ストーリーテキスト/異界門と蒼空の魔女

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目次

異界門と蒼空の魔女[]

異界門と蒼空の魔女 -壱-

人気の無い場所で一人、不気味な笑い声を
漏らす妖怪……九尾。異界門を開いて異形を
呼び寄せた彼女の胸裏に隠された企みとは……?

前半

――日の本、某所。

九尾
……くふ、くふふ。

九尾
ようやくじゃ……。
これでようやく、異界門の用意が整う……。

桃形兜
ヤリマシタネ、九尾様!
コレデ再ビ、異界門カラ 悪シキ者ヲ呼ビ寄セテ、
今度コソ城娘タチヲ一網打尽ニ……。

九尾
とはいえ、これだけで決定打を与えられるとは思っていない。

九尾
……策は充分に練らねばならぬ。
生半な手立てでは、容易く打ち払われてしまうことじゃろう。

桃形兜
…………。

九尾
城娘の軍勢に風穴を空ける『何か』と出会えれば僥倖……。
じゃが、流石にそれは高望みが過ぎるか。

九尾
ともあれ……吾の門によって、異界と此世は交合を果たした。
さて、此度は何処の世へとつながるか――

九尾
――む。

九尾
ほう。これはこれは……。
よもや、このような世と巡り合うとは。
予想だにしなかった……くふふ……。

桃形兜
……何ガ見エタノデスカ?

九尾
人の世を脅かす黒き異形と……それを討つ使命を帯びた少女たち。
存亡と平和を掛けて繰り広げられる戦い。

九尾
くふ……面白い。まるで兜と城娘のようではないか。

九尾
……よし。決めたぞ。
あの異形たちの力を借りることにしよう。
汝の出番じゃ……桃形兜。

桃形兜
エェッ! 僕デスカッ!?

九尾
適当な異形を何体か、此処へ連れてくるのじゃ。

九尾
力の一端でも解することができれば、
吾の力で贋物を生み出すことが可能となる。
新たな兵として使役するのじゃ。

桃形兜
アノォ……モシカシテ、
ソレガ済ンダラ僕ハオ払イ箱ッテコトデスカ……?

九尾
……汝が気にすることではない。

九尾
無論、ここで吾の命を果たせぬのなら、
この場で切って捨てることにするが……どうする?

桃形兜
ヒ、ヒイイィッ!?
了解シマシタ、スグニ連レテ参リマスゥゥゥウウ!

九尾
……さて。此度も上座から、
悠々と見物させてもらうことにするかの。

九尾
ほれ……そこの兜、汝も此方へ寄るがよい。

佐竹式毛虫形兜
ソコノ兜トイウノハ、我ノコトデショウカ……?

九尾
……喜べ。
ちょうど良いところに居合わせた汝に、
褒美をくれてやろう。

九尾
此度の騒乱の行く末を、
特等席で見届けさせてやる……感謝しろ。
くふ、くふふふ……。

佐竹式毛虫形兜
…………?

――――

ウィッチとしての訓練と、
ネウロイから人々を守るための戦いを繰り返す日々。

ストライクウィッチーズに入隊してからしばらくが経って、
やっと部隊のみんなと打ち解けてきた――ある日。
それは突然起こった……。

飛行訓練の最中……空の真ん中に現れた、大きな穴。

……危険だってことは、よく分かってた。
でも……胸騒ぎが止まらなかったの。

どうしてかな……その穴の向こうから、
誰かが助けを求めているような気がして――

――――

――所領付近の森林。

???
――待ってよぉ、芳佳ちゃん!
どこまで飛んでいくつもりなの?

???
これ以上は危ないよっ!
一度、基地に戻らないと……!

???
お願い、リーネちゃん……もう少しだけ。
あの山の向こうまで調べたら、すぐに帰るから!

???
どうしてかな……嫌な予感がする。
何か、良くないことが起きる前兆みたいな――

――――

時を同じくして……少女たちの進路上に位置する平野。

黒い異形
――、――――

柳川城
――はああぁぁぁぁぁっ!!

立花山城
――柳川城、無事っ!?

柳川城
……はい、なんとか。
ですが、少々力を使い過ぎてしまったようです……。

立花山城
無理もないわ。
相手は遭遇したことのない異形……。
情報があまりに不足しているもの。

柳川城
私たちが未だ遭遇したことのない、
兜……ではないのですよね、千狐さん?

千狐
……はい。あの黒い異形がもつ力は、
千狐たちが相対してきた兜たちとは、
まったく異なるものなの……。

殿
…………。

柳川城
未知の敵に、この多勢。
その上、兜と徒党を組んで攻めてくるとは……。

立花山城
まずい状況だけど……。
この場で覆せない以上、受け入れて戦うしかないわね。

柳川城
……せめて、
救援の城娘を呼ぶ余裕があったら良いのですが――

???
――待ってってば、芳佳ちゃん!
置いてかないでよぉ~……!

柳川城
――っ? 今の声は……?

???
――見つけたよリーネちゃん、ネウロイの大軍だ!

???
ほ、本当だ……それに、
ネウロイ以外にも見たことのないのがいっぱい居るよ。
大きな鎧、みたいな……?

殿
…………!?

千狐
遠くの空から、お姉さんが舞い降りてきたの……!?
あれは……魔女?

やくも
ど……どういうからくりだに……?

???
どうしよう、芳佳ちゃん……。
一度基地に戻って、ミーナ隊長に報告した方がいいかな?

???
でも、のんびりしてたら被害がどんどん広がってっちゃう。
少しでも早く、住民たちの避難を手伝わなきゃ……!

???
それはそうだけど……。
あんな数のネウロイを私たちだけで相手するなんて――

???
――えっ。

???
(ごしごしごし)

???
…………。

???
(あの大きな鎧はなんだろう……ネウロイの仲間?)

???
(悩んでる時間なんか無い……。
 けど、分からないことが多すぎるよ……)

???
……芳佳ちゃん。

???
(リーネちゃんの言う通り、基地に戻った方が良いのかな。
 坂本さんやミーナ中佐に報告して、それから……)

???
――芳佳ちゃん、芳佳ちゃんってば!

???
――んっ?
どうしたのリーネちゃん、そんなに慌てて……?

???
あそこ見て! 大きい女の人が二人っ!

柳川城
…………?

立花山城
…………。

立花山城
(空を飛ぶ少女……。
 ……あの様子、城娘や兜を知らない?
 それに――)

???
――ぅわあっ、ほんとだっ!
すっごくおっきい!?

???
ど、どういうこと……?
夢を見てるわけじゃ、ないよね?

???
どうする芳佳ちゃん……!?
な、なんなの……でも、悪い人ではなさそうな……?

千狐
ご安心ください、お二人とも!
千狐たちに、危害を加える意思はないのー!

やくも
うちらは心の清らかな神娘だにー!

???
あれは……狐さんと、蛇さん……?

???
ふさふさの耳に……尻尾。
やっぱり、悪い人には見えないけど……?

???
…………。

???
……あっ。

???
どうしたの、芳佳ちゃん?

???
あの大きな女の子たち……怪我してる。
私たちが着くまで、ネウロイと戦ってたんだ……。

???
……本当だ。

???
…………。

???
リーネちゃん……私、
この人たちのことを信じてみようと思う。

???
根拠は無いけど、きっと大丈夫だと思うの……どうかな?

???
うん……そうだね。
ちゃんと事情を話せば、力を貸してくれるかも……!

???
……よし、それじゃ――!

宮藤芳佳
私は宮藤芳佳! 第501戦闘航空団――、
通称ストライクウィッチーズに所属する、ウィッチです!

リネット・ビショップ
同じく501部隊所属、リネット・ビショップと申します!

やくも
ご、ごーまるいち……すとらい――なんて言っただに?

殿
…………。

リネット・ビショップ
あの反応……ウィッチを見たことがないのかな?
さっきも私たちが飛んでることに驚いてたし、
ネウロイを相手することにも戸惑ってるみたいだった……。

宮藤芳佳
私たちは人々を脅かす敵――ネウロイと戦う部隊です!
空に現れた大きな穴を潜ってここまで来ました!

立花山城
空に現れた大きな穴……また異界門が生じたの?
……『ネウロイ』というのはあの黒い異形のことね……?

