ストーリーテキスト/異界門と囚われの騎士

ページ名:ストーリーテキスト/異界門と囚われの騎士

異界門と囚われの騎士[]

-前-[]

前半
――黄昏の間。

神聖ブリタニア帝国第98代唯一皇帝――シャルル・ジ・ブリタニア。
彼は今、永遠の時を生きる魔女・C.C.(シーツー)の『願い』を叶えようとしていた。

黄昏の間に引き込まれたシャルルの息子――ルルーシュ・ランペルージは、
そんな父の行いを、そして、C.C.の『願い』を阻止すべく
漆黒の機体『蜃気楼』へと乗り込み、黄昏の間そのものを破壊しようと、砲撃を開始した。

ルルーシュ
これ以上奪われてたまるか!

――何たる愚かしさかぁっ!

砲撃により粉砕されていく黄昏の間。

やがて足場を失ったC.C.は、真っ逆さまに落下していく。
ルルーシュは、落下するC.C.を救うべく、蜃気楼から身を乗り出し、
落下する彼女に手を差し伸べた。

ルルーシュ
俺は知っているぞ、C.C.! 
お前のギアスを! 本当の願いを!

C.C.
…………。

ルルーシュ
おい! こっちを向いてくれ!

C.C.の腕を掴むルルーシュ。
すると、目の前の光景が一瞬にして闇に包まれた。

九尾
………………。

――繋がった。

異世へと通じる『門』の先に、吾の知らぬ世界が在る。

城娘を打倒せんとする吾らが真意を満たす存在――。
比類無き想いと力を持った者たちが、この先にいるのが分かる。

???
やめて……やめてよ! やめてったら!!!

不意にうら若き乙女の叫びが、吾の耳朶を奮わせる。

転瞬――眼前に、ありありと異世の光景が広がっていた。

――トウキョウ租界政庁。

スザク
従ってもらう。命令に――。

檻の中には若き男女がいた。

女の方は……囚人であろうか。
なかなかに強き意志を有しておる。

だが……それ以上に、
男が放つ荒々しき想念が、吾の興味を惹いた。

憤怒、疑念、後悔、悲哀――。

よくもまぁこれほどまでの思いを抱けたものだ。

だが……それでこそ、だ。

それでこそ――利用する価値がある!

九尾
さあ、異世の者よ……その力を貸してもらうぞ!

スザク
――――ッ!?

――某所。

スザク
…………ん。

スザク
……ここは……?

???
もう目覚めるか。
汝、人間にしては強靭な肉体を持つようじゃの。
それでこそ興が乗るというもの。

スザク
お前は……、何者だ?

九尾
我が名は九尾。汝を此世に招きし者よ。

スザク
(女の声……?)

スザク
(いや、この気配……、ただの人間のものじゃない)

九尾
まあ、そう構えるな、人の子よ。
妖を見るのは初めてか?

スザク
あやかし、だと?
ギアスに連なる者なのか。

九尾
ぎあす?
ぎあすとはなんじゃ?

スザク
(ギアスを知らない?ギアスとは関係しない超常の存在なのか……?)

九尾
答えぬか。どうした?
自らの置かれた状況を知りたくはないのか?

スザク
(ここは少なくとも政庁じゃない。式根島で体験した遺跡の瞬間移動とも違う感じだった。
 それにカレンの姿も見えない。せめてカレンが巻き込まれてなければいいんだが……。)

九尾
やれやれ、石のようにだんまりじゃな。
これならば一緒にいた小娘の方も引き込んだ方が面白かったかもしれぬ。

スザク
……。

九尾
普通の人間なら此処は何処か、と喚きそうなものじゃが……。
汝はこういった人の世の理から外れたことに覚えがあると見える。

スザク
お前の目的はなんだ……?

九尾
くふふ……汝が識る必要はない。
汝はただ、その記憶を吾に差し出すだけで良い。

スザク
くっ! 何をするっ――。

スザク
っ!? 体が……動かない!?

九尾
くふふ、人間如きが吾に歯向かえるわけ無かろう。
どれ、早速頭の中を覗かせてもらうぞ。

九尾
………………。

九尾
ほぅ、これはまた数奇な人生を歩んでおるようじゃな。

九尾
祖国のために父を殺めただけでなく、目的のために友まで売り払うとは……。
であれば、これほどの思念を抱いている事にも納得がいく。

スザク
(こいつ……、俺の記憶を読んでいる!?)

九尾
………………ん?

九尾
ほぅ、二足で地に立つ絡繰り、か……。
これは、なかなか使えそうではないか。

九尾
よし、早速こやつを顕現させるとしよう。
無論、汝にも協力してもらうぞ? 
枢木スザクよ。

スザク
名前を!?
やはり記憶を読み取っているんだな。

九尾
そうさ。
汝はただ、黙って、その記憶を吾に差し出すだけで良い。

スザク
『差し出す』……だと。
まさか、お前は……。

九尾
ああ、その『まさか』じゃよ。くふふ。

スザク
ぐあああっ!!!

