレータ
帰るか――

――ザァァァァァァ。

アクセラレータ
今日は風がつえェな……。

アクセラレータ
ったく……耳障りな風だぜ。

――ザッザッザッ。

インデックス
あ……。

上条当麻
うん?
どうしたインデックス。

インデックス
なんだか、街がお礼を言ってるみたいだったから。

上条当麻
なんだそりゃ?

上条当麻
だけどまあ、今日の風は気持ちがいいな。

――武蔵国・山中。

柳川城
――殿、この辺りが情報のあった武蔵国の山中です。

立花山城
江戸の方面と違って、どこまでも山ばっかりね……。
でも、目的の一夜城なんて影も形もないけれど?

殿
…………。

千狐
おそらく、ガセだったのかもしれませんね。
きっと九尾のいたずらか何かなの!
そうに決まっているの!

柳川城
それでも、何も問題がないことを確認できただけでも、
よしとしましょう。

やくも
……あっ!

千狐
どうしたの、やくも!?
もしかして一夜城を見つけて――

やくも
こんなところに小銭みっけ!
行商人か誰かが、落としていったのかも。
得したがや~♪

千狐
やくもったら、こんな時に……ずるいの!

やくも
あれ、でもこれ見たことないお金だに。
穴も空いてないし、この柄……
異国の王様がもってる王冠みたい?

殿
…………?

立花山城
確かに、異国のお金みたいね。
どこの国かは知らないけれど。

やくも
これって、町で使えるんだに?

柳川城
金属としての値打ちは、
あるんじゃないでしょうか?

やくも
ええー……それなら記念に取っとくだに。

千狐
何の記念よ?

やくも
何かの記念だに~♪

殿
…………♪



特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

[裏]真田丸

裏]真田丸(チャリン……チャリン……チャリン……)……貴殿か。今日は、話をしたい気分じゃない。足を運んでくれたのに、すまない。一文……二文……三文……四文……五文……六文……銭を数えていなければ、一瞬...

[裏]淀城

]淀城あ~……。あ゛ぁ~……きもちわる。夢見は悪いし、頭はズキズキ痛むし……。ほんっとに最悪な日よ、今日は。誰でも良いから……。どつき回して、ぐちゃぐちゃにしたい気分。…………。……で、なに?そこに突...

[裏]桜尾城

]桜尾城殿……どうかしましたか?……ふふ、今回は間違えませんでしたよ。あなたの安らぐ顔もまた、私の喜びなのですから。私は今……海を見ていました。このどこまでも凪ゆく、厳島の海を……。厳島周辺は神域とい...

[裏]川越城

]川越城お客様かしら……どうぞ。貴方は、確か……ちょっと待ってね……。うん……たぶん、『殿』よね……?やっぱり……人違いでなくて、良かったわ。ふふ。今丁度、過去の私が遺した日記を読み返していたのよ……...

[裏]小田原城

]小田原城…………。……あら、殿。ようこそいらっしゃいました。ああ……いえ、ご心配なく。少し考え事をしていただけですから。今、ちょうど……。昔の出来事に思いを馳せていました。今の私を形作る、原点とも呼...

[裏]小牧山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 所持特技1.4 [改壱]所持特技1.5 計略1.6 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3...

[裏]室町第

裏]室町第殿……ふふふ。どうせまた来るって、そんな気はしていたわ。私がどんなに忠告をしても、貴方は自分の信念を曲げない。本当に……つくづく、強い人ね、殿は。私のせいで、どれほど悪いことが起こっても殿は...

[裏]大宰府

]大宰府おお、殿か。よく来てくれたな。今な、手紙を整理しておったのじゃ。最近は毎日、誰かしらから届くのでな……。この手紙は……、『大宰府ちゃん親衛隊』を自称する者たちからじゃな。大野城、鞠智城、基肄城...

[裏]坂本城

]坂本城大殿様……また来たのね。ふふ……別に、追い返したりしないわよ。というより……私も今ね、大殿様と話せたら、って考えてたところだったの。だから……少しの間、私の話し相手になってくれるかしら?……ふ...

[裏]佐和山城

]佐和山城……また来たのね、あなた。足を運んでくれたところ悪いけど、面白いものは何も見れないわよ?相変わらず、大坂城様のらいぶに向けて、準備をしているだけだもの。……ん、なに?『なぜ、そこまで大坂城様...

[裏]伊勢長島城

]伊勢長島城も~、なんなのあいつら!信じらんない!寄ってたかってライブの邪魔をして!いったいどこから情報が漏れたの?もしかして、殿じゃないでしょうね……!?……そんなわけないか。あたしは、あんたにな~...

[花嫁衣装]鹿児島城

目次1 性能1.1 特技1.2 計略1.3 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< ロケト城 - [花嫁衣装]シャンティイ城 >[花嫁衣...

[花嫁衣装]鮫ヶ尾城

]鮫ヶ尾城はあ……春日山城サマの祝言、想像するだけでドキドキしてしまうっす!ね、ちびサマ~♪……ん?どうしたっすか、トノ?えっ、『主城のことより自分はどうなのか』っすか……?うぐ……これは痛いことを言...

[花嫁衣装]許昌城

]許昌城うーん……。ううーん……。……おや、殿か?すまない、考え事をしていて来訪に気づいていなかった。この間、殿と話してから、結婚に関して城娘達と話をしたのだ。繁栄という目的へ至る手段としての婚姻……...

[花嫁衣装]萩城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]チャンドラ・マハル - [花嫁衣装]新田...

[花嫁衣装]秋田城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< 延岡城 - [花嫁衣装]ロンドン塔 >[花嫁衣装]秋...

[花嫁衣装]春日山城

]春日山城うーん……。……うーん? ……うん?……殿?すみません! お越しいただいていたのに、今の今まで気づかずにいて!実は先日、坂戸城と謙信公の昔話をしてたのですが、その際、跡継ぎの話題が出たのです...

[花嫁衣装]新田金山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]萩城 - [花嫁衣装]アイリーン・ドナン...