柳川城
……そして空を舞う『魔女』なる少女。
少しずつですが、状況が見えてきましたね……。

立花山城
こちらも自己紹介をしましょう。
私は立花山城……こっちの白い子は柳川城よ。

柳川城
私たちは御城の願いを帯びた者……城娘。
先に仰っしゃられた『ネウロイ』と徒党を組んでいる異形――、
兜から此世を守るために戦っているんです。

リネット・ビショップ
城娘……それから、兜……。

立花山城
戦ったことがあるなら都合が良いわ……力を貸していただけない?
ちょうど対処に手こずっていたところなの。
細かい話はその後に……いいわね?

柳川城
兜たちの対処は、私たちにお任せください!
もちろん、ネウロイの撃破もお手伝いします!

宮藤芳佳
了解です……協力してこの場を乗り切りましょうっ!

合戦中

宮藤芳佳
あ、貴方がこの軍の司令ですね……?
改めまして……よろしくお願いします、殿さん!

殿
…………!

立花山城
……兜とネウロイはご丁寧に、
それぞれ別の道を通って、こちらに侵攻してくるみたいね。

宮藤芳佳
なるほど……それでは私は、
二つの隊列が合流する場所で迎え撃ちたいと思います……!

宮藤芳佳
戦況に応じて移動することもできますから、
その場合はご指示をお願いします!

柳川城
そんな……危険ではありませんか?

宮藤芳佳
大丈夫です、いつも訓練してますから!
私と同じように空を飛ぶ敵が相手じゃなければ、
そう簡単に攻撃をもらったりはしません!

千狐
今回、敵軍の中に空を飛ぶものはいないようです。
宮藤さんの被弾には気を払わなくても大丈夫そうですね……!

宮藤芳佳
あ、それから……。
私の魔法力は戦う以外にも使い道があるんです!

宮藤芳佳
傷が治るのを早めたり、
敵の攻撃の威力を弱めることだってできます!
私の力が届く範囲だけになっちゃいますけど……。

柳川城
いえ、とっても心強いですよ。
力を貸していただけたこと、感謝しています。

立花山城
……見なさい、ネウロイたちが動きだしたわ。
思った以上に硬いから、対処には注意しましょう。

柳川城
それから……数は少ないものの、
巨大な身体と強い力を有するネウロイも居るようです。
気をつけてくださいね……殿。

宮藤芳佳
誰も傷つけさせはしません……。
城娘さんと一緒に、みんなを守り抜いてみせます!

宮藤芳佳
はぁ、はぁ……ネウロイも、兜も……。
侵攻してくる敵は全て倒せたみたいです。

殿
…………。

宮藤芳佳
いえっ、お礼なんてそんな……。
こちらこそ、的確なご指示をありがとうございました!

殿
…………。

後半

立花山城
……はぁ。
どうにか乗り切ったみたいね……くっ……!?

柳川城
――大丈夫ですか、立花山城さん!

立花山城
大丈夫よ、少し疲れてしまっただけ。
霊力を消耗しすぎてしまったみたいね……。

宮藤芳佳
柳川城さんも立花山城さんも、すごい……。
ウィッチ以外の攻撃はネウロイに通じないはずなのに。

リネット・ビショップ
うん……。
ただ大きくて強いだけじゃ、こんなことにはならないよね。
もしかして、私たちの魔法力に近い力を持ってる……とか?

リネット・ビショップ
どこかで聞いた話を思い出すなぁ。
巨人の国に上陸しちゃった冒険家の話……。

宮藤芳佳
……ここはどこなんだろう?
城娘なんて聞いたこともないし、
さっき戦った兜だってそうだし……。

???
……その質問には、私が答えてやろう。

宮藤芳佳
……えっ?

???
……まったく。
すぐに突っ走ってしまうのはお前の悪い癖だぞ、宮藤。

宮藤芳佳
――さ、坂本さんっ! どうしてここにっ!?

異界門と蒼空の魔女 -弐-

魔法なる力をもって黒き異形から城娘たちを救った
異界の少女・ウィッチ。その長と思しき者が合流を
果たし、敵の狙いが徐々に明かされていく……?

前半

宮藤芳佳
――さ、坂本さんっ! どうしてここにっ!?

???
私だけではない……奴も来ているぞ。
……ほら、見てみろ。

???
きゃああぁぁっ! な、なんなんですか、貴方たちは!?

???
坂本少佐、お逃げください!
巨大な女性が二人、十二時の方角に出現しましたわっ!

リネット・ビショップ
ペリーヌさんっ!?

柳川城
巨大な女性……ですか。
そんな風に何度も驚かれるのは、なんだか新鮮ですね。

立花山城
……一度、腰を落ち着けて話しましょう。
身体を休めたいし……何より、
このままではあちらも話しづらいでしょうから。

――――

殿
…………。

立花山城
……さて。どこから話したものかしら。

宮藤芳佳
(じぃーーー)

宮藤芳佳
(わぁ……。
ちっちゃくなることもできるんだ。不思議だなぁ、
こうして見ると、私たちと変わらない普通の女の子なのに……)

柳川城
……ふふ。
宮藤さんは城娘の力に興味がおありですか?

宮藤芳佳
あ、いいえ!
すみません、じろじろ見つめてしまって……!

???
……こほん。
まずは礼を言わせてくれ。

???
城娘にそれから、殿――と呼べば良いのか?
……我が部隊の隊員たちを救ってくれたこと、感謝する。

殿
…………!

立花山城
我が部隊……ということは、貴方も501の……?

坂本美緒
……うむ。自己紹介が遅れてしまったな。
第501統合戦闘航空団所属、坂本美緒少佐だ。
宮藤とリーネの上官にあたる。

ペリーヌ・クロステルマン
同じく、ペリーヌ・クロステルマン!
坂本少佐のご命令に従う、忠実なウィッチですわ。
……そちらの豆狸とは違ってね。

宮藤芳佳
ぁう……。

坂本美緒
……宮藤もリーネも、心配したんだぞ。
通信が突然途絶えて、行方知れずになってしまって……。

宮藤芳佳
……すみません。

リネット・ビショップ
あの……坂本少佐。芳佳ちゃんは――

坂本美緒
……分かっている。
大方、誰かを助けるために無茶をしたのだろう?

坂本美緒
……無論、それはお前の誇るべき長所だ。
それを咎めるつもりはないのだがな……。

坂本美緒
……まぁいい、無事だったのなら何よりだ。
説教はここまでにしておこう。

リネット・ビショップ
(……ほっ)

坂本美緒
……その代わり、帰ったらみっちり訓練をつけてやる。
もちろんリーネも一緒に、二人でだぞ。
覚悟しておけ! はっはっは!

リネット・ビショップ
わ、私もですか……?

宮藤芳佳
そっ……そんなぁ……。

ペリーヌ・クロステルマン
まったく……。
本当なら、今日は坂本少佐とわたくしで
飛行訓練に励む予定でしたのに……!

ペリーヌ・クロステルマン
わたくしたちのランデブーを邪魔した罪は重いですわよ、宮藤さん!

宮藤芳佳
うん……ごめんね、ペリーヌさん……。

リネット・ビショップ
ところで……ここはいったい、どこなんでしょう?
ネウロイは倒せましたけど、まだ分からないことばかりで……。

坂本美緒
……うむ。
お前たちと合流するまでの間に、周辺の地形は概ね把握した。
それに伴い、幾つかの確信も得ている。

坂本美緒
ここで全て共有しておこう……ペリーヌ、頼めるか?

ペリーヌ・クロステルマン
ええ、もちろんです♪

ペリーヌ・クロステルマン
恐縮ですが、お殿さまや城娘の皆様がたも、
しばしの間……ご傾聴願いますわ。

殿
…………!

ペリーヌ・クロステルマン
まず、この陸地……日の本は、
扶桑皇国とよく似た文化を築いていますが、
実態はまったく別の国のようです。

坂本美緒
うむ……扶桑の歴史を辿ると、
似たような文化が見て取れるが、詳細は不明だ。

ペリーヌ・クロステルマン
わたくしたちの基地の目前に現れた、謎の黒い穴。
その先に広がっていた、得体の知れない国……。

ペリーヌ・クロステルマン
……ここでわたくしたちが考えなければならないのは、
わたくしたちが知る世界において、そのような国は、
存在していない……ということですわ。

宮藤芳佳
うん……それは私もおかしいと思ってた。

リネット・ビショップ
日の本なんて、見たことも聞いたこともないもんね……。

ペリーヌ・クロステルマン
そこでわたくしは一つの推測を立て、坂本少佐にお伝えしました。
すると、なんと……なんと!
坂本少佐も『同じことを考えていた』と仰ったのです!!