突如、スザクの頭部に触れていた九尾の手が妖しく光る。
その光は、まるでスザクの頭部から何かを吸い出しているかのように、
九尾の腕を通し、彼女の身体へと流れ、そして消えていった。

九尾
汝の記憶、使わせてもらうぞ。
くふ……くふふ……くふふふふふふふふふ。

――数日後トウキョウ租界政庁。

皇帝シャルルだけでなく、皇帝直属の騎士団・ナイトオブラウンズが一名、
そして収監されていたはずの捕虜までもが姿を消したことで、政庁内は騒然としていた。

皇帝の捜索には多大な人員が割かれている事から、
ナイトオブラウンズの一人、アーニャ・アールストレイムは、

行方を晦ましたスザクとカレンを探すべく、神聖ブリタニア帝国から政庁に帰投。
その後、すぐに捜索を開始した。

アーニャ
…………。
やっぱり……いない。
監視映像を見る限り……二人は此処で姿を消した。

アーニャ
ランスロットも紅蓮も残ってるのに……そのパイロットは居ない。
……不思議。

アーニャ
……ん? 檻の中に、何かある。

檻の中へと歩み寄るアーニャ。
すると、床の中央部に黒い線のようなものがある事に気付いた。
否、それは線ではなく、空間の裂け目だった。

アーニャ
これは……?

アーニャが確かめるように裂け目に触れようと手を伸ばす。

その瞬間、アーニャの身体は空間の裂け目へと吸い込まれてしまった。

――所領。

千狐
…………ココンッ!

やくも
どうしたがや? 千狐。

千狐
えっと……今、妙な気配を二つほど感じたような……。

やくも
うん? うちはな~んも感じなかったがや。

千狐
そ、そう?
なら、私の気のせいだったのかしら――。

千狐
――コンッ!?

やくも
今度は何だに!?

千狐
また妙な気配を感じたわ!
しかも、さっきのとは別の気配よ!

千狐
それに、すごく近いわ!

千狐
やくも、早速殿に報告しに行くわよ!

――それから暫くして。

千狐
皆さん、こちらですわ! 妙な気配は神社の方から感じます!

千狐
って……ええっ!?

殿一行が神社に辿り着く。
すると拝殿内から眩い光が放たれた。

ルルーシュ
っ……こ、ここは……?
おい、C.C.!
大丈夫か? C.C.!

C.C.
ん……ぅ……。

C.C.
ルルーシュ……。

ルルーシュ
良かった……、無事だったんだな……。

C.C.
なんだ? 心配してくれたのか?

ルルーシュ
茶化すな。あんな顔されたら心配もする。
だから……。

C.C.
ああ。
わかっているよ、ルルーシュ……。

ルルーシュ
お前がそう言うならいい。この話は今はここまでだ。
なんせ想定外の事態が起きている。
周りをよく見てくれ。

C.C.
……? ここは一体どこだ?
ギアス嚮団ではないな。

ルルーシュ
ああ。
周辺の建物から察するに、恐らく日本のようだが……。

千狐
あのぉ……。

ルルーシュ
ん?
お前たちは……?

千狐
は、はい。
千狐と申します。

やくも
うちはやくもだに♪

柳川城
えっと……私は柳川城と申します。
そして、こちらが殿です。

殿
…………!

ルルーシュ
(この服装……、俺たちの知る日本のものとは違うな。
 しかし、敵意はない……、か。)

ルルーシュ
俺はルルーシュ。
そして、こっちが――。

C.C.
C.C.だ。

やくも
るるーしゅに、しーつー、やね?
よろし――ってぇ!?

やくも
――だにいいい!?

千狐
なな、何で此処に兜がいるのー!?

やくも
二人とも! 早くこっちに来るがや!
そこに居たら兜さんに襲われるだに!

ルルーシュ
カブト……?

ルルーシュ
(もしかして、ナイトメアのことを言っているのか?)

C.C.
もし後ろにあるデカブツのことを言ってるなら気にしなくて良い。
これは我々の所有物だ。

柳川城
な、なるほど……。

柳川城
(となると、どうやら兜では無さそうですね。)

???
ちょっとちょっと!?
何なの、これー!?

千狐
コンッ!?
また拝殿から光が!

殿一行の視線を遮るように、再び拝殿内から眩い光が迸る。
やがて光が消えると、一行の前には紅い巨人と赤髪の少女が一行の前に姿を現した。

カレン
イタタタぁ……。
って、私いつの間にパイロットスーツに!?

カレン
それに、どうしてここに紅蓮があるの!?
しかもこの紅蓮……何か違うような……?

ルルーシュ
なっ……カレン?

カレン
ルルーシュ!? それにC.C.も!

C.C.
やれやれ……見知らぬ場所に出たかと思えば、
今度はブリタニアに捕らえられてるはずのカレンが現れるとは……。
まったく、一体何が起きて……ん?

やくも
ま、また拝堂が光っただにー!?

二度あることは三度ある。
その言葉に従うかのように、またもや拝殿から光が放たれる。
そして、姿を現したのは――。

アーニャ
…………。

ルルーシュ
なっ!?

C.C.
っ……。

カレン
えっ!?

アーニャ
あれ?
……ここ、どこ?
それに……何でモルドレッドが……?

柳川城
あ、あのお二方は……。

C.C.
最初に出てきたのは紅月カレン。私達の味方だ。
そして、その後に出てきた奴は……。

C.C.
アーニャ・アールストレイム。
私達の……敵だ。

柳川城
えっ? 敵ですか!?

アーニャ
ん? あっ……。

アーニャ
紅月カレン、見つけた。
それに、C.C.も……。

カレン
ナイトオブシックス!

アーニャ
でも……なんでルルーシュが一緒に居るの?

ルルーシュ
(まずい……!)

