ストーリーテキスト/異界門と英傑の戦士

ページ名:ストーリーテキスト/異界門と英傑の戦士

目次

異界門と英傑の戦士[]

星詠の天球儀 -前-

千狐の声に意識を揺さぶられ、渋々目を開ける
やくも。彼女の前に広がっていたのは自室の
天井……ではなく、思いもよらぬ光景だった。

前半
――所領。

夜が深まり、皆が寝静まった頃――

やくも
ぐぅー……ぐぅー……。

千狐
すぅ……すぅ……。

???
…………。

???
ここが、王様の治める国……。

???
遂に……遂に繋がったのね……。

???
これでようやく、皆を招待することができるわ……。

???
私の御城へ――

やくも
ぐぅー……ぐぅー……。

千狐
やくも、やくも……! 起きて! 起きなさい……!

やくも
ん~……。あと少し、もう半刻ほど……。

千狐
寝てる場合じゃないのよ!
大変なの! 周りを見てみなさい!

やくも
んー……今朝の千狐はいつもより賑やかだに……。

やくも
それに――くしゅんっ。

やくも
うちの布団が無くなってるみたいだに……。

やくも
でも甘い……甘いがや、千狐。
布団を奪った程度でうちの眠りを妨げられるなんて考えは……。

やくも
――っくしゅん。

やくも
んぅぇ……今朝は冷えるだに。
布団が無いのを差し引いても、この寒さは異常だに……。

やくも
ほんとにもう、日の本って国は……。
暑い日が続いたと思ったら、今度は冬が来て……。

千狐
そういうことじゃないの!
馬鹿なこと言ってないで、周りを確認してみなさい!

やくも
わかった、わかっただに……。
今起きるから、そんなにガミガミ言わんでほしいがや……。

やくも
…………。

やくも
うおおお!?

やくも
飛んでる!? 飛んでるだに!?

やくも
というかここはどこがや!? いつの間に移動しただに?

やくも
でもすごいだに! 雲が足元を行き交ってるがや!

千狐
能天気なこと言って……喜んでる場合じゃないでしょう……。

柳川城
私が目を覚ました時にはもう、この有様でしたが……、
殿や千狐さんは、何かご存知ありませんか?

殿
…………。

千狐
はい……殿と同じく千狐も、
目が覚めたらここにいました……。

やくも
眠っている間に誰も起こさず、
見知らぬ場所へ……ということだに……?

柳川城
先日にも、似たようなことがありましたが、もしや――

ラピュータ
……目が覚めたみたいね。

ラピュータ
はじめまして、王様。
こうしてお会いすることを、ずっと心待ちにしていたわ。

殿
…………?

千狐
貴方が内に秘めているその力……貴方も城娘、なのですね?

ラピュータ
ええ、そうよ。私の名前はラピュータ。
……この名前を聞いて何か思い出してくれたら、すごく嬉しいのだけど。

やくも
らぴゅーた? ラピュータ……?

やくも
んん~、最近どっかでその名前を聞いた気がするんやけど、
思い出せないだに……。

やくも
柳川城がこの前、熱っぽく語ってたような……。

殿
…………。

殿
…………!

千狐
そうですね……先日、
柳川城さんが話してくださったお話に出てきた名前です。

柳川城
はい、異国の城娘さんからお借りした本が面白かったので、
その内容を皆さんにお話ししたのでしたね……。

殿
…………!

千狐
ええ、よく覚えています。
日の本よりも更に東方の空に浮かぶ島……ラピュータ。

柳川城
覚えていただけていたのですね。

千狐
はい……かなり印象的な話だったので……。

千狐
やくもはあまり覚えていなかったみたいですが。

やくも
そ、そんなこと言わんでほしいだに!

やくも
あ、頭の端っこには引っかかってたんやから、殆ど覚えてたも同然だに……!

ラピュータ
ふふ……そんなに慌てなくても分かっているわ。

ラピュータ
貴方がこの場に居ることが何よりの証。

ラピュータ
私の物語を知り……ラピュータの実在を願ってくれたということ。

ラピュータ
私が城娘として存在できるのも、こうして出会えたのも、
貴方たちの願いがあるからこそ。……感謝しているわ。

柳川城
私もお会いできて嬉しいです。本を読んだ時に思い描いた、
あの風景が目の前に広がっているなんて……。

やくも
だにぃ……空に浮かぶなんて、未だに信じられんがや。

千狐
ええ……。
物語の中では確か『科学』という力によるものだと語られていましたが……。

柳川城
ところで……ラピュータさんは、
殿のことをすでにご存知だったのですね?

ラピュータ
ええ。ここに訪れる方々から時折、
王様や城娘たちの活躍は聞いていたから。

ラピュータ
それで、いつかお会いできたら、と思っていて――

ラピュータ
――ああ、そうだ。大事なことを忘れていたわ。

ラピュータ
実はね、王様たちに会わせたい人が居るの。

柳川城
私たちに会わせたい人、ですか?

ラピュータ
ええ。少し前にここへやってきたんだけど、
ずっと王様たちがここに現れるのを待っていて――

???
――ふふっ、待つことには慣れていますので。

殿
…………?

やくも
……ん? 今、どこからか声が……?

???
こちらですよ。

???
はじめまして。
あなたがヒノモトの長――殿と呼ばれる方ですね?

殿
…………。

ラピュータ
ソラスさん……。

やくも
そらす……あの子も城娘なんだに? ラピュータの友達がや?

ラピュータ
友達、と言えばそうなんだけど……城娘というわけではないの。彼女は――

ソラス
待ってください、ラピュータちゃん。

ソラス
お喋りも悪くはありませんが……まずは、確かめておかないと。

殿
…………?

柳川城
確かめる、とは……いったい何を……?

ソラス
それはもちろん、
あなたたちの実力の程を……ですよ、殿さん♪

千狐
――コンッ!?

やくも
どうしたんだに、千狐っ!?

千狐
あのソラスさんという方から、
強い……とても強い力が感じられるの……!

千狐
敵意を向けているように見えないのが不思議ですが……、
あれをこちらにぶつけられたら……!

殿
…………。

柳川城
目的はわかりませんが、
説得をしている余裕はないようですね……。

柳川城
殿、聡明なご下知をお願いいたします!

殿
…………!

合戦中
ラピュータ

ソラスさん……これはいったい、どういうつもりなの?

ソラス
ふふっ、あなたたちもよくご存知の
「手合わせ」をしようかと思ったんです。
実力を見るには模擬戦が一番ですからね♪

ソラス
けれど私ひとりで城娘ちゃんたちの相手をするのは、
さすがに少々大変ですので――

ソラス
――よいしょ♪
「塔」の力を借りて、魔物の軍勢を再現しました。

ソラス
殿さんが英雄たる器か否か、試させてもらいますよ。
さぁ、始めちゃいましょうか!

ソラス
さすがは噂に名高い殿さん♪
私の軍勢を退けるどころか、まだ余力がありそうですね。

柳川城
……力を出し惜しんでいたのは、貴方も同じように見えましたが。

ソラス
…………。

柳川城
貴方の目的……聞かせてもらえますね?

ソラス
それはもちろん、星の導きがゆえに。
――なんて冗談を言っている場合ではないですね。
包み隠さずお話しいたしましょう。

後半
千狐

ソラスさんは、なぜあのようなことを……?