ペリーヌ・クロステルマン
同じ時に同じことを……だなんて。
運命を感じてしまいますわ。ふふ、ふふふふ……♪

殿
…………。

坂本美緒
そしてその後……宮藤、リーネと合流した時、推測は確信に変わった。

宮藤芳佳
坂本さん……それって……!

ペリーヌ・クロステルマン
ネウロイと肩を並べるようにして進軍する怪物たち。
そして、宮藤さんたちと共闘する……城娘。
そのどちらも、わたくしたちにとっては未知のものでした。

柳川城
……対する私たちは、ウィッチたちの存在を知りませんでした。
宮藤さんたちの世界を脅かす、ネウロイなる異形についても。

殿
…………。

坂本美緒
つまり、そこから導き出される答えは――

宮藤芳佳
…………。

宮藤芳佳
ここは私たちの知ってる世界じゃない、ってこと……?

坂本美緒
……ああ。
信じがたいことだが、どうやらそうらしい。

坂本美緒
こちらの話は以上だが……どうだろうか?
殿たちの意見を聞かせてほしいのだが。

殿
…………。

立花山城
……二つの世界をつなぐ、異界門。

柳川城
そんなものを扱い、悪事を企むとしたら……。
思い当たるのは……あの方しかいませんね。

やくも
だに……狐の姿をしたあいつに決まっとるがや……!

リネット・ビショップ
狐の姿をした……?

宮藤芳佳
……あいつ?

千狐
…………コン?

千狐
――ち、違います!
殿たちが言っているのは九尾! 千狐ではありません!
千狐は聖なる力を帯びた、心の清らかな神娘なの!

千狐
やくもも紛らわしい言い方をしないでほしいのー!

やくも
ち、ちょっと悪ふざけをしたくなっただけだに!
清らかな神娘なら、笑顔で許してほしいがや……。

千狐
やくもは例外なの!
情けを掛けたら、付け上がることは必至なのー!

殿
…………。

坂本美緒
……なるほど。
その九尾とやらが、一連の騒動の火種なのか。

柳川城
……おそらく、間違いないかと思います。
彼女がその気になったなら、
このような事態を引き起こしたとしても、不思議ではありません。

坂本美緒
……まずいな。
この事態が、そいつの悪意によるものなら、
状況は思っていたよりも悪い……。

リネット・ビショップ
今後もネウロイが、日の本を襲ってくるってことですよね……。

ペリーヌ・クロステルマン
そしてそれが、九尾を倒すまで繰り返される。
すぐにでも、その火種を消し去らないと――

黒い異形
――――

殿
…………?

千狐
声、ですか……あの黒い異形の――?

千狐
――コンッ!?
皆さん、上です! 空を見てください!

やくも
さっきのは地上をわさわさ這っとったのに、
今度のは空を浮かんどる……。
あれもさっき戦ったネウロイっちゅー奴の一種だに?

リネット・ビショップ
はい……ネウロイは形や性質が大きく違っていて、
様々な個体が確認されているんです……!

坂本美緒
先にそちらを説明しておくべきだったな……すまない。

立花山城
……不用意に動いてはダメよ、柳川城。
殿を守ることを何より優先するの……良いわね?

柳川城
承知しました……。

殿
…………。

やくも
あっちの空も……こっちの空も、ネウロイだらけだに……。

千狐
いつの間にか、囲まれてしまってるの……!

ペリーヌ・クロステルマン
こんなに早く、新たなネウロイが押し寄せてくるなんて。
それも、あれほどの数が……!

宮藤芳佳
…………。

宮藤芳佳
……ここは、私が囮になります。

リネット・ビショップ
――芳佳ちゃんっ!?

宮藤芳佳
魔法力でシールドを張れば、時間稼ぎくらいはできます。
その間に態勢を立て直せれば……。

坂本美緒
危険すぎる……許可できない。

坂本美緒
お前のシールドが如何に優れていようと、
四方から攻撃を放たれれば、全てを抑えることは難しい。
お前の身も只では済まないだろう……。

宮藤芳佳
でも……こうしている間にも、空からネウロイが近づいてきて――!

???
――捨て鉢になるな、宮藤軍曹!
お前はまだ若すぎる……命を捨てるにはまだ早い!

殿
…………!?

やくも
声の主は……あぁっ!
みんな、あそこを見るがや!

合戦中

宮藤芳佳
今回は空を飛んでくる敵もいるみたい……。
攻撃をもらっちゃわないように気をつけないと。

柳川城
加えて、あの巨大なネウロイからは強い力が感じられます。
注意する必要がありますね……!

501JFW ブリタニア基地
……良いか、皆。
この戦いを乗り越えるには、全員の協力が不可欠だ。

立花山城
ということは、もちろん……貴方も協力してくれるのよね?

501JFW ブリタニア基地
ああ……攻撃に参加することはできないが、
支援や索敵なら得意分野だ。
私の力が届く範囲に居るものには、私の力を分け与えよう。

501JFW ブリタニア基地
特に、私と縁の深い501の隊員たちには、
より大きな効果が望めるはずだ。

宮藤芳佳
『私と縁の深い』……?

501JFW ブリタニア基地
ただし、本領を発揮するまでは少々時間を要する。
巨大化を経て徐々に力を高め、影響の範囲も広がっていくはず……。
それまでの間は我慢してほしい。

…………!

501JFW ブリタニア基地
また……一時的ではあるが、
指示に応じて、支援の力を高めることも可能だ。

501JFW ブリタニア基地
地上に下りる必要があるため、
空の敵以外からも狙われるようになってしまうが……、
戦況次第では効果的な戦術となるだろう。

501JFW ブリタニア基地
ネウロイを討ち、ウィッチを守ることこそが私の役目。
何に代えても、成し遂げなければならん。

宮藤芳佳
(この子……もしかして……)

501JFW ブリタニア基地
何をぼさっとしている……宮藤軍曹。
出撃の準備は済んでいるのか?
約束を守り、皆を守る……それが貴官の志なのだろう?

宮藤芳佳
は、はい……分かりました。
すぐに準備します……!

501JFW ブリタニア基地
初めての戦闘で不安はあったが、
不備は無かったようだな……安心した。

宮藤芳佳
不備は無かった、なんてものじゃなかったよ。
息がぴったり合い過ぎてびっくりしちゃったくらいだった……!

宮藤芳佳
間違いないよ……あの子は、
私たち501部隊と、ずっと一緒に戦ってきたんだ……!

後半

坂本美緒
鼓舞に指示に、戦況の把握……加えて、
城娘にもかかわらず、各隊員の能力を熟知したような動き。

坂本美緒
もはや隠す必要もあるまい……身の上を明かしてもらえるな?

???
ああ……自己紹介をしておこう。
すでに何人か、勘づいている者も居るようだがな。

501JFW ブリタニア基地
私の名は……ブリタニア基地だ。
501統合戦闘航空団、ストライクウィッチーズの目下の拠点……、
と言えば、殿たちにも分かりやすいだろうか。

殿
…………!

リネット・ビショップ
え……えええ!? ブリタニア基地っ!?
わ、私たちが普段生活している……あの基地ですか?

501JFW ブリタニア基地
そう……貴官らのことを日々見守り、
共に幾つもの戦いを乗り越えてきた、あのブリタニア基地だ。

ペリーヌ・クロステルマン
……ち、ちょっと待ってくださる?
理解が追いつかないのですけど……。

やくも
つ……つまり、うちらとは違う世界の御城が、
城娘として顕現した……っちゅうことだに?

坂本美緒
奇妙なほどに乱れのない連携に疑問を覚えていたが、
それも、日頃から私達を見守っていたため……ということか。

501JFW ブリタニア基地
……その通りだ。
私が有する記憶、願いは間違いなく、
501部隊と共に戦った、ブリタニア基地としてのもの。

501JFW ブリタニア基地
しかし同時にこの世界の理、その一端――、
城娘である自分の使命についても、理解できている。

宮藤芳佳
ブリタニア基地さんの城娘としての使命?
それって、なんですか……?