ルルーシュ
(ゼロの搭乗機が蜃気楼である事はブリタニア軍にも既に知られている。
 その蜃気楼が此処にあると知られた以上、俺がゼロだと言っているようなものだ。)

ルルーシュ
(致し方ない。こんな状況下で使うことになるとは、な。
 だが、ナイトオブラウンズが一人きりというのは、逆に好機でもある――。)

ルルーシュ
アーニャ……。

アーニャ
なに?

ルルーシュ
『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。我に従え』

アーニャ
……イエス、ユアハイネス

柳川城
あの……、皆さん争われているのですか……?

ルルーシュ
いや、誤解があったみたいだ。アーニャは俺の部下だ。
そうだろう? アーニャ。

アーニャ
うん。
ルルーシュは私の……、ご主人様?

柳川城
ご主人様……、私たちの殿のようなものですね。

C.C.
ふふ、そうなるかな。

ルルーシュ
さて、これでようやく本題に入れるな。
すまないが、まずはここが何処なのか教えてくれないか?

千狐
あっ、はい。

千狐
えぇっと……ここは筑後国ですわ。

C.C.
ほう、チクゴか。これはまた懐かしい名が出てきたな。

ルルーシュ
チクゴ……確か、かつて日本に存在していた地名だったな。

C.C.
ああ、そうだ。
しかし……。

千狐
コンッ!? ちょっと、しーつーさん!
いきなり耳や尻尾を触らないでください!

C.C.
ふむ、どちらも本物か。
となると、どうやら我々は過去に飛んだ、というわけではなさそうだな。

カレン
ん? どういうこと?

C.C.
いやなに、最初はチクゴという地名とこの者達の装いから、
過去に飛ばされたと踏んでいたんだが……。

ルルーシュ
お前の知る過去の日本には、彼女たちみたいな存在はいなかった、ということだな。

カレン
ゴメン。まだ私にはわからないや。

ルルーシュ
つまり……、俺達は元の世界ではない別の世界に飛ばされてしまったらしい。

カレン
異世界ってヤツ?
そんなバカなことって……。

ルルーシュ
カレンも式根島から神根島に飛ばされただろう。
俺たちの世界で常識では考えられない事が起きていた。

カレン
あ……。

ルルーシュ
とは言え、今回はギアス絡みではなさそうだがな。

C.C.
ああ。今回は遺跡の起動を感じない。
しかし、我々は別の世界に飛ばされた。
そう考えると、この者達がナイトメア・フレームを知らない事にも納得がいく。

ルルーシュ
そうか。
なら、次はここに来るまでのいきさつを確認しよう。

ルルーシュ
まずは俺とC.C.からだ。
俺達はブリタニアの実験施設を破壊した直後、気が付けば此処に居た。

カレン
私は、ブリタニアに捕まっていて、スザクと……。

ルルーシュ
どうした?

カレン
そうだ! ついさっきまで檻の中でスザクと話してたんだけど……。
その時、誰もいないところから声が聞こえたの!

千狐
えっ? 声、ですか?

カレン
そう、女の人の声。
『異世の者』とかなんとか……。

カレン
で、何もない空間に大きな穴みたいなのが開いたと思ったらスザクが吸い込まれて……。

ルルーシュ
スザクが……。

カレン
その時に私も一緒に吸い込まれたみたい……。

カレン
それで気付いたら、ここに……。

千狐
……異世の……者……。

千狐
(薄々予想はしていたけれど……やっぱり……)

アーニャ
それはおかしい。

カレン
はぁ? 何がおかしいってのよ?

アーニャ
だって、あなたがいなくなったのは数日前。

C.C.
なんだと? カレンが現れたのはついさっきだが……。

アーニャ
でも、スザクとカレン、そしてシャルル皇帝も……。
みんな数日前から行方不明になってる。

ルルーシュ
(数日前……? もしかして……。)

ルルーシュ
それで、アーニャはどうやって此処に来たんだ?

アーニャ
政庁にある檻から。

カレン
檻? 私が捕らえられていた檻?

アーニャ
そう。私の任務……、いなくなったスザクとカレンの捜索。

ルルーシュ
スザクとカレンが姿を消した場所を調べていたんだな。

アーニャ
監視映像を見た。スザクとカレン、檻の中でシュッと消えた。
だから怪しいと思って、檻を調べてた。
そうしたら、床に黒い線があって……、気付いたら……此処に居た。

ルルーシュ
……線?

アーニャ
そう、線。見るからに怪しかった。

ルルーシュ
俺とC.C.が此処へ飛ばされたのも、恐らくその穴……いや、線か。
それとカレンが聞いた声が関わっている可能性が高いな。

千狐
その件についてですが……皆さんを此処に呼び寄せたのは
きっと『九尾』の仕業かと思います。

千狐
九尾は、強大な妖力を持っているだけでなく、此世と異世を繋ぐ力も持ち合わせた妖怪。
恐らく、ルルーシュさん達やカレンさんにとって、数日後の人間にあたる。
アーニャさんが現れたのは九尾の力の影響によるものかもしれません。

千狐
ですが、どうしてルルーシュさんとC.C.さんが此方へ来てしまったのかまでは……
私には……。

ルルーシュ
そうか……。

C.C.
にしても、異世界の次は妖怪と来たか。

C.C.
だが、その千狐の言っていることが当たっているなら、此処に居るアーニャが
数日後の人間であることも……まあ多少強引だが、納得がいく。

カレン
でも、どうして私達、そいつに狙われたのかしら?
喧嘩を売られるようなことをした覚えがないんだけど……。

千狐
いえ、皆さんは彼女の術に巻き込まれてしまっただけだと思います。
これは推測ですが、彼女にとって必要だったのは、
そのスザクさんという方だけだったのではないかと。

カレン
そう言えば、スザクを使って宴に興じるとかどうとか……。

ルルーシュ
つまり……
九尾とやらの遊びのためにスザクは捕らえられたのか……。

千狐
ええ……恐らく、その可能性が高いかと……。

ルルーシュ
……。

C.C.
助けに行こうと考えているのか、ルルーシュ。
今やあいつはお前の敵だぞ。

ルルーシュ
……しかし、あいつは俺のたった一人の親友だ……。

カレン
ルルーシュ……。

???
殿さぁ~ん!
みんなぁ~!