千狐
あの戦いぶりを見るに、
私たちの殲滅が目当てでないことは理解できましたが……。

ラピュータ
戦いが始まる前に、試すって言ってたけど……それが目的?

ソラス
あはは……。
ちょっと言葉が悪かったですかね。

ソラス
けれど、実力を見せてほしかったのは事実。
門を超えてこの世界へ来た、
異邦人たる私は皆さんの実力を知りませんから。

千狐
い、異邦人……?

千狐
ということはソラスさん、まさか……?

ソラス
はい、私はこの世界の住人ではありません。

殿
…………。

ソラス
異世界にて、かつての千年戦争を駆け、
今の世には『英傑』と語り継がれた者。

ソラス
そして星の導きによって、殿さんを助けに来た
星を詠む者――それが私、ソラスお姉ちゃんなのです♪

星詠の天球儀 -後-

異界の英傑を名乗るソラスは、一行と出会うまでの
経緯を語り始める。何故ラピュータの城に訪れた
のか、そして何故、殿たちに襲いかかったのか……。

前半
ソラス

さてさて、どこから説明しましょうか。

ソラス
かつて、私たちの世界には、
魔王という強大な存在が君臨していました。

やくも
ま、まおうだに……?

千狐
千狐たちの世界で言うと、
兜の親玉のような存在になるのでしょうか……。

ソラス
はい、その認識が適切かと思います。

ソラス
大地は荒れ、民は絶望し、世界はただ滅びを待つのみ。
けれどそんな中で、立ち上がる者がいました。

ソラス
多くの犠牲を払い、けれど多くの仲間を得て、
長い戦いの末に、彼は魔王を封じることに成功しました。

ソラス
長き時を経て、彼は『英雄王』と、
そして歩みを共にした私たちは『英傑』として、
各地の伝説に名を残したのでした。

柳川城
気軽に言っていますが、
世界を救った本当の英雄じゃないですか……。

やくも
敵の親玉を封印って……このねーちゃん、とんでもない人だに……。

ソラス
けれど、戦いは本当の意味では終わっていなかったのです。
魔王は封印されただけ、ですからね。

ソラス
いつか真に魔王を滅ぼす存在を導くため、
私は『英傑の塔』という装置を作り、
自分自身をその内へと封印しました。

ソラス
志を同じくする他の英傑も、
各々の考えのもとに、次なる脅威に備えていたそうです。

ソラス
……千年戦争を本当に終わらせる時のために。

ソラス
――なので、私はこの世界に来たのでした♪

やくも
…………。

やくも
…………だに?

やくも
とりあえず、ソラスがすごい人だってことはよーくわかったがや……。

千狐
(本当に分かってるのかしら……)

柳川城
ソラスさんの世界のことはわかりましたが、
それと、あなたが日の本へ来たことに
何も繋がりがなかったように思えるのですが……。

千狐
……はっ、もしかしてソラスさんも、
千狐たちのように、ラピュータさんの物語に導かれて?

ソラス
正確にはわかりませんが、
きっかけは同じかもしれませんね。

ソラス
天界――いえ、空の世界には、
私たちも何かと縁がありましたから。
空飛ぶ都市に思いを馳せたこともありますしね。

ラピュータ
推測になってしまうけれど……ソラスさんのそうした願いが、
私との繋がりを生んだとしても、不思議ではないと思うわ。

ソラス
とはいえ、この世界に来たのは偶然ではなく、
私が自ら願った必然です。

ソラス
前置きが長くなってしまいましたが……本題はここから。
どうして私たちが、殿さんの御一行と巡り合うことになったか、という点なのです。

やくも
偶然とか必然とか難しいだに……。
せっかく出会えたんだから、仲良しになればいいがや?

ソラス
ふふっ、もちろん仲良しさんにはなりたいですね♪
ですが私は、意志と意味を持ち、
星の声の使命を帯びて、この地へと至ったのです。

柳川城
この地へ至った、意味……。
それが、私たちの力を試すことだと?

ソラス
試す、というより助力というべきですね。

ソラス
――星はこう告げました。

ソラス
盟友たる者たちに、星の導きをもって助力せよ、と。

ソラス
意訳すれば……そうですね……。
素敵な出会いがあるので、
その子たちをいっぱい助けなさい! という感じですね!

ソラス
そうして私たちは星に導かれるままに、
この地へ至り……殿さん、あなたに出会ったのでした。

ソラス
いま、私たちの世界で英雄と称される彼と同じく、
世界を救う使命を帯びたあなた。

ソラス
あなたに力を貸し、ふたつの世界の架け橋となること。
それが星の告げた、私の使命だと思うのです。

柳川城
それで、まず実力を見ようとしたのですね……。

ソラス
えぇ、そのとおりです。
ふふふ、聡明な女の子は素敵ですね♪

ソラス
ですが、先ほどの一戦はあくまで腕試し。
試練と称すべきはここからです。

ソラス
割と手を抜かなくても大丈夫だと判明したので、
次はもうちょっとだけ、強めに行っちゃいましょう!

やくも
つ、強めにって、怪我したらどうするつもりだに!?

ソラス
喧嘩と色恋に怪我はつきものです。
私の仲間もそう言っていましたしね。

ソラス
試練とは、
やはり極限状態でこそ意味があるものなのです。

ソラス
それに、皆さんの信じる殿さんは、
そんな簡単にやられる方ではありませんよね?

千狐
あ、当たり前なの!

ソラス
ふふふ、ちょっと焚き付け過ぎちゃいましたかね。
でも全力で来てくれるならそれでよし。
皆さん、準備はいいですか?

合戦中
千狐

……先ほどよりも強い力が、ソラスさんの内から感じられます。

柳川城
先の一戦より、厳しい戦いになりそうです……。
気を引き締めて臨みましょう、殿……!

殿
…………!

天球儀上で詠唱中のソラスは第一波の間、攻撃を行わず、また攻撃対象になりません。
詠唱を終えると、通常時より攻撃対象と攻撃回数が増加します。

柳川城
はぁ、はぁ……。
これでお終いですか……。

ソラス
ふふっ、さすがは殿さん。
よく乗り越えましたね。

やくも
ふぃ~……危うく夢の中でおだぶつするとこだっただに……。

千狐
ええ……殿の見事な采配のお陰で、どうにか乗り切れました……。

殿
…………!

後半
柳川城

や、やりましたね……殿。見事な采配でした……!

ラピュータ
柳川城さん……大丈夫……?

柳川城
はい、問題ありません。
ただ、激しい戦いだったので……少々、疲れが……。

ソラス
素晴らしい戦いでしたよ、柳川城さん。

ソラス
主に迫る危機を払うため、自らの危険も顧みず戦いに臨む姿。
……あなたの強い意志が感じられました。

柳川城
ソラスさん……。

ソラス
目の前の大切な人を守りたい……そう願い続けることは、
平穏を求める心と同じくらい尊いものだと、私は思います。

ソラス
あなたが殿さんを想う気持ちはきっと、いつか――

柳川城
ソ、ソラスさん……褒めていただけたのは光栄なのですが、
殿の前ですからもう少しこう……遠回しな表現で……!

ソラス
……あっ、もしかしてまだ秘密でしたか?

柳川城
秘密もなにもありません! もう!