501JFW ブリタニア基地
……それはもちろん、
彼奴の悪意によって生み出された、もう一つの異界を――

???
――ギ、ギャアアアアァァァァ!?
誰カ、助ケテェェェエエエエエ!!

殿
…………!

柳川城
悲鳴……ですか?

立花山城
そのようだけど……なんだか不穏な響きだったわね。

千狐
一応、状況を確認した方が良いでしょうか……。

???
ヒ、ヒエェ……ヒエエェェエエエエエ!!

立花山城
――見に行くまでも無かったわね。
ご丁寧に、向こうの方からこちらに向かってきているみたいよ。

異界門と蒼空の魔女 -参-

『みやふじー! リーネぇ~~!』
周辺一帯に高らかに響き渡る、少女の声。しかし、
それに応えたのは思いもよらない者だった……。

前半

――少々時を遡り、
殿がウィッチたちとの邂逅を果たした地から、程近い場所にて……。

エーリカ・ハルトマン
…………。

エーリカ・ハルトマン
(すううぅぅぅぅ……)

エーリカ・ハルトマン
みやふじー! リーネぇ~~!
どーこーーー!?

エーリカ・ハルトマン
…………。

エーリカ・ハルトマン
(すううぅぅううう……!)

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
……待って。
呼びかけるのはもう止めて大丈夫よ、エーリカ。

エーリカ・ハルトマン
えー、どうして?
やっと調子が出てきたところなのに!

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
これ以上は呼びかけても効果が薄いわ……場所を変えるべきね。

エーリカ・ハルトマン
うーん……そっかぁ。
……それで、そっちの具合はどう?
先行部隊との連絡はついた?

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
……だめね。宮藤さんたちと同じ。
美緒ともペリーヌさんとも、基地とも連絡がつかない。

エーリカ・ハルトマン
空にぽっかり現れた、黒い穴……。
宮藤たちと同じように、そこを潜ってここまで来たわけだけど。

エーリカ・ハルトマン
……他の子たちと同じように、
私たちも遭難しちゃったってことだよね……ミーナ?

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
残念ながら……そうみたいね。

エーリカ・ハルトマン
今頃、基地で大騒ぎしてたりしてね。しししっ♪

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
もう……笑い事じゃないわ。
宮藤さんたちとの合流と、基地への帰還。
どちらも糸口すら掴めてないんだから。

エーリカ・ハルトマン
う~ん……それじゃ、聞き込み調査でもしてみる?

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
そうね……現地の人から直接話を聞ければ、
有効な情報を得られるかも……。

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
でも忘れないで……ここは未知の場所よ。
安全に配慮しながら、慎重に――

エーリカ・ハルトマン
……おぉっ!
なーんて言ってる傍から人影発見!

エーリカ・ハルトマン
行ってみようよ、ミーナ!
早くしないと見失っちゃう!

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
――ちょっと、待ちなさいエーリカ!

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
……もう、今注意したばかりなのに。

――――

桃形兜
エ……エ……ナニ?
突然、人ガ空カラ……?

エーリカ・ハルトマン
うーわー……おっきい……。

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
……ねぇ、エーリカ。
貴方が言ってた人影って……これのこと?
とても人には見えないんだけど。

エーリカ・ハルトマン
た、確かに人間離れしてるかも……ちょっとだけ。

エーリカ・ハルトマン
まぁ……でもいいじゃない。この際人じゃなくても。
一応言葉は通じるっぽいし!

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
……ごめんなさい、エーリカ。
ここは貴方に任せても良いかしら。
ちょっと頭が痛くなってきたわ……。

エーリカ・ハルトマン
はいはーい、任せて♪

エーリカ・ハルトマン
お散歩中にお邪魔しちゃってごめんね、お兄さん!
突然ですけど、お話しを伺ってもいいかな?

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
(お……お兄さん?)

桃形兜
ア、ハイ……。
用事ノ最中ナノデ、チョットダケナラ。

エーリカ・ハルトマン
ありがとー! お名前を聞いてもいい?

桃形兜
ア……桃形兜ッテ言イマス。

エーリカ・ハルトマン
モモナリカブトさんね。
……モモナリさんって呼んでいいかな?

桃形兜
ハイ……一部デハ、ソンナ風ニ呼バレテタリモスルノデ……。

エーリカ・ハルトマン
そっか、ありがと!
でね、早速モモナリさんに聞きたいことがあるんだけど――

桃形兜
(僕ノ存在ヲ――イヤ、兜ソノモノヲ知ラナイ?
 オカシイ……服装ヤ容姿モ、日ノ本ノ者トハドコカ違ウシ――)

桃形兜
(――ハッ、ソウカ……異界門ダ!
 九尾様ガ開ケタ異界門ガ関係シテイルニ違イナイ)

エーリカ・ハルトマン
――っていう状況なの。
この辺りについて何か知ってることがあったら、
教えてくれないかな?

エーリカ・ハルトマン
…………。

エーリカ・ハルトマン
……あれ? 寝ちゃった?

桃形兜
(トイウコトハ、コノ少女タチ……、
 異界カラコチラニ渡ッテキタノカ……)

桃形兜
(マズイナ……僕一人ノ手ニハ余ル状況ダ。
 他ノ兜タチニモ状況ヲ知ラセナキャ――)

エーリカ・ハルトマン
――おーい、聞こえてる?
どうしたの? 何か考え事?

桃形兜
――ハ、ハイッ!?

桃形兜
エエト、仲間ニ報告ヲ――ジャナクテ!
僕……急用ヲ思イ出シチャッタノデ、今日ハコノ辺デ……。

桃形兜
ソレジャッ!

桃形兜
(――ダダッ!)

エーリカ・ハルトマン
あぁっ、逃げたっ!?
こらー、待ちなさーい!

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
待って、エーリカ!
追いかける前に、少し様子を見た方が――

エーリカ・ハルトマン
他にそれっぽい手がかりも無いんでしょ?
何か分かるかもしれないし、追いかけてみようよ!

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
…………。

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
……はぁ。美緒……どこに行ってしまったのかしら。

――――

そして、時と場所は殿の許へつながり――

桃形兜
モ、モウ勘弁シテクダサイイィィイイイイ!!

エーリカ・ハルトマン
勘弁も何も、
ちょっと話を聞かせてもらおうとしただけじゃない!
どうして逃げんのよー!

殿
…………!

ペリーヌ・クロステルマン
――今の叫びはっ!?

やくも
空飛ぶおねーさんが、また二人……!
桃形兜を追い回しとるがや……?

リネット・ビショップ
ハルトマン中尉に、ミーナ中佐!
お二人も日の本に来ていたんですね!

千狐
新たなウィッチがまた仲間に加わるのですね……でも――!

501JFW ブリタニア基地
――再会を喜ぶ前に、
討たねばならない敵が居るようだ……。

坂本美緒
兜とネウロイの軍勢が、こちらに向かってきている……ということだな?

千狐
千狐も感じます……先に交戦したものより、
規模も力も、ずっと大きいの……!

501JFW ブリタニア基地
先程よりも厳しい戦いが予想されるが、
城娘とウィッチの指揮は、貴官に任せて良いな……殿?

殿
…………!

合戦中

エーリカ・ハルトマン
宮藤に、坂本少佐……それに他のみんなもっ!
良かったぁ、無事だったんだね!

やくも
また新しいウィッチが現れよっただに!

501JFW ブリタニア基地
彼女はエーリカ・ハルトマン中尉……。

501JFW ブリタニア基地
501におけるトップ・エースであり、
これまで多くのネウロイを打ち倒してきた、優秀なウィッチだ。

やくも
え、え……えーす……!?
それって、つまり――

やくも
つまり――どういう意味だに?

殿
…………。

千狐
しばらく口を閉じてなさい、やくも……。

エーリカ・ハルトマン
あはは、そんな大したもんじゃないよ!
良い仲間に恵まれたってだけ。
ま、みんなを守りたいって気持ちは、誰にも負けないけどね!

エーリカ・ハルトマン
とにかく……私も力を貸すよ!
ネウロイたちが迫ってきてるんでしょ?