殿
…………!

柳川城
この声は……若松城さん!

若松城
はぁ……はぁ……。
や……やっと見つけたぜぇ……。

やくも
ど、どうしたんかや!? 若松城!
そないにボロボロになって……。

若松城
いやぁ、それがな……。
此処に来る途中、なんか見た事の無い兜たちに襲われちまってさ。

柳川城
見たことのない兜って……まさか……。

若松城
んなぁーーーーーー!?
な、なんで此処にも居るんだよーーー!?

アーニャ
……ビンゴ。

カレン
ナイトメアが他にも……。

ルルーシュ
(つまり、俺達以外にもこちら側に来ている人間がいるということか?)

ルルーシュ
驚かせてしまって、すまない。こっちの兜……、ナイトメアは害をなさない。
それで……えっと、若松城だったかな?
悪いが、幾つか質問させてくれ。

若松城
……あ、ああ。
別に構わないけど……。

ルルーシュ
まず、その敵に襲われたのはどの辺りだ?

若松城
えっと、確か此処からずっと西の方……だったかな。

ルルーシュ
その中に、白い機体、いや白い兜はいたか?

若松城
うん。いた!
白いのなら確かに居たぜ!

若松城
すっげー勢いで先陣切ってたなぁ、あいつ……。

ルルーシュ
(間違いない。スザクのランスロットだ!)

千狐
う~ん……その辺りでしたら私の転移術を使えば、
すぐに行けると思いますが……。

ルルーシュ
今すぐ、俺達をそこへ案内してくれ。

千狐
ですが、九尾が関わってると分かった以上、この件に皆さんを巻き込むわけには……。

ルルーシュ
スザクが巻き込まれている以上、こちらも当事者だ。
それに俺たちは自分の身くらい自分で守れる。
だから、頼む。

千狐
ですが、みなさんにもしもの事があっては――。

ルルーシュ
頼む!

千狐
……はい、わかりました。

やくも
せ、千狐!?

千狐
ルルーシュさんにとってスザクさんはきっと大切な人なんですね。
でしたら、ともに参りましょう。

ルルーシュ
恩に着る。

千狐
では、皆さん。早急に準備のほどお願いしますわ。

――――某所。

千狐
コンッ! 到着ですわ!

やくも
あれ! あれを見るだに!

千狐
あ、あれは……!

大高坂山城
うぅ……。
一体何なのよ、こいつら……。

来島城
今までの兜とは……訳が違う……!

千狐
た、大変!
大高坂山城さんと来島城さんが兜のようなものに襲われてます!

柳川城
……気のせいでしょうか?
あの敵、なんだかカレンさんが乗っているものに凄く似ているような気が……。

C.C.
いや、似ているというより……
あれは同一の機体だな。

カレン
ちょっと、一体何なのよ、あれ!
まさか私が捕まってる間に、ブリタニアが紅蓮を量産したなんてことは……。

アーニャ
あんな高性能機、量産なんて無理。

C.C.
なら、これは九尾による仕業と考えても良いのか? 千狐。

千狐
ええ、このような芸当ができるのは、彼女くらいしか……。

カレン
ってことは、スザクも……。

ルルーシュ
ああ。
もしかしたら、この近くに居るかもしれない。

やくも
なら早く、あいつらをやっつけて、そのスザクって人と城娘さん達を助けるだに!

ルルーシュ
紅蓮のパイロット、応答せよ!
応答しなければ、敵勢力と見なし、これより即刻排除させてもらう。
紅蓮のパイロット、聞こえるか!

――――。

C.C.
応答なし、だな。

千狐
人の気配のようなものも……
何も感じられませんわ。

ルルーシュ
となると……九尾はナイトメアさえも傀儡のように操れる力を有している、というわけか。
だが、これであの中にパイロットが存在しないことが証明された。

ルルーシュ
(そして、俺達以外にこの世界に飛ばされた人間はいない、ということも……な。)

柳川城
ルルーシュさん!

ルルーシュ
ああ。これより我々も戦闘に参加する。
ともにヤツを叩くんだ。

柳川城
承知しました!
では――参ります!

敵陣に向かって疾駆する柳川城。
その際、彼女の身体は徐々に大きさを増し、
敵陣に達する頃にはナイトメアフレームを優に凌駕していた。

カレン
うそっ!?
なに、あれ……。

アーニャ
驚き……。

柳川城
さぁ、皆さん。一気に敵を叩きましょう!

後半
ルルーシュ

紅蓮の右腕を狙え! 輻射波動機構を破壊すれば戦闘力が大幅に低下する。
集中的に攻撃するんだ!

柳川城
了解です! はぁっ!

C.C.
簡単に言ってくれる!

アーニャ
なら、ミサイルで……。

カレン
本物には敵わないってこと、思い知らせてあげる!

千狐
………。

千狐
敵兵の右腕の損壊を確認しました!
全軍、撤退していきます!