殿
…………?

ソラス
もちろん殿さん。
あなたの采配も見事なものでした。

ソラス
指揮のひとつひとつから、
あなたの城娘ちゃんたちへの想いが垣間見えました。

ソラス
この後に待ち受ける試練も……きっと、あなたなら――

???
あぁっ、もう先に始めちゃってますよ!?

???
ユージェンちゃんも早く早く! いそいでくださいー!

???
サナラ姉さま、急ぎすぎです。
また転びますよ?
大地を紡ぐ者が大地で転ぶとか笑えませんって。

やくも
ま、また人が増えたがや!?

???
まったく、ずるいですよソラスちゃん。
いつもいつも美味しいところを取っていくんですから。

ソラス
ふっふっふ、抜け駆けしたつもりはありませんよ?
ふたりにも後ほど、役目を果たしてもらうつもりでしたから。

千狐
あの二人……ソラスさんと同じく、
強い力を秘めていることが感じられます。

やくも
その子たちもソラスの仲間……えーけつって奴だに?

ソラス
その通りです。こちらの二人も私と同様に、
千年前の戦争から肩を並べて戦ってきた仲間……。

サナラ
大地を読み解き、道を拓く!
偉大なる英傑サナラちゃんですよー!

サナラ
殿ちゃんのこと、
ビシバシ鍛えてあげますから、覚悟しててくださいねー!

ユージェン
わ、私も自己紹介をする、のか?
はぁ……私はユージェン。
英傑たる母から、この弓を受け継いだ者。

ユージェン
そう……いわば影より歴史を守りし者だ。
あなたが世界を救う志を同じくするなら、
この力、存分に振るわせてもらおう。

ユージェン
短い付き合いになるとは思うが、よろしく頼む。

殿
…………!

ソラス
それから、姿が見えませんが他にも……。

ソラス
ユージェン、アトナテスがどこに居るか知りませんか?

ユージェン
アトナテスおじさま……?
いえ、てっきりソラス姉さまと共にいるとばかり……。

サナラ
あー、そういえば、金髪の城娘ちゃんに
質問攻めにあっていたような……。

サナラ
彼、ああ見えて武勇伝語り始めると止まりませんし……。

ユージェン
波長があった、というべきなのかもしれないな……。
おじさまは英雄王の自慢話なら、
一晩中だって語り続ける人だから。

ソラス
まぁ、忙しくしているというなら仕方ありません。
そちらの出会いもきっと、アトナテスにも、この世界にも、
意味のあるものになることでしょう。

ソラス
それからトゥアンは……。
あれ? トゥアンこそどこに行ったんですか?

ユージェン
トゥアン姉さまは留守番だそうです。
使命とかそういうのは任せた、と言っていました。

サナラ
トゥアンちゃんらしいというか何というか……。
それより! この方がソラスちゃんの占いに出た、
この世界を救う使命を帯びた英雄なんですね!

ユージェン
まったく、随分と待たされたな。

サナラ
さぁて、さっそくサナラお姉ちゃんが、
殿ちゃんのお相手をしてあげましょう♪

やくも
やっぱり……試練ってやつはまだ続くんだに?

ソラス
もちろんです♪ こちらの二人と挨拶を交わしただけで、
はいさようならなんて、あまりに勿体ないですから。

ソラス
厳しい戦いが続きますが……きっとあなたなら乗り越えられると、
信じていますよ。殿さん♪

殿
…………!

こうして殿たちは、
異界の英傑から与えられる次なる試練に、挑むこととなるのだった――

異界門と英傑の戦士 -絶壱-

殿たちがソラスたちと出会う数日前のこと。
ラピュータとの再会をかねてより切望していた
とある城娘が、ラピュータの許に訪れる……。

前半
殿たちがラピュータに出会う、数日前――

ストラホフ修道院
……あら?

ストラホフ修道院
ここは……。
もしかして、ラピュータさんの御城かしら?

???
またこの世界に足を運んでくれたのね……。

ラピュータ
いらっしゃい、ストラホフ。また会えて嬉しいわ。

ストラホフ修道院
……まぁ、ラピュータさん♪ やっぱりそうだったのね!

ストラホフ修道院
嬉しいわ……以前この世界で貴方と出会ってから私、
毎晩欠かさずにあの物語を読んでいたのですよ。

ストラホフ修道院
この素敵な夢の世界に、もう一度来られるように、って!

ストラホフ修道院
けれど、そう願うことしかできないのが、歯がゆくて……。
朝を迎える度に、貴方に会えなかったことを悲しんでいたのです。

ラピュータ
そうね……ここは、
貴方たちの世界とは隔絶された場所にあるから……。

ラピュータ
もちろん不自由も少なくないけど、これ以上を望むつもりはないわ。
……これが私の世界だもの。

ストラホフ修道院
……ラピュータさん。

ストラホフ修道院
私……初めてここに来た時に思ったのです。
自分がラピュータさんの立場だったらどれだけ苦しいだろう……と。

ストラホフ修道院
もっと長くここに留まることができたら、
貴方に寂しい思いをさせずに済むのに。

ストラホフ修道院
でも、今の私にできることは、
貴方の物語を一人でも多くの城娘に語り継ぐことくらいで……。

ラピュータ
それだけでも充分すぎるくらいよ、ストラホフ。
私の実在を願う人たちのお陰で、私はここに居られるのだもの。

ラピュータ
それに、貴方の質問攻めが毎日続くというのも、
一種の苦しみと言えるだろうし……。

ストラホフ修道院
え……何かおっしゃいましたか?

ラピュータ
な、なんでもない。
とにかく……今はこの再会を喜びましょう、ね?

ストラホフ修道院
ええ……そうですわね。

ラピュータ
ふふ……それに今は、
以前ほど寂しさを感じているわけではないのよ?

ストラホフ修道院
え……それはどういうことでしょうか……?

――――

アトナテス
…………ふぅ。

アトナテス
しかし、退屈だな……。

アトナテス
ソラスが言っていた、
『異界を救う使命を帯びた男』ってのは、いつ現れるんだ……?

アトナテス
こんなことなら王子も連れてこればよかったんだ。
あいつのことだ、こんな立派な城を見たら、
目を輝かせて歩き回っただろうに。

アトナテス
俺には城の良し悪しはわかんねぇからなぁ。
だが居心地は悪くない。
もうしばらく、ぶらつくとするか……。

――――

ストラホフ修道院
っ!?

ストラホフ修道院
ラ、ラピュータさん……ラピュータさん……!

ラピュータ
どうかした、ストラホフ?

ストラホフ修道院
あそこ……なんだかガラの悪い男性が、
肩を揺らしながら闊歩しているのですけど……。

ラピュータ
ん……?

ラピュータ
あぁ……あれはアトナテスおじさまね。

ストラホフ修道院
おじさま……?
容姿を見るに、まだ青年のように思えますが……?

ラピュータ
訳は知らないけど、お仲間からそう呼ばれていたの。
満更でもない感じだったから、私も親しみを込めてそう呼ぶことにしているわ。

ラピュータ
彼や、その仲間たちはどうやら……、
私たちの知る世界とは違う場所から来たそうなの。
『英傑』と名乗っていたわ。

ストラホフ修道院
違う場所からのお客さんが、何人も……。

ラピュータ
そうなの。だけど、んー……今は姿が見えないわね。
せっかくだから、おじさまだけでも紹介しておきましょうか。

ストラホフ修道院
…………。

ラピュータ
ストラホフ……どうしたの? 険しい顔をして……?