宮藤芳佳
はい、それから他にも……兜っていうのが……。
こちらの城娘さんたちの敵で――

エーリカ・ハルトマン
分かった分かった!
とにかく全員倒しちゃえばいいんだよね!

エーリカ・ハルトマン
細かいことは分かんないけど、みんなが信用してるなら大丈夫でしょ♪

やくも
(なんだかテキトーな子っぽいがや……)

エーリカ・ハルトマン
――ってことで私も参戦するよ。よろしくね、そっちの司令官さん!

殿
…………!

エーリカ・ハルトマン
私の固有魔法は『シュトゥルム』って言ってね、風を操れるんだ。
ちっちゃい竜巻みたいなので敵を攻撃するの!
邪魔なヤツを『あっちいけー』ってすることもできるかも!

エーリカ・ハルトマン
魔法力を結構使っちゃうから、
あんまり乱発はできないけど……。
それでも、そこそこ役に立つはずだよ!

501JFW ブリタニア基地
これは心強い味方を得た……。
此度の戦いは、彼女の力を借りることにしよう。

宮藤芳佳
はぁ……厳しい戦いだったけど、
どうにか乗り切れたね……!

501JFW ブリタニア基地
まずはディートリンデ中佐とハルトマン中尉に事情を説明しよう。
……本題に入るのは、それからだ。

後半

坂本美緒
――という経緯だ。
二人とも、理解してもらえたか?

エーリカ・ハルトマン
ここは私たちの知らない異世界……日の本。
兜に城娘……それからネウロイまで居る、と……。

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
それで……そちらの方が、
ブリタニア基地の願いが形をなした城娘……なのね。

エーリカ・ハルトマン
へぇ~……ふーん……。
見慣れた基地と肩を並べてるなんて、
なんだか不思議な気分だなぁ……。

501JFW ブリタニア基地
信じられないのなら、好きに質問しても良いぞ?

501JFW ブリタニア基地
ハルトマン中尉が今月に入ってから寝坊した回数でも、
宮藤軍曹が昨晩作った夕食の献立でも……、
私の基地で起きた出来事なら、何でも答えてやろう。

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
いえ……。
思い出話に花を咲かせるのは楽しそうだけど、その必要はないわ。

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
長い間、一緒に暮らしてきたからかしら。
貴方がブリタニア基地であることは、
疑うことなく……すんなりと受け入れられるの。

エーリカ・ハルトマン
うん、そうだね。
私、自己紹介を聞いて納得しちゃったもん。
見覚えがあるような気がしたけどそういうことかー、って。

501JFW ブリタニア基地
ふ……そうか。
そう感じてもらえたのなら、私としては嬉しい限りだ。

宮藤芳佳
…………。

リネット・ビショップ
……どうしたの、芳佳ちゃん?
なんだか浮かない顔をしてるけど……。

宮藤芳佳
うん……さっき、
ブリタニア基地さんが言いかけてた言葉が気になってて……。

立花山城
確か……城娘である貴方の使命、とか言ってたわよね?

501JFW ブリタニア基地
……そうだな。
兜やネウロイを無事に退けた今……、
改めて語らなければならないだろう。

501JFW ブリタニア基地
私が帯びている使命……そして、
この世界で顕現した意味について。

殿
…………。

501JFW ブリタニア基地
此世には今、
隣り合うようにしてもう一つの時空が存在している。

柳川城
もう一つの……時空?

501JFW ブリタニア基地
その時空は、
ネウロイを模した贋物を統べる者が掌握しているようだ。
貴官らは『九尾』と呼んでいたか……。

千狐
九尾……!

501JFW ブリタニア基地
そして彼奴らは……その隣接した時空から、
日の本への侵攻を繰り返している……。
根幹を断たぬ限り、それが止むことはないだろう。

501JFW ブリタニア基地
……つまり。
その時空を私たちの手で破壊し、
ネウロイの贋物を根から断つ……。

501JFW ブリタニア基地
それが……この騒動を解決する、唯一の手立てなのだ。

九尾
くふ……くふふ……。

九尾
魔法力なる力を備えた少女たち……ウィッチ。
そして、彼女らと深い縁を持つ、異界の城娘……。

九尾
吾の願いに応えるものがいるなら、
殿たちの願いに応えるものもいる……。
誠に忌々しいが、そういうことじゃろうな。

九尾
じゃが……くふふ。

九尾
次の戦いは、そう簡単にはいかぬぞ……城娘ども。

九尾
吾が掌握するこの領域で『巣』を破壊せぬ限り、
汝らの悪夢は、いつまでも続く……。

九尾
さぁ……苦悶の叫びを吾に聞かせるがよい……!
くふふ、くふふふ……。

異界門と蒼空の魔女 -肆-

世界同士の結びつきが強まったことにより生まれた
城娘・ブリタニア基地。彼女の案内によって諸悪の
根源と呼ぶべき場所へと転移を果たす一行だが……。

前半

異世界に起源を持つ城娘……ブリタニア基地。

彼女の導きに従って転移を果たすと、
そこで一行を待ち受けていたのは――

――――

千狐
――コンッ! 転移成功なのっ!

やくも
ブリタニア基地が言うとった、
もう一つの時空っちゅうのは……ここで間違いないんよね?

坂本美緒
しかし、どういうことだ……この景色は。
私たちの基地と瓜二つじゃないか……。

ペリーヌ・クロステルマン
ええ……偶然の一致とはとても思えませんわ。

宮藤芳佳
私たちの世界とも、殿さんたちの世界とも違う場所……。
さっき、ブリタニア基地さんはそう言ってたよね?

エーリカ・ハルトマン
も……もしかして、
私たちの世界から引っこ抜いて持ってきた――とか?

501JFW ブリタニア基地
いや……そうではない。
目前に見えるあれは、私たちの基地とはまったくの別物。
それを模して作られた、贋物に過ぎない。

リネット・ビショップ
私たちの基地の贋物……。
それがどうして、こんなところに……?

501JFW ブリタニア基地
……察するに、
異界門とやらを開いた九尾とかいう輩。
相当性根の腐った奴らしいな……。

???
くふ、くふふふ……随分と酷い言い草じゃのう。

殿
…………!

九尾
言ってくれるな……。
異界に起源を有する虚ろな存在の分際で、
そのように吾を愚弄するとは。

千狐
――九尾っ!

やくも
思うとった通り……!
やっぱり異界門を開いたんは、お前だったんだに!

立花山城
酷い言い草って……別に、嘘は言っていないわよね?
貴方の性根の腐りっぷりなんて、
ずっと前から分かりきっていたことだもの。

九尾
性根も何も……吾はただ、
城娘の滅びという願いに向けて動くのみじゃ。
今も昔も……これからもな。

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
では、基地のコピーをここに用意したのも、
その目的を果たすため……ということかしら?

九尾
それはまた別の話じゃ……大した理由は無い。
言うなればこれは、吾の遊び心とでも言うべきもの……。

ペリーヌ・クロステルマン
遊び心……ですって?

九尾
この基地は言うなれば、
汝らの世における『希望』なのじゃろう?

九尾
くふふ……想像してみるがよい。
贋物とはいえ、ウィッチたちの本陣とも言うべきこの場所が、
蹂躙されていく様を……。

九尾
その悲劇が……吾の手で遣わした、
ネウロイの贋物や兜の軍勢によって、
引き起こされるとしたら……どうじゃ?

九尾
目蓋の裏に思い描くだけで、
得も言われぬ想いがこみ上げてくるじゃろう……?

九尾
くふ……くふふ……。

殿
…………。

エーリカ・ハルトマン
私たちへの嫌がらせってこと?
趣味の悪い奴だなぁ……。

九尾
くふふ……。
それにしても、このネウロイという異形。
誠に興味深い。

九尾
異界門を通じ、
力の一端に触れ……模倣することで、
贋物を生み出すことに成功したが……。

九尾
その力の底は、未だ見えぬ……。
すべてを推し量ることは、吾ですら難しい。

殿
…………。

九尾
じゃが……その最中で吾は、
この異形の非常に面白い性質を知った。

九尾
汝らには、それを味わってもらうとしようかの。
たっぷりとな……くふ、くふふふ……。

坂本美緒
ネウロイの……非常に面白い性質だと?

九尾
……そこの兜を見ているが良い。

佐竹式毛虫形兜
……ヌ?
ナンダ、コノ黒イノハ……?