やくも
な、なんとかなっただにぃ……。

柳川城
私、大高坂山城さんと来島城さんに避難するよう伝えてきますね!

殿
…………。

ルルーシュ
(おかしい……さっきの紅蓮のまがい物は、本物と瓜二つだった。
 あれはカレンがブリタニアに捕えられている間に改造が施されたもの。
 俺やC.C.はもちろん、パイロットのカレンでさえ知らなかった。)

ルルーシュ
(なのに、あの再現度。アーニャの反応を見るに、
 あの紅蓮を知り得るのは今やスザクのみ。)

ルルーシュ
(そして、カレンの言う九尾がスザクを使って
 宴に興じると言っていたという意味……。)

ルルーシュ
(そんなバカな、と一言で片づけられるといいが、
 この異常な事態を鑑みればあり得ない話ではない。)

ルルーシュ
九尾はスザクの記憶を利用している。

カレン
スザクの……、記憶?

ルルーシュ
ああ。
あのブリタニアに改造された紅蓮。

ルルーシュ
この世界に飛ばされた者であれの存在を知ることができたのは、
ナイトオブラウンズのアーニャかスザクのみだ。

アーニャ
私、知らなかった。

C.C.
なるほど。
そして、九尾のナイトメアを操れる能力。
九尾はスザクの記憶にあるナイトメアを作り出し操る、ということか……。

カレン
じゃあ、若松城が見たランスロットにはスザクは乗ってなくて……。

ルルーシュ
おそらく、九尾がスザクの記憶をもとに作り出したものだろうな。
スザクが理由なく城娘たちを襲うとは考えにくい。
そして、俺の読みが当たっているのであれば――。

ルルーシュが周りをぐるりと見渡し、薄く微笑む。

ルルーシュ
九尾は、すぐそこにいる。スザクと一緒にな!

ルルーシュ以外のその場にいる誰しもが、半信半疑だった。
しかし、ルルーシュは確信していた。

こんなゲームを仕掛けるヤツは、特等席で見たがるものだ。
そんな彼の言葉に反応したのか、空間が揺らぐ。

C.C.
……っ! この気配は!?

???
やれやれ……、只の人間と侮り過ぎたかの。
えらく頭の回る小童もいたものよ……。

カレン
こ、この声は、あの時の!

千狐
九尾!!

スザク
…………ぐっ。

アーニャ
……スザクも一緒。

ルルーシュ
お前が九尾だな……。

九尾
くふふ……。

-後-[]

前半
九尾

くふふ……。

ルルーシュ
やはり傍で見ていたようだな、九尾とやら。

九尾
初めましてじゃの、反逆の皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアよ。
自らの常識に捕らわれない推察、見事であった。

九尾
実に愉快。
いかにも吾が名は九尾。
日の本の妖を統べし一柱である。

C.C.
ほう。
ようやく黒幕のご登場というわけだな。

九尾
しかし、この枢木スザクという小童、実に興味深い。
これほどの思念を持つ故、まさかとは思っていたが、

九尾
活きている『門』を利用して自身の救済者を呼び寄せるとはな。
無意識とはいえ、ようも吾を出し抜いてみせたものよ。

カレン
ちょっと、アンタ!
スザクの記憶を使ったってのは本当なの!?

九尾
真のことよ。
枢木スザクの記憶を抜き取り、その記憶と引き換えに、出来の良い傀儡を生み出した。
理解したか? 異世の者たちよ。

アーニャ
抜き出す……? それじゃあ、今のスザクは……。

ルルーシュ
……。

九尾
いやしかし、面白かったぞ。

九尾
ルルーシュよ。

九尾
特に汝と織りなす数奇な宿縁が特別愉快じゃった。
なあ、かつての親友から『存在が間違っている』と言われた時、
汝はどんな気分だったのかえ?

ルルーシュ
……!

九尾
くふふ……。
そうだ、汝の異腹の妹、『虐殺皇女』の一件。
記憶を通してとはいえ、あれはなかなか面白い見世物じゃった。

九尾
あの時はどんな気分じゃった。
異腹とは言え、妹をその手にかけた気分は?

C.C.
ルルーシュ……。

ルルーシュ
スザク……、スザク。
聞こえるか?

スザク
……。

九尾
なんじゃ、吾のことは無視かえ?

ルルーシュ
スザク! 目を覚ませ、スザク!

スザク
……っ

九尾
ルルーシュよ。
汝と話しておるのは、この九尾ぞ?

ルルーシュ
起きろと言ってるだろう、スザク!
俺だ! ルルーシュだ! 聞こえないのか!?

スザク
ルルーシュ……?

ルルーシュ
スザク!

スザク
君はルルーシュなのか……、7年ぶりに君に会えるなんて……。

ルルーシュ
!!

九尾
やめい!
そこまで無視されると気分が悪い。

ルルーシュ
(今のスザクの反応、7年ぶりにシンジュクゲットーの地下で再会した時と似た反応だ。
 と、すると、スザクの記憶はあの日まで遡っているのか……。)

ルルーシュ
九尾よ、スザクの記憶を戻してもらえないだろうか。

九尾
応じる義理が、吾にあるとでも?

ルルーシュ
『九尾』!!