ストラホフ修道院
……怪しい、ですわね。

ラピュータ
……え?

ストラホフ修道院
鎧や武器の、あの禍々しい感じ……。

ストラホフ修道院
非常にガラが悪いですし……何やら色々と、怪しいです。

ラピュータ
んー……話してみると、そんなに悪い人じゃないわよ?

ラピュータ
ガラが悪いというのは、間違っていないかもしれないけど……。

ストラホフ修道院
本当にそうでしょうか……?

ストラホフ修道院
ラピュータさんは城娘として顕現してからずっと、
この世界の中で過ごしてきました……。

ストラホフ修道院
いわば箱入り娘と呼ぶべき状況……。

ストラホフ修道院
そんな、世間知らずのラピュータさんを食い物にしようとしている、
邪な輩という可能性は、充分考えられますわ……!

ラピュータ
邪な輩って……。

ストラホフ修道院
(この場において、
 ラピュータさんをお守りできるのは私だけ。となれば……)

ストラホフ修道院
…………。

ストラホフ修道院
ラピュータさん。
しばらくの間、ここで待っていてもらえますか?

ラピュータ
構わないけど……貴方はどうするつもり?

ストラホフ修道院
ご心配なく、何もしませんわ。
あの方が何もしなければ、の話ですが……。

――――

アトナテス
待ち人が来ないんじゃ外に散歩にも行けやしねぇ。
あとすることと言えば、昼寝くらいか……。

ストラホフ修道院
ちょっと、そこの方?

アトナテス
あん……?

アトナテス
おっ、新顔だな。俺に何か用か?

ストラホフ修道院
そう、貴方ですわ。
少々お時間をいただきたいのですが、よろしいでしょうか。おじさま?

ストラホフ修道院
貴方とその仲間たちについて……お話を聞きたいのです。

アトナテス
おいおい、いきなり好戦的だな。
いや、好戦的ってよりも警戒心ってやつか?

アトナテス
さすがは城娘――って、
お前、いま俺をおじさまって呼んだな?
どこがおじさまだ、どこが!

ストラホフ修道院
声を掛けただけだというのに、突然の激昂……!

ストラホフ修道院
や、やはり貴方、敵ですわね……!?

アトナテス
へぇ、なかなかの美形だと思ったが、
お姫様ってわけじゃなさそうだ。

アトナテス
俺を敵だと認めたなら、
そうだな、少しだけ相手をしてやるよ。

合戦中
ストラホフ修道院

ラピュータさんに近づいて何をするつもりですか!
答えなさい!

アトナテス
いや、何をするつもりだって、
俺はこっちに無理やり連れてこられたんだぞ!?

ラピュータ
…………。

ラピュータ
(どうしよう……)

ラピュータ
(なんだか面白いことになってしまったわ……)

ラピュータ
(止めた方がいいのだろうけど、
 もう少しだけ見守ってちゃダメかしら……)

今回登場のアトナテスは耐久が50%以下になると、以下の特技効果を発動します。
攻撃方法が変化し、自身の攻撃を1.5倍、対象の防御を無視する攻撃を行う。
※耐久が50%以下になると、待機状態を解除し、進軍を開始します。

ファイアエレメンタルと聖霊(水色)は、
自身が受ける防御無視攻撃のダメージを半減します。

また、ファイアエレメンタルは、
ダメージを受けるまで攻撃行動を行いません。

ストラホフ修道院
はぁ、はぁ……なんてしぶとい人なのですか……。

アトナテス
へぇ、評価を改めねぇとな。
文学少女かと思えば、なかなかできるじゃねぇか。

ラピュータ
……二人とも、そろそろ終わりにしない?

ラピュータ
これ以上争っても疲れるばかりだし、
お互い事情を説明しましょう。ね?

アトナテス
おっ、ようやく来たか。
こいつをどうにかしてくれよ。

アトナテス
……いや、自己紹介してない俺が悪いのか?
確かに突然知らねぇ奴が城に現れたら慌てるよな。

ストラホフ修道院
……あっ、いえ、何というのか。
意外と話が通じるんですね……?

後半
ストラホフ修道院

……なるほど。日の本の王様にご用があって、
此の地に留まっていた、と……。

アトナテス
ああ、そういうことだ。

アトナテス
だがストラホフ、
お前最初から敵意むき出しはいただけないぜ?
何か理由でもあったのか?

ストラホフ修道院
理由……理由といえば、その……。

ストラホフ修道院
見た目がちょっとガラが悪かったので……怪しいな、と。

アトナテス
……言いがかりじゃねぇか!
鎧ってのは敵を威嚇するためにあるんだぜ?

ストラホフ修道院
すみません……てっきり、
ラピュータさんに危機が迫っているものと……。

ラピュータ
まぁいいじゃない。
とっても面白……じゃなくて、何事もなく誤解は解けたのだし。

アトナテス
ハハッ、お前も良い根性してるよ、ラピュータ。

ストラホフ修道院
それに、すごく興味深いお話も聞けましたわ。

ストラホフ修道院
千年も前に、魔王に立ち向かい封印させたばかりか、
その後は、祖国を守るために魔界に残って戦い続けたなんて。

ストラホフ修道院
まるで、神話の登場人物のようではありませんか!

アトナテス
おう、まさに神話の登場人物だぜ?
自分でいうのはくすぐったいけどな。

ストラホフ修道院
あの……もし、よろしければなのですが……、
アトナテスさんの世界のこと、もっと詳しく聞かせてもらえませんか?

ストラホフ修道院
私、非常に気になるのです!

アトナテス
ほう……気になるのか?
いいぜ、ソラスの言う待ち人が来るまで、
やることが無くて困ってたところだ。

アトナテス
異界の者と言葉を交わすってのは、俺にとっても貴重な機会だ。
お前の気が済むまで付き合ってやるよ。

ストラホフ修道院
ふふっ、ありがとうございます♪

ラピュータ
その言葉……後悔することにならないといいけど……。

アトナテス
……なんだラピュータ、何か言ったか?

ラピュータ
ストラホフの知識欲は底知らずってことよ……今に分かるわ。

アトナテス
……? まぁいい。
それじゃ……ストラホフって言ったか、早速始めようぜ。

ストラホフ修道院
はいっ! では、まずお聞きしたいのですが――

ストラホフ修道院から投げかけられる質問の数々……。

待ち人が訪れるまで、どころか……待ち人が去っても尚これが続くとは、
この時のアトナテスはまだ、想像もしていないのだった――

影継の弓 -前-

ソラスの言葉を合図に、突如揺れ始める空飛ぶ島。
揺れが収まった直後、殿一行は思いもよらない
物を目の当たりにすることになる……。

前半
やくも

次の試練は場所を変えて行う、
って言ってたけど、何をするつもりだに……?

ソラス
もう少々お待ちくださいね。
間もなく到着するはずですから♪

千狐
到着するはずって……。
千狐たち、ここから一歩も動いていないのですが……。
このままじっとしていて良いのでしょうか?

柳川城
…………?

柳川城
なんだか、急に風が強くなりましたね……?

千狐
風? 言われてみれば、確かに……?