ネウロイ
――――、――!

佐竹式毛虫形兜
オイ、止メロ……マトワリツクナ……!

佐竹式毛虫形兜
ヌ……ウグッ……! ガァッ……!?

ペリーヌ・クロステルマン
な、何が起きてるの?
ネウロイが兜を飲み込んでいく……?

九尾
くふふ……ほれ、始まるぞ。
目を離すなよ……。

宮藤芳佳
……っ!
あ、あれは……あれはっ!?

佐竹式毛虫形兜
――グウウゥ……グガ、ガァァアア……!?

???
…………。

殿
…………!?

宮藤芳佳
兜の全身が黒く……変色した?
まるでネウロイみたいに……!

やくも
ネウロイが兜の器を乗っ取って、
自分のものにしたっちゅうことだに……!?

千狐
その上、先程よりも強い力が感じられます……!

リネット・ビショップ
同化することでパワーアップしちゃったんだ……!?

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
それに、この兜だけじゃないわ。
ネウロイと兜の同化が、至る所で発生してる……。

エーリカ・ハルトマン
あっちの兜も……あっ、あっちのも!

???
…………。

柳川城
一際強い力を放つあの兜は、
離れたところから私たちの出方を窺っているようです。

501JFW ブリタニア基地
高みの見物を決め込むつもりか?
ふん……良いご身分じゃないか。

坂本美緒
良かろう……。
ならば私たちの手で引きずり下ろしてくれる!

柳川城
私たちも出陣しましょう!
殿、聡明な下知を願います!

合戦中

宮藤芳佳
兜と同化して力を高める……。
まさか、ネウロイにそんな能力があったなんて。

柳川城
幾度となく相対してきた毛虫形兜ですが、
これまでよりも強い力を秘めているように見えます。

立花山城
さっき戦ったネウロイみたいに、
光線で攻撃してきたりしたりしてね……。

宮藤芳佳
とにかく、これ以上好きにさせるわけにはいかないよ。
敵がコピーした異世界とはいえ、ここは私たちの基地なんだもん!

501JFW ブリタニア基地
宮藤軍曹……。

エーリカ・ハルトマン
何にしても、これまでよりも過酷な戦いになりそうだね――ん?

エーリカ・ハルトマン
……ん? あの箱いっぱいに入ってるのって、
もしかして……じゃがいも?

エーリカ・ハルトマン
どうしてあんなものがここに……いや!
理由なんてどうだっていい!

エーリカ・ハルトマン
あんなに美味しそうなじゃがいもを見捨てるわけにはいかないよ……。
敵の攻撃を食らっちゃわないよう、守ってあげないと!
そうだよね……殿!?

殿
…………?

坂本美緒
……敵の大部分は撃ち落とした。
こちらの優勢は揺るがぬように見えるが、果たして……。

九尾
くふ、くふふ……。

エーリカ・ハルトマン
安心しちゃだめだよ、みんな。
性格悪そうな狐のお姉さんも、
空から見下ろしてるボスっぽいのも、まだ残ってるんだから……!

後半

九尾
ほう……そうかそうか。
これを容易く退けるか。

九尾
じゃが……ここまでは想定の通り。
城娘とウィッチの力を考慮すれば、
驚くような事態ではない……。

やくも
はん! 強がりに決まっとるがや!
内心ではきっと、ぶるっぶる震えとるんだに!

九尾
……これが強がりかどうかは、汝らの目で確かめると良い。

九尾
……此度の余興は、まだまだ続くぞ。
むしろ、吾の本領はここから……!

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
……まだ余力を残しているというの?

九尾
さらなる苦難に……汝らはどう応じるのか。
さぁ、見せてみるが良い……。
くふ……くふふ……!

殿
…………。

殿
――……!?

501JFW ブリタニア基地
……これは!
ネウロイの気配が強まっている……のか?

ペリーヌ・クロステルマン
あちらの空をご覧ください!
暗雲のようなものが近づいてきていますわ!

千狐
コン……あの中から無数の力を感じるの。
これまで戦ってきた異形――ネウロイの力を……!

坂本美緒
……どうやらあの九尾とやら、
ハッタリをかましたわけではなかったらしいな。

エーリカ・ハルトマン
思っていたより、ずっと厄介そうだよ……これは。

リネット・ビショップ
よ、芳佳ちゃん……あれって……。

宮藤芳佳
うん、間違いない。あれは――

宮藤芳佳
あれは……ネウロイの巣だ。

異界門と蒼空の魔女 -伍-

兜とネウロイの同化、ネウロイの巣の出現……。
絶え間なく襲い来る苦難を、城娘たちは――、
ウィッチたちは、跳ね除けることができるのか。

前半

殿
…………。

柳川城
ネウロイの巣……。

立花山城
なるほど……。
九尾が余裕ぶっていた理由が分かったわね。

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
敵はまだ、戦力の大部分を残していたのね……。

千狐
これから向かってくるのは、
多くのネウロイ……そして、
ネウロイと同化して力を高めた兜たち……。

リネット・ビショップ
その全てを相手にしなきゃならないなんて……。

やくも
ほ、ほんとに勝てるんだに……?
潔く諦めて、逃げた方が良いかもしれんがや……。

立花山城
……良い策とは言えないわね。
辛うじて逃げきれたとしても、
状況が振り出しに戻るだけだもの。

柳川城
九尾は息つく間もなく、追撃を仕掛けてくるでしょう。
そうなれば、巣を叩く機会にいつ恵まれるかは分かりません。

坂本美緒
敵の本拠に迫っているこの状況は、
我々にとっても好機といえるわけか……。

宮藤芳佳
…………。

501JFW ブリタニア基地
……問題ない。
不安に思うことなど、何も無いさ。

宮藤芳佳
……ブリタニア基地さん。

501JFW ブリタニア基地
日々の訓練に、ネウロイとの戦い。
世界を守るために空を飛び続けた姿を……。
私はこれまで、ずっと目にしてきた。

501JFW ブリタニア基地
……これまでの努力を信じて、飛ぶんだ。
そうすれば、必ず上手くいく。

501JFW ブリタニア基地
誰よりも近くで、
ストライクウィッチーズを見守ってきた私が言うのだ。
……疑う余地はあるまい。

立花山城
私たちも力は惜しまないわ。
諦めの悪さなら、誰にも負けないつもりよ。

柳川城
……はい!
皆さんの助力に報いるためにも、
必ずや勝利を掴んでみせます!

殿
…………!

九尾
くふふ……覚悟はできたようじゃな?

???
…………。

九尾
さぁ、それでは始めるとしようか。

合戦中

501JFW ブリタニア基地
良いか、皆。
あの黒い暗雲――巣の中には、無数のネウロイがひしめいている。

501JFW ブリタニア基地
あれを破壊しない限りは、
敵は際限なく、こちらを攻め立て続けるだろう……!

宮藤芳佳
私たちが力を使い果たしちゃう前に、
あの巣を壊さなきゃいけないんだね……!

ネウロイ兜
グォ、グォォォオオオオオ……!

やくも
ひぇえっ!? なんだにっ、今の声は……!

千狐
先程から千狐たちを見下ろしている、
ネウロイと同化した兜なの……!

千狐
あの者からは、
他の兜やネウロイが持たない異質な力を感じるの。
そしてそれが、周囲のネウロイの力を高めている……。

柳川城
主を中心とする敵軍の対処、そして巣の破壊……。
それらを同時に成し遂げなければならないのですね。
過酷な戦になりますが……気を引き締めてまいりましょう、殿!

千狐
巣を成していた暗雲が、
散り散りになっていく……!

やくも
……見るだに!
空が一気に明るくなって、
光が差し込んできたがや……♪

エーリカ・ハルトマン
やった……やったよ!
みんなのお家を守れたよ、ブリタニア基地さん!

501JFW ブリタニア基地
ウィッチたちにも城娘にも……感謝を捧げなければな。
皆、力を貸してくれてありがとう。

後半

九尾
む……これで終いか。残念じゃのう。
もう少し苦しめられると踏んでおったのじゃが。

千狐
追い詰めたわよ……観念しなさい、九尾!

九尾
観念……はて、なんのことかの。

九尾
汝らには……それよりも先に、
やらねばならぬことがあると思うが……?