ルルーシュの瞳より絶対遵守の力が放たれる。
しかし、ルルーシュの言葉よりも先に、
九尾の眼前には紫色の霧が壁の如く張り巡らされていた。

九尾
ほう、『それ』が例の……。
確かに厄介そうな代物じゃなぁ。

ルルーシュ
(ギアスが……効いていない。
 あの霧でギアスを防いだか。
 やはりスザクの記憶を見て、俺のギアスのことを知っていたな。)

九尾
くふふ。
じゃが、威勢の良い童は嫌いじゃない。

九尾
その行動に敬意を表し、汝に、この言葉を贈ろう。
汝は、吐いた唾を飲み込むことができるのか?

ルルーシュ
! ……そうか。
スザクの記憶はもう戻らないのか……。

ルルーシュ
(もうこれ以上、奪わせない! 奪われてたまるか!)

九尾
……さあ、ルルーシュよ。
宴もたけなわじゃ。
この宴もそろそろ終いにするとしよう。

千狐
!!!!

千狐
皆さん!
森の奥……
それと空から何かが来ます!

やくも
のわぁっ!
敵さんがぎょーさん、こっちに向かってくるだに!

カレン
くっ! あの空からこっちに向かってるのって……!

アーニャ
ランスロット。

C.C.
おいおい、随分と手の込んだ歓迎じゃないか。
これは……。

柳川城
それだけ敵も本気ということでしょう。

殿
…………!

柳川城
とにかく、今は敵の殲滅を最優先です!

ルルーシュ
ああ、行くぞ! 皆!

後半
九尾

ほう、あれだけの数を滅すとは……流石じゃな。

アーニャ
後は、あなただけ。

カレン
さぁ、覚悟しな! この化け物が!

九尾
ふ……くふふ……ふふふふふふふ……。
まさかとは思うが、そなたら忘れてはおるまいな?
こちらには此奴がいるのじゃぞ。

スザク
くっ、離せ! 君は何者だ?

ルルーシュ
スザク……。

九尾
さて、すまぬがもう暫し吾が余興に付き合ってもらうぞ、枢木スザク。
これより汝の記憶を全て使い、新たな軍勢を生み出す。

九尾
まあ、その際、汝は赤子のようになってしまうが……
これも全ては城娘の駆逐のため。悪く思うな。

ルルーシュ
(また記憶を奪うつもりか……。)

ルルーシュ
やめろ!
それだけは……それだけはやめてくれ!

九尾
ほう、友の記憶を失うのがそんなに恐ろしいか? ルルーシュよ。
そうじゃな、なら吾を楽しませてくれ。
そうしたら考えてやらんでもない。

ルルーシュ
楽しませる、だと?

九尾
そうじゃ! 『ぎあす』。
汝の異能の力を見てみたい。
そうじゃな、汝がギアスをかけたことがない者……。

そう言って、九尾がルルーシュたちを順に眺める。
その目がアーニャに止まった。

九尾
異能の力が効かぬ印を持った娘、異能の力を既にかけられた娘、
それ以外だと、そこの娘しかおらぬな。
よし、ルルーシュよ。その娘を異能の力で自害させてみせよ。

アーニャ
私……?

カレン
なっ!?

C.C.
……。

千狐
自害って、そんな!

ルルーシュ
……わかった。スザクのためだ……。

九尾
くふふ。いい子じゃのう。
念のため、吾には背を向け、その小娘に命ずるのじゃ。

ルルーシュ
(九尾は記憶を読む。記憶を読むことで膨大な情報を知っている。
 だからこそ、他よりも優位に立ち、事を進められる。)

ルルーシュ
(しかし、情報を多く持つことは有効に働くだけではない。
 情報を持つからこそのデメリットがある。)

ルルーシュ
(九尾はそれに気づいていない。
 九尾は知っていることに過信している!)

アーニャ
私……、死ぬの?

ルルーシュ
俺を信じて、目を閉じるな。

九尾
さあ、早うせい。
汝は愚かにも吾の邪魔立てをした。これはその報いと知れ!

ルルーシュ
ああ。
それなら“よく見ていろ”、九尾よ。

ルルーシュ
『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる、我に従え!』

カレン
っ!

千狐
!!

C.C.
……。

ルルーシュの瞳より絶対遵守の力が放たれる。
アーニャの瞳に放たれたそれは、既にギアスにかかっているアーニャには届かず、
アーニャの瞳に反射して、アーニャを見つめていた九尾の瞳に飛び込む。

九尾
……承知した。我が主人よ。

九尾
くっ! なんじゃ、これは? 頭の中が……。

九尾
何なりと申し付けよ、我が主人。

ルルーシュ
まだギアスに抵抗するか。さすが化け物。
いや、妖怪を統べる一柱だったか?

九尾
なぜじゃ、どうして吾に異能の力が……。

ルルーシュ
なに、簡単なことさ。
お前はスザクの記憶に頼り過ぎて、情報に更新があることを失念していたんだよ。
俺はこの世界に来てすぐにアーニャにギアスをかけた。

ルルーシュ
俺のギアスは一度かかった者には無効となる。
そんな簡単なことをお前は見落としていたんだよ。

九尾
まだじゃ、まだこちらには枢木スザクが……!

ルルーシュ
スザク!

スザク
……!

ルルーシュが左腕の袖の先をグッと掴むジェスチャーを見せる。
それは幼少の頃に決めた、「一発かまして逃げるぞ」のサインだった。
頭を掴もうとする九尾の手を強く払うスザク。

九尾
こやつ、まだ動ける気力が……ぐっ!!

スザク
ルルーシュがあのサインを出したということは、お前は敵なんだな!