やくも
それに、さっきから足元が揺れてる感じがするがや……?

ラピュータ
……そろそろね。

ラピュータ
皆……停止する時に少しだけ揺れるから、
適当なところに掴まってくれる?

千狐
揺れる? それはどういう――きゃぁっ!?

殿
…………!?

やくも
うおおおぉっ!?
少しって、どこが少しなんだにぃぃ!?

やくも
掴まれなんて、急に言われても……うちの前には、
千狐のふさふさ尻尾くらいしか見えんだに……!

千狐
コンッ!? それは絶対掴んじゃダメなのーっ!

――

――――

柳川城
はぁ……やっと揺れが収まりました。
それで、到着というのは……?

ソラス
ふふ、前方をご覧ください。
あちらに見えるのが、次の目的地ですよ♪

殿
…………!

千狐
あれは……。

千狐
と、塔が見えます。大きな塔が……。

柳川城
それに、この広大な草原は……?
ここもラピュータさんのところと同じように、空を飛んでいるのですよね?

ソラス
ふふふ。驚いてくれましたか?

ソラス
殿さんたちの来訪に備えて、
この舞台を事前に用意しておいたのですよ。

柳川城
では、先程の揺れは……?

ラピュータ
私……ラピュータの空飛ぶ島が、
移動したり上昇したりすることで発生していたものよ。

千狐
島ごと移動して、この地に……?

千狐
はぁ……なんだかもう、
びっくりの連続で疲れてしまったの……。

やくも
だにぃ……。
こんなことをするんなら、先に教えてほしかったがや……。

ソラス
ふふふ、すみません。
皆さんの反応を見てみたくて、意地悪をしてしまいました♪

柳川城
ですが……俄には信じがたいです。
この眼の前に広がる光景が全て、ソラスさんの手によって造られたものだなんて……。

千狐
ええ……どういうからくりなのでしょうか……。

ソラス
細かい説明は割愛しますが……これは、魔じゅ――こほん。
私たちの世界に存在する、超常的な力を利用して造り上げたものです。

ソラス
骨は折れましたが、これだけ驚いてもらえたなら、
頑張った甲斐があったというものですね♪

やくも
島を浮かばせて、その上に塔を……ほぇー、異界の力って凄いだに。

千狐
そうね……。
凄いの一言で片付けるのはどうかと思うけど……。

サナラ
とにかく……これでようやく、
殿ちゃんたちと遊ぶことができますね♪

殿
…………。

柳川城
ここまで私たちを連れてきたということは、やはり……。
あの塔は、私たちを試すために用意された物なのですね。

ソラス
はい、その通りです♪

ソラス
あの塔は、名を『英傑の塔』と言いまして、
こちらの世界に存在する、同一の塔を模して造りあげました。

ソラス
元々、英雄たる者を試す場所として用意したものですから、
次の舞台としてはうってつけかと思いまして。

殿
…………。

ソラス
そのお顔……殿さんの方は、もう準備万端のようですね。

ソラス
それでは早速、皆さんを塔の内部へとご案内しましょう♪

――――

千狐
内部はこんな風になっているのですね……。

柳川城
これまで、異国の様々な建造物を見てきましたが、
そのどれとも似つかない……。

柳川城
異界には、
私たちの想像を越える景色が広がっているのですね……。

ユージェン
まぁ……私たちの世界も、
こんな風景ばかりが広がっているわけではないがな……。

サナラ
そうです! お家とか畑が並んでいる場所もありますし、
皆さんの世界と大きな違いはないと思いますよ!

サナラ
ただ、この場所は、
殿ちゃんを試すために用意した特別な場所……。

サナラ
このサナラお姉ちゃんと殿ちゃんたちが雌雄を決する場としては、
これ以上ない舞台、ということですー!

やくも
…………。

やくも
さっきからずっと気になってたんやけど……。

サナラ
はい、なんでしょうか?

やくも
お嬢ちゃんも、
ソラスと同じえーけつってことで、間違いないんだに……?

サナラ
……なっ!? お嬢ちゃんとは失礼なー!

サナラ
さっきも自己紹介しましたけど、こう見えても私は、
ソラスお姉ちゃんと並び『大地を紡ぐ者』として知られる英傑!
結構凄い人なんですからね!

サナラ
今も英傑としての偉大さが、
全身から溢れ出てるはずなんですが……感じられませんか!?

やくも
……なるほど。

やくも
お嬢ちゃんの言いたいことはよーくわかったがや。
お嬢ちゃんはえーけつ。すごいすごいだに♪

サナラ
絶対わかってないですー!
またお嬢ちゃんとか言ってますし!

サナラ
……まぁ、良いでしょう。
戦いが始まればその身で理解するはずです、私の実力を……!

合戦中
ソラス

ふふ……分かっているとは思いますが油断は禁物ですよ、殿さん。

ソラス
一見威厳がないように見えても、
あの子は間違いなく英傑の一人ですから……。

殿
…………!

サナラ
行きますよ、殿ちゃん!
私の力、存分に思い知らせてあげちゃいますから!

サナラ
うぅ……やられてしまいましたぁ……。

ラピュータ
はぁ、はぁ……厳しい戦いだったわ……。

ラピュータ
ソラスさんの言う通り、
英傑という名に違わぬ力を持っていたわね……。

柳川城
どうにか勝利は収められたものの……危ないところでした。

柳川城
殿、この後も試練は続くようです……。
引き続き、油断せずにまいりましょう。

後半
千狐

サナラさんの力……お見逸れしました。
世界を救い、英傑と呼ばれることになったのも納得です……。

やくも
だに……お嬢ちゃんなんて言って、申し訳なかったがや……。

サナラ
いえ、いいんです。
売り言葉に買い言葉でつい、熱くなってしまいましたが……。

サナラ
普通のお嬢ちゃんっていうのは、
あながち間違いというわけではありませんから……。

サナラ
占いがちょっと得意で、地脈を操れる大天才ってこと以外……、
普通の女の子でしたから、私……。

殿
…………。

サナラ
それでも、沢山の仲間や大切な人が支えてくれたお陰で、
ここまで来ることができました。

サナラ
だから私、さっき……。
殿ちゃんや城娘ちゃんたちが戦っている姿を見て、思ったんです。

サナラ
あぁ、殿ちゃんたちならきっと……いや絶対、
どんな苦難でも乗り越えていけるだろうなー、って。

サナラ
……なんて。
ちょっと偉そうなことを言ってしまいましたかね、えへへ。

サナラ
長々と語ってしまいましたが、
サナラお姉ちゃんから殿ちゃんに伝えられることは、これくらいです!

サナラ
元の世界に戻ってからも……さっきの戦いのことや、
お話ししたことを覚えてくれてたら、私はとっても嬉しいです!

殿
…………!