やくも
――はぇ?
急に周りが白くなったがや……?

坂本美緒
これはいったい……?

千狐
――コンッ!? いけません!
この空間の崩壊が始まっているようです……!

九尾
――では、そろそろお暇するとしようかの。
この場に留まれば、吾とて只では済まんのでな。

千狐
――九尾っ、逃げるつもり!?

九尾
くふふ……そう焦るでない。
此度の機は、決着をつけるには尚早であった。
……それだけのこと。

九尾
吾の戦は終わらぬぞ……。
城娘どもが此世から消え失せるまで、
いつまでも続くのじゃ。

九尾
それでは、さらばじゃ。
くふ……くふふふふ――

千狐
九尾……待ちなさい、九尾っ!

立花山城
――千狐、落ち着きなさい。
今はただ、この場の皆を救うことだけ考えるの!

千狐
…………。

千狐
――そうですね……承知しました。

千狐
……殿たちもウィッチの皆さんも、千狐の傍へっ!
この世界が崩壊を迎えてしまう前に、所領へと帰還します!

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
……ハルトマン中尉、寄りかかり過ぎよ。
ちゃんと自分の足で立ってほしいんだけど……。

エーリカ・ハルトマン
ちょっとの間なんだから我慢しててよぉ。
置いてきぼりにされたら大事件だよ?

リネット・ビショップ
……芳佳ちゃん、大丈夫?

宮藤芳佳
うん……大丈夫。
でも、おしくらまんじゅうみたいで、
なんだか恥ずかしいな……。

ペリーヌ・クロステルマン
ちょっとそこの豆狸っ!?
わたくしの許可なしに、坂本少佐とくっつかないでくださる?

坂本美緒
――よし。準備はいいな?
ウィッチたちは問題ない。いつでもやってくれ!

殿
…………!

柳川城
こちらも問題ありません!

立花山城
――千狐、お願いっ!

やくも
はよぉはよぉ! もー時間がないがやー!

千狐
承知しました! それでは――!

千狐
――コンッ! 秘技・時空転移術なのー!

――

――――

――――

立花山城
……全員無事?
欠けている子は居ないわね?

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
こちらの部隊は全員揃っているわ。
……どうにか無事に帰ってこられたみたい。

501JFW ブリタニア基地
……ネウロイの気配は感じられないな。

千狐
九尾も兜も……悪しき気は感じられません。
巣を壊したことで、事態は解決へと導かれたようです。

宮藤芳佳
……つまり、ネウロイが襲ってくる心配は、
もう要らないってことですよね?

千狐
はい……九尾が撤退したことで、異界門も閉ざされました。
これ以上の危機が生じる心配はないかと思います。

宮藤芳佳
そっか……良かったぁ。

立花山城
これにて一件落着、ということね。

ペリーヌ・クロステルマン
あの……千狐さん?
一つ質問してもいいかしら?

千狐
コン……なんでしょうか?

ペリーヌ・クロステルマン
一件落着したところ、恐縮なのですけど……。
その異界門とやらが閉じてしまったら、
わたくしたちはどうやって自分たちの世界へ帰れば良いのかしら?

千狐
…………!

千狐
そ、そうでした!
安心してすっかり忘れていたの……!

リネット・ビショップ
門っていうのは、
こっちに来る時に潜ってきたあの穴のことだよね?

エーリカ・ハルトマン
千狐ちゃんは異界門を作ることはできないの?

千狐
コンッ……できないわけではないのですが、
そのためには、そのぉ……様々な条件を揃える必要がありまして。

坂本美緒
様々な条件……?

千狐
門が閉ざされてしまった今も、
二つの世界は非常に近い状態にあります……。

千狐
ですので、世界をつなぐきっかけを作れれば、
千狐の力で皆さんを送り帰すことができると思うの……!

やくも
…………。

やくも
……本当に?

千狐
本当なの! 嘘なんかつかないのー!
というか、どうしてやくもが疑うのよーっ!?

殿
…………。

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
一刻も早く基地に戻りたいところね。
残ったみんなの様子が気になるわ……。

坂本美緒
何にせよ、一件落着には違いない。
ネウロイの撃破は成し遂げたのだからな。

エーリカ・ハルトマン
そうだよ。向こうに帰る話も、
千狐ちゃんたちに任せるしかないんでしょ?
焦ったって仕方ないって。

501JFW ブリタニア基地
……とはいえ、
ディートリンデ中佐が焦るのも無理のないこと。
貴官らの本来の役目を思うと、長期の足止めは許容できない。

501JFW ブリタニア基地
よって千狐……。
先に言っていた『きっかけ』の件、
もし良ければ、私の力を利用してほしい。

501JFW ブリタニア基地
向こうの世界に起源を持つ城娘として、
少なからず貢献できるはずだ。

千狐
あ、ありがとうございます……ブリタニア基地さん!

立花山城
……とりあえず、所領に戻りましょうか。
事態が進展するまで、
ウィッチたちが寝泊りする部屋も用意してあげないと。

やくも
……となれば当然!
宴の用意も必要になってくるだに! だに!?

千狐
もう……やくもはいつもそればっかり……。

坂本美緒
すまないが……お言葉に甘えさせていただこう。
……異存はないな、ミーナ?

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
……ええ、そうね。

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
殿も城娘の皆さんも……、
世話を掛けてしまって申し訳ないけど、
しばらくの間、よろしくね。

柳川城
世話だなんて、とんでもないです。
日の本のために戦ってくださったのだから、
当然のことです。

柳川城
帰還の目途が立つまでは、共に過ごす仲間……。
気に病むことなく、好きなだけ頼ってください。

殿
…………!

異界門と蒼空の魔女 -陸-

九尾の企みを挫き、平穏を取り戻した……かに
見えた所領だが、のどかな昼下がりに突如、
鋭いげきと苦しげな息遣いが聞こえてきた。

前半

――所領付近、某所

九尾たちが率いる軍勢を退けてから、数日。

リネット・ビショップ
はぁはぁ、はぁ……。
もう、限界ですぅ……。

宮藤芳佳
やっと、休憩だぁ……。

坂本美緒
……どうした、二人とも?
もうへばってしまったのか?

坂本美緒
炊事や洗濯に勤しむのも良いが、
ウィッチとしての本分を忘れてはならぬぞ。

坂本美緒
――ということで二人とも!
休憩はここまでにして、訓練を再開するぞっ!

は、はいぃ~……!

――――

ペリーヌ・クロステルマン
ぐぬぬぬ……あの豆狸ぃ……!

ペリーヌ・クロステルマン
本当はわたくしが少佐を訓練に誘うつもりでしたのに……!

ペリーヌ・クロステルマン
少佐から手取り足取りご教示いただくとは、
なんて羨ましい……!

――――

エーリカ・ハルトマン
はー、満腹満腹♪
気がついたらペロッと完食しちゃってたよ♪

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
万が一に備えて持ってきていた食料が、
こんな形で役立つなんてね。

エーリカ・ハルトマン
所領には料理が好きな城娘ちゃんもいっぱい居るからね。
私が持ってきたジャガイモが珍しいみたいだよ。

エーリカ・ハルトマン
あ、それからね、
やくもちゃんにジャガイモの種をあげたら、
すっごく喜んでもらえたの。

エーリカ・ハルトマン
エーリカがもってきたのにも負けない、
美味しいジャガイモを育ててみせるだに! だって♪

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
なんというか……。
この場所での生活を満喫してるわね、エーリカは。

エーリカ・ハルトマン
いやだなぁ、順応してるって言ってよ。

エーリカ・ハルトマン
帰る手立てが見つかるまでは、
訓練くらいしかやることがないんでしょ?

エーリカ・ハルトマン
だったら、適度に羽根を伸ばすのも、
悪い過ごし方じゃないんじゃない?

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
物は言いようね……。
美緒の訓練から逃げ回っているように見えたのだけど、
それは私の勘違いだったかしら?

エーリカ・ハルトマン
…………。
そ、そんなことないよ?

エーリカ・ハルトマン
私だって、自主的に訓練はやってるし!
坂本少佐とはただ、
偶然すれ違ってるだけで――!

坂本美緒
――おお、そこに居るのはミーナとエーリカだな?

エーリカ・ハルトマン
……え?