九尾の拘束から逃れたスザクは、間髪入れずに九尾の顔面に強い打撃を繰り出す。
あまりの拳の強さに体勢が崩れてしまう九尾。
その隙を突くように、C.C.は自身のナイトメアを駆使して、九尾を地に押さえつけた。

スザク
うっ…………。

そして、身動きが取れない九尾の姿を見たスザクは、
危険が去ったと認識したのか、糸が切れたようにその場に倒れ込んでしまった。

C.C.
ルルーシュ!

ルルーシュ
これもお前の知らなかったことだろう。
さあ、チェックメイトだ、九尾よ。

九尾
忌まわしい……。忌まわしや、ルルーシュ!

ルルーシュ
最後に聞く。
元の世界へ帰る方法について、だ。

九尾
元の世界へ帰る術、じゃと?
くく……はは……あははははははははははっ!

九尾
哀れ……実に哀れじゃなぁ、汝は。
哀れ過ぎて思わず笑ってしもうたわ……。

ルルーシュ
……はぁ。

ルルーシュ
『さっさと答えろ』、九尾。

九尾
失礼した。我が主人。
主人らを……いや、枢木スザクを呼び出す際に用いた『門』。
それこそが、主人らに残された唯一の帰還方法じゃ。

九尾
じゃが、『門』には時が経つにつれて徐々に閉じていくという性質があってな。
仮に一度閉じた『門』を再び開けたとしても、先と同じ異世に繋がる事は……まず無い。
そして、吾は、枢木スザクが通った『門』が閉じ切る様をしかと見届けている。

九尾
つまり、汝らは……この戦には勝っても、
根本的な面においては最初から敗けておったというわけじゃ!
くふふ……ははは……ははははははははははは!!!

ルルーシュ
そうか……。
ならば、もう貴様には用はないな。

ルルーシュ
九尾、貴様はここで――

ルルーシュ
『死ね』!!!

九尾の双眸にルルーシュの命令が届くことを示す赤い輪が浮かぶ。
同時に、九尾の死は、今この瞬間決したのだ。
C.C.は九尾にギアスがかかる瞬間を見届けると、九尾の拘束をゆっくりと解いていった。

九尾
……………………。

九尾
承知した、我が主人。

特に躊躇う様子も見せず、九尾は自らの片手を刀のように伸ばす。
そして、まるで直線でも描くように、己の首筋に手刀を走らせた。
刹那――彼女の首筋からは煙雨の如く、夥しい量の血が噴き出し、宙に飛散する。

九尾
ガ……ぁぁ…………ぁ……。

暫しもがき苦しんだ末、九尾が天を仰ぐように地に倒れる。
その後も、僅かに苦しむ姿をその場に居る者達に見せていたが――

その動きも次第に弱まっていき、気付く頃には
時間そのものが停止したかのように九尾の身体は微動だにしなくなった。

ルルーシュ
……………………。

ルルーシュ
どうやらお前は俺達を甘く見過ぎていたようだな、九尾。

ルルーシュ
お前は根本的な面で俺達が敗けていたといったが、そうじゃない。

ルルーシュ
何故なら、スザクの記憶も、帰還方法もどちらも自力で見つけ出すからだ。

スザク
……うぅ……。

ルルーシュ
スザク! 気が付いたのか。

スザク
ルルーシュ……?

スザク
やっぱり、ルルーシュだ!
でも、ここは?
僕は毒ガスを盗んだテロリストを探す作戦に参加して……。

ルルーシュ
…………っ。

ルルーシュ
スザク。お前はその作戦での事故で記憶を失ったみたいなんだ。
だから、俺は……。

スザク
そうなんだ……、迷惑をかけてすまない。

ルルーシュ
それより、スザク。
俺以外の人間で覚えているヤツはいないか?

スザク
うーん。そうだな……。

C.C.
…………。

カレン
…………。

アーニャ
…………。

スザク
いや、みんな初めて、かな。
ルルーシュの友達かい?

ルルーシュ
あ、ああ……そんな……ところだ。

ルルーシュ
……………………。

ルルーシュ
(スザク、お前は最悪の敵だった。
 しかし、最高の親友でもある。)

ルルーシュ
(お前の記憶を、ユフィやシャーリーの辛い記憶を取り戻すことが、
 お前にとっていいことなのか、今の俺にはわからない。
 でも、お前なら取り戻したいと願うだろう。)

ルルーシュ
(だから、俺は――。)

スザク
そう言えば、ナナリーは?
ナナリーは一緒じゃないのかい?

ルルーシュ
すまない、スザク。
ナナリーは今は遠いところにいるんだ。

スザク
そうなんだ……。

C.C.
おい、ルルーシュ。
早く枢木スザクを連れて、ここを去るぞ。

C.C.
聞くところによると、この世界には九尾以外にも
厄介な連中がうじゃうじゃ居るらしいからな。

ルルーシュ
ああ、分かった。

ルルーシュ
スザク、とりあえず今は此処から離れよう。
どうやらこの辺りは危険らしい。

スザク
えっ?
ああ、うん。分かったよ、ルルーシュ。

――翌日

千狐
皆さん、昨日はお疲れ様でした。

千狐
ですが、そのぉ…………。

C.C.
なんだ? もしかして、気を遣ってるのか?