ソラス
また一つ、試練を乗り越えましたね……殿さん。

ソラス
ではこの塔の更に奥へと……進んでいきましょうか……。

ユージェン
よし、次は私の出番だな……。

影継の弓 -後-

ソラスが造り上げた英傑の塔を登り、次なる
舞台に辿り着いた殿一行に、黒き弓を
受け継ぎし英傑・ユージェンが試練を与える。

前半
ソラス

さぁ、到着しましたよ。ここが次なる試練の舞台です。

千狐
これはまた……、
先程から趣が大きく変わりましたね……。

柳川城
はい……不穏と言いますか、
不安を掻き立てるような雰囲気が漂っています……。

ユージェン
さて……私の番だな。

ユージェン
試練とは言っても、私にできることは全力を以てお前たちとぶつかることくらいだ。

ユージェン
戦いの中で、私にしか伝えられないものが見つかれば良いのだが……。

ユージェン
まぁ……戦う前から思い悩んでも仕方ないな。

ユージェン
さぁ始めようか、殿よ。……良い戦いをしようじゃないか。

合戦中
ユージェン

ここまでの戦いで、お前たちの力の程はよく分かった。
手加減をする必要がないということもな。

ユージェン
神の加護を受けし我が弓の力……存分に味あわせてくれよう!

千狐
ユージェンさんのあの身のこなし……、
見失わないようにするので精一杯です……!

柳川城
それにユージェンさんが持つあの弓……強い力が感じられます。
殿、遠方からの攻撃にはご用心を!

殿
…………!

剣を装備したダークエルフアベンジャーは、
耐久が50%以下になると、攻撃が大幅に上昇します。
※上記の条件を満たすと、待機状態を解除し、進軍を開始します。

ユージェン
……どうやら、ここまでのようだな。

ユージェン
私の攻撃をしのぎ切るとは。
城娘たちの奮戦といい、殿の統率といい……素晴らしい戦いだったぞ、殿。

殿
…………。


後半
ユージェン

殿や、城娘たちの存在はきっと、
ヒノモトの者たちに多くの希望を与えているのだろうな……。

ユージェン
お前たちの力を試すはずが、
逆にこちらが学ばせてもらうことになってしまったようだ……。

ユージェン
……礼を言わせてくれ、殿。
戦場におけるお前の勇ましき姿を、私は深く心に刻むことにするよ。

ユージェン
そして、世界を救うという同じ志を抱く者として……、
お前のことを陰ながら、応援している。

殿
…………!

柳川城
こちらこそ、ありがとうございます。
私たちもユージェンさんとの戦いで、多くのことを学ばせていただきました。

やくも
…………。

やくも
……ふわぁぁ。

千狐
こら、やくも……!
今良いところなんだからあくびは噛み殺しなさい……!

やくも
んぅ、だって……戦いが続いたせいか、眠くなって……ふわぁぁ。

殿
…………。

千狐
殿もですか?
確かに……千狐も、先程から少し眠気を感じていましたが……。

ソラス
……楽しい時間は、
あっという間に過ぎてしまうものですね。

ソラス
時間の許す限りお相手するつもりでしたが、
もう、お別れの時が来てしまったのですね……。

ラピュータ
ええ……そのようね。
王様たちの世界に朝がやってきて……目覚めの時が近づいているみたい。

やくも
えぇっ!? もうおしまいだに!?

やくも
空飛ぶ島なんて素敵な場所に来れたんだから、
もっと色んなことをしたかっただに……。

サナラ
そうですよー! 私も全然遊び足りないです!

サナラ
殿ちゃんの世界の暮らしのこととか、お菓子のこととか……、
話してみたいことがいっぱいあったのに!

ユージェン
それに、アトナテスおじさまの姿も見えないままですね……。

サナラ
あぁ、言われてみればそうですね……。
まだあの城娘ちゃんに追っかけられているのでしょうか……?

柳川城
……ソラスさんは、
私たちに与えられた時間が少ないことをご存知だったのですか?

ソラス
ええ……事前に、
ラピュータさんからそのように伺っていました。

ソラス
皆さんに試練を与え、実力を確かめるという形をとったのも、そのためです。

ソラス
限られた時間の中で、少しでも多くの学びを得るためには……、
言葉を交わすことよりも、そちらの方が適していると考えたのです。

ソラス
たとえ……元の世界に帰った後、
皆さんの記憶から忘れ去られる定めにあるとしても……。

サナラ
忘れる? 殿ちゃんたち、
ヒノモトに帰ったら私たちのことを忘れてしまうのですか……?

ラピュータ
……ここは人々の願いによって保たれている、幻想の世界。
王様たちが生まれ育った世界とは、大きな隔たりがあるわ。

ラピュータ
ましてやソラスさんたちは本来、
私の物語とは関わりのない異邦人。

ラピュータ
だから、ここで起きた出来事の全てを記憶に留めておくことは、難しいと思うわ……。

ユージェン
悲しいが、それも一つの定めか……。

柳川城
…………。

柳川城
全てを記憶に留めておくことは難しい……。
確かに、ラピュータさんの仰る通りです。

柳川城
ですが、それでも……。
全ての思い出が消え去ってしまうわけではありません。

柳川城
記憶から消えてしまったとしても、
私たちの中で変わることなく生き続けるものもある……。
私はそう思います。

殿
…………!

ソラス
ええ、私も柳川城さんと同じ想いです。

ソラス
ですから私は、
この世界で殿さんを待ち……試練を与えることを選んだのです。

ソラス
交わした言葉は、それ程多くはありません……。

ソラス
けれど私は、与えられたこの時間を、
これ以上ないくらい素晴らしいものにできたと……そう思っています♪

ユージェン
そうですね……私たちにとっても、実りの多い時間になりました。

サナラ
それに……遠い異界のどこかで私たちと同じように、
世界を救おうと戦っている人たちが居る……。
そう思うだけで、なんだか力が湧いてきます!

やくも
ぐぅ……ぐぅ……。

サナラ
って寝てる!?
今私、結構良いこと言ってたんですけどー!

千狐
やくもは、もう……、
一番最後まで寝てたのに、お話の最中に居眠りだなんて……。

千狐
でも、千狐ももう……限か――

千狐
すー……すー……。

殿
…………。

柳川城
そう、ですね……私たちも、そろそろ……眠気が……。

ラピュータ
では、二人が眠りに落ちてしまう前に、お別れの挨拶をしておきましょうか。

ラピュータ
何だか慌ただしかったけれど……、
一緒に過ごすことができて良かったわ、王様。

ラピュータ
共に戦えて嬉しかったし……何より王様は、
話に聞いていたよりもずっと素敵な人だったもの。

ラピュータ
私の物語のこと……たまにでいいから、思い出してね。
また、会うことができるって信じてるわ。

ソラス
それでは、私たちからもご挨拶をさせていただきますね♪

ソラス
殿さん……これからも戦いは続くと思いますが、
どうか挫けずに前へ進み続けてくださいね。

ソラス
あなたが歩む道のその先に、
皆の求める幸せが待っていると……私は確信していますよ。

サナラ
次に会う時には、ヒノモトの話いっぱい聞かせてくださいね!

ユージェン
そうだな……次に会う時は、
殿の武勇伝を聞きながらのどかな時間を過ごしたいものだ。

ソラス
それでは、また会う日まで……。

殿
…………。

殿
…………。(すぴー)

――

――――

――――

千狐
すー……すー……。

やくも
千狐、千狐千狐! 起きるだに!

千狐
んー、何よやくも……朝から騒々しいわね――

千狐
――って、やくもが千狐より早起きしてるの……。

千狐
これはきっと、空前絶後の天変地異が襲ってくるに違いないの……。

やくも
何を言ってるがや!
そんなことよりほら、この武器を見るだに!