坂本美緒
ちょうど良い、お前たちも付き合ってくれ!
実戦を想定した訓練を行おうとしていたんだ!

エーリカ・ハルトマン
…………。

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
……だそうだけど?

エーリカ・ハルトマン
えぇ~……。

坂本美緒
後はペリーヌだけだが……姿が見えないな。

坂本美緒
せっかくウィッチが勢ぞろいしたのだ。
奴にも声を掛けたいところだが――

(がさがさ、がさっ!!)

ペリーヌ・クロステルマン
はいはい、はいっ! わたくしはこちらにおります!
訓練でしたら喜んで参加いたしますわ!

宮藤芳佳
ペリーヌさん……どうして茂みの中から?

ペリーヌ・クロステルマン
どこに居たってわたくしの勝手でしょう!
貴方にとやかく言われたくありませんわ!

坂本美緒
……よし、全員揃ったな?
では改めて、訓練の再開を――

???
やけに賑やかだと思ったら……、
ウィッチたちの声だったか。

坂本美緒
……ブリタニア基地か。
良かったら、お前も共に身体を動かしていくか?

501JFW ブリタニア基地
そうだな……せっかくの機会だし、
私も混ぜてもらえないか。

501JFW ブリタニア基地
……一つでも多く、思い出を作っておきたいのでな。

宮藤芳佳
…………?

501JFW ブリタニア基地
よし……もののついでだ。
最後に相応しい舞台を私が用意してやろう……!
――はあぁぁああっ!!

合戦中

501JFW ブリタニア基地
よく聞け!
これより始まるのは、実戦を想定した模擬戦だ!

501JFW ブリタニア基地
殿や城娘たちの胸を借り、
彼女らの力を肌で感じることで、
自らの糧とするのだ……分かったな!

殿
…………。

やくも
ウィッチたちが向かってきとるがや……!

立花山城
ウィッチたちそれぞれが固有の魔法を持ち、
まったく違った方法で、連携しながら攻めてくる……。

柳川城
その上……ウィッチたち全員が、
ブリタニア基地さんの支援により能力を高めているようです。

立花山城
九尾たちと戦った時は心強かったけど、
いざ相手にすると相当厄介ね……。

柳川城
……悔いを残さないよう、力を尽くしましょう。

柳川城
『有意義な時間だった』『良い思い出になった』と
双方が思えるなら……私は満足です。

立花山城
ま……私は意地でも負けないつもりだけどね。
貴方も頑張りなさいよ、殿?

殿
…………!

千狐
ウィッチの皆さんは、空より此方へと向かってきます!
飛行する相手の対処を想定しながら、陣を構えましょう!

宮藤芳佳
凄い……これが城娘さんたちの力なんだ。

柳川城
宮藤さんたちの方こそ……。
私たちも、ウィッチたちの力に驚いてしまいました。

立花山城
世界を守る覚悟。
……そして、幾多もの戦いで培われた絆。
私たち城娘と通じるところも少なくないわね。

501JFW ブリタニア基地
城娘とウィッチ……双方にとって、
実り多き出会いとなったなら、私にとってこれ以上の喜びはない。
皆……本当にありがとう。

後半

501JFW ブリタニア基地
……感謝する。
これで、思い残すことは何もない。

宮藤芳佳
……ブリタニア基地さん?
それっていったい、どういう意味――

千狐
――ブリタニア基地さん、ウィッチの皆さーん!

リネット・ビショップ
あ、千狐ちゃんだ……。
慌ててるみたいだけど、何かあったのかな?

やくも
はぁ、はぁ……やっと見つけたがやぁ……。

千狐
皆さん、お揃いのようですね。
ちょうど良かったの……。

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
ウィッチたちに用事ということは、
もしかして、千狐さん……?

千狐
……はい!
皆さんを元の世界へと帰す目処が立ったの!

やくも
こっちはいつでもおっけーだに!
みんなもすぐに出立の準備をするがやー!

――――

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
二つの世界が強く結びついた場所を見つけた……、
というのは間違いないの? 千狐さん?

千狐
その通りです……この場所からなら、
皆さんを元の世界へと送り届けることができるの!

リネット・ビショップ
……もうお別れなんですね。
せっかく城娘ちゃんと仲良くなれたのに、
残念です……。

エーリカ・ハルトマン
まだまだ所領でゆっくりしていたかったんだけどなぁ。

エーリカ・ハルトマン
千狐ちゃんの力で元の世界に帰せるなら、
私たちの世界からも簡単に来れたりはしないのかな?
休日にぶらーっとこっちに来たりとかさ。

501JFW ブリタニア基地
いや……残念だが、
そういうわけにはいかない事情があって――

501JFW ブリタニア基地
――むっ……!?

殿
…………!?

宮藤芳佳
ブリタニア基地さんっ!? どうしたんですかっ?

やくも
実は……ここ数日、
ブリタニア基地の力が弱まっているんだに。

柳川城
それはまるで……こちらと向こう、
二つの世界が遠ざかっているのを示すように……。

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ
もしかして……さっきの訓練で、
力を使い果たしてしまったの……?

501JFW ブリタニア基地
いや、貴官らに責任はない。
私自らの意思で選んだことだ。
時間が残されていないことは、理解していたからな。

宮藤芳佳
…………。

501JFW ブリタニア基地
彼女らの推察に間違いはない。
私にははっきりと感じられるのだ。
少しずつ、二つの世界に隔たりが生まれていることが……。

501JFW ブリタニア基地
急げ……。
世界のつながりが断たれれば、
貴官らに帰る術は無くなってしまう……。

ペリーヌ・クロステルマン
この先……二つの世界のつながりが完全に断たれたら、
ブリタニア基地さんはどうなってしまうの?

501JFW ブリタニア基地
私の起源は貴官らの世界にある。
つながりが断たれ、私を願う者が数を減らせば……、
至る未来は、ただ一つだ。

柳川城
それは、つまり……。
ブリタニア基地さんが消えてしまうということですか……?

501JFW ブリタニア基地
……おそらく、そうなるだろう。

リネット・ビショップ
そんな……どうにもならないんですか?

501JFW ブリタニア基地
そもそも……。
全く異なる世界に縁が生まれたことから、
異常とも言える事態だったのだ。

坂本美緒
別れは避けられない……ということか。

立花山城
いいえ……違うわ。……これは別れなんかじゃない……。

501JFW ブリタニア基地
……そうだ。城娘から基地へ、
形は変わるが、私の心はいつでも貴官らと共にある。

501JFW ブリタニア基地
短い時間ではあったが、幸せなひと時だった……。

501JFW ブリタニア基地
貴官と肩を並べて風呂に浸かったことを、
私は永遠に忘れないだろう。
……ありがとう、坂本少佐。

坂本美緒
…………。

坂本美緒
では、別れの挨拶は言わないでおこう。
これからもよろしく頼むぞ……ブリタニア基地。

501JFW ブリタニア基地
ああ……こちらこそ頼む。

宮藤芳佳
…………。

501JFW ブリタニア基地
そんなに悲しい顔をしないでくれ、宮藤軍曹。

立花山城
辛いとは思うけど……笑って送り出してあげましょう?
最後に見る顔が泣き顔だなんて……そんなの、悲しすぎるじゃない。

殿
…………。

宮藤芳佳
でも……突然すぎるよ。
せっかく出会えたのに……これからもずっと、
一緒に居られるって思ってたのに……。

501JFW ブリタニア基地
ならば、願えばいい……。
ウィッチたちの強い思いがあれば、
どれほどの困難であろうと、越えていける。

501JFW ブリタニア基地
貴官は多くの先達からそれを学んだはずだ。
……そうだろう?

宮藤芳佳
…………!

宮藤芳佳
うん、そうだね……!

宮藤芳佳
私……忘れないよ。
ブリタニア基地さんと出会ったこと、一緒に戦ったこと。
ずっとずっと覚えてる……!

宮藤芳佳
それで、いつかもう一度再会できるって……信じ続けるから!

やくも
うちも信じとるだに!

千狐
千狐も信じるのー!

501JFW ブリタニア基地
ああ……私も願い続けよう。

501JFW ブリタニア基地
そうすれば不可能などは……、
叶わない願いなどは、どこにも無い。
……なぜなら。

501JFW ブリタニア基地
――なぜなら、私たちはウィッチなのだからな。



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