ルルーシュ
もしそうなら、別に気にする必要はない。

やくも
け、けど、これからどうするがや!?
このままじゃ、みんな元の場所に帰れないだにぃ。

ルルーシュ
確かにこのまま何もしなければ、問題は解決しないな。

ルルーシュ
だから、決めたよ。

ルルーシュ
スザクの記憶を取り戻せる方法も元の世界に戻る方法も、
俺は……何としてでも見つけ出す。

柳川城
ですが、手掛かりがなくては探しようが……。

千狐
……………………。

千狐
確かに、柳川城さんの言う通り手掛かりはありませんが……。

千狐
ですが、望みはあると思います。
スザクさんの記憶喪失も、皆さんが此世に来てしまったのも、
どちらも『術』によるもの。

千狐
であれば、きっと術を解く方法がどこかに存在するはずですわ!

スザク
ごめん、みんな……。
僕が記憶を失っているばっかりに……。

カレン
ホントだよ!
アンタを助けるためにどんだけ苦労したことか……。

スザク
すまない……、紅月さん……。

アーニャ
カレン……。

カレン
ああ、もう! 調子狂うなぁ!
冗談よ! 冗談!

カレン
それと、私の事は『カレン』って呼び捨てにして! いい?

スザク
わかったよ、カレン。
ありがとう。

カレン
ふ、ふん!

やくも
う~ん……でも、流石にこのまま、はいさよなら、っていうのも
なんだか後味が悪いだにぃ……。

千狐
確かにそうね。
一時とはいえ、ルルーシュさん達には凄く助けられましたし……。

柳川城
でしたら、問題が解決するまでの間、
此処に住んでいただく、というのは如何でしょう?

ルルーシュ
いや、それは嬉しい申し出だが……
流石にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。

千狐
そんなことはありませんわ!
殿も是非と仰ってますし!

殿
…………!

C.C.
ふむ、そういう事ならこいつらの言葉に甘えようじゃないか。
それに、此処に居る方が情報を仕入れるにしても何かと便利だと思うぞ。

ルルーシュ
まぁ、それは確かにそうだが……。

C.C.
では決定だ。
すまんが、暫くの間、世話になるぞ。

柳川城
はいっ! こちらこそ宜しくお願いしますね。

アーニャ
……………………。

千狐
ん? アーニャさん、どうかされました?

アーニャ
…………記録。

やくも
記録? 記録がどうかしただに?

アーニャ
皆で……記録、録りたい。

アーニャ
一難去った記念……。

カレン
うーん、アンタと一緒に記念撮影ってのは、
正直複雑な気分なんだけど……。
ま、いっか!

アーニャ
……いいの?

カレン
うん。一緒に戦った仲だしね。

柳川城
あの……一体何をされるおつもりなんですか?

ルルーシュ
ああ、どうやら写真を撮るみたいだ。

柳川城
しゃしんをとる、ですか?

C.C.
そうだなぁ……。

C.C.
アーニャが手にしている絡繰りを使って、皆の――。

やくも
魂を抜くがや!?

C.C.
いや、それはない。

C.C.
とにかく、その……なんだ。
皆の絵を一瞬で描いてくれる絡繰りだとでも思っておけ。

カレン
でも、このままだと、アーニャが写真に入らないんじゃ……。

柳川城
えっ!? そうなのですか!?

スザク
流石にそれは……。

アーニャ
その点は問題ない。

アーニャ
ここに端末を置いて、タイマーをセットすれば私も入れる。

千狐
なんて面妖な……!

アーニャ
これぞ文明の利器……(キリッ)
それじゃ、皆、ポーズ決めて……。

アーニャ
はい、チーズ。

カシャッ。

アーニャ
…………。

アーニャ
うん、良い記録……。

スザク
本当だ。綺麗に撮れてるね。

カレン
どれどれ~?
おっ、なかなか良いじゃない!

やくも
……だにー! しーつーの言う通り、うちらが絵になっとるがや!

千狐
やくも!
私にも! 私にも見せてなの!

C.C.
おいおい、お前ら。
別に写真は逃げないのだし、順番に見せてもらってはどうだ?

ルルーシュ
……………………。

ルルーシュ
…………なあ、殿。

殿
…………?

ルルーシュ
今回の件では、色々と世話になった。
千狐に聞いたんだが、どうやら君は人々を守る為に様々な敵と戦っているらしいな。

ルルーシュ
そういう事であれば、これも何かの縁だ。
此処に居る間は、俺達も力になろう。
だから、これからも宜しく頼む。

殿
…………!

殿
…………。

こうして、殿一行を襲った異事は、一端の収まりを映した――。
――かのように見えたのだが……。

数刻後・某所

桃形兜
ネ、ネェ、ドウシヨウ!
九尾サマガ殿タチニヤラレチャッタヨ!

古桃形兜
ウーン……。
コレハトウトウ、俺達モ身ノ振リ方ヲ考エル時ガ来テシマッタカモシレナイナ。

???
ほう?
して、その後は一体どうするつもりじゃ?

古桃形兜
キュ、九尾様ァ!?

九尾
くふふ……。

古桃形兜
イヤ、デモ……九尾サマハ確カニ、アノ時……。

九尾
ふっ、吾くらいになれば、精巧な変わり身を用意するくらい造作もない。
それにしても、ないとめあふれーむ……か。
城娘共を消すには丁度良い代物だと思ったのじゃが……。

九尾
まぁいい。未だ彼奴らを消す手段が尽きたわけではないのじゃ。
して……次は何をけしかけようかのう?
くふ……フハハ……フハハハハハハハッ!!

桃形兜
…………。

げに恐ろしきは九尾なり――。
死すらも擬態せしめた眼前の妖魔に対し、兜たちは言い知れぬ恐怖を覚えるのだった。



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