やくも
布団から出てすぐ、
寝ぼけ眼で工房に突撃して造ったがや!

千狐
んん……? ぶき……?

千狐
これは……どこかで見た覚えがあるような……?

千狐
いえ、確かに見たわ。
あの空飛ぶ島……ラピュータさんの世界で出会った人たちが、これと同じものを……!

やくも
おぉ、やっぱり千狐も覚えてただに!

やくも
うち、目が覚めてから……あの世界で出会った人たちの記憶が、
どんどん薄れていくのがわかったがや……。

やくも
だから……頭の中から消えてしまう前に、
こうして武器として形に残すことにしたんだに!

やくも
そうすれば、きっと大切なことは忘れずに済む……そう思っただに!

千狐
…………。

千狐
そうね。やくもにしては素敵な案だわ……。

やくも
うちにしては、は余計だにー!

やくも
とにかく、千狐!
殿さんにもこの武器を見せにいくがや!

千狐
ええっ! きっと気に入ってくださるに違いないわ!

その武器は、どこか遠くに置き忘れた記憶を揺さぶるような……、
不思議な魅力を秘めていた。

やくもから贈られたその武器を、殿はいたく気に入り……。
以後も時折手にとってはじっくりとそれを見つめ、物思いに耽るのだった――

異界門と英傑の戦士 -絶弐-

殿たちがラピュータの世界を去ってから数日。
身支度を整えた英傑たちが別れを告げようとした
その時、新たな騒動が巻き起こる……。

前半
殿一行がラピュータの世界を去ってから数日後……。

ソラスを始めとする英傑たちも身支度を整え、
元の世界へと帰ろうとしていた――

ラピュータ
もうお別れなのね……。

ラピュータ
この島がこれ程賑やかになるのは、
初めてのことだったから……すごく寂しいわ。

ソラス
悲しむことはありません。
きっとまた、私たちの運命が交錯する時はやってくるはずです。

ソラス
星の導きが再び私たちを巡り合わせるその時を、楽しみに待ちましょう♪

ラピュータ
そうね……私も、
またソラスさんたちと会えることを心待ちにしているわ。

アトナテス
…………。

サナラ
どうしたんですか、アトナテス?
何か考え事ですか?

アトナテス
あぁ……お前たちの言う殿って奴の顔を見れなかったのが、少し残念でな。
機会があれば会ってみたいものだ、と考えていたんだ

ユージェン
殿がこの世界に来ている間、
おじさまはストラホフさんに付きっきりだったからな……。

アトナテス
まぁ、俺にとっても楽しい時間だったし、悔いは無いがな。

ラピュータ
ストラホフの方も、喜んでいたみたいよ。
『次の機会には、もっと色んなお話を聞かせてほしい』って言っていたわ。

アトナテス
もっと色んな……か。
その言葉、後悔しても知らないぜストラホフ。

ソラス
さて、お別れの挨拶も済みましたし、そろそろ出発と――

???
お待ちなさい、異郷の民よ。

ラピュータ
ん……今の声は……? 

キャメロット城
まったく、ようやく追いつきました。

キャメロット城
先日、私の御城に訪れたストラホフさんから、
ラピュータさんのところに異界の者が現れたと聞き、
急いで駆けつけたのですが……。

キャメロット城
どうやら、もう帰ってしまうところだったみたいですね……。

アトナテス
あん……?
何だお前、変わった気配だな……。

サナラ
……確かに。
他の城娘さんとは違う、ラピュータさんに似た雰囲気が……。

サナラ
ラピュータさん、あの方も城娘なのですか?

ラピュータ
ええ、名前はキャメロット城といって、
私と同じく、物語を起源とする城娘よ。
そのよしみで、以前から仲良くさせてもらっていたの。

キャメロット城
えぇ、実在せずとも存在すべき幻想、
人々に望まれたからこそ紡がれた城娘、
名をキャメロット城と申します。

キャメロット城
異郷の――英傑と謳われる方々と聞いて、
ぜひお手合わせをと思ったのですが……。

キャメロット城
特に、その……。
そちらの紫竜の騎士どのと……。

アトナテス
お、俺のことを言ってるのか……?

サナラ
ふふっ、ストラホフさんの時といい、
アトナテスは変な好かれ方をしますねー。

ユージェン
服装から察するに、彼女も騎士のようだ。
アトナテスおじさまの姿を見て、感じるものがあったのかもしれないな。

アトナテス
……まいったな。
これもソラスに言わせると星の導き、って奴になるのか?

ソラス
感じ方は人それぞれだと思いますが、
そう受け取ることもできるかもしれませんね。

アトナテス
なるほど、人それぞれか。
……まぁ、この前のストラホフのこともあるしな。

アトナテス
…………。

アトナテス
よし……決めたぞ。

アトナテス
キャメ……なんとかが物語の城だっていうなら、
こっちも伝説に謳われる英傑だからな。

サナラ
もしかしてアトナテス、
あの子の挑戦を受けるつもりですか……?

アトナテス
あの城娘の身のこなし……、
見たところ、あいつの剣も相当な腕前だろう。

アトナテス
実力を見てみたい。
王子への土産話も必要だろう?
なんだったら、サナラとユージェンも参加していいんだぜ?

サナラ
えぇっ、私もですか?
んー……正直、興味がないと言えば、嘘になりますが……。

ユージェン
……ソラス姉さま、
アトナテスおじさまはいったい……?

ソラス
心配はいりませんよ、ユージェンちゃん。
アトナテスにもちゃんと考えがあるようですから。

ソラス
それで、アトナテス?
私の助力は必要ありませんか?

アトナテス
そいつはお前が決めることだぜ。
物語と伝説の戦いに、
自分の名を刻みたいなら来ればいいさ。

ソラス
……なるほど。
それでは私は見学していましょう。
私は本来、観測者ですからね。

アトナテス
おい、キャメ子。
お前の申し出だが、受けてやっても――

キャメロット城
キャメ子ではありません!
我が名はキャメロット城です!!

アトナテス
そいつは悪ぃ、どうにも永く生きると名前が覚えられなくてな。
――それより、お前の友人の身柄は俺が預かった。
お前の剣技を見せてくれるなら、こいつを開放してもいいぜ。

サナラ
わー、すごい棒読みです……。

キャメロット城
――ふふっ、なるほど。
騎士物語の理想形たる私に、華をもたせてくれるのですね。

キャメロット城
良いでしょう、あまねく民に望まれた騎士として、
この挑戦、受けて立ちます!

ユージェン
普通に、すんなり受け入れてくれましたね……。

ラピュータ
(いつの間にか、この前と似たような展開に……)

ラピュータ
(人質役ということね……。
 ちょっとどきどきしてしまうわ……)

ラピュータ
(…………)

ラピュータ
(ここは一つ、
 か弱いお姫様を演じてみるのも一興かしら……)

合戦中
キャメロット城

囚われの姫君、ラピュータよ。
今宵我が剣は、貴女を救うために。

キャメロット城
そして悪逆たる騎士アトナテスよ、
貴公の名、我が逸話に加えることを約束しよう。

サナラ
あ、悪逆たる騎士……ですか……。

ユージェン
堂に入った演技ですね……さすがは物語の御城。
アトナテスおじさまも、
悪役としての演技がなかなかに似合っています。

ソラス
サナラちゃんにユージェンちゃーん、それにアトナテスも。
私はここで見学してますから、間違っても攻撃はしないでくださいねー……。

ソラス
(とはいえ……キャメロットさんお一人で、
 英傑三人の相手をし続けるのは苦しいはず……)

ソラス
(状況を見つつ、
 こっそりキャメロットさんの手助けをすることにいたしましょう)

ソラス
(どうやら、アトナテスもそれを望んでいるようですし……)

今回の合戦では、星を詠む者ソラスがお助けキャラクターとして登場しています。
ソラスは敵から狙われず、自身の計略発動中のみ広範囲内の複数の敵に攻撃を行います。
※時間経過で攻撃と攻撃対象が徐々に減少します。

<星を詠む者ソラスについての補足>
・城娘とは異なり、巨大化や撤退、再配置を行うことはできません。
・ソラスの大破は「城娘の大破なし」の特別戦功に影響しません。

今回登場の塔の守護者たちは、星を詠む者ソラスの効果で
攻撃と防御が40%低下しています。

今回登場の英傑の戦士たちは、それぞれ以下の特技効果を発動しています。
ユージェン:自身の攻撃が50%上昇、攻撃回数が増加。
サナラ  :自身の攻撃後の隙がやや延長する代わりに、攻撃と射程が70%上昇。

アトナテス:攻撃方法が変化し、自身の攻撃を1.2倍、対象の防御を無視する攻撃を行う。
※耐久が50%以下になるまで、特技効果は発動しません(アトナテスのみ)。

キャメロット城
なるほど、強い……。
これが異世界の伝説、英傑たる者の力……。

アトナテス
(ソラスの加勢があるとは言え、
 俺たち三人を相手にこれだけの立ち回りを見せるとは……大したものだ)

アトナテス
(しかし……)

アトナテス
そろそろ、だな。
キャメ子――いや、キャメロットだったか?

サナラ
えっ、もう良いんですか?
てっきりこのまま悪役の道を進むのかと……。

アトナテス
誰が悪役だ! 演技だ演技!
こいつはただの腕試しだ。
これ以上やったら、互いに本気になっちまうだろ?

後半
アトナテス

――その剣技、見事なり。
さすがは望まれた御城だって言うだけあるぜ。

キャメロット城
ふふ、貴公もです、アトナテス。
その槍技、円卓の騎士にも匹敵するかもしれません。

アトナテス
円卓ね……お前を居城にした騎士たちのことか?

アトナテス
物語に褒められるとは、
伝説としては少々鼻が高いってものだぜ。

アトナテス
とは言っても、互いに異世界同士、
それぞれの逸話は知らないんだけどな。

キャメロット城
えぇ、まったくです。
けれどその槍技からは、貴公が背負ってきた
いくつもの決意と覚悟が垣間見えました。

キャメロット城
それは、誰かを守るための槍なのですね。

アトナテス
……驚いた。
そこまで見抜いちまうのか。

ラピュータ
……本当に。
騎士同士だから通じ合うのかしらね。

キャメロット城
ふふ、騎士には騎士の言葉があるのです。

キャメロット城
言葉をまじえ、武技を交わし、
その中でのみ理解しうる、
ほんの小さな輝きだとか……。

キャメロット城
あるいは、誰かのために戦い続けることを決意した、
悲壮にして勇猛なる騎士の誓いだとか。

キャメロット城
そうした騎士たちの願いと想いが連なったものが、
私という騎士物語そのものですからね。

キャメロット城
それよりラピュータ姫、
人質役の演技はもう良いのですか?

ラピュータ
……やっぱり、私が姫というのは似合わないもの。

キャメロット城
ふふっ、しかし剣を捧げるにふさわしい、
美しくも儚げなお姫様っぷりでしたよ。

キャメロット城
それに、アトナテスの悪役っぷりも。
覚悟を決めた騎士とは、
悪を演じても美しいものなのですね。

アトナテス
やれやれ、美しいなんて言葉が嫌味に聞こえないのは、
やっぱりお前が物語の御城だからなのかね。

アトナテス
演技なんて慣れない真似をしたが、
それを引き立てるように動いてくれたのも見てたぜ?

アトナテス
最初はどこのお嬢様だって思ったが、
キャメロット、お前は本物の騎士だったんだな。

アトナテス
ラピュータも、俺の後ろでちょっとドキドキしてやがったぜ?

キャメロット城
えっ、そうなんですか?
ラピュータさん? どうして隠れるんですかー!?

アトナテス
ハハッ、こいつはバラしたらマズかったか?

アトナテス
まぁ、これも一時の縁だ。
異世界の騎士の戯言だと思っておいてくれよ。

アトナテス
しかし、改めて言わせてもらうが、お前の剣は悪くなかったぜ。
――いや、本当に美しかった、か。
正直見とれちまったよ、キャメロット。

キャメロット城
…………。

アトナテス
さぁソラス、サナラ、ユージェン。
そろそろ元の世界へ帰ろうぜ。

アトナテス
王子のやつ、土産話を楽しみにしてるだろうしな。

キャメロット城
……さい。

アトナテス
……ん? なんだって?

キャメロット城
待ってください! アトナテス!
いいえ、伝説の騎士たる者よ!

キャメロット城
貴公の槍技、あり方、逸話、
それらをもっと聞かせてくれませんか!?

アトナテス
な、なんだって?
まさかおい、お前もストラホフと同じ類の――

キャメロット城
世界は違えど騎士道は同じ。
模範の騎士たる貴公の言葉を、
私の逸話のひとつに加えたいのです!

キャメロット城
あっ……で、でも、貴公がお嫌だというのなら……。

アトナテス
ハッ、誰が嫌なんて言うかよ。
遍歴の騎士が出会ったら、焚き火を囲んで語らうものだろ?

キャメロット城
……っ!!
そうです、そのとおりです!!

アトナテス
まぁ、俺に大層な話はできないけどな。
俺ができるのは、せいぜい昔話ってやつさ。

ソラス
ふふふ、英雄王の話と、
王子君の話ばかりですよね♪

アトナテス
う、うるせぇ!
英雄譚が聞きたいやつに、英雄の話をして悪いかよ!

アトナテス
そういうわけだ、キャメロット。
ここで会ったのもひとつの縁、お前の気が済むまで――

アトナテス
(ついこの間も、似たようなやり取りをした気が……?)

キャメロット城
――気が済むまで!?
なんと、なんと器の大きな方なのでしょう!

キャメロット城
それはつまり、私の望むがままに、
あらゆる逸話を語ってくださるということですか……!?

アトナテス
(やっちまったな……。だが、まぁいい)

アトナテス
ああ、いいぜ。
俺たちの世界の物語『千年戦争』ってやつから語ってやるよ。

ソラス
ふふふ。どうやらお別れが少しだけ、
先延ばしになったみたいですよ。ラピュータちゃん。

ラピュータ
そうみたいね……それじゃ、私の部屋でお茶でも飲みながら、
アトナテスおじさまの帰りを待つことにしましょうか。

アトナテス
――まずは英雄王の物語からだな。
さぁキャメロット、世界最高の英雄と、
その子孫たる、英雄を継ぐ者の伝説の始まりだぜ。

こうしてアトナテスは、数日後に異界へと旅立つその時まで、
付きっきりでキャメロットの相手をすることになるのだった